説明

ベルト転写装置

【課題】 ベルト転写装置において、比較的剛性の高い無端ベルトにも適用でき、部品点数の少ない簡単な構成によりベルト蛇行を防止することができるようにする。
【解決手段】 像担持体からトナー像を転写するための無端ベルトを、駆動ローラ、アイドラローラなどの複数のローラにより張架したベルト転写装置において、複数のローラのうち少なくとも1本のローラである螺旋帯ローラ10が、展開形状V字状の螺旋帯12A、12Bにより旋回方向の異なる複数の螺旋帯を形成したローラ面を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体からトナー像を転写するベルト転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、高速複写機、カラー複写機、カラーレーザプリンタなどの画像形成システムにおいて、トナー像を転写するための無端ベルトを用いたベルト転写装置が用いられている。
その概略構成は、無端ベルトの内周面に互いに平行なローラを配置し、ローラとの摩擦により無端ベルトが回転駆動されるようになっている。
このようなベルト転写装置では、例えば、ローラの製作誤差により外径がばらついたり、取付誤差により取付の平行度が狂ったりして、ベルトが蛇行するという問題があった。画像形成システムでは、このようなベルト蛇行が転写時の画像ずれとなって、画質に影響するため、種々の手段によりベルト蛇行を規制している。
例えば、特許文献1には、無端ベルトの蛇行防止機構として、ベルト状電子写真感光体の裏面の両側縁に寄り止めガイドを形成した装置が記載されている。
また、特許文献2には、弾性を有する転写ベルトを張架するローラの1つに、中央から端部にかけてローラ径が徐々に縮径されたクラウン形状のベルトテンション調整ローラが採用されたベルト搬送装置が記載されている。
また、特許文献3には、ベルト端部位置センサの検出出力に基づいて駆動ステアリングローラの一端側を上下移動することによりベルト蛇行制御を行うカラー画像形成装置が記載されている。
【特許文献1】特開平7−179239号公報(第2頁、図4、5)
【特許文献2】特開平11−334925号公報(図2、3)
【特許文献3】特開平11−272094号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来のベルト転写装置には以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、寄り止めガイドを無端ベルトに貼付ける必要があるため、製造コストが高価につくという問題がある。
また、寄り止めガイドは、無端ベルトともに回転して繰り返し屈曲される結果、経時的に疲労して、剥がれたり、割れたりしやすいという問題がある。これを防止するには、屈曲の曲率半径を大きくする必要があるが、その場合、ローラ径が大きくなって装置の小型化が困難になるという問題がある。
特許文献2に記載の技術では、クラウン形状を有するベルトテンション調整ローラと弾性ベルトとの組合せによりベルト蛇行を補正している。したがって、例えば、多色のトナー像を正確に色重ねして転写する中間転写ベルト転写装置に用いるような比較的剛性の高い無端ベルトでは、十分な蛇行補正を行うことができないという問題がある。
特許文献3に記載の技術では、ベルト蛇行を検出するセンサ、その検出出力をフィードバックする制御回路、駆動ステアリングローラを上下移動させる移動機構などが必要となり、構成が複雑で、部品コストが高価につくという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、比較的剛性の高い無端ベルトにも適用でき、部品点数の少ない簡単な構成によりベルト蛇行を防止することができるベルト転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、像担持体からトナー像を転写するための無端ベルトを複数のローラで張架してなるベルト転写装置であって、前記複数のローラのうち少なくとも1本のローラのローラ面が、旋回方向の異なる複数の螺旋帯により形成されている構成とする。
この発明によれば、少なくとも1本のローラのローラ面に旋回方向の異なる複数の螺旋帯が形成されるので、ローラの回転方向に応じてローラから無端ベルトに対して搬送方向に直交する方向成分の駆動力が加わる。そのため、旋回方向が異なる螺旋帯により、無端ベルトの搬送方向に直交する幅方向の搬送力を動的にバランスさせることができる。その結果、無端ベルトの蛇行を防止できる。
特に、螺旋帯の旋回方向をそれぞれ搬送時に幅方向の搬送力が幅方向の端部側に向かう方向に揃えるようにすれば、無端ベルトが幅方向に伸長される搬送力を加えることができるので、無端ベルトの平面性を良好に保って搬送することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のベルト転写装置において、前記少なくとも1本のローラに設けられた複数の螺旋帯が、前記無端ベルトの幅方向中央を通りローラ中心軸に直交する面に対して略対称に設けられた構成とする。
この発明によれば、複数の螺旋帯が無端ベルトの幅方向中央を通りローラ中心軸に直交する面に対して略対称に設けられるので、無端ベルトの幅方向に対して左右対称な搬送力を形成することができる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のベルト転写装置において、前記複数の螺旋帯の前記無端ベルトに対する摩擦係数が、ローラ中心軸方向に沿って可変された構成とする。
この発明によれば、ローラ中心軸方向に沿って螺旋帯の無端ベルトに対する摩擦力を変えることにより無端ベルトに作用する搬送力の大きさを変えることができる。特に、ローラの幅方向中央の摩擦力が端部側に比べて大きくなるように設定すれば、無端ベルト中央部の搬送性が安定し、ベルト蛇行に対して効率的に抵抗できる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載のベルト転写装置において、前記複数の螺旋帯が、弾性を有する螺旋突条からなる構成とする。
この発明によれば、無端ベルトの螺旋帯が弾性を有する螺旋突条からなるので、無端ベルトの剛性が高くても、ローラから無端ベルトに対して確実に搬送力を伝達できる。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載のベルト転写装置において、前記螺旋突条に挟まれる螺旋溝の深さがローラ中心軸方向に沿って可変された構成とする。
この発明によれば、螺旋突条の深さをローラ中心軸方向に沿って可変することにより、ローラの摩擦係数を変えることなく、無端ベルトに伝達される搬送力を可変することができる。
【0010】
請求項6に記載の発明では、請求項4または5に記載のベルト転写装置において、前記螺旋突条のローラ中心軸を含む断面が、少なくともローラ端部側で、ローラ外周面から前記螺旋溝の底部にかけてローラ端部側に向かう傾斜を有するように形成された構成とする。
この発明によれば、螺旋突条が、無端ベルトに押しつけられる際、少なくともローラ端部側において、ローラ外周面から前記螺旋溝の底部にかけて形成された傾斜面により、無端ベルトとの当接面が増えるので、ローラからの螺旋帯に沿った搬送力を確実に無端ベルトに伝達することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のベルト転写装置によれば、ローラに形成された旋回方向が異なる複数の螺旋帯により、無端ベルトの搬送方向に直交する幅方向の搬送力を動的にバランスさせることができるので、比較的剛性の高い無端ベルトであっても適用でき、寄り止めガイドやベルト蛇行制御機構などの他の部品を用いることなくベルト蛇行を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係るベルト転写装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るベルト転写装置の概略構成について説明するための正面視模式説明図である。図2は、本発明の実施形態に係るベルト転写装置に用いるローラの一例について説明するための正面視模式説明図である。図3(a)は、図2のA部の詳細を示すローラ中心軸を含む断面視の部分断面図である。
【0013】
本実施形態のベルト転写装置1は、例えば、高速複写機、カラー複写機、カラーレーザプリンタなどの画像形成システムに用いることができるものであり、転写紙を吸着し転写紙上にトナー像を転写して搬送する転写搬送ベルトや、複数のトナー像をベルト上に転写して色重ねを行ってから転写紙上にまとめて転写する中間転写ベルトなどの無端ベルトを搬送するものである。
以下、特に断らなければ、ベルト転写装置1を、転写搬送手段または中間転写手段と限定することなく、両者に共通する部分を中心に説明する。
ベルト転写装置1の概略構成は、図1に示すように、ベルト2(無端ベルト)、駆動ローラ3(ローラ)、アイドラローラ5(ローラ)、転写機構4、およびクリーニング機構7からなる。
【0014】
図1において、符号6は、表面にトナー像が形成して、図示矢印方向に回転される感光体(像担持体)を示す。図示しないが、感光体6の外周側には、トナー像を形成するため、回転方向に沿って、帯電手段、露光手段、現像手段が設けられている。また、最終的にトナー像を転写するための転写紙を搬送する給紙搬送手段なども必要に応じて設けられている。
なお、図示では、感光体6が1つの場合を示しているが、例えばタンデム型のカラープリンタなどで用いる場合には、ベルト2上に4つの感光体6および転写機構4が設けられることは言うまでもない。
【0015】
ベルト2は、図示奥行き方向に幅wを有する無端ベルトである。
ベルト転写装置1の材質は、表面が平滑で、伸縮性が少なく寸法安定性の高い誘電体シートなどからなる。
【0016】
駆動ローラ3は、ベルト2を回転駆動するためのローラ部材であり、ローラ軸11は、不図示の駆動手段に接続され、ローラ面がベルト2の内周側に当接されているものである。
アイドラローラ5は、ベルト2の内周側に駆動ローラ3に対して平行に回転可能に支持されたローラ部材であり、不図示のバネなどの付勢手段によりベルト2の内周面に押圧されることで、ベルト2を所定張力で張架するとともに、ベルト2とつれ回ることができるようになっている。
本実施形態では、アイドラローラ5を1本としているが、必要に応じて2本以上設け、ベルト2の搬送方向に沿う断面が略多角形状断面をなすように張架する構成としてもよい。この場合、上記の付勢手段は、複数のアイドラローラ5のうち少なくとも1本に設けられる。
【0017】
これら駆動ローラ3およびアイドラローラ5のうち、少なくとも1本は、図2に示すような螺旋帯ローラ10が採用される。
螺旋帯ローラ10は、ローラ軸11の周りに、幅Wのローラが形成されたローラ部材である。そして、ローラは、ローラ軸11の周りに直径dの円筒状に設けられた筒状部15と、筒状部15上に設けられた、外周面が直径d(ただし、d>d)の螺旋突条部14とからなる(図3(a)参照)。
螺旋突条部14は、本実施形態では、断面矩形状(図3(a)参照)で、展開形状が頂角2θのV字状(図2参照)の2つの螺旋帯12A、12Bにより螺旋状に形成された突条部である。そして、ローラの幅の中央を通り中心軸に直交する面Pを対称面として面対称をなす形状とされる。このため、角度θは、螺旋帯12A、12Bが形成するそれぞれの螺旋のねじれ角となっている。
螺旋溝13は、螺旋帯12A、12Bに挟まれた溝であり、本実施形態では、コ字状断面が等間隔に形成されている。
そして、螺旋帯ローラ10は、ベルト2の搬送に伴って回転するとき、螺旋帯12A、12BのV字の頂点が回転方向に向くように配置されている。
【0018】
螺旋突条部14の材質は、ベルト2に対して適宜の摩擦係数を有する弾性材料からなり、例えば適宜の硬度を有するゴム、合成樹脂発泡体などが採用できる。
筒状部15は、螺旋突条部14と同材質から構成してもよいが、螺旋突条部14の外径を保持して回転駆動できるならば、どのような材質を採用してもよい。例えば、合成樹脂、金属、およびゴムなどが採用できる。
【0019】
螺旋突条部14、筒状部15に用いることができるゴム系の材質としては、例えば、SBR(スチレンブタジテンゴム)、BR(ポリブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、H−NBR(水素化NBR)、EPDM、EPM(エチレンプロピレンゴム)、NBR/EPDMブレンド、CR(クロロプレンゴム)、ACM(アクリルゴム)、ECO(エピックロルヒドリンゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、U(ウレタンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、NR(天然ゴム)、およびこれらの適宜の混合ゴムが採用できる。
これらのゴム系材料は、軟化剤やフィラーを加えることで、適宜の硬度に調整することができる。
また、これらのゴム系材料に、例えば、イオン導電剤、導電性カーボン、金属粉体などの添加剤を添加して、適宜の電気抵抗値を持たせるように調整してもよい。この場合、螺旋帯ローラ10に帯電防止効果や除電効果を持たせることができ、ベルト2の汚れ防止や、転写性能の向上を図ることができるという利点がある。
【0020】
このような螺旋帯ローラ10は、種々の手段により製造できる。
例えば、ローラ軸11を芯金として、例えば合成ゴムや合成樹脂などの中実体または発泡体により筒状部15を成形し、その周りにV字状に打ち抜かれた2枚のゴムシートを接着して、螺旋帯12A、12Bを設けることで螺旋突条部14を形成してもよい。
この場合、筒状部15と、螺旋突条部14との材質を容易に変えることができるとともに、螺旋溝13を形成するのに切削工程が不要となるという利点がある。
また、ローラ軸11を芯金として、ゴム系材料により直径dの円柱状ローラを形成し、切削加工により螺旋溝13を形成することもできる。この場合、螺旋溝13の幅、深さ、断面形状などを位置に応じて可変することが容易となるという利点がある。
【0021】
転写機構4は、感光体6の表面に形成されたトナー像をベルト2の内周側から電磁的に吸引することにより、ベルト2側に転写するための機構である。
ベルト転写装置1が転写搬送手段である場合には、ベルト2上に転写紙が吸着して搬送されるので、ベルト2を介して転写紙上にトナー像を転写できるようになっている。
ベルト転写装置1が中間転写手段である場合には、ベルト2の表面上にトナー像を色重ねして転写できるようになっている。
転写機構4としては、トナー像が転写できれば、どのような構成を採用してもよいが、例えば、不図示の高圧電源により転写電圧を印加された転写ローラを設ける構成を採用することができる。
【0022】
クリーニング機構7は、ベルト2上に付着した不要トナーを除去して、ベルト2を再使用可能とするための機構である。例えば、駆動ローラ3の下流側において、ベルト2にカウンター姿勢で圧接されたクリーニングブレード方式を採用できる。
ここで、駆動ローラ3の下流側の位置は、ベルト転写装置1が転写搬送手段である場合には転写紙の分離位置の下流であり、ベルト転写装置1が中間転写手段である場合には転写紙への転写位置の下流である。
除去された不要トナーは、適宜の手段により不図示の廃トナータンクに回収される構成となっている。
【0023】
次に本実施形態のベルト転写装置1の動作について、螺旋帯ローラ10の作用を中心に説明する。
図4(a)、(b)は、本発明の実施形態に係るベルト転写装置の動作原理について説明するための平面視および側面視の模式説明図である。
【0024】
ベルト2は、螺旋帯ローラ10に巻き掛ける場合、一般には有限の巻き掛け角が設定されるが、簡単のため、図4に示すように、ベルト2が、巻き掛け角が略0°で、螺旋帯ローラ10上を水平方向に搬送される場合を考える。すなわち、螺旋帯ローラ10が、図4(b)に矢印で示すように、反時計回りに回転し、ベルト2が図示右側から左側に水平に搬送されるものとする。
このとき、ベルト2は、幅w(ただし、w<W)を有し、幅方向の中心が螺旋帯ローラ10の面Pに含まれるように配置されているとする。
このとき、図4(a)に示すように、ベルト2の搬送が進むにつれ、ベルト2の上流側(図示右側)に、螺旋帯12A、12Bが、それぞれ斜線部12a、12bのように順次当接していく。ベルト2の搬送力は、これらの領域における螺旋帯ローラ10上の接線部分に作用する摩擦力fとして伝達されるものである。
【0025】
このような搬送力の向きを考察するために、ベルト2を固定して、螺旋帯ローラ10を仮想的に微小回転させるとする。このとき、螺旋帯12A、12Bが面Pに対して角度θだけ傾斜しているため、微小回転の後に、各螺旋帯12A、12Bの接線部分は、面Pから幅方向端部側に向けてそれぞれ微小距離移動することになる。したがって、ベルト2には、螺旋帯ローラ10の回転による搬送方向への摩擦駆動力と、それぞれの接線部分から幅方向の両端側に向けて引張力が作用しているものである。
そして、これら引張力の左右それぞれの合力F、Fは、対称性から常にバランスしている。
【0026】
ここで、何らかの原因によりベルト2がベルト蛇行が開始する場合を考える。例えば、微小時間内にFが働く方向(図示上側)に微小距離だけベルト寄りを起こすとする。このとき、ベルト寄りは、図示上側では、螺旋帯12A、12Bの接線部分の微小移動距離と同方向となるので、Fを与える微小移動量を低減またはキャンセルする方向となる。
一方、Fが働く方向(図示下側)では、Fを与える接線部分の微小移動の方向とベルト寄りの微小移動の方向が反対であるから、相対的に螺旋帯12A、12Bの微小移動量が増大したことと同様である。
これらの結果として、ベルト2が、Fの作用する方向にベルト寄りを起こすと、F<Fとなり、ベルト寄りを解消する方向に復元力が作用する。
したがって、ベルト2は幅方向中央側に押し戻され、これらの過程が繰り返されることで、ベルト2の位置が均衡し、何らかの原因でベルト蛇行が始まったとしても、ただちに蛇行幅が抑制され均衡位置で搬送される。このようにしてベルト蛇行が防止される。
【0027】
以上では、巻き掛け角略0°の場合を例にとったので、摩擦力が螺旋帯とベルトとの接触の接線部分に作用するとして説明したが、巻き掛け角が有限の場合には、接触部の平面視平行四辺形状の螺旋帯が横移動することにより接触部分から同様の摩擦力が作用するとして一般化できるものである。
【0028】
このようなベルト蛇行防止の作用は、ベルト2に対する摩擦力を増大させたり、螺旋帯12A、12Bのねじれ角θを増大させたりして、合力F、Fの値を大きくすることでより増強することができる。
摩擦力を増大させる手段としては、螺旋帯12A、12Bの材質として、ベルト2に対する摩擦係数の大きな材質を用いることが挙げられる。
また、螺旋帯12A、12Bは、弾性を有しているので、その硬度を可変して接触ニップ幅を増加させれば、材質を変えて摩擦力を増大させる場合と同様の作用効果がある。
また、螺旋帯12A、12Bは突状部として設けられているので、螺旋溝13が形成される。螺旋溝13の上端部は、ベルト2に押圧されるとベルト2をグリップする効果があるので、滑りにくくなり、摩擦力が増大したのと同様の作用効果がある。
そのため、例えばタイヤの溝などのように、ジグザグ状や、波形状などの溝にすることで、その滑り止め効果を高めるような形状としてもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、螺旋帯を螺旋帯12A、13Aの2条で構成しているが、螺旋帯の条数は、ねじれ角により適宜可変してよいことは言うまでもない。一般にねじれ角が大きくなるほど螺旋帯の条数を増加することが好ましい。
【0030】
以上に説明したように、螺旋帯ローラ10のベルト蛇行防止の作用は、螺旋帯12A、12Bによりベルト2の幅方向両端側に向かう摩擦力が幅方向でバランスしていることに基づく。このため、摩擦力がバランスしていれば、螺旋帯12A、12Bの形状は面Pを中心とした対称形でなくてもよい。
例えば、面Pを境として、螺旋帯12A、12Bの材質およびねじれ角を変えることで、面Pに対して非対称な形状であってもベルト2の幅方向左右の摩擦力をバランスさせることが可能となる。
【0031】
また、螺旋帯の数は、本実施形態のようにローラの軸方向に2つとは限らず、2つ以上いくつ設けてもよい。例えば、軸方向の所定間隔毎に、旋回方向、材質、ねじり角などの異なる螺旋帯を配置し、全体として、ベルト2の幅方向左右に対する摩擦力がバランスするようにすることができる。
【0032】
このように、本実施形態のベルト転写装置によれば、複数のローラの少なくとも1本に螺旋帯ローラ10を設けるだけで、ベルト蛇行を防止できる。そのため、例えば、ベルトに寄り止めガイドを設けたり、ローラの位置制御をしてベルト蛇行制御を行ったりする場合に比べて部品点数が少ない簡素な構成とすることができ、安価な装置とすることができる。
また、本実施形態の螺旋帯ローラ10によれば、ローラ径を一定でもベルト蛇行を防止できるので、例えばクラウン形状のローラを用いる場合と異なり、弾性ベルトだけでなく、比較的剛性の高いベルトであっても、良好に搬送することができる利点がある。このため、例えば、色ずれなどを抑えるため、比較的剛性の高いベルトを用いる必要があるカラープリンタなどの画像形成システムのベルト転写装置に好適となるものである。
【0033】
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
本変形例は、螺旋帯12A、12Bによる摩擦力をベルト2の幅方向両端でバランスさせるとともに、ベルト2の幅方向中央から両端側に向けて連続的もしくは段階的に低減する構成とするものである。すなわち、ベルト2が受ける摩擦力が幅方向中央部で最大となる山形の分布を持つようにする。
本変形例によれば、ベルトの幅方向端部の影響が及びにくくなるので、ベルト中央部での搬送性が安定し、ベルト蛇行に対する抵抗が大きくなるので、より効率的にベルト蛇行を防止する構成とすることができる。
【0034】
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図3(b)、(c)は、本発明の実施形態の第2変形例について説明するための図3(a)と同様な断面視の部分断面図である。
本変形例は、上記実施形態では、螺旋溝13の断面をコ字状としていたのに対して、図3(b)、(c)に示すように、螺旋帯12A、12Bにおいて、少なくともローラの端部側の側面にローラの外周部から螺旋溝13の底部に向けてローラ端部側に傾斜する傾斜面16aを設けたものである。ローラの中央部側の側面は、どのような形状でもよいが、例えば、図示のように、ローラの外周部から螺旋溝13の底部に向けてローラ中央部側に傾斜した傾斜面16bを設けることができる。そして、螺旋帯12A、12Bの断面形状を、台形状、三角形状などとする。
本変形例によれば、ベルト2に幅方向の両端側に摩擦力が作用する際、傾斜面16aにより、滑らかに押圧されていくので、ベルト走行の安定性を向上することができる。
【0035】
なお、上記の説明では、螺旋帯を複数条設けた例で説明したが、旋回方向の異なる複数の螺旋帯があれば、条数は1条であってもよい。
【0036】
また、上記の説明では、螺旋帯12A、12Bのそれぞれに隣接して螺旋溝13が設けられた例で説明したが、螺旋帯12A、12Bを隣接して形成することで材質、摩擦特性の異なる1条の螺旋帯を構成し、その両側に螺旋溝13が設けられた構成としてもよい。
例えば、一方を搬送方向に大きな摩擦力が得られる摩擦特性とし、他方を搬送方向と直交する方向に大きな摩擦力が得られる摩擦特性とすることで、ベルト搬送とベルト蛇行防止とのバランスを良好なものとすることができる。
また例えば、一方を高湿度における摩擦特性が良好な材料とし、他方を低湿度における摩擦特性が良好な材料とすることで、湿度変化が大きくても、良好なベルト蛇行防止性能を有する螺旋帯を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るベルト転写装置の概略構成について説明するための正面視模式説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るベルト転写装置に用いるローラの一例について説明するための正面視模式説明図である。
【図3】本発明の実施形態、およびその第2変形例に係るローラにおける図2のA部の詳細を示す、ローラ中心軸を含む断面視の部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るベルト転写装置の動作原理について説明するための平面視および側面視の模式説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ベルト転写装置
2 ベルト(無端ベルト)
3 駆動ローラ(ローラ)
4 転写機構
5 アイドラローラ(ローラ)
6 感光体(像担持体)
7 クリーニング機構
10 螺旋帯ローラ(ローラ)
12A、12B 螺旋帯
13 螺旋溝
14 螺旋突条部(螺旋突条)
15 筒状部
16a、16b 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体からトナー像を転写するための無端ベルトを複数のローラで張架してなるベルト転写装置であって、
前記複数のローラのうち少なくとも1本のローラのローラ面が、旋回方向の異なる複数の螺旋帯により形成されていることを特徴とするベルト転写装置。
【請求項2】
前記少なくとも1本のローラに設けられた複数の螺旋帯が、前記無端ベルトの幅方向中央を通りローラ中心軸に直交する面に対して略対称に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のベルト転写装置。
【請求項3】
前記複数の螺旋帯の前記無端ベルトに対する摩擦係数が、ローラ中心軸方向に沿って可変されたことを特徴とする請求項1または2に記載のベルト転写装置。
【請求項4】
前記複数の螺旋帯が、弾性を有する螺旋突条からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のベルト転写装置。
【請求項5】
前記螺旋突条に挟まれる螺旋溝の深さがローラ中心軸方向に沿って可変されたことを特徴とする請求項4に記載のベルト転写装置。
【請求項6】
前記螺旋突条のローラ中心軸を含む断面が、少なくともローラ端部側で、ローラ外周面から前記螺旋溝の底部にかけてローラ端部側に向かう傾斜を有するように形成されたことを特徴とする請求項4または5に記載のベルト転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−71818(P2006−71818A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253076(P2004−253076)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】