説明

ベルト状電子写真感光体

【発明の詳細な説明】
技術分野本発明は電子写真複写機等に用いるベルト状電子写真感光体に関する。
従来技術ベルト状電子写真感光体としては、樹脂フイルム上に導電層を形成し、その導電層上に光導電性感光層を形成した電子写真感光体を長方形に切断し、その両端部を当接させて接合し、ベルト状に形成したものが知られている。
接合が超温波接合法等による融着あるいは両端部に接着剤を付与する接着法による場合、ベルト状感光体はくり返し使用されるが、その際に接合部に割れが生じたり、接合部付近において感光層の割れや剥離が生ずるという欠点がある。また、接合部に融着突起、接着剤のはみ出し突起が生じ、この突起が感光体表面と接するクリーニング部或いは現像部等でもぎ取られて、もぎ取られた突起はクリーニング部材、現像ローラ等に付着し、画像欠陥の大きな原因となる。
また、このようなベルト状電子写真感光体では、接合部が帯電工程により帯電されると、クリーニング工程において除電ランプにより除電を行つても接合部における除電が充分にできないという欠点がある。そのため現像工程において接合部が現像され、この部分は画像形成部分として使用されないので、転写されずにクリーニング工程に到るためクリーニング装置に負担をかけるとともに、機内汚れを起す原因となる。更にクリーニングによつて回収する排トナーの量が増大するという欠点がある。これらの欠点を解決するため、接合部上に導電層を形成し、この導電層と感光体の導電層を電気的に接続する方法が提案されている。この方法によれば、接合部における帯電を防止することができるが、接合部上へ導電層は樹脂などの結着剤中に導電剤として黒鉛、カーボンブラツク、銅、銀などの導電性粉末を混入させて形成するため、接合部における割れや、接合部付近における感光層の割れ、あるいは感光層の剥離を充分に防止することができないという欠点がある。
発明の目的この発明は、上記欠点を改良し、接合部における割れや、接合部付近における感光層の割れ、あるいは感光層の剥離を防止すると共に接合部に生じるはみ出し突起の離脱を防止し、かつ接合部における帯電を防止し得るベルト状電子写真感光体を提供することを目的としている。
発明の構成この発明は、導電性支持体上に光導電層を設けてなる電子写真感光体の両端を融着または接着剤により接着接合してなり、該感光体の接合部の表面側上面にガラス転移点が−10℃以下の樹脂層を設け、更にその上に導電層を設けたことを特徴とするベルト状電子写真感光体である。
上記ベルト状電子写真感光体を図面によつて具体的に示すと、第1図は本発明のベルト状電子写真感光体の接合部の断面図を示したものであり、第2図は、ベルト状電子写真感光体の全体図を示したものである。本発明のベルト状電子写真感光体は例えば、ポリエステルフイルムの支持体1の上にアルミニウムを蒸着し導電層2を形成し、導電層2の上に有機または無機の光導電性物質を含む光導電性感光層3を設けた感光体の端部を当接させて接合部4で、例えば超音波接合法による融着あるいは接着剤による接着などの方法で接合させ、接合部1上を接合補強樹脂層5で被覆し、更に接合補強樹脂層5上に導電層6を設けてなるものである。7は接地用の電極であり、導電層6は7と導通している。
接合補強樹脂層5は、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリレート共重合体、スチレン−メタアクリレート共重合体、ポリカードネート、ポリウレタン等を溶剤で溶解し、これを接合部上にスリツト状に塗布し、乾燥させて形成することができる。また、二液混合型のエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、一液型のエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアノアクリレート樹脂、あるいは紫外線硬化型の樹脂などを用いることができる。
更に、ホツトメルト型の接着剤を熱溶融して、接合部上に被覆してもよく、また圧力活性型あるいは熱活性型の接着剤をコーテイングした高分子フイルム、金属箔等をスリツト状に接着してもよい。
上記の樹脂、共重合体あるいは接着剤としてはガラス転移点が−10℃以下のものが好ましい。ガラス転位点が−10℃以下の樹脂、共重合体、あるいは接着剤を用いた場合には、接合部の割れや、接合部付近の感光層の割れあるいは感光層の剥離の防止に特に優れており、低温での使用環境下においても、割れや剥離を生じることがない。ガラス転位点が−10℃以下の高分子材料としては、例えば東亜合成化学工業社製の商品名アロンメルトPES−111、PES−120、PES−120H、PES−110Hなどのポリエステル系樹脂があげられる。これらは熱溶融して接合部上に被覆しても、あるいはテトラヒドロフアンまたは塩化メチレン等の溶媒に溶解して接合部上に塗布してもよい。
接合補強樹脂層5上の導電層6は、樹脂層5を被覆するように形成する。導電層6は、接合補強樹脂層5に用いると同様な樹脂共重合体あるいは接着剤等の結着剤の溶液にカーボンブラツク、黒鉛、銅粉、銀粉、ニツケル粉などの導電性粒子を混合分散し、これを樹脂層5上にスリツト状に塗布し、乾燥することにより、容易に形成することができる。
また、これらの結着剤を熱溶融し、これに導電性粒子を混合分散したものをスリツト状に融着することによつて、導電層を形成してもよい。
結着剤としては、ガラス転位点が−10℃以下のものが好ましく、接合補強樹脂層に用いるガラス転位点が−10℃以下のポリエステル型の高分子材料が特に好ましい。接合補強樹脂層として接着剤をコーテイングした金属箔を用いる場合には、金属箔の部分を導電層として用いることもできる。以下に実施例を示して、この発明を具体的に説明する。
実施例アルミニウムを蒸着したポリエステルフイルム上に四辺の周辺部にアルミニウム蒸着部を残して長方形に光導電層を設けた電子写真感光体をアルミニウム蒸着部を若干残して長方形に切り取り、その両端を当接させ、超音波接合により融着させてベルト状電子写真感光体とした。
このベルト状電子写真感光体の接合部に、下記溶液をスリツト状に塗布し、乾燥して接合補強樹脂層を形成した。
ガラス転位点が−10℃以下のポリエステル樹脂(アロンメルトPES−111、東亜合成化学工業社製)
15重量部テトラヒドロフラン 85重量部この接合補強樹脂層上に下記分散液をスリツト状に塗布し、乾燥して導電層を形成した。
アロンメルトPES−111(東亜合成化学工業社製)
12重量部黒 鉛 4 〃 カーボンブラツク 4 〃 テトラヒドロフラン 80重量部このようにして作成したベルト状電子写真感光体を、−10℃で1週間保管したのち、これをとり出し5℃の環境下で接合部分の割れテストを行つた結果、接合部の割れ、接合部付近の光導電層の割れや剥離は生じなかつた。
次に、このベルト状電子写真感光体を用い、電子写真複写機で25℃の環境下において5万回くり返し使用した結果、接合部の割れ、接合部付近の光導電層の割れや剥離はみられなかつた。
また、接合部に現像剤の付着がなく、機内汚れの発生もみられず、更に排トナーの量も少なかつた。
発明の効果本発明によれば、低温環境下において接合部の割れ、接合部付近の光導電層の割れや剥離を生じることがなく、また多数回のくり返し使用においても接合部の割れ、接合部付近の光導電層の割れや剥離を生じることがない。また接合部に生じるはみ出し部分が、使用中にもぎ取られて画像欠陥を引き起すことがない。
更に、接合部には現像剤が付着することはなく、機内汚れを防止することができるとともに、排トナー量も少なく現像剤を有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のベルト状電子写真感光体における接合部の図面を示す概略図。
第2図は本発明のベルト状電子写真感光体の全体を示す概略図である。
1……支持体
2……導電層
3……光導電性感光層
4……接合部
5……接合補強樹脂層
6……接合部導電層
7……接地用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】導電性支持体上に光導電層を設けてなる電子写真感光体の両端を融着または接着剤により接合してなり、該感光体の接合部の表面側上面にガラス転移点が−10℃以下の樹脂層を設け、更にその上に導電層を設けたことを特徴とするベルト状電子写真感光体。

【第1図】
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【第2図】
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【公告番号】特公平6−54393
【公告日】平成6年(1994)7月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭59−82267
【出願日】昭和59年(1984)4月24日
【公開番号】特開昭60−225872
【公開日】昭和60年(1985)11月11日
【出願人】(999999999)株式会社リコー
【参考文献】
【文献】特開昭59−1073(JP,A)
【文献】特開昭59−3442(JP,A)
【文献】特開昭58−114050(JP,A)
【文献】実開昭60−112265(JP,U)
【文献】実公昭56−25001(JP,Y1)