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ベンゼン分解菌の検出方法
説明

ベンゼン分解菌の検出方法

【課題】好気・嫌気両条件下でベンゼンを分解できるAzoarucs sp. DN11株を複合生物系から正確、迅速、かつ簡便に検出し、定量する手段を提供すること。
【解決手段】Azoarucssp. DN11株の保有するベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子の特異的な領域の配列をもとに設計したプライマーおよびプローブを用いてAzoarucssp. DN11株を検出および定量する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子を指標として、好気・嫌気両条件下でベンゼンを分解するAzoarucssp. DN11株を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼンを含む多くの石油成分は、地中に棲息する土着菌によって好気的環境下で分解されることが知られている。この性質を利用する石油汚染地盤の浄化技術として、土壌中に酸素や栄養塩の供給し、石油分解菌を活性化させるバイオスティミュレーション法が実用化されている。しかしながら、ベンゼンなどの石油成分に汚染された土壌や地下水は、通常、貧酸素状態の嫌気環境であるため、石油分解菌の増殖に適した好気環境を形成させるために空気(酸素)の供給が必要である。そのため、好気性微生物を利用した浄化には空気供給設備や多大なエネルギー投資を要することになり、コスト高になる。
【0003】
一方、Azoarucs sp. DN11株は、好気的にも嫌気的にもベンゼンを分解できるという特徴を有する通性嫌気性脱窒細菌であり、嫌気的にベンゼンを分解できる単離株としては世界で二例目である(非特許文献1)。従って、Azoarucssp. DN11株をベンゼン汚染サイトへ供給することにより、地盤中の酸化還元電位を変えることなく嫌気状態のまま浄化するバイオオーグメンテーションが可能である。バイオオーグメンテーションは、浄化しようとする土壌に汚染を分解する微生物が生息しない場合に、その他の場所で採取した微生物を人工的に培養し、汚染現場の一定区画に注入して土壌汚染を浄化する方法であり、それを実施する際には、浄化実施時に導入した特定の微生物をモニタリングして浄化効果や安全性を確認する必要がある。
【0004】
一般に、ベンゼン汚染サイトのバイオレメディエーションの進捗状況を確認する方法として、ベンゼン濃度のトレース、全菌数の計測、生菌数の計測(プレート法、MPN法)などが知られている。しかしながら、ベンゼン濃度のトレースは微生物による分解や拡散希釈、揮発といった物理的な減少と区別ができないこと、全菌数の計測は生菌と死菌の区別ができないこと、生菌数の計測は1週間以上の時間を費やしてしまうという問題があった。
【0005】
また、バイオレメディエーションの進捗状況を確認する他の方法として、微生物の16S rRNA遺伝子の塩基配列をPCR法にて検出する方法も知られている。Azoarucssp. DN11株についてもまた、16S rRNA遺伝子において特異的配列が見いだされているが、16S rRNA遺伝子は全ての原核生物が保有するものであり、特に近縁種間との配列差は僅かであることから、その特異性に疑問があった(非特許文献2)。また、16S rRNA遺伝子を対象として特定の微生物を検出するためには、PCRで増幅された断片を1つずつクローニングし、シーケンスを行うといった煩雑な操作を踏む必要があった。
【0006】
また、汚染物質浄化微生物を検出及びモニタリングするために、該浄化に関与する遺伝子を指標とする方法もあり、芳香族化合物浄化に関与する芳香環水酸化酵素ジオキシゲナーゼ遺伝子(特許文献1)、シアン化合物浄化に関与するロダナーゼ遺伝子(特許文献2)などで既にその報告がされている。これまで好気的なベンゼン分解に関わる遺伝子に関しては多数の報告例があり、Azoarucssp. DN11株も好気的にベンゼンを分解できることから、当該遺伝子を保有している可能性が考えられる。しかしながら、これまでAzoarucssp. DN11株の保有する好気的ベンゼン分解遺伝子を同定し、それを指標として当該株の検出に利用する試みはなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-234070
【特許文献2】特開2008-283890
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kasai Y et al., Appl. Environ. Microbiol. 2006, 72, p.3586-3592
【非特許文献2】Kasai Y et al., Environ. Sci. Technol. 2007, 41, p.6222-6227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、好気・嫌気両条件下でベンゼンを分解できるAzoarucs sp. DN11株を複合生物系から正確、迅速、かつ簡便に検出し、定量する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、好気的ベンゼン分解遺伝子のユニバーサルプライマー(Baldwin B. R. et al. Appl. Environ. Micobiol. 2003, 69, p.3350-3358)を用いてAzoarucssp. DN11株のゲノムDNAからPCR、クローニング、およびシーケンス解析を実施したところ、配列番号1に示されるベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子を保有していることが明らかとなった。その遺伝子情報についてBLASTIN及びBLASTP解析を行ったところ、DN11株に特異的な領域を見出した。さらに、その特異的な領域の配列をもとにプライマーおよびプローブを設計し、それらを用いてリアルタイムPCRを行ったところ、DN11株を正確に検出し、定量化できることを確認した。本発明はかかる知見により完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) Azoarucs sp. DN11株を検出する方法であって、環境試料より抽出したDNAを鋳型とし、(i) 配列番号1に示される塩基配列における219〜248位の領域の全部または一部の塩基配列からなるセンスプライマーと、(ii) 配列番号1に示される塩基配列における339〜368位の領域の全部または一部の塩基配列の相補配列からなるアンチセンスプライマーとから構成されるプライマーセットを用いてベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子をPCR増幅する工程と、増幅したDNA断片を検出する工程を含む、上記方法。
(2) 前記センスプライマーが、配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、前記アンチセンスプライマーが、配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、(1)に記載の方法。
【0012】
(3) 前記DNA断片の検出を、配列番号1に示される塩基配列における282〜311位の領域の全部または一部の塩基配列またはそれらの相補配列からなるオリゴヌクレオチドからなるブローブとのハイブリダイゼーションにより行う、(1)または(2)に記載の方法。
(4) 前記オリゴヌクレオドが、配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、(3)に記載の方法。
(5) 前記DNA断片の検出を、リアルタイムPCRによって定量的に行う、(1)から(4)のいずれかに記載の方法。
【0013】
(6) (5)に記載の方法を用いてベンゼン汚染サイト内のAzoarucssp. DN11株の菌数を定量し、Azoarucs sp. DN11株をモニタリングする方法。
(7) (5)に記載の方法を用いてベンゼン汚染サイト内のAzoarucssp. DN11株の菌数を定量し、Azoarucs sp. DN11株によるベンゼン汚染サイトの浄化もしくは修復の程度を評価する方法。
(8) Azoarucs sp. DN11株の検出用プライマーセットであって、(i) 配列番号1に示される塩基配列における219〜248位の領域の全部または一部の塩基配列からなるセンスプライマーと、(ii) 配列番号1に示される塩基配列における339〜368位の領域の全部または一部の塩基配列の相補的配列からなるアンチプライマーとから構成される、上記プライマーセット。
【0014】
(9) 前記センスプライマーが、配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、前記アンチセンスプライマーが、配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、(8)に記載のプライマーセット。
(10) Azoarucs sp. DN11株の検出用プローブであって、配列番号1に示される塩基配列における282〜311位の領域の全部または一部の塩基配列またはそれらの相補配列からなるオリゴヌクレオチドからなる上記ブローブ。
(11) 前記オリゴヌクレオドが、配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、(10)に記載のプローブ。
(12) (8)または(9)に記載のプライマーセット、および、(10)または(11)に記載のブローブを含む、Azoarucs sp. DN11株の検出用キット。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子を指標として好気・嫌気両条件下でベンゼンを分解できるAzoarucssp. DN11株を正確、迅速、かつ簡便に検出および定量する方法が提供される。Azoarucs sp. DN11株が有するベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子の塩基配列と高い相同性を示す他の微生物の同遺伝子は存在しないことから、本発明の方法を用いることにより、Azoarucssp. DN11株を未知の菌を多数含む天然菌叢中でも特異的に検出できる。また、本発明の方法を用いることにより、ベンゼン汚染サイトに対してAzoarucssp. DN11株によるバイオオーグメンテーションを実施するにあたり、Azoarucs sp. DN11株の生育や活性の確認、浄化処理状況のモニタリングなどが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】Azoarucs sp. DN11株のベンゼンモノオキシゲナーゼのアミノ酸配列および該アミノ酸配列をコードする塩基配列、ならびにそれぞれの配列上のプライマーおよびプローブの設計領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のベンゼン分解菌Azoarucssp. DN11株(以下、単に「DN11株」と記載する場合がある)の検出方法は、環境試料より抽出したDNAを鋳型とし、DN11株のゲノム中に存在するベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子上の特異的な領域の塩基配列をプライマーとして用いてベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子の部分塩基配列をPCR増幅する工程と、増幅されたDNA断片を検出する工程を含む。
【0018】
上記ベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子は、配列番号1に示される塩基配列を有するベンゼンの好気的分解に関わる遺伝子であり、16S rRNA遺伝子と比較して近縁種との塩基配列の差が大きいことを特徴とする(BLASTN検索:http://blast.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)。
【0019】
まず、増幅工程に用いるプライマーは、ベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子の特異的な領域に設計され、該領域の全部または一部の塩基配列からなる。ベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子の特異的な領域は、配列番号1に示される塩基配列における219〜248位と339〜368位の領域をいい、それぞれ配列番号5に示されるアミノ酸配列の73〜82位に存在するTrp-Ile-Val-Ala-Gln-Phe-Glu-Arg-Ala-Leu(配列番号6)、113〜122位に存在するTyr-Trp-Arg-Pro-Thr-Val-Trp-Trp-Asn-Pro (配列番号7)をコードする。
【0020】
プライマーとして上記領域の一部の塩基配列を用いる場合、その長さは特に制限はされないが、15〜25塩基、好ましくは20〜25塩基程度である。
【0021】
PCR増幅の際には、上記のプライマーを組み合わせてプライマーセットとして用いる。センスプライマーには上流側に位置するTrp-Ile-Val-Ala-Gln-Phe-Glu-Arg-Ala-Leu(配列番号6)で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を使用し、また、アンチセンスプライマーには下流側に位置するTyr-Trp-Arg-Pro-Thr-Val-Trp-Trp-Asn-Pro (配列番号7)で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を使用する。上記アミノ酸配列6及び7をコードする塩基配列はそのままプライマーとして用いてもよく、あるいはこれらを基にプライマーを設計してもよい。
【0022】
本発明の方法に用いるセンスプライマーの好ましい例として、5’-TGGATTGTGGCGCAGTTCGAACGCGCCCTG- 3’(配列番号2)からなるオリゴヌクレオチド、アンチセンスプライマーの好ましい例として、5’-CGGATTCCACCATACCGTCGGGCGCCAGTA-3’(配列番号3)からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。これらのオリゴヌクレオチドは、実質的に同一の機能を有する範囲で、その配列に改変(欠失、置換、挿入、又は付加)を加えてもよい。欠失等させるオリゴヌクレオチドの数は特に限定されないが、通常、5個以下、好ましくは3個以下、さらに好ましくは1個である。また、ヌクレオチドの付加は、3’側でも5’側でもよい。
【0023】
上記のセンスプライマーとアンチセンスプライマーを組み合わせてPCRを行うことにより、ベンゼンモノオキシゲナーゼ上の配列番号6のアミノ酸配列と配列番号7のアミノ酸配列に挟まれるアミノ酸配列をコードするベンゼンモノオキシゲナーゼの部分塩基配列を有するDNA断片を増幅することができる。
【0024】
本発明の方法で使用するセンスプライマーとアンチセンスプライマーは、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエステル法、ホスホジエステル法、エチルホスホアミダイト法などの方法により、通常用いられるDNA自動合成装置(例えば、Applied Biosystems社製Model 394など)を利用して合成することが可能である。
【0025】
また、検出の対象となる環境試料としては、ベンゼンの汚染可能性のあるものであればよく、特に制限されないが、ベンゼンにより汚染された土壌、河川の底土、地下水、貯水、海水、河川水、排水処理施設(下水・汚水・工場排水・農業排水などの処理施設)から採取した水や活性汚泥、前記排水処理施設周辺の土壌、浅海・干潟域の土壌、河川・湖沼域の土壌などが挙げられる。
【0026】
環境試料からのDNAの抽出は、微生物の培養物からの核酸抽出法として当業者に公知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、フェノール・クロロホルムによる抽出や、市販のDNA抽出試薬を用いる抽出により行うことができる。あるいは、市販のカラムキット(QIAGEN社QIAamp(登録商標) DNA Blood Midi Kit、QIAGEN社DNeasy(登録商標) Tissue Kitなど)を用いて抽出を行ってもよい。
【0027】
本発明の方法において、PCRは常法に従って行うことができる。例えば、鋳型DNA、上記センスプライマー及びアンチセンスプライマー、4種の塩基(dNTP)、および耐熱性DNAポリメラーゼの存在下、変性、アニーリング及び伸長を1サイクルとして、通常20〜40サイクルを実施することにより行う。変性は、二本鎖DNAを一本鎖に解離するための処理であり、通常94〜96℃、15秒〜5分間の処理を行う。アニーリングは、一本鎖の鋳型DNAに、それに相補的なプライマーをアニーリングする処理であり、使用するプライマーに応じて設定されるTm値以下の温度、例えば50〜65℃で、30秒〜2分間の処理を行う。伸長反応は、鋳型DNAに沿ってプライマーを伸長する反応であり、通常72℃で30秒〜10分間の処理を行う。Tm値は、使用するプライマーの塩基配列に基づいて当業者が適宜設定することができる。本発明の検出方法において、プライマーの特異的な結合を保証するために、アニーリングの温度はTm値-5℃以上の温度であることが好ましい。このようなPCRの一連の操作は、市販のPCRキットやPCR装置を利用して、その操作説明書に従って行うことができる。PCR装置は、例えば、GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)、GeneAmp PCR System 9600(Applied Biosystems社製)などが使用できる。また、PCR増幅産物の検出を容易にするために、プライマーに予め標識物質をつけてもよいし、あるいは、PCR時に修飾ヌクレオチド(ジゴキシゲニン(DIG)標識ヌクレオチド等)を基質として使用してもよい。
【0028】
次に、PCRにより増幅したDNA断片の検出を行う。当該DNA断片の検出結果(増幅の有無、増幅量)をもとに、試料中のAzoarucs sp. DN11株を検出および定量できる。本明細書において「Azoarucs sp. DN11株を検出する」とは、単に環境試料中にAzoarucs sp. DN11株が存在するか否かを判定するだけではなく、Azoarucs sp. DN11株が環境試料中にどのくらい存在するかを判定すること(すなわち定量的検出)をも含む。
【0029】
本発明において、PCRにより増幅したDNA断片(PCR産物)は当分野において一般的に実施されている方法により、検出することができる。PCR産物の検出方法としては、たとえば、アガロースゲルなどを用いる電気泳動法、標識プローブを用いるハイブリダイゼーション法、PCR−ELISA法などが挙げられるが、標識プローブを用いるハイブリダイゼーション法が好ましい。
【0030】
プローブとしては、上記のプライマーセットにより増幅されるDNA断片の塩基配列にハイブリダイズでき、かつ長さが少なくとも10塩基以上、好ましくは20塩基以上、さらに好ましくは25塩基以上のオリゴヌクレオチドを設計するとよい。具体的には、配列番号1に示される塩基配列における282〜311位の領域(配列番号5に示されるアミノ酸配列の94〜103位に存在するGlu-Gln-Phe-Leu-Ala-Asp-Leu-Asn-Glu-Thr(配列番号8)をコードする領域)の全部または一部の塩基配列またはそれらの相補配列からなるオリゴヌクレオチドがプローブとして使用できる。本発明の方法に用いるブローブの好ましい例としては、5’-GAACAGTTCCTGGCAGACCTCAATGAAACT-3’(配列番号4)からなるオリゴヌクレオチドが挙げられるが、実質的に同一の機能を有する範囲で、その配列に改変(欠失、置換、挿入、又は付加)を加えてもよい。欠失等させるオリゴヌクレオチドの数は特に限定されないが、通常、5個以下、好ましくは3個以下、さらに好ましくは1個である。また、ヌクレオチドの付加は、3'側でも5'側でもよい。また、プローブの標識物質としては、当該技術分野においてよく知られる蛍光物質、放射性同位体、化学発光物質、酵素、ビオチン等を用いることができる。
【0031】
標識プローブを用いるハイブリダイゼーション法としては、例えば、ドットハイブリダイゼーション、リアルタイムPCR、FISH法(蛍光in situハイブリダイゼーション法)などが挙げられ、直接的な検出又は定量的検出が可能である。
【0032】
標識プローブによる検出はまた、スライドガラス、シリコン、ナイロン膜などの基板上に検出対象を固定したマイクロアレイ法によっても実施できる。
【0033】
リアルタイムPCRは、増幅したDNA断片の検出を定量的に行うことが可能である点で好ましい。リアルタイムPCRは、リアルタイムPCR装置を用いてPCRを行い、PCRによる増幅を継時的に測定することで、増幅率に基づいて鋳型となるDNAの定量を行う手法である。
リアルタイムPCRでは、PCR増幅産物は蛍光により行うが、蛍光検出はインターカレーターを用いる方法と蛍光標識プローブ(TaqMan法)を用いる方法があり、いずれも常法に従って実施することができる。インターカレーター法は、二本鎖DNAに結合して蛍光を発する試薬(SYBR Green I)を添加してPCR反応系に添加してPCRを行い、SYBR Green Iが二本鎖DNAに結合したときに発する蛍光強度を測定することにより増幅産物量をサイクル毎にモニターすることが可能である。また、TaqMan法は、5'末端を蛍光物質(FAMなど)で、3'末端をクエンチャー物質(TAMRAなど)で修飾したオリゴヌクレオチドプローブをPCR反応系に添加してPCRを行う。
【0034】
本発明はまた、上記の検出方法を用いてベンゼン汚染サイト内のAzoarucssp. DN11株の菌数を定量することによって、Azoarucs sp. DN11株をモニタリングする方法、および、上記の検出方法を用いてベンゼン汚染サイト内のAzoarucssp. DN11株の菌数を定量することによって、Azoarucs sp. DN11株によるベンゼン汚染サイトの浄化もしくは修復の程度を評価する方法を提供する。例えば、上記の検出方法を用いてベンゼン汚染サイト中に存在する、またはベンゼン汚染サイトに導入したDN11株の菌数を経時的に定量することにより、ベンゼン汚染サイトにおけるDN11株の挙動や全微生物群集に占める割合(優占度)をモニタリングできる。このモニタリング結果(DN11株の増減等)に基づき、ベンゼン汚染サイトに導入するDN11株の量を調整すれば、より効率的なバイオレメディエーションが可能となる。また、DN11株のモニタリングと、汚染物質であるベンゼンのモニタリングを同時に行うことにより、DN11株導入によるベンゼン汚染サイトの浄化もしくは修復の進み具合を調査することができる。
【0035】
本発明の検出方法では、上記のようにPCR増幅したベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子産物の塩基配列を決定する工程をさらに含んでもよい。増幅されたDNA断片の塩基配列は、ジデオキシ法等の公知の塩基配列決定法により求めることができる。ベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子の塩基配列は同属種間あるいは株間で異なっており、その相違度は、同一種間で比較を行った場合、16S rRNA遺伝子の塩基配列に比べ顕著に高く、このため、16S rRNA遺伝子のように複数のプライマーを用いて長い塩基配列を決定する必要がない。
【0036】
本発明はまた、Azoarucs sp. DN11株の検出方法に利用されるプライマー(プライマーセット)及びプローブをも提供する。これらのプライマー(プライマーセット)及びプローブについては、前述の通りである。
【0037】
上記プライマーセットおよびプローブはキット化することもできる。本発明のキットは、上記のプライマーセットおよびプローブを含むものであればよく、必要に応じて、DNA抽出用試薬、PCR用緩衝液やDNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、反応の陽性コントロールとなるPCR増幅領域を含むDNA溶液、固相(マイクロプレートなど)、説明書などを含んでいてもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
任意の地下水にAzoarucs sp. DN11株を混合し、全菌数に対するAzoarucs sp. DN11株の混合比(後記表3参照)が異なる4種のサンプル:DN11株を混合しない地下水、DN11株を105 cells/ml混合した地下水、DN11株を106 cells/ml混合した地下水、DN11株の純粋培養液を調製した。これらのサンプル10mlからDNAをCurrent Protocols in Microbiologyの手法に従って抽出した。
【0039】
抽出したDNAに対し、図1に示すプライマー設計領域の塩基配列をもとに作成したセンスプライマーbmo-Fw(5’-TGGATTGTGGCGCAGTTCGAACGCGCCCTG-3’:配列番号2)とアンチセンスプライマーbmo-Rv(5’-CGGATTCCACCATACCGTCGGGCGCCAGTA-3’ :配列番号3)、さらに3’側を蛍光物質FAMと5’側をクエンチャー物質TAMRAにて修飾したプローブbmo-p(5’-GAACAGTTCCTGGCAGACCTCAATGAAACT-3’:配列番号4)を使用し、ベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子のコピー数を絶対定量するための定量的リアルタイムPCR増幅試験を行った。絶対定量の検量線作成のために、図1に示した塩基配列(配列番号1)をpGEM-T-Easy(Promega)プラスミドにクローニングしたものを使用し、104〜109コピーのものを同時に定量的リアルタイムPCRに供した。
【0040】
PCR反応液の組成は下記表1に示す通りである。PCR反応では、まず反応液を96℃で10分間初期変性反応を行った。続いて変性反応96℃・30秒、アニーリング反応65℃・30秒、伸長反応72℃・30秒を1サイクルとした一連の反応を40サイクル分実施した。リアルタイムPCR反応装置はABI製7500Fastを使用し、増幅シグナルの検出はTaqMan ProbeTM法で行った。
【0041】
【表1】

【0042】
比較として、従来の16S rRNA遺伝子の特異的領域(arz)と原核生物にユニバーサルな16S rRNA遺伝子の領域(ユニバーサル)を定量できる定量的リアルタイムPCRを実施した。前者のPCRには、arz-Fw(5’-CGTTCGGAGAGGTAACTCACT-3’:配列番号9)とarz-Rv(5’-CCGCATCTCTGCAGGATT-3’:配列番号10)のプライマーを使用し、後者のPCRには、Univ261-Fw(5’-AGCTAGTTGGTGGGGT-3’:配列番号11)とUniv342-Rv(5‘-CTGCTGCSYCCCGTAG-3’:配列番号12)のプライマーを使用した。絶対定量の検量線作成のために、DN11株の16S rRNA遺伝子全長をpGEM-T-Easy(Promega)プラスミドにクローニングしたものを使用し、104〜109コピーのものを同時に定量的リアルタイムPCRに供した。
【0043】
定量的リアルタイムPCRの反応組成は下記表2に示すとおりである。PCR反応では、まず反応液を96℃で10分間初期変性反応を行った。続いて変性反応96℃・30秒、アニーリング反応50℃・30秒、伸長反応72℃・30秒を1サイクルとした一連の反応を40サイクル分実施した。こちらの増幅シグナルの検出はSYBR Green Iを使用したインターカレーター法で行った。
【0044】
【表2】

【0045】
各サンプルからの遺伝子増幅コピー数を下記表3に示す。
【表3】

【0046】
DN11株菌数/全菌数比(表3、左から3番目の欄)とbmoコピー数/16S rRNA(ユニバーサル)コピー数の比(表3、一番右の欄)がほぼ一致したのに対し、従来の16S(arz)コピー数/16S rRNA(ユニバーサル)コピー数の比(表3、右から2番目の欄)はそれよりも高く、またDN11株を混合していない系からも高い検出値が確認された。これはarzプライマーの設計位置が16SrRNA遺伝子上であり、近縁種と配列に大差がない領域であることから、特異的に欠け、DN11株以外のAzarcus属細菌がカウントされたためと考えられる。以上より、本発明において設計したベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子上のプライマーおよびプローブを使用したPCRを実施することにより、Azarcus DN11株をより特異的に検出でき、混合系であっても確実なモニタリングができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
ベンゼン汚染土壌、排水又は地下水の浄化処理のモニタリングに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Azoarucs sp. DN11株を検出する方法であって、環境試料より抽出したDNAを鋳型とし、(i) 配列番号1に示される塩基配列における219〜248位の領域の全部または一部の塩基配列からなるセンスプライマーと、(ii) 配列番号1に示される塩基配列における339〜368位の領域の全部または一部の塩基配列の相補配列からなるアンチセンスプライマーとから構成されるプライマーセットを用いてベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子をPCR増幅する工程と、増幅したDNA断片を検出する工程を含む、上記方法。
【請求項2】
前記センスプライマーが、配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、前記アンチセンスプライマーが、配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA断片の検出を、配列番号1に示される塩基配列における282〜311位の領域の全部または一部の塩基配列またはそれらの相補配列からなるオリゴヌクレオチドからなるブローブとのハイブリダイゼーションにより行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオドが、配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DNA断片の検出を、リアルタイムPCRによって定量的に行う、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法を用いてベンゼン汚染サイト内のAzoarucs sp. DN11株の菌数を定量し、Azoarucssp. DN11株をモニタリングする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法を用いてベンゼン汚染サイト内のAzoarucs sp. DN11株の菌数を定量し、Azoarucssp. DN11株によるベンゼン汚染サイトの浄化もしくは修復の程度を評価する方法。
【請求項8】
Azoarucs sp. DN11株の検出用プライマーセットであって、(i) 配列番号1に示される塩基配列における219〜248位の領域の全部または一部の塩基配列からなるセンスプライマーと、(ii) 配列番号1に示される塩基配列における339〜368位の領域の全部または一部の塩基配列の相補的配列からなるアンチプライマーとから構成される、上記プライマーセット。
【請求項9】
前記センスプライマーが、配列番号2に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、前記アンチセンスプライマーが、配列番号3に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、請求項8に記載のプライマーセット。
【請求項10】
Azoarucs sp. DN11株の検出用プローブであって、配列番号1に示される塩基配列における282〜311位の領域の全部または一部の塩基配列またはそれらの相補配列からなるオリゴヌクレオチドからなる上記ブローブ。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオドが、配列番号4に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、請求項10に記載のプローブ。
【請求項12】
請求項8または9に記載のプライマーセット、および、請求項10または11に記載のブローブを含む、Azoarucs sp. DN11株の検出用キット。


【図1】
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【公開番号】特開2013−31386(P2013−31386A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168311(P2011−168311)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:社団法人日本水環境学会 刊行物名:第45回 日本水環境学会年会 講演集 掲載頁:672頁(P−L01) 刊行物発行年月日:平成23年3月18日
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【Fターム(参考)】