説明

ベンジルアミン化合物を製造する方法

【課題】ベンジルアミン化合物を製造する新規な方法およびその製造中間体を提供する。
【解決手段】式(7)


〔式中、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるベンジルアミン化合物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンジルアミン化合物を製造する方法およびその製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
下式(7)で示されるベンジルアミン化合物が、例えば、農薬の有効成分として有用であることが知られている。また、例えば、特許文献1には、下式(7)で示されるベンジルアミン化合物を合成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/032437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の方法では、下式(7)で示されるベンジルアミン化合物を製造する上で必ずしも満足できるものではない。
そこで、本発明の目的は、下式(7)で示されるベンジルアミン化合物を製造しうる新たな方法およびその製造中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、下式(1)で示されるアミド化合物と下式(2)で示されるトリフルオロアセトフェノン化合物とを反応させて下式(3)で示されるアルドール化合物を製造し、
得られた下式(3)で示されるアルドール化合物と下式(4)で示される酸無水物化合物とを反応させて下式(5)で示されるエノン化合物を製造し、
得られた下式(5)で示されるエノン化合物とヒドロキシルアミンとを反応させて下式(6)で示されるイソキサゾリン化合物を製造し、
得られた下式(6)で示されるイソキサゾリン化合物と酸とを反応させて下式(7)で示されるベンジルアミン化合物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1] 式(3)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるアルドール化合物。
[2] 式(5)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるエノン化合物。
[3] (5−アセチル−2−クロロ−ベンジル)−カルバミン酸tert−ブチル。
[4] {2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチル。
[5] 式(1)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表す。〕
で示されるアミド化合物(以下、アミド化合物(1)と記す。)と、
式(2)

〔式中、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるトリフルオロアセトフェノン化合物(以下、トリフルオロアセトフェノン化合物(2)と記す。)とを、反応させることを特徴とする、
式(3)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるアルドール化合物(以下、アルドール化合物(3)と記す。)を製造する方法。
[6] アルドール化合物(3)と、
式(4)

〔式中、R4は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表す。〕
で示される酸無水物化合物(以下、酸無水物化合物(4)と記す。)とを反応させることを特徴とする、
式(5)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるエノン化合物(以下、エノン化合物(5)と記す。)を製造する方法。
[7] エノン化合物(5)と、ヒドロキシルアミンとを反応させることを特徴とする、
式(6)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるイソキサゾリン化合物(以下、イソキサゾリン化合物(6)と記す。)を製造する方法。
[8] イソキサゾリン化合物(6)と酸とを反応させることを特徴とする、
式(7)

〔式中、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるベンジルアミン化合物(以下、ベンジルアミン化合物(7)と記す。)を製造する方法。
[9] アミド化合物(1)と、トリフルオロアセトフェノン化合物(2)とを、反応させて、アルドール化合物(3)を製造し、
得られたアルドール化合物(3)と、酸無水物化合物(4)とを、反応させて、エノン化合物(5)を製造し、
得られたエノン化合物(5)とヒドロキシルアミンとを反応させて、イソキサゾリン化合物(6)を製造し、
得られたイソキサゾリン化合物(6)と酸とを反応させて、ベンジルアミン化合物(7)を製造する方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ベンジルアミン化合物(7)を製造するための新たな方法およびその製造中間体等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明について詳細に説明する。
1で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が挙げられる。
1で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
1で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
2で示される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
2で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基」としては、例えばメチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
3で示される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
4で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基」としては、例えばメチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
4で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0008】
アミド化合物(1)とトリフルオロアセトフェノン化合物(2)からアルドール化合物(3)を製造するには、アミド化合物(1)とトリフルオロアセトフェノン化合物(2)とを反応させることにより、アルドール化合物(3)を製造する。
【0009】
該反応に用いられるトリフルオロアセトフェノン化合物(2)の使用量は、アミド化合物(1)1モルに対して、通常0.1〜10モルである。
【0010】
該反応は通常塩基の存在下で行われる。
該反応に用いられる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)等の有機塩基類が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる塩基の量は、アミド化合物(1)1モルに対して、通常0.1〜10モルである。
【0011】
該反応は通常溶媒の存在下で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応を溶媒中で行う場合に用いられる溶媒の量は、アミド化合物(1)1モルに対して100L以下である。
該反応の反応温度は、通常、−20〜200℃または反応に用いられる溶媒の沸点以下の範囲である。
該反応の反応時間は、通常、0.1〜100時間の範囲である。
【0012】
かくして、アルドール化合物(3)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0013】
アルドール化合物(3)からエノン化合物(5)を製造するには、アルドール化合物(3)と酸無水物化合物(4)とを反応させることにより、エノン化合物(5)を製造する。
【0014】
該反応に用いられる酸無水物化合物(4)の量は、アルドール化合物(3)1モルに対して、通常1〜10モルである。
該反応は通常塩基の存在下で行われる。
該反応に用いられる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の有機塩基類が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる塩基の量は、アルドール化合物(3)1モルに対して、通常0.1〜10モルである。
【0015】
該反応は通常溶媒の存在下で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランの等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応を溶媒中で行う場合に用いられる溶媒の量は、アルドール化合物(3)1モルに対して100L以下である。
該反応の反応温度は、通常、−20〜200℃または反応に用いられる溶媒の沸点以下の範囲である。
該反応の反応時間は、通常、0.1〜100時間の範囲である。
【0016】
該反応を行った後に、ナトリウムメトキシドと反応させることもできる。該工程に用いられる溶媒としては、例えばメタノールが挙げられる。
【0017】
かくして、エノン化合物(5)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0018】
エノン化合物(5)からイソキサゾリン化合物(6)を製造するには、エノン化合物(5)とヒドロキシルアミンとを反応させることにより、イソキサゾリン化合物(6)を製造する。
【0019】
該反応は通常塩基の存在下で行われる。
該反応に用いられる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物、ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基類が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる塩基の量は、エノン化合物(5)1モルに対して、通常0.01〜10モルである。
【0020】
該反応は通常溶媒の存在下で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン等の炭化水素類、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル類、水が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応を溶媒中で行う場合に用いられる溶媒の量は、エノン化合物(5)1モルに対して100L以下である。
【0021】
該反応に用いられるヒドロキシルアミンとしては、水溶液、または、ヒドロシキルアミン塩酸塩等の塩の形態のヒドロキシルアミンを用いることができる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられるヒドロキシルアミンの量は、エノン化合物(5)1モルに対して、通常1〜10モルである。
【0022】
該反応は相関移動触媒の存在下で行うこともできる。反応に用いられる相関移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムクロライドが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応に用いられる相関移動触媒の量は、エノン化合物(5)1モルに対して、通常0.001〜1モルである。
該反応の反応温度は、通常、−20〜200℃または反応に用いられる溶媒の沸点の範囲である。
該反応の反応時間は、通常、0.1〜100時間の範囲である。
【0023】
かくして、イソキサゾリン化合物(6)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0024】
イソキサゾリン化合物(6)と酸からベンジルアミン化合物(7)を製造するには、イソキサゾリン化合物(6)と酸とを反応させることにより、ベンジルアミン化合物(7)を製造する。
【0025】
該反応に用いられる酸の使用量は、イソキサゾリン化合物(6)1モルに対して、通常0.1〜100モルである。
【0026】
該反応に用いられる酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸、塩酸等の鉱酸が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
該反応は溶媒の存在下で行うこともできる。該反応に用いられる溶媒としては、例えば、エタノールが挙げられる。
該反応の反応温度は、通常、−20〜200℃または反応に用いられる酸の沸点の範囲である。
該反応の反応時間は、通常、0.1〜100時間の範囲である。
【0027】
かくして、ベンジルアミン化合物(7)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0028】
アミド化合物(1)は、国際公開第2004/058681号、国際公開第2008/134036号、または、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals 51巻,p.72(2008年)に記載の方法により製造し得る。
トリフルオロアセトフェノン化合物(2)の一部は市販されており、それ以外の化合物は、例えば、Canadian Journal of Chemistry 58巻,p.2491(1980年)、または、Angewandte Chemie International Edition 37巻,p.820(1998年)に記載の方法により製造し得る。
【0029】
以下にアルドール化合物(3)の具体例を示す。
式(3)

で示されるアルドール化合物。
式中のR1、(R2m、及びR3は下記の表1に記載の組み合わせを表す。
【0030】
【表1】


【0031】
以下にエノン化合物(5)の具体例を示す。
式(5)

で示されるエノン化合物。
式中のR1、(R2m、及びR3は下記の表2に記載の組み合わせを表す。
【0032】
【表2】


なお、上記[表1]及び[表2]の(R2mにおいて、例えば「3−Cl,5−Cl」との記載は、(R2mが3位および5位の置換基であり、mが2であり、R2が各々塩素原子であることを意味する。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0034】
実施例1
(5−アセチル−2−クロロ−ベンジル)−カルバミン酸tert−ブチルの製造

1−(3−アミノメチル−4−クロロフェニル)−エタノン(13.58g)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、ここに室温で二炭酸ジ−tert−ブチル(15.90g)を加えた。室温で1時間攪拌後、この反応混合液を減圧下濃縮し、得られた残渣をメチルtert−ブチルエーテルに溶解させ、1M塩酸及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、(5−アセチル−2−クロロ−ベンジル)−カルバミン酸tert−ブチル(16.31g)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.95 (1H, d), 7.79 (1H, dd), 7.44 (1H, d), 5.15 (1H, br s), 4.44 (2H, d), 2.58 (3H, s), 1.46 (9H, s).
【0035】
実施例2

実施例1により得られた(5−アセチル−2−クロロベンジル)−カルバミン酸tert−ブチル(521mg)、α,α,α−トリフルオロ−3,5−ジクロロアセトフェノン(446mg)及びトリエチルアミン(186mg)をトルエン(4ml)に溶解し、80℃で2時間攪拌した。この室温まで放冷した反応混合液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブチリル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチル(486mg、表1−番号12の化合物)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.94 (1H, d), 7.78 (1H, dd), 7.53−7.46 (3H, m), 7.35 (1H, t), 5.67 (1H, s), 5.08 (1H, br s), 4.46 (2H, d), 3.81 (1H, d), 3.66 (1H, d), 1.47 (9H, s).
【0036】
実施例3
{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチルの製造

実施例2により得られた{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブチリル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチル(489mg)、トリエチルアミン(188mg)及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(14mg)をテトラヒドロフラン(4ml)に溶かし、ここに室温で無水酢酸(95mg)を滴下した。室温で24時間撹拌後、この反応混合液をメチルtert−ブチルエーテルに溶解させ、1M塩酸及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、クルードの{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチル(404mg、表2−番号12の化合物)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.81 (1H, s), 7.66 (1H, d), 7.46−7.41 (1H, m), 7.36 (1H, br s), 7.32 (1H, d), 7.15 (2H, br s), 5.17 (1H, s), 4.41 (2H, d), 1.47 (9H, s).
【0037】
実施例4
{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチルの製造

実施例3により得られたクルードの{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチル(404mg)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(77mg)をトルエン(1.6ml)に溶かし、ここに氷冷下でヒドロキシルアミン塩酸塩(112mg)及び水酸化ナトリウム(134mg)を水(0.6ml)に溶かした溶液を滴下し、氷冷下で2時間攪拌した後、室温で3時間攪拌した。反応混合物に2M塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチル(295mg)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.55−7.48 (6H, m), 5.06 (1H, br s), 4.41 (2H, d), 4.06 (1H, d), 3.68 (1H, d), 1.46 (9H, s).
【0038】
実施例5
2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジルアミンの製造

実施例4により得られた{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチル(20.17g)に室温でトリフルオロ酢酸(40ml)を加え、室温で1時間攪拌した。この反応混合物を減圧下濃縮し、得られた残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を注加し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジルアミン(15.49g)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.72 (1H, d), 7.52−7.42 (5H, m), 4.09 (1H, d), 3.98 (2H, s), 3.71 (1H, d), 1.96 (2H, br s).
【0039】
実施例6
N−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブチリル]−ベンジル}−アセトアミドの製造

N−(5−アセチル−2−クロロベンジル)−アセトアミド(1128mg)、α,α,α−トリフルオロ−3,5−ジクロロアセトフェノン(1822mg)及びトリエチルアミン(1019mg)をトルエン(5ml)に溶解し、80℃で4時間攪拌した。室温まで放冷したこの反応混合液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、N−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブチリル]−ベンジル}−アセトアミド(1490mg、表1−番号1の化合物)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.96 (1H, d), 7.79 (1H, dd), 7.51 (1H, d), 7.48 (2H, d), 7.35 (1H, t), 6.03−6.00 (1H, br m), 5.64 (1H, s), 4.56 (2H, d), 3.81 (1H, d), 3.66 (1H, d), 2.05 (3H, s).
【0040】
実施例7
N−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]−ベンジル}−アセトアミドの製造

実施例6により得られたN−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブチリル]−ベンジル}−アセトアミド(469mg)、トリエチルアミン(121mg)及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(12mg)をテトラヒドロフラン(2ml)に溶かし、ここに室温で無水酢酸(123mg)を滴下した。室温で3時間撹拌後、50℃で2時間撹拌した。室温まで放冷したこの反応混合液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、N−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]−ベンジル}−アセトアミド(410mg、表2−番号1の化合物)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.82 (1H, d), 7.68 (1H, dd), 7.45 (1H, d), 7.34−7.33 (2H, m), 7.15 (2H, d), 5.92 (1H, br s), 4.53 (2H, d), 2.06 (3H, s).
【0041】
実施例8
N−{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジル}−アセトアミドの製造

実施例7により得られたクルードのN−{2−クロロ−5−[3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル]−ベンジル}−アセトアミド(410mg)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(88mg)をテトラヒドロフラン(1.8ml)に溶かし、ここに氷冷下でヒドロキシルアミン塩酸塩(126mg)及び水酸化ナトリウム(154mg)を水(0.7ml)に溶かした溶液を滴下し、氷冷下で1時間攪拌した後、室温で2時間攪拌した。反応混合物に2M塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、N−{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジル}−アセトアミド(369mg)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.64 (1H, d), 7.59 (1H, dd), 7.50 (2H, s), 7.43−7.42 (2H, m), 6.00−5.97 (1H, br m), 4.53 (2h, d), 4.07 (1H, d), 3.68 (1H, d), 2.04 (3H, s).
【0042】
実施例9
2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジルアミンの製造

実施例8により得られたN−{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジル}−アセトアミド(200mg)をエタノール(6mL)に溶かし、ここに室温で濃塩酸(2ml)を加え、還流下40時間攪拌した。室温まで放冷したこの反応混合物を減圧下濃縮し、得られた残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を注加し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジルアミン(160mg)を得た。
1H−NMR (CDCl3) δ: 7.72 (1H, d), 7.52−7.42 (5H, m), 4.09 (1H, d), 3.98 (2H, s), 3.71 (1H, d), 1.96 (2H, br s).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるアルドール化合物。
【請求項2】
式(5)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるエノン化合物。
【請求項3】
(5−アセチル−2−クロロ−ベンジル)−カルバミン酸tert−ブチル。
【請求項4】
{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチル。
【請求項5】
式(1)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表す。〕
で示されるアミド化合物と、
式(2)

〔式中、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるトリフルオロアセトフェノン化合物とを反応させることを特徴とする、
式(3)

〔式中、R1、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるアルドール化合物を製造する方法。
【請求項6】
式(3)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるアルドール化合物と、
式(4)

〔式中、R4は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表す。〕
で示される酸無水物化合物とを、反応させることを特徴とする、
式(5)

〔式中、R1、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるエノン化合物を製造する方法。
【請求項7】
式(5)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるエノン化合物と、ヒドロキシルアミンとを反応させることを特徴とする、
式(6)

〔式中、R1、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるイソキサゾリン化合物を製造する方法。
【請求項8】
式(6)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるイソキサゾリン化合物と酸とを反応させることを特徴とする、
式(7)

〔式中、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるベンジルアミン化合物を製造する方法。
【請求項9】
式(1)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC3−C12シクロアルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表す。〕
で示されるアミド化合物と、式(2)

〔式中、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるトリフルオロアセトフェノン化合物とを、反応させて、式(3)

〔式中、R1、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるアルドール化合物を製造し、
得られた前記式(3)で示されるアルドール化合物と、
式(4)

〔式中、R4は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表す。〕
で示される酸無水物化合物とを、反応させて、
式(5)

〔式中、R1、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるエノン化合物を製造し、
得られた前記式(5)で示されるエノン化合物と、ヒドロキシルアミンとを反応させて、
式(6)

〔式中、R1、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるイソキサゾリン化合物を製造し、
得られた前記式(6)で示されるイソキサゾリン化合物と、酸とを反応させて、
式(7)

〔式中、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるベンジルアミン化合物を製造する方法。

【公開番号】特開2013−18767(P2013−18767A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17674(P2012−17674)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】