説明

ベルト

【課題】ベルト走行時にセンターベルトとブロックとの嵌合部分に生じる熱を確実に外部に放散させる。
【解決手段】ベルト1は、センターベルト10と、センターベルト10のベルト長手方向に沿って所定の隙間を空けて配列され、センターベルト10がそれぞれ嵌合される複数のブロック20とを有し、ブロック20がVプーリのV溝対向面に挟持された状態でVプーリに巻き掛けられて使用される。ブロック20の外側端部および内側端部は、ベルト走行時にブロック20の外側端部または内側端部に沿って配列方向に流れる気流の方向を変化させて、隣接する2つのブロック20の間に気流を導くような形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターベルトと、このセンターベルトのベルト長手方向に沿って配列され、センターベルトがそれぞれ嵌合される複数のブロックとを有するベルトに関する。
【0002】
ベルト式無段変速装置に使用されるベルトなど、通常のゴムベルトでは耐久性が不足するような高負荷伝動用ベルトとして、センターベルトに、複数のブロックをベルト長手方向に配列させて取り付けた構成のベルトが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このベルトは、ブロックがVプーリのV溝対向面に挟持された状態でVプーリに巻き掛けられて使用される。ブロックは、ベルト進行方向の前後面が平行な略板状の部材であって、高硬度で剛性が高い材料で形成されており、Vプーリから受ける力に耐える役割を果たしている。センターベルトは、ベルト長手方向の張力を受け持つ役割を果たしている。ブロックとセンターベルトとは、ブロックに形成された嵌合溝にセンターベルトが嵌合されることによって固定されている。また、センターベルトのブロックに嵌合する部分は変形が規制されるため、ベルトが屈曲できるように、複数のブロックは隙間を空けて配列されている。
【0003】
センターベルトとブロックとは嵌合により固定されているため、このベルトを走行させた際、センターベルトとブロックとが微小に相対移動して、嵌合部分に摩擦が生じる。例えば、ブロックがVプーリに接触(衝突)するときや、ブロックがVプーリから抜け出すとき、また、ベルトが屈曲変形するときや、屈曲状態から元に戻るときに、ブロックとセンターベルトとの嵌合部分に摩擦が生じる。ベルト走行中は、このような摩擦を繰り返すため、嵌合部分において摩擦熱が発生する。この熱がベルト外部に放散されず蓄熱された状態で、長時間走行させると、センターベルトやブロックが劣化して、センターベルトが破断したり、ブロックが破損する場合がある。
【0004】
特許文献2には、ブロックとセンターベルトとの摩擦により発生した熱を外部に放散するために、ブロックの前後面に通気溝を設けたベルトが記載されている。通気溝は、センターベルトが嵌合される嵌合溝と、ブロックの内側端面(ベルト内周側の面)および外側端面(ベルト外周側の面)とを連通させるように形成されており、この通気溝によって、嵌合溝内の空気をベルトの外部の空気と入れ替えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−55344号公報
【特許文献2】特開2009−30803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のベルトの場合、ブロックは略板状であって、内側端面および外側端面は、ブロックの配列方向に沿った平坦状であるため、通気溝が端面に開口していても、ベルト走行時には、ベルトの外部の空気は複数のブロックの内側端面および外側端面に沿って流れ、ほとんど通気溝内に流入しない。そのため、ブロックとセンターベルトとの嵌合部分に生じた熱を十分に放散させることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、ベルト走行時にセンターベルトとブロックとの嵌合部分に生じる熱を確実に外部に放散させることのできるベルトを提供する。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
第1の発明のベルトは、センターベルトと、前記センターベルトのベルト長手方向に沿って所定の隙間を空けて配列され、前記センターベルトがそれぞれ嵌合される複数のブロックとを有し、前記ブロックがVプーリのV溝対向面に挟持された状態で前記Vプーリに巻き掛けられて使用されるベルトであって、前記複数のブロックのうち少なくとも一部のブロックは、外側端部または内側端部の形状が、ベルト走行時にブロックの外側端部または内側端部の表面に沿って配列方向に流れる気流の方向を変化させて、隣接する2つのブロック間に気流を導くような形状であることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、ベルト走行時、ブロックの外側端部または内側端部の表面に沿ってブロックの配列方向に流れる気流の一部は、隣接する2つのブロック間に導かれて、2つのブロックの間を通過して排出される。この空気の流れによって、ブロックとセンターベルトとの嵌合部分が擦れることにより発生する熱を、外部に放散することができる。なお、ブロックの外側端部とは、ベルトをVプーリに巻き掛けたときに、Vプーリの外周側の端部のことであって、ブロックの内側端部とは、Vプーリの内周側の端部のことである。
【0010】
第2の発明のベルトは、前記第1の発明において、前記少なくとも一部のブロックは、外側端部または内側端部に、前記配列方向に突出し、先端ほど厚みが小さくなる先細り状の突出部を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によると、ブロックに設けられた突出部の突出方向と同一方向にベルトを走行させると、この突出部によって、ブロックの外側端部または内側端部に沿って配列方向に流れる気流の方向を変えて、隣接する2つのブロック間に導くことができる。
【0012】
第3の発明のベルトは、前記第2の発明において、前記少なくとも一部のブロックは、外側端部と内側端部に、互いに逆方向に突出する前記突出部を有するブロックを含むことを特徴とする。
【0013】
この構成によると、ベルト走行方向がどちらの方向であっても、ブロックの外側端部に設けられた突出部の突出方向と、ブロックの内側端部に設けられた突出部の突出方向のいずれかが、ベルト走行方向と同一方向になるため、2つのブロックの間に空気を流入させることができる。
また、例えば、ブロックの外側端部に設けられた突出部の突出方向と反対方向にベルトを走行させた場合、隣接する2つのブロックの間に導入された気流は、外側端部の突出部によって、ブロックの外側端部の表面に沿って流れる気流の方向(ブロックの配列方向)に近い方向に変えられる。そのため、隣接する2つのブロックの間から空気をスムーズに排出させることができる。ブロックの内側端部に設けられた突出部の突出方向と反対方向にベルトを走行させた場合も、同様の効果を奏する。
また、ブロックの外側端部と内側端部の両方に突出部を有するため、外側端部と内側端部の一方にのみ突出部を有するブロックよりも重心バランスがよい。
【0014】
第4の発明のベルトは、前記第2または第3の発明において、前記少なくとも一部のブロックは、外側端部に前記配列方向の一方向に突出する前記突出部を有するブロックと、このブロックの前記一方向側に隣接して配置され、内側端部に前記配列方向の他方向に突出する前記突出部を有するブロックとを含んでいることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、例えば、ブロックの外側端部に設けられた突出部の突出方向と同一方向にベルトを走行させた場合、この突出部によって、ブロックの外側端部の表面に沿って流れる気流は方向が変えられて、隣接する2つのブロック(外側端部に突出部を有するブロックと、内側端部に突出部を有するブロック)の間に導かれる。内側端部に設けられた突出部の突出方向は、ベルト進行方向と反対方向であるため、外側端部に突出部を有するブロックと、内側端部に突出部を有するブロックとの間に導入された気流は、内側端部の突出部によって、ブロックの内側端部の表面に沿って流れる気流の向きに近い方向に変えられる。そのため、隣接する2つのブロックの間から空気をスムーズに排出させることができる。したがって、本発明の構成によると、2つのブロックの間にスムーズに流入させるとともに、この流入された空気を、スムーズに排出することができる。
また、ブロックの内側端部に設けられた突出部の突出方向と同一方向にベルトを走行させた場合、上述した場合と気流の向きが逆になるだけで、同様の効果を奏する。
【0016】
第5の発明のベルトは、前記第2〜第4のいずれかの発明において、前記複数のブロックは全て、外側端部と内側端部に、互いに逆方向に突出する前記突出部を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によると、ベルト走行方向がどちらの方向であっても、ベルトの全周において、ブロックの外側端部または内側端部の表面に沿ってベルト進行方向と反対方向に流れる気流の一部を、隣接する2つの突出部の間からスムーズに流入させて、この突出部と反対側に位置する隣接する2つの突出部の間からスムーズに排出させることができる。
【0018】
第6の発明のベルトは、前記第2〜第4のいずれかの発明において、前記複数のブロックは、外側端部に前記突出部を有する複数のブロックと、外側端部に前記突出部を有さず、且つ、外側端部が前記突出部よりも奥まった位置にあるブロックとを含んでおり、前記外側端部に突出部を有する2つのブロックの間に、前記外側端部に突出部を有しない1つまたは複数のブロックが配置されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によると、外側端部に突出部を有する2つのブロックの間に、外側端部が突出部よりも奥まった位置にある1つまたは複数のブロックが配置されるため、外側端部に突出部を有するブロックが隣接して配置された場合に比べて、隣接する2つの突出部の間の距離が大きくなる。したがって、ベルト走行時に、隣接する2つの突出部の間に多量の空気を流入させることができるため、隣接する2つのブロックの間により多くの空気を流入させることができ、より高い放熱効果が得られる。
【0020】
第7の発明のベルトは、前記第2〜第4および第6のいずれかの発明において、前記複数のブロックは、内側端部に前記突出部を有する複数のブロックと、内側端部に前記突出部を有さず、且つ、内側端部が前記突出部よりも奥まった位置にあるブロックとを含んでおり、前記内側端部に突出部を有する2つのブロックの間に、前記内側端部に突出部を有しない1つまたは複数のブロックが配置されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によると、内側端部に突出部を有する2つのブロックの間に、内側端部が突出部よりも奥まった位置にある1つまたは複数のブロックが配置されるため、内側端部に突出部を有するブロックが隣接して配置された場合に比べて、隣接する2つの突出部の間の距離が大きくなる。したがって、ベルト走行時に、隣接する2つの突出部の間に多量の空気を流入させることができるため、隣接する2つのブロックの間により多くの空気を流入させることができ、より高い放熱効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るベルトの部分斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るベルトの部分側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図であって、図中左方向にベルトを走行させた場合の図である。
【図5】図3のIV−IV線断面図であって、図中右方向にベルトを走行させた場合の図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るベルトの部分断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るベルトの部分断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るベルトの部分断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るベルトの部分断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るベルトの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のベルト1は、平行に並んで配置される2つの無端状のセンターベルト10と、この2つのセンターベルト10に、ベルト長手方向に沿って所定ピッチで取り付けられた複数のブロック20とから構成されている。図3に示すように、ベルト1は、Vプーリ50のV溝の対向面50aに挟持された状態でVプーリ50に巻き掛けられて使用される。ベルト1(詳細にはブロック20)の両側面のなす角度は、Vプーリ50のV溝の角度と同じになっている。
以下、図1〜5中の上下方向を上下方向と定義し、図1、2、4、5に示すベルト長手方向をベルト長手方向と定義し、図1、3に示すベルト幅方向をベルト幅方向と定義して、ベルト1について説明する。図1〜5中、ベルト1の上側が外周側であって、ベルト1の下側が内周側である。
【0024】
図1および図2に示すように、センターベルト10は、心線12がスパイラル状に埋設されたゴム層11と、ゴム層11の上下両面を被覆するカバー帆布13とから構成されている。センターベルト10の上面には、ベルト幅方向に延在する多数の凹部10aが、ベルト長手方向に所定の間隔で並んで形成されている。また、センターベルト10の下面には、ベルト幅方向に延在する多数の凹部10bが、ベルト長手方向に関して凹部10aと同じ間隔で並んで形成されている。
【0025】
ゴム層11は、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム等の単一材もしくはこれらを適宜ブレンドしたゴム、または、ポリウレタンゴムで形成されている。
【0026】
心線12としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなるロープや、スチールワイヤ等が用いられる。なお、心線12の代わりに、上記の繊維からなる織布や編布、または金属薄板等をゴム層11内に埋設してもよい。
【0027】
カバー帆布13は、ベルト走行時にゴム層11がブロック20との摩擦により摩耗するのを防止するためのものである。カバー帆布13は、平織り、綾織りまたは朱子織り等の織布であって、その繊維材料としては、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等が用いられる。
【0028】
図1および図2に示すように、複数のブロック20は、全て同じ形状であって、ベルト長手方向に沿って所定の隙間を空けて配列されている。ブロック20は、ベルト幅方向の両側に、2つのセンターベルト10がそれぞれ嵌合される2つの嵌合溝24を有する。図3に示すように、嵌合溝24に嵌合された状態のセンターベルト10の側面は、ブロックのベルト幅方向の側面20a、20bよりも奥まった位置にある。そのため、センターベルト10はV溝対向面50aに接触せず、ブロック20のみがV溝対向面50aに接触して力を受けるようになっている。
【0029】
図1および図3に示すように、ブロック20は、上ビーム21と、下ビーム22と、これら上下ビーム21、22のベルト幅方向の中央部同士を連結するピラー23とから構成され、ベルト長手方向から見て略H状に形成されている。また、図2および図4に示すように、ブロック20は、ベルト幅方向から見てS字状に形成されている。ブロック20の上下両端部(後述する突出部21a、22a)を除く部分は、ベルト長手方向に直交する平板状に形成されている。
【0030】
嵌合溝24は、上ビーム21の下面と、下ビーム22の上面と、ピラー23のベルト幅方向端面とによって形成されている。嵌合溝24の上面には、センターベルト10の凹部10aに嵌合する凸部24aが形成されており、嵌合溝24の下面には、センターベルト10の凹部10bに嵌合する凸部24bが形成されている。凹部10aと凸部24a、および、凹部10bと凸部24bの嵌合によって、ブロック20はセンターベルト10に固定されている。
【0031】
図2および図4に示すように、上ビーム21の上側略半分は、ベルト長手方向(ブロック20の配列方向)の一方向(図2および図4中の右方向)に向かって突出し、先端ほど厚みが小さくなる先細り状の突出部21aで構成されている。また、下ビーム22の下側略半分は、突出部21aと反対方向に向かって突出し、先端ほど厚みが小さくなる先細り状の突出部22aで構成されている。図1および図3に示すように、突出部21a、22aは、ベルト幅方向両端が面取りされている。これにより、ベルト走行時に、突出部21a、22aがVプーリ50のV溝対向面50aに引っかからないようになっている。
【0032】
下ビーム22の突出部22aを除く部分は、ベルト長手方向の厚さが下側ほど小さくなっている。これにより、ベルト1を屈曲させたときに、隣接する突出部22a同士が緩衝するのを防止している。また、突出部22a自体の形状(厚さやベルト長手方向長さ等)も、屈曲時に隣接する突出部22a同士が緩衝しないように形成されている。
【0033】
ブロック20は、樹脂組成物のみで構成されていてもよいが、アルミニウム合金等の金属やセラミック等で形成されたインサート材の表面に樹脂組成物を被覆したもので構成されていてもよい。樹脂組成物としては、合成樹脂に、補強材や摩擦低減材等が配合されたものが用いられる。
【0034】
上記樹脂組成物を構成する合成樹脂としては、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂、特に、ポリアミド樹脂が好ましい。また、合成樹脂の代わりに、JIS‐A硬度90°以上の硬質ゴム、または硬質ポリウレタンを用いてもよい。
【0035】
上記樹脂組成物に配合される補強材としては、例えば、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの繊維状補強材や、酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ等のウィスカ状補強材が挙げられる。これらの補強材を配合することによって、ブロック20の曲げ剛性等の強度を高めることができ、ウィスカ状補強材を用いた場合には、プーリとの摩擦によるブロック20の摩耗を抑制することができる。また、ウィスカ状補強材を用いる場合には、センターベルト10がブロック20と接触する部分においてウィスカ状補強材によって摩耗するのを防止するために、ブロック20のセンターベルト10と接触する部分(嵌合溝24周辺部)を構成する樹脂組成物には、ウィスカ状補強材を配合しないことが好ましい。
【0036】
上記樹脂組成物に配合される摩擦低減材としては、例えば、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル(PFPE)等のフッ素樹脂や、二硫化モリブデン、グラファイト等が挙げられる。このような摩擦低減材を配合することにより、ブロック20とプーリとの摩擦係数が低減されるため、ブロック20の摩耗を抑制することができる。
【0037】
次に、ベルト1をVプーリ50に巻き掛けて、Vプーリ50の回転により走行させた場合について説明する。
【0038】
ベルト走行時には、ブロック20がVプーリ50に接触(衝突)するときや、ブロック20がVプーリ50から抜け出すときや、ベルト1が屈曲するときや、屈曲状態から元に戻るときに、ブロック20とセンターベルト10とが微小に相対移動して嵌合部分に摩擦が生じる。この摩擦を繰り返すことにより、ブロック20とセンターベルト10との嵌合部分に熱が発生する。
【0039】
図4に示すように、ベルト進行方向が、下ビーム22の突出部22aの突出方向、即ち、図4中左方向となるようにベルト1をVプーリ50に巻き掛けて走行させた場合、ベルト1の表面に沿って右方向に流れる気流が生じる。下ビーム22の下端に、左方向に突出する先細り状の突出部22aが設けられているため、ベルト1の下面(内周面)に沿って右方向に流れる気流は、突出部22aの突出先端によって、右斜め上方向の流れと、右方向の流れに分岐される。つまり、突出部22aによって、ベルト1の下面(ブロックの内側端部の表面)に沿って右方向に流れる気流の方向を、右斜め上方向に変化させて、2つのブロック20の間に気流を導くことができる。
さらに、突出部22aの右側部分が緩やかに右斜め上に傾斜しているため、ベルト1の下面(内周面)に沿って右方向に流れる気流の一部を、よりスムーズに2つのブロック20の間に導くことができる。
【0040】
隣接する2つの突出部22aのベルト幅方向の略中央部から流入した空気は、2つのブロック20の間を上向きに通過して、2つのブロック20の上端部(突出部21a)の間から排出される。また、隣接する2つの突出部22aのベルト幅方向の端部付近から流入した空気は、センターベルト10の下面と衝突した後、一部は、2つのブロック20の側面部の間から排出され、残りは、ベルト幅方向略中央部を流れる気流に合流して2つのブロック20の上端部(突出部21a)の間から排出される。
【0041】
ここで、従来のベルトのように、上ビーム21に突出部21aが設けられておらず、上ビーム21の上端部が上下方向に延在し、その先端が上下方向に直交する平坦面である場合(図6のブロック120の上ビームの上端部参照)、隣接する2つの上ビーム21の上端の間から排出される気流の向きは上向きであって、ベルト1の上面(外周面)に沿って流れる気流の向きと直交しているため、スムーズに排出されない。
一方、本実施形態では、上ビーム21の上端に、右方向に突出し、且つ、左側の面が右斜め上に傾斜している突出部21aを有する。隣接する2つの突出部21aの間を流れる気流の向きは、右斜め上方向であって、ベルト1の上面(外周面)に沿って流れる気流の向きに近いため、隣接する2つのブロック20の上端部の間から空気をスムーズに排出することができる。
【0042】
このように、ベルト1の内周側から隣接する2つのブロック20の間に流入した空気は、ベルト1の外周側または側面側から排出される。この空気の流れによって、ブロック20とセンターベルト10との嵌合部分に生じる熱を、外部に放散することができる。その結果、センターベルト10およびブロック20の熱劣化を防止することができる。
【0043】
また、図5に示すように、ベルト進行方向が、上ビーム21の突出部21aの突出方向、即ち、図5中右方向となるようにベルト1をVプーリ50に巻き掛けて走行させた場合、ベルト1の表面に沿って左方向に流れる気流が生じる。したがって、図4に示す場合とは逆に、ベルト1の上面(外周面)に沿って流れる空気が、隣接する2つの突出部21aの間から流入して、隣接する2つの突出部22aの間または隣接する2つのブロック20の側面部の間から排出される。この空気の流れによって、ブロック20とセンターベルト10との嵌合部分に生じる熱を、外部に放散することができる。その結果、センターベルト10およびブロック20の熱劣化を防止することができる。
【0044】
複数のブロック20は、上端部と下端部に、互いに逆向きに突出する突出部21a、22aを有するため、ベルト進行方向がどちらの方向になっても、ベルト1の全周において、ベルト1の表面に沿って流れる気流の一部を、隣接する2つの突出部の間からスムーズに流入させて、この突出部と反対側に位置する隣接する2つの突出部の間からスムーズに排出させることができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。なお、上記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0046】
1]上記実施形態では、複数のブロック20は、上下両端部(外周側端部と内周側端部)に突出部21a、22aを有しているが、例えば図6に示すベルト101のように、上下端部のいずれか一方しか突出部を有していなくてもよい。上下端部のいずれか一方に突出部を有していれば、ベルトの進行方向と突出部の突出方向とが一致するようにベルトをVプーリ50に巻き掛けることにより、上記実施形態と同様に、隣接する2つの突出部の間にスムーズに空気を流入させることができる。
【0047】
この変更形態の場合、突出部を有しない端部の形状は、図6に示すブロック120の上端部のように、先端が上下方向に直交する平坦状であってもよいが、図7に示すベルト201のブロック220の上端部のように、突出部22aの突出方向と反対側部分(図7中の左側部分)が、円弧状に面取りされていてもよい。この構成によると、図6の場合に比べて、隣接する2つのブロック120の突出部を有しない端部の間からスムーズに空気を排出することができる。
【0048】
2]上記実施形態では、複数のブロック20は全て突出部21a、22aを有しているが、複数のブロックのうち一部のブロックは、突出部21aまたは突出部22aを有していなくてもよい。
例えば、図8に示すベルト301のように、ブロック20と、上下両端部に突出部を有しないブロック320とが交互に配置されていてもよい。ブロック320の上下端部は、ブロック20の突出部21a、22aよりも奥まった位置にある。この構成によると、上記実施形態に比べて、隣接する2つの突出部21a(または22a)の間の距離が大きく、隣接する2つの突出部の間に多量の空気を流入させることができる。これにより、隣接するブロック20、320の間により多くの空気を流入させることができ、より高い放熱効果が得られる。
また、例えば、図9に示すベルト401のように、上端部に突出部21aを有し、下端部に突出部を有しないブロック420aと、下端部に突出部22aを有し、上端部に突出部を有しないブロック420bとが交互に配置されていてもよい。ブロック420bの上端面は、ブロック420aの突出部21aよりも奥まった位置にあり、ブロック420aの下端面は、ブロック420bの突出部22aよりも奥まった位置にある。この構成によると、図8に示すベルト301と同様に、隣接するブロック420a、420b間により多くの空気を流入させることができ、高い放熱効果が得られる。
なお、ブロック420a、420bに比べて、上述のベルト301の各ブロック320、20の方が重量バランスが良いため、この点では、ベルト301の方がベルト401よりも好ましい。
【0049】
また、図8では、突出部21a、22aを有するブロック20と、突出部を有しないブロック320とが交互に配置されているが、2つのブロック20の間に、2つ以上のブロック320が配置されてもよい。この構成によると、2つのブロック20の間に配置されるブロック320の数にもよるが、交互に配置した場合とほぼ同様に、高い放熱効果が得られる。
また、図9のブロック420a、420bについても同様に、必ずしも交互に配置されていなくてもよい。例えば、2つのブロック420aの間に、2つ以上のブロック420bが配置されてもよい。
【0050】
また、図8および図9のように、突出部を有しない端部と突出部とがベルト長手方向に隣接して配置される構成のベルトの場合、突出部の形状は、ベルト長手方向に突出する先細り状でさえあれば、図8および図9に示すような形状に限定されない。例えば、図10に示すベルト501のブロック520の上下端部を構成する突出部521a、522aのような形状でもよい。ブロック520の下ビームの下側略半分を構成する突出部522aは、図中左方向に突出し、先端ほど厚みが小さくなる先細り状であるとともに、突出方向と反対側の部分(図中右側部分)が上下方向に延在している。この場合でも、上記実施形態と同様に、ベルトの内周面に沿って右方向に流れる気流の一部を、突出部522aの突出先端により方向を変えさせて、隣接する2つの突出部522aの間に導くことができる。また、ブロック520の上ビームの上側略半分を構成する突出部521aは、突出部522aを180°回転させたような形状であり、突出部522aと同様の効果を奏する。
【0051】
3]ブロック20の上下端部の形状は、ベルト走行時にベルト1の外周面または内周面に沿って流れる気流の方向を変化させて、隣接する2つのブロック20の間に気流を導くことができる形状であれば、突出部21a、22aでなくてもよい。例えば、図7に示すブロック220の上端部のように、ベルト長手方向の一端が円弧状に面取りされた形状であってもよい。
【0052】
4]上記実施形態では、ベルト1は、2つのセンターベルト10と複数のブロック20で構成されているが、1つのセンターベルトと複数のブロックで構成されていてもよい。この場合、ブロック20の側面か、上下面に形成された嵌合溝に、センターベルト10が嵌合される。また、ベルト1は、3つ以上のセンターベルトと複数のブロックで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1、101、201、301、401、501 ベルト
10 センターベルト
20、120、220、320、420a、420b、520 ブロック
21 上ビーム
21a、521a 突出部
22 下ビーム
22a、522a 突出部
23 ピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターベルトと、前記センターベルトのベルト長手方向に沿って所定の隙間を空けて配列され、前記センターベルトがそれぞれ嵌合される複数のブロックとを有し、前記ブロックがVプーリのV溝対向面に挟持された状態で前記Vプーリに巻き掛けられて使用されるベルトであって、
前記複数のブロックのうち少なくとも一部のブロックは、外側端部または内側端部の形状が、ベルト走行時にブロックの外側端部または内側端部に沿って配列方向に流れる気流の方向を変化させて、隣接する2つのブロック間に気流を導くような形状であることを特徴とするベルト。
【請求項2】
前記少なくとも一部のブロックは、外側端部または内側端部に、前記配列方向に突出し、先端ほど厚みが小さくなる先細り状の突出部を有することを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記少なくとも一部のブロックは、
外側端部と内側端部に、互いに逆方向に突出する前記突出部を有するブロックを含むことを特徴とする請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
前記少なくとも一部のブロックは、
外側端部に前記配列方向の一方向に突出する前記突出部を有するブロックと、
このブロックの前記一方向側に隣接して配置され、内側端部に前記配列方向の他方向に突出する前記突出部を有するブロックとを含んでいることを特徴とする請求項2または3に記載のベルト。
【請求項5】
前記複数のブロックは全て、外側端部と内側端部に、互いに逆方向に突出する前記突出部を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のベルト。
【請求項6】
前記複数のブロックは、
外側端部に前記突出部を有する複数のブロックと、
外側端部に前記突出部を有さず、且つ、外側端部が前記突出部よりも奥まった位置にあるブロックとを含んでおり、
前記外側端部に突出部を有する2つのブロックの間に、前記外側端部に突出部を有しない1つまたは複数のブロックが配置されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のベルト。
【請求項7】
前記複数のブロックは、
内側端部に前記突出部を有する複数のブロックと、
内側端部に前記突出部を有さず、且つ、内側端部が前記突出部よりも奥まった位置にあるブロックとを含んでおり、
前記内側端部に突出部を有する2つのブロックの間に、前記内側端部に突出部を有しない1つまたは複数のブロックが配置されていることを特徴とする請求項2〜4、6のいずれかに記載のベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−214625(P2011−214625A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81865(P2010−81865)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)