説明

ベルト駆動装置及び像加熱装置

【課題】外部加熱ベルト105の幅方向端部と接触して外部加熱ベルト105の幅方向の移動を規制するベルト規制部材207を有する構造で、外部加熱ベルト105の幅方向端部の削れを低減する。
【解決手段】外部加熱ベルト105が第2張架ローラ104に巻き付いていない非接触領域Eでは、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207との間で相対速度が生じる。そこで、リング形状のベルト規制部材207の外径側に、径方向外側に向かうほど外部加熱ベルト105の幅方向端部から離れる方向に傾斜した傾斜部207dを設ける。これにより、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207の摺動面積を低減して、外部加熱ベルト105の削れを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の張架ローラに支持されて走行する無端状のベルトを備えたベルト駆動装置、及び、記録材を加熱する加熱部材を外部から加熱する外部加熱装置がこのようなベルト駆動装置である像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式や静電記録方式を採用したプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置は、現像剤を記録材に定着させたり、記録材に定着した画像の光沢度を調整したりする像加熱装置を有する。このような画像形成装置においては、厚紙などの種々の用紙(記録材)について高い生産性(単位時間あたりのプリント枚数)が求められている。
【0003】
高い生産性、特に坪量の大きな用紙での生産性を上げるためには、像加熱装置による定着スピードを高速化する必要がある。しかし、坪量が大きい用紙では、熱が多く奪われるため、定着に要する熱量が、薄い紙に定着する場合に比べて大幅に多くなる。これに対して、像加熱装置の加熱部材の表面温度を向上させるために、この加熱部材を外部から加熱する外部加熱装置を用いる構造が知られている。外部加熱装置は、一般に、複数の張架ローラに支持されて走行する無端状のベルトを加熱部材に当接させ、熱伝導を行う領域の接触面積を増やすような構成を有する。
【0004】
このような外部加熱装置のように、無端状のベルトを複数の張架ローラに張架して走行させるベルト駆動装置の場合、複数の張架ローラ同士の平行度が確保されていないと、回転動作時にベルトが幅方向に移動してしまう。そこで、張架ローラの端部にベルト規制部材を設けて、ベルトの幅方向端部をこのベルト規制部材に接触させることにより、ベルトの幅方向の移動を規制する構造が知られている(特許文献1ないし4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−75697号公報
【特許文献2】特開2000−75698号公報
【特許文献3】特開2000−75699号公報
【特許文献4】特開2000−75700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにベルト規制部材によりベルトの幅方向の移動を規制する構造の場合、次のような問題を有する。この点について、図11を用いて説明する。図11は、無端状のベルト32を2本の張架ローラ30、31に張架した構成を示している。また、ベルト32を張架する片方の張架ローラ31の端部にベルト規制部材33が設けられている。ベルト規制部材33の外径は張架ローラ31の外径よりも大きく、ベルト32はベルト規制部材33に突き当たることにより幅方向の移動を規制される。
【0007】
ベルト規制部材33がベルト32と共に回転しているとき、ベルト32が張架ローラ31に巻き付いている領域Dにおいては、ベルト32とベルト規制部材33は同じ角速度で回転するため相対速度は生じない。ここで、領域Dは、ベルト32が張架ローラ31の外周面に当接している領域である。
【0008】
一方、ベルト32が張架ローラ31に巻き付いていない領域Eにおいては、ベルト32は張架ローラ31の接線方向に直線運動をするのに対し、ベルト規制部材33は回転運動をしているため、両物体の間で相対速度が生じる。ここで、領域Eは、張架ローラ31の外周面に当接していないベルト32の幅方向端部がベルト規制部材33に対向する領域である。
【0009】
このように領域Eにおいて、ベルト32とベルト規制部材33とは相対速度を生じるため、この領域Eでベルト32とベルト規制部材33とが摺動する。この結果、ベルト32の幅方向端部が削れて耐久性が低下したり、発生した削れ粉が画像品質を低下させたりする可能性がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、ベルトの幅方向端部と接触してベルトの幅方向の移動を規制するベルト規制部材を有する構造で、ベルトの幅方向端部の削れを低減すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、走行する無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラと、を備えたベルト駆動装置において、前記複数の張架ローラのうちの少なくとも1個の張架ローラの軸方向端部に設けられ、前記ベルトの走行方向に交差する前記ベルトの幅方向端部と接触して、前記ベルトの幅方向の移動を規制するベルト規制部材を有し、前記ベルト規制部材は、少なくとも、前記張架ローラの外周面に当接していない前記ベルトの幅方向端部が対向する部分の一部が、前記ベルトの幅方向端部から離間している、ことを特徴とするベルト駆動装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベルトの幅方向端部とベルト規制部材との相対速度が生じる部分の少なくとも一部が離間しているため、ベルトの幅方向端部の削れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】第1の実施形態に係る像加熱装置の概略構成横断面図。
【図3】第1の実施形態に係る外部加熱装置を示す概略構成横断面図。
【図4】同じく外部加熱装置の一部を示す概略構成平面図。
【図5】第1の実施形態のベルト規制部材の斜視図。
【図6】外部加熱ベルトとベルト規制部材との関係を説明するために、外部加熱装置の一部を切断して模式的に示す概略構成横断面図。
【図7】同じく概略構成縦断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態を示す、図6と同様の図。
【図9】同じく、図7と同様の図。
【図10】第2の実施形態のベルト規制部材の斜視図。
【図11】本発明の課題を説明するために、片側の張架ローラにベルト規制部材を設けた外部加熱装置の一部を示す概略構成横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図7を用いて説明する。まず、図1を用いて、本実施形態の画像形成装置の概略構成について説明する。
【0015】
[画像形成装置]
図1に示す装置内には第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが併設され、各々異なった色のトナー像が潜像、現像、転写のプロセスを経て形成される。画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ専用の像担持体、本例では電子写真感光ドラム3a、3b、3c、3dを具備し、各感光ドラム3a、3b、3c、3d上に各色のトナー像が形成される。各感光ドラム3a、3b、3c、3dに隣接して中間転写体130が設置され、感光ドラム3a、3b、3c、3d上に形成された各色のトナー像が、中間転写体130上に1次転写され、2次転写部で記録材P上に転写される。さらにトナー像が転写された記録材Pは、像加熱装置9で加熱及び加圧によりトナー像を定着した後、記録画像として装置外に排出される。
【0016】
感光ドラム3a、3b、3c、3dの外周には、それぞれドラム帯電器2a、2b、2c、2d、現像器1a、1b、1c、1d、1次転写装置24a、24b、24c、24d及びクリーナ4a、4b、4c、4dが設けられている。また、装置の上方部にはさらにレーザスキャナ5a、5b、5c、5dが設置されている。
【0017】
画像信号に応じてレーザスキャナ5a、5b、5c、5dから発せられたレーザー光は、ポリゴンミラーを回転して走査される。そして、その走査光の光束が反射ミラーによって偏向され、fθレンズにより感光ドラム3a、3b、3c、3dの母線上に集光して露光する。これにより、感光ドラム3a、3b、3c、3d上に画像信号に応じた潜像が形成される。
【0018】
現像器1a、1b、1c、1dには、現像剤としてそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが、図示しない供給装置により所定量充填されている。現像器1a、1b、1c、1dは、それぞれ感光ドラム3a、3b、3c、3d上の潜像を現像して、シアントナー像、マゼンタトナー像、イエロートナー像及びブラックトナー像として可視化する。
【0019】
中間転写体130は、無端状のベルトで、矢示の方向に感光ドラム3a、3b、3c、3dと同じ周速度をもって回転駆動されている。感光ドラム3a上に形成担持された第1色のイエロートナー画像は、感光ドラム3aと中間転写体130とのニップ部を通過する過程で、中間転写体130の外周面に中間転写される。この際、1次転写装置24aに印加される1次転写バイアスにより形成される電界と圧力により、トナー画像が感光ドラム3aから中間転写体130に転写される。
【0020】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次中間転写体130上に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。
【0021】
1次転写が終了した感光ドラム3a、3b、3c、3dは、それぞれのクリーナ4a、4b、4c、4dにより転写残トナーをクリーニング、除去され、引き続き次の潜像の形成以下に備えられる。中間転写体130上に残留したトナー及びその他の異物は、中間転写体130の表面にクリーニングウエブ(不織布)20を当接して、拭い取るようにしている。
【0022】
11は2次転写ローラであり、中間転写体130を懸回張設させた3本のローラ13、14、15のうちのローラ14に対して中間転写体130を挟ませて圧接させることで、中間転写体130との間に2次転写部を形成している。2次転写ローラ11には、2次転写バイアス源によって所望の2次転写バイアスが印加されている。
【0023】
中間転写体130上に重畳転写された合成カラートナー画像の記録材Pへの転写は、次のように行う。給紙カセット10からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して2次転写部に所定のタイミングで記録材Pが給送され、同時に2次転写バイアスがバイアス電源からに印加される。この2次転写バイアスにより、中間転写体130から記録材Pへ合成カラートナー画像が転写される。トナー画像の転写を受けた記録材Pは像加熱装置9へ順次導入され、記録材に熱と圧力を加えることで定着される。
【0024】
両面コピーモードが選択されている場合には、像加熱装置9を出た第1面側画像形成済みの記録材Pがフラッパ16により再循環搬送機構側のシートパス17側に導入され、さらにスイッチバックシートパス18内に入る。次いで、シートパス18から引き出し搬送されて再搬送シートパス19に誘導され、シートパス19からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して2次転写ニップ部に表裏反転状態で所定のタイミングで再導入される。これにより、記録材Pの第2面側に対して、中間転写体130上のトナー画像の2次転写がなされる。2次転写部にて第2面に対するトナー画像の2次転写を受けた記録材Pは、中間転写体130から分離されて像加熱装置9へ再導入され、トナー画像の定着処理を受けて両面コピーとして装置外の排紙トレイ6に排出される。
【0025】
[像加熱装置]
次に、像加熱装置9について、図2を用いてより詳しく説明する。像加熱装置9は、加熱部材としての加熱ローラ101、加圧部材としての加圧ローラ102、外部加熱装置106により構成されている。加熱ローラ101は、図示しないモータなどの駆動源によって、矢印A方向に所定の速度で回転駆動されるようになっている。加熱ローラ101の芯金の内部には、発熱体としてハロゲンヒータ111が配置されて、加熱ローラ101表面温度が所定の温度となるように内部から加熱されている。
【0026】
加熱ローラ101の表面温度は、加熱ローラ101に接触する温度検知手段としてのサーミスタ121によって検出される。そして、この検出温度に基づいて、温度制御(調整)手段としてのヒータ制御器140がハロゲンヒータ111をON/OFFすることで、所定の目標温度で制御される。
【0027】
加圧ローラ102は、図示しない加圧手段により、加熱ローラ101に所定の圧力で加圧されて、加熱ローラ101と定着ニップ部Nを形成しており、矢印B方向に所定の速度で、加熱ローラ101と従動回転される。また、加圧ローラ102の芯金の内部には、発熱体としてハロゲンヒータ112が配置されて、加圧ローラ102表面温度が所定の温度となるように内部から加熱されている。
【0028】
加圧ローラ102の表面温度は、加圧ローラ102に接触する温度検知手段としてのサーミスタ122によって検出され、ヒータ制御器140によってハロゲンヒータ112がON/OFFされ、所定の目標温度にて制御される。
【0029】
この定着ニップ部Nには、未定着トナーKを担持した記録材Pを通過させて、記録材を加熱、加圧することにより、記録材P上にトナーKを定着させる。なお、トナー像を定着済みの記録材を、像加熱装置9の定着ニップ部Nに通して再度加熱することにより、表面の光沢度を調整する場合もある。
【0030】
[外部加熱装置]
次に、ベルト駆動装置としての外部加熱装置106について、図2ないし図4により詳しく説明する。図2に示すように、加熱ローラ101の外周面には、外部加熱装置106が配置されている。外部加熱装置106は、外部加熱部材となる走行する無端状の外部加熱ベルト105と、外部加熱ベルト105を張架する複数の張架ローラである第1、第2張架ローラ103、104とにより構成される。
【0031】
外部加熱ベルト105は、第1、第2張架ローラ103、104を介して、後述する図3に示す加圧手段によって加熱ローラ101に所定の圧力で均等に押圧されることで、加熱ローラ101と接触面Neを形成している。外部加熱ベルト105は加熱ローラ101に対して当接/退避可能に構成されている。また、加熱ローラ101に押圧された外部加熱ベルト105は、加熱ローラ101の回転により従動回転するように、第1、第2張架ローラ103、104によって走行自在に支持される。
【0032】
このような外部加熱ベルト105は、金属製の基材(ステンレスやニッケル等)もしくは樹脂製の基材(ポリアミド等)の層を有し、トナーとの付着を防止するために、耐熱性の摺動層としてフッ素系樹脂で被覆されている。そして、外部加熱ベルト105は、矢印C方向に所定の速度で加熱ローラ101と従動回転され、加熱ローラ101の表面を加熱する。
【0033】
また、第1張架ローラ103の芯金の内部には、発熱体としてハロゲンヒータ114が配置されて、外部加熱ベルト105の表面温度が所定の温度となるように内部から加熱されている。
【0034】
外部加熱ベルト105の表面温度は、温度検知手段として、第1張架ローラ103と外部加熱ベルト105の接触領域D1に接触するサーミスタ123によって検出される。この接触領域D1は、外部加熱ベルト105が第1張架ローラ103の外周面に当接する領域である。そして、検出された温度に基づいて、ヒータ制御器140は、ハロゲンヒータ114をON/OFFし、所定の目標温度になるように制御(温度調節)する。
【0035】
外部加熱ベルト105を張架する第2張架ローラ104は、第1張架ローラ103とほぼ同様の構成で、加熱ローラ回転方向下流側に配置される。第2張架ローラ104も外部加熱ベルト105の内面に接触して、外部加熱ベルト105を加熱する。即ち、第2張架ローラ104の芯金の内部には、発熱体としてハロゲンヒータ115が配置されて、外部加熱ベルト105の表面温度が所定の温度となるように内部から加熱されている。
【0036】
外部加熱ベルト105の表面温度は、温度検知手段として、第2張架ローラ104と外部加熱ベルト105の接触領域D2に接触するサーミスタ124によって検出される。この接触領域D2は、外部加熱ベルト105が第2張架ローラ104の外周面に当接する領域である。そして、検出された温度に基づいて、ヒータ制御器140はハロゲンヒータ115をON/OFFし、所定の目標温度になるように制御(温度調節)する。
【0037】
外部加熱ベルト105の目標温度は加熱ローラ101の目標温度よりも高く設定してある。このため、加熱ローラ101の表面温度が記録材との接触により降下することに対してレスポンス(熱の感応精度)良く外部加熱ベルト105から加熱ローラ101に熱が供給される。
【0038】
次に、図3により、外部加熱装置106を加熱ローラ101に接離させる構造について説明する。加圧フレーム201は、像加熱装置本体に固定されたステイ軸203のまわりに回動し、加圧バネ204による加圧力を受け加熱ローラ101の方向に付勢される。カム205は不図示のモータなどの駆動手段により回転させられ、回転することにより加圧フレーム201を昇降させ、外部加熱ベルト105の加熱ローラ101に対する当接/退避動作を行っている。ローラ保持部材206は、図4に示すように、第1、第2張架ローラ103、104の両端部を保持し一定の軸間距離を維持している。
【0039】
図4は、図3における矢印Fの方向から見た、加圧フレーム201などを省略して示す平面図である。ローラ保持部材206は、断熱ブッシュ109及びベアリング110を介することによって第1、第2張架ローラ103、104を回転自在に保持している。また、本実施形態の場合、第2張架ローラ104の軸方向両端部に、ローラ端部側面と断熱ブッシュ109との間に挟持することで、ベルト規制部材207を設けている。ベルト規制部材207は、外部加熱ベルト105の走行方向に交差する外部加熱ベルト105の幅方向端部と接触して、外部加熱ベルト105の幅方向の移動を規制する。なお、ベルト規制部材207は、第1、第2張架ローラ103、104のうちの少なくとも1個の張架ローラに設けられていれば良い。
【0040】
ベルト規制部材207は、図5に示すように、リング形状で、削りに対して強度が高い材質(ステンレス鋼板等)を用いた薄い平板(例えば厚み0.2mm)からなる。そして、中央には第2張架ローラ104の両端軸部と嵌めあうように穴207aが設けられている。また、穴207aの淵は第2張架ローラ104の隅曲率部との干渉を防ぐために、外側に絞り加工がなされている。更に、穴207aの一部には空転防止溝207bがあり、第2張架ローラ104の両端側面部に設けられた突起部に溝207bが係合する。これにより、ベルト規制部材207は空転することなく第2張架ローラ104と等角速度で回転する。
【0041】
本実施形態の場合、ベルト規制部材207は、第2張架ローラ104の回転軸に直交する平面部207cと、平面部207cに対して傾斜した傾斜部207dを有する。平面部207cは、第2張架ローラ104の径方向に関し、第2張架ローラ104の外周面から所定の範囲に形成されている。また、傾斜部207dは、平面部207cの径方向外側に平面部207cと滑らかに連続して設けられ、径方向外側に向かうほど外部加熱ベルト105の幅方向端部から離れる方向に傾斜している。
【0042】
このように構成されるベルト規制部材207は、図6及び図7に示すように、第2張架ローラ104に固定された状態で、平面部207cの内径側が断熱ブッシュ109と第2張架ローラ104の軸方向端部に挟持されている。そして、平面部207cの外径側を第2張架ローラ104の外周面から露出させている。平面部207cの第2張架ローラ104の外周面から露出する部分は、外部加熱ベルト105の厚さと同じか僅かに大きい程度となるようにしている。即ち、平面部207cの直径は、第2張架ローラ104のベルトを張架する部分の外径(ローラ部外径)に外部加熱ベルト105の厚さの2倍を加えた大きさ、或いは、この大きさよりも僅かに大きい大きさとする。したがって、上述の所定の範囲とは、外部加熱ベルト105の厚さと同じか僅かに大きい程度の範囲である。
【0043】
また、傾斜部207dは、平面部に対して、例えば5〜60°の傾斜角度を有する。この傾斜角度の範囲は、外部加熱ベルト105の幅方向端部との接触を低減でき、且つ、外部加熱ベルト105が乗り上げた場合でも、外部加熱ベルト105が脱落しないように、径方向の長さとの関係で定める。
【0044】
本実施形態の場合、外部加熱ベルト105は、上述したように、加熱ローラ101に対して当接及び退避を行うので、当接状態と退避状態ではベルトの張力が異なる。そして、退避状態では、外部加熱ベルト105が撓んでしまう。そこで、本実施形態の場合には、このような撓みを考慮して、傾斜部207dの径方向長さ及び傾斜角度を定めている。
【0045】
このように行使される本実施形態の場合、図6に示すように、外部加熱ベルト105が第2張架ローラ104に巻き付いている範囲(接触領域)D2においては、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207の間で相対速度が生じない。そのため、両部材が当接していても摺動摩耗は発生しない。
【0046】
一方、外部加熱ベルト105が張架ローラ104に巻き付いていない範囲(非接触領域)Eにおいては、ベルト規制部材207と外部加熱ベルト105との間で相対速度が発生している。なお、この非接触領域Eが、第2張架ローラ104の外周面に当接していない外部加熱ベルト105の領域である。本実施形態では、上述のように、ベルト規制部材207が傾斜部207dを有するため、外部加熱ベルト105の非接触領域Eの幅方向端部の一部が、傾斜部207dに対向することになる。言い換えれば、ベルト規制部材207は、外部加熱ベルト105の非接触領域Eの幅方向端部が対向する部分の一部が、外部加熱ベルト105の幅方向端部から離間している。
【0047】
このように構成される本実施形態によれば、外部加熱ベルト105の幅方向端部とベルト規制部材207との相対速度が生じる部分の少なくとも一部が離間しているため、外部加熱ベルト105の幅方向端部の削れを低減できる。即ち、上述のように、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207との相対速度が生じる非接触領域Eの一部に、傾斜部207dを設けることで、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207とが摺動する面積を低減できる。この結果、外部加熱ベルト105の幅方向端部の削れや摩耗を低減できる。
【0048】
また、本実施形態の場合、ベルト規制部材207の平面部207cの径は、第2張架ローラ104のローラ部外径に外部加熱ベルト105の厚み2枚分を加えた大きさで、外部加熱ベルト105を平面部で受けるのに最低限必要な径となっている。したがって、この点からも、非接触領域Eにおける外部加熱ベルト105とベルト規制部材207と摺動する面積を抑えられ、外部加熱ベルト105の摩耗を低減している。
【0049】
このように、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207の摺動面積を減らすことで、外部加熱ベルト105の寿命を向上させることができると共に、発生した削れ粉により画像品質を低下することを低減できる。
【0050】
なお、上述したように、ベルト規制部材207の傾斜部207dの径方向の幅及び傾斜角度を設定することにより、外部加熱装置106が加熱ローラ101から脱着する際に外部加熱ベルト105がベルト規制部材207から脱落するのを防止できる。
【0051】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図8ないし図10を用いて説明する。上述の第1の実施形態の場合、ベルト規制部材207の平面部207cの径を小さくすることにより、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207の摺動部面積を小さくしている。しかしながら、樹脂を基材とするベルトを使用した場合、ベルト規制部材207において大きな接触応力が働くとベルト端部が外側に反り、外部加熱ベルト105がベルト規制部材207の傾斜部207dに進入してしまう可能性がある。そして、傾斜部207dによってベルトの寄り力を受けた場合、ベルト端面に亀裂が生じたり、ローラ表面との密着性が低下することにより熱伝達効率が損なわれる可能性がある。
【0052】
そこで、本実施形態では、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207Aの摺動部面積を小さくしつつ、傾斜部となる領域を少なくしている。このために本実施形態の場合、ベルト規制部材207Aは、外部加熱ベルト105の幅方向端部に接離する方向に弾性変形可能としている。そして、ベルト規制部材207Aの、第2張架ローラ104の外周面に当接していない外部加熱ベルト105の幅方向端部が対向する部分の一部を、外部加熱ベルト105の幅方向端部から離れる方向に弾性変形させる退避部材208を有する。
【0053】
以下、具体的に説明する。図8及び図9に示すように、非接触領域Eの一部で、第2張架ローラ104の軸方向両端部に設けられたベルト規制部材207Aの径方向先端側に退避部材208を当接させている。そして、ベルト規制部材207Aの一部を、退避部材208によって図9の矢印Gの方向に加圧し、外部加熱ベルト105の幅方向端部と離間する方向に弾性変形させている。
【0054】
退避部材208は、ローラ保持部材206に固定されており、ベルト規制部材207Aとの当接部において外部加熱ベルト105の端面に対して、例えば5°〜10°の傾斜を持つ。なお、この傾斜角度は、ベルト規制部材207Aの材料、厚さなど弾性に関する性質を考慮して定める。
【0055】
退避部材208の先端は、耐熱性を考慮し金属製のコロとなっており、ベルト規制部材207Aとの摩擦抵抗を小さくし、第2張架ローラ104の回転負荷が増加するのを抑えている。断熱ブッシュ109は、ベルト規制部材207Aと第2張架ローラ104の端部側面が密着するように配置されており、ベルト規制部材207Aの穴形状を円形に保つことで、回転動作時にベルト規制部材207Aと第2張架ローラ104の軸部がこじれるのを防ぐ。また、断熱ブッシュ109の外径は第2張架ローラ104のローラ部外径よりも小さく、ベルト規制部材207Aを張架ローラ104の外径よりも内側から曲げ始めることにより、外部加熱ベルト105との摺動部面積を低減している。
【0056】
このような退避部材208は、図8に示すように、外部加熱ベルト105の非接触領域の2箇所に設けられている。また、退避部材208は、ベルト規制部材207Aの外周面より例えば3mm内側の位置を加圧している。これにより、曲げ開始部からの距離を小さくすることで、変形量の精度を高くすると共に、退避部材208が外部加熱ベルト105と接触することを防止している。
【0057】
また、本実施形態のベルト規制部材207Aは、図10に示すように、自由状態でリング形状の薄い平板(例えば厚み0.2mm)で、バネ性の高い材質(ステンレスバネ鋼等)を用いている。ベルト規制部材207Aの外部加熱ベルト105の幅方向端部と対向する面は、自由状態で、第2張架ローラ104の回転軸に直交する面である。これにより、上述したように、退避部材208に押圧された部分の弾性変形内で、外部加熱ベルト105とベルト規制部材207Aとを離間する。一方、それ以外の部分は、弾性的に復元して、第2張架ローラ104の回転軸に直交する面となる。
【0058】
なお、ベルト規制部材207Aの外径は第2張架ローラ104のローラ部外径に例えば10mm加えたもので、ベルト端部の反りが発生した場合でも外部加熱ベルト105がベルト規制部材207Aを乗り越えることがないようにしている。
【0059】
このように構成される本実施形態の場合、退避部材208によりベルト規制部材207Aの非接触領域Eの一部を弾性的に傾斜させて、それ以外の部分は、第2張架ローラ104の回転軸に直交する面としている。このため、外部加熱ベルト105がベルト規制部材207Aの傾斜している領域に進入しようとしても、それ以外の部分でその進入が止められる。また、非接触領域Eの一部は傾斜しているため、ベルト規制部材207Aと外部加熱ベルト105とが摺動する面積を低減できる。この結果、ベルト端部の反りに起因するベルト破損や熱伝導効率の低下を防ぎつつ、ベルト規制部材207Aとの摺動部面積の低減により外部加熱ベルト105の寿命を向上することができる。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0060】
<他の実施形態>
上述の説明では、本発明は像加熱装置の外部加熱装置に適用した場合について説明したが、ベルトにより駆動する装置であれば、例えば、中間転写ベルト部分、像加熱装置の加圧部材としてベルトを使用した構造などにも適用可能である。即ち、ベルトの幅方向端部と接触して、ベルトの幅方向の移動を規制するベルト規制部材を有する構造であれば、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0061】
101・・・加熱ローラ(加熱部材)、102・・・加圧ローラ(加圧部材)、103・・・第1張架ローラ、104・・・第2張架ローラ、105・・・外部加熱ベルト、106・・・外部加熱装置(ベルト駆動装置)、207、207A・・・ベルト規制部材、207c・・・平面部、207d・・・傾斜部、208・・・退避部材、D1、D2・・・接触領域、E・・・非接触領域、N・・・定着ニップ部、P・・・記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラと、を備えたベルト駆動装置において、
前記複数の張架ローラのうちの少なくとも1個の張架ローラの軸方向端部に設けられ、前記ベルトの走行方向に交差する前記ベルトの幅方向端部と接触して、前記ベルトの幅方向の移動を規制するベルト規制部材を有し、
前記ベルト規制部材は、少なくとも、前記張架ローラの外周面に当接していない前記ベルトの幅方向端部が対向する部分の一部が、前記ベルトの幅方向端部から離間している、
ことを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
前記ベルト規制部材は、前記張架ローラの径方向に関し、前記張架ローラの外周面から所定の範囲に前記張架ローラの回転軸に直交する平面部を、前記平面部の径方向外側に前記平面部と連続して、径方向外側に向かうほど前記ベルトの幅方向端部から離れる方向に傾斜した傾斜部を、それぞれ有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記ベルト規制部材は、前記ベルトの幅方向端部に接離する方向に弾性変形可能で、
前記ベルト規制部材の、前記張架ローラの外周面に当接していない前記ベルトの幅方向端部が対向する部分の一部を、前記ベルトの幅方向端部から離れる方向に弾性変形させる退避部材を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
回転駆動される加熱部材と、前記加熱部材に当接してニップ部を形成する加圧部材と、複数の張架ローラに張架された無端状のベルトを前記加熱部材の表面に当接させることにより、前記加熱部材を外部から加熱する外部加熱装置と、を備え、前記ニップ部を通過する記録材を加熱する像加熱装置において、
前記外部加熱装置が、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載のベルト駆動装置である、
ことを特徴とする像加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−109206(P2013−109206A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254954(P2011−254954)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】