説明

ベルト

【課題】斜行が生じてもセンターベルトにブロックが食い込むのを防止することのできるベルトを提供する。
【解決手段】ベルト1は、センターベルト10と、センターベルト10のベルト長手方向に沿って並んで配置され、且つ、センターベルト10が嵌合される嵌合溝24をそれぞれ有する複数のブロック20とを備える。嵌合溝24は、センターベルト10のベルト幅方向端面に対向する対向面を有し、この対向面には、センターベルトのベルト幅方向端面側に突出する突出部25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターベルトと、このセンターベルトの長手方向に沿って並んで配置され、それぞれがセンターベルトに嵌合される複数のブロックとを備えるベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速装置に用いられるベルトなど、特に高負荷の伝動用のベルトとして、通常のゴムベルトを用いると寿命が短すぎるため、このような高負荷伝動用のベルトとしては、センターベルトに、複数のブロックをベルト長手方向に並ぶように取り付けた構成のベルトが用いられている(例えば、特許文献1参照)。センターベルトは、ベルト長手方向の張力を受け持つ役割を果たし、ブロックは、高硬度で剛性が高い材料で形成されており、プーリから受ける力に耐える役割を果たしている。
【0003】
特許文献1のベルトでは、ブロックとセンターベルトとは、ブロックに形成された嵌合溝にセンターベルトが嵌合されることによって固定されている。また、複数のブロックは、ベルトが屈曲できるように、隣接するブロック同士の間に隙間を空けるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−55344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のベルトの場合、走行が長期にわたるとセンターベルトとブロックとの嵌合が緩んでがたつきが発生して、ブロックが、センターベルトのベルト幅方向に対して傾いて走行する、所謂斜行が発生する場合がある。斜行が発生する理由は、上記のような嵌合の緩みだけでなく、例えば、ベルトが巻き掛けられるプーリが、固定プーリ片と、この固定プーリ片に対して軸方向に移動可能な可動プーリ片とから構成され、外周部に溝幅が可変のV溝を有するプーリである場合に、可動プーリ片を軸方向移動させるために設けられたクリアランス(隙間)が原因で可動プーリ片にがたつきが生じて、その結果、斜行が生じる場合がある。
【0006】
このような斜行が生じると、ブロックの嵌合溝の縁部が、センターベルトに食い込むため、センターベルトにクラックが生じて早期破断する場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、斜行が生じてもセンターベルトにブロックが食い込むのを防止することのできるベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
第1の発明のベルトは、センターベルトと、前記センターベルトのベルト長手方向に沿って並んで配置され、且つ、前記センターベルトが嵌合される嵌合溝をそれぞれ有する複数のブロックとを備えるベルトであって、前記嵌合溝が、前記センターベルトのベルト幅方向端面に対向する対向面を有し、前記対向面に突出部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、ブロックの前記対向面に突出部が形成されているため、ブロックの前記対向面のうち、突出部の突出先端部を除く領域と、センターベルトのベルト幅方向端面との間に隙間が形成される。そのため、ブロックがセンターベルトのベルト幅方向に対して傾いた状態でベルトが走行する斜行が生じた場合に、ブロックの対向面のベルト長手方向の縁部がセンターベルトのベルト幅方向端面に食い込むのを防止することができる。
【0010】
第2の発明のベルトは、前記第1の発明において、前記突出部は、その突出先端部と、前記対向面の前記ベルト長手方向の両縁部とをそれぞれ連結する2つの平坦な傾斜面を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によると、斜行が生じたときに、ブロックの対向面の縁がセンターベルトのベルト幅方向端面に食い込むのを防止しつつ、2つの傾斜面のうちの一方を、センターベルトのベルト幅方向端面に面接触させることができる。ブロックの傾斜面を、センターベルトのベルト幅方向端面に面接触させることにより、センターベルトのベルト幅方向端面に、突出部の突出先端部のみが当接している場合に比べて、センターベルトがブロックから受ける力を分散させることができるため、センターベルトが破損しにくくなると同時に、ブロックも破損しにくくなる。
【0012】
第3の発明のベルトは、前記第1又は前記第2の発明において、前記突出部の突出先端部が、前記対向面の前記ベルト長手方向の中央部に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、ブロックが、センターベルトのベルト幅方向に対してどちらの方向に傾いた場合であっても、ブロックの対向面のベルト長手方向の縁部がセンターベルトのベルト幅方向端面に食い込むのを確実に防止することができる。
【0014】
第4の発明のベルトは、前記第2の発明において、前記突出部の突出先端部が、前記対向面の前記ベルト長手方向の中央部からずれた位置に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、ブロックがセンターベルトのベルト幅方向に対していずれかの方向に傾きやすい場合に、2つの傾斜面のうち、この方向に傾いたときにセンターベルトのベルト幅方向端面に近接する側の傾斜面が大きくなるように、突出部の突出先端部を前記対向面のベルト長手方向の中央部からずれた位置に形成することにより、この傾斜面とセンターベルトのベルト幅方向端面とが面接触したときに、突出部の突出先端部が前記対向面のベルト長手方向の中央部に形成されている場合に比べて、センターベルトがブロックから受ける力をより分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るベルトを適用したベルト式変速装置の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るベルトの部分斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るベルトの部分側面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のVI−VI線断面図である。
【図6】斜行が生じた状態を示す、図5に相当する図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るベルトの部分断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るベルトの部分断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るベルトの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態のベルト1は、ベルト式無段変速装置50に用いられるベルトである。図1に示すように、ベルト式無段変速装置50は、それぞれ外周部に溝幅が可変のV溝が形成された駆動側変速プーリ51と従動側変速プーリ52とを有する。ベルト1は、V溝の両面で挟持された状態で両プーリ51、52に巻き掛けられる。
【0018】
駆動側変速プーリ51は、図示しないエンジン等の駆動装置に連結された入力軸51cと、この入力軸51cと一体化された固定プーリ片51aと、入力軸51cに軸方向に移動自在に取り付けられた可動プーリ片51bとを有する。従動側変速プーリ52は、出力軸52cと、この出力軸52cと一体化された固定プーリ片52aと、出力軸52cに軸方向に移動可能に取り付けられた可動プーリ片52bとを有する。可動プーリ片51b、52bは、それぞれ、図示しない溝幅調整装置によって固定プーリ片51a、52a側に駆動されるようになっている。
【0019】
このベルト式無段変速装置50では、可動プーリ片51b、52bを軸方向に移動させて、両プーリ51、52のベルト巻き掛け径を変化させることにより、入力軸51cと出力軸52cとの回転速度比を変化させることができる。例えば、図1(a)に示す状態から図1(b)に示す状態になるように、駆動側変速プーリ51の可動プーリ片51bを固定プーリ片51a側に駆動して、駆動側変速プーリ51のベルト巻き掛け径を大きくする。すると、ベルト周長は一定であるため、ベルト1から受ける力によって、従動側変速プーリ52の可動プーリ片52bが、固定プーリ片52aから離間する方向に移動して、従動側変速プーリ52のベルト巻き掛け径が小さくなる。これにより、入力軸51cに対する出力軸52cの回転速度比が大きくなる。
【0020】
図2に示すように、ベルト1は、平行に並んで配置される2つの無端状のセンターベルト10、10と、この2つのセンターベルト10、10に、ベルト長手方向に沿って所定ピッチで取り付けられた複数のブロック20とから構成されている。図1及び図4に示すように、ベルト1(詳細にはブロック20)の両側面のなす角度は、プーリ51、52のV溝の角度と同じになっている。なお、以下のベルト1の説明において、図2〜4中の上下方向を上下方向と定義して、センターベルト10のベルト幅方向及びベルト長手方向を、ベルト幅方向及びベルト長手方向と定義する。
【0021】
図2に示すように、センターベルト10は、心線12がスパイラル状に埋設されたゴム層11と、ゴム層11の上下両面を被覆するカバー帆布13とから構成されている。センターベルト10の上面(外周側の面)には、ベルト幅方向に延在する多数の凹部10aが、ベルト長手方向に所定の間隔で並んで形成されている。また、センターベルト10の下面(内周側の面)には、ベルト幅方向に延在する多数の凹部10bが、ベルト長手方向に関して凹部10aと同じ間隔で並んで形成されている。また、センターベルト10の両側面(ベルト幅方向両端面)は、平坦状に形成されており、センターベルト10のブロック20側の側面10cは、ベルト幅方向に直交している(図4参照)。
【0022】
ゴム層11は、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム等の単一材もしくはこれらを適宜ブレンドしたゴム、又は、ポリウレタンゴムで形成されている。
【0023】
心線12としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなるロープや、スチールワイヤ等が用いられる。なお、心線12の代わりに、上記の繊維からなる織布や編布、または金属薄板等をゴム層11内に埋設してもよい。
【0024】
カバー帆布13は、ベルト走行時にゴム層11がブロック20との摩擦により摩耗するのを防止するためのものである。カバー帆布13は、平織り、綾織り又は朱子織り等の織布であって、その繊維材料としては、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等が用いられる。
【0025】
図2及び図4に示すように、複数のブロック20は、全て同じ形状であって、ベルト長手方向に沿って並んで配置されている。隣接するブロック20の間には隙間が形成されている。ブロック20は、略平板状の部材から後述する2つの嵌合溝24を切欠いたような形状に形成されており、その両面が、ベルト長手方向に直交する向きになるように、2つのセンターベルト10、10に嵌合固定されている。図4に示すように、ブロックの側面20a、20bは、センターベルト10の側面10cと反対側の側面よりも外側に位置している。そのため、センターベルト10はV溝の表面とは接触せず、プーリ51、52から直接力を受けないようになっている。
【0026】
ブロック20は、上ビーム21と、下ビーム22と、これら上下ビーム21、22のベルト幅方向の中央部同士を連結するピラー23とから構成され、ベルト長手方向から見て略H状に形成されている。図3に示すように、下ビーム22のベルト長手方向の厚さは、下側ほど小さくなっている。ブロック20をこのような形状とすることによって、ベルト1をプーリ51、52に巻き掛けたときに、下ビーム22同士が緩衝することなくベルト1を屈曲させることができる。
【0027】
嵌合溝24は、上ビーム21の下面と、下ビーム22の上面と、ピラー23のベルト幅方向端面(以下、ピラー23の側面という。本発明の対向面に相当する。)とによって形成されており、この嵌合溝24にセンターベルト10が嵌め込まれている。嵌合溝24の上面には、センターベルト10の凹部10aに嵌合する凸部24aが形成されており、嵌合溝24の下面には、センターベルト10の凹部10bに嵌合する凸部24bが形成されている。凹部10aと凸部24a、及び、凹部10bと凸部24bの嵌合によって、ブロック20はセンターベルト10に固定されている。
【0028】
図5に示すように、嵌合溝24を構成するピラー23の側面には、センターベルト10の側面10c側に突出する突出部25が形成されている。突出部25は、鈍角状の突出先端と、ピラー23の側面のベルト長手方向の両縁部とをそれぞれ連結する2つの平坦な傾斜面25a、25aで構成されている。突出部25の突出先端は、センターベルト10の側面10cに接触しており、突出部25の突出先端を除く領域と、センターベルト10の側面10cとの間には、隙間が形成されている。なお、本実施形態では、突出部25の突出先端の形状は、鈍角状であるが、円弧状の曲面で面取りされた形状であってもよい。
【0029】
突出部25の突出先端は、ブロック20のベルト長手方向の中央部に位置している。また、2つの傾斜面25a、25aのベルト長手方向に対する傾斜角度α(図5参照)は、互いに同じである。傾斜角度αは、斜行時のブロック20のベルト幅方向に対する傾斜角度の最大値以下となるように設定されている。斜行時のブロック20のベルト幅方向に対する傾斜角度の最大値は、隣接するブロック20間の隙間や、2つのセンターベルト10間の距離等によって異なるが、例えば2〜15°程度であり、この場合、傾斜角度αは、2〜15°に設定される。また、傾斜角度αが15°であって、ピラー23の厚さ(ピラー23の側面のベルト長手方向長さ)が例えば2〜5mmの場合、突出部25の突出高さH(図5参照)は、例えば0.2〜0.7mmである。
【0030】
ブロック20は、樹脂組成物のみで構成されていてもよいが、アルミニウム合金等の金属やセラミック等で形成されたインサート材の表面に樹脂組成物を被覆したもので構成されていてもよい。樹脂組成物は、合成樹脂に、補強材や摩擦低減材等が配合されたものが用いられる。
【0031】
上記樹脂組成物を構成する合成樹脂としては、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂、特に、ポリアミド樹脂が好ましい。また、合成樹脂の代わりに、JIS‐A硬度90°以上の硬質ゴム、又は硬質ポリウレタンを用いてもよい。
【0032】
上記樹脂組成物に配合される補強材としては、例えば、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの繊維状補強材や、酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ等のウィスカ状補強材が挙げられる。これらの補強材を配合することによって、ブロック20の曲げ剛性等の強度を高めることができ、ウィスカ状補強材を用いた場合には、プーリ51、52との摩擦によるブロック20の摩耗を抑制することができる。また、ウィスカ状補強材を用いる場合には、センターベルト10がブロック20と接触する部分においてウィスカ状補強材によって摩耗するのを防止するために、ブロック20のセンターベルト10と接触する部分(嵌合溝24周辺部)を構成する樹脂組成物には、ウィスカ状補強材を配合しないことが好ましい。
【0033】
上記樹脂組成物に配合される摩擦低減材としては、例えば、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル(PFPE)等のフッ素樹脂や、二硫化モリブデン、グラファイト等が挙げられる。このような摩擦低減材を配合することにより、ブロック20とプーリ51、52との摩擦係数が低減されるため、ブロック20の摩耗を抑制することができる。
【0034】
ベルト1をベルト式無段変速装置50のプーリ51、52に巻き掛けて使用した場合、図6に示すように、ブロック20がセンターベルト10のベルト幅方向に対して傾いた状態でベルトが走行する斜行が発生する場合がある。なお、図6では、ブロック20はベルト幅方向に対して時計回りに傾いているが、その逆方向にも傾く。
【0035】
斜行の生じる原因のひとつとして、可動プーリ片51b、52bのがたつきが挙げられる。可動プーリ片51b、52bと軸51c、52cとの間には、可動プーリ片51b、52bを軸方向に移動させるためにクリアランス(隙間)が設けられている。このクリアランスが原因で、可動プーリ片51b、52bにがたつきが生じて、可動プーリ片51b、52bの軸方向が、固定プーリ片51a、52aの軸方向に対して傾き、その結果、斜行が発生する場合がある。
【0036】
斜行が生じる他の原因として、回転速度比を変化させる際の、駆動側変速プーリ51の可動プーリ片51bの軸方向移動のタイミングと、従動側変速プーリ52の可動プーリ片52bの軸方向移動のタイミングのずれが挙げられる。例えば、上述したように、入力軸51cに対する出力軸52cの回転速度比を大きくする場合には、駆動側変速プーリ51の可動プーリ片51bを固定プーリ片51a側に駆動させる。すると、ベルト周長が一定であるため、従動側変速プーリ52の可動プーリ片52bは、ベルト1から受ける力によって、固定プーリ片52aから離間する方向に移動される。従って、可動プーリ片51bと可動プーリ片52bの移動のタイミングに若干ずれが生じている。また、可動プーリ片51bの軸方向の移動に伴って、プーリ51のV溝幅が変化することにより、ベルト1のプーリ51に巻き掛けられている部分が軸方向に移動する。プーリ52においても同様である。そのため、可動プーリ片51b、52bの軸方向移動の際、ベルト1は、プーリ51とプーリ52との間の部分の進行方向(ベルト長手方向)が、プーリ51、52の軸方向に直交する方向に対して傾いた状態で走行する。その結果、斜行が生じる場合がある。なお、この斜行は回転速度比を変化させる際にのみに生じるものであって、回転速度比が一定になると解消される。
【0037】
また、ベルト走行が長期にわたると、ブロック20とセンターベルト10との嵌合が緩んでがたつきが生じて、斜行が発生する場合もある。
【0038】
ピラー23の側面とセンターベルト10の側面10cとが平行で且つほぼ密着している従来のベルトの場合、斜行が生じると、ピラー23の側面のベルト長手方向の縁部が、センターベルト10の側面10cに食い込む。その結果、センターベルト10にクラックが生じる場合がある。
【0039】
一方、本実施形態では、ピラー23の側面に突出部25が形成されているため、ピラー23の側面のベルト長手方向の両縁部と、センターベルト10の側面10cとの間には隙間が形成されており、そのため、斜行が生じた際に、ピラー23の側面の縁部が、センターベルト10の側面10cに食い込むのを防止できる。
【0040】
また、突出部25の突出先端が、ピラー23の側面のベルト長手方向の中央部に形成されているため、ブロック20が、センターベルト10のベルト幅方向に対してどちらの方向に傾いた場合であっても、ピラー23の側面の縁部が、センターベルト10の側面10cに食い込むのを確実に防止できる。
【0041】
また、突出部25が、その突出先端部と、ピラー23の側面のベルト長手方向の両縁部とをそれぞれ連結する2つの平坦な傾斜面25a、25aで形成されているため、一方の傾斜面25aを、センターベルト10の側面10cに面接触させることができる。傾斜面25aを、センターベルト10の側面10cに面接触させることにより、センターベルト10の側面10cに、突出部25の突出先端のみが当接している場合に比べて、センターベルト10がブロック20から受ける力を分散させることができるため、センターベルト10が破損しにくくなると同時に、ブロック20も破損しにくくなる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0043】
1]突出部25の突出先端の位置は、ピラー23のベルト長手方向の中央部に限定されるものではない。例えば、図7に示すように、ピラー23のベルト長手方向の中央部からずれた位置に、突出部125の突出先端が形成されていてもよい。ベルト式無段変速装置50の構成によっては、ブロック20がベルト幅方向に対していずれかの方向に傾きやすい場合がある。この場合、傾きが生じやすい方向にブロック20が傾斜したときに、2つの傾斜面125a、125bのうちセンターベルト10の側面に近接する側の傾斜面125bが大きくなるような位置に、突出部125の突出先端の位置を形成することが好ましい。これにより、この傾斜面125bとセンターベルト10の側面とが面接触したときに、突出部25の突出先端がピラー23のベルト長手方向の中央部に形成されている場合(図5、6参照)に比べて、センターベルト10がブロック20から受ける力をより分散させることができる。
【0044】
なお、この変更形態の場合、2つの突出部125の突出先端の位置は、ピラー23のベルト幅方向及びベルト長手方向に関する中央部を中心とした点対称(180°回転対称)となる位置に形成される。
【0045】
2]前記実施形態では、突出部25は、平坦な2つの傾斜面25a、25aで構成されているが、例えば、図8に示すように、円弧状の曲面のみで構成された突出部225であってもよい。
【0046】
3]前記実施形態では、突出部25は、ベルト長手方向に関して、ピラー23の側面全域にわたって形成されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、ベルト長手方向に関して、ピラー23の側面の一部に形成された突出部325であってもよい。この場合であっても、ピラー23の側面のベルト長手方向の両縁部と、センターベルト10の側面10cとの間には隙間が形成されているため、斜行が生じた際に、ピラー23の側面の縁部が、センターベルト10の側面10cに食い込むのを防止できる。
【0047】
なお、図9では、突出部325は、円弧状の曲面で構成されているが、鈍角状となるように2つの平面で構成されていてもよい。また、図9では、突出部325は、ベルト長手方向に関して、ピラー23の側面の中央部に形成されているが、中央部からずれた位置に形成されていてもよい。
【0048】
また、突出部が、ピラー23の側面の一部に形成されている場合、図9に示すように、ピラー23の側面のベルト長手方向の両縁部には、円弧状の曲面で面取りされた面取り部326が形成されていることが好ましい。これにより、ブロック20のベルト幅方向に対する傾きが大きい場合であっても、ピラー23の側面の縁部が、センターベルト10の側面10cに食い込むのをより確実に防止できる。
【0049】
4]前記実施形態では、ベルト1は、2つのセンターベルト10と複数のブロック20で構成されているが、1つのセンターベルト10と複数のブロック20で構成されていてもよい。この場合、ブロック20の側面、上面、又は下面に、センターベルト10が嵌合する嵌合溝が形成され、この嵌合溝のうち、センターベルト10の側面10cに対向する面に、突出部25が形成されている。また、ベルト1は、3つ以上のセンターベルト10と複数のブロック20で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ベルト
10 センターベルト
10a、10b 凹部
10c 側面
11 ゴム層
12 心線
13 カバー帆布
20 ブロック
20a、20b 側面
21 上ビーム
22 下ビーム
23 ピラー
24 溝部
24a、24b 凸部
25 突出部
25a 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターベルトと、
前記センターベルトのベルト長手方向に沿って並んで配置され、且つ、前記センターベルトが嵌合される嵌合溝をそれぞれ有する複数のブロックとを備えるベルトであって、
前記嵌合溝が、前記センターベルトのベルト幅方向端面に対向する対向面を有し、
前記対向面に突出部が形成されていることを特徴とするベルト。
【請求項2】
前記突出部は、その突出先端部と、前記対向面の前記ベルト長手方向の両縁部とをそれぞれ連結する2つの平坦な傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記突出部の突出先端部が、前記対向面の前記ベルト長手方向の中央部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト。
【請求項4】
前記突出部の突出先端部が、前記対向面の前記ベルト長手方向の中央部からずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149539(P2011−149539A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13245(P2010−13245)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)