説明

ベンズアミド2−ヒドロキシ−3−ジアミノアルカン

本発明は、アルツハイマー病及び他の類似した疾患の治療に有用な式(I)の化合物に関する。この種の化合物には、哺乳動物におけるアルツハイマー病及びAβペプチドの沈着を特徴とする他の疾患の治療に有用な、β−セクレターゼ酵素の阻害剤が含まれる。本発明の化合物は、Aβペプチドの生成を低減するための薬剤組成物及び治療方法においても有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年4月21日出願の米国特許仮出願第60/464,687号からの優先権を主張するものであり、この開示の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、ベンズアミド2−ヒドロキシ−3−ジアミノアルカン、並びにアルツハイマー病及び関連疾患の治療に有用な化合物に関する。より詳細には、本発明は、βセクレターゼ、すなわち、アミロイド前駆体タンパク質を切断して、アルツハイマー病患者の脳で見られるアミロイド斑の主成分であるアミロイドβペプチド(Aβ)を生成する酵素を阻害することのできる化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、主に老化と関連した、進行性の脳の変性疾患である。ADの臨床上の症状は、記憶、認知能力、理性、判断力、及び見当識の喪失を特徴とする。疾患が進行するにつれて、運動、感覚、及び言語能力も影響を受け、複合的認知機能の全面的な機能障害がもたらされる。このような認知能力の喪失は徐々に生じるが、通常は重度の機能障害をもたらし、その結果4〜12年で死に至る。
【0004】
アルツハイマー病は、脳の主な2つの病理学的所見、すなわち神経原線維変化と、大部分はAβとして知られているペプチド断片凝集体からなるβアミロイド(若しくは神経突起)斑を特徴とする。ADの個体は、特徴的な脳でのβアミロイド沈着(βアミロイド斑)及び脳血管でのβアミロイド沈着(βアミロイド血管障害)、並びに神経原線維変化を示す。神経原線維変化は、アルツハイマー病だけでなく、他の痴呆誘発疾患でも起こる。解剖すると、通常記憶及び認知にとって重要なヒトの脳領域にこのような病変が多数見出される。
【0005】
臨床上ADでない高齢なヒトの大多数の脳内でも、より限定された解剖学的分布においてこのような病変がそれよりも少数であるが見出される。アミロイド形成斑及び血管のアミロイド血管障害はまた、トリソミー21(ダウン症候群)、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血(HCHWA−D)、及び他の神経形成障害に罹患した個体の脳の特徴でもある。βアミロイドは、ADの定義をなす特徴であり、今や疾患発症の原因となる前駆体又は因子と考えられている。認知活動を担う脳領域でのAβ沈着は、AD発症の主要な要因である。βアミロイド斑は、大部分はアミロイドβペプチド(Aβ、βA4とされることもある)からなる。βペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)がタンパク質分解されることによって誘導され、39〜42個のアミノ酸からなる。APPのプロセシングには、セクレターゼと呼ばれる数種のプロテアーゼが関与している。
【0006】
APPのAβペプチドN末端でのβ−セクレターゼによる切断、及びそのC末端での1種又は複数のγセクレターゼによる切断がβアミロイド形成経路、すなわちAβが形成される経路をなす。αセクレターゼによるAPPの切断によって、α−sAPP、すなわちAPPの分泌型が生成するが、これはβアミロイド斑の形成をもたらさない。この代替的経路が、Aβペプチドの形成を妨げる。APPのタンパク分解性プロセシング断片についての記述は、例えば、米国特許第5,441,870号、同第5,721,130号、及び同第5,942,400号に出ている。
【0007】
アスパルチルプロテアーゼは、β−セクレターゼ切断部位でのAPPのプロセシングを担う酵素として特定されている。β−セクレターゼ酵素は、BACE、Asp、及びMemapsinを含む様々な名称を用いて開示されている。例えば、Sinha等のNature第402巻:537〜554(p501)、1999年、及び公告されたPCT出願WO00/17369を参照されたい。
【0008】
何通りかの証拠は、進行性の大脳βアミロイドペプチド(Aβ)沈着がADの発生において重大な役割を担い、数年又は数十年後に認知に関する症状を発生させることが示唆する。例えば、SelkoeのNeuron第6巻:487ページ、1991年を参照されたい。培養液中で成長させた神経細胞からAβが遊離すること、及び正常な個体及びAD患者のどちらにおいても脳脊髄液(CSF)中にAβが存在することが実証された。例えば、Seubert等のNature第359巻:325〜327ページ、1992年を参照されたい。
【0009】
Aβペプチドは、β−セクレターゼによるAPPプロセシングの結果として蓄積されるので、AD治療ではこの酵素の活性を阻害することが望ましいと提言されている。β−セクレターゼ切断部位でのAPPのin vivoプロセシングは、Aβ生成の律速ステップであると考えられているため、AD治療のための治療ターゲットになっている。例えば、Sabbagh,M.等のAlz.Dis.Rev.第3巻、1〜19ページ1997年を参照されたい。
【0010】
BACE1ノックアウトマウスは、Aβを産生せず、正常な表現型を示した。APPを過剰発現するトランスジェニックマウスと交雑させたると、その子孫では、脳抽出物中のAβ量が対照動物に比べて減少する(Luo等のNature Neuroscience第4巻:231〜232ページ、2001年)。この証拠も、脳においてβ−セクレターゼ活性を阻害し、Aβを減少させることがAD及び他のβアミロイド障害を治療する治療方法になるという提言を支持する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在では、アルツハイマー病の進行を停止し、防げ、又は後退させる有効な治療はない。したがって、まず第1に、アルツハイマー病の進行を遅らせ、且つ/又はこれを予防できる薬剤が早急に求められている。
【0012】
β−セクレターゼの有効な阻害剤であり、β−セクレターゼを媒介とするAPPの切断を阻害し、Aβ産生の有効な阻害剤であり、且つ/又はアミロイドβの沈着又はその斑を減少させるのに有効な化合物が、ADなど、アミロイドβの沈着又はその斑を特徴とする疾患を治療及び予防するために求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下に示す式(I)の化合物、この化合物を含有する薬剤組成物、及びアルツハイマー病の治療にそのような化合物若しくは組成物を使用する方法を含み、より詳細には、βセクレターゼ、すなわち、アミロイド前駆体タンパク質を切断して、アルツハイマー病患者の脳で見られるアミロイド斑の主成分であるAβペプチドを生成する酵素を阻害することのできる化合物を含む。
【0014】
広い態様では、本発明は、次式Iの化合物
【化1】


又は薬剤として許容されるその塩若しくはエステル
[式中、
Zは、1又は2個のR基によって任意選択で置換されている、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり、
は、出現するごとに、ハロゲン、−OH、−OCF、−O−フェニル、−CN、−NR100101、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、(CH0〜3(C〜Cシクロアルキル)、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルからそれぞれ独立に選択され、前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルの各基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ハロゲン、−OH、−CN、又は−NR100101からなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
100及びR101は、出現するごとに、それぞれ独立に、H、C〜Cアルキル、又はフェニルであり、
Xは、−(C=O)−又は−(SO)−であり、
は、ハロゲン、−OH、=O、−SH、−CN、−CF、−OCF、−C3〜7シクロアルキル、−C〜Cアルコキシ、アミノ、モノ−ジアルキルアミノ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルからそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されているC〜C10アルキルであり、各アリール基は、1、2、又は3個のR50基によって任意選択で置換されており、
50は、ハロゲン、OH、SH、CN、−CO−(C〜Cアルキル)、−NR、−S(O)0〜2−(C〜Cアルキル)、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、及びC〜Cシクロアルキルから選択され、
前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、及びシクロアルキルの各基は、C〜Cアルキル、ハロゲン、OH、−NR、CN、C〜Cハロアルコキシ、NR、及びC〜Cアルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
及びRは、それぞれ独立に、H又はC〜Cアルキルであり、或いは
及びRとこれらの結合相手である窒素とが、5若しくは6員ヘテロシクロアルキル環を形成しており、
及びRは、H;−OH、−NH、及びハロゲンからなる群からそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;−C〜Cシクロアルキル;−(C〜Cアルキル)−O−(C〜Cアルキル);−C〜Cアルケニル;及び−C〜Cアルキニルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
各ヘテロアリールは、1又は2個のR50基によって任意選択で置換されており、
各ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立にR50又は=Oである1又は2個の基によって任意選択で置換されており、
及びRは、
−H、
−F、
−F、−OH、−C≡N、−CF、C〜Cアルコキシ、及び−NRからなる群からそれぞれ独立に選択される置換基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル、
−(CH0〜2−R17
−(CH0〜2−R18
−F、−OH、−C≡N、−CF、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される独立した置換基によってそれぞれが任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル又はC〜Cアルキニル、
−F、−OH、−C≡N、−CF、C〜Cアルコキシ、及び−NRからなる群から選択される独立した置換基によって任意選択で置換されている−(CH0〜2−C〜Cシクロアルキル
からそれぞれ独立に選択され、或いは
、R、及びこれらの結合相手である炭素が、3個から7個の炭素原子からなる炭素環を形成しており、1個の炭素原子は、−O−、−S−、−SO−、又は−NR−から選択される基による置換を受けており、
17は、出現するごとに、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、及びテトラリニルから選択されるアリール基であり、前記アリール基は、それぞれ独立に
−C〜Cアルキル;−C〜Cアルコキシ;CF;又は
F、OH、C〜Cアルコキシからなる群から選択される1個の置換基によってそれぞれが任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル若しくは−C〜Cアルキニル;又は
−ハロゲン;
−OH;
−C≡N;
−C〜Cシクロアルキル;
−CO−(C〜Cアルキル);
−SO−(C〜Cアルキル);
である1個又は2個の基によって任意選択で置換されており、
18は、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、インドリル、ピリダジニル、ピラジニル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサジアゾリル、又はチアジアゾリルから選択されるヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基のそれぞれは、それぞれ独立に
OH、C≡N、CF、C〜Cアルコキシ、及び−NRからなる群から選択される1個の置換基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキルである1個又は2個の基によって任意選択で置換されており、
15は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、ヒドロキシC〜Cアルキル、ハロC〜Cアルキルからなる群から選択され、これらはそれぞれ、非置換であるか、又はハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、NH、及び−R26−R27からそれぞれ独立に選択される1、2、3、若しくは4個の基で置換されており、
26は、結合、−C(O)−、−SO−、−CO−、−C(O)NR−、及び−NRC(O)−からなる群から選択され、R27は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリールC〜Cアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロアリールからなる群から選択され、上記のそれぞれは、非置換であるか、又はそれぞれ独立にC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、−NR、−C(O)NRである1、2、3、4、若しくは5個の基によって任意選択で置換されており、
は、
シクロアルキルが、−R205、−CO−(C〜Cアルキル)、及びアリールからなる群からそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換され、アリールは、独立に選択される1又は2個のR200基で任意選択で置換されている−(CH0〜3−(C〜C)シクロアルキル;
−(CR2452500〜4−アリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロアリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロシクロアルキル;
−(CR2452500〜4−アリール−ヘテロアリール;
−(CR2452500〜4−アリール−ヘテロシクロアルキル;
−(CR2452500〜4−アリール−アリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロアリール−アリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロアリール−ヘテロシクロアルキル;
−(CR2452500〜4−ヘテロアリール−ヘテロアリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロシクロアルキル−ヘテロアリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロシクロアルキル−ヘテロシクロアルキル;
−(CR2452500〜4−ヘテロシクロアルキル−アリール;
1又は2個のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基に縮合した、5、6、7、8、9、又は10個の炭素からなる−単環式又は二環式の環であって、単環式又は二環式の環の1、2、又は3個の炭素が、
−NH、
−N(CO)0〜1215
−N(CO)0〜1220
−O、又は
−S(=O)0〜2
によって任意選択で置換を受けており、
それぞれ独立に−R205、−R245、−R250、又は=Oである1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されている単環式又は二環式の環;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキニル
からなる群から選択され、
−(CR2452500〜4基に直接又は間接的に結合している各アリール基は、1、2、3、又は4個のR200基によって任意選択で置換されており、
−(CR2452500〜4基に直接又は間接的に結合している各ヘテロアリール基は、1、2、3、又は4個のR200によって任意選択で置換されており、
−(CR2452500〜4基に直接又は間接的に結合している各ヘテロシクロアルキルは、1、2、3、又は4個のR210によって任意選択で置換されており、
200は、出現するごとに、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;
−OH;
−NO
−ハロゲン;
−C≡N;
−(CH0〜4−CO−NR220225
−(CH0〜4−CO−(C〜Cアルキル);
−(CH0〜4−CO−(C〜Cアルケニル);
−(CH0〜4−CO−(C〜Cアルキニル);
−(CH0〜4−CO−(C〜Cシクロアルキル);
−(CH0〜4−(CO)0〜1−アリール;
−(CH0〜4−(CO)0〜1−ヘテロアリール;
−(CH0〜4−(CO)0〜1−ヘテロシクロアルキル;
−(CH0〜4−CO215
−(CH0〜4−SO−NR220225
−(CH0〜4−S(O)0〜2−(C〜Cアルキル);
−(CH0〜4−S(O)0〜2−(C〜Cシクロアルキル);
−(CH0〜4−N(H又はR215)−CO215
−(CH0〜4−N(H又はR215)−SO−R220
−(CH0〜4−N(H又はR215)−CO−N(R215
−(CH0〜4−N(−H又はR215)−CO−R220
−(CH0〜4−NR220225
−(CH0〜4−O−CO−(C〜Cアルキル);
−(CH0〜4−O−(R215);
−(CH0〜4−S−(R215);
−(CH0〜4−O−(1、2、3、又は5個の−Fによって任意選択で置換されているC〜Cアルキル);
1又は2個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル;
1又は2個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキニル;及び
−(CH0〜4−C〜Cシクロアルキル
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
200内に含まれる各アリール基は、それぞれ独立に
−R205
−R210、又は
それぞれ独立にR205若しくはR210である1、2、若しくは3個の基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル
である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
200内に含まれる各ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立にR210である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
200内に含まれる各ヘテロアリール基は、それぞれ独立に
−R205
−R210、又は
それぞれ独立に
−R205若しくは
−R210
である1、2、又は3個の基で置換されている−C〜Cアルキル
である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
205は、出現するごとに、
−C〜Cアルキル、
−C〜Cアルケニル、
−C〜Cアルキニル、
−C〜Cハロアルコキシ、
−(CH0〜3(C〜Cシクロアルキル)、
−ハロゲン、
−(CH0〜6−OH、
−O−フェニル、
−SH、
−(CH0〜6−(≡N、
−(CH0〜6−C(=O)NR235240
−CF
−C〜Cアルコキシ、及び
−NR235240
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
210は、出現するごとに、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキニル、
−ハロゲン、
−C〜Cアルコキシ、
−C〜Cハロアルコキシ、
−NR220225
−OH、
−C≡N、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cシクロアルキル、
−CO−(C〜Cアルキル)、
−SO−NR235240
−CO−NR235240
−SO−(C〜Cアルキル)、及び
=O
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
215は、出現するごとに、
−C〜Cアルキル、
−(CH0〜2−(アリール)、
−C〜Cアルケニル、
−C〜Cアルキニル、
−C〜Cシクロアルキル、
−(CH0〜2−(ヘテロアリール)、及び
−(CH0〜2−(ヘテロシクロアルキル)
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
215内に含まれるアリール基は、それぞれ独立に
−R205又は
−R210
である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
215内に含まれるヘテロシクロアルキル基は、1、2、又は3個のR210によって任意選択で置換されており、
215内に含まれる各ヘテロアリール基は、1、2、又は3個のR210によって任意選択で置換されており、
220及びR225は、出現するごとに、
−H、
−C〜Cアルキル、
−ヒドロキシC〜Cアルキル、
−アミノC〜Cアルキル、
−ハロC〜Cアルキル、
−(CH0〜2−(C〜Cシクロアルキル)、
−(C〜Cアルキル)−O−(C〜Cアルキル)、
−C〜Cアルケニル、
−C〜Cアルキニル、
−アリール、
−ヘテロアリール、及び
−ヘテロシクロアルキル
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
220及びR225内のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基は、1、2、又は3個のR270基によって任意選択で置換されており、
270は、出現するごとに、それぞれ独立に
−R205
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキニル;
−ハロゲン;
−C〜Cアルコキシ;
−C〜Cハロアルコキシ;
−NR235240
−OH;
−C≡N;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cシクロアルキル;
−CO−(C〜Cアルキル);
−SO−NR235240
−CO−NR235240
−SO−(C〜Cアルキル);及び
=O
であり、
235及びR240は、出現するごとに、それぞれ独立に
−H、又は
−C〜Cアルキル;
−フェニル
であり、
245及びR250は、出現するごとに、
−H、
−(CH0〜4CO〜Cアルキル、
−(CH0〜4C(=O)C〜Cアルキル、
−C〜Cアルキル、
−C〜Cヒドロキシアルキル、
−C〜Cアルコキシ、
−C〜Cハロアルコキシ、
−(CH0〜4−C〜Cシクロアルキル、
−C〜Cアルケニル、
−C〜Cアルキニル、
−(CH0〜4アリール、
−(CH0〜4ヘテロアリール、及び
−(CH0〜4ヘテロシクロアルキル
からなる群からそれぞれ独立に選択され、或いは
245及びR250は、これらの結合相手である炭素と一緒になって、1又は2個の炭素原子が、
−O−、
−S−、
−SO−、及び
−NR220
からなる群から選択されるヘテロ原子によって任意選択で置換を受けている、3、4、5、6、7、又は8個の炭素原子からなる単環又は二環を形成しており、
245及びR250内に含まれるアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立にハロゲン、C1〜6アルキル、CN、又はOHである1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
255及びR260は、出現するごとに、
−H;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;
−(CH1〜2−S(C)0〜2−(C〜Cアルキル);
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−(CH0〜4−C〜Cシクロアルキル;
−(CH0〜4−アリール;
−(CH0〜4−ヘテロアリール;
−(CH0〜4−ヘテロシクロアルキル
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
255及びR260内に含まれる各アリール基は、それぞれ独立に
−R205
−R210、又は
それぞれ独立に
−R205若しくは
−R210
である1、2、若しくは3個の基によって置換されている−C〜Cアルキル
である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
255及びR260内に含まれる各ヘテロアリール基は、1、2、3、又は4個のR200基によって任意選択で置換されており、
255及びR260内に含まれる各ヘテロシクロアルキル基は、1、2、3、又は4個のR210基によって任意選択で置換されている]を提供する。
【0015】
本発明は、その必要のある患者に治療有効量の式Iの化合物又は塩を投与することを含む、アルツハイマー病、軽度認知障害、ダウン症候群、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、脳アミロイド血管障害、他の変性痴呆、血管性変性混合型痴呆、パーキンソン病に随伴する痴呆、進行性核上麻痺に随伴する痴呆、皮質基底核変性症に随伴する痴呆、びまん性レビー小体型アルツハイマー病を治療又は予防する方法も提供する。
【0016】
前記患者はヒトであることが好ましい。
【0017】
前記疾患はアルツハイマー病であることがより好ましい。
【0018】
前記疾患は痴呆であることがより好ましい。
【0019】
本発明は、式Iの化合物又は塩と、少なくとも1種の薬剤として許容される担体、溶媒、佐剤、又は希釈剤とを含む薬剤組成物も提供する。
【0020】
本発明は、医薬の製造のための式Iの化合物又は塩の使用も提供する。
【0021】
本発明はまた、アルツハイマー病、軽度認知障害、ダウン症候群、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、脳アミロイド血管障害、他の変性痴呆、血管性変性混合型痴呆、パーキンソン病に随伴する痴呆、進行性核上麻痺に随伴する痴呆、皮質基底核変性症に随伴する痴呆、又はびまん性レビー小体型アルツハイマー病の治療又は予防のための式Iの化合物又は塩の使用を提供する。
【0022】
本発明はまた、β−セクレターゼ仲介のアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断を阻害するための、化合物、薬剤組成物、キット及び方法を提供する。より詳細には、本発明の化合物、組成物及び方法は、A−βペプチドの生成を阻害するため、及び病原形のA−βペプチドと関連がある、任意のヒト又は獣の疾患又は状態を治療又は予防するために有効である。
【0023】
本発明の化合物、組成物、及び方法は、アルツハイマー病(AD)を有するヒトを治療するため、ADの発症の予防又は遅延を助長するため、軽度認識障害(MCI)を有する患者を治療するため、それ以外の場合MCIからADへと進行することが予想される患者のADの発症の予防又は遅延するため、ダウン症候群を治療するため、オランダ型のアミロイドーシスを伴う遺伝性小脳出血を治療するため、脳アミロイド血管障害を治療して単発性及び再発性皮質下出血などのその結果生じる可能性のある症状を予防するため、血管性変性混合型痴呆を含む他の変性痴呆を治療するため、パーキンソン病に伴う痴呆、進行性核上麻痺に伴う痴呆、皮質基底核変性症に伴う痴呆、及びびまん性レビー小体病型ADを治療するため、及びパーキンソン症状(FTDP)を伴う前頭側頭部の痴呆を治療するために有用である。
【0024】
本発明の化合物は、β−セクレターゼ阻害活性を有する。本発明の化合物の阻害活性は、例えば、本明細書に記載してあるか或いは当分野で知られている、1つ又は複数のアッセイを使用することによって容易に実証される。
【0025】
ある特定の式のためにその式の置換基が特に規定されていない限り、その特定の式は、それが言及する先行する式に関して述べられた定義を有すると理解される。
【0026】
本発明は、本発明の化合物の調製方法、及びその諸方法で使用する中間体も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
上述のように、本発明は、式Iの化合物を提供する。
【0028】
好ましい式Iの化合物としては、式I−1の化合物、すなわち、Xが−(C=O)−である式Iの化合物が挙げられる。
【0029】
式I及び式I−1の好ましい化合物として、式I−2の化合物、すなわち、
Zがアリール又はヘテロアリールであり、各環は、それぞれ独立に、ハロゲン、−OH、−OCF、−O−フェニル、−CN、−NR100101、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、(CH0〜3(C〜Cシクロアルキル)、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルからそれぞれ独立に選択される1又は2個の基によって任意選択で置換されており、前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルの各基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ハロゲン、−OH、−CN、又は−NR100101からなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
100及びR101は、出現するごとに、それぞれ独立に、H、C〜Cアルキル、又はフェニルである、式I又は式I−1の化合物が挙げられる。
【0030】
また好ましい式I−2の化合物として、
Zがアリール又はヘテロアリールであり、各環は、それぞれ独立に、ハロゲン、−OH、−OCF、−O−フェニル、−CN、−NR100101、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシからそれぞれ独立に選択される1又は2個の基によって任意選択で置換されており、前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシの各基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ハロゲン、−OH、−CN、又は−NR100101からなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
100及びR101は、出現するごとに、それぞれ独立に、H、C〜Cアルキル、又はフェニルである化合物が挙げられる。
【0031】
また好ましい式I−2の化合物として、
Zがフェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、又はチオフェニルであり、各環は、それぞれ独立に、ハロゲン、−OH、−OCF、−O−フェニル、−CN、−NR100101、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシからそれぞれ独立に選択される1又は2個の基によって任意選択で置換されており、前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシの各基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ハロゲン、−OH、−CN、又は−NR100101からなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
100及びR101は、出現するごとに、それぞれ独立に、H、C〜Cアルキル、又はフェニルである化合物も挙げられる。
【0032】
式I、式I−1、及び式I−2の好ましい化合物としては、式1−3の化合物、すなわち、
が−C〜Cアルキル−アリール、−C〜Cアルキル−ヘテロアリール、又は−C〜Cアルキル−ヘテロシクリルであり、各アリール基は、出現するごとに、1、2、又は3個のR50基によって任意選択で置換されており、
50は、ハロゲン、OH、SH、CN、−CO−(C〜Cアルキル)、−NR、−S(O)0〜2−(C〜Cアルキル)、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、又はC〜Cシクロアルキルからそれぞれ独立に選択され、
前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、又はシクロアルキルの各基は、C〜Cアルキル、ハロゲン、OH、−NR、CN、C〜Cハロアルコキシ、NR、及びC〜Cアルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
及びRは、出現するごとに、それぞれ独立に、H又はC〜Cアルキルであり、或いは
及びRとこれらの結合相手である窒素とが、出現するごとに、5若しくは6員ヘテロシクロアルキル環を形成し、
及びRは、H;−OH、−NH、及びハロゲンからなる群からそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;−C〜Cシクロアルキル;−(C〜Cアルキル)−O−(C〜Cアルキル);−C〜Cアルケニル;及び−C〜Cアルキニルからなる群からそれぞれ独立に選択されており、
各ヘテロアリールは、出現するごとに、1又は2個のR50基によって任意選択で置換されており、
各ヘテロシクロアルキル基は、出現するごとに、それぞれ独立にR50若しくは=Oである1又は2個の基によって任意選択で置換されている、式I、式I−1、又は式I−2の化合物が挙げられる。
【0033】
また好ましい式I−3の化合物として、
が−(CH)−アリールであり、アリールが、1、2、又は3個のR50基によって任意選択で置換されており、
50は、ハロゲン、OH、SH、CN、−CO−(C〜Cアルキル)、−NR、−S(O)0〜2−(C〜Cアルキル)、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、及びC〜Cシクロアルキルからそれぞれ独立に選択される化合物も挙げられる。
【0034】
また好ましい式I−3の化合物として、
が−CH−フェニルであり、フェニル環が、ハロゲン、OH、SH、CN、−CO−(C〜Cアルキル)、−NR、−S(O)0〜2−(C〜Cアルキル)、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、及びC〜Cシクロアルキルからそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されている化合物も挙げられる。
【0035】
また好ましい式I−3の化合物として、
が−CH−フェニルであり、フェニル環が、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ヒドロキシからそれぞれ独立に選択される1又は2個の基によって任意選択で置換されている化合物も挙げられる。
【0036】
また好ましい式I−3の化合物として、Rがベンジル又は3,5−ジフルオロベンジルである化合物も挙げられる。
【0037】
式I、式I−1、式1−2、及び式I−3の好ましい化合物として、式1−4の化合物、すなわち、R及びRが両方とも水素である式I、式I−1、式I−2、又は式I−3の化合物が挙げられる。
【0038】
式I、式I−1、式I−2、式I−3、及び式I−4の好ましい化合物として、式I−5の化合物、すなわち、R15が水素である式I、式I−1、式I−2、式I−3、又は式I−4の化合物が挙げられる。
【0039】
式I、式I−1、式I−2、式I−3、式I−4、及び式I−5の好ましい化合物として、式I−6の化合物、すなわち、
が、
シクロアルキルが、−R205、−CO−(C〜Cアルキル)、及びアリールからそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されている−(CH0〜3−(C〜C)シクロアルキル、
−(CH0〜3−アリール、
−(CH0〜3−ヘテロアリール、
−(CH0〜3−ヘテロシクロアルキル、
−アリール−アリール、及び
1又は2個のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基に縮合した5、6、7、8、9、又は10個の炭素からなる単環式又は二環式の環であって、各アリール基、ヘテロアリール基、及びヘテロシクロアルキル基が、1、2、又は3個のR200基によって任意選択で独立に置換されており、前記の単環式又は二環式の環の1、2、又は3個の炭素が、−NH、−N(CO)0〜1215、−N(CO)0〜1220、−O−、又は−S(=O)0〜2と任意選択で交換されており、前記の単環式又は二環式の環は、それぞれ独立に−R205、−R245、R250、若しくは=Oである1、2、若しくは3個の基によって任意選択で置換されていてよい前記環
からなる群から選択され、
各アリールは、独立に選択される1、2、又は3個のR200基によって任意選択で置換されており、
各ヘテロアリールは、独立に選択される1、2、又は3個のR200基によって任意選択で置換されており、
各ヘテロシクロアルキルは、独立に選択される1、2、又は3個のR200基によって任意選択で置換されている、式I、式I−1、式I−2、式I−3、式I−4、又は式I−5の化合物が挙げられる。
【0040】
好ましい式I−6の化合物として、
が、1又は2個のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基に縮合した5、6、7、8、9、又は10個の炭素からなる単環式又は二環式の環であって、前記の単環式又は二環式の環の1、2、又は3個の炭素が、−NH、−N(CO)0〜1215、−N(CO)0〜1220、−O、又は−S(=O)0〜2と任意選択で交換されているものであり、
前記の単環式又は二環式の環は、それぞれ独立に−R205、−R245、R250、若しくは=Oである1、2、若しくは3個の基によって任意選択で置換されていてよい化合物が挙げられる。
【0041】
好ましい式I−6の化合物として、
が、1個のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基に縮合したシクロヘキシル環であり、前記シクロヘキシル環の1個の炭素が、−SO又は−NH−と任意選択で交換されており、二環式の環は、それぞれ独立に−R205、−R245、R250、若しくは=Oである1、2、若しくは3個の基によって任意選択で置換されていてよい化合物が挙げられる。
【0042】
好ましい式I−6の化合物として、
が次式
【化2】


[式中、x、x、及びxは、それぞれ独立に、−CHR245、SO、又はNHであり、フェニル環は、1又は2個の−R245基によって任意選択で置換されている]である化合物も挙げられる。
【0043】
より好ましい式I−6の化合物として、x、x、又はxの1個がSOである化合物も挙げられる。
【0044】
より好ましい式I−6の化合物として、x、x、又はxの1個がNHである化合物も挙げられる。
【0045】
より好ましい式I−6の化合物として、x、x、及びxがそれぞれCHである化合物も含まれる。
【0046】
別の態様では、本発明は、目的の化合物の調製に有用な中間体を提供する。
【0047】
本発明はまた、アルツハイマー症を治療するため、アルツハイマー病の発症を防ぐ又は遅らせるのを助長するため、軽度認知障害(MCI)の患者を治療して、MCIからADへと進行するはずの対象においてはアルツハイマー病の発症を防ぐ又は遅らせるため、ダウン症候群を治療するため、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血に罹患したヒトを治療するため、脳アミロイド血管障害を治療して、可能性のあるその予後、すなわち単発性及び再発性皮質下出血を防ぐため、血管性変性混合型痴呆を含む他の変性痴呆、パーキンソン病に随伴する痴呆、進行性核上麻痺に随伴する痴呆、進行性核上麻痺に随伴する痴呆、皮質基底核変性症に随伴する痴呆、又はびまん性レビー小体型アルツハイマー病を治療するため、からなる群から選択される疾患若しくは状態を有する患者、及びそのような治療を必要とする患者を治療、又は患者におけるそのような疾患若しくは状態を予防する方法を提供する。この方法は、式(I)の化合物、又は薬剤として許容されるその塩を治療有効量投与することを含む。
【0048】
一実施形態では、この治療方法は、疾患がアルツハイマー病である場合に用いることができる。
【0049】
一実施形態では、この治療方法は、アルツハイマー病の発症を防ぐ又は遅らせるのを助長し得る。
【0050】
一実施形態では、この治療方法は、疾患が軽度認知障害である場合に用いることができる。
【0051】
一実施形態では、この治療方法は、疾患がダウン症候群である場合に用いることができる。
【0052】
一実施形態では、この治療方法は、疾患がオランダ型遺伝性アミロイド性脳出血である場合に用いることができる。
【0053】
一実施形態では、この治療方法は、疾患が脳アミロイド血管障害である場合に用いることができる。
【0054】
一実施形態では、この治療方法は、疾患が変性痴呆である場合に用いることができる。
【0055】
一実施形態では、この治療方法は、疾患がびまん性レビー小体型アルツハイマー病である場合に用いることができる。
【0056】
一実施形態では、この治療方法は、既存の疾患を治療することができる。
【0057】
一実施形態では、この治療方法は、疾患の発生を予防することができる。
【0058】
一実施形態では、この治療方法は、経口投与では約0.1mg/日〜約1,000mg/日;非経口、舌下、鼻腔内、くも膜下投与では約0.5〜約100mg/日;デポー投与及び植込錠では約0.5mg/日〜約50mg/日;局所投与では約0.5mg/日〜約200mg/日;直腸投与では約0.5mg〜約500mgの治療有効量を使用することができる。
【0059】
一実施形態では、この治療方法は、経口投与では約1mg/日〜約100mg/日、非経口投与では1日約5〜約50mgの治療有効量を使用することができる。
【0060】
一実施形態では、この治療方法は、経口投与で約5mg/日〜約50mg/日の治療有効量を使用することができる。
【0061】
本発明は、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩を含む薬剤組成物も含む。
【0062】
本発明は、アルツハイマー症の患者を治療するため、アルツハイマー病の発症の防止又は遅延を助長するため、軽度認知障害(MCI)の患者を治療して、MCIからADへと進行する恐れのある患者においてアルツハイマー病の発症を防止又は遅延するため、ダウン症候群の治療のため、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血に罹患したヒトの治療のため、脳アミロイド血管障害の治療して起こり得るその予後、すなわち、単発性及び再発性皮質下出血を予防するため、血管性変性混合型痴呆を含む他の変性痴呆、パーキンソン病に随伴する痴呆、進行性核上麻痺に随伴する痴呆、皮質基底核変性症に随伴する痴呆、びまん性レビー小体型アルツハイマー病の治療のため、からなる群から選択される疾患又は状態を有する患者、及びそのような治療を必要とする患者を治療し、又は患者がそうなるのを予防する際に使用する医薬の製造のための、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩の使用も含む。
【0063】
一実施形態では、疾患がアルツハイマー病である場合に、式(I)の化合物をそのように使用することができる。
【0064】
一実施形態では、式(I)の化合物のそのような使用によって、アルツハイマー病発症の防止又は遅延を助長することができる。
【0065】
一実施形態では、疾患が軽度認知障害である場合に、式(I)の化合物をそのように使用することができる。
【0066】
一実施形態では、疾患がダウン症候群である場合に、式(I)の化合物をそのように使用することができる。
【0067】
一実施形態では、疾患がオランダ型遺伝性アミロイド性脳出血である場合に、式(I)の化合物をそのように使用することができる。
【0068】
一実施形態では、疾患が脳アミロイド血管障害である場合に、式(I)の化合物をそのように使用することができる。
【0069】
一実施形態では、疾患が変性痴呆である場合に、式(I)の化合物をそのように使用することができる。
【0070】
一実施形態では、疾患がびまん性レビー小体型アルツハイマー病である場合に、式(I)の化合物をそのように使用することができる。
【0071】
一実施形態では、化合物のそのような使用は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、CH−(CH−COOH(nは0から4である)、HOOC(CH−COOH(nは先に規定したとおりである)、HOOC−CH=CH−COOH、及びフェニル−COOHの塩からなる群から選択される薬剤として許容される塩を用いる。
【0072】
本発明は、βセクレターゼ活性を阻害する方法、反応混合物中で、APP−695アミノ酸アイソタイプの番号のMet596とAsp597の間の部位、又はそのアイソタイプ若しくは突然変異体の対応する部位でのアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断を阻止する方法、細胞中でのアミロイドβペプチド(Aβ)の産生を抑制する方法、動物においてβアミロイド斑の生成を抑制する方法、並びに脳のβアミロイドの沈着を特徴とする疾患を治療又は予防する方法も含む。これらの方法はそれぞれ、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬剤として許容される塩の投与を含む。
【0073】
本発明は、βセクレターゼ活性を阻害する方法であって、前記βセクレターゼを阻害に有効な量の式(I)の化合物又は薬剤として許容される塩に曝すことを含む方法も含む。
【0074】
一実施形態では、この方法は、50マイクロモル未満の濃度でこの酵素の活性を50%阻害する化合物を使用する。
【0075】
一実施形態では、この方法は、10マイクロモル以下の濃度でこの酵素の活性を50%阻害する化合物を使用する。
【0076】
一実施形態では、この方法は、1マイクロモル以下の濃度でこの酵素の活性を50%阻害する化合物を使用する。
【0077】
一実施形態では、この方法は、10ナノモル以下の濃度でこの酵素の活性を50%阻害する化合物を使用する。
【0078】
一実施形態では、この方法は、前記βセクレターゼを前記化合物にin vitroで曝すことを含む。
【0079】
一実施形態では、この方法は、細胞中で前記βセクレターゼを前記化合物に曝すことを含む。
【0080】
一実施形態では、この方法は、哺乳動物細胞中で前記βセクレターゼを前記化合物に曝すことを含む。
【0081】
一実施形態では、この方法は、ヒトにおいて前記βセクレターゼを前記化合物に曝すことを含む。
【0082】
本発明は、反応混合物中で、APP−695アミノ酸アイソタイプの番号のMet596とAsp597の間の部位、又はそのアイソタイプ若しくは突然変異体の対応する部位でのアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断を阻止する方法であって、前記反応混合物を阻害に有効な量の式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩に曝すことを含む方法も含む。
【0083】
一実施形態では、この方法は、APP−751アイソタイプの番号のMet652とAsp653の間の切断部位、APP−770アイソタイプのMet671とAsp672の間の部位、APP−695スウェーデン変異のLeu596とAsp597の間の部位、APP−751スウェーデン変異のLeu652とAsp653の間の部位、又はAPP−770スウェーデン変異のLeu671とAsp672の間の部位を使用する。
【0084】
一実施形態では、この方法は、前記反応混合物をin vitroで曝す。
【0085】
一実施形態では、この方法は、細胞中で前記反応混合物を曝す。
【0086】
一実施形態では、この方法は、動物細胞中で前記反応混合物を曝す。
【0087】
一実施形態では、この方法は、ヒト細胞中で前記反応混合物を曝す。
【0088】
本発明は、細胞中でのアミロイドβペプチド(Aβ)の産生を抑制する方法であって、前記細胞に抑制に有効な量の式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩を投与することを含む方法も含む。
【0089】
一実施形態では、この方法は、動物への投与を含む。
【0090】
一実施形態では、この方法は、ヒトへの投与を含む。
【0091】
本発明は、動物においてβアミロイド斑の生成を抑制する方法であって、前記動物に抑制に有効な量の式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩を投与することを含む方法も含む。
【0092】
一実施形態では、この方法は、ヒトへの投与を含む。
【0093】
本発明は、脳のβアミロイドの沈着を特徴とする疾患を治療又は予防するための方法であって、患者に有効治療量の式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩を投与することを含む方法も含む。
【0094】
一実施形態では、この方法は、50マイクロモル未満の濃度で酵素の活性を50%阻害する化合物を使用する。
【0095】
一実施形態では、この方法は、10マイクロモル以下の濃度で酵素の活性を50%阻害する化合物を使用する。
【0096】
一実施形態では、この方法は、1マイクロモル以下の濃度で酵素の活性を50%阻害する化合物を使用する。
【0097】
一実施形態では、この方法は、10ナノモル以下の濃度で酵素の活性を50%阻害する化合物を使用する。
【0098】
一実施形態では、この方法は、約0.1〜約1000mg/日の範囲の治療量で化合物を使用する。
【0099】
一実施形態では、この方法は、約15〜約1500mg/日の範囲の治療量で化合物を使用する。
【0100】
一実施形態では、この方法は、約1〜約100mg/日の範囲の治療量で化合物を使用する。
【0101】
一実施形態では、この方法は、約5〜約50mg/日の範囲の治療量で化合物を使用する。
【0102】
一実施形態では、この方法は、前記疾患がアルツハイマー病である場合に使用できる。
【0103】
一実施形態では、この方法は、前記疾患が軽度認知障害、ダウン症候群、又はオランダ型遺伝性アミロイド性脳出血である場合に使用できる。
【0104】
本発明は、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩との複合体にしたβセクレターゼを含む組成物も含む。
【0105】
本発明は、βセクレターゼ複合体を生成する方法であって、前記複合体の生成に適する条件下、反応混合物中でβセクレターゼを式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩に曝すことを含む方法も含む。
【0106】
一実施形態では、この方法は、in vitroで曝すものである。
【0107】
一実施形態では、この方法は、細胞である反応混合物を使用する。
【0108】
本発明は、少なくとも1個の構成部分が容器に封入された式Iの化合物を含んでいる、組み立てることのできる構成部分を含むコンポーネントキットも含む。
【0109】
一実施形態では、このコンポーネントキットは、凍結乾燥した化合物を含み、少なくとも1個の別の構成部分が希釈剤を含む。
【0110】
本発明は、複数の容器を含み、各容器が1回又は複数回分の単位用量の式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩を含んでいるコンテナキットも含む。
【0111】
一実施形態では、このコンテナキットは、経口送達に適合させた各容器を含み、錠剤、ゲル、又はカプセル剤を含んでいる。
【0112】
一実施形態では、このコンテナキットは、非経口送達に適合させた各容器を含み、デポー製品、シリンジ、アンプル、又はバイアルを含んでいる。
【0113】
一実施形態では、このコンテナキットは、局所送達に適合させた各容器を含み、パッチ、メディパッド、軟膏、又はクリームを含んでいる。
【0114】
本発明は、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、抗酸化剤、抗炎症剤、γセクレターゼ阻害剤、神経栄養剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、スタチン、Aβペプチド、及び抗Aβ抗体からなる群から選択される1種又は複数の治療薬剤とを含む薬剤キットも含む。
【0115】
本発明は、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、不活性希釈剤又は可食担体とを含む組成物も含む。
【0116】
一実施形態では、この組成物は、油である担体を含む。
【0117】
本発明は、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩と、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、若しくはギルディング剤(gildant)とを含む組成物も含む。
【0118】
本発明は、式(I)の化合物又は薬剤として許容されるその塩を含む、クリーム、軟膏、又はパッチになった組成物も含む。
【0119】
本発明は、アルツハイマー病の治療及び予防に有用な式(I)の化合物を提供する。本発明の化合物は、当業者ならば、化合物の化学構造の知識のみに基づいて調製することができる。本発明の化合物を調製するための化学現象は、当業者に知られている。実際、本発明の化合物を調製する方法は1つに限らない。調製方法の具体的な例は、当業界で見受けられる。
【0120】
本発明の化合物の調製に使用することのできる多くの様々な方法のうちの一例をスキームIで述べる。
【0121】
【化3】

【0122】
スキームIの最初のステップでのエポキシドの開環は、エリスロエポキシドとC末端R−NH断片を1:1〜1:5の比で用いて実施する。次いで、1〜6当量の(ジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンなどの)第三級アミン塩基を加えた後、メタノール又はイソプロパノールなど、10mL/ミリモルのアルコール溶媒を加える。この反応は、室温から110℃で、反応が完了したと思われるまで、すなわち0.5〜16時間の間実施する。完了したならば、減圧下で、又は不活性気体のオーバーフローによって反応混合物を濃縮する。
【0123】
次のステップでのBOC基の脱保護は、ジオキサン、ジエチルエーテル、又は塩化メチレンなどの適切な溶媒中で、出発材料の量に対して塩化水素又はトリフルオロ酢酸などの3〜5当量の酸を使用して行う。この反応は、室温から100℃で、反応が完了したと思われるまで0.5〜16時間実施する。次いで、減圧下で、又は不活性ガスのオーバーフローによって溶媒を除去する。
【0124】
最後のステップの出発アミンは、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなどの2〜4当量の第三級アミン塩基と共に置く。次いで、1.1当量のR’−COOHカルボン酸を加える。次いで、出発試薬を、THF又はDMFなど、2ml/ミリモルの適切な極性非プロトン性溶媒に溶解させる。最後に、適量の溶媒に溶解させたHBTUなどの1.1当量のカップリング剤を加える。LC/MS分析によって反応の完了が示されるまで、各反応を室温から100℃の間のいずれかの温度で0.5〜16時間実施する。分取HPLCを使用して最終の精製を行う。
【0125】
【化4】

【0126】
スキームIIは、容易に入手できる6−ヨード−クロマン−4−オール(1)を出発材料として使用する化合物の調製を例示している(Synthesis、1997年、23〜25ページを参照のこと)。当業者ならば、アルコール官能基を式(2)の所望のアミノ化合物に変換する方法がいくつかあることは承知されよう。スキームIIでは、塩化メタンスルホニルを用いてアルコール(1)をまず活性化し、得られるメシラートをアジ化ナトリウムNaNで置換する。アルコールをアジ化物に変換する代替法は、当業者によく知られている。その後、得られるアジ化物を、THFと水の混合物中のトリメチルホスフィンを使用して還元する。当業者ならば、アジ化物を対応するアミンに還元する方法がいくつかあることは承知されよう。例えば、Larock,R.C.の「総合有機変換(Comprehensive Organic Transformations)」、Wiley−VCH Publishers刊、1999年を参照されたい。このアジ化物還元は、アミン(2)の鏡像異性体の混合物をもたらす。この鏡像異性体混合物は、キラルな塩の低温再結晶など、当業者に知られている手段によって分離することもでき、又はキラル分取HPLC、最も好ましくは市販のキラルカラムを使用するHPLCによって分離することもできる。
【0127】
得られるアミン(2)を使用してエポキシド(3)を開環して、保護された(6−ヨード−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−4−イル)アミノプロピルカルバマート(4)を得る。エポキシド(3)の開環に適する反応条件としては、一般的且つ不活性な広範な溶媒中で反応を行うことが挙げられる。C〜Cアルコール溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが最も好ましい。反応は、20〜25℃から、最高で使用するアルコールの還流温度までの範囲の温度で実施することができる。反応を実施するための好ましい温度範囲は、50℃と使用するアルコールの還流温度の間である。
【0128】
保護されたヨード−クロメン(4)を、当業者に知られている、アミン保護基を除去するための手段によって脱保護して、対応するアミンにする。アミン保護基を除去するための適切な手段は、保護基の性質に応じて決まる。指定の保護基の性質を知っている当業者ならば、どの試薬がその除去に好ましいかがわかる。例えば、保護されたヨード−クロマンをトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(1/1)混合物に溶解させて、好ましい保護基BOCを除去することが好ましい。完了したら、減圧下で溶媒を除去して対応するアミンを(対応する塩、すなわちトリフルオロ酢酸塩として)得、これをそれ以上精製せずに使用する。しかし、所望であれば、例えば再結晶などの当業者によく知られている手段によって、アミンをさらに精製することができる。さらに、塩でない形が望ましい場合、例えば、穏やかな塩基性条件で塩を処理して遊離塩基のアミンを調製するものなど、当業者に知られている手段によってそれを得ることもできる。追加のBOC脱保護条件、及び他の保護基の脱保護条件は、T.W.Green及びP.G.M.Wutsの「有機化学における保護基(Protecting Groups in Organic Chemistry)」、John‘Wiley and Sons刊、1999年の中で見ることができる。
【0129】
次いで、当業者に知られている窒素アシル化手段によって、アミンを適切に置換されたアミド生成剤Z−(CO)−Yと反応させて、結合型アミド(5)を生成する。アミンをアミド生成剤Z−(CO)−Yと反応させるための窒素アシル化条件は、当業者に知られており、R.C.Larockの「総合有機変換(Comprehensive Organic Transformations)」、VCH Publishers刊、1989年、981、979、及び972ページの中で見ることができる。Yは、−OH(カルボン酸)、ハロゲン化物(ハロゲン化アシル)、好ましくは塩素、イミダゾール(アシルイミダゾール)、又は混合無水物を生成するのに適する基からなる。
【0130】
当業者に知られている条件を使用して、アシル化されたヨード−クロメン(5)を適切に官能性をもたせた有機金属R200Mと結合させて、式(6)の化合物を得る。当業者ならば、様々なアルキル基及びアリール基を芳香族ヨウ化物と結合させる方法がいくつかあることは承知されよう。例えば、L.S.Hegedusの「複雑な有機分子の合成における遷移金属(Transition Metals in the Synthesis of Complex Organic Molecules)、University Science、1999年を参照されたい。
【0131】
【化5】

【0132】
式(8)のアミンは、スキームIIIに示すように、適切に官能性をもたせた有機金属を6−ヨード−クロマン−4−オール(1)、又は式(7)の適切に保護したヨード−アミノクロマンに結合させて調製することができる。これより前の化学反応は、スキームIIについて記載した通則に従う。
【0133】
アミンの保護は、適宜、当業者に知られている方法によって行う。アミノ保護基は、当業者に知られている。例えば、「有機合成における保護基(Protecting Groups in Organic Synthesis)」、John Wiley and sons刊、米ニューヨーク州ニューヨーク、1981年、第7章;「有機化学における保護基(Protecting Groups in Organic Chemistry)」、Plenum Press刊、米ニューヨーク州ニューヨーク、1973年、第2章を参照されたい。アミノ保護基がもはや必要ではない場合は、当業者に知られている方法によって除去する。定義上、アミノ保護基は容易に除去可能でなければならない。様々な、適切な方法が当業者に知られており、T.W.Green及びP.G.M.Wuts、「有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」、John Wiley and sons、1991も参照されたい。適切なアミノ保護基には、t−ブトキシカルボニル、ベンジル−オキシカルボニル、ホルミル、トリチル、フタルイミド、トリクロロ−アセチル、クロロアセチル、ブロモアセチル、ヨードアセチル、4−フェニルベンジルオキシカルボニル、2−メチルベンジルオキシカルボニル、4−エチルベンジルオキシカルボニル、4−フルオロベンジルオキシカルボニル、4−クロロベンジルオキシカルボニル、3−クロロベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル、4−ブロモベンジルオキシカルボニル、3−ブロモベンジルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、4−シアノベンジルオキシカルボニル、2−(4−キセニル)イソプロポキシカルボニル、1,1−ジフェニルエト−1−イルオキシカルボニル、1,1−ジフェニルプロプ−1−イルオキシカルボニル、2−フェニルプロプ−2−イルオキシカルボニル、2−(p−トルイル)プロプ−2−イルオキシカルボニル、シクロペンタニルオキシカルボニル、1−メチルシクロペンタニルオキシカルボニル、シクロヘキサニルオキシカルボニル、1−メチル−シクロヘキサニルオキシカルボニル、2−メチルシクロヘキサニルオキシカルボニル、2−(4−トルイルスルホニル)エトキシカルボニル、2−(メチルスルホニル)−エトキシカルボニル、2−(トリフェニルホスフィノ)エトキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、2−(トリメチルシリル)エトキシ−カルボニル、アリルオキシカルボニル、1−(トリメチルシリルメチル)プロプ−1−エニルオキシカルボニル、5−ベンズイソキサリルメトキシカルボニル、4−アセトキシベンジルオキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2−エチニル−2−プロポキシカルボニル、シクロプロピルメトキシカルボニル、4−(デシルオキシ)ベンジルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、1−ピペリジルオキシカルボニル、炭酸9−フルオロエニルメチル、−CH−CH=CH、及びフェニル−C(=N−)−Hが含まれる。
【0134】
保護基は、t−ブトキシカルボニル(BOC)及び/又はベンジルオキシカルボニル(CBZ)であることが好ましく、保護基はt−ブトキシカルボニルであることがより好ましい。当業者なら、t−ブトキシカルボニル又はベンジルオキシカルボニル保護基を導入する適切な方法が理解され、さらに、T.W.Green及びP.G.M.Wuts、「有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」、John Wiley and Sons、1991を参考のために調べることができる。
【0135】
本発明の化合物は、幾何異性体又は光学異性体を互変異性体として含んでよい。したがって本発明は、すべての互変異性体、及び純粋な幾何異性体、例えばE及びZ幾何異性体をこれらの混合物として含む。さらに本発明は、純粋な鏡像異性体及びジアステレオマーをラセミ混合物を含めたこれらの混合物として含む。個々の幾何異性体、鏡像異性体、又はジアステレオマーは、キラルクロマトグラフィー;ジアステレオマーの調製、ジアステレオマーの分離、次いで当技術分野でよく知られた方法によるジアステレオマーの鏡像異性体への変換を含むがこれらに限定することのない当業者に知られている方法によって、調製し又は単離することができる。
【0136】
指定された立体配置を有する本発明の化合物は、その他の鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、又は互変異性体と共に、ラセミ混合物を含めた混合物に含めることができる。好ましい態様では、本発明の化合物は、典型的な場合、これらの混合物中に少なくとも50パーセントのジアステレオマー及び/又はエナンチオマー過剰で存在する。本発明の化合物は、これらの混合物中に少なくとも80パーセントのジアステレオマー及び/又はエナンチオマー過剰で存在することが好ましい。所望の立体配置を有する本発明の化合物は、少なくとも90パーセントのジアステレオマー及び/又はエナンチオマー過剰で存在することがより好ましい。所望の立体配置を有する本発明の化合物は、少なくとも99パーセントのジアステレオマー及び/又はエナンチオマー過剰で存在することがさらに好ましい。
【0137】
数種の式(I)の化合物はアミンであり、それ自体、酸との反応時に塩を形成する。薬剤として許容される塩は、より水溶性であり、安定であり、且つ/又はより結晶性の化合物を生じるので、対応する式(I)のアミンよりも好ましい。薬剤として許容される塩は、親化合物の活性を失っておらず、投与を行う患者に対し、またこれを投与する状況で、有害又は望ましくない作用を及ぼさない任意の塩である。薬剤として許容される塩には、無機酸及び有機酸の塩が含まれる。好ましい薬剤として許容される塩としては、酢酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、重硫酸、重酒石酸、酪酸、エデト酸カルシウム、カムシル酸、炭酸、クロロ安息香酸、クエン酸、エデト酸、エジシル酸、エストール酸、エシル(esyl)、エシル酸、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキサン酸、ヘキシルレソルシン酸、ヒドラブアミド酸、臭化水素酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硝酸、メチル硫酸、粘液酸、ムコン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、p−ニトロメタンスルホン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、フタル酸、ポリガラクトウロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、スルホン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸、及びトルエンスルホン酸の塩が挙げられる。許容される他の塩については、Int.J.Pharm.、第33巻、201〜217ページ(1986年)及びJ.Pharm.Sci.、第66巻(1)、1ページ(1977年)を参照されたい。
【0138】
本発明は、βセクレターゼ酵素の活性を阻害し、Aβペプチドの生成を抑制するための化合物、組成物、キット及び方法を提供する。βセクレターゼ酵素活性を阻害すると、APPからのAβの生成が停止又は低減され、或いは脳のβアミロイド沈着物の生成が低減又は消失する。
【0139】
本発明の方法
本発明の化合物及び薬剤として許容されるその塩は、βアミロイド斑など、βアミロイドペプチドの病理形態を特徴とする状態に罹患しているヒト又は動物を治療し、このような状態の発生の防止又は遅延を助長するのに有用である。例えば、この化合物は、アルツハイマー病を治療するため、アルツハイマー病の発症の防止又は遅延を助長するため、MCI(軽度認知障害)の患者を治療し、MCIからADへと進行する恐れのある者においてアルツハイマー病の発症の防止又は遅延を実現するため、ダウン症候群を治療するため、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血に罹患したヒトを治療するため、脳アミロイド血管障害を治療し、起こり得るその予後、すなわち単発性及び再発性皮質下出血を予防するため、血管性変性混合型痴呆を含む他の変性痴呆、パーキンソン病に随伴する痴呆、進行性核上麻痺に随伴する痴呆、皮質基底核変性症に随伴する痴呆、及びびまん性レビー小体型アルツハイマー病を治療するために有用である。本発明の化合物及び組成物は、アルツハイマー病を治療し、又は予防するのに特に有用である。これらの疾患を治療又は予防する際、本発明の化合物は、患者にとって最適であるように、個々に使用することも、併用することもできる。
【0140】
本明細書の使用では、用語「治療する」とは、本発明の化合物が、少なくとも疾患を仮診断されたヒトにおいて使用できることを意味する。本発明の化合物は、疾患の進行の遅延若しくは緩慢化を実現し、それによって個人により有益な余生を与えることになる。
【0141】
「予防する」という用語は、本発明の化合物を投与する時点でおそらく疾患があるとは診断されていないが、通常なら疾患を発症することが予想され又は疾患の危険性が増した状態にある患者に対し、本発明の化合物を投与する場合に、本発明の化合物が有用であることを意味する。本発明の化合物は、疾患の症状の発症を減速させ、疾患の発症を遅延させ、又は個体を疾患の発症から完全に守る。予防には、年齢、家族歴、遺伝的又は染色体異常に起因して、且つ/或いは脳組織又は脳液中のAPP又はAPP切断産物の既知の遺伝的変異など、疾患に関する1つ又は複数の生物学的マーカーの存在に起因して、疾患に罹りやすい個体に対し、本発明の化合物を投与することも含まれる。
【0142】
上記の疾患の治療又は予防では、本発明の化合物を治療有効量投与する。治療有効量は、当分野の技術者に知られているように、使用するその化合物及び投与経路に応じて様々である。
【0143】
上記の状態のいずれかが診断されている患者の治療では、医師は、本発明の化合物を直ちに投与し、必要なだけ無期限に投与を続けてよい。アルツハイマー病であると診断されていないが、アルツハイマー病のリスクが有意にあると考えられる患者の治療では、医師は、好ましくは、患者が加齢に伴う記憶又は認知能力の問題など、初期のアルツハイマー予備症状を経験したときに治療を開始すべきである。さらに、アルツハイマー病の前兆となるAPOE4などの遺伝的マーカーや他の生物学的指標の検出によって、アルツハイマー病発症のリスクがあると確定される患者も存在する。そのような状況では、患者に疾患の症状がなくても、本発明の化合物の投与を症状が現れる前に開始してよく、疾患の発生を予防又は延引するために投与を無期限に続けてよい。
【0144】
剤形及び量
本発明の化合物は、経口、非経口、(IV、IM、デポーIM、SQ、及びデポーSQ)、舌下、鼻腔内(吸入)、くも膜下、局所、又は直腸投与することができる。当分野の技術者に知られている剤形は、本発明の化合物の送達に適している。
【0145】
本発明の化合物を治療有効量含む組成物を提供する。化合物は、経口投与用の錠剤、カプセル剤、若しくはエリキシル剤、又は非経口投与用の無菌溶液若しくは懸濁液など、適切な医薬製剤に処方することが好ましい。通常、当技術分野でよく知られている技術及び手順を使用して、上記で述べた化合物を薬剤組成物へと処方する。
【0146】
容認されている製薬の慣行によって、本発明の化合物若しくは化合物の混合物又は生理的に許容される塩若しくはエステル約1〜500mgを、生理的に許容される溶剤、担体、添加剤、賦形剤、保存剤、安定剤、着香剤などと共に、求められる剤形単位の形で配合する。このような組成物又は製剤中の活性物質量は、指示範囲内の適切な用量が得られる量である。組成物は、剤形単位中に処方され、各用量が活性成分を約2〜約100mg、より好ましくは約10〜約30mg含有していることが好ましい。用語「単位剤形」とは、ヒトの対象者及び他の哺乳動物に適する投与単位として物理的に分離した単位であって、各単位が適切な薬剤用賦形剤と共同して所望の治療効果を生じるように計算された予め決定された量の活性物質を含有するものを指す。
【0147】
組成物を調製するには、本発明の1種又は複数の化合物と薬剤として許容可能で適切な担体を混合する。化合物を混合又は添加する際、得られる混合物は、溶液、懸濁液、乳濁液などとしてよい。リポソーム懸濁液も薬剤として許容可能な担体として適切であるといえる。これらは、当分野の技術者に知られている方法に従って調製してよい。得られる混合物の形状は、目的の投与方式、及び選択される担体又は溶剤中での化合物の溶解性を含むいくつかの要因に応じて決める。有効濃度は、治療する疾患、障害、又は状態の少なくとも1種の症状を軽減又は改善するのに十分なものであり、経験的に決定してよい。
【0148】
本明細書で提示する化合物の投与に適する薬剤用担体又は溶剤には、ある投与方式に適することが当分野の技術者に知られている何らかの担体が含まれる。活性材料はその上、所望の作用を弱めない他の活性材料、又は所望の作用を補う若しくは別の作用を有する材料と混合することもできる。化合物は、組成物中に1種だけの薬剤活性成分として処方してもよく、他の活性材料と合わせてもよい。
【0149】
化合物の溶解性が不十分である場合、可溶化する方法を利用してよい。そのような方法は知られており、これには、それだけに限らないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)など、共溶媒を使用すること、Tween(登録商標)など、界面活性剤を使用すること、及び水性重炭酸塩ナトリウムに溶解させることが含まれる。有効な薬剤組成物を処方するために、塩又はプロドラッグなど、化合物の誘導体を使用してもよい。
【0150】
化合物濃度は、化合物の投与目的である障害の少なくとも1種の症状を軽減又は改善する投与量の送達に有効なものである。通常、組成物は1回投与用に処方される。
【0151】
本発明の化合物は、徐放性の処方やコーティングなど、体からの急速な排泄を防ぐ担体と共に調製してよい。そのような担体には、それだけに限らないが、マイクロカプセル化送達系など、徐放製剤が含まれる。活性化合物は、治療する患者への望ましくない副作用がない状態で治療上有用な作用を発揮するのに十分な量の薬剤として許容可能な担体中に含まれる。治療上有効な濃度は、知られているin vitro及びin vivoモデル系で、治療する障害について化合物を試験することによって、経験的に決定してよい。
【0152】
本発明の化合物及び組成物は、複数回又は1回分の容器に封入することができる。封入された化合物及び組成物は、例えば、組み立てて使用できる構成要素を含むキットの形で提供できる。例えば、凍結乾燥した形の化合物阻害剤と適切な希釈剤を、使用前に合わせるために別々の成分として提供してよい。同時投与用のキットは、化合物阻害剤及び第2の治療薬を含んでいてよい。阻害剤及び第2の治療薬を別々の構成要素として提供してもよい。キットは、複数の容器を含み、各容器が本発明の化合物の1又は複数単位分を収容していてよい。容器は、それだけに限らないが、経口投与では錠剤、ゲルカプセル剤、徐放カプセル剤など、非経口投与ではデポー製品、充填済シリンジ、アンプル、バイアルなど、局所投与ではパッチ、メディパッド、クリームなどを含む所望の投与方式に適合していることが好ましい。
【0153】
薬物組成物中の活性化合物濃度は、活性化合物の吸収率、不活性化率、排泄率、投与スケジュール、及び投与量、並びに当分野の技術者に知られている他の要因に応じて決まる。
【0154】
活性成分は、一度に投与しても、数回分に小分けして、時間間隔をおいて投与してもよい。厳密な用量及び治療期間は、治療する疾患に応じて変わるものであり、知られている試験プロトコルを使用して経験的に、或いはin vivo又はin vitro試験データからの補外によって決定してよいことは理解されよう。濃度及び用量の値は、緩和すべき状態の重症度によっても変わり得ることを留意されたい。さらに、時間の経過と共に、各個の必要度、及びこの組成物の投与を管理又は監督する者による専門的判断に従い、特定の投与レジメンを、あるいずれかの対象向けに調整すべきであること、並びに本明細書で述べる濃度範囲は例に過ぎず、特許請求の範囲に記載の組成物の範囲又は実施を限定するものでないことも理解されたい。
【0155】
経口投与が望ましい場合、化合物は、それを胃の酸性環境から守る組成物の形で提供すべきである。例えば、胃ではその完全性を維持し、腸で活性化合物を放出する腸溶コーティング中に組成物を処方することができる。組成物を制酸剤又はそのような他の成分と組み合わせて処方してもよい。
【0156】
経口組成物は、一般に不活性希釈剤又は可食担体を含んでおり、錠剤に圧縮し、又はゼラチンカプセルに封入してよい。経口で治療的に投与する目的では、活性化合物に添加剤を混ぜ、錠剤、カプセル剤、又はトローチ剤の形で使用することができる。組成物の成分として、薬剤として適合する結合剤及び補助材料を含んでいてもよい。
【0157】
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の材料、すなわち、それだけに限らないが、トラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチンなど、結合剤;微結晶性セルロース、デンプン、ラクトースなど、賦形剤;それだけに限らないが、アルギン酸やトウモロコシデンプンなど、崩壊剤;それだけに限らないが、ステアリン酸マグネシウムなど、滑沢剤;それだけに限らないが、コロイド状二酸化ケイ素など、流動促進剤(gildant);スクロースやサッカリンなど、甘味剤;及びペパーミント、サリチル酸メチル、果実香料など、着香剤;並びに性質が類似の化合物のいずれかを含有してよい。
【0158】
単位剤形がカプセル剤である場合、上記のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体も含有してよい。さらに、剤形単位は、剤形の物理的形状を改変する他の様々な材料、例えば、糖衣及び他の腸溶性薬品類も含んでよい。化合物は、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤、チューインガムなどの成分として投与することもできる。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤及びある種の保存剤としてのスクロース、色素及び着色剤、着香剤を含んでよい。
【0159】
活性材料は、所望の作用を弱めない他の活性材料又は所望の作用を補う材料と混合することもできる。
【0160】
非経口、皮内、皮下、又は局所投与に使用する溶液又は懸濁液は、以下の成分、すなわち、注射用水、食塩水、不揮発性油など、無菌希釈剤、ゴマ油、ヤシ油、ラッカセイ油、綿実油など、天然の植物油、又はオレイン酸エチルなど、合成脂肪溶剤;ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;ベンジルアルコールやメチルパラベンなど、抗菌剤;アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウムなど、抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など、キレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩など、緩衝剤;及び塩化ナトリウムやデキストロースなど、浸透圧調整剤のいずれかを含んでよい。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製又は他の適切な材料製のアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回分のバイアルに封入することができる。必要に応じて、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤などを混ぜてよい。
【0161】
静脈内投与する場合、適切な担体には、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、並びにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらの混合物など、増粘剤及び可溶化剤を含む溶液が含まれる。組織を標的とするリポソームを含むリポソーム懸濁液も薬剤として許容可能な担体として適切であるといえる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような知られている方法に従って調製してよい。
【0162】
活性化合物は、徐放性の処方やコーティングなど、化合物が体から急速に排泄されるのを防ぐ担体と共に調製してよい。そのような担体には、それだけに限らないが、植込剤やマイクロカプセル化送達系などの徐放製剤、及びコラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸など、生分解性、生体適合性ポリマーが含まれる。このような処方の調製方法は、当分野の技術者に知られている。
【0163】
本発明の化合物は、経口、非経口(IV、IM、デポーIM、SQ、及びデポーSQ)、舌下、鼻腔内(吸入)、くも膜下、局所、又は直腸投与することができる。当分野の技術者に知られている剤形は、本発明の化合物の送達に適している。
【0164】
本発明の化合物は、経腸的又は非経口的に投与してよい。本発明の化合物は、経口投与する場合、当分野の技術者によく知られているような通常の経口投与用剤形で投与することができる。このような剤形には、通常の固体単位剤形である錠剤及びカプセル剤、並びに溶液、懸濁液、エリキシルなど、液体剤形が含まれる。固体剤形を使用する場合、本発明の化合物の投与が1日1回又は2回だけで済むように、徐放タイプのものにすることが好ましい。
【0165】
患者への経口用剤形の投与は、1日に1回、2回、3回、又は4回である。本発明の化合物は、1日に3回又はより少ない回数、より好ましくは1日に1回又は2回投与することが好ましい。したがって、本発明の化合物は、経口用剤形で投与することが好ましい。どんな経口用剤形を使用するにしても、それが本発明の化合物を胃の酸性環境から守るように設計されていることが好ましい。腸溶コーティングされた錠剤は、当分野の技術者によく知られている。さらに、それぞれをコーティングして胃の酸から保護した小球を充填したカプセル剤も、当分野の技術者によく知られている。
【0166】
経口投与する場合、β−セクレターゼ活性を阻害する、Aβ産生を阻害する、Aβ沈着を阻害する、又はADを治療若しくは予防するのに治療上有効な投与量は、約0.1mg/日から約1,000mg/日である。経口投与量は、約1mg/日から約100mg/日であることが好ましい。経口投与量は、約5mg/日から約50mg/日であることがさらに好ましい。患者はある用量から始めてよいが、その用量は患者の状態が変化するにつれて時間の経過と共に変動し得ることは理解されよう。
【0167】
また本発明の化合物は、ナノ結晶分散処方の形で送達すると有利である。そのような処方の調製は、例えば、米国特許第5,145,684号に記載されている。米国特許第6,045,829号には、HIVプロテアーゼ阻害剤のナノ結晶分散系及びその使用方法が記載されている。ナノ結晶性処方は、通常、薬物化合物の生物学的利用能をより高くする。
【0168】
本発明の化合物は、非経口的に、例えば、IV、IM、デポーIM、SC、又はデポーSCによって投与できる。非経口投与する場合、約0.5〜約100mg/日、好ましくは約5〜約50mgの治療有効量を毎日送達すべきである。デポー製剤が1カ月に1度又は2週間に1度注射に使用される場合、投与量は、約0.5mg/日〜約50mg/日とする、又は毎月の投与量を約15mg〜約1,500mgとすべきである。アルツハイマー病の患者は、ある程度健忘症であるので、非経口剤形がデポー製剤であることが好ましい。
【0169】
本発明の化合物は、舌下投与することができる。本発明の化合物は、舌下で与える場合、1日に1〜4回、IM投与について上記で述べた量を与えるべきである。
【0170】
本発明の化合物は、鼻腔内投与することができる。この経路で与える場合の適切な剤形は、当分野の技術者に知られているように、鼻内噴霧器又は乾燥粉末である。本発明の化合物の鼻腔内投与向け投与量は、上記でTM投与について述べた量である。
【0171】
本発明の化合物は、くも膜下投与することができる。この経路で与える場合の適切な剤形は、当分野の技術者に知られているように、非経口剤形とすることができる。本発明の化合物のくも膜下投与向け投与量は、上記でIM投与について述べた量である。
【0172】
本発明の化合物は、局所投与することができる。この経路で与える場合の適切な剤形は、クリーム、軟膏、又はパッチである。本発明の化合物の投与すべき量を考慮すると、パッチが好ましい。局所投与する場合の投与量は、約0.5mg/日〜約200mg/日である。パッチによって送達できる量は限られるので、2個以上のパッチを使用してよい。当分野の技術者に知られているように、パッチの数及び大きさは重要でなく、重要なのは本発明の化合物が治療有効量だけ送達されることである。本発明の化合物は、当分野の技術者に知られているように、坐剤によって直腸投与することができる。坐剤によって投与する場合の治療有効量は、約0.5mg〜約500mgである。
【0173】
本発明の化合物は、当分野の技術者に知られているように、植込錠によって投与することができる。本発明の化合物を植込錠によって投与する場合の治療有効量は、上記でデポー投与について述べた量である。
【0174】
当分野の技術者には、本発明の特定の化合物及び所望の剤形を考えて、当該の剤形を調製し、投与する方法がわかるはずである。
【0175】
MCI(軽度認知障害)を伴う疾患を予防し、又はそれに罹患した患者を治療し、MCIからADへと進行するはずの対象においてはアルツハイマー病の発症を防ぐ又は遅らせる、ダウン症候群を治療する又は予防する、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血に罹患したヒトを治療する、脳アミロイド血管障害を治療し、可能性のあるその予後、すなわち単発性及び再発性皮質下出血を防ぐ、血管と変性に由来する混合型痴呆、パーキンソン病に随伴する痴呆、進行性核上麻痺に随伴する痴呆、皮質基底核変性症に随伴する痴呆、びまん性レビー小体型アルツハイマー病を含む他の変性痴呆を治療するためにも、本発明の各化合物は、上記と同じ投与スケジュールで、同じ製薬上の剤形を使用して、且つ同じ投与経路によって同じ方式で使用される。
【0176】
本発明の諸化合物は、互いに組み合わせて、又は前掲の状態を治療又は予防するのに使用される他の治療薬又は手法と併用することができる。そのような薬品又は手法には、タクリン(テトラヒドロアミノアクリジン、COGNEX(登録商標)として市販されている)、塩酸ドネペジル(Aricept(登録商標)として市販されている)及びリバスチグミン(Exelon(登録商標)として市販されている)などのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬;γセクレターゼ阻害薬;シクロオキシゲナーゼII阻害薬などの抗炎症薬;ビタミンEやギンコリドなどの抗酸化剤;例えば、Aβペプチドでの免疫化や抗Aβペプチド抗体の投与などの免疫学的手法;スタチン;及びCerebrolysin(登録商標)、AIT−082(EmilieuのArch.Neurol.第57巻454ページ、2000年)、他の将来の向神経薬などの直接又は間接的な向神経薬が含まれる。
【0177】
さらに、式(I)の化合物は、P−糖タンパク質(P−gp)阻害剤と併用することもできる。P−gp阻害剤及びその種の化合物の使用は、当分野の技術者に知られている。例えば、Cancer Research、第53巻、4595〜4602ページ(1993年);Clin.Cancer Res.、第2巻、7〜12ページ(1996年);Cancer Research、第56巻、4171〜4179ページ(1996年);国際公開WO99/64001;及びWO01/10387を参照されたい。重要なのは、P−gp阻害剤の血中濃度が、P−gpによる式(A)の化合物の脳血中濃度の低下を阻止する際にその効果が発揮される程度であることである。そのため、P−gp阻害剤及び式(A)の化合物は、同じ若しくは異なる投与経路によって同時に投与することも、又は別の時間に投与することもできる。投与の時間ではなく、P−gp阻害剤の血中濃度が有効であることが重要である。
【0178】
適切なP−gp阻害剤には、シクロスポリンA、ベラパミル、タモキシフェン、キニジン、ビタミンE−TGPS、リトナビル、酢酸メゲステロール、プロゲステロン、ラパマイシン、10,11−メタノジベンゾスベラン(10,11−methanodibenzosuberane)、フェノチアジン、GF120918などのアクリジン誘導体、FK506、VX−710、LY335979、PSC−833、GF102,918及び他のステロイドが含まれる。同じ機能を有し、したがって同じ結果をもたらす追加の薬品が見つかればその種の化合物も有用であるとみなされることを理解されたい。
【0179】
P−gp阻害剤は、経口、非経口、(IV、IM、IM−デポー、SQ、SQ−デポー)、局所、舌下、直腸、鼻腔内、及びくも膜下投与、及び植込錠によって投与することができる。
【0180】
治療有効量のP−gp阻害剤は、約0.1〜約300mg/kg/日、好ましくは1日約0.1〜約150mg/kgである。患者はある用量から開始されるにしても、その用量は、患者の状態が変化するにつれて時間と共に様々に変えなければならないであろうと理解される。
【0181】
P−gp阻害剤は、経口投与する場合には、当分野の技術者に知られているように、経口投与向けの通常の剤形にして投与することができる。そのような剤形には、錠剤及びカプセル剤の通常の固体単位剤形、並びに溶液、懸濁液、エリキシルなどの液体剤形が含まれる。固体剤形を使用する場合には、P−gp阻害剤を1日1回又は2回しか投与しなくて済むように徐放型の剤形とすることが好ましい。経口用剤形は、患者に1日1回から4回投与する。P−gp阻害剤は、1日に3回又はそれよりも少なく投与することが好ましく、1日に1回又は2回がより好ましい。したがって、P−gp阻害剤は、固体剤形にして投与することが好ましく、さらに、固体剤形は、1日1回又は2回の投与を可能にする徐放形態とすることが好ましい。胃の酸性環境からP−gp阻害剤を保護するように設計された剤形ならどんなものを使用することも好ましい。腸溶コーティングを施された錠剤は、当分野の技術者によく知られている。さらに、酸性の胃から保護されるように各々がコーティングされた小球を充填したカプセル剤も、当分野の技術者によく知られている。
【0182】
さらに、P−gp阻害剤は、非経口的に投与することもできる。非経口的に投与する場合には、この阻害剤は、IV、IM、デポーIM、SQ、又はデポーSQ投与することができる。
【0183】
P−gp阻害剤は、舌下投与することもできる。舌下投与する場合には、P−gp阻害剤は、IM投与と同じ量を1日に1回から4回投与すべきである。
【0184】
P−gp阻害剤は、鼻腔内投与することもできる。この投与経路によって投与する場合には、適切な剤形は、当分野の技術者に知られているように、点鼻用のスプレー又は乾燥粉末である。P−gp阻害剤を鼻腔内投与するための投与量は、IM投与と同じである。
【0185】
P−gp阻害剤は、くも膜下投与することもできる。この投与経路によって投与する場合には、適切な剤形は、当分野の技術者に知られているように、非経口剤形とすることができる。
【0186】
P−gp阻害剤は、局所投与することもできる。この投与経路によって投与する場合には、適切な剤形は、クリーム、軟膏、又はパッチである。投与する必要のあるP−gp阻害剤量を理由としてパッチが好ましい。しかし、パッチによって送達できる量は限られている。したがって、2個以上のパッチが必要になることもある。当分野の技術者に知られているように、パッチの数及び大きさは重要でなく、治療有効量のP−gp阻害剤が送達されることが重要である。
【0187】
P−gp阻害剤は、当分野の技術者に知られているように、座薬によって直腸投与することもできる。
【0188】
P−gp阻害剤は、当分野の技術者に知られているように、植込錠によって投与することもできる。
【0189】
P−gp阻害剤を投与する投与経路についても剤形についても新規性はない。特定のP−gp阻害剤及び所望の剤形の場合について、当分野の技術者ならば、P−gp阻害剤に適する剤形をどのように製剤するかがわかるはずである。
【0190】
当分野の技術者には、厳密な投与量及び投与頻度が、投与する本発明の具体的な化合物、治療するその状態、治療する状態の重症度、その患者の年齢、体重、体調全般、及び個体が受け得る他の投薬に応じて変わることがわかるはずであり、同様に、投与を行う当分野に通じた医師にもよく知られているはずである。
【0191】
APP切断の阻害
本発明の化合物は、APP695アイソフォーム若しくはその変異体の番号のMet595とAsp596の間、又はAPP751やAPP770など、異なるアイソフォーム若しくはその変異体の対応する部位(「β−セクレターゼ部位」と呼ぶこともある)でのAPPの切断を阻害する。特定の理論に拘泥しないが、β−セクレターゼ活性の抑制によってβアミロイドペプチド(Aβ)の産生が抑制されると考えられている。β−セクレターゼ切断部位での切断をもたらすのに通常は十分である条件下、β−セクレターゼ酵素存在下でのAPP基質の切断を阻害化合物の存在下で分析する、様々な阻害アッセイの1つで阻害活性が実証されている。未処理又は不活性対照と比較した、APPのβ−セクレターゼ切断部位での切断の減少は、阻害活性と関連している。本発明の化合物阻害剤の効力を証明するのに使用できるアッセイ系は、知られている。代表的なアッセイ系は、例えば、米国特許第5,942,400号、同第744,346号、並びに以下の実施例に記載されている。
【0192】
天然、変異、且つ/又は合成APP基質、天然、変異、且つ/又は合成酵素、及び試験化合物を使用して、in vitro又はin vivoでのβ−セクレターゼ酵素活性及びAβ産生を分析できる。この分析では、天然、変異、且つ/又は合成APP及び酵素を発現する一次細胞又は二次細胞、天然のAPP及び酵素を発現する動物モデルを要件としてもよく、この基質及び酵素を発現するトランスジェニック動物モデルを利用してもよい。酵素活性は、例えば、イムノアッセイ、蛍光定量アッセイ、色素生産性アッセイ、HPLC、又は他の検出手段によって1種又は複数の切断産物を分析して検出できる。反応系中のβ−セクレターゼを媒介とする切断が阻害化合物なしで観察され、測定される対照と比較したときに、生成するβ−セクレターゼ切断産物量を低減させる能力のあったものを、阻害化合物として判定する。
【0193】
β−セクレターゼ
様々な形のβ−セクレターゼ酵素が知られており、酵素活性アッセイ及び酵素活性阻害に利用可能且つ有用である。これらには、天然、組換え型、及び合成の形の酵素が含まれる。ヒトβ−セクレターゼは、β部位APP切断酵素(BACE)、Asp2、及びマメプシン2として知られており、例えば、米国特許第5,744,346号、公告されたPCT特許出願WO98/22597、WO00/03819、WO01/23533、及びWO00/17369、並びに文献での公告(Hussain等のMol.Cell.Neurosci.第14巻419〜427ページ、1999年;Vassar等のScience第286巻735〜741ページ、1999年;Yan等のNature第402巻533〜537ページ、1999年;Sinha等のNature第40巻537〜540ページ、1999年;及びLin等のPNAS USA第97巻1456〜1460ページ、2000年)で特性が述べられている。合成の形の酵素も記載されている(WO98/22597及びWO00/17369)。β−セクレターゼは、ヒト脳組織から抽出、精製することができ、細胞中、例えば、組換え型酵素を発現する哺乳類細胞中で製造することもできる。
【0194】
好ましい化合物は、50マイクロモル、好ましくは10マイクロモル以下、より好ましくは1マイクロモル以下、最も好ましくは10ナノモル以下の濃度でβ−セクレターゼ酵素活性を50%阻害するのに有効である。
【0195】
APP基質
β−セクレターゼを媒介とするAPP切断の阻害を証明するアッセイでは、Kang等のNature第325巻733〜6ページ、1987年に記載されている695アミノ酸「正常」アイソタイプ、Kitaguchi等のNature第331巻530〜532ページ、1981年に記載されている770アミノ酸アイソタイプ、及びスウェーデン変異体(KM670−1NL)(APP−SW)、ロンドン変異体(V7176F)、その他などの変異体を含む、APPの知られている形態のいずれかを利用できる。知られている種々の突然変異体の検討には、例えば、米国特許第5,766,846号、またHardyのNature Genet.第1巻233〜234ページ、1992年を参照されたい。それ以外の有用な基質には、例えばWO00/17369に開示されている二塩基性アミノ酸修飾体のAPP−KK、APP断片及びβ−セクレターゼ切断部位を含む合成ペプチド、野生型(WT)又は、例えば米国特許第5,942,400号及びWO00/03819に記載の突然変異型、例えばSWが含まれる。
【0196】
APP基質は、APPのβ−セクレターゼ切断部位(KM−DA又はNL−DA)、例えば、完全なAPPペプチド若しくは変異体、APP断片、組換え型若しくは合成APP、又は融合ペプチドを含む。融合ペプチドは、酵素アッセイに有用な部分を有する、例えば、単離及び/又は検出特性を有するペプチドと融合したβ−セクレターゼ切断部位を含むことが好ましい。有用な部位は、抗原結合用抗体エピトープ、標識部分、若しくは他の検出部分、結合基質などであるといえる。
【0197】
抗体
産物のAPP切断特性は、例えば、Pirttila等のNeuro.Lett.第249巻21〜4ページ、1999年、及び米国特許第5,612,486号に記載されている様々な抗体を使用するイムノアッセイによって測定できる。Aβの検出に有用な抗体には、例えば、Aβペプチドのアミノ酸1〜16上のエピトープを特異的に認識する単クローン性抗体6E10(Senetek、ミズーリ州セントルイス);それぞれヒトAβ1〜40及び1〜42に特異的な抗体162及び164(New York State Institute for Basic Research、ニューヨーク市スタッテンアイランド);及びβアミロイドペプチドの接合区域、すなわち残基16と残基17の間の部位を認識する、米国特許第5,593,846号に記載の抗体が含まれる。米国特許第5,604,102号及び同第5,721,130号に記載されているように、APP残基591〜596の合成ペプチドに対して出現した抗体、及びスウェーデン変異体の590〜596に対して出現したSW192抗体も、APP及びその切断産物のイムノアッセイに有用である。
【0198】
アッセイ系
β−セクレターゼ切断部位でのAPP切断を定量するアッセイは、当技術分野でよく知られている。アッセイの例は、例えば、米国特許第5,744,346号及び同第5,942,400号に記載されており、以下の実施例でも述べる。
【0199】
細胞未使用アッセイ
本発明の化合物の阻害活性を証明するために使用できるアッセイの例は、例えば、WO00/17369、WO00/03819、及び米国特許第5,942,400号及び同第5,744,346号に記載されている。そのようなアッセイは、細胞未使用でインキュベートする形で、或いはβ−セクレターゼ発現細胞及びβ−セクレターゼ切断部位含有APP基質を使用して、細胞をインキュベートする形で実施できる。
【0200】
酵素の切断活性に適するインキュベート条件下、β−セクレターゼ酵素、その断片、又はβ−セクレターゼ活性を有し、APPのβ−セクレターゼ切断部位の切断に有効な合成若しくは組換え型ポリペプチド変異体の存在下、APPβ−セクレターゼ切断部位含有APP基質、例えば、完全APP若しくは変異体、APP断片、又はアミノ酸配列KM−DA又はNL−DAを含む組換え型若しくは合成APP基質をインキュベートする。適切な基質は、任意選択で、誘導体を含むが、これらは基質ペプチドとペプチド若しくはそのβ−セクレターゼ切断産物を精製若しくは検出しやすくするのに有用な修飾物とを含む融合タンパク質又は融合ペプチドとされる。有用な修飾には、抗体結合のための知られている抗原エピトープの挿入、標識又は検出可能部分の結合、結合性基質の結合などが含まれる。
【0201】
細胞未使用in vitroアッセイのための適切なインキュベート条件には、例えば、pH4〜7付近且つ約37℃の水溶液中、基質を約200ナノモル〜10マイクロモル、酵素を10〜200ピコモル、及び阻害化合物を約0.1ナノモル〜10マイクロモルとし、時間を約10分間〜3時間とすることが含まれる。このようなインキュベート条件は単に例に過ぎず、特定のアッセイ成分及び/又は所望の測定系の要件に応じて変更できる。特定のアッセイ成分向けにインキュベート条件を最適化するなら、使用する特定のβ−セクレターゼ酵素及びその最適pH、アッセイで使用するかもしれない追加の酵素及び/又は標識などについて考えるべきである。そのような最適化は、決まりきったものであり、大袈裟な実験は必要ない。
【0202】
有用なアッセイの1つでは、マルトース結合タンパク質(MBP)とAPP−SWのC末端125アミノ酸が融合した融合ペプチドが利用される。MBPタンパク質は、抗MBP捕捉抗体によってアッセイ基質上で捕捉される。β−セクレターゼの存在下、捕捉された融合タンパク質をインキュベートすると、基質のβ−セクレターゼ切断部位が切断される。切断活性は、例えば、切断産物のイムノアッセイによって分析できる。このようなイムノアッセイの1つでは、例えば、抗体SW192を使用して、切断された融合タンパク質のカルボキシ末端を露出した独特なエピトープが検出される。このアッセイは、例えば、米国特許第5,942,400号に記載されている。
【0203】
細胞アッセイ
β−セクレターゼ活性及び/又はAβを遊離させるAPPプロセシングの分析には、非常に多くの細胞系アッセイが使用できる。細胞内、且つ本発明の化合物阻害剤の存在下又は不在下、APP基質にβ−セクレターゼ酵素を接触さることによって、この化合物のβ−セクレターゼ阻害活性を実証することができる。有用な阻害化合物の存在下でのアッセイによって、酵素活性が非阻害対照の少なくとも約30%、最も好ましくは少なくとも約50%阻害されることが好ましい。
【0204】
一実施形態では、β−セクレターゼを天然に発現する細胞を使用する。或いは、細胞に手を加えて、上記で論じた組換え型β−セクレターゼ又は合成変異体酵素を発現させる。APP基質は、培地に加えてもよいが、細胞中に発現させることが好ましい。APP、APPの変異体若しくは突然変異体を天然に発現する細胞、又はAPP、突然変異体若しくは変異体のAPP、組換え型若しくは合成APP、APP断片、β−セクレターゼAPP切断部位を含む合成APPペプチド若しくは融合タンパク質のアイソフォームを発現するように形質転換した細胞を使用するが、ただし、発現したAPPは、酵素との接触が可能であり、酵素による切断活性が分析できるものである。
【0205】
APPをAβへと正常にプロセシングするヒト細胞系が、本発明の化合物の阻害活性を検定するための有用な手段となる。例えば、ウエスタンブロット又はELISAなどの酵素結合イムノアッセイ(EIA)など、イムノアッセイによって、Aβ及び/又は他の切断産物の産生及び培地への遊離を測定する。
【0206】
化合物阻害剤の存在下、APP基質及び活性β−セクレターゼを発現する細胞をインキュベートすると、対照と比較した酵素活性の阻害が実証できる。β−セクレターゼ活性は、APP基質の1種又は複数の切断産物を分析することによって測定できる。例えば、基質APPに対するβ−セクレターゼ活性の阻害によって、Aβなど、特定のβ−セクレターゼ誘発APP切断産物の遊離が減少することが予想されるはずである。
【0207】
神経細胞と非神経細胞のどちらもがAβをプロセシングし、遊離させるが、内在するβ−セクレターゼ活性が低レベルであり、ELAで検出するのは難しい。したがって、β−セクレターゼ活性がより高く、APPのAβへのプロセシングがより顕著であり、且つ/又はAβの産生もより顕著であると知られている細胞型の使用が好ましい。例えば、細胞にスウェーデン変異体の形のAPP(APP−SW)、APP−KK、又はAPP−SW−KKを形質移入すると、β−セクレターゼ活性及びAβ産生量が容易に測定できるまでに向上した細胞が得られる。
【0208】
そのようなアッセイでは、例えば、APP基質のβ−セクレターゼ切断部位でのβ−セクレターゼ酵素活性に適する条件下の培地で、APP及びβ−セクレターゼを発現する細胞がインキュベートされる。細胞に化合物阻害剤を作用させると、培地中に遊離するAβ量及び/又は細胞可溶化液中のAPPCTF99断片量が対照よりも減少する。APPの切断産物は、例えば、上記で論じた特異的な抗体との免疫反応によって分析できる。
【0209】
β−セクレターゼ活性の分析に好ましい細胞には、初代ヒト神経細胞、導入遺伝子がAPPである初代トランスジェニック動物神経細胞、及びAPPを発現する安定な293細胞系、例えばAPP−SWなど、他の細胞が含まれる。
【0210】
in vivoアッセイ:動物モデル
上述のとおり、β−セクレターゼ活性及び/又はAβを遊離させるAPPプロセシングの分析には、様々な動物モデルが使用できる。例えば、APP基質及びβ−セクレターゼ酵素を発現するトランスジェニック動物を利用して、本発明の化合物の阻害剤活性を実証することができる。例えば、米国特許第5,877,399号、同第5,612,486号、同第5,387,742号、同第5,720,936号、同第5,850,003号、同第5,877,015号、同第5,811,633号、及びGanes等のNature第373巻523ページ、1995年に、ある種のトランスジェニック動物モデルが記載されている。ADの病態生理に随伴する特性を示す動物が好ましい。本明細書に記載のトランスジェニックマウスに本発明の化合物阻害剤を投与すれば、その化合物の阻害活性を実証する代替法となる。また、化合物が薬剤として有効な担体中に含まれ、且つ標的組織に適切な治療量が到達する投与経路によって投与されることが好ましい。
【0211】
このような動物では、β−セクレターゼを媒介とする、APPのβ−セクレターゼ切断部位での切断の阻害、及びAβ遊離の抑制が、動物の脳脊髄液などの体液中又は組織中の切断断片を測定することによって分析できる。脳組織のAβ沈着又はAβ斑を分析することが好ましい。
【0212】
酵素によって媒介されるAPPの切断及び/又は基質からのAβの遊離が十分可能である条件下、本発明の阻害化合物の存在下でAPP基質にβ−セクレターゼ酵素を接触させる場合、本発明の化合物は、β−セクレターゼを媒介とする、β−セクレターゼ切断部位でのAPP切断を低減するのに有効であり、且つ/又はAβが遊離する量を減少させるのにも有効である。このような接触として、例えば上述のような動物モデルに、本発明の阻害化合物を投与すれば、この化合物は、動物脳組織でのAβ沈着を低減し、βアミロイド斑の数を減少させ、且つ/又はその大きさを縮小するのに有効である。その投与をヒトの対象に行えば、Aβ量の増加を特徴とする疾患の進行を抑制又は緩慢化する、ADの進行を緩慢化する、且つ/又はADの恐れのある患者においてこの疾患の発生又は発症を予防するのに有効である。
【0213】
別段の定義づけがない限り、本明細書で使用する科学技術用語はすべて、本発明が属する分野の技術者に一般に理解されているものと同じ意味である。本明細書で参考文献とした特許及び刊行物はすべて、いかなる目的でも参照により本明細書に組み込む。
【0214】
定義
以下の定義及び説明は、明細書及び特許請求の範囲を含めたこの文書全体を通して使用される用語に関するものである。
【0215】
この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その文脈が他に明らかに指示しない限り、複数対象を含むことに留意されたい。したがって例えば、「a compound(化合物)」を含有する組成物という場合には、2種以上の化合物の混合物が含まれる。「又は」という用語は、その文脈が他に明らかに指示しない限り、一般に「及び/又は」を含めた意味で使用されることにも留意されたい。
【0216】
多数の置換基が1つの構造に結合していることが示される場合、これらの置換基を同じにすることができ、又は異ならせることができることを、理解すべきである。したがって例えば、「Rは、1、2、又は3個のR置換基によって任意選択で置換される」とは、Rが、同じか又は異なるものにすることができる1、2、又は3個のR基で置換されることを示す。
【0217】
APP、アミロイド前駆体タンパク質は、例えば米国特許第5,766,846号に開示されているように、APPの変種、変異体、及びアイソフォームを含めた任意のAPPポリペプチドと定義される。
【0218】
Aβ、アミロイドβペプチドは、39、40、41、42、及び43アミノ酸のペプチドを含み、β−セクレターゼ切断部位からアミノ酸39、40、41、42、又は43まで伸長する、β−セクレターゼで媒介されたAPP切断から得られた任意のペプチドと定義される。
【0219】
β−セクレターゼ(BACE1、Asp2、メマプチン2)は、Aβのアミノ末端側の縁でAPPの切断を媒介するアスパルチルプロテアーゼである。ヒトβ−セクレターゼは、例えばWO00/17369に記載されている。
【0220】
薬剤として許容されるとは、組成物、製剤、安定性、患者の許容度、及び生物学的利用能に関し、薬理学的/毒物学的な観点から患者に許容され、且つ物理的/化学的な観点から製薬化学者に許容される、特性及び/又は物質を指す。
【0221】
治療有効量は、治療する疾患の少なくとも1つの症状を低減し又は軽減するのに有効であり、或いは疾患の1つ又は複数の臨床マーカー又は症状の発症を低減し又は遅延させるのに有効な量と定義される。
【0222】
本発明での「アルキル」及び「C〜Cアルキル」とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、及び3−メチルペンチルなど、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を意味する。置換基(例えばアルキル基、アルコキシ基、又はアルケニル基)のアルキル鎖が炭素6個よりも短く又は長い場合、第2の「C」は、例えば「C〜C10」が最大10個の炭素を示すように、示される。
【0223】
本発明の「アルコキシ」及び「C〜Cアルコキシ」とは、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、及び3−メチルペントキシなど、少なくとも1個の2価の酸素原子を介して結合された、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を意味する。
【0224】
本発明の「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、及びヨウ素を意味する。
【0225】
「アルケニル」及び「C〜Cアルケニル」は、2〜6個の炭素原子及び1〜3個の二重結合を有する直鎖及び分枝鎖炭化水素基を意味し、例えばエテニル、プロペニル、1−ブト−3−エニル、1−ペント−3−エニル、1−ヘキス−5−エニルなどを含む。
【0226】
「アルキニル」及び「C〜Cアルキニル」は、2〜6個の炭素原子及び1つ又は2つの三重結合を有する直鎖及び分枝鎖炭化水素基を意味し、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチン−2−イルなどを含む。
【0227】
本明細書で使用する「シクロアルキル」という用語は、3〜12個の炭素原子を有する飽和炭素環基を指す。シクロアルキルは単環式でよく、又は多環式縮合系でよい。そのような基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが含まれる。好ましいシクロアルキル基は、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルである。本明細書のシクロアルキル基は、非置換のものであり、或いは明示されるように、1つ又は複数の置換可能な位置が様々な基で置換されているものである。例えば、そのようなシクロアルキル基は、例えば、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルによって、任意選択で置換することができる。
【0228】
「アリール」とは、1つの環(例えばフェニル)又は複数の縮合環であって、その少なくとも1つが芳香族(例えば1,2,3,4−テトラヒドロナフチルやナフチル)であり、任意選択で一置換、二置換、又は三置換されているものを有する芳香族炭素環基を意味する。本発明の好ましいアリール基は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、フルオレニル、テトラリニル、又は6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾ[a]シクロヘプテニルである。本明細書のアリール基は、非置換のものであり、或いは明示されるように、1つ又は複数の置換可能な位置が様々な基で置換されているものである。例えば、そのようなアリール基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルによって、任意選択で置換することができる。
【0229】
「ヘテロアリール」とは、窒素、酸素、又はイオウから選択される少なくとも1個から最大4個のヘテロ原子を含有する9〜11個の原子の縮合環系を含んだ5、6、又は7員環である1つ又は複数の芳香環系を意味する。本発明の好ましいヘテロアリール基には、ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル、ベンゾチエニル、インドリル、インドリニル、ピリダジニル、ピラジニル、イソインドリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、インドリジニル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、シンノリニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、イソクロマニル、クロマニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソインドリニル、イソベンゾテトラヒドロフラニル、イソベンゾテトラヒドロチエニル、イソベンゾチエニル、ベンゾキサゾリル、ピリドピリジニル、ベンゾテトラヒドロフラニル、ベンゾテトラヒドロチエニル、プリニル、ベンゾジオキソリル、トリアジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、プテリジニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾチアゾリル、ジヒドロベンズイソキサジニル、ベンズイソキサジニル、ベンゾキサジニル、ジヒドロベンズイソチアジニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クマリニル、イソクマリニル、クロモニル、クロマノニル、ピリジニル−N−オキシド、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロキノリノニル、ジヒドロイソキノリノニル、ジヒドロクマリニル、ジヒドロイソクマリニル、イソインドリノニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾキサゾリノニル、ピロリル N−オキシド、ピリミジニル N−オキシド、ピリダジニル N−オキシド、ピラニジル N−オキシド、キノリニル N−オキシド、インドリル N−オキシド、インドリニル N−オキシド、イソキノリル N−オキシド、キナゾリニル N−オキシド、キノキサリニル N−オキシド、フタラジニル N−オキシド、イミダゾリル N−オキシド、イソキザゾリル N−オキシド、オキサゾリル N−オキシド、チアゾリル N−オキシド、インドリジニル N−オキシド、インダゾリル N−オキシド、ベンゾチアゾリル N−オキシド、ベンズイミダゾリル N−オキシド、ピロリル N−オキシド、オキサジアゾリル N−オキシド、チアジアゾリル N−オキシド、トリアゾリル N−オキシド、テトラゾリル N−オキシド、ベンゾチオピラニル S−オキシド、ベンゾチオピラニル S,S−ジオキシド、テトラヒドロカルバゾール、テトラヒドロベータカルボリンが含まれる。本明細書のヘテロアリール基は、非置換のものであり、或いは明示されるように、1つ又は複数の置換可能な位置が様々な基で置換されているものである。例えば、そのようなヘテロアリール基は、例えば、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルによって、任意選択で置換することができる。
【0230】
「複素環」、「ヘテロシクロアルキル」、又は「ヘテロシクリル」とは、窒素、酸素、又はイオウから選択される少なくとも1個から最大4個のヘテロ原子を含有する9〜11個の原子の縮合環系を含んだ4、5、6、又は7員環である1つ又は複数の炭素環系を意味する。本発明の好ましい複素環には、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニル S−オキシド、チオモルホリニル S,S−ジオキシド、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ホモピペリジニル、ホモモルホリニル、ホモチオモルホリニル、ホモチオモルホリニル、S,S−ジオキシド、オキサゾリジノニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピロリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル S−オキシド、テトラヒドロチエニル S,S−ジオキシド、及びホモチオモルホリニル S−オキシドが含まれる。本明細書の複素環基は、非置換のものであり、或いは明示されるように、1つ又は複数の置換可能な位置が様々な基で置換されているものである。例えば、そのような複素環基は、例えば、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、ジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又は=Oによって任意選択で置換することができる。
【0231】
本明細書で言及されるすべての特許及び文献は、あらゆる目的で、参照により本明細書に援用する。
【0232】
構造は、Advanced Chemical Development Inc.(90 Adelaide Street West、Toronto、Ontario、M5H 3V9、カナダ)から入手可能なName Pro IUPAC Naming Software、バージョン5.09又はCambridgesoft Corporation(Cambridge、MA 02140、米国)から入手可能なChemdraw Ultra、バージョン8.0.3を使用して命名した。
【0233】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より良く理解することができる。これらの実施例は、本発明の特定の実施形態を表すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0234】
化学実施例
実施例では、以下の略語を使用することがある。すなわち、
EDCは、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド又は塩酸塩を表し、
DIEAは、ジイソプロピルエチルアミンを表し、
PyBOPは、ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムを表し、
HATUは、ヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムを表し、
THFは、テトラヒドロフランを表し、
EtBzは、エチルベンゼンを表し、
DCMは、ジクロロメタンを表す。
【実施例1】
【0235】
1−ブロモ−3−エチルベンゼンから1−(3−エチル−フェニル)−シクロヘキサノール
【化6】


マグネシウム旋削物(1.35g、55.53ミリモル)をN(気体)取入れ条件下で終夜激しく攪拌して活性化した。フラスコに数個の結晶ヨウ素を加え、次いで、これを真空中で火にかけて乾燥させる。反応フラスコに無水THF(3mL)を加えた後、1−ブロモ−3−エチルベンゼン(Avocado、2.0mL、14.59ミリモル)を加える。ヒートガンで手短に加熱した後に反応を開始した。これに、残りの1−ブロモ−3−エチルベンゼン(1.7mL、12.43ミリモル)をTHF溶液(15mL)にして加えた。反応混合物を2時間還流させた。フラスコが一度0℃に冷却されたなら、シクロヘキサノン(2.2mL、21.22ミリモル)のTHF(8mL)溶液を加えた。3.5時間後、氷浴上の反応混合物をHOで失活させ、EtOとHOとに分配した。有機層を除去し、1N HClで酸性化した。有機層を分離し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(100%のCHCl)によって精製して、所望のアルコール(4.152g、96%)を得た。質量スペクトル(CI)187.1(M−16)。
【実施例2】
【0236】
1−(3−エチル−フェニル)−シクロヘキサノールから1−(1−アジド−シクロヘキシル)−3−エチル−ベンゼン
【化7】


1−(3−エチル−フェニル)−シクロヘキサノール(4.02g、19.68ミリモル)の入った無水クロロホルム(45mL)をN(気体)取入れ条件下で0℃に冷却した。アジ化ナトリウム(3.97g、61.07ミリモル)を加えた後、トリフルオロ酢酸(7.8mL、101.25ミリモル)を滴下した。反応混合物を2時間還流させ、室温で終夜攪拌した。次いで、これをHOとEtOとに分配した。水層を除去し、混合物をHOで洗浄した後、1.0N NHOHで洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。粗生成物をそれ以上精製せずに使用した(3.30g、73%)。質量スペクトル(CI)187.1(M−42)。
【実施例3】
【0237】
【化8】


1−(1−アジド−シクロヘキシル)−3−エチル−ベンゼンから1−(3−エチル−フェニル)−シクロヘキシルアミン
水素化リチウムアルミニウム(0.31g、8.17ミリモル)のTHF(30mL)中懸濁液に、1−(1−アジド−シクロヘキシル)−3−エチル−ベンゼン(1.94g、8.39ミリモル)のEtO(8mL)溶液を滴下した。これを、N(気体)取入れ条件下、室温で3時間攪拌し、その後、1.0N NaOHを用いて反応を失活させた。次いで、反応混合物をEtOと1N HClとに分配した。水層を収集し、2N NHOHで塩基性化し、CHClでの抽出にかけた。有機層を分離し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。粗生成物をそれ以上精製せずに使用した。質量スペクトル(CI)187.1(M−16)。
【実施例4】
【0238】
7−ブロモ−1−テトラロンの調製(注1)
【化9】


添加漏斗、還流コンデンサー、及び温度計を据え付けた500mL容三口フラスコに、塩化アルミニウム(33.34g、250ミリモル)を装入し、75〜80℃に加熱した。1−テトラロン(14.6g、13.3mL、100ミリモル)を10分間かけて滴下した。得られる褐色のスラリーを3分間攪拌した後、臭素(19.21g、6.15ml、120ミリモル)を15分間かけて滴下した。混合物を5分間攪拌し、次いで氷(300g)と12N HCl(40mL)の混合物中に注いだ。混合物を塩化アンモニウムが溶解し切るまで攪拌し、次いで水(200mL)で希釈した。混合物をジエチルエーテル(3×300mL)での抽出にかけ、有機抽出物を合わせて水(2×300mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濾過し、真空中で蒸発にかけて、5−及び7−ブロモ−1−テトラロンの暗褐色の混合物を得た。シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Flash75、溶離溶媒:20/1 ヘキサン/MTBE)を使用して異性体を分離して、5−ブロモ−1−テトラロン(11.59g、51%)及び7−ブロモ−1−テトラロン(9.45g、42%)を得た。
[注1.手順:Cornelius,L.A.M.、Combs,D.W.、Synthetic Communications 1994年、第24巻、2777〜2788ページ]。
【実施例5】
【0239】
(R)−7−エチルテトラリン−1−オール(注2を参照のこと)
【化10】


7−エチル−1−テトラロン(2.29g、13.1ミリモル)を100mL容丸底フラスコに入れ、無水THF(40mL)に溶解させた。活性化した4A分子ふるいを加え、混合物を2時間ねかせた後、滴下漏斗、温度計、及び窒素吸気口を据え付けた250ml容三口丸底フラスコに、カニューレを介して移した。溶液を−25℃に冷却し、1Mのトルエン中(S)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ[1,2−c][1,3,2]オキサザボロール(1.3mL、1.3ミリモル、注3及び4)を加えた。
【0240】
滴下漏斗に、ボラン−メチルスルフィド(0.70g、0.87mL、9.3ミリモル)の無水THF(15mL、4Aふるいで乾燥させたもの)溶液を装入した。このボランの溶液は、反応温度を−20℃未満に保ちながら20分間かけて滴下した。混合物を−15〜−20℃で1時間攪拌すると、TLC分析によってケトンが消費されたことが示された。メタノール(15mL)を−20℃で慎重に加えて反応を失活させ、周囲温度に温め、16時間攪拌した。真空中で揮発性物質を除去し、残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(Biotage Flash65、溶離溶媒:6/1 ヘキサン/酢酸エチル)によって精製して、(R)−7−エチルテトラリン−1−オール(1.82g、79%、注5)を得た。
[注2.手順:Jones,T.K.、Mohan,J.J.、Xavier,L.C.、Blacklock,T.J.、Mathre,D.J.、Sohar,P.、Turner−Jones,E.T.、Reamer,R.A.、Roberts,F.E.、Grabowski,E.J.J.、J.Org.Chem.1991年、第56巻、763〜769ページを適合させたもの。
注3.供給元:Aldrich、カタログ番号45,770−1、「(S)−2−メチル−CBS−オキサザボロリジン」。S−助剤を使用するとR−アルコールが得られる。
注4.注1の参照文献は、5モル%のオキサザボロリジン触媒を使用すると、同等の結果が得られることを示している。
注5.分析用キラルHPLCは、96.6/3.4の鏡像異性体混合物(Chirocel OD−Hカラム、2:98 IPA/ヘキサンでの均一濃度溶離、0.9mL/分、RT15.2分間(副鏡像異性体)、17.5分間(主鏡像異性体))であることを示した。]
【実施例6】
【0241】
(S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチルアミン塩酸塩(注6参照)
【化11】


(R)−7−エチルテトラリン−1−オール(1.77g、10.1ミリモル)のトルエン(25mL)溶液を氷浴で冷却し、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA、3.3g、2.7mL、12ミリモル)で処理した。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、1.8g、1.8mL、12ミリモル)のトルエン(8mL)溶液を20分間かけて加え、混合物を0℃で2時間、周囲温度で16時間攪拌した。混合物をシリカゲルパッドで濾過して(6:1 ヘキサン/酢酸エチルで溶離)、沈殿を除去し、真空中で揮発性物質を除去して、粗製S−アジドの油性残渣を得た。それ以上の特徴付けを行わずにこの材料をそのまま次のステップで使用した。
【0242】
このアジドを無水THF(20mL)に溶解させ、室温で水素化リチウムアルミニウム(0.459g、12ミリモル)の無水THF(20mL)中スラリーに滴下した。混合物を室温で1時間攪拌し、次いで1時間加熱還流した。反応液を室温に冷却し、水(0.45mL)、NaOHの15%水溶液(0.45mL)、及び水(1.4mL)を順次加えて反応を失活させた。得られる混合物を1時間攪拌し、次いでセライトパッドで濾過した(ジエチルエーテルで溶離)。真空中で揮発性物質を除去し、残渣を酢酸エチル(40mL)に溶かし、ジオキサン中4N HCl(3mL)で処理した。得られる沈殿を濾別し(酢酸エチル洗浄)、収集し、真空乾燥して、(S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチルアミン塩酸塩を白色の固体(1.09g、51%、注7)として得た。
[注6.手順:Rover,S.、Adam,G.、Cesura,A.M.、Galley,G.、Jenck,F.、Monsma Jr.,F.J.、Wichmann,J.、Dautzenberg,F.M.、J.Med.Chem.2000年、第43巻、1329〜1338ページを適合させたもの。著者らは、ヒドロキシル部分の脱離によってジヒドロナフタレンが部分的に生成したために、収率が若干減少したことを報告している。]
[注7.分析用キラルHPLCは、96:4の鏡像異性体混合物(Daicel Crownpak(−)カラム、均一濃度溶離10%の水中メタノール(0.1%のTFA)、0.8mL/分、RT56.2分間(副鏡像異性体)、78.2分間(主鏡像異性体))であることを示した。]
【実施例7】
【0243】
(R)−7−ブロモテトラリン−1−オール(注8を参照のこと)
【化12】


7−ブロモ−1−テトラロン(8.28g、36.8ミリモル)を250mL容丸底フラスコに入れ、無水THF(100mL)に溶解させた。活性化した4A分子ふるいを加え、混合物を5時間ねかせた後、滴下漏斗、温度計、及び窒素吸気口を据え付けた500ml容三口丸底フラスコにカニューレを介して移した。溶液を−25℃に冷却し、1Mのトルエン中(S)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ[1,2−c][1,3,2]オキサザボロール(3.7mL、3.7ミリモル、注9及び10)を加えた。
【0244】
滴下漏斗に、ボランメチルスルフィド(1.96g、2.44mL、25.8ミリモル)の無水THF(45mL、4Aふるいで乾燥させたもの)溶液を装入した。このボランの溶液は、反応温度を−20℃未満に保ちながら20分間かけて滴下した。混合物を−15〜−20℃で1時間攪拌すると、TLC分析によってケトンが消費されたことが示された。メタノール(50mL)を−20℃で慎重に加えて反応を失活させ、周囲温度に温め、16時間攪拌した。真空中で揮発性物質を除去し、残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(Biotage Flash65、溶離溶媒:6/1 ヘキサ/酢酸エチル)によって精製して、(R)−7−ブロモテトラリン−1−オール(8.18g、98%、注11及び12)を得た。
[注8.手順:Jones,T.K.、Mohan,J.J.、Xavier,L.C.、Blacklock,T.J.、Mathre,D.J.、Sohar,P.、Turner−Jones,E.T.、Reamer,R.A.、Roberts,F.E.、Grabowski,E.J.J.、J.Org.Chem.1991年、第56巻、763〜769ページを適合させたもの。
注9.供給元:Aldrich、カタログ番号45,770−1、「(S)−2−メチル−CBS−オキサザボロリジン」。S−助剤を使用するとR−アルコールが得られる。
注10.注1の参照文献は、5モル%のオキサザボロリジン触媒を使用すると、同等の結果が得られることを示している。
注11.分析用キラルHPLCは、98:2の鏡像異性体混合物(Chirocel OD−Hカラム、2:98 IPA/ヘキサンでの均一濃度溶離、0.9mL/分、RT18.4分間(副鏡像異性体)、19.5分間(主鏡像異性体))であることを示した。
注12.プロトンNMRは、ラセミ化合物について以前に報告されたことと一致した。Saito,M.、Kayama,Y.、Watanabe,T.、Fukushima,H.、Hara,T.、J.Med.Chem.1980年、第23巻、1364〜1372ページ]
【実施例8】
【0245】
(S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチルアミン塩酸塩(注13を参照のこと)
【化13】


(R)−7−ブロモテトラリン−1−オール(8.13g、35.8ミリモル)のトルエン(75mL)溶液を氷浴で冷却し、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA、11.8g、9.6mL、43ミリモル)で処理した。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、6.5g、6.4mL、43ミリモル)のトルエン(20mL)溶液を35分間かけて加え、混合物を0℃で2時間、次いで周囲温度で16時間攪拌した。混合物をシリカゲルパッドで濾過して(6:1 ヘキサン/酢酸エチルで溶離)、沈殿を除去し、真空中で揮発性物質を除去して、粗製S−アジドの油性残渣を得た。それ以上の特徴付けを行わずにこの材料をそのまま次のステップで使用した。
【0246】
このアジドを無水THF(60mL)に溶解させ、室温で水素化リチウムアルミニウム(1.63g、43ミリモル)の無水THF(50mL)中スラリーに滴下した。混合物を室温で1時間攪拌し、次いで1時間加熱還流した。反応液を室温に冷却し、水(1.63mL)、NaONの15%水溶液(1.63mL)、及び水(4.9mL)を順次加えて反応を失活させた。得られる混合物を1時間攪拌し、次いでセライトパッドで濾過した(ジエチルエーテルで溶離)。真空中で揮発性物質を除去し、残渣を酢酸エチル(120mL)に溶かし、ジオキサン中4N HCl(10mL)で処理した。得られる沈殿を濾別し(酢酸エチル洗浄)、収集し、真空乾燥して、(S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチルアミン塩酸塩を白色の固体(6.23g、66.3%、注14)として得た。
[注13.手順:Rover,S.、Adam,G.、Cesura,A.M.、Galley,G.、Jenck,F.、Monsma Jr.,F.J.、Wichmann,J.、Dautzenberg,F.M.、J.Med.Chem.2000年、第43巻、1329〜1338ページを適合させたもの。著者らは、ヒドロキシル部分の脱離によってジヒドロナフタレンが部分的に生成したために、収率が若干減少したことを報告している。
注14.分析用キラルHPLCは、96:4の鏡像異性体混合物(Daicel Crownpak(−)カラム、均一濃度溶離10%の水中メタノール(0.1%のTFA)、0.8mL/分、RT39.4分間(副鏡像異性体)、57.6分間(主鏡像異性体))であることを示した。]
【0247】
以下の化合物は、本質的に、本明細書で述べるスキーム、チャート、実施例、及び調製例に記載の手順に従って調製する。
実施例番号 化合物
【化14】


N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)ピリジン−2−カルボキサミド、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)ピラジン−2−カルボキサミド(質量分析:481.2)、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(質量分析:511.2)、
【化15】


3−アミノ−N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−カルボキサミド、
【化16】


N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド、
【化17】


N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−6−ヒドロキシピリジン−2−カルボキサミド、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド(質量分析:469.2)、
【化18】


N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)ニコチンアミド、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド(質量分析:469.2)、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)イソニコチンアミド(質量分析:480.2)、
【化19】


5−クロロ−N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)チオフェン−2−カルボキサミド。
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(4S)−6−ネオペンチル−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−4−イル]アミノ}プロピル)ベンズアミド、
【化20】


N−[(1S,2R)−3−{[(4S)−6−tert−ブトキシ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−4−イル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(4S)−6−ネオペンチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル]アミノ}プロピル)ベンズアミド、
N−[(1S,2R)−3−{[(4S)−6−tert−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル1]ベンズアミド、
【化21】


N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(1S)−7−ネオペンチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}プロピル)ベンズアミド、
N−[(1S,2R)−3−{[(1S)−7−tert−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(4R)−6−ネオペンチル−2,2−ジオキシド−3,4−ジヒドロ−1H−イソチオクロメン−4−イル]アミノ}プロピル)ベンズアミド、
【化22】


N−[(1S,2R)−3−{[(4R)−6−tert−ブトキシ−2,2−ジオキシド−3,4−ジヒドロ−1H−イソチオクロメン−4−イル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[1−(3−ネオペンチルフェニル)シクロヘキシル]アミノ}プロピル)ベンズアミド、
N−[(1S,2R}−3−{[1−(3−tert−ブトキシフェニル)シクロヘキシル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[1−(3−ネオペンチルフェニル)シクロプロピル]アミノ}プロピル)ベンズアミド、
【化23】


N−[(1S,2R)−3−{[1−(3−tert−ブトキシフェニル)シクロプロピル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド、
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(4−ネオペンチル−1,1’−ビフェニル−2−イル)メチル]アミノ}プロピル)ベンズアミド、
N−[(1S,2R)−3−{[(4−tert−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2−イル)メチル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド、
【化24】


N−{(1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−[(2−ネオペンチル−9H−フルオレン−9−イル)アミノ]プロピル}ベンズアミド、
N−[(1S,2R)−3−[(2−tert−ブトキシ−9H−フルオレン−9−イル)アミノ]−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド。
【化25】


N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(4R)−6−エチル−2,2−ジオキシド−3,4−ジヒドロ−1H−イソチオクロメン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−3,5−ジメチルベンズアミド
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(4R)−6−エチル−2,2−ジオキシド−3,4−ジヒドロ−1H−イソチオクロメン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−4−(2−メトキシエチル)ベンズアミド
【0248】
生物学的実施例
実施例A
酵素阻害アッセイ
MBP−C125アッセイを利用して、本発明の化合物の阻害活性を分析する。このアッセイでは、β−セクレターゼによるモデルAPP基質MBP−C125SWの切断について、未処理対照と比べ、化合物による相対的阻害を決定する。アッセイパラメータの詳細な説明は、例えば、米国特許第5,942,400号に出ている。簡単に述べれば、基質は、マルトース結合タンパク質(MBP)とスウェーデン変異体APP−SWのカルボキシ末端側アミノ酸125個とから形成される融合タンパク質である。β−セクレターゼ酵素は、Sinha等の1999年Nature第40巻537〜540ページで記載されているように、ヒト脳組織から取り出す、或いは全長酵素(アミノ酸1〜501)として組換えによって作製され、例えば、WO00/47618に記載されているように、組換え型cDNAを発現する293細胞から調製できる。
【0249】
酵素の阻害は、例えば酵素切断産物のイムノアッセイによって分析する。ELISAの一例では、抗MBP捕捉抗体が使用され、予めコートし、ブロックした96ウェルの高結合プレートにこの抗体を付着させてから、希釈した酵素を、反応上清と共にインキュベートし、特定のレポーター抗体、例えばビオチン標識抗SW192レポーター抗体と共にインキュベートし、さらにストレプトアビジン/アルカリホスファターゼと共にインキュベートする。このアッセイでは、無傷のMBP−C125SW融合タンパク質が切断されると、切断されたアミノ末端断片が生じ、カルボキシ末端に新しいSW−192抗体陽性エピトープが露出する。ホスファターゼによる切断の蛍光基質シグナルによって検出を行う。ELISAは、基質のAPP−SW751変異部位のLeu596に続く切断だけを検出する。
【0250】
具体的なアッセイ手順
1試験化合物につき96プレートの1列において、1:1で化合物を連続希釈して、6段階濃度曲線(1濃度につき2ウェル)に希釈した。各々の試験化合物をDMSO中に調製して、10ミリモルの保存溶液を作製した。この保存溶液をDMSOで連続的に希釈して、最終化合物濃度を6段階希釈曲線の高位置にある200mMにする。52mMのNaOAc、7.9%のDMSO、pH4.5各190マイクロリットルを予め加えておいた対応するV底プレートの列C上の、各々の2ウェルに各希釈物10マイクロリットルを加える。NaOAcで希釈した化合物を遠心沈殿させて、沈殿物をペレット状にし、20マイクロリットル/ウェルを平底プレートに移し、これに30マクロリットルの氷冷酵素−基質混合物(30マイクロリットル当たり2.5マイクロリットルのMBP−C125SW基質、0.03マイクロリットルの酵素、及び24.5マイクロリットルの氷冷0.09%TX100)を加える。曲線最高点である200mMの化合物の最終反応混合物は、5%のDMSO、20mMのNaOAc、0.06%のTX100、pH4.5に含まれる。
【0251】
プレートを37℃に温めて、酵素反応を開始させた。90分後、37℃で、200マイクロリットル/ウェルの冷試料希釈物を加えて、反応を停止し、80マイクロリットル/ウェルの試料希釈物を含む、対応する抗MBP抗体でコートした捕捉用のELISAプレートに、20マイクロリットル/ウェルを移した。この反応物を終夜4℃でインキュベートし、翌日、抗192SW抗体、次いでストレプトアビジン−AP接合物及び蛍光物質と共に2時間インキュベートした後ELISAを展開する。信号を蛍光プレートリーダーで読み取る。
【0252】
化合物を加えていない対照ウェルでの酵素反応シグナルと比べ、検出されたシグナルが50%低下した化合物濃度(IC50)を算出することによって、化合物の相対的阻害効力を決定する。このアッセイでは、本発明の好ましい化合物は、50マイクロモル未満のIC50を示す。
【0253】
実施例B
合成APP基質を使用する細胞未使用の阻害アッセイ
β−セクレターゼによって切断でき、N末端ビオチンを有し、Cys残基にオレゴングリーンを共有結合させたために蛍光を発することのできる、合成APP基質を使用して、本発明の阻害化合物の存在下又は不在下でのβ−セクレターゼ活性を検定した。有用な基質には、以下のもの、すなわち、
ビオチン−SEVNL−DAEFRC[オレゴングリーン]KK
[配列番号1]
ビオチン−SEVKM−DAEFRC[オレゴングリーン]KK
[配列番号2]
ビオチン−GLNIKTEEISEISY−EVEFRC[オレゴングリーン]KK
[配列番号3]
ビオチン−ADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVNL−DAEFRC[オレゴングリーン]KK [配列番号4]
ビオチン−FVNQHLCoxGSHLVEALY−LVCoxGERGFFYTPKAC[オレゴングリーン]KK [配列番号5]
が含まれる。
【0254】
予めブロックした、融和性の低い、黒色プレート(384ウェル)中、37°で、酵素(0.1nM)及び試験化合物(0.001〜100mM)を30分間インキュベートする。150mMの基質を加えてウェル当たり30マイクロリットルの最終体積にすることによって、反応を開始する。最終のアッセイ条件は、0.001〜100mMの化合物阻害剤、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH4.5)、150nMの基質、0.1nMの可溶性β−セクレターゼ、0.001%のTween20、及び2%のDMSOである。アッセイ混合物を37℃で3時間インキュベートし、飽和濃度の免疫的に純粋な(immunopure)ストレプトアビジンを加えて反応を停止した。ストレプトアビジンと共に室温で15分間インキュベートした後、例えば、LJL Acqurest(Ex485nm/Em530nm)を使用して、蛍光偏光を測定する。β−セクレターゼ酵素の活性は、酵素によって基質が切断されたときに起こる蛍光偏光の変化によって検出する。化合物阻害剤の存在下又は不在下でインキュベートすることによって、合成APP基質のβ−セクレターゼ酵素による切断が特異的に阻害されることが実証される。このアッセイでは、本発明の好ましい化合物は、50μモル濃度未満のIC50を示す。本発明のより好ましい化合物は、10μモル濃度未満のIC50を示す。本発明のさらにより好ましい化合物は、5μモル濃度未満のIC50を示す。
【0255】
実施例C
β−セクレターゼ阻害:P26−P4’SWアッセイ
APPのβ−セクレターゼ切断部位を含む合成基質を使用して、例えば、公告されたPCT出願WO00/47618に記載されている方法を用いる、β−セクレターゼ活性のアッセイを行う。P26−P4’SW基質は、配列(ビオチン)CGGADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVNLDAEF[配列番号6]のペプチドである。P26−P1標準体は、配列(ビオチン)CGGADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVNL[配列番号7]を有する。
【0256】
簡潔に述べれば、このアッセイでは、ビオチン結合合成基質を約0〜約200mMの濃度でインキュベートする。阻害化合物を試験する場合、約1.0mMの濃度の基質が好ましい。5%の最終DMSO濃度の反応混合物に、DMSOで希釈した化合物を加える。対照も、最終DMSO濃度の5%を含有している。反応物中のβ−セクレターゼ酵素の濃度を変えて、ELISAアッセイの段階的な範囲、すなわち希釈後約125〜2000ピコモルを有する生成物濃度を得る。
【0257】
反応混合物は、20mMの酢酸ナトリウム、pH4.5、0.06%のトリトンX100も含んでおり、37℃で約1〜3時間インキュベートされる。次いで、試料をアッセイ緩衝液(例えば、145.4nMの塩化ナトリウム、9.51mMのリン酸ナトリウム、7.7mMのアジ化ナトリウム、0.05%のトリトンX405、6g/リットルのウシ血清アルブミン、pH7.4)で希釈して、反応を失活させ、次いで切断産物のイムノアッセイに向けてさらに希釈する。
【0258】
切断産物は、ELISAによって検定できる。捕捉抗体、例えば、SW192をコートしたアッセイプレート中で、希釈した試料及び標準物質を4℃で24時間インキュベートする。TTBS緩衝液(150mMの塩化ナトリウム、25mMのトリス、0.05%のTween20、pH7.5)で洗浄後、製造者の指示に従って、試料をストレプトアビジンAPと共にインキュベートする。室温で1時間インキュベートした後、サンプルをTTBSで洗浄し、蛍光物質溶液A(31.2g/リットルの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、30mg/リットル、pH9.5)と共にインキュベートする。ストレプトアビジンアルカリリン酸と反応させると、蛍光法での検出が可能になる。β−セクレターゼ活性の有効な阻害剤である化合物では、基質の切断が対照に比べて減少している。
【0259】
実施例D
合成オリゴペプチド基質を使用するアッセイ
知られているβ−セクレターゼ切断部位、及び任意選択で、蛍光性若しくは色素生産性部分など、検出可能なタグを含む合成オリゴペプチドを調製する。このようなペプチドの例、並びにその製造方法及び検出方法は、米国特許第5,942,400号に記載されており、これを参照により本明細書に組み込む。切断産物は、当技術分野でよく知られている方法に従って、検出するペプチドに適する高速液体クロマトグラフィー又は蛍光若しくは色素生産検出法を使用して検出できる。
【0260】
例として、あるそのようなペプチドは、配列SEVNL−DAEF[配列番号8]を有し、切断部位が残基5と6の間にある。別の好ましい基質は、配列ADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVNL−DAEF[配列番号9]を有し、切断部位が残基26と27の間にある。
【0261】
β−セクレターゼを媒介とする基質の切断をもたらすのに十分な条件下、β−セクレターゼの存在下でこのような合成APP基質をインキュベートする。化合物阻害剤が存在下での切断結果を対照の結果と比較すると、その化合物の阻害活性の大きさが明らかとなる。
【0262】
実施例E
β−セクレターゼ活性の阻害−細胞アッセイ
米国特許第5,604,102号に記載されているように、β−セクレターゼ活性の阻害を分析するアッセイの例は、天然発生の二重突然変異体Lys651Met52〜Asn651Leu652(APP751の番号)を含むAPP751を形質移入した、ヒト胎児腎細胞系HEKp293(ATCC受入れ番号CRL−1573)を利用しているが、これは一般にスウェーデン変異体と呼ばれ、Aβを過剰産生することが示されている(Citron等のNature第360巻672〜674ページ、1992年)。
【0263】
所望の濃度、一般に最高で10マイクログラム/mlの(DMSOで希釈した)阻害剤化合物の存在下/不在下で、細胞をインキュベートする。処理の終わりに、例えば、切断断片の分析によって、条件を整えた培地のβ−セクレターゼ活性を分析する。Aβは、特定の検出抗体を使用するイムノアッセイによって分析できる。化合物阻害剤の存在下及び不在下で酵素活性を測定すると、β−セクレターゼを媒介とするAPP基質の切断が特異的に阻害されることが実証される。
【0264】
実施例F
AD動物モデルでのβ−セクレターゼの阻害
β−セクレターゼ活性のスクリーニングには、様々な動物モデルが使用できる。本発明で使用できる動物モデルの例には、それだけに限らないが、マウス、モルモット、イヌなどが含まれる。使用する動物は、野生型モデル、トランスジェニックモデル、又はノックアウトモデルでよい。さらに、哺乳動物モデルも、本明細書に記載のAPP695−SWなど、APPの変異体を発現できる。ヒトでない哺乳動物のトランスジェニックモデルの例は、米国特許第5,604,102号、同第5,912,410号、及び同第5,811,633号に記載されている。
【0265】
推定上の阻害剤化合物の存在下、in vivoでAβ遊離の抑制を分析するには、Games等のNature第373巻523〜527ページ、1995年に記載されているとおりに準備したPDAPPマウスが有用である。米国特許第6,191,166号に記載されているように、生後4カ月のPDAPPマウスに、トウモロコシ油などの溶剤中に処方した化合物を投与する。マウスは化合物(1〜30mg/ml、好ましくは1〜10mg/ml)を投与される。時間経過後、例えば3〜10時間後、動物を屠殺し、分析用に脳を取り出す。
【0266】
トランスジェニック動物には、選択した投与方式に適する担体中に処方された、ある量の化合物阻害剤を投与する。対照動物は、未処置とする、担体で処置する、又は不活性化合物で処置する。投与は、急性向け、すなわち1回投与又は複数回投与を1日で行うことも、或いは、慢性向け、すなわち数日間毎日投与を繰り返すこともできる。0時間から始め、選択した動物から脳組織又は脳脊髄液を得、例えば、Aβ検出用の特定の抗体を使用するイムノアッセイを利用して、Aβを含む、APP切断ペプチドの存在を分析する。試験期間の終わりに動物を屠殺し、脳組織又は脳脊髄液のAβ及び/又はβアミロイド斑の存在を分析する。組織の壊死についても分析する。
【0267】
本発明の化合物阻害剤を投与した動物では、未処置対象に比べ、脳組織又は脳脊髄液中のAβが減少し、脳組織中のβアミロイド斑が縮小することが予想される。
【0268】
実施例G
ヒト患者でのAβ産生の阻害
アルツハイマー病(AD)に罹患した患者は、脳のAβ量の増加を示す。AD患者に、選択した投与方式に適する担体中に処方した、ある量の阻害剤を投与する。試験期間中、投与を毎日繰り返す。0日から始め、例えば1カ月に1度、認知及び記憶能力の試験を実施する。
【0269】
化合物阻害剤を投与した患者では、1種又は複数の以下の疾患パラメータ、すなわち、CSF又は血漿中に存在するAβ、脳又は海馬の体積、脳でのAβ沈着、脳のアミドイド斑、認知及び記憶機能についての成績の変化を分析した場合、対照の未処置の患者と比べ、疾患の進行が緩慢化又は安定化することが予想される。
【0270】
実施例H
ADのリスクのある患者でのAβ産生の予防
家族性の遺伝パターン、例えば、スウェーデン変異の存在を見分ける、且つ/又は診断パラメータをモニタすることによって、AD発生の素因又はリスクのある患者を識別する。AD発生の素因又はリスクがあると識別された患者に、選択した投与方式に適する担体中に処方した、ある量の化合物阻害剤を投与する。試験期間中、投与を毎日繰り返す。0日から始め、例えば1カ月に1度、認知及び記憶能力の試験を実施する。
【0271】
化合物阻害剤を投与した患者では、1種又は複数の以下の疾患パラメータ、すなわち、CSF又は血漿中に存在するAβ、脳又は海馬の体積、脳のアミロイド斑、認知及び記憶機能についての成績の変化を分析した場合、対照の未処置の患者と比べ、疾患の進行が緩慢化又は安定化することが予想される。
【0272】
本発明を様々な詳細且つ好ましい実施形態及び技術に即して述べてきた。しかし、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多くの変更及び修正を行ってよいことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)の化合物
【化1】


又は薬剤として許容されるその塩若しくはエステル
[式中、
Zは、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり、前記の各基は、1又は2個のR基によって任意選択で置換されており、
は、出現するごとに、ハロゲン、−OH、−OCF、−O−フェニル、−CN、−NR100101、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、(CH0〜3(C〜Cシクロアルキル)、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルからそれぞれ独立に選択され、前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルの各基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ハロゲン、−OH、−CN、又は−NR100101からなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
100及びR101は、出現するごとに、それぞれ独立に、H、C〜Cアルキル、又はフェニルであり、
Xは、−(C=O)−又は−(SO)−であり、
は、ハロゲン、−OH、=O、−SH、−CN、−CF、−OCF、−C3〜7シクロアルキル、−C〜Cアルコキシ、アミノ、モノ−ジアルキルアミノ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルからそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されているC〜C10アルキルであり、各アリール基は、1、2、又は3個のR50基によって任意選択で置換されており、
50は、ハロゲン、OH、SH、CN、−CO−(C〜Cアルキル)、−NR、−S(O)0〜2−(C〜Cアルキル)、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、及びC〜Cシクロアルキルから選択され、
前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、及びシクロアルキルの各基は、C〜Cアルキル、ハロゲン、OH、−NR、CN、C〜Cハロアルコキシ、NR、及びC〜Cアルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
及びRは、それぞれ独立に、H又はC〜Cアルキルであり、或いは
及びRとこれらの結合相手である窒素とが、5若しくは6員ヘテロシクロアルキル環を形成しており、
及びRは、H;−OH、−NH、及びハロゲンからなる群からそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;−C〜Cシクロアルキル;−(C〜Cアルキル)−O−(C〜Cアルキル);−C〜Cアルケニル;及び−C〜Cアルキニルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
各ヘテロアリールは、1又は2個のR50基によって任意選択で置換されており、
各ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立にR50又は=Oである1又は2個の基によって任意選択で置換されており、
及びRは、
−H、
−F、
−F、−OH、−C≡N、−CF、C〜Cアルコキシ、及び−NRからなる群からそれぞれ独立に選択される置換基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル、
−(CH0〜2−R17
−(CH0〜2−R18
−F、−OH、−C≡N、−CF、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される独立した置換基によってそれぞれが任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル又はC〜Cアルキニル、
−F、−OH、−C≡N、−CF、C〜Cアルコキシ、及び−NRからなる群から選択される独立した置換基によって任意選択で置換されている−(CH0〜2−C〜Cシクロアルキル
からそれぞれ独立に選択され、或いは
、R、及びこれらの結合相手である炭素が、3個から7個の炭素原子からなる炭素環を形成しており、1個の炭素原子は、−O−、−S−、−SO−、又は−NR−から選択される基による置換を受けており、
17は、出現するごとに、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、及びテトラリニルから選択されるアリール基であり、前記アリール基は、それぞれ独立に
−C〜Cアルキル;−C〜Cアルコキシ;CF;又は
F、OH、C〜Cアルコキシからなる群から選択される1個の置換基によってそれぞれが任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル若しくは−C〜Cアルキニル;又は
−ハロゲン;
−OH;
−C≡N;
−C〜Cシクロアルキル;
−CO−(C〜Cアルキル);
−SO−(C〜Cアルキル);
である1個又は2個の基によって任意選択で置換されており、
18は、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、インドリル、ピリダジニル、ピラジニル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサジアゾリル、又はチアジアゾリルから選択されるヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基のそれぞれは、それぞれ独立に
OH、C≡N、CF、C〜Cアルコキシ、及び−NRからなる群から選択される1個の置換基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキルである1個又は2個の基によって任意選択で置換されており、
15は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、ヒドロキシC〜Cアルキル、ハロC〜Cアルキルからなる群から選択され、これらはそれぞれ、非置換であるか、又はハロゲン、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、NH、及び−R26−R27からそれぞれ独立に選択される1、2、3、若しくは4個の基で置換されており、
26は、結合、−C(O)−、−SO−、−CO−、−C(O)NR−、及び−NRC(O)−からなる群から選択され、R27は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリールC〜Cアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロアリールからなる群から選択され、上記のそれぞれは、非置換であるか、又はそれぞれ独立にC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、−NR、−C(O)NRである1、2、3、4、若しくは5個の基によって任意選択で置換されており、
は、
シクロアルキルが、−R205、−CO−(C〜Cアルキル)、及びアリールからなる群からそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換され、アリールは、独立に選択される1又は2個のR200基で置換されている−(CH0〜3−(C〜C)シクロアルキル;
−(CR2452500〜4−アリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロアリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロシクロアルキル;
−(CR2452500〜4−アリール−ヘテロアリール;
−(CR2452500〜4−アリール−ヘテロシクロアルキル;
−(CR2452500〜4−アリール−アリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロアリール−アリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロアリール−ヘテロシクロアルキル;
−(CR2452500〜4−ヘテロアリール−ヘテロアリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロシクロアルキル−ヘテロアリール;
−(CR2452500〜4−ヘテロシクロアルキル−ヘテロシクロアルキル;
−(CR2452500〜4−ヘテロシクロアルキル−アリール;
1又は2個のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基に縮合した、5、6、7、8、9、又は10個の炭素からなる−単環式又は二環式の環であって、単環式又は二環式の環の1、2、又は3個の炭素が、
−NH、
−N(CO)0〜1215
−N(CO)0〜1220
−O、又は
−S(=O)0〜2
によって任意選択で置換を受けており、
単環式又は二環式の環が、それぞれ独立に−R205、−R245、−R250、又は=Oである1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されているもの;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキニル
からなる群から選択され、
−(CR2452500〜4基に直接又は間接的に結合している各アリール基は、1、2、3、又は4個のR200基によって任意選択で置換されており、
−(CR2452500〜4基に直接又は間接的に結合している各ヘテロアリール基は、1、2、3、又は4個のR200によって任意選択で置換されており、
−(CR2452500〜4基に直接又は間接的に結合している各ヘテロシクロアルキルは、1、2、3、又は4個のR210によって任意選択で置換されており、
200は、出現するごとに、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;
−OH;
−NO
−ハロゲン;
−C≡N;
−(CH0〜4−CO−NR220225
−(CH0〜4−CO−(C〜Cアルキル);
−(CH0〜4−CO−(C〜Cアルケニル);
−(CH0〜4−CO−(C〜Cアルキニル);
−(CH0〜4−CO−(C〜Cシクロアルキル);
−(CH0〜4−(CO)0〜1−アリール;
−(CH0〜4−(CO)0〜1−ヘテロアリール;
−(CH0〜4−(CO)0〜1−ヘテロシクロアルキル;
−(CH0〜4−CO215
−(CH0〜4−SO−NR220225
−(CH0〜4−S(O)0〜2−(C〜Cアルキル);
−(CH0〜4−S(O)0〜2−(C〜Cシクロアルキル);
−(CH0〜4−N(H又はR215)−CO215
−(CH0〜4−N(H又はR215)−SO−R220
−(CH0〜4−N(H又はR215)−CO−N(R215
−(CH0〜4−N(−H又はR215)−CO−R220
−(CH0〜4−NR220225
−(CH0〜4−O−CO−(C〜Cアルキル);
−(CH0〜4−O−(R215);
−(CH0〜4−S−(R215);
−(CH0〜4−O−(1、2、3、又は5個の−Fによって任意選択で置換されているC〜Cアルキル);
1又は2個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル;
1又は2個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキニル;及び
−(CH0〜4−C〜Cシクロアルキル
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
200内に含まれる各アリール基は、それぞれ独立に
−R205
−R210、又は
それぞれ独立にR205若しくはR210である1、2、若しくは3個の基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル
である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
200内に含まれる各ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立にR210である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
200内に含まれる各ヘテロアリール基は、それぞれ独立に
−R205
−R210、又は
それぞれ独立に
−R205若しくは
−R210
である1、2、又は3個の基で置換されている−C〜Cアルキル
である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
205は、出現するごとに、
−C〜Cアルキル、
−C〜Cアルケニル、
−C〜Cアルキニル、
−C〜Cハロアルコキシ、
−(CH0〜3(C〜Cシクロアルキル)、
−ハロゲン、
−(CH0〜6−OH、
−O−フェニル、
−SH、
−(CH0〜6−C≡N、
−(CH0〜6−C(=O)NR235240
−CF
−C〜Cアルコキシ、及び
−NR235240
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
210は、出現するごとに、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキニル、
−ハロゲン、
−C〜Cアルコキシ、
−C〜Cハロアルコキシ、
−NR220225
−OH、
−C≡N、
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cシクロアルキル、
−CO−(C〜Cアルキル)、
−SO−NR235240
−CO−NR235240
−SO−(C〜Cアルキル)、及び
=O
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
215は、出現するごとに、
−C〜Cアルキル、
−(CH0〜2−(アリール)、
−C〜Cアルケニル、
−C〜Cアルキニル、
−C〜Cシクロアルキル、
−(CH0〜2−(ヘテロアリール)、及び
−(CH0〜2−(ヘテロシクロアルキル)
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
215内に含まれるアリール基は、それぞれ独立に
−R205又は
−R210
である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
215内に含まれるヘテロシクロアルキル基は、1、2、又は3個のR210によって任意選択で置換されており、
215内に含まれる各ヘテロアリール基は、1、2、又は3個のR210によって任意選択で置換されており、
220及びR225は、出現するごとに、
−H、
−C〜Cアルキル、
−ヒドロキシC〜Cアルキル、
−アミノC〜Cアルキル、
−ハロC〜Cアルキル、
−(CH0〜2−(C〜Cシクロアルキル)、
−(C〜Cアルキル)−O−(C〜Cアルキル)、
−C〜Cアルケニル、
−C〜Cアルキニル、
−アリール、
−ヘテロアリール、及び
−ヘテロシクロアルキル
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
220及びR225内のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基は、1、2、又は3個のR270基によって任意選択で置換されており、
270は、出現するごとに、それぞれ独立に
−R205
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルケニル;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキニル;
−ハロゲン;
−C〜Cアルコキシ;
−C〜Cハロアルコキシ;
−NR235240
−OH;
−C≡N;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cシクロアルキル;
−CO−(C〜Cアルキル);
−SO−NR235240
−CO−NR235240
−SO−(C〜Cアルキル);及び
=O
であり、
235及びR240は、出現するごとに、それぞれ独立に
−H、又は
−C〜Cアルキル;
−フェニル
であり、
245及びR250は、出現するごとに、
−H、
−(CH0〜4CO〜Cアルキル、
−(CH0〜4C(=O)C〜Cアルキル、
−C〜Cアルキル、
−C〜Cヒドロキシアルキル、
−C〜Cアルコキシ、
−C〜Cハロアルコキシ、
−(CH0〜4−C〜Cシクロアルキル、
−C〜Cアルケニル、
−C〜Cアルキニル、
−(CH0〜4アリール、
−(CH0〜4ヘテロアリール、及び
−(CH0〜4ヘテロシクロアルキル
からなる群からそれぞれ独立に選択され、或いは
245及びR250は、これらの結合相手である炭素と一緒になって、1又は2個の炭素原子が、
−O−、
−S−、
−SO−、及び
−NR220
からなる群から選択されるヘテロ原子によって任意選択で置換を受けている、3、4、5、6、7、又は8個の炭素原子からなる単環又は二環を形成しており、
245及びR250内に含まれるアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立にハロゲン、C1〜6アルキル、CN、又はOHである1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
255及びR260は、出現するごとに、
−H;
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;
−(CH1〜2−S(C)0〜2−(C〜Cアルキル);
1、2、又は3個のR205基によって任意選択で置換されている−(CH0〜4−C〜Cシクロアルキル;
−(CH0〜4−アリール;
−(CH0〜4−ヘテロアリール;
−(CH0〜4−ヘテロシクロアルキル
からなる群からそれぞれ独立に選択され、
255及びR260内に含まれる各アリール基は、それぞれ独立に
−R205
−R210、又は
それぞれ独立に
−R205若しくは
−R210
である1、2、若しくは3個の基によって置換されている−C〜Cアルキル
である1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されており、
255及びR260内に含まれる各ヘテロアリール基は、1、2、3、又は4個のR200基によって任意選択で置換されており、
255及びR260内に含まれる各ヘテロシクロアルキル基は、1、2、3、又は4個のR210基によって任意選択で置換されている]。
【請求項2】
Zがアリール又はヘテロアリールであり、各環が、ハロゲン、−OH、−OCF、−O−フェニル、−CN、−NR100101、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、(CH0〜3(C〜Cシクロアルキル)、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルからそれぞれ独立に選択される1又は2個の基によって任意選択でそれぞれ独立に置換されており、前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルの各基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ハロゲン、−OH、−CN、又は−NR100101からなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが−(C=O)−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、−C〜Cアルキル−アリール、−C〜Cアルキル−ヘテロアリール、又は−C〜Cアルキルヘテロシクリルであり、各アリール基は、出現するごとに、1、2、又は3個のR50基によって任意選択で置換されており、
50は、ハロゲン、OH、SH、CN、−CO−(C〜Cアルキル)、−NR、−S(O)0〜2−(C〜Cアルキル)、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、又はC〜Cシクロアルキルからそれぞれ独立に選択され、
前記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、又はシクロアルキルの各基は、C〜Cアルキル、ハロゲン、OH、−NR、CN、C〜Cハロアルコキシ、NR、及びC〜Cアルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1又は2個の置換基によって任意選択で置換されており、
及びRは、出現するごとに、それぞれ独立にH又はC〜Cアルキルであり、或いは
及びRとこれらの結合相手である窒素とが、出現するごとに、5若しくは6員のヘテロシクロアルキル環を形成しており、
及びRは、H;−OH、−NH、及びハロゲンからなる群からそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されている−C〜Cアルキル;−C〜Cシクロアルキル;−(C〜Cアルキル)−O−(C〜Cアルキル);−C〜Cアルケニル;及び−C〜Cアルキニルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
各ヘテロアリールは、出現するごとに、1又は2個のR50基によって任意選択で置換されており、
各ヘテロシクロアルキル基は、出現するごとに、それぞれ独立にR50又は=Oである1又は2個の基によって任意選択で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
及びRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
15が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、シクロアルキルが、−R205及び−CO−(C〜Cアルキル)からなる群からそれぞれ独立に選択される1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されている−(CH0〜3−(C〜C)シクロアルキル;及び
1又は2個のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロシクロアルキル基に縮合した、5、6、7、8、9、又は10個の炭素からなる単環式又は二環式の環であって、単環式又は二環式の環の1、2、又は3個の炭素が、−NH、−N(CO)0〜1215、−N(CO)0〜1220、−O、又は−S=(O)0〜2による置換を任意選択で受けており、単環式又は二環式の環が、それぞれ独立に−R205、−R245、R250、又は=Oである1、2、又は3個の基によって任意選択で置換されていてよい環
からなる群からそれぞれ独立に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、次式
【化2】


[式中、x、x、及びxは、それぞれ独立に、−CHR245、SO、又はNHであり、フェニル環は、1又は2個の−R245基によって任意選択で置換されている]である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
、x、又はxの1つがSOである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
、x、又はxの1つがNHである、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
、x、及びxがそれぞれCHである、請求項8に記載の化合物。
【請求項12】
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)ピリジン−2−カルボキサミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)ピラジン−2−カルボキサミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−1−エチル−3−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド;
3−アミノ−N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−カルボキサミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキサミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−6−ヒドロキシピリジン−2−カルボキサミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)ニコチンアミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)イソニコチンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(1S)−7−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)チオフェン−2−カルボキサミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(4S)−6−ネオペンチル−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−4−イル]アミノ}プロピル)ベンズアミド;
N−[(1S,2R)−3−{[(4S)−6−tert−ブトキシ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−4−イル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(4S)−6−ネオペンチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル]アミノ}プロピル)ベンズアミド;
N−[(1S,2R)−3−{[(4S)−6−tert−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−4−イル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(1S)−7−ネオペンチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}プロピル)ベンズアミド;
N−[(1S,2R)−3−{[(1S)−7−tert−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(4R)−6−ネオペンチル−2,2−ジオキシド−3,4−ジヒドロ−1H−イソチオクロメン−4−イル]アミノ}プロピル)ベンズアミド;
N−[(1S,2R)−3−{[(4R)−6−tert−ブトキシ−2,2−ジオキシド−3,4−ジヒドロ−1H−イソチオクロメン−4−イル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[1−(3−ネオペンチルフェニル)シクロヘキシル]アミノ}プロピル)ベンズアミド;
N−[(1S,2R)−3−{[1−(3−tert−ブトキシフェニル)シクロヘキシル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[1−(3−ネオペンチルフェニル)シクロプロピル]アミノ}プロピル)ベンズアミド;
N−[(1S,2R)−3−{[1−(3−tert−ブトキシフェニル)シクロプロピル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(4−ネオペンチル−1,1’−ビフェニル−2−イル)メチル]アミノ}プロピル)ベンズアミド;
N−[(1S,2R)−3−{[(4−tert−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2−イル)メチル]アミノ}−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド;
N−{(1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシ−3−[(2−ネオペンチル−9H−フルオレン−9−イル)アミノ]プロピル}ベンズアミド;
N−[(1S,2R)−3−[(2−tert−ブトキシ−9H−フルオレン−9−イル)アミノ]−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−2−ヒドロキシプロピル]ベンズアミド;
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(4R)−6−エチル−2,2−ジオキシド−3,4−ジヒドロ−1H−イソチオクロメン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−3,5−ジメチルベンズアミド;及び
N−((1S,2R)−1−(3,5−ジフルオロベンジル)−3−{[(4R)−6−エチル−2,2−ジオキシド−3,4−ジヒドロ−1H−イソチオクロメン−4−イル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル)−4−(2−メトキシエチル)ベンズアミド
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Z、X、R、R、R、R15、及びRが請求項1で規定したとおりである、次式(I)の化合物
【化3】


又は薬剤として許容されるその塩もしくエステルの製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物又は塩の、医薬品製造のための使用。
【請求項15】
アルツハイマー病、軽度認知障害、ダウン症構群、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、脳アミロイド血管障害、他の変性痴呆、血管性変性混合型痴呆、パーキンソン病に随伴する痴呆、進行性核上麻痺に随伴する痴呆、皮質基底核変性症に随伴する痴呆、又はびまん性レビー小体型アルツハイマー病の治療又は予防に使用する医薬の製造のための、請求項1に記載の化合物又は塩の使用。
【請求項16】
生理的に許容される担体又は添加剤と組み合わせて請求項1に記載の化合物を含む薬剤組成物。

【公表番号】特表2006−524255(P2006−524255A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513163(P2006−513163)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/012197
【国際公開番号】WO2004/094384
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(503007313)イーラン ファーマスーティカルズ、インコーポレイテッド (22)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】