説明

ベンジル脱離系を利用する高分子チオール結合プロドラッグ

【課題】向上した水溶性、制御された薬物動態、および改良された生物学的利用能を有する、生物学的有効物質からなる新しいタイプの長時間作用性チオール結合ポリマーコンジュゲートを提供する。
【解決手段】S-MPが6-メルカプトプリンであるときの下式であるような化合物で、スルフヒドリル結合をベンジル脱離系と組み合わせて使用し、in vivoで血漿酵素を利用して親分子を再生するチオール結合高分子プロドラッグ、その作製方法および使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的有効物質からなる新しいタイプの長時間作用性チオール結合ポリマーコンジュゲートに関する。とくに、本発明は、非修飾生体活性物質と比較して、向上した水溶性、制御された薬物動態、および改良された生物学的利用能を有するポリマー型プロドラッグコンジュゲートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、生物学的有効物質を動物に投与するいくつかの方法が提案されてきた。多くの医薬物質は、水溶性塩として入手可能であり、医薬製剤中に容易に組み入れることができる。所望の生物学的有効物質が水性流体への溶解性が悪かったりまたはin vivoで急速に分解されたりする場合には、問題を生じる。簡単な例として、これらの生物学的有効物質の多くは、メルカプト官能基を有する。これらの物質としては、たとえば、メルカプトプリンのような抗増殖剤および/または免疫抑制剤、ならびに薬効剤としての有用性が実証されているかまたは期待されるペプチドおよびタンパク質が挙げられる。これらのタイプの物質は、血液または組織液への低溶解性、組織内分布、クリアランス速度、およびそのような処置を必要とする動物への投与後の抗原性が原因となって、薬物動態および生物学的利用能に関する複雑な問題を呈することが多い。
【0003】
たとえば、ヌクレオシド類似体およびヌクレオチド類似体として知られるクラスの化合物は、DNA合成を阻害するので、癌の処置および免疫抑制の点で治療上有用である可能性がある。この性質は、過度のまたは不適切な細胞分裂により特性づけられる広範なクラスの疾患または障害を処置するのに有用である。しかしながら、当業者であればわかるであろうが、これらの化合物は非常に制限された治療指数を有するので、用量、動態、および組織中濃度を注意深く制御することが必要である。したがって、改良されたヌクレオシド類似体およびヌクレオチド類似体を提供することが必要とされており、所定の組織へのより標的化された送達および/または改良された放出動態が望まれる。
【0004】
たとえば、6-メルカプトプリンまたは6-MPは、実質的な欠点を有しているが、そうした欠点がなければ、有望な抗癌剤および免疫抑制剤である。経口摂取後の6-MPの吸収は不完全であり、生物学的利用能は、肝臓を介する初回通過代謝により低減される。6-MPの経口的生物学的利用能は、わずか5%〜37%であり、患者によって大きく異なることが報告されている。
【0005】
生物学的有効物質を可溶化し、溶解性、生物学的利用能などを改善する一方法は、可溶性プロドラッグの一部分としてそれらを組み入れることである。プロドラッグとしては、投与後、最終的にin vivoで親化合物を遊離する、薬効剤(たとえば、生物学的に有効な親化合物)の化学的誘導体が挙げられる。プロドラッグを用いることにより、当業者は、in vivoにおける作用剤の作用の開始および/または持続時間を変化させることが可能であり、さらに、生体中における薬物の輸送、分布、または溶解性を変化させることができる。このほか、プロドラッグ製剤を用いると、しばしば、毒性が低下しかつ/またはそれ以外に医薬調剤の投与時に遭遇する問題が克服される。プロドラッグの代表例としては、アルコールまたはチオアルコールの有機ホスフェートまたはエステルが挙げられる。
【0006】
プロドラッグは、多くの場合、親化合物または活性化合物の生物学的に不活性なまたは実質的に不活性な形態である。活性薬物の放出(典型的には、加水分解による放出)の速度は、いくつかの因子によって影響を受けるが、とくに、親薬物をモディファイヤーに連結させる結合のタイプによって影響を受ける。親化合物の十分な加水分解が起こる前に、腎臓、網状内皮系などを介して排出されるプロドラッグを調製しないように留意しなければならない。
【0007】
特定の治療上有用なメルカプタン化合物の有用性を改善しようとするこれまでの取組みが報告されている。たとえば、アザチオプリン(IMURAN)は、プリン環の6位の硫黄に結合されたイミダゾール基を含有する6-メルカプトプリンのプロドラッグである。この置換は、酵素的S-メチル化、非酵素的酸化、および/またはキサンチンオキシダーゼによるチオウレートへの変換による不活性化の速度を低下させるのに役立つ。アザチオプリンは、グルタチオンのようなスルフヒドリルと反応し(非酵素的経路によるものであると報告されている)、組織中においてより制御された形でメルカプトプリンを遊離する。また、アザチオプリンは、非修飾6-MPと比べて増強された免疫抑制活性を提供すると報告されている。こうした進歩にもかかわらず、現在入手可能なものよりも治療上優れた形で種々のメルカプタン系治療剤を送達すべく、さらなる改良が求められてきた。たとえば、患者に必要とされる投与の回数を減少させることおよび/または担体からの薬物の放出速度の制御をより予測可能なものにすることが望ましいであろう。
【0008】
利用可能なヒドロキシル基またはアミン基を有するいくつかの薬物の循環寿命を長くすべく、プロドラッグ系の一部分としてポリマーを組み入れることが提案されている。たとえば、米国特許第6,180,095号を参照されたい。その特許の内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。'095特許には、生物学的活性物質をin vivoで制御しうる形で送達すべくベンジル脱離(BE)系を用いるポリマー型ダブルプロドラッグ系が開示されている。
【0009】
ポリエチレングリコール(PEG)を対象の薬物または他の作用剤に連結することにより調製されるものを含めて、いくつかの高分子プロドラッグ系が当技術分野で公知であるが、多くの有用である可能性のある生物学的有効物質のチオール官能基を直接利用するコンジュゲートについての記載はなされてないと思われる。保護された硫黄結合ポリエチレングリコールも知られているが、これらは、最終的に、共有結合のチオール結合(-SH-結合)を介するのではなく共有結合のジスルフィド結合(-S-S-結合)を介してポリマー-薬物コンジュゲートを形成する。Woghiren et al., 1993, Bioconjugate Chem. 4: 314-318を参照されたい。該著者は、ジスルフィドリンカーにより5kDaのPEGをパパイン酵素に結合させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,180,095号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Woghiren et al., 1993, Bioconjugate Chem. 4: 314-318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、チオールまたはメルカプタンを含有する化合物の改良された高分子プロドラッグ系が依然として必要とされている。本発明は、こうした必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明の一態様において、次の式(Ia)および(Ib)で示される化合物を提供する。
【0014】
(Ia) R1-E1
および
(Ib)
【化1】

〔式中、
R1は、高分子残基であり;
Y1は、O、S、またはNR10であり;
Mは、O、S、またはNR11であり;
(m)は、ゼロまたは正の整数、好ましくは、1または2であり;
(a)は、ゼロまたは1であり;
(w)は、ゼロまたは1であり;
E1は、
【化2】

であり;
E2〜4は、独立して、H、E1、または
【化3】

であり;
(n)および(p)は、独立して、0または正の整数であり;
Y2〜3は、独立して、O、S、またはNR15であり;
R2〜11およびR15は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
D1およびD2は、独立して、OH、
【化4】

または、以下に記載の他の分枝基
{ここで、
(v)および(t)は、独立して、0または1であり;
L1およびL2は、独立して選択されるヘテロ二官能性リンカーであり;
Y4〜5は、独立して、O、S、およびNR16よりなる群から選択され;
R12〜14およびR16は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
Arは、式(I)に組み入れられたときに多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する成分であり; そして
B1およびB2は、独立して、脱離基、OH、およびスルフヒドリル含有成分の残基よりなる群から選択される}
である〕
【0015】
本発明のとくに好ましい一態様において、高分子残基はまた、その遠位部分の、以下の式(II):
【化5】

〔式中、記号はすべて、先に定義したとおりである〕
で示される部分が置換されている。したがって、高分子残基(R1)がアルファおよびオメガ末端結合基の両方を含む場合、二官能性化合物が形成されるので、本明細書中でB1またはB2と記された生物学的活性剤、薬物、またはタンパク質を2当量、4当量、またはそれ以上送達できるようになる。そのような二官能性ポリマー輸送形の例は、以下の式(III):
【化6】

〔式中、記号はすべて、先に定義したとおりである〕
で表される。
【0016】
本発明の目的では、「残基」という用語は、生物学的活性化合物が置換反応を起こしてプロドラッグ担体部分に結合された後に残存する生物学的有効化合物の部分を意味するものとする。
【0017】
本発明の目的では、「アルキル」という用語は、直線状、分枝状、置換型(たとえば、ハロ-、アルコキシ-、およびニトロ-)C1〜12アルキル、C3〜8シクロアルキル、または置換シクロアルキルなどを包含するものとする。
【0018】
本発明の目的では、「置換」という用語は、官能性の基もしくは化合物に含まれる1つ以上の原子に1つ以上の異なる原子を付加するかまたはその原子を1つ以上の異なる原子と交換すること包含するものとする。
【0019】
本発明の目的では、置換アルキルには、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、およびメルカプトアルキルが包含され; 置換シクロアルキルには、4-クロロシクロヘキシルのような成分が包含され; アリールには、ナフチルのような成分が包含され; 置換アリールには、3-ブロモフェニルのような成分が包含され; アラルキルには、トルイルのような成分が包含され; ヘテロアルキルには、エチルチオフェンのような成分が包含され; 置換ヘテロアルキルには、3-メトキシ-チオフェンのような成分が包含され; アルコキシには、メトキシのような成分が包含され; そしてフェノキシには、3-ニトロフェノキシのような成分が包含される。ハロには、フルオロ、クロロ、ヨード、およびブロモが包含されるものとする。
【0020】
本発明の目的では、「十分な量」という用語は、治療効果が得られる量を意味するものとする。そのような効果は、当業者により理解されるとおりである。
【0021】
本発明の化合物の主な利点の1つは、プロドラッグがこれまでの方法のときよりもポリマー1単位あたり高いペイロードを有する点である。したがって、本発明の高ペイロード高分子コンジュゲートは、4またはそれ以上の分子数まで薬物を含有することのできるユニークなペイロード系である。一般的には、最初に、加水分解により高分子からベンジル脱離(BE)型プロドラッグ中間体が放出され、次に、得られた中間体または「第2のプロドラッグ」部分が1,4-または1,6-アリール(たとえば、ベンジル)脱離反応を起こして、たとえば、生物学的に活性な化合物またはさらなるプロドラッグを含む組成物のいずれかである成分を再生することが好ましい。
【0022】
また、本明細書に記載の化合物およびコンジュゲートの作製方法および使用方法をも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に従って調製されるプロドラッグの放出機構を模式的に示している。
【図2】図3〜6cで使用される構造の略号の定義を示している。
【図3】実施例に記載されている種々の本発明の化合物の合成を示している。
【図4】実施例に記載されている種々の本発明の化合物の合成を示している。
【図5】実施例に記載されている種々の本発明の化合物の合成を示している。
【図6】実施例に記載されている種々の本発明の化合物の合成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
A. 式(Ia)および(Ib)
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、式:
(Ia) R1-E1
および
(Ib)
【化7】

〔式中、
R1は、高分子残基であり;
Y1は、O、S、またはNR10であり;
Mは、O、S、またはNR11であり;
E1は、
【化8】

であり;
E2〜4は、独立して、H、E1、または
【化9】

であり;
(a)は、ゼロまたは1であり;
(m)は、ゼロまたは正の整数であり;
(w)は、ゼロまたは1であり;
(n)および(p)は、独立して、0または正の整数であり;
Y2〜3は、独立して、O、S、またはNR12であり;
R2〜12は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
D1およびD2は、独立して、OH、
【化10】

{ここで、
R'4およびR'5は、R4を定義したときと同一の群から選択され、E35〜38は、先に記載のE1〜4を定義したときと同一の群から選択されるが、ただし、この定義の範囲内では、D1およびD2は、以下に定義されるD'1およびD'2に変更されるものとする。この実施形態の範囲内では、D'1およびD'2は、独立して、OH、式(IV)、(V)、または
【化11】

(ここで、R"4およびR"5は、独立して、R4を定義したときと同一の群から選択され、E45〜48は、E1〜4を定義したときと同一の群から選択されるが、ただし、この定義の範囲内では、D1およびD2は、D"1およびD"2に変更され、D"1およびD"2は、独立して、OH、式(IV)、または式(V)である。以上からわかるように、二官能性ポリマーR1を用いて末端分枝をその最大まで利用したとき、16当量までの薬物を高分子プラットフォームにローディングすることができる)
で示される部分でありうるものであり;
式(IV)および(V)の残りの変数は、次のように定義される:
(v)および(t)は、独立して、0または1であり;
L1およびL2は、独立して選択されるヘテロ二官能性リンカーであり;
Y4〜5は、独立して、O、S、およびNR16よりなる群から選択され;
R12〜14およびR16は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
Arは、式(I)に組み入れられたときに多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する成分であり; そして
B1およびB2は、好ましくは、独立して、OHおよびスルフヒドリル含有成分の残基の中から選択される。他の実施形態では、B1〜2は、独立して選択される脱離基でありうる}
である〕
で示される化合物を提供する。
【0025】
二置換高分子残基が望まれるこの実施形態のこれらの態様では、本発明のいくつかの好ましい高分子輸送体系は、以下の式
(IIIa) E1-R1-E1
【化12】

〔式中、変数はすべて、先に定義したとおりである〕
で表される。
【0026】
本発明のマルチローディングポリマー輸送系は、主に、本明細書中でR1と記されている高分子残基をベースとするものである。場合により、R1はキャッピング基Aを含む。ポリマーキャッピング基Aは、たとえば、水素、NH2、OH、CO2H、C1〜6アルキル成分のような成分ならびに以下に記された式(IIa)および(IIb)で示される化合物を含み、ビス系を形成する。
【0027】
(IIa) E1- または
【化13】

〔式中、記号はすべて、先に定義したとおりである〕
ごく当然のことながら、上述した多重末端分枝は、ビス系にも同じように適用され、末端上の生物学的活性成分は、同一のSH含有成分であってもよいし、異なるSH含有成分であってもよい。
【0028】
本発明に係る式を構成する他の記号に関して、下記のものが好ましい。
【0029】
Y1〜4は、それぞれ、酸素であり;
R1以外の記号R(たとえば、R2〜R11など)は、それぞれ、好ましくは水素または低級(たとえば、C1〜6)アルキルであり;
(m)は、1または2であり;
(v)は、ゼロまたは1であり;
(t)は、1であり;
L1は、-(CH2CH2O)2-であり;そして
L2は、-CH2-、-CH(CH3)-、CH[CH2CH(CH3)2]-、-CH2C(O)NHCH(CH3)-、-(CH2)2-、-CH2 C(O)NHCH2-、CHC(O)NHCH[CH2CH(CH3)2]、-(CH2)2-NH-、または-(CH2)2-NH-C(O)(CH2)2NH-のうちの1つである。
【0030】
B. Ar成分の説明
式(I)について説明する。見てわかるように、Arは、式(I)に組み入れられたときに多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する成分である。重要な特徴は、Ar成分が本質的に芳香族性であるということである。一般に、芳香族性をもたせるには、環状分子の平面の上側および下側の両方の「雲」内にπ電子を共有しなければならない。さらに、π電子の数は、ヒュッケル則(4n+2)を満たさなければならない。当業者であればわかるであろうが、きわめて多数の成分が、成分の芳香族性の必要条件を満たすので、本発明に使用するのに好適である。いくつかのとくに好ましい芳香族基としては、以下の基が挙げられる。
【化14】

〔式中、R20〜21は、個別に、R2を定義したときと同一の群から選択され、(b)および(d)は、独立して、ゼロまたは1である。〕
【0031】
他の好ましい芳香族炭化水素成分としては、以下の成分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化15】

【化16】

【0032】
以上に列挙された芳香族成分において、Jは、O、S、またはN-R22であり、EおよびZは、独立して、C-R23またはN-R24であり; R22〜24は、独立して、式(I)中のR2を定義したときと同一の群から選択される(たとえば、水素、C1〜6アルキルなど)。ベンゾ系およびジベンゾ系ならびにそれらの関連同族体だけでなく、五員環および六員環の異性体も利用可能であると考えられる。同様に、当業者であればわかるであろうが、ヒュッケル則に従うのであれば、場合により、芳香環を、O、S、NR22などのようなヘテロ原子で置換することができる。さらに、芳香族または複素環式の構造は、場合により、ハロゲンおよび/または側鎖(それらの用語は当技術分野で一般に理解されるとおりの語意を有する)で置換することも可能である。しかしながら、本発明に係るAr成分に好適な構造を用いたとき、いずれの場合にも、同一平面上でY5およびC(R13)(R14)成分をパラ位またはオルト位に配置することが可能である。
【0033】
C. プロドラッグの加水分解による薬物生成
血漿中において加水分解のt1/2が排出のt1/2よりも小さくなるように、本発明のプロドラッグ化合物をデザインする。
【0034】
化合物に含まれる結合は、親化合物(すなわち、アミノまたはヒドロキシルを含有する生物学的活性化合物)を有する十分量の輸送強化コンジュゲートを排出前に放出させるのに十分な程度に速いin vivo加水分解速度(血漿中)を有する。本発明のいくつかの好ましい化合物(すなわち、式(I)および(II)の(n)および(n')が両方とも1である化合物)は、血漿中における加水分解のt1/2が約5分〜約12時間の範囲にある。好ましくは、組成物は、加水分解の血漿中t1/2が約0.5〜約8時間、最も好ましくは約1〜約6時間の範囲にある。
【0035】
D. 実質的に非抗原性のポリマー
上記のように、R1は好ましくは実質上非抗原性であるポリマー残基である。本発明の好ましい態様においては、R1は、ビス系を形成し得る上記のキャッピング基Aをさらに含む。そのようなポリマーの好適な例としては、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンオキシドが挙げられる。PEGおよびその誘導体は一般式
A2'-O-(CH2CH2O)x-(CH2)n3-A2
[式中、(x)は、重合度(つまり、約10〜約2,300)またはポリマー鎖中の繰り返し単位の数を表し、ポリマーの分子量によって決まり、(n3)は、0または正の整数であり、(A2)は、本明細書に定義する通りのキャッピング基(つまり、アミノ、カルボキシ、ハロ、C1-6アルキル、またはその他の活性化基)であり、(A'2)は(A2)と同じであるか、もしくは別の(A2)基である]で表される。ポリプロピレングリコール、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,643,575号明細書に記載されたもののような分岐PEG誘導体、「star-PEG's」およびShearwater Polymers, Inc. カタログ「ポリエチレングリコールの誘導体(Polyethylene Glycol Derivatives)」(1997-1998年)に記載されたような多分岐PEGもまた有用である。各々の開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。水溶性ポリマーは、ここでは、Mを介して結合部位に結合するように官能化され得ると理解されるだろう。例として、本発明のプロドラッグのPEG部分は、限定するものではないが、以下の化合物:
-C(=Y')-(CH2)n3-O-(CH2CH2O)x-A2、-C(=Y')-Y''-(CH2)n3-O-(CH2CH2O)x-A2および-C(=Y')-NR'6-(CH2)n3-0-(CH2CH20)x-A2
[式中、Y'およびY''は独立してOまたはSであり、A2、(n3)、および(x)は、上記に定義した通りであり、R'6はR6を定義する群と同一の群から選択される]のうちの一つであり得る。1999年4月16日に出願された同一譲受人の米国特許出願第09/293,624号および米国特許第6,153,655号も参照のこと。
【0036】
本発明の多くの態様では、二以上置換されたポリマーコンジュゲートが望ましい場合、ビス活性化ポリエチレングリコールが好ましい。あるいは、一置換ポリマーが望ましい場合、ポリエチレングリコール(PEG)、モノ活性化C1-4アルキル末端を有するPAO(モノメチル末端を有するポリエチレングリコール(mPEG))が好ましい。
【0037】
所望の加水分解可能な結合部を提供するために、モノまたはジ-PEGアミンおよびモノまたはジ-PEGジオールだけでなく、PEG酸またはPEG二酸などの一酸または二酸活性化ポリマーも用いることができる。最初にmPEG-OHをエチルエステルに変換した後、鹸化して、適切なPAO酸を合成することが可能である。Gehrhardt, H.ら、「Polymer Bulletin」18:487(1987年)、およびVeronese, F. M.ら、「J. Controlled Release」10; 145(1989年)を参照のこと。場合によっては、mPEG-OHをt-ブチルエステルに変換した後、酸によって切断して、PAO酸を合成することも可能である。例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,605,976号明細書を参照のこと。前述の各々の開示内容は、 参照により本明細書に組み入れらている。
【0038】
PAOおよびPEGの数平均分子量は、かなりの範囲に及びうるが、約2,000〜約100,000ダルトンの範囲のポリマーを通常、本発明の目的のために選択する。約5,000〜約50,000の分子量が好ましく、20,000〜約40,000が特に好ましい。プロドラッグに包含されるように選択されるポリマーの数平均分子量は、リンカーの加水分解前にプロドラッグの十分な循環を提供するのに十分であることが必要とされる。化学療法剤および有機成分に関する一部の態様において、上記に規定した範囲内で、少なくとも20,000の分子量範囲を有するポリマーが好ましい。
【0039】
本明細書に包含される高分子物質は、室温で水溶性であるのが好ましい。上記ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらの共重合体およびそれらのブロック共重合体(但し、ブロック共重合体の水溶性が保持されるという条件で)が挙げられる。
【0040】
PEGのようなPAO系について本明細書に記載したように同じタイプの活性化を採用するならば、PAO系ポリマーに代わるものとして、デキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物系ポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、およびそれらの共重合体などの実質上非抗原性の材料を用いることも可能である。当業者ならば、前述のリストは、単なる具体例にすぎず、本明細書に記載する特性を有する全ての高分子材料が考慮に入れられることを理解するだろう。本発明の意図するところの「実質上(実質的に)非抗原性」は、実質上非毒性であり、哺乳類に感知できるほどの免疫応答を誘導しないとして、当技術分野で理解される全ての高分子材料を含むことが理解されるだろう。
【0041】
ポリプロピレングリコール酸などの前述のその他のポリアルキレンオキシド誘導体、ならびにその他の二官能連結基もまた意図されることが前述の記載から明らかであろう。
【0042】
E. プロドラッグ候補化合物
式(I)および(II)に示されるように、B1およびB2は、独立して選択されるSH含有成分の残基である。好適なSH含有成分のリストには、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、または以下に示されるような他の物質などの生物学的活性物質が包含されるが、これらに限定されるものではない。
【化17】

〔式中、
R30は、H、C1〜6アルキル、アルコキシ、または式:
【化18】

{ここで、R32〜36は、独立して、アルコキシ、たとえば、OR37、またはそのほかにH、OH、N3、NHR38、NO2、またはCN、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードから選択され、R37〜38は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、ハロ、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキルよりなる群から選択され、好ましくは、HまたはC1〜4アルキルである}
で示される炭水化物のうちの1つであり;
R31は、HまたはNH2であり;そして
X3は、CHまたはNである〕
【0043】
1つの好ましいR30成分は、
【化19】

である。
【0044】
本明細書に記載のプロドラッグ系に組み込むための他の好適な候補化合物をとしては、修飾可能なSH基を含有する化学療法剤成分および/または修飾可能なシステイン残基を含有するポリペプチドもしくは酵素などのような生物学的活性化合物が挙げられる。好適な生物学的活性化合物のリストには、1-β-D-リボフラノシル-チオプリン、1-β-D-アラビノフラノシル-チオプリン、ペニシラミン、2-チオウラシル、カプトプリル、チオプロニン、バソプレシン、デアミノオキシトシン、チオペンタールナトリウムなどが包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
ここで組み込むのに好適なタイプのスルフヒドリル含有分子に課せられる唯一の制約は、担体成分と反応してそれに結合することのできる利用可能な少なくとも1つのSH含有位置が存在しかつプロドラッグ系が親化合物の放出および再生を行った後で生物活性の実質的な消失が起こらないことである。
【0046】
本発明に係るプロドラッグ組成物に組み込むのに好適である親化合物は、それら自体、結合された高分子組成物から加水分解により中間体を放出させた後では活性でないがさらなる化学プロセス/反応を行った後で活性になる物質/化合物でありうることに留意すべきである。たとえば、ダブルプロドラッグ輸送系により血流に送達される抗癌薬は、癌細胞または腫瘍細胞に進入するまで不活性な状態を保持することが可能であり、進入すると癌細胞または腫瘍細胞の化学的作用により、たとえば、その細胞に特有の酵素反応により、活性化される。
【0047】
1. 脱離基
B1またはB2が脱離基であるこれらの態様では、好適な脱離基としては、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N-ヒドロキシフタルイミジル、p-ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル; チアゾリジニルチオンのような成分、または当業者に自明である他の良好な脱離基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で使用され説明されている合成反応については、当業者であれば過度の実験を行わなくとも理解されよう。
【0048】
たとえば、化合物(I)のアシル化中間体を、4-ニトロフェニルクロロホルメート、ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、カルボニルジイミダゾール、チアゾリジンチオンなどのような反応物と反応させることにより、所望の活性化誘導体を得ることができる。
【0049】
p-ヒドロキシベンジルアルコールまたはp-アミノベンジルアルコールおよびo-ヒドロキシベンジルアルコールまたはo-アミノベンジルアルコールのフェノール性またはアニリン性部分の選択的アシル化は、たとえば、チアゾリジンチオン活性化ポリマー、スクシンイミジルカーボネート活性化ポリマー、カルボン酸活性化ポリマー、ブロック化アミノ酸誘導体を用いて行うことができる。所定の位置に組み込んだ後、「活性化」形態のPEGプロドラッグ(またはブロック化プロドラッグ)をスルフヒドリル含有化合物とのコンジュゲーションに供することができる。
【0050】
F. 高分子プロドラッグ輸送系の合成
代表的なポリマープロドラッグの合成について実施例で説明する。しかしながら、一般的には、プロドラッグ輸送系の好ましい一調製方法では、最初にポリマー残基を分枝基に結合させる。それとは別に、生物学的活性成分または薬物、たとえば、薬物-SH(式IのB1またはB2)を、ポリマーへの結合位置に二官能性スペーサーが含まれていてもよいBE成分に結合させる。次に、末端分枝を含有する高分子残基を、最終生成物を形成するのに十分な条件下で、薬物-BE部分と反応させる。
【0051】
BE-薬物成分を含有する二官能性スペーサーをポリマー部分に結合させる処理は、好ましくは、カップリング剤の存在下で行う。好適なカップリング剤のリストには、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、任意の好適なジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハリド(Mukaiyama試薬)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)、およびフェニルジクロロホスフェートなどが包含されるが、これらに限定されるものではない。これらは、たとえば、Sigma-Aldrich Chemicalのような供給業者から入手可能であるかまたは公知の方法を用いて合成される。
【0052】
好ましくは、塩化メチレン、クロロホルム、DMF、またはそれらの混合物のような不活性溶媒中で置換基を反応させる。また、好ましくは、発生した酸を中和するためにジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミンなどのような塩基の存在下で、かつ0℃〜約22℃(室温)の温度で、反応を行う。
【0053】
より特定的には、高分子輸送系の一調製方法は、式(VIII):
【化20】

〔式中、
(v)および(t)は、独立して、0または1であり;
L1およびL2は、独立して選択されるヘテロ二官能性リンカーであり;
Y4〜5は、独立して、O、S、およびNR16よりなる群から選択され;
R12〜14およびR16は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
Arは、式(I)に組み入れられたときに多置換芳香族炭化水素基または多置換複素環式基を形成する成分であり; そして
B1'は、スルフヒドリル含有成分の残基である〕
で示される化合物を、式(IX):
【化21】

〔式中、
E5は、
【化22】

であり;
E6〜8は、独立して、H、E5、または
【化23】

であり、
ここで、D3およびD4は、独立して、OH、または非保護アミンと反応することのできる脱離基、または
【化24】

{ここで、R'4およびR'5は、R4を定義したときと同一の群から選択され; E15〜18は、E5〜8を定義したときと同一の群から選択されるが、ただし、D3およびD4は、以下に定義されるD'3およびD'4に変更されるものとする。この実施形態の範囲内では、D'3およびD'4は、独立して、OH、式(IV)もしくは(V)または
【化25】

(ここで、R"4およびR"5は、独立して、R4を定義したときと同一の群から選択され、E25〜28は、E5〜8を定義したときと同一の群から選択されるが、ただし、D3およびD4は、独立してOHであるかまたは非保護アミンと反応することのできる脱離基であると定義されるD"3およびD"4に変更される。そのような合成法を用いると、たとえば、16当量までのカルボン酸または活性化カルボン酸を結合させることができる。本明細書中に好ましい構造として示されるように、末端分枝化マルチ酸を有するPEG残基は、本発明の好ましい態様である)
で示される部分でありうる}
である〕
で示される化合物と、反応させることを含む。
【0054】
式(IX)に戻って説明すると、R1は、高分子残基であり; Y1は、O、S、またはNR10であり; Mは、O、S、またはNR11であり; (m)、(n)、および(p)は、独立して、0または正の整数であり; Y2〜3は、独立して、O、S、またはNR15であり; そしてR2〜9およびR15は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択される。
【0055】
選択される合成法には関係なく、本明細書に記載の合成法により得られる好ましい化合物のいくつかを以下に挙げる。
【0056】
R1-D、D-R1-D、
【化26】

【化27】

【化28】

【0057】
上記式中、R1はPEG残基であり、Dは、OH、式(IV)または(V)である。好ましくは、Dは、
【化29】

【化30】

である。上記式中、B1はスルフヒドリル含有薬物の残基である。
【0058】
G. in vivoでの診断
本発明のさらなる態様は、任意に診断タグを上記の輸送エンハンサーに結合することで調製された本発明のコンジュゲートを提供し、ここでこのタグは診断またはイメージング目的のために選択される。従って、任意の適切な基(例えば、アミノ酸残基)を、任意の当技術分野で標準である放射性同位体、放射線不透過性ラベル、 磁気共鳴ラベル、または磁気共鳴画像に適切なその他の非放射性同位体ラベル、蛍光タイプのラベル、可視色を呈するラベルおよび/または紫外線、赤外線、または電気化学的な刺激下で蛍光を放ちうるラベルに結合させることによって適切なタグを調製して、外科的処置中および処置後に、腫瘍組織の画像化することができる。場合によっては、コンジュゲートされた治療効果のある成分に診断タグを組み入れるおよび/または結合させ、動物またはヒト患者の体内で治療目的の生物活性物質の分布をモニターすることができる。
【0059】
本発明のさらなる態様において、本発明のタグ付けしたコンジュゲートは、当技術分野で公知の方法に従い、いずれかの適切なラベル(例えば、放射性同位体ラベルなど)を用いて容易に調製される。簡潔に例を挙げると、これらには、in vivoにおける腫瘍細胞への選択的取込みのための放射免疫シンチグラフィー造影剤を生成する131ヨウ素、125ヨウ素、99mテクネチウムおよび/または111インジウムがある。例えば、ペプチドをTc-99mに結合させる当技術分野で公知の方法は非常に多く、簡潔な例として、米国特許第5,328,679号明細書、同5,888,474号、同5,997,844号、および同5,997,845号で、示される例が挙げられる(これらは参照により本明細書に組み入れらる)。
【0060】
概して、患者の腫瘍組織の解剖学的位置確認のため、コンジュゲートタグを、腫瘍を有すると疑われる患者または動物に投与する。ラベルした免疫グロブリンが腫瘍部位に局在化するのに十分な時間が経過した後に、例えば、目視で、X線撮影法、コンピュータ断層撮影、MRI、機器分析によるルミネッセンス標識の検出、ガンマカメラなどのフォトスキャナー装置による方法、またはその他の選択した標識の性質に適した方法または機器を用いて、ラベルにより生じるシグナルを探知する。
【0061】
次いで検出したシグナルを画像に変換するか、或いは解剖学的および/または生理学的に腫瘍部位を確認する。画像によって、in vivoで腫瘍の位置を突き止め、適切な治療方針を考案できる。タグ付けした成分自体が治療薬剤である上記の実施形態において、検出したシグナルは、治療中に、解剖学的位置確認の証拠を提供するものであり、追跡診断および治療介入のためのベースラインを提供する。
【0062】
H. 処置方法
本発明のさらに他の態様は、哺乳動物における種々の病状の処置方法を提供する。当業者には自明なことであろうが、本発明のプロドラッグは、非修飾生物学的有効化合物を使用するときと同一もしくは類似の疾患もしくは障害を処置するために利用されるかまたは同一もしくは類似の診断目的のために適用される。
【0063】
本方法は、本明細書に記載されているように調製された有効量のプロドラッグ(たとえば、6-メルカプトプリンPEGコンジュゲート)をそのような処置を必要とする哺乳動物に投与することを含む。組成物は、とくに、哺乳動物における新生物性疾患の処置、全身腫瘍組織量の減少、新生物転移の防止、腫瘍再発/新生物性増殖の防止に有用である。さらに、6-メルカプトプリンPEGコンジュゲートは、一般的には、異常細胞増殖をモジュレートするのに有用であり、とくに、自己免疫性の疾患および障害、たとえば、多発性硬化症および多くの他の当技術分野で公知のそのような症状を処置したりかつ/またはモジュレートしたりするのに有用である。
【0064】
投与されるプロドラッグの量は、それに含まれる親分子に依存するであろう。一般的には、処置方法で使用されるプロドラッグの量は、哺乳動物において所望の治療結果が効果的に得られる量である。当然のことながら、種々のプロドラッグ化合物の用量は、親化合物、in vivo加水分解の速度、ポリマーの分子量などに依存していくらか変化するであろう。しかしながら、一般的には、プロドラッグである6-メルカプト-プリンPEGコンジュゲートは、プロドラッグ1mgあたりの6-メルカプトプリン部分のモル量に基づいて1日あたり約0.5〜約3.0mg/kgの範囲の量で投与される。
【0065】
上述した範囲は例示的なものであり、当業者により臨床経験および処置適応症に基づいて所定のプロドラッグの最適投与が決定されるであろう。実際の用量は、過度の実験を行わなくとも当業者には自明であろう。
【0066】
本発明のプロドラッグは、哺乳動物に投与するのに好適である1つ以上の医薬組成物に組み込むことができる。医薬組成物は、当技術分野で周知の方法に従って調製される溶液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤などの形態をとることが可能である。また、そのような組成物の投与は当該技師のニーズに応じて経口経路および/または非経口経路により行うことができると考えられる。たとえば、組成物の溶液および/または懸濁液は、当技術分野で公知である任意の方法により、たとえば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射などにより、組成物の注射用または浸潤用担体ビヒクルとして利用することが可能である。
【0067】
また、そのような投与は、注入により、さらには吸入および/または鼻腔内経路により、生体の空間または腔に導入することも可能である。しかしながら、本発明の好ましい態様では、プロドラッグは、当技術分野で公知である種々の非経口経路により、それを必要とする哺乳動物に投与される。
【0068】
本明細書中において6-メルカプトプリンを例として示してきたが、その範囲では、本発明に係る6-MPのポリマーコンジュゲートは、非修飾6-MPおよび/またはいくらかの有用性もしくは可能性を有することがすでに知られている6-MPのプロドラッグであるアザチオプリンのときと同一の範囲の疾患または障害を処置するために容易に利用されると言える。
【実施例】
【0069】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を提供するのに役立つが、本発明の有効範囲をなんら限定しようとするものではない。実施例に記載の下線付きおよび太字の数字は、図に示される数字に対応する。
【0070】
実験
概要
すべての反応を乾燥した窒素またはアルゴンの雰囲気下で行った。さらなる精製を行うことなく市販の試薬を使用した。使用前、すべてのPEG化合物を真空下でまたは共沸蒸留(トルエン)により乾燥させた。明記されていないかぎり、溶媒としてジュウテリオクロロホルムを用いてVarian MercuryVX-300装置により1Hスペクトルを取得した。13C NMRスペクトルは、Varian MercuryVX-300により75.46MHzで取得した。化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(TMS)の位置から低磁場側に百万分率(ppm)で報告されおり、結合定数(J値)は、ヘルツ(Hz)単位で与えられている。
【0071】
HPLC法
移動相としてメタノール-水の1:1混合物(v/v)を用いてイソクラティック条件下でサイズ排除カラム(PolySep-GFC-P3000, Phenomenex)により分析用HPLCを行った。UV検出器により254nmでピーク溶出をモニターした。遊離のPEGが存在するかを検出するために、さらにPEG化生成物の存在を確認するために、蒸発光散乱検出器(ELSD)(Model 5000 ELSD (Alltech))を利用した。ELSDおよびUV分析に基づいて、いずれの最終PEG化生成物にも、原料の薬物は含まれておらず、そのHPLC純度は≧95%であった。
【0072】
PEG誘導体中の6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニン含有率の分析
PEG誘導体中の6-メルカプトプリン含有率を決定するために、H2O中の90% MeOH(v/v)における6-メルカプトプリンのUV吸光度を277nmにおいて0.02μmol/mL〜0.10μmol/mLの範囲の5つの異なる濃度で測定した。吸光度vs濃度の標準プロットから6-メルカプトプリンの吸収係数εを計算したところ、21.6であった(1.0cmの光路を用いて277nmにおいて1mg/mLで測定したときのO.D.)。PEG化6-メルカプトプリン誘導体を0.006μmol/mL(40,000のMWに基づく)のおよその濃度でH2O中の90% MeOH(v/v)に溶解させ、277nmにおけるこれらの化合物のUV吸光度を測定した。この値を用いてかつ以上で得られた吸収係数εを利用して、サンプル中の6-メルカプトプリンの濃度を決定した。この値をサンプル濃度で割ることにより、サンプル中の6-メルカプトプリンのパーセントを求めた。6-TGサンプルを同じ方法で分析した。
【0073】
PEGプロドラッグの加水分解速度の決定
加水分解速度は、(a)0.1M酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液と(b)アセトニトリルとからなるグラジエント移動相を用いたC8逆相カラム(Zorbax(登録商標) SB-C8)を利用して取得した。1mL/分の流量を使用し、6-メルカプトプリンのクロマトグラムを254nmでUV検出器を用いてモニターした。血漿中における加水分解を調べるために、誘導体を20mg/mLの濃度でアセトニトリルに溶解させた。溶液を100μLずつバイアルに分配し、真空中で溶媒を除去した。残渣に100μLの血漿を添加してから、混合物を10秒間渦攪拌した。種々の時間にわたり37℃で溶液をインキュベートした。メタノール-アセトニトリルの混合物(1:1, v/v, 400μL)を適切な間隔でバイアルに添加し、混合物を1分間渦攪拌し、続いて、0.45μmの濾過膜に通して濾過した(場合により、続いて、0.2μmの濾過膜に通して2回目の濾過を行った)。濾液の40μLのアリコートをHPLCに注入した。ピーク面積に基づいて、原料化合物およびPEG誘導体の量を推定し、線形回帰分析を用いてPEG誘導体の消失から異なる媒質中における各化合物の半減期を計算した。
【0074】
略号
DCM(ジクロロメタン)、DMAP(4-(ジメチルアミノ)ピリジン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DSC(N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、IPA(2-プロパノール)、TBDMS-Cl(tert-ブチルジメチルシリルクロリド)、TFA(トリフルオロ酢酸)。
【0075】
実施例1
化合物4
DMF(50mL)中の4-ヒドロキシメチルフェノール(3, 9.3g, 75mmol)の溶液を無水窒素ガスで10分間フラッシングし、続いて、TBDMS-Cl(12.44g, 82mmol)を添加した。反応混合物を0℃まで冷却させ、続いて、DMF(25mL)中のTEA(30.36g, 300mmol)の溶液を添加した。反応溶液を室温で一晩攪拌し、真空中で濃縮した。残渣を水(100mL)とDCM(200mL)との間で分配させてDCM中に生成物を2回抽出した。有機層を合せて無水MgSO4で脱水し、続いて、真空中で溶媒を除去し、生成物4(16.3g, 91%)を得た: 13C NMR δ-5.344 (2 Si x CH3), 18.285 (Si-C(CH3)3), 25.850 (Si-C(CH3)3), 64.840 (Ar-CH2O), 115.221 (Ar-C2), 127.842(Ar-C3), 132.962 (Ar-C4), 155.248 (Ar-C1)。
【0076】
実施例2
化合物7
ピリジン(983mg, 12.43mmol)をCHCl3(140mL)中の4(2.7g, 11.3mmol)およびDSC(3.18g, 12.43mmol)の懸濁液に添加し、混合物を一晩還流させ、続いて、室温まで冷却させた。モノ-Boc-ジアミンスペーサー(6, 3.398g, 13.7mmol)を溶液に添加し、反応混合物を室温で一晩攪拌し、続いて、0.1N HCl(3×100mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。有機層を無水MgSO4で脱水し、真空中で溶媒を除去した。残渣をヘキサン(100mL)に溶解させ、続いて、不溶性不純物を濾過した。ヘキサン濾液を濃縮して生成物7(5.1g, 88%)を得た: 13C NMR δ -5.469 (2 x Si-CH3), 18.235 (Si-C(CH3)3), 25.790 (Si-C(CH3)3), 28.263 (O-C(CH3)3), 40.230 (CH2NH), 40.917 (CH2NH), 64.392 (Ar-CH2O), 69.892 (CH2O), 70.192 (CH2O), 70.253 (CH2O), 79.305 (OC(CH3)3), 121.371 (Ar-C2), 126.943 (Ar-C3), 138.482 (Ar-C4), 149.960 (OC(=O)NH), 154.936 (OC(=O)NH), 156.096 (Ar-C1)。
【0077】
実施例3
化合物8
化合物7(5g, 9.76mmol)をアセトニトリル(30mL)および水(30mL)に溶解させ、続いて、HOAc(90mL)を添加した。反応混合物を室温で1.5時間攪拌し、続いて、溶媒を除去した。残渣をDCM(300mL)に溶解させ、水(3×300mL)で洗浄し、無水MgSO4で脱水した。溶媒を真空中で除去して生成物8(4.1g, 80%)を得た: 13C NMR δ 28.233 (OC(CH3)3), 40.184 (CH2NH), 40.871 (CH2NH), 64.484 (Ar-CH2O), 69.811-70.191 (4 x CH2O), 79.228 (OC(CH3)3), 121.661 (Ar-C2), 127.950 (Ar-C3), 138.177 (Ar-C4), 150.418 (OC(=O)NH), 154.875 (OC(=O)NH), 156.111 (Ar-C1)。
【0078】
実施例4
化合物9
塩化チオニル(314mg, 2.64mmol)を0℃でピリジン(356mg, 4.5mmol)およびDCM(30mL)中の8(360mg, 0.9mmol)の溶液に添加した。混合物を0〜20℃で3時間攪拌し、続いて、水(3×30 mL)で洗浄した。有機層を無水MgSO4で脱水し、溶媒を真空中で除去し、生成物9(320mg, 85%)を得た: 13C NMR δ 28.449, 40.385, 41.103, 45.680, 69.846, 70.295, 121.782, 129.513, 134.295, 150.872, 154.295, 155.833。
【0079】
実施例5
化合物10
EDC・HClをDMF(40mL)中の6-MP一水和物(1, 1.66g, 9.77mmol)およびK2CO3(1.35g, 9.77mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で1時間攪拌し、続いて、9(3.7g, 8.88mmol)を添加した。反応混合物を室温で4時間攪拌し、濾過し、そして濾液を濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3中の0〜20% MeOH, v/v)により残渣を精製して0.7g(15%)の生成物10を得た: 13C NMR δ 28.442, 32.346, 40.397, 41.127, 69.979, 70.299, 79.592, 121.935, 130.319, 134.722, 141.890, 150.405, 151.900, 151.990, 155.126, 156.342。分析(C24H32N6O6S) C, H, N。
【0080】
実施例6
化合物11
Boc前駆体(10, 180mg, 0.34mmol)をDCM(4mL)およびTFA(2mL)に溶解させ、混合物を室温で2時間攪拌した。溶媒を真空中で除去し、続いて、エーテルの添加により固体を沈澱させ、それを濾過後にエーテルで洗浄し、生成物(175mg, 95%)を得た: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 15.142, 32.481, 39.518, 40.769, 40.891, 66.015, 66.656, 69.892, 69.984, 70.106, 70.152, 121.804, 130.199, 134.320, 142.547, 149.599, 150.332, 151.797, 155.521, 159.429。
【0081】
実施例7
化合物13
DCM(5mL)中のトリエチルアミン(5mL、35.87mmol)の溶液を、1時間かけて0℃で、DCM(10mL)中の4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジルアルコール(12, 1.0g, 6.58mmol)およびTBDMS-Cl(1.61g, 10.7mmol)の溶液に徐々に添加した。最終溶液を室温まで加温し、室温で一晩攪拌した。TLCにより反応の終了を確認し、溶媒を真空中で除去し、残渣をDCMに溶解させ、続いて、水で4回洗浄し、1.5g(86%)の生成物13を得た: 1H NMR δ 0.00 (s, 6H, 2 x CH3), 0.84 (s, 9H, 3 x CH3), 2.11 (s, 6H, 2 x Ar-CH3), 4.50 (s, 3H, Ar-CH2OH), 6.82 (s, 2H, 2 x Ar-H); 13C NMR δ -3.25, 15.91, 18.48, 26.01, 64.91, 122.84, 126.93, 132.85, 151.15。
【0082】
実施例8
化合物15
トリホスゲン(0.68g, 1.91mmol)およびピリジン(0.949g, 12mmol)をクロロホルム(100mL)中の13(1.33g, 5.00mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で6時間攪拌し、続いて、6(5.0g, 9.8mmol)を添加した。混合物を室温で一晩攪拌した。反応溶液を0.1N HCL(3×10mL)、水(10mL)で洗浄し、無水MgSO4で脱水し、続いて、真空中で溶媒を除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の30〜40% EtOAc)により残渣を精製して2.5g(93%)の生成物15を得た: 13C NMR δ -5.235 (2 x Si-CH3), 16.359, 18.483 (Si-C(CH3)3), 26.036, 28.455 (Si-C(CH3)3), 30.989 (O-C(CH3)3), 40.423 (CH2NH), 41.178 (CH2NH), 64.478 (Ar-CH2O), 70.209 (CH2O), 70.376 (CH2O), 70.516 (CH2O), 79.438 (OC(CH3)3), 126.402, 130.792, 138.639, 147.151, 154.486, 156.227 (Ar-C)。
【0083】
実施例9
化合物16
化合物15を実施例3の条件に付して収率38%で16を調製した: 13C NMR δ 16.282, 28.442, 40.423, 41.204, 65.012, 70.171, 70.414, 70.516, 79.528, 127.439, 131.305, 138.345, 147.740, 154.409, 156.252。
【0084】
実施例10
化合物17
アセトン(5mL)およびアセトニトリル(5mL)中の16(800mg, 1.88mmol)、Ph3P(740mg, 2.82mmol)、およびCCl4(1.74g, 11.28mmol)の混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空中で除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:1エチルアセテート-ヘキサン, v/v)により残渣を精製し、400mg(96%)の生成物17を得た: 13C NMR δ 14.213, 16.264, 28.412, 40.692, 41.193, 45.954, 70.055, 70.350, 70.462, 79.479, 128.832, 131.500, 134.562, 148.199, 153.958, 156.563。
【0085】
実施例11
化合物18
DMF(40mL, 1時間攪拌することにより)中の6-MP一水和物(1, 0.17g, 1.0mmol)およびK2CO3(0.14g, 1.0mmol)の溶液に化合物17(0.4g, 0.9mmol)を添加し、混合物を室温で4時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾過ケーキをDCMで洗浄した。濾液を真空中で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3中の0〜10% MeOH, v/v)により残渣を精製し、0.34g(67%)の生成物18を得た: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 16.438, 16.460, 28.525, 40.477, 41.221, 70.321, 70.560, 79.872, 125.483, 128.508, 128.944, 129.604, 131.584, 132.258, 132.946, 147.651, 152.117。
【0086】
実施例12
化合物19
化合物18を実施例6の条件に付して収率95%で19を調製した: 1H NMRデータにより反応の終了を確認した。
【0087】
実施例13
化合物21
一般的手順
Boc-AA-OSu(20a〜c, 6.5 mmol)をDCM(400mL)中のp-アミノベンジルアルコール(8.0g, 6.5mmol)の溶液に添加し、溶液を室温で一晩攪拌し、続いて、-20℃まで冷却させた。沈殿を濾過し、濾液を水(200mL)で洗浄し、無水MgSO4で脱水した。溶媒を真空中で除去し、残渣を熱EtOAcから再結晶させ、生成物(21a〜c)を得た。
【0088】
化合物21a. 収率75%でBoc-gly-OSuから調製した: 13C NMR δ 25.437, 28.420, 45.175, 64.708, 67.217, 80.798, 120.479, 128.005, 137.081, 137.349, 156.959, 168.595, 172.725。
【0089】
化合物21b. 収率70%でBoc-ala-OSuから調製した: 13C NMR δ 17.677, 18.407, 28.365, 50.881, 64.961, 80.859, 120.092, 127.951, 136.860, 137.500, 156.495, 171.472。
【0090】
化合物21c. 収率80%でBoc-leu-OSuから調製した: 13C NMR δ 21.562, 22.919, 25.428, 28.218, 41.011, 53.345, 64.597, 80.315, 119.855, 127.586, 136.495, 137.379, 154.992, 156.592, 171.798。
【0091】
実施例14
化合物22
実施例4に記載されているように21a〜cから調製した。
【0092】
化合物22a. 収率80%で21aから調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 17.485, 18.816, 28.480, 46.260, 55.066, 80.051, 120.654, 129.845, 134.030, 138.587, 150.095, 169.372。
【0093】
化合物22b. 収率75%で21bから調製した: 13C NMR δ 17.331, 18.304, 27.469, 50.881, 52.878, 80.923, 120.053, 133.378, 138.281, 137.500, 156.572, 171.177。
【0094】
化合物22c. 収率75%で21cから調製した: 13C NMR δ 21.760, 23.053, 24.820, 28.391, 41.076, 46.119, 54.017, 80.641, 120.066, 139.397, 133.225, 138.332, 156.777, 172.086。
【0095】
実施例15
化合物23
Mでは6-MPを、MRでは6-MPRを、Tでは6-TGを用いて、実施例11に記載されているように22a〜cから調製した。
【0096】
化合物23aM. 収率64%で22aおよび1から調製した: 1H NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 1.468 (s, 9H, 3´CH3), 3.868 (s, 2H, CH2NH), 4.761 (s, 2H, CH2S), 7.464 (ABq, 4H, J = 23.0 Hz, 8.5 Hz, Ar-H), 7.675 (1H, NH), 8.227 (s, 1H, Ar-H of 6-MP), 8.729 (s, 1H, Ar-H of 6-MP); 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 28.567, 33.047, 44.704, 49.030, 80.602, 120.896, 130.306, 133.986, 137.988, 152.454, 169.701。
【0097】
化合物23aT. 収率58%で22aおよび2から調製した: 1H NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 1.468 (s, 9H, Boc), 3.347 (s, 2H, NH2), 3.875 (s, 2H, CH2NH), 4.536 (s, 2H, CH2S), 7.446 (ABq, 4H, J = 25.75 Hz, 8.19 Hz, Ar-H), 7.648 (1H, プリンのAr-H), 7.804 (s, 1H, プリンのAr-H); 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 28.525, 32.584, 44.662, 49.816, 80.602, 120.798, 130.208, 134.421, 137.693, 139.252, 157.679, 160.249, 169.561。
【0098】
化合物23bM. 収率63%で22bおよび1から調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 18.560, 28.352, 32.692, 50.599, 80.500, 120.245, 120.501, 128.949, 149.499, 129.896, 133.262, 137.346, 142.031, 151.835, 156.277, 171.983。
【0099】
化合物23bMR. 収率67%で22bおよび6-メルカプトプリンリボシド(1b)から調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 17.782, 27.429, 27.654, 32.019, 50.205, 61.910, 62.025, 70.833, 73.608, 79.615, 85.500, 90.026, 119.941, 119.749, 129.077, 130.051, 131.231, 132.461, 136.678, 136.783, 142.564, 146.731, 150.546, 155.584, 161.025, 171.492。
【0100】
化合物23bT. 収率21%で22bおよび2から調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 18.611, 28.468, 32.525, 42.060, 80.551, 120.603, 130.024, 134.094, 137.512, 139.368, 144.450, 156.559, 159.797, 172.687, 189.340。
【0101】
化合物23cM. 収率50%で22cおよび1から調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 21.341, 22.570, 24.618, 27.895, 32.337, 41.361, 53.623, 79.876, 120.197, 129.516, 133.138, 137.157, 142.354, 151.622, 156.213, 157.032, 172.358。
【0102】
化合物23cT. 化合物22cおよび2を23cTに変換した。
【0103】
実施例16
化合物24
実施例6に記載されているように23a〜cから調製した。
【0104】
化合物24aM. 収率95%で23aMから調製した。
【0105】
化合物24aT. 収率94%で23aTから調製した。1H NMRデータにより反応の終了を確認した。
【0106】
化合物24bM. 収率99%で23bMから調製した。1H NMRデータにより反応の終了を確認した。
【0107】
化合物24bMR. 収率93%で23bMRから調製した。1H NMRデータにより反応の終了を確認した。
【0108】
化合物24bT. 収率97%で23bTから調製した。1H NMRデータにより反応の終了を確認した。
【0109】
化合物24cM. 収率84%で23cMから調製した。1H NMRデータにより反応の終了を確認した。
【0110】
化合物24cT. 化合物23cTを24cTに変換した。
【0111】
実施例17
化合物26
一般的手順
無水DCM(60mL)およびDMF(30mL)中の24(3.4mmol)、25(3.7mmol)、およびDMAP(14.8mmol)の混合物にEDC・HCl(7.4mmol)を0℃で添加し、混合物を0℃〜室温で一晩攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をエチルアセテートに再溶解させて水(2×150mL)で洗浄し、無水MgSO4で脱水した。溶媒を真空中で除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製し、26を得た。
【0112】
Åa!xoYaβaE-u
79.783, 120.460, 130.107, 133.617, 137.616, 142.302, 152.147, 157.322, 167.701, 171.944。
【0113】
化合物26aT. 収率73%で24aTから調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 28.512, 32.466, 40.647, 42.799, 70.380, 70.533, 70.716, 71.495, 79.798, 120.445, 130.061, 134.106, 137.479, 139.067, 157.352, 159.840, 167.732, 171.975。
【0114】
化合物26bM. 収率70%で24bMから調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 18.880, 28.519, 32.820, 40.577, 40.679, 70.260, 70.388, 70.772, 71.438, 79.732, 120.501, 130.062, 133.659, 137.653, 142.197, 152.104, 148.301, 170.985, 171.279。
【0115】
化合物26bT. 収率75%で24bTから調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 18.906, 28.557, 32.500, 40.743, 70.337, 70.465, 70.810, 71.489, 79.771, 120.565, 130.062, 134.210, 137.589, 139.010, 157.429, 159.887, 171.087, 171.407。
【0116】
化合物26cM. 収率71%で24cMから調製した: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 22.119, 23.040, 25.024, 28.532, 32.781, 40.525, 41.895, 52.071, 70.222, 70.952, 71.400, 79.720, 120.552, 130.127, 133.634, 137.666, 142.543, 152.169, 167.289, 171.100, 171.254, 171.318。
【0117】
化合物26cT. 化合物26cTを24cTに変換した。
【0118】
実施例18
化合物27
実施例6に記載されているように26から調製した。
【0119】
化合物27aM. 収率90%で26aMから調製した。1H NMRデータから反応の終了を確認した。
【0120】
化合物27aT. 収率97%で26aTから調製した。1H NMRデータから反応の終了を確認した。
【0121】
化合物27bM. 収率85%で26bMから調製した。1H NMRデータから反応の終了を確認した。
【0122】
化合物27bT. 収率93%で26bTから調製した。1H NMRデータから反応の終了を確認した。
【0123】
化合物27cM. 収率94%で26cMから調製した。1H NMRデータから反応の終了を確認した。
【0124】
化合物27cT. 化合物26cTを24cTに変換した。
【0125】
実施例19
化合物29
無水DCM(50mL)中のT-PEG(28, mw. 40,000, 5.0g, 0.125mmol)、11(180mg, 0.329mmol)、およびDIEA(64.65mg, 0.5mmol)の混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をIPA(500mL)から2回再結晶させ、生成物29(4.5g, 4.5%)を得た。UVアッセイにより測定された6-MPの量は、0.74% wt/wtであった: 13C NMR δ 32.120, 38.539, 41.042, 42.850, 69.746-70.897 (PEG), 121.543, 130.054, 134.562, 142.413, 150.194, 151.795, 154.632, 170.025。
【0126】
実施例20
化合物31
一般的手順
無水DCM(15mL)およびDMF(5mL)中のPEG-cmc-アスパラギン酸-OH(30, 0.05 mmol)、TFA NH2-スペーサー 6-MP (11, 19, または27, 0.4 mmol)、およびDMAP(1.6mmol)の混合物にEDC・HCl(0.8mmol)を0℃で添加し、混合物を0℃〜室温で一晩攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をIPAから再結晶させ、生成物31を得た。
【0127】
化合物31a. 収率90%で11から調製した。UVアッセイにより測定された6-MPの量は、1.27% wt/wtであった。: 13C NMR δ 32.022, 37.331, 39.185, 40.968, 49.578, 61.544, 69.437-70.869 (PEG), 121.585, 130.517, 134.590, 142.146, 149.112, 150.194, 151.753, 154.800, 159.379, 170.376, 170.643。
【0128】
化合物31b. 収率94%で19から調製した。: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 16.995, 38.778, 40.253, 41.025, 41.826, 43.792, 53.090, 54.115, 65.379, 70.350, 70.435-71.334 (PEG), 129.169, 132.821, 133.945, 148.635, 149.225, 156.037, 171.992, 172.975。
【0129】
化合物31c. 収率87%で27aMから調製した。UVアッセイにより測定された6-MPの量は、1.45% wt/wtであった。: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 31.846, 37.155, 38.686, 38.789, 38.897, 47.408, 51.467, 16.798, 68.728-70.399 (PEG), 119.443, 119.527, 129.162, 132.575, 136.620, 151.212, 155.903, 166.928, 167.026, 170.383, 170.917, 170.973, 171.436。
【0130】
化合物31d. 収率88%で27aTから調製した。UVアッセイにより測定された6-TGの量は、1.42% wt/wtであった。: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 31.187, 37.029, 38.532, 38.616, 39.094, 41.678, 51.147, 63.615, 66.214, 68.545-71.832 (PEG), 119.274, 119.359, 128.923, 133.038, 133.277, 136.381, 136.451, 138.529, 155.832, 158.852, 166.914, 166.998, 170.242, 170.902, 171.338。
【0131】
化合物31e. 収率88%で24bMから調製した。UVアッセイにより測定された6-MPの量は、1.46% wt/wtであった。: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 17.626, 17.724, 32.766, 38.272, 52.443, 64.760, 69.675-71.459 (PEG), 120.713, 129.955, 133.480, 133.564, 137.848, 137.932, 143.213, 152.202, 157.145, 159.477, 171.358, 171.808, 171.934, 172.299。
【0132】
化合物31f. 収率95%で24bMRから調製した。UVアッセイにより測定された6-MPの量は、1.44% wt/wtであった。: 13C NMR (D2O) δ 19.532, 34.450, 52.079, 54.339, 54.046, 67.007, 71.566, 72.014-74.867 (PEG), 76.486, 80.390, 91.165, 122.918, 132.061, 132.865. 135.511, 139.115, 145.478, 149.278, 153.751, 158.536, 163.961, 173.007, 174.921。
【0133】
化合物31g. 収率90%で27bMから調製した。UVアッセイにより測定された6-MPの量は、1.46% wt/wtであった。: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 18.454, 32.283, 38.853, 51.530, 40.703, 63.848, 65.359, 67.145, 68.091-71.893 (PEG), 119.117, 128.611, 132.045, 134.335, 136.075, 141.051, 150.469, 155.063, 169.396。
【0134】
化合物31h. 収率88%で27bTから調製した。UVアッセイにより測定された6-TGの量は、1.32% wt/wtであった。: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 18.792, 32.275, 37.991, 39.564, 52.232, 64.605, 69.535-71.136 (PEG), 120.348, 120.475, 129.955, 134.014, 134.252, 137.413, 139.449, 156.752, 159.701, 170.993, 171.331, 172.285。
【0135】
化合物31i. 収率85%で27cMから調製した。UVアッセイにより測定された6-MPの量は、1.17% wt/wtであった。: 13C NMR (CDCl3 + CD3OD) δ 20.260, 21.566, 23.757, 30.962, 38.237, 40.554, 50.737, 59.922, 61.776, 62.675, 63.236, 67.085-71.396 (PEG), 119.176, 128.544, 132.476, 136.535, 141.984, 150.706, 160.607, 169.905。
【0136】
化合物31j. 同一の手順で27cTを化合物31jに変換した。
【0137】
実施例21
化合物33
無水DCM(50mL)およびDMF(5mL)中のPEG-cmc-アスパラギン酸-アスパラギン酸-OH (32, 4.0g, 0.1mmol)、27bM(800mg, 1.2mmol)、およびDMAP(586mg, 4.8mmol)の混合物にEDC・HCl(461mg, 2.4mmol)を0℃で添加し、混合物を0℃〜室温で一晩攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をIPAから再結晶させ、生成物33(3.5g, 3.5%)を得た。UVアッセイにより測定された6-MPの量は、2.57% wt/wtであった: 13C NMR (CD3Cl + CD3OD) δ 18.876, 24.016, 30.814, 32.878, 37.808, 39.845, 64.928, 69.802-71.431 (PEG), 120.784, 130.222, 134.028, 137.946, 143.115, 152.356, 171.443, 171.822。
【0138】
実施例22
in vitro実験
細胞系および細胞傷害性アッセイ. P388/0細胞系を用いてIC50(細胞の増殖を50%阻害する薬物濃度)を調べる試験を、すでに報告されているとおりに、そのままの条件で行った。簡潔に述べると、IC50を決定するために、各ウェル50μLあたり2×103細胞の密度でマイクロウェルプレート中に細胞を接種した。5% CO2を有する加湿されたインキュベーター中、37℃で、プレートを3日間インキュベートした。10μL/ウェルのAlamar Blue (Alamar Biosciences, Inc., Sacramento, CA)を添加することにより細胞増殖を測定し、プレートを37℃でさらに4時間インキュベートした。吸光度vs希釈係数のプロットから各化合物のIC50値を決定した。動物への埋植用のすべての細胞培養物を5% CO2/95% O2の加湿雰囲気中で37℃に保持し、毎週一回、継代培養した。すべての細胞系に対して定期的にマイコプラズマ試験を行ったところ、マイコプラズマは含まれていなかった。結果を表1に示す。
【表1】

【0139】
実施例23
M109腫瘍モデルを用いたin vivo実験
in vivo埋植に供すべく、ドナーマウス由来のM109細胞(NCI)の増殖および増大を組織培養により行った。10% FBSおよび1%ストレプトマイシン/ペニシリンを有するEMEM培地中で細胞を増殖させ、5% CO2を有する37℃のインキュベーター中に保持し、毎週2回、分割した。細胞をトリプシン処理し、採取し、洗浄し、計数し、PBS中に調製し、動物施設に送った。最小の遅延時間で埋植が行われるまで、細胞を氷上で保持した。約5×106細胞/mLの細胞懸濁液を使用した。100μLの上記細胞懸濁液をBalb/Cマウスの皮下に埋植した(0日目)。1日目および4日目に、処置剤を静脈内に投与した。化合物の用量は、6-MPの含有率に基づくものであった。次に、グループのメジアン腫瘍体積が2000mm3を超えるまで、毎週2回、体重および腫瘍体積を測定した。カリパスを用いて2つの寸法を測定することにより各マウスの腫瘍体積を求めた。式: 腫瘍体積 = (長さ×幅2)/2を用いて計算した。処置されたマウスvs対照(ビヒクルなし)マウスで腫瘍増殖を比較することにより、薬効を決定した。次の2つのタイプの終点を比較の基準として使用した: (a) 対照グループのメジアン腫瘍体積が約800〜1100mm3に達したときに測定された腫瘍体積のパーセント差(%T/C)(指数増殖期)、(b) 対照グループのメジアン腫瘍体積が約2000mm3であるときの上記値。
【0140】
結果
非修飾6-MPは、M109充実性腫瘍の増殖の阻害に効果がなかった。これに対して、いくつかのPEG-6-MPコンジュゲートは、対照と比較して、腫瘍増殖の約80%の減少を引き起こした(表2)。6-TGのPEGコンジュゲートを用いたときにも、同様に抗腫瘍活性の増加を生じた。
【表2】

【0141】
実施例24
L1210腫瘍モデルを用いたin vivo実験
マウス白血病細胞系L1210/O(マウスリンパ性白血病)に対するin vivo活性に関して、6-MPおよびプロドラッグ型6-MPのスクリーニングを行った。Southern Research Institute (Birmingham, Alabama)から細胞系を入手し、10%ウマ血清で補足されたDMEM中で増殖させた。毎週2回、L1210/O細胞を継代培養し、対数期培養物(生存率≧95%)をすべてのin vivo実験に使用した。7〜8週齢の雌CD2F1マウス(Taconic Farms, Germantown , NY)を試験に使用した。1週間の順化を行った後、指定の0日目にL1210/0細胞(5×105細胞/マウス)をマウスの腹腔内に埋植した。マウスをランダムに実験グループに割り当てた(8〜10匹/グループ)。グループは、対照、6-MP、およびPEG-6-MPコンジュゲートを含むものであった。6-MPは、3% DMSO中に可溶化させ、イントラリピド中に懸濁させ、腹腔内に2日ごとに合計6回投与した。PEG-6-MPは、リン酸塩緩衝液(pH5.8)に溶解させ、静脈内に4日ごとに合計3回投与した。対照グループには、ビヒクル(イントラリピドまたはリン酸塩緩衝液)を投与した。40日間までマウスを監視し、寿命の増加(ILS)のパーセントとして処置を評価した。
【0142】
結果
PEG-6-MPコンジュゲート(31a)は、ビヒクル対照および6-MP同等用量対応物のいずれよりも、この腹水モデルにおいて有意に(P<0.05)高い生存性を示した(表3)。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ib)
【化1】

〔式中、
R1は、ポリアルキレンオキシドであり;
Y1は、O、S、またはNR10であり;
Mは、O、S、またはNR11であり;
E1は、
【化2】

であり;
E2〜4は、独立して、H、E1、または
【化3】

であり;
(a)は、ゼロまたは1であり;
(m)は、ゼロまたは正の整数であり;
(w)は、1であり;
(n)および(p)は、独立して、ゼロまたは正の整数であり;
Y2〜3は、独立して、O、S、またはNR15であり;
R2〜11およびR15は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
D1およびD2は、独立して、OH、
【化4】

{ここで、
R'4およびR'5は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
E35
【化5】

であり;
E36-38は、独立して、水素、E35、または
【化6】

であり;
D'1およびD'2は、独立して、OH、
【化7】

(ここで、
R"4およびR"5は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
E45は、
【化8】

であり;
E46-48は、独立して、水素、E45、または
【化9】

であり;
D"1およびD"2は、独立して、OH、
【化10】

である)
であり;
(v)および(t)は、独立して、0または1であり;
L1およびL2は、独立してヘテロ二官能性リンカーであり;
Y4〜5は、独立して、O、S、およびNR16よりなる群から選択され;
R12〜14およびR16は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、フェノキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
Arは、
【化11】

(ここで、
Jは、O、S、またはNR22であり;
EおよびZは、独立して、CR23またはNR24であり;
R22〜24は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、または置換C1〜6ヘテロアルキルである)
を含む芳香族炭化水素であり;そして
B1およびB2は、独立して、OHまたは、硫黄で結合したスルフヒドリル含有生物学的活性化合物の残基である(但し、E1-4の少なくとも1つはスルフヒドリル含有生物学的活性化合物の残基を有する)}
である〕
で示される化合物。
【請求項2】
R1が、水素、NH2、OH、CO2H、C1〜6成分、
(Ia') E1- および
【化12】

〔式中、変数はすべて、先に定義したとおりである〕
よりなる群から選択されるキャッピング基Zをさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式:
【化13】

で示される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Y1〜Y5がそれぞれOである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
ポリアルキレンオキシドが直線状、分枝状、または多分枝状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R1がポリエチレングリコールを含む、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R1が、
-C(=Y')-(CH2)n3-O-(CH2CH2O)x-A2
-C(=Y')-Y"-(CH2)n3-O-(CH2CH2O)x-A2、および
C(=Y')-NR'6-(CH2)n3-O-(CH2CH2O)x-A2
〔式中、
xは、重合度であり;
n3は、ゼロまたは正の整数であり;
R'6は、R6を定義する群から選択され;
Y'およびY"は、独立して、OまたはSであり;
A2は、水素、NH2、C1〜6成分、
(Ia') E1- および
【化14】

よりなる群から選択されるキャッピング基である〕
よりなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R1が、-O-(CH2CH2O)xを含み、そしてxが、その重量平均分子量が少なくとも20,000であるという条件を満たす正の整数である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
R1が、2,000〜100,000の重量平均分子量を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R1が、5,000〜50,000の重量平均分子量を有する、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
B1およびB2が、独立して、硫黄で結合したスルフヒドリル含有生物学的活性化合物の残基である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
前記スルフヒドリル含有生物学的活性化合物が、ペニシラミン、2-チオウラシル、カプトプリル、チオプロニン、チオペンタールナトリウム、および
【化15】

〔式中、
R30は、H、C1〜6アルキル、アルコキシ、または式:
【化16】

{ここで、R32〜36は、独立して、アルコキシ、OR37、H、OH、N3、NHR38、NO2、CN、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードよりなる群から選択され、R37〜38は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、ハロ、置換アリール、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、および置換C1〜6ヘテロアルキルよりなる群から選択される}
で示される炭水化物のうちの1つであり;
R31は、HまたはNH2であり;そして
X3は、CHまたはNである〕
よりなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
L1が(CH2CH2O)2である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
L2が、-CH2-、-CH(CH3)-、-CH[CH2CH(CH3)2]-、-CH2 C(O)NHCH(CH3)-、-(CH2)2-、-CH2C(O)NHCH2-、-CHC(O)NHCH[CH2CH(CH3)2]-、-(CH2)2-NH-、および-(CH2)2-NH-C(O)(CH2)2NH-よりなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
【化17】



〔式中、R1は、直線状、分枝状、または多分枝状のポリマーあり、そしてDは、
【化18】


{ここで、B1は、硫黄で結合したスルフヒドリル含有生物学的活性化合物の残基である}
よりなる群から選択される〕
よりなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項16】
B1が硫黄で結合したスルフヒドリル含有生物学的活性化合物の残基である請求項1に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項17】
B1およびB2が硫黄で結合したスルフヒドリル含有生物学的活性化合物の残基である請求項2に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項18】
Arが
【化19】

[式中、
R2〜11およびR15は、独立して、水素、C1〜6アルキル、C3〜12分枝状アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C3〜8置換シクロアルキル、アラルキル、C1〜6ヘテロアルキル、置換C1〜6ヘテロアルキル、C1〜6アルコキシ、およびC1〜6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
(b)および(d)は、独立して、0または1である]
である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
D1が式(IV)、式(V)または(VI)であり;
D2がOH、式(IV)、式(V)または式(VI)であり;
D'1が式(IV)、式(V)または式(VII)であり;
D'2がOH、式(IV)、式(V)または式(VII)であり;
D''1が式(IV)または式(V)であり;
D''2がOH、式(IV)または式(V)であり;
B1およびB2が、独立して、硫黄で結合したスルフヒドリル含有生物学的活性化合物の残基である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
E1
【化20】

であり;
E2-3がそれぞれHであり;
E4がE1または
【化21】

であり;
E35
【化22】

であり;
E36-37がそれぞれHであり;
E38がE35または
【化23】

であり;
E45
【化24】

であり;
E46-47がそれぞれHであり;
E48がE45または
【化25】

である、請求項18に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−195810(P2010−195810A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93856(P2010−93856)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2003−543529(P2003−543529)の分割
【原出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願人】(504177103)エンゾン,インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】