説明

ベルマウスの取付構造、ベルマウスと地中箱との固定構造および地中箱へのベルマウスの取付方法

【課題】 あらかじめベルマウスが接続され管路を埋設して置き、必要に応じてハンドホール等の地中箱に接続が可能であり、管路内部に土砂等の侵入を防止可能なベルマウスの取付構造等を提供する。
【解決手段】 保護管3は、内部にケーブル等が挿通される管体であり、例えば、可撓性を有する樹脂管が適用可能である。ベルマウス7は、筒状部材であり、一方の端部にベル状に広がった形状が設けられる。継手5は、保護管3およびベルマウス7が挿入可能な筒状部材である。継手7の一方の端部には保護管3の端部が挿入されて固定される。継手5の他方の端部には、ベルマウス7が挿入される。ベルマウス7と継手5との間には、シール部材9a、9bが設けられる。シール部材9aは、継手5のベルマウス7が挿入される側の端部近傍に設けられる。ベルマウス7は、継手5に対して継手5の軸方向に対して移動が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性に優れ、必要に応じてハンドホールへの管路の増設が可能な、ベルマウスの取付構造、ベルマウスと地中箱との固定構造および地中箱へのベルマウスの取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブル等のケーブル類を敷設する場合、ケーブル類を敷設し、また点検するために、所定間隔ごとにハンドホール等が設けられる。ハンドホールは主にコンクリート等からなり、ケーブルの引き込み等のためにケーブル保護管の端部にはベルマウスが設置される。
【0003】
通常、ケーブル保護管は、ケーブル経路にケーブル保護管を敷設後、ケーブル保護管の端部にベルマウスを接続し、ベルマウスをハンドホールに接続した後に、ケーブル保護管が埋設される。したがって、ケーブル保護管の敷設と、ハンドホールへのケーブル保護管の接続が略同じタイミングで行われる。このような場合、管路の増設の際には、都度管路敷設部を開削する必要があるため、作業性が極めて悪い。
【0004】
しかし、電線共同溝工事等の場合、あらかじめ道路部分の地下に地中箱を設置しておき、あとから家などが建てられた際に、家と地中箱を繋ぐ管路を敷設する場合がある。地中箱を設置する際には、接続する管路の本数が明確でないため、あらかじめベルマウスを接続しておくことは好ましくない。
【0005】
このようなハンドホールへのケーブル保護管の接続方法としては、例えば、特殊部の内壁面に凹部を設け、凹部をパンチアウトして貫通孔とすることで、ベルマウスを貫通孔に固定する方法がある(特許文献1)。
【0006】
また、ハンドホールの周壁から突出しないように管継手取付用短管を埋設しておき、管継手取付用短管における管継手の装着部の開口部には開口部を閉塞する蓋体を形成しておき、ハンドホールを埋設後、管路を開削し、蓋体を取り外して管継手等を接続する方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−331612号公報
【特許文献2】特開2001−359211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、管路を敷設する業者が、地中箱の管理者と異なる場合、管路敷設者が任意に地中箱に穴を開けることはできない場合がある。
【0009】
したがって、特許文献1、2のような方法では、管路の敷設とハンドホール等への接続を別々で行う必要があり、また、あらかじめベルマウスが取り付けられた管路を敷設しておき、その後にハンドホール等の管理者により接続工事を行うとすると、その間にベルマウスから土や水が保護管内に入ってしまう恐れがある。このため、管路の敷設とハンドホール等への接続を別々で行い、管路の接続時には、ハンドホール等の管理者のみにより接続工事が可能であり、この際、保護管への土砂の浸入を防ぐことが可能な方法が望まれている。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、あらかじめベルマウスが接続された管路を埋設しておき、必要に応じてハンドホール等の地中箱に接続が可能であり、管路内部に土砂等の浸入を防止することが可能なベルマウスの取付構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために第1の発明は、ケーブル挿通用の保護管と、前記保護管の端部が一方の側より挿入される継手と、前記継手の他方の側より挿入されるベルマウスと、を具備し、前記ベルマウスと前記継手との間には、少なくとも二か所にシール部材が設けられ、前記シール部材の一つは、前記ベルマウスが挿入される側の前記継手の端部近傍に設けられて最前部シール部を形成し、前記ベルマウスが前記継手に対して軸方向に移動可能であることを特徴とするベルマウスの取付構造である。
【0012】
前記ベルマウスは地中箱の外方に設置され、前記地中箱の壁部に対向するように配置されてもよい。前記地中箱の壁部には、壁厚の薄い薄壁部が形成され、前記ベルマウスが前記薄壁部に対向するように配置されてもよい。
【0013】
前記最前部シール部から、軸方向に最も遠い位置の前記シール部材までの距離が、前記壁部の厚さよりも長いことが望ましい。また、少なくとも二か所にシール部材を設けることに代えて、シール部材を一体で形成し、前記ベルマウスは地中箱の外方に設置され、前記地中箱の壁部に対向するように配置され、前記シール部材の軸方向に対する一方の端部が、前記ベルマウスが挿入される側の前記継手の端部近傍に位置して、最前部シール部を形成し、前記シール部の一方の端部から他方の端部までの距離を、前記壁部の厚さよりも長くてもよい。
【0014】
前記継手の内周面には螺旋溝が形成され、前記ベルマウスは、前記継手と螺合していてもよい。
【0015】
前記ベルマウスの外周には、径方向に突出した突起部が形成されてもよい。
【0016】
第1の発明によれば、ベルマウスと保護管とが継手を介して接続されており、ベルマウスと継手との間にはシール部材が形成されるため、継手とベルマウスのとの隙間から保護管等の内部に土や水が浸入することがない。特に、少なくとも二か所のシール部材の内、一つのシール部材が、ベルマウスが挿入される側の継手端部近傍に設けられるため、ベルマウスと継手との隙間にも、土や水の侵入がない。
【0017】
また、ベルマウスは継手に対してスライド移動可能であるため、ベルマウスを継手にから引き抜く方向に移動させることができる。なお、この際、継手とベルマウスとの隙間には土等が浸入していないため、ベルマウスの移動が妨げられることがない。
【0018】
また、地中箱の壁面に薄壁部が形成され、ベルマウスの端部が薄壁部に対向するように配置されることで、地中箱の内部から薄壁部に孔を形成した際に、ベルマウスを地中箱内部に容易に露出させることができる。
【0019】
また、継手に対するベルマウスの挿入代が壁部(薄壁部を有する場合には薄壁部)の厚さよりも長ければ、ベルマウスを薄壁部の厚さ分だけ地中箱方向に移動させても、ベルマウスが完全に継手より抜け落ちることがない。また、最前部シール部から軸方向に最も遠いシール部材までの長さが、薄肉部の厚さよりも長ければ、ベルマウスを継手より薄壁部の厚さ分だけ地中箱方向に移動させても、ベルマウスと継手との間にシール部材が残るため、継手とベルマウスとの隙間への土や水の浸入を防止することができる。
【0020】
また、継手とベルマウスとが螺合していれば、継手に対するベルマウスの軸方向への移動が容易であり、また、ベルマウスの移動量の調整が容易である。なお、この場合には、シール部材として、螺旋パッキンを用いればよい。
【0021】
また、ベルマウスの外周に径方向に突出する突起部が形成されれば、ベルマウスを地中箱の壁部に配置して固定部材で充填した際に、ベルマウスの軸方向の移動が固定部材により規制される。したがって、ベルマウスが地中箱内方へ抜けることがない。
【0022】
第2の発明は、第1の発明にかかるベルマウスの取付構造に対し、前記ベルマウスを前記継手から突出させ、前記ベルマウスが地中箱の前記壁部または壁部の薄壁部に設けられた孔に挿入された状態で、前記ベルマウスと前記孔との間に、固定部材が充填されることを特徴とするベルマウスと地中箱との固定構造である。
【0023】
第2の発明によれば、継手とベルマウスとの隙間への土や水等の浸入が防止可能であり、また、ベルマウスが設けられた孔に対して固定部材が充填されるため、ベルマウスが確実に固定部材で地中箱に固定される。
【0024】
第3の発明は、ケーブル挿通用の保護管の端部およびベルマウスの端部が両側方から継手に挿入され、前記ベルマウスと前記継手との間には少なくとも二か所にシール部材が設けられ、前記ベルマウスが挿入される側の前記継手の端部近傍に前記シール部材の一つが設けられることにより最前部シール部が形成されたベルマウスの取付構造を、地中箱の壁部の外方に、前記ベルマウスが前記壁部に対向するように配置した後、前記ベルマウスの取付構造を埋設し、前記壁部を前記地中箱内部より削孔して孔を形成し、前記孔より、前記ベルマウスを前記継手に対して前記地中箱の方向に移動させ、前記ベルマウスを前記孔の内部に配置し、この際、前記ベルマウスと前記継手との間は、少なくとも、前記最前部シール部から最も遠い位置に配置されていたシール部材でシールされており、前記ベルマウスと前記孔との間に固定部材を充填することを特徴とする地中箱へのベルマウスの取付方法である。
【0025】
第3の発明によれば、ベルマウスが取り付けられたケーブル保護管を埋設した後に、地中箱の内方からベルマウスを地中箱の壁部に配置可能である。また、この際、保護管等の内部に土や水が浸入することがない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、あらかじめベルマウスが接続された管路を埋設しておき、必要に応じてハンドホール等の地中箱に接続が可能であり、管路内部に土砂等の浸入を防止することが可能なベルマウスの取付構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ベルマウス取付構造1を示す図。
【図2】ベルマウスの動作を示す図であり、(a)はベルマウス取付構造1におけるベルマウスの移動を示す図、(b)はベルマウス取付構造1aを示す図、(c)はベルマウス取付構造1aにおけるベルマウスの移動を示す図。
【図3】ベルマウス取付構造1をハンドホール11に設置した状態を示す図。
【図4】ベルマウス取付構造1近傍の拡大図。
【図5】ハンドホール11へのベルマウス7の設置方法を示す図。
【図6】ハンドホール11へのベルマウス7の固定方法を示す図。
【図7】(a)はベルマウス取付構造20を示す図、(b)はベルマウス取付構造20におけるベルマウスの移動を示す図。
【図8】(a)はベルマウス取付構造30を示す図、(b)はベルマウス取付構造30におけるベルマウスの移動を示す図。
【図9】(a)はベルマウス取付構造40を示す図、(b)はベルマウス取付構造40におけるベルマウスの移動を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、保護管へのベルマウスの取付構造である、ベルマウス取付構造1を示す図である。ベルマウス取付構造1は、保護管3、継手5、ベルマウス7等から構成される。
【0029】
保護管3は、内部にケーブル等が挿通される管体であり、例えば、可撓性を有する樹脂管が適用可能である。ベルマウス7は、筒状部材であり、一方の端部がベル状に広がった形状を有する。ベルマウス7は、一方の開口部がベル状であるため、ケーブル等を挿入する際に引っ掛ることがない。
【0030】
なお、ベルマウス7の他方側(ベル状ではない側)の内径と、保護管3の内径とは略一致することが望ましい。そうすることで、ベルマウス7および保護管3内にケーブルを挿通する際に、ケーブルの端部がベルマウス7あるいは保護管3の端部に引っ掛かることがない。
【0031】
継手5は、保護管3およびベルマウス7が挿入可能な筒状部材である。継手5の一方の端部には保護管3の端部が挿入されて固定される。なお、図示を省略するが、保護管3の外面と継手5の内面との間には土や水の浸入を防ぐためのシール部材が設けられる。シール部材としては、不織布やゴムパッキン等が用いられる。
【0032】
継手5の他方の端部(保護管3が挿入される側とは反対側の端部)には、ベルマウス7が挿入される。この際、ベルマウス7のベル状部分を除く部位は、略全長にわたり、継手5内部に挿入される。すなわち、ベルマウス7は、ベル状部分を継手5の外部に露出させた状態で、継手5の内部に挿入される。
【0033】
ベルマウス7と継手5との間には、Oリング等のシール部材9a、9bが設けられる。シール部材9a、9bは、継手5とベルマウス7との隙間に土や水が浸入することを防止するためのものである。シール部材9a、9bとしては、たとえばベルマウス7の外周に溝を形成しておき、溝にOリング等を嵌めればよい。シール部材9a、9bはベルマウス7側に固定されることが望ましい。
【0034】
シール部材9aは、継手5のベルマウス7が挿入される側の端部近傍に設けられる。すなわち、継手5の最前部(ベルマウス挿入側)にシール部材9aを設けることで(すなわち、最前部シール部を形成することで)、継手5とベルマウス7との隙間への土砂等の浸入を確実に防止することができる。
【0035】
シール部材9bは、シール部材9aとは所定の距離をおいて設けられる。シール部材9bの機能については後述する。なお、シール部材としては、最前部シール部を形成するシール部材に加え、少なくとも一つのシール部材が必要である。すなわち、図1に示す例では、シール部材9a、9bの二つのシール部材を設けた例を示すが、二か所以上にシール部材が設けられればよい。
【0036】
次に、ベルマウス取付構造1の動作について説明する。図2(a)は、ベルマウスの取付構造1の動作を示す図である。前述の通り、保護管3は、継手5内に挿入されて、図示を省略したシール部材で固定される。一方、ベルマウス7は、継手5に対して継手5の軸方向に対して移動が可能である。すなわち、ベルマウス7は、継手5に対して、継手5から引き抜かれる方向(図中矢印A方向)に移動が可能である。この際、ベルマウス7は継手に対し回転させることなくまっすぐに移動することが可能である。
【0037】
この際、シール部材9a(最前部シール部)が形成されるため、継手5とベルマウス7との隙間には土砂等の浸入がない。このため、ベルマウス7を容易に引き抜く(移動させる)ことができる。なお、ベルマウス7を所定量引き出すと、シール部材9aはベルマウス7の移動に伴い、継手5の外部に露出する。一方、シール部材9bは継手5とベルマウスの7との間に位置し、継手5とベルマウス7との隙間への土砂等の浸入を防止することができる。なお、ベルマウス7の引き出し量については後述する。
【0038】
図2(b)は、他の実施形態を示す図であり、ベルマウス取付構造1aを示す図である。ベルマウス取付構造1aは、ベルマウス取付構造1と異なり、保護管3と継手5との間にも、ベルマウス7と継手5との間のシール部材と同様のシール部材9c、9dが形成される。すなわち、保護管3と継手5とは固定されておらず、継手5は保護管3に対して軸方向に移動が可能である。
【0039】
シール部材9c、9dとしては、たとえば保護管3の外周に溝を形成しておき、溝にOリング等を嵌めればよい。シール部材9c、9dは保護管3側に固定されることが望ましい。
【0040】
シール部材9dは、継手5の保護管3が挿入される側の端部近傍に設けられる。すなわち、継手5の最後部(保護管挿入側)にシール部材9dを設けることで(すなわち、最後部シール部を形成することで)、継手5と保護管3との隙間への土砂等の浸入を確実に防止することができる。シール部材9cは、シール部材9dとは所定の距離をおいて設けられる。なお、継手5と保護管3とのシール部材としても、少なくとも二か所にシール部材が設けられればよい。
【0041】
図2(c)は、ベルマウスの取付構造1aの動作を示す図である。ベルマウス取付構造1と同様に、ベルマウス7は、継手5に対して継手5の軸方向に対して移動が可能である。すなわち、ベルマウス7は、継手5に対して、継手5から引き抜かれる方向(図中矢印A方向)に移動が可能である。また、ベルマウス取付構造1aでは、継手5も保護管3に対して移動可能である。したがって、継手5は、保護管3に対して、保護管3から引き抜かれる方向(図中矢印B方向)に移動可能である。
【0042】
この際、シール部材9d(最後部シール部)が形成されているため、継手5と保護管3との隙間には土砂等は浸入していない。このため、継手5を容易に引き抜く(移動させる)ことができる。なお、継手5を所定量引き抜くと、シール部材9dは継手5の移動に伴い、継手5の外部に露出する。一方、シール部材9cは継手5と保護管3との間に位置し、継手5と保護管3との隙間への土砂等の浸入を防止することができる。
【0043】
したがって、地中箱へのベルマウス接続前の状態では、全体長さを小さくすることができ、継手5およびベルマウス7のそれぞれを保護管3の軸方向に移動させ、保護管3が固定された状態においては、ベルマウス取付構造の全長をより長く(保護管3からベルマウス7の先端部までの距離を長く)することができる。なお、以下の説明では、ベルマウス取付構造1について説明する。
【0044】
次に、ベルマウス取付構造1を用いた、ベルマウス7の地中箱への設置方法を説明する。図3は、ベルマウス取付構造1を設置した状態を示す図である。前述の通り、地中箱であるハンドホール11が地面に形成される。ハンドホール11は、例えばコンクリート製の箱型形状であり、ケーブル保護管等が接続される。なお、以下の図においては、既設の保護管等は図示を省略する。
【0045】
ハンドホールの側壁の一部には、壁厚の薄い薄壁部13が形成されるのが望ましい。薄壁部13の外面には、ベルマウス7が薄壁部13に対向するようにベルマウス取付構造1が設けられる。ベルマウス取付構造1は、ケーブル等が未挿入の予備配管である。ベルマウス取付構造1は、土砂等で埋設される。なお、保護管3は、あらかじめ所定の距離をあけて形成された隣り合う他のハンドホール等まで敷設されている。
【0046】
ベルマウス7のベル状の開口部には、必要に応じてキャップ15が取り付けられる。キャップ15は、ベルマウス7の開口部を塞ぎ、ベルマウス7内部に土砂等が浸入することを防止する。図3のように、予備配管としてのベルマウス取付構造1が設置されている状態では、図1に示すように、ベルマウス7は継手5の内部に深く挿入されており、シール部材9aによって、確実に継手5とベルマウス7との隙間がシールされている。
【0047】
図4は、図3の状態におけるベルマウス取付構造1の拡大図(一部断面図)である。なお、図4においても、保護管3と継手5との隙間に形成されるシール部材は図示を省略する。前述の通り、ベルマウス7が継手5に挿入された状態で、ベルマウスの7のベル状開口部がハンドホール11の薄壁部13に対向するように形成される。
【0048】
この際、シール部材9a(最前部シール部)と最後方のシール部材9b(最前部シール部を構成するシール部材から最も遠いシール部材であって、最後部シール部を構成するシール部材)までの距離をCとする。また、薄壁部13の厚さをDとする。図4に示した状態において、Cの長さはDの長さよりも長く設定される。なお、薄壁部13とベルマウス7のベル状開口部端部との間に隙間が形成される場合には、当該隙間と薄壁部13の厚さDの和よりもシール部材間の距離Dを大きくすることが望ましい。また、ベルマウス7を薄壁部13の内面まで完全に引き抜かない場合には、ベルマウス7の実際の引き抜き量よりもシール部材間の距離Dを大きくしておけばよい。このようにすることで、継手5とベルマウス7のシール性が確保される。
【0049】
図3の状態から、配管の増設等が必要となった場合には、ハンドホール11に保護管3を接続する。図5、図6は、ハンドホール11へのベルマウス7の取付工程を示す図である。なお、以下の工程は、ハンドホールの管理者のみによって施工される。まず、図5(a)に示すように、ハンドホール11の内部から薄壁部13を削孔し、孔17を形成する。孔17によって、ベルマウス7がハンドホール11の内部に露出する。なお、孔17はベルマウス7の外径よりも十分に大きい。
【0050】
孔17から、ベルマウス7周囲の土砂等を撤去した後、図5(b)に示すように、ベルマウス7をハンドホール11の方向へ移動させる(図中矢印E方向)。ベルマウス7の移動量は、ベルマウス7のベル状開口部端部が、ハンドホール11の内面と略一致するまでとする。すなわち、ベルマウスの移動量は、図3におけるC(薄壁部13壁面との間に隙間が形成された場合には、Cと隙間との和)となる。
【0051】
この際、ベルマウス7の移動に伴い、ベルマウス7に取り付けられたシール部材9aは継手5の外部に露出する。一方、ベルマウス7の移動量よりも、シール部材間距離の方が長いため、ベルマウス7を引き出した状態においても最後部シール部であるシール部材9bは、継手5内にとどまる。
【0052】
すなわち、シール部材9aは、ベルマウスの取付構造1が地中に埋設された状態において、ベルマウス7と継手5との間に土砂等が浸入することを防ぎ、これにより、ベルマウス7を継手5から容易に引き出すことを可能にする。一方、シール部材9bは、ベルマウス7を引き出した状態において、ベルマウス7と継手5との間に土砂等が浸入することを防ぐ。なお、シール部材9bは、ベルマウス7が図5に示すように引き出された際に、必ずしも継手5の端部に位置する必要はなく、継手5へのベルマウス7の挿入部の少なくとも一部に位置すれば良い。
【0053】
次に、図6(a)に示すように、ベルマウス7外面と孔17の内面との間にモルタル等の固定部材が充填される。この際、キャップ15が設けられた場合には、キャップ15が撤去される。固定部材であるモルタル19が固化すると、ベルマウス7がハンドホール11に固定される。ベルマウス7がハンドホール11に固定されたのち、ケーブル等がベルマウス7から保護管3内へ挿通される。
【0054】
なお、図6(b)に示すように、ベルマウス7の外周面のみならず、継手5の外周面の一部もベルマウス7と共に、モルタル19で孔17に固定してもよい。継手5およびベルマウス7をハンドホール11に固定すれば、固定後のベルマウス7の移動や抜け等を防止できるとともに、ベルマウス7と継手5との隙間への土や水の浸入をより確実に防止することができる。
【0055】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、必要に応じて簡易にハンドホールへの保護管の増設が可能である。特に、ベルマウス取付構造1を埋設しておけば、ハンドホール11内部からのみ作業ができ、周囲を開削する必要がない。
【0056】
また、埋設時及び接続時において、ベルマウス7と継手5との間に土や水等の侵入を確実に防止することができる。
【0057】
次に、第2の実施形態について説明する。図7(a)は、第2の実施形態に係るベルマウス取付構造20を示す図である。なお、以下の実施の形態において、ベルマウス取付構造1と同様の機能を奏する構成については、図1等と同様の符号を付し、重複した説明を省略する。ベルマウス取付構造20は、ベルマウス取付構造1と略同様の構成であるが、外周面に螺旋状の凹凸が形成されたベルマウス25および保護管21と、内周面に螺旋状の凹凸が形成された継手23が用いられる点等で異なる。
【0058】
ベルマウス25外周面におけるベル状部を除く直線部には、螺旋状凸部(凹部)が形成される。また、保護管21の外周面においてもベルマウス25に形成された螺旋溝と同様のピッチで螺旋状の凸部(凹部)が形成される。なお、ベルマウス25の内径と保護管21の内径は略一致することが望ましい。また、ベルマウス25および保護管21の内面は平滑であることが望ましい。
【0059】
継手23の内面には、ベルマウス25および保護管21が螺合可能な螺旋状の凹部(凸部)が形成される。したがって、継手23の一方の端部に保護管21の端部を差し込み、保護管21に対して継手23を回転させることで、継手23と保護管21とを螺合させることができる。すなわち、保護管21の端部は、継手23内部に挿入された状態となる。
【0060】
同様に、継手23の他方の端部(保護管21が挿入される側とは反対側)にベルマウス25の端部を差し込み、継手23に対してベルマウス25を回転させることで、継手23とベルマウス25とを螺合させることができる。すなわち、ベルマウス25は、継手23内部に挿入された状態となる。
【0061】
保護管21と継手23との間には、螺旋パッキン等のシール部材が設けられ、継手23と保護管21とが固定される。一方、ベルマウス25と継手23との間には、シール部材27a、27bが設けられる。
【0062】
シール部材27aは、継手23のベルマウス25が挿入される側の端部近傍に設けられる。すなわち、継手23の最前部(ベルマウス挿入側)にシール部材27aを設けることで(すなわち、最前部シール部を形成することで)、継手23とベルマウス25との隙間への土砂等の浸入を確実に防止することができる。
【0063】
シール部材27bは、シール部材27aとは所定の距離をおいて設けられる。なお、シール部材としては、最前部シール部を形成するシール部材に加え、少なくとも一つのシール部材が必要である。すなわち、二か所以上にシール部材が設けられればよい。また、シール部材27a、27bは、ベルマウス25側に固定差されており、ベルマウス25とともに移動可能である。
【0064】
図7(b)に示すように、ベルマウス25を継手23に対して回転させることで、ベルマウス25は継手23に対して軸方向に移動可能である(図中矢印F方向)。この際、ベルマウス25を回転させて、ベルマウス25を継手23から引き抜く方向に移動させると、シール部材27aは継手23の外部に露出するが、シール部材27bによって、ベルマウス25と継手23との間への土砂等の浸入を防止することができる。
【0065】
なお、ベルマウス25の移動量とシール部材27a、27bの配置(距離)については、図3に示す例と同様である。また、保護管21と継手23との間にも、図2(c)に示すように、シール部材を設けることで、保護管21に対して継手23を移動させることもできる。この場合、保護管3に対して、ベルマウス25
とともに継手23を回転させて、継手23(ベルマウス25)を保護管21より引き抜く方向に移動させ、さらに、ベルマウス25を継手23に対して回転させて、ベルマウス25を継手23より引き抜く方向に移動させればよい。全体を伸ばした状態においても、継手23と、ベルマウス25および保護管21との隙間にシール部材があれば、継手部への土砂等の浸入を防止することができる。
【0066】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、継手23に対して、ベルマウス25が螺合するため、ベルマウス25の移動量の調整が容易である。また、同様に保護管21と継手23とを移動可能とすれば、保護管21に対する継手23の移動量の調整が容易である。
【0067】
また、ベルマウス25等をハンドホールに固定部材により固定する際、または固定した後に、ベルマウス25が継手23、保護管21に対して軸方向にずれたり、抜けたりすることがない。このため、ケーブル挿通時にベルマウス25がハンドホール内部に脱落することがない。
【0068】
次に、第3の実施の形態に説明する。図8(a)は、ベルマウス取付構造30を示す図である。ベルマウス取付構造30は、ベルマウス取付構造1と略同様の構成であるが、ベルマウス7の外周に径方向に突出する突起部39が形成される点で異なる。
【0069】
突起部39は、ベルマウス7に対して一体で形成されてもよく、別体で形成されて接合されてもよい。また、突起部39は、ベルマウス7の外周全周に形成されてもよく、外周の一部のみに形成してもよい。
【0070】
図8(b)に示すように、図3〜図6と同様にしてベルマウス7をモルタル19によってハンドホール11に固定した際に、突起部39は、モルタル19に埋設される。モルタル19が固結すると、突起部39はモルタル19に対してずれ止めとして機能する。すなわち、ケーブル挿通時などにおいて、ベルマウス7がハンドホール11内部に脱落等することがない。
【0071】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
たとえば、地中箱としてハンドホールの例を示したが、本発明は、マンホールなどのように地中に埋設されて保護管等が接続される構造体であれば、いずれの形態であっても適用することができる。
【0073】
また、上述の例では、薄壁部13を設ける例を示したが、薄壁部13は必ずしも必要ではなく、地中箱の壁部が同一厚さで形成されてもよい。この場合には、通常の壁部に孔が形成され、ベルマウスが設置されれば良く、シール部材の設置間隔は壁部厚さよりも長くすることが望ましい。
【0074】
また、地中箱の壁部には、あらかじめ孔を形成し、孔に充填材や蓋等を設けておいてもよい。この場合でも、当該充填材や蓋を撤去することを、本発明では孔17を形成すると称する。
【0075】
また、図1等において、シール部材9a、9bと少なくとも2か所にシール部材を設けたが、本発明では、このシール部材9a、9bにまたがるような一体のシール部材を設けてもよい。
【0076】
図9は、シール部材41を用いたベルマウスの取付構造40を示す図である。シール部材41としては、たとえば、吸水性樹脂を含有し、吸水すると膨張する水膨張性不織布であることが望ましい。この場合、図9(a)に示すように、シール部材41の一方の端部(軸方向に対する端部)が、ベルマウス7が挿入される側の継手5の端部近傍に位置すれば良い。この部位が最前部シール部として機能する。また、当該シール部材41の軸方向の長さが、設置される地中壁の壁部厚さ(薄壁部を有する場合には薄壁部の厚さ)よりも長ければ(すなわち、シール部材の一方の端部から他方の端部までの長さが壁部厚さよりも長ければ)、図9(b)に示すように、ベルマウス7を引き出した際にも、シール部材41の一部が継手5とベルマウス7との間に位置するため、土砂等の浸入を防止することができる。
【符号の説明】
【0077】
1、1a、20、30、40………ベルマウス取付構造
3………保護管
5………継手
7………ベルマウス
9a、9b、9c、9d………シール部材
11………ハンドホール
13………薄壁部
15………キャップ
17………孔
19………モルタル
21………保護管
23………継手
25………ベルマウス
27a、27b………シール部材
39………突起部
41………シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル挿通用の保護管と、
前記保護管の端部が一方の側より挿入される継手と、
前記継手の他方の側より挿入されるベルマウスと、
を具備し、
前記ベルマウスと前記継手との間には、少なくとも二か所にシール部材が設けられ、
前記シール部材の一つが、前記ベルマウスが挿入される側の前記継手の端部近傍に設けられて、最前部シール部を形成し、
前記ベルマウスが前記継手に対して軸方向に移動可能であることを特徴とするベルマウスの取付構造。
【請求項2】
前記ベルマウスは地中箱の外方に設置され、前記地中箱の壁部に対向するように配置されることを特徴とする請求項1記載のベルマウスの取付構造。
【請求項3】
前記最前部シール部から、軸方向に最も遠い位置の前記シール部材までの距離が、前記壁部の厚さよりも長いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のベルマウスの取付構造。
【請求項4】
少なくとも二か所にシール部材を設けることに代えて、シール部材を一体で形成し、
前記ベルマウスは地中箱の外方に設置され、前記地中箱の壁部に対向するように配置され、
前記シール部材の軸方向に対する一方の端部が、前記ベルマウスが挿入される側の前記継手の端部近傍に位置して、最前部シール部を形成し、
前記シール部の一方の端部から他方の端部までの距離が、前記壁部の厚さよりも長いことを特徴とする請求項1記載のベルマウスの取付構造。
【請求項5】
前記継手の内周面には螺旋溝が形成され、前記ベルマウスは、前記継手と螺合していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のベルマウスの取付構造。
【請求項6】
前記ベルマウスは、前記継手に対して回転させずにまっすぐに引き出すことが可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のベルマウスの取付構造。
【請求項7】
前記ベルマウスの外周には、径方向に突出した突起部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のベルマウスの取付構造。
【請求項8】
前記壁部には、壁厚の薄い薄壁部が形成され、前記薄壁部に前記ベルマウスが対向するように配置されることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載のベルマウスの取付構造。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のベルマウスの取付構造に対し、前記ベルマウスを前記継手から突出させ、前記ベルマウスが地中箱の壁部に設けられた孔に挿入された状態で、前記ベルマウスと前記孔との間に、固定部材が充填されることを特徴とするベルマウスと地中箱との固定構造。
【請求項10】
ケーブル挿通用の保護管の端部およびベルマウスの端部が両側方から継手に挿入され、前記ベルマウスと前記継手との間には少なくとも二か所にシール部材が設けられ、前記ベルマウスが挿入される側の前記継手の端部近傍に前記シール部材の一つが設けられることにより最前部シール部が形成されたベルマウスの取付構造を、地中箱の壁部の外方に、前記ベルマウスが前記壁部に対向するように配置した後、前記ベルマウスの取付構造を埋設し、
前記壁部を前記地中箱内部より削孔して孔を形成し、
前記孔より、前記ベルマウスを前記継手に対して前記地中箱の方向に移動させ、前記ベルマウスを前記孔の内部に配置し、この際、前記ベルマウスと前記継手との間は、少なくとも、前記最前部シール部から最も遠い位置に配置されていたシール部材でシールされており、
前記ベルマウスと前記孔との間に固定部材を充填することを特徴とする地中箱へのベルマウスの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−193669(P2011−193669A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58715(P2010−58715)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】