説明

ベルト調整装置、ベルト調整方法および搬送装置

【課題】精密部品の精密検査等で部品を搬送するために用いられるベルト搬送装置において、特に、当該搬送用のベルトがスチール製であって、駆動プーリーと従動プーリーとの間隔が狭く、かつ、ベルトの横幅が広いものについて、ベルトの走行位置を所望の高精度で調整することができるベルト調整装置、ベルト調整方法および当該ベルト調整装置を具備する搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るベルト調整装置は、プーリーで駆動されて物品を搬送するベルトの蛇行を防止して周動位置を調整するベルト調整装置において、ベルトの周回毎に、ベルトの周方向基準位置を検出する位置検出手段と、周方向基準位置における、ベルトの横方向基準位置に対する変位量を検出する変位検出センサと、変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置を制御するプーリー制御機構とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト調整装置およびベルト調整方法に関し、さらに詳細には、プーリーで駆動されて物品を搬送するベルトの蛇行を防止して走行位置を調整するベルト調整装置、ベルト調整方法および当該ベルト調整装置を具備する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物品を搬送する装置としては、ベルトを備える搬送装置が一般的に用いられている。一例として、BGA(Ball Grid Array)タイプの半導体パッケージにおける製造工程において、製造されたBGA型半導体パッケージを製品欠陥検査のための画像処理検査装置に搬送して検査が行われる箇所で、ベルト搬送装置が使用されている。
しかしそのような精密部品の精密検査等で部品を搬送するために用いられるベルト搬送装置においては、とりわけベルトの走行位置を高精度に調整する装置が求められる。
ここで、走行位置を安定させる機構としては、歯車と溝とによる噛み合わせ機構が考えられる。しかし、ベルトがスチールである場合には、ベルトに歯車用の溝を設けると、大きな張力下で用いられるベルトの場合、その溝の部分から破断が生じて、溝を設けないベルトに比較して著しく耐久性が低下してしまう。
一方、ベルトを支持するプーリーの両端にフランジを設けて走行位置を高精度に調整する機構も考えられる。しかし、ベルトがスチールである場合には、フランジと接触するベルトエッジの部分から破断が生じて、プーリーの両端にフランジを設けない場合と比較して、ベルトの耐久性が著しく低下してしまう。
そのため、スチールベルトを用いるベルト搬送装置では、噛み合わせ機構やフランジを有しないプーリーが使用されている。
そのような、プーリーではベルト位置調整が難しく、とりわけ高精度のベルト位置調整は困難であるとされている。
【0003】
従来の噛み合わせ機構やフランジを有しないプーリーが使用されているベルト搬送装置用のベルト調整装置として、特開平6−305542号公報に記載されたものであって、図6に示すベルト調整装置110が提案されている。
この従来例は、少なくとも2個の駆動プーリー113および114にベルト116を掛け渡し、ベルト116に載置された物品を搬送するベルト装置110において、前記一方の駆動プーリー114のベルト116に対する交差角度を変化してベルト116の蛇行を修正する蛇行修正装置120と、他方の駆動プーリー113をベルト116に圧接する張力付加装置117とを備えたところに特徴を有する。
この従来例によれば、図6に示すようにベルト116が掛け渡された一方の駆動ローラー114は、蛇行修正装置120によりベルト116に対する交差角度を変化させ、また、他方の駆動ローラー113もこれに追随してその交差角度が変化するため、ベルトの蛇行が速やかに修正される。また、他方の駆動ローラー113が張力付加装置117により常にベルトに圧接されているので、一方の駆動ローラー114の角度変化に即応して他方の駆動ローラー113のベルトに対する圧力を調節し、ベルト116に対する駆動力が確実に保持できる。この装置では、検知部130で常時ベルト位置を検知しながら、駆動プーリー114を制御してベルト位置調整を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−305542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す従来のベルト調整装置によっても、さほど高精度が要求されないベルト位置の調整は可能であった。しかしながら、ベルトがスチール製であって、駆動プーリーと従動プーリーとの間隔が狭いものほど、また、ベルトの横幅が広いものほど、ベルト位置調整を所望の高精度で制御することは、従来、困難であるとされていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、精密部品の精密検査等で部品を搬送するために用いられるベルト搬送装置において、特に、当該搬送用のベルトがスチール製であって、駆動プーリーと従動プーリーとの間隔が狭く、かつ、ベルトの横幅が広いものについて、ベルトの走行位置を所望の高精度で調整することができるベルト調整装置、ベルト調整方法および当該ベルト調整装置を具備する搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係るベルト調整装置は、プーリーで駆動されて物品を搬送するベルトの蛇行を防止して走行位置を調整するベルト調整装置において、ベルトの周回毎に、ベルトの周方向基準位置を検出する位置検出手段と、周方向基準位置における、ベルトの横方向基準位置に対する変位量を検出する変位検出センサと、その変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置を制御するプーリー制御機構とを具備することを特徴とする。
【0009】
また、ベルトの横方向基準位置に対する変位量であって、先に検出されるものを第一変位量として記憶させ、ベルトの一周回後に検出されるものを第二変位量として記憶させる記憶手段と、第一変位量と第二変位量との差分を計算する演算手段と、その差分の値に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置を制御するプーリー制御機構とを具備することを特徴とする。
【0010】
また、プーリー制御機構によって配置が制御されるプーリーが、従動プーリーであることを特徴とする。
【0011】
ここで、変位検出センサが、ベルトが従動プーリーを通過した直後の位置に設けられていることが効果的である。
【0012】
また、変位検出センサの設置位置より後方で、ベルトが駆動プーリーに差し掛かるよりの位置に、ベルトの後方変位量を検出するための後方変位検出センサが設けられ、その後方変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように従動プーリーの配置を制御するプーリー制御機構を具備することを特徴とする。
【0013】
また、プーリー制御機構が、従動プーリーの回転軸上の横方向中間点を中心として、駆動プーリーの回転軸と従動プーリーの回転軸とが含まれる同一平面内で、従動プーリーが回転することにより周長差を生じさせるように従動プーリーの配置を制御するプーリー動作部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るベルト調整方法は、プーリーで駆動されて物品を搬送するベルトの蛇行を防止して走行位置を調整するベルト調整方法において、ベルトの周回毎に、ベルトの周方向基準位置を検出し、周方向基準位置における、ベルトの横方向基準位置に対する変位量を検出し、その変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置を制御するとともに、その変位量であって、先に検出されるものを第一変位量として記憶し、ベルトの一周回後に検出されるものを第二変位量として記憶し、第一変位量と第二変位量との差分を計算し、その差分の値に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置を制御することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る搬送装置は、プーリーで駆動されるベルトに物品を載置もしくは吸着させて搬送する搬送装置であって、段落0008〜0013に記載された特徴を有するベルト調整装置を具備し、搬送ベルトが駆動されているときに、当該ベルト調整装置によるベルト走行位置調整が可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1によれば、ベルトの周方向における同一位置において、ベルトの横方向基準位置に対して横方向にどれだけ変位しているかの変位量を検出することができるため、ベルトのエッジ部構造や製造上の寸法誤差による影響を受けることなく、ベルトの変位量を正確に検出することが可能となる。また、当該変位量に基づいて一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置が制御されるため、その周長差により、基準範囲外に変位したベルトの走行位置を基準範囲内に矯正することが可能となる。
【0017】
請求項2によれば、ベルトの周回毎に、ベルトの周方向における同一位置において、ベルトのエッジ部構造や製造上の寸法誤差による影響を受けることなく、ベルトの横方向の変位量を正確に検出することが可能となる。ここで、先に検出された横方向変位量を第一変位量として記憶させて、ベルトが一周回した後に検出される横方向変位量を第二変位量として記憶させて、当該第一変位量と第二変位量との差分が計算されるため、その差分量によって、ベルトが一周する間にどれだけ横方向に変位したかを定量的に把握することができる。その結果、当該差分量に基づいて一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置が制御されるため、その周長差により、ベルトの走行位置を所望位置に向けて矯正することが可能となる。
【0018】
請求項3によれば、請求項2に記載のベルト調整装置は、請求項1によるベルト調整装置と併用しなければならないものではなく、単独で実施をすることも可能である。
【0019】
請求項4によれば、ベルトが駆動プーリーにより駆動されて、従動プーリーから駆動プーリーに向けて走行する最もフラットに保たれる面にあるときに、ベルト横方向変位量の検出を行うとともに、その時点でのベルト進行方向の上流側に相当する従動プーリーの配置を制御することがベルト位置調整を高精度で行うために効果的である。
【0020】
請求項5によれば、前段落に記載の通りベルトが駆動プーリーにより駆動されて、従動プーリーから駆動プーリーに向けて走行する面にあるときにベルト横方向変位量の検出を行って、従動プーリーの配置を制御するのが効果的であるが、その際に、ベルトの横方向基準位置に対する変位量を検出する検出センサを、従動プーリーからベルトが送り出された直後に設けることが、その変位量の情報を従動プーリーの制御に即座に反映できるため、ベルト位置調整を高精度で行う点で効果的である。
【0021】
請求項6によれば、変位検出センサの設置位置より後方で、ベルトが駆動プーリーに差し掛かるより前方の位置に、ベルトの後方変位量を検出するためのもう1つのセンサとして後方変位検出センサを設けることによって、前方の変位検出センサによりベルト位置が調整されている状況下で、ベルトの横方向変位が、駆動プーリーの進入前位置で基準値内となっているかをモニタリングすることができる。さらに、その後方変位量に基づいて一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置を制御することができ、その周長差により、ベルトの走行位置を所望位置に向けて矯正することが可能となる。
【0022】
請求項7によれば、従動プーリーの回転軸上の横方向中間点を中心として、駆動プーリーの回転軸と従動プーリーの回転軸とが含まれる同一平面内で、従動プーリーを回転させる制御によって、ベルトの走行位置を横方向の所望位置に矯正する為に必要なベルト周長差を生じさせることが可能となる。
【0023】
請求項8によれば、ベルトの周方向における同一位置において、ベルトの横方向基準位置に対して横方向にどれだけ変位しているかの変位量を検出することによって、ベルトのエッジ部構造や製造上の寸法誤差による影響を受けることなく、ベルトの変位量を正確に検出することが可能となる。また、当該変位量に基づいて一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置を制御することによって、その周長差により、基準範囲外に変位したベルトの走行位置を基準範囲内に矯正することが可能となる。
併せて、当該変位量であって、先に検出された横方向変位量を第一変位量として記憶し、ベルトが一周回した後に検出されるもの横方向変位量を第二変位量として記憶し、当該第一変位量と第二変位量との差分を計算すると、その差分量によって、ベルトが一周する間にどれだけ横方向に変位したかを定量的に把握することができる。その差分量に基づいて一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるようにプーリーの配置を制御することによって、その周長差により、ベルトの走行位置を所望位置に向けて矯正することが可能となる。
【0024】
請求項9によれば、本発明に係る搬送装置は、段落0016〜0022に記載された特徴を有するベルト調整装置を備えて、搬送用のベルトがプーリーで駆動されて走行している状況下において、ベルトの蛇行を防止して走行位置を調整しながら、載置もしくは吸着させた物品を搬送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態に係るベルト調整装置1の例を示す概略図である。図2は、そのベルト調整装置1を上面から見た概略図である。図3は、プーリーの配置を制御する機構の説明図である。図4は、本発明の第二の実施の形態に係るベルト調整装置1を上面から見た概略図である。
また、図5は、本発明の実施の形態に係るベルト調整装置を用いて、本発明に係るベルト調整方法の実施をした場合のベルト調整の様子を示す測定図である。
【0026】
図1に示すように、ベルト2は、回転可能に支持された駆動プーリー12および従動プーリー11によって支持される。駆動プーリー12と従動プーリー11との間隔を適当に設定することによって、ベルト2に張力が与えられる。設計上は、駆動プーリー12の回転軸と従動プーリー11の回転軸とは並行になるようにそれぞれのプーリーが設置される。ベルト2は、駆動プーリー12によって駆動力が与えられて矢印A方向に走行する。
【0027】
ここで、駆動プーリー12はベルト2に駆動力を与えるためのプーリーである。駆動プーリー12は駆動源17に接続されて駆動力を発生する。ここで、駆動源17は、一例として、電気モータである。
ベルト2がスチール製等である場合、駆動プーリー12は、例えば、駆動プーリー12に歯車を設けて、ベルト2に対応する歯車用溝を設けるような噛み合い機構を持たない。したがって、駆動プーリー12の駆動力は、駆動プーリー12とベルト2との摩擦力によってベルト2へ伝達される。
【0028】
一方、従動プーリー11はそれ自体駆動せず、ベルト2を支持し、張力を与えながら、駆動プーリー12によって駆動されるベルト2との摩擦力によって回転するプーリーである。
なお、本発明の実施にあたり、従動プーリー11は駆動力が無いものに限定されるものではなく、駆動プーリー12とともにベルトを駆動するための駆動力を有するプーリーであってもよい。
【0029】
駆動プーリー12および従動プーリー11ともに、その両端部にフランジを持たない。そのため、駆動プーリー12および従動プーリー11のいずれか一方でも配置が不適切である場合には、ベルト2が所定走行位置からずれてしまう。その結果、プーリーからベルト2が外れてしまったり、ベルト2が蛇行してしまったりする原因となる。
【0030】
13は変位検出センサである。変位検出センサ13は、いずれか一方のベルトエッジ3aもしくは3bの上方に設けられる。変位検出センサ13によって、ベルト2の横方向変位量、すなわち、ベルト走行方向と直角方向における設計上の基準ベルトエッジ位置に対して、実際にベルトエッジが走行している位置との変位量が検出される。
なお、通常、その変位量が検出される変位検出点18はベルトエッジ3aの位置に設けられるが、ベルトエッジ3a、3b以外のベルト2の面上に変位検出点18を設けて、その点が、設計上の基準位置から実際に走行している位置との差を検出して、ベルトの横方向変位量としても構わない。
本実施例のように、従動プーリー11が制御される場合にあっては、従動プーリー11からベルト2が送り出された直後に変位検出センサ13を設けることが効果的である。
【0031】
本発明に掛かるベルト調整装置1において、ベルトが走行する方向の基準位置である周方向基準位置14を検出する検出手段を備える。
検出の方法は、例えば、接触方式、画像処理方式、電気方式等いずれの方法であっても構わない。その他に、駆動源17がステッピングモータである場合に、ベルト2を一周させる場合のステップ回数をカウントして周方向基準位置14を検知することも可能である。
ベルト2の周回毎に、周方向基準位置14が検出されて、その位置にベルト2がある場合のベルト2の横方向変位量が検出される。
通常、スチールベルトは構造上すべての周方向位置で横幅が同一長さではなく、また製造上の誤差も含まれ、エッジ部が波打っているため、従来技術による連続モニタリングによるベルト変位量検出では検出精度が悪かった。
しかしながら、本発明によれば、同一の周方向基準位置14において変位量を検出できるため、ベルト2のエッジ部構造や製造上の寸法誤差による影響を受けることなく、ベルト2の変位量を正確に検出することが可能となる。
なお、周方向基準位置14を複数設けても構わない。
【0032】
また、ベルト調整装置1は、プーリーの配置を制御するプーリー制御機構21を備える。
プーリー制御機構21は、周方向基準位置14において検出したベルトの横方向基準位置に対する変位量が所定の値になった場合に、その変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように前記プーリーの配置を制御する(以下、この制御を「X制御」という)。
一例として、ベルト2がスチールベルトであって、走行中にB方向に一定量以上変位した場合に、33を回転中心として、従動プーリー11を図中の時計回り方向に回転させる。そうすると、エッジ3aの周長が長くなり、エッジ3bの周長が短くなり、その周長差によって、ベルト2の走行方向がB方向とは反対の方向に矯正される。なお、一例として、回転中心33は従動プーリー横方向中心31と従動プーリー軸中心32との交点を通過して、駆動プーリーの回転軸と従動プーリーの回転軸とが含まれる平面に垂直に設定される。
ここで、ベルト2がスチール以外の材質である場合の中には、同じB方向の変位であっても、従動プーリー11の回転方向を反時計周りに回転させて矯正することもある。すなわち、従動プーリー11の回転方向および回転量は、ベルトの材質およびベルトの横方向変位量に応じて適宜設定される。
通常は、従動プーリー11を制御する。なお、従動プーリー11に加えて、もしくは従動プーリー11に代えて、駆動プーリー12を制御することとしてもよい。
【0033】
プーリー制御機構21の構成は、図3(a)に示すように、従動プーリー11にリンクブロック24を介して直動モータ22が接続される。この構成による作用は、直動モータ22のロッド23がリンクブロック24の作用点27でリンクブロック24を押すと、29を回転支点として、反作用点28に接続された従動プーリー11が押される。回転支点29は作用点27と反作用点28の中間点よりも反作用点28寄りに偏心されている。そのため、直動モータ22の押し出し長さに比べて従動プーリー11の押し出し長さが微小な長さに変換されることとなり、従動プーリー11の回転分解能を細かくすることができる。併せて、直動モータ22の押し出し力に比べて従動プーリー11の押し出し力が増幅される。
【0034】
続いて、15は記憶・演算部である。ここで、記憶・演算部15の作用は、ベルトの周回毎に、周方向基準位置14が検出されて、その位置にベルト2がある場合のベルト2の横方向変位量が変位検出センサ13によって検出される変位量であって、先に検出された横方向変位量を第一変位量として記憶させて、ベルトが一周回した後に検出されるもの横方向変位量を第二変位量として記憶させる。その後、当該第一変位量と第二変位量との差分を算出する。
その差分量が所定の値になった場合に、差分量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように、プーリー制御機構21によって従動プーリー11の配置を制御する(以下、この制御を「Y制御」という)。
通常は、従動プーリー11を制御する。なお、従動プーリー11に加えて、もしくは従動プーリー11に代えて、駆動プーリー12を制御することとしてもよい。
この差分量に基づくY制御の効果として、横方向変位量が基準値内であれば、通常は、変位量に基づくX制御が行われないものであるところ、例えば、ベルトの一周回の間に、変位量が基準値下限から、基準値上限まで一気に変動するような急激な変位が生じた場合に、その後変位量が基準値を外れてしまうことが予測されるため、基準値を外れてしまってからX制御によって対応するのではなく、そのようなベルトの走行乱れを即座に把握し、Y制御によって早めに対応することができ、その結果、より高精度、高精密なベルト位置調整を可能とする。
ここで、X制御とY制御については、ベルト位置調整のために、いずれか一方のみを実施してもよく、また併用してもよい。
【0035】
以上の通り、通常、スチールベルトは構造上すべての周方向位置で横幅が同一長さではなく、また製造上の誤差も含まれ、エッジ部が波打っているため、従来技術による連続モニタリングによるベルト変位量検出では検出精度が悪かった。そのため、特に、ベルト2がスチール製であって、駆動プーリー12と従動プーリー11との間隔が狭いものほど、また、ベルト2の横幅が広いものほど、ベルト位置調整を所望の高精度で制御することは困難であるとされていた。
しかしながら、本発明によれば、駆動プーリー12と従動プーリー11との間隔が狭く、かつ、横幅が広いスチールベルトに対しても、そのエッジ部構造や製造上の寸法誤差による影響を受けることなく、ベルトの変位量を正確に検出することが可能となり、その結果、従来、困難とされていた高精度でのベルト位置調整を実現した。
ここで、図5に、X制御、Y制御を併用した場合に、周回するベルトが精度良く調整され、蛇行が収束していく測定結果を示す。この図から、ベルトの横方向基準位置に対する位置調整が非常に高精度で実現されていることがわかる。
【0036】
図4は、本発明の第二の実施の形態に係るベルト調整装置1である。ベルト調整装置1に、変位検出センサ13の設置位置より後方で、ベルト2が駆動プーリー12に差し掛かるより前方の位置に、ベルト2の横方向基準位置に対する変位量を検出するための後方変位検出センサ16が設けられる。この変位量を後方変位量という。
当該後方変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように従動プーリー11の配置を制御する(以下、この制御を「Z制御」という)。
通常は、従動プーリー11を制御する。なお、従動プーリー11に加えて、もしくは従動プーリー11に代えて、駆動プーリー12を制御することとしてもよい。
後方変位検出センサ16の効果としては、X制御もしくはY制御によりベルト位置が調整されている状況下で、ベルトの横方向変位が、駆動プーリー12の進入前位置で基準値内となっているかをモニタリングすることである。
X制御、Y制御に加えてZ制御を行うことで、より高精度、高精密なベルト位置調整が可能となる。
【0037】
一例として以上説明した構成を有するベルト調整装置を用いることによって、本発明に係るベルト調整方法の実施をすることが可能となる。
【0038】
また、以上説明した構成を有するベルト調整装置を具備することによって、本発明に係る搬送装置の実施をすることが可能となる。
ここで、当該搬送装置は、ループ状となっているベルト2の外面であって上方の面に物品を載置させて搬送することが可能となる。また、従動プーリー11と駆動プーリー12との間に設けられ、ループ状となっているベルト2の内方から吸引する作用によってベルト2の外面に物品を吸着させる機構(図示しない)を備えることによって、ループ状となっているベルト2の外面であって上方の面と、ベルト2の外面であって下方の面の両面に物品を吸着させて搬送することが可能となる。
当該搬送装置は、ベルト2が走行している状況下において、ベルト2の蛇行を防止して走行位置の調整をすることが可能となる。
【0039】
以上、ベルト2がスチールベルトである場合を例にとって説明したが、本発明におけるベルト調整装置、ベルト調整方法および当該ベルト調整装置を具備する搬送装置は、スチール以外のベルトに対しても用いることができることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るベルト調整装置の例を示す概略図である。
【図2】図1に示すベルト調整装置を上面から見た概略図である。
【図3】図1に示すプーリーの配置を制御する機構の説明図である。
【図4】本発明の第二の実施の形態に係るベルト調整装置の例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るベルト調整装置を用いて、本発明に係るベルト調整方法の実施をした場合のベルト調整の様子を示す測定図である。
【図6】従来の実施形態に係るベルト調整装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ベルト調整装置
2 ベルト
3a、3b ベルトエッジ
11 従動プーリー
12 駆動プーリー
13 変位検出センサ
14 周方向基準位置
15 記憶・演算部
16 後方変位検出センサ
17 駆動源
18 変位検出点
21 プーリー制御機構
22 直動モータ
23 ロッド
24 リンクブロック
27 作用点
28 反作用点
29 回転支点
31 従動プーリー横方向中心
32 従動プーリー軸中心
33 回転中心
41 搬送物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリーで駆動されて物品を搬送するベルトの蛇行を防止して走行位置を調整するベルト調整装置において、
前記ベルトの周回毎に、前記ベルトの周方向基準位置を検出する位置検出手段と、
前記周方向基準位置における、前記ベルトの横方向基準位置に対する変位量を検出する変位検出センサと、
前記変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように前記プーリーの配置を制御するプーリー制御機構とを具備すること
を特徴とするベルト調整装置。
【請求項2】
前記変位量であって、先に検出されるものを第一変位量として記憶させ、前記ベルトの一周回後に検出されるものを第二変位量として記憶させる記憶手段と、
前記第一変位量と前記第二変位量との差分を計算する演算手段と、
前記差分の値に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように前記プーリーの配置を制御するプーリー制御機構とを具備すること
を特徴とする請求項1記載のベルト調整装置。
【請求項3】
プーリーで駆動されて物品を搬送するベルトの蛇行を防止して走行位置を調整するベルト調整装置において、
前記ベルトの周回毎に、前記ベルトの周方向基準位置を検出する位置検出手段と、
前記周方向基準位置における、前記ベルトの横方向基準位置に対する変位量を検出する変位検出センサと、
前記変位量であって、先に検出されるものを第一変位量として記憶させ、前記ベルトの一周回後に検出されるものを第二変位量として記憶させる記憶手段と、
前記第一変位量と前記第二変位量との差分を計算する演算手段と、
前記差分の値に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように前記プーリーの配置を制御するプーリー制御機構とを具備すること
を特徴とするベルト調整装置。
【請求項4】
前記プーリー制御機構によって配置が制御されるプーリーが、従動プーリーであること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のベルト調整装置。
【請求項5】
前記変位検出センサが、前記ベルトが前記従動プーリーを通過した直後の位置に設けられていること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のベルト調整装置。
【請求項6】
前記変位検出センサの設置位置より後方で、前記ベルトが前記駆動プーリーに差し掛かるより前方の位置に、前記ベルトの後方変位量を検出するための後方変位検出センサが設けられ、
前記後方変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように前記従動プーリーの配置を制御するプーリー制御機構を具備すること
を特徴とする請求項5記載のベルト調整装置。
【請求項7】
前記プーリー制御機構が、前記従動プーリーの回転軸上の横方向中間点を中心として、駆動プーリーの回転軸と前記従動プーリーの回転軸とが含まれる同一平面内で、前記従動プーリーが回転することにより前記周長差を生じさせるように前記従動プーリーの配置を制御するプーリー動作部を備えること
を特徴とする請求項5または請求項6記載のベルト調整装置。
【請求項8】
プーリーで駆動されて物品を搬送するベルトの蛇行を防止して走行位置を調整するベルト調整方法において、
前記ベルトの周回毎に、前記ベルトの周方向基準位置を検出し、
前記周方向基準位置における、前記ベルトの横方向基準位置に対する変位量を検出し、
前記変位量に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように前記プーリーの配置を制御するとともに、
前記変位量であって、先に検出されるものを第一変位量として記憶し、前記ベルトの一周回後に検出されるものを第二変位量として記憶し、
前記第一変位量と前記第二変位量との差分を計算し、
前記差分の値に応じて、一方のベルトエッジと、他方のベルトエッジとの間で周長差を生じさせるように前記プーリーの配置を制御すること
を特徴とするベルト調整方法。
【請求項9】
プーリーで駆動されるベルトに物品を載置もしくは吸着させて搬送する搬送装置において、請求項1〜7のいずれか一項記載のベルト調整装置を具備し、前記ベルトが駆動されているときに前記ベルト調整装置によるベルト走行位置調整が可能であること
を特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−7246(P2008−7246A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178073(P2006−178073)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】