説明

ベンゼンスルホン酸エステル、それを用いたリチウム二次電池用電解液、及びそれを用いたリチウム二次電池

【課題】 本発明は、初期の電池容量やサイクル特性に優れたリチウム二次電池用電解液、及びそれを用いたリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】 下記一般式の式中、X〜Xは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子であり、少なくとも1つがフッ素原子で置換されていることを示し、Rは、炭素数3〜6の直鎖または分枝のアルキニル基、フェニル基あるいはビフェニル基を示すベンゼンスルホン酸エステルを0.01重量%以上10重量%以下含むことを特徴とする非水電解液、及び該非水電解液を含むことを特徴とするリチウム二次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、電子材料、高分子材料等の中間原料、又は電池材料として有用なベンゼンスルホン酸エステル、及びそれを用い、初期の電池容量やサイクル特性に優れたリチウム二次電池用電解液、及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池は携帯電話やノート型パソコンなど電子機器の駆動用電源などで広く使用されている。リチウム二次電池は、主にリチウムを吸蔵放出可能な材料を含む正極および負極、リチウム塩を含む非水電解液から構成され、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が使用されている。
また、負極としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵および放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金など)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵・放出することが可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の高結晶化した炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電時に負極表面で還元分解し、非水電解液溶媒として広く用いられているECであっても充放電を繰り返す間に一部還元分解が起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能の低下が起こることが知られている。
更に、リチウム金属やその合金、または、スズあるいはケイ素などを用いた金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池は、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水電解液溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。
一方、正極として、例えばLiCoO2、LiMn24、LiNiO2等を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電状態で高温になった場合に、正極材料と非水電解液との界面において、局部的に一部酸化分解することにより、該分解物が電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、電池性能の低下を生じる。
以上のように、正極や負極上で電解液が分解するとガスを発生することで電池が膨れたり、正負極の電極間にガスが溜まりリチウムイオンの移動を阻害し、電池性能を低下させる一因となっていた。そのような状況にも関わらず、リチウム二次電池が搭載されている電子機器はますます電力消費量が増大する流れにあり、それに伴ってリチウム二次電池の高容量化が進んでおり、電解液の分解はますます起こり易い方向へ進み、サイクル特性などの電池特性が悪化してしまう問題があった。
【0003】
特許文献1には、メタベンゼンジスルホン酸ジメチルを溶解した非水電解液を用いたリチウム二次電池について開示され、この電解液は前記添加剤を含まない非水電解液を用いたリチウム二次電池に比べて高い高温保存特性を有することが示されているが、前記添加剤では初期の電池容量やサイクル特性は十分満足できなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−203673公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、医薬、農薬、電子材料、高分子材料等の中間原料、又は電池材料として有用なベンゼン誘導体、及びそれを用い、初期の電池容量やサイクル特性に優れたリチウム二次電池用電解液、及びそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、少なくとも一つのフッ素原子とスルホン酸エステル構造を有したベンゼンスルホン酸エステルを非水電解液に添加することで、初期の電池容量やサイクル特性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(3)を提供するものである。
【0008】
(1) 下記一般式(I)で表されるベンゼンスルホン酸エステル。
【0009】
【化1】

(式中、X〜Xは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子であり、少なくとも1つがフッ素原子であることを示し、Rは、炭素数3〜6の直鎖または分枝のアルキニル基を示す。)
【0010】
(2) 非水溶媒に電解質が溶解されている電解液において、下記一般式(II)で表されるベンゼンスルホン酸エステルが電解液に対して0.01〜10重量%含有されていることを特徴とするリチウム二次電池用電解液。
【0011】
【化2】

(式中、X〜Xは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子であり、少なくとも1つがフッ素原子であることを示し、Rは、炭素数3〜6の直鎖または分枝のアルキニル基、フェニル基あるいはビフェニル基を示す。)
【0012】
(3)正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、該非水電解液中に前記一般式(II)で表されるベンゼンスルホン酸エステルを非水電解液の重量に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とするリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベンゼン誘導体を非水電解液として用いたリチウム二次電池は、初期の電池容量やサイクル特性に優れた電池性能を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明のベンゼンスルホン酸エステル、それを用いたリチウム二次電池用電解液、及びそれを用いたリチウム二次電池について詳述する。
【0015】
本願発明の非水電解液中に含有されるベンゼンスルホン酸エステルは、下記一般式(II)で表される。
【0016】
【化3】

【0017】
前記一般式(II)の具体的な態様を示す。
〜Xはそれぞれ独立してフッ素原子または水素原子を表す。
として、炭素数3〜6の直鎖または分枝のアルキニル基としては、2−プロピニル基(プロパルギル基と同義)、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1−メチル−2−ブチニル基、1,1−ジメチル−2−プロピニル等が挙げられる。また、フェニル基あるいはビフェニル基が挙げられる。
【0018】
一般式(II)で表されるベンゼン誘導体としては、具体的にX=フッ素原子、X=X=X=X=水素原子の場合は、2−フルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル、2−フルオロベンゼンスルホン酸2−ブチニル、2−フルオロベンゼンスルホン酸3−ブチニル、2−フルオロベンゼンスルホン酸4−ペンチニル、2−フルオロベンゼンスルホン酸5−ヘキシニル、2−フルオロベンゼンスルホン酸1−メチル−2−プロピニル、2−フルオロベンゼンスルホン酸1−メチル−2−ブチニル、2−フルオロベンゼンスルホン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、2−フルオロベンゼンスルホン酸フェニル、2−フルオロベンゼンスルホン酸ビフェニルなどが挙げられる。
また、3−フルオロベンゼンスルホン酸エステル、4−フルオロベンゼンスルホン酸エステル、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸エステル、2,6−ジフルオロベンゼンスルホン酸エステル、2,4,6−トリフルオロベンゼンスルホン酸エステル、及び2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゼンスルホン酸エステルの場合についても、上記と同様に対応するベンゼンスルホン酸エステル化合物が挙げられる。
【0019】
前記化合物の中でも、初期の電池容量やサイクル特性を向上させるためには、ベンゼン環上の置換基として、オルト位またはパラ位に少なくとも1個以上のフッ素原子を有することが好ましく、オルト−ジフッ素置換(2,6−ジフッ素置換)、またはオルト、パラ−ジフッ素置換(2,4−ジフッ素置換)であることがより好ましく、オルト、パラ−トリフッ素置換(2,4,6−トリフッ素置換)であることが特に好ましい。
具体的には、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル、2,6−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル、2,4,6−トリフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルや、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸フェニル、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸ビフェニルが初期の電池容量やサイクル特性を高くできるので好ましい。
【0020】
但し、本発明は、以上の例示により何ら制限されるものではない。
【0021】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、前記一般式(II)で表される化合物を、該非水電解液の重量に対して0.01〜10重量%添加されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の非水電解液において、非水電解液中に含有される前記一般式(II)の化合物の含有量は、10重量%を超えるとサイクル特性が低下する場合があり、また、0.01重量%に満たないと被膜の形成が十分でなく、初期の電池容量が得られない。したがって、該化合物の含有量は、非水電解液の重量に対して0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、0.2重量%がさらに好ましく、0.3重量%以上が最も好ましい。また、その上限は10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましく、3重量%以下が最も好ましい。
【0023】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類、アミド類、リン酸エステル類、スルホン類、ラクトン類、ニトリル類等が挙げられる。
環状カーボネート類としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等が挙げられ、特に、高誘電率を有するEC、PC、VC、FECから選ばれる少なくとも2種を含む場合は、サイクル特性が向上するので好ましい。これらの環状カーボネートの好適な組み合わせとしては、ECとPC、FECとPC、ECとVC、PCとVC、ECとPCとVC、FECとPCとVC等が挙げられる。
環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総容量に対して、10容量%〜40容量%の範囲で用いるのが好ましい。含有量が10容量%未満であると電解液の電気伝導度が低下し、サイクル特性が低下する傾向があり、40容量%を超えると電解液の粘度が上昇し、サイクル特性が低下する傾向があるので上記範囲であることが好ましい。
鎖状カーボネート類としては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等の対称鎖状カーボネートが挙げられ、特に非対称カーボネートを含むとサイクル特性が向上するので好ましい。これらの溶媒は1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用した場合は、サイクル特性が向上するので好ましい。
鎖状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総容量に対して、60容量%〜90容量%の範囲で用いるのが好ましい。含有量が60容量%未満であると電解液の粘度が上昇し、サイクル特性が低下する傾向がある。また、90容量%を超えると電解液の電気伝導度が低下し、サイクル特性が低下する傾向があるので上記範囲であることが好ましい。
また、鎖状エステル類としては、プロピオン酸メチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸ブチル、ピバリン酸ヘキシル、ピバリン酸オクチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸エチルメチル、シュウ酸ジエチル等が挙げられ、エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等が挙げられる。アミド類として、ジメチルホルムアミド等、リン酸エステル類としてはリン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル等、スルホン類としてはスルホラン等、ラクトン類としてはγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等、ニトリル類としてはアセトニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル等、S=O結合化合物として、1,3−プロパンスルトン(PS)、エチレンサルファイト、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート、1,3−ブタンジオールジメタンスルホネート、ジビニルスルホン等を適宜、併用することができる。
【0024】
上記の非水溶媒は通常、適切な物性を達成するために、混合して使用される。その組合せは、例えば、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の組合せ、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類とラクトン類との組合せ、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類とエーテル類の組合せ、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類と鎖状エステル類との組合せ等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の組合せがサイクル特性を向上するために好ましく、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の割合は、環状カーボネート類:鎖状カーボネート類(容量比)が10:90〜40:60が好ましく、15:85〜35:65がより好ましく、20:80〜30:70が特に好ましい。
【0026】
〔電解質塩〕
本発明に使用される電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4などのLi塩、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiCF3SO3、LiC(SO2CF33、LiPF4(CF32、LiPF3(C253、LiPF3(CF33、LiPF3(iso−C373、LiPF5(iso−C37)等の鎖状のアルキル基を含有するリチウム塩や、(CF22(SO22NLi、(CF23(SO22NLi等の環状のアルキレン鎖を含有するリチウム塩が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい電解質塩は、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252であり、最も好ましい電解質塩はLiPF6、LiBF4およびLiN(SO2CF32である。これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
これらの電解質塩の好適な組合せとしては、LiPFを含み、さらに、LiBF、LiN(SOCFおよびLiN(SOから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、LiPFとLiBFとの組合せ、LiPFとLiN(SOCFとの組合せ、LiPFとLiN(SOとの組合せ等が挙げられる。LiPF:LiBFまたはLiN(SOCFまたはLiN(SO (モル比)が70:30よりもLiPFの割合が低い場合、及び99:1よりもLiPFの割合が高い場合にはサイクル特性が低下する場合がある。したがって、LiPF:LiBF またはLiN(SOCFまたはLiN(SO (モル比)は、70:30〜99:1の範囲が好ましく、80:20〜98:2の範囲がより好ましい。上記組合せで使用することにより、サイクル特性が向上する。
これら全電解質塩が溶解されて使用される濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましく、0.7M以上が最も好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.5M以下が最も好ましい。
【0028】
〔その他の添加剤〕
本発明の非水電解液には、芳香族化合物を含有させることにより、過充電時の電池の安全性を確保することができる。かかる芳香族化合物としては、例えば、シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ−tert−ブチルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)。これらの化合物は、1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩および該非水電解液の重量に対して前記一般式(II)の化合物を0.01〜10重量%の溶解することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒、及び電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0030】
〔リチウム二次電池〕
本発明のリチウム二次電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、正極活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケルを含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiCo1−xNi(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn3/2、LiCo0.98Mg0.02等が挙げられる。また、LiCoOとLiMn、LiCoOとLiNiO、LiMnとLiNiOのように併用してもよい。
また、リチウム複合酸化物の一部は他元素で置換してもよく、コバルト、マンガン、ニッケルの一部をSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cu、Bi、Mo、La等の少なくとも1種以上の元素で置換したり、Oの一部をSやFで置換したり、あるいは、これらの他元素を含有する化合物を被覆することもできる。
【0031】
更に、正極活物質としてリチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。その具体例としては、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4、LiFe1-xxPO(MはCo、Ni、Mn、Cu、Zn、Nb、Mg、Al、Ti、W、Zr及びCdから選ばれる少なくとも1種であり、xは、0≦x≦0.5である。)等が挙げられる。これらの中では、LiFePO4又はLiCoPO4が好ましい。リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば、前記段落〔0030〕に示した正極活物質と混合して用いることもできる。
【0032】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チェンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類等が挙げられる。また、グラファイト類とカーボンブラック類を適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1〜10重量%が好ましく、特に2〜5重量%が好ましい。
【0033】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
【0034】
負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵・放出することが可能な炭素材料〔人造黒鉛や天然黒鉛等のグラファイト類〕、スズ、スズ化合物、ケイ素、ケイ素化合物等を1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵・放出能力において高結晶性の炭素材料を使用することが好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。また、高結晶性の炭素材料は低結晶材料によって被膜されていてもよい。高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において電解液と反応しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池では反応を抑制することができる。
スズ、スズ化合物、ケイ素、ケイ素化合物は電池を高容量化できるので好ましい。
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
【0035】
電池用セパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
【0036】
リチウム二次電池の構造には特に限定はなく、単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート式電池等を適用できる。
【0037】
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも長期間にわたり優れたサイクル特性を有しており、さらに、4.4Vにおいてもサイクル特性は良好である。放電終止電圧は、2.5V以上、さらに2.8V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜3Cの定電流放電で使用される。また、本発明におけるリチウム二次電池は、−40〜100℃、好ましくは0〜80℃で充放電することができる。
【0038】
本発明の前記一般式(I)で表されるベンゼンスルホン酸エステルは、下記の方法により合成することができるが、本製法に限定されるものではない。
フッ素置換ベンゼンスルホン酸ハライドと塩基存在下、溶媒中または無溶媒で、アルコールとエステル化反応させることによって得られる。
【0039】
フッ素置換ベンゼンスルホン酸ハライドとアルコールとの反応において、使用される溶媒としては、反応に不活性であれば特に限定はされないが、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグリム、トリグリム等のエーテル類、3−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ類、またはこれらの混合物が挙げられる。前記溶媒の使用量はフッ素置換ベンゼンスルホン酸ハライド1重量部に対して0〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部である。
【0040】
フッ素置換ベンゼンスルホン酸ハライドとアルコールとの反応において、塩基としては、無機塩基及び有機塩基のいずれも使用することができる。またこれらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。使用される無機塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、金属ナトリウム、および金属カリウム等が挙げられる。使用される有機塩基としては、直鎖または分枝した脂肪族3級アミン、単または多置換されたピロール、ピロリドン、イミダゾール、イミダゾリジノン、ピリジン、ピリミジン、キノリン、N,N−ジアルキルカルボキシアミドが挙げられ、特にトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミンなどのトリアルキルアミン、ピリジン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアミノピリジン、1,3−ジメチルイミダゾリジノンがより好ましい。前記塩基の使用量はフッ素置換ベンゼンスルホン酸ハライド1モルに対して0.8〜5モル用いるが、より好ましくは1〜3モルであり、特に1〜1.5モルが、副生物が抑さえられ好ましい。
【0041】
フッ素置換ベンゼンスルホン酸ハライドとアルコールとの反応において、反応温度の下限は−20℃以上が好ましく、反応性を低下させないために0℃以上がより好ましい。また、反応温度の上限は80℃以下が好ましく、これを超えると副反応や生成物の分解が進行しやすくなるため、60℃以下がより好ましい。また、反応時間は前記反応温度やスケールによるが、反応時間が短すぎると未反応物が残り、逆に反応時間が長すぎると生成物の分解や副反応の恐れが生じるため、好ましくは0.1〜12時間であり、より好ましくは0.2〜6時間である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明化合物の合成例を示す。
【0043】
〔合成例1〕4−フルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルの合成
水素化ナトリウム3.40g(0.085mol)とテトラヒドロフラン85gを混合し、プロパルギルアルコール4.54g(0.081mol)を10℃以下にて10分かけて滴下し、15分間同温度で攪拌した。水素の発生の終了を確認した後、4−フルオロベンゼンスルホニルクロリド15.00g(0.077mol)を10℃以下にて30分かけて滴下した。滴下終了後、25℃で15分攪拌した後、反応液に水を加えて有機層を分離後、飽和重曹水で2回、水で1回洗浄し、無水MgSOで有機層を乾燥後、減圧濃縮して4−フルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル13.1gを得た(収率88%)。
電池評価には、減圧蒸留(121℃/2Torr)により精製したものを使用した。
減圧蒸留にて精製し、4−フルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル9.7gを得た(収率65%)。
得られた4−フルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルについて、1H−NMR、13C−NMR及び質量分析の測定を行い、その構造を確認した。
結果を以下に示す。
(1)H−NMR(300 MHz, CDCl):δ=8.00-7.95(m, 2 H), 7.29-7.21(m,2 H), 4.75(d, J = 2.69 Hz, 2 H), 2.51(t, J = 2.68 Hz, 1 H)
(2)13C−NMR(75 MHz, CDCl):δ=166.00(d, JC-F = 256.81 Hz), 132.14(d, JC-F = 3.11 Hz), 131.04(d, JC-F = 9.95 Hz), 116.66(d, JC-F = 22.39 Hz), 77.75, 75.16, 57.74
(3)質量分析: MS(CI) m/z(%) = 215 [M++1]
【0044】
〔合成例2〕2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルの合成
水素化ナトリウム2.07g(0.052mol)とテトラヒドロフラン100gを混合し、プロパルギルアルコール2.90g(0.052mol)を10℃以下にて10分かけて滴下し、15分間同温度で攪拌した。水素の発生の終了を確認した後、2,4−ジフルオロベンゼンスルホニルクロリド10.00g(0.047mol)を10℃以下にて30分かけて滴下した。滴下終了後、25℃で7時間攪拌した後、反応液に水を加えて有機層を分離後、飽和重曹水で2回、水で1回洗浄し、無水MgSOで有機層を乾燥後、減圧濃縮して2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル6.8gを得た(収率50%)。
電池評価には、減圧蒸留(114℃/3Torr)により精製したものを使用した。
得られた2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルについて、1H−NMR、13C−NMR、IR及び質量分析の測定を行い、その構造を確認した。
結果を以下に示す。
(1)H−NMR(300 MHz, CDCl):δ=8.0-7.9(m, 1 H), 7.0-6.9(m,2H), 4.86(d, J = 2.44 Hz, 2 H), 2.50(t, J = 2.44 Hz, 1 H)
(2)13C−NMR(75 MHz, CDCl):δ=166.84(dd, JC-F = 258.79, 11.81 Hz), 160.47(dd, JC-F = 261.81, 11.81 Hz), 132.76(dd, JC-F = 9.94, 9.94 Hz), 121.14(dd, JC-F = 13.96, 3.73 Hz), 112.14(dd, JC-F = 22.18, 3.73 Hz), 106.09(dd, JC-F = 25.56, 24.45 Hz), 77.87, 74.88, 58.48
(3)IR(液膜法): 3110, 3059, 2133, 1604, 1482, 1436, 1378, 1280, 1187, 1151, 1124, 1077, 1002, 972, 928, 859, 822, 778, 674, 550 cm-1
(4)質量分析: MS(EI) m/z(%) = 232(2) [M+], 177(55), 161(70), 152(90), 129(56), 113(100), 63(59), 39(63)
【0045】
〔合成例3〕ペンタフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルの合成
ペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリド10.38g(0.107mol)をトルエン30mLに溶解し、プロパルギルアルコール2.29g(0.041mol)とトリエチルアミン4.14g(0.041mol)の混合液を0℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃で2時間攪拌して得られた反応液を濾過し、副生したトリエチルアミン塩酸塩をろ別した後、ろ液を減圧濃縮してペンタフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルを得た(収率38%)。
電池評価には、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液/酢酸エチル:ヘキサン=1:9)により精製したものを使用した。
得られたペンタフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルについて、1H−NMR、13C−NMR、IR及び質量分析の測定を行い、その構造を確認した。
結果を以下に示す。
(1)H−NMR(300 MHz, CDCl):δ=5.00(d, J = 2.44 Hz, 2H), 2.57(t, J = 2.44 Hz, 1 H)
(2)13C−NMR(75 MHz, CDCl):δ=147.2-146.8(m), 143.6-143.3(m), 140.0-139.6(m), 136.6-136.2(m), 78.7, 74.1, 59.9
(3)IR(液膜法): 3299, 1645, 1523, 1504, 1397, 1307, 1192, 1106, 996, 927,617 cm-1
(4)質量分析: MS(EI) m/z(%) = 286(3) [M+], 231(13), 215(16), 205(57), 167(65), 117(48), 39(100)
【0046】
以下、本発明の電解液を用いた実施例を示す。
〔実施例1〜3〕
〔電解液の調製〕
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(14:14:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPFを1M、LiN(SOCFを0.1Mになるように溶解し、さらに2、4−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルを非水電解液に対して0.01重量%(実施例1)、1重量%(実施例2)、10重量%(実施例3)加えて非水電解液を調製した。
【0047】
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiCo1/3Mn1/3Ni1/3(正極活物質)を92重量%、アセチレンブラック(導電剤)を3重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものをアルミニウム箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。また、人造黒鉛(負極活物質)を95重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものを銅箔(集電体)上の両面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シート及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。さらに、電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて、18650型円筒電池を作製した。なお正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
【0048】
〔初期効率とサイクル特性の評価〕
上記の方法で作製した電池を用いて25℃の恒温槽中、1mA/cmの定電流で4.35Vまで充電した後、4.35Vの定電圧で2.5時間充電し、次に0.33mA/cmの定電流で、放電電圧3.0Vまで放電し、初期の放電容量を測定した。次いで、60℃の恒温槽中、1mA/cmの定電流で4.35Vまで充電した後、4.35Vの定電圧で2.5時間充電し、次に1mA/cmの定電流で、放電電圧3.0Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式によりサイクル後の容量維持率を求めた。結果を表1に示す。
容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0049】
〔実施例4〜12〕
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(14:14:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPFを1M、LiN(SOCFを0.1Mの濃度になるように溶解し、実施例1における2、4−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルを添加する代わりに、2−フルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル(実施例4)、3−フルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル(実施例5)、4−フルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル(実施例6)、2、6―ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル(実施例7)、2、4、6−トリフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル(実施例8)、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギル(実施例9)、2、4−ジフルオロベンゼンスルホン酸フェニル(実施例10)、2、4―ジフルオロベンゼンスルホン酸ビフェニル(実施例11)を非水電解液に対して1重量%加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
〔実施例12〕
フルオロエチレンカーボネート(FEC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(14:14:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPFを1M、LiN(SOCFを0.1Mの濃度になるように溶解し、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸メチルを非水電解液に対して、1重量%加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
〔比較例1〕
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(14:14:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPFを1M、LiN(SOCFを0.1Mの濃度になるように溶解した非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例2〜3〕
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(14:14:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPFを1M、LiN(SOCFを0.1Mの濃度になるように溶解し、実施例1におけるペンタフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルを添加する代わりに、メタベンゼンジスルホン酸ジメチル(比較例2)、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸メチル(比較例3)を非水電解液に対して1重量%加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
〔実施例13〕
実施例1で用いた正極活物質に変えて、LiFePO4(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。LiFePO4を90重量%、アセチレンブラック(導電剤)を5重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作製した。そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シート及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。さらに、実施例1で調整した電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて、18650型円筒電池を作製した。なお正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
【0055】
〔初期効率とサイクル特性の評価〕
上記の方法で作製した電池を用いて25℃の恒温槽中、1mA/cmの定電流で3.6Vまで充電した後、3.6Vの定電圧で2.5時間充電し、次に0.33mA/cmの定電流で、放電電圧2.0Vまで放電し、初期の放電容量を測定した。次いで、60℃の恒温槽中、1mA/cmの定電流で3.6Vまで充電した後、3.6Vの定電圧で2.5時間充電し、次に1mA/cmの定電流で、放電電圧2.0Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式によりサイクル後の容量維持率を求めた。結果を表2に示す。
容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0056】
〔比較例4〕
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(14:14:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPFを1M、LiN(SOCFを0.1Mの濃度になるように溶解し、実施例13における2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルを添加する代わりに、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸メチルを非水電解液に対して1重量%加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
〔実施例14〕
実施例1で用いた負極活物質に変えて、Si(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。Siを80重量%、アセチレンブラック(導電剤)を15重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、帯状の負極シートを作製した。そして、正極シート、微孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シート及びセパレータの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻回体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の円筒型電池缶に収納した。さらに、実施例1で調整した電解液を注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて、18650型円筒電池を作製した。なお正極端子は正極シートとアルミニウムのリードタブを用いて、負極缶は負極シートとニッケルのリードタブを用いて予め電池内部で接続した。
【0059】
〔初期効率とサイクル特性の評価〕
上記の方法で作製した電池を用いて25℃の恒温槽中、1mA/cmの定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で2.5時間充電し、次に0.33mA/cmの定電流で、放電電圧3.0Vまで放電し、初期の放電容量を測定した。次いで、60℃の恒温槽中、1mA/cmの定電流で4.2Vまで充電した後、4.2Vの定電圧で2.5時間充電し、次に1mA/cmの定電流で、放電電圧3.0Vまで放電することを1サイクルとし、これを100サイクルに達するまで繰り返した。そして、以下の式によりサイクル後の容量維持率を求めた。結果を表3に示す。
容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0060】
〔比較例5〕
エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ビニレンカーボネート(VC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)(容量比)=(14:14:2:35:35)に調製した非水溶媒に、LiPFを1M、LiN(SOCFを0.1Mの濃度になるように溶解し、実施例14における2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸プロパルギルを添加する代わりに、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸メチルを非水電解液に対して1重量%加えて非水電解液を調製し、18650型円筒電池を作製し、実施例1と同様に電池特性を測定した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
以上より、少なくとも一つのフッ素原子とスルホン酸アルキニルエステル構造を有したベンゼン誘導体を非水電解液に添加した実施例1〜12のリチウム二次電池は何れも、添加剤を添加しない比較例1、メタベンゼンジスルホン酸ジメチルを添加した比較例2、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸メチルを添加した比較例3のリチウム二次電池に比べ、初期の効率やサイクル特性が向上している。
また、その効果は、実施例13と比較例4の比較、実施例14と比較例5の比較より、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩を用いた場合や、負極にSiを用いた場合にも同様にみられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるベンゼンスルホン酸エステル。
【化1】

(式中、X〜Xは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子であり、少なくとも1つがフッ素原子であることを示し、Rは、炭素数3〜6の直鎖または分枝のアルキニル基を示す。)
【請求項2】
非水溶媒に電解質が溶解されている電解液において、下記一般式(II)で表されるベンゼンスルホン酸エステルが電解液に対して0.01〜10重量%含有されていることを特徴とするリチウム二次電池用電解液。
【化2】

(式中、X〜Xは、それぞれ独立してフッ素原子または水素原子であり、少なくとも1つがフッ素原子であることを示し、Rは、炭素数3〜6の直鎖または分枝のアルキニル基、フェニル基あるいはビフェニル基を示す。)
【請求項3】
正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、該非水電解液中に前記一般式(II)で表されるスルホン酸エステルを非水電解液の重量に対して0.01〜10重量%含有することを特徴とするリチウム二次電池。

【公開番号】特開2013−12486(P2013−12486A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181603(P2012−181603)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2007−261001(P2007−261001)の分割
【原出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】