説明

ベンゾアゼピン化合物

【課題】バソプレッシン拮抗作用を有する新規なベンゾアゼピン化合物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物。


[式中、Rは水素原子を示す。Rは−O−R基又は−N(R)−O−R基を示す。またR及びRは一緒になって=N(R)→O基を示す。Rは、低級アルキル基を示す。Rは保護基を有してもよい2−カルボキシ−テトラヒドロキシピラン環を示す。Rは低級アルキル基を示す。Rは水素原子又はR基(Rは前記に同じ)を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾアゼピン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
バソプレッシン拮抗作用を有する化合物として、例えば特許文献1に記載のベンゾアゼピン化合物が知られている。
【特許文献1】特公平7−76214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、バソプレッシン拮抗作用を有する新規なベンゾアゼピン化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、ベンゾアゼピン化合物につき種々の研究を重ねるうち、下記一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物がバソプレッシン拮抗作用を有することを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0005】
本発明は、下記項1〜4に示すベンゾアゼピン化合物及び医薬に係る発明を提供する。
項1. 一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、Rは、水素原子を示す。
は、−O−R基又は−N(R)−O−R基を示す。
また、R及びRは、一緒になって=N(R)→O基を示す。
は、低級アルキル基を示す。
は、基
【0008】
【化2】

【0009】
を示す。
は、低級アルキル基を示す。
は、水素原子又はR基(Rは前記に同じ)を示す。
は、置換基として水酸基又は−OR基(Rは前記に同じ)を有することのある低級アルキル基を示す。
、R及びR10は、各々保護基を有していてもよい水酸基を示す。
11は、保護基を有していてもよいカルボキシル基を示す。]
で表されるベンゾアゼピン化合物又はその塩。
項2. 項1に記載のベンゾアゼピン化合物又はその塩を有効成分として含有する医薬。
項3. バソプレッシン拮抗剤として使用される項2に記載の医薬。
項4. 血管拡張剤、血圧降下剤、水利尿剤又は血小板凝集抑制剤として使用される項2に記載の医薬。
【0010】
ベンゾアゼピン化合物
上記一般式(1)において示される各基は、より具体的にはそれぞれ次の通りである。
【0011】
低級アルキル基としては、直鎖又は分枝鎖状のC1−6アルキル基であって、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等を挙げることができる。
【0012】
保護基を有していてもよい水酸基において、保護基としては、例えば低級アルカノイル基等を挙げることができる。低級アルカノイル基としては、直鎖又は分枝鎖状のC1−6アルカノイル基であって、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、tert−ブチルカルボニル、ヘキサノイル基等を挙げることができる。
【0013】
保護基を有していてもよいカルボキシル基において、保護基としては、例えば低級アルキル基等を挙げることができる。低級アルキル基は、前記で例示した低級アルキル基と同じである。
【0014】
本発明の一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物またはその塩は、後記実施例1乃至8記載の方法と同様にして製造することができる。
【0015】
本発明の一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物またはその塩は、立体異性体、光学異性体及び溶媒和物(水和物、エタノレート等)を包含する。
【0016】
本発明の一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物の塩は、薬学的に許容される塩であって、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩;アンモニウム塩;有機塩基塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N、N'−ジベンジルエチレンジアミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩等)等を挙げることができる。
【0017】
このような塩は、本発明の化合物に、医薬的に許容される対応の塩基性化合物を作用させることにより容易に形成することができる。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができる。
【0018】
また、本発明の一般式(1)のベンゾアゼピン化合物は、医薬的に許容される酸を作用させることにより容易に酸付加塩とすることができ、本発明はこの酸付加塩をも包含する。上記において、酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、蟻酸、トルエンスルホン酸等の有機酸、アミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)等を挙げることができる。
【0019】
医薬
本発明のベンゾアゼピン化合物及びその塩は、通常一般的な医薬製剤の形態で用いられる。医薬製剤は、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤または賦形剤を用いて慣用の方法により調製される。
【0020】
本発明の化合物を用いた医薬製剤の形態は、治療目的に応じて適宜選択できる。医薬製剤の形態としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、軟膏剤等が挙げられるが、特に、注射剤、点眼剤等の水性溶液製剤が好ましい。
【0021】
例えば、本発明の化合物を用いて注射剤を調製する場合には、液剤、乳剤及び懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であるのが好ましい。また、本発明の化合物を用いて、これら液剤、乳剤及び懸濁剤の形態に製剤するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用できる。そのような希釈剤としては、例えば水、乳酸水溶液、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。なお、この場合、等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖、マンニトールまたはグリセリン等の等張化剤を医薬製剤中に配合してもよく、また通常のpH調整剤、溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。
【0022】
本願発明の化合物を用いた注射剤を調製する場合、一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物又はその塩、緩衝剤、等張化剤、注射用水、及び必要に応じpH調整剤を用いて慣用の方法により調製することができる。
【0023】
緩衝剤としては、例えば、炭酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リンゴ酸塩および酒石酸塩等が挙げられ、これらの緩衝剤を構成する酸及び塩基を単独で入れることもできる。
【0024】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物及び塩酸等の酸が挙げられる。
【0025】
さらに、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を医薬製剤中に配合してもよい。
【0026】
本発明の一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物又はその塩の、医薬製剤中の含有量は、特に限定されず、広範囲に適宜選択されるが、通常医薬製剤中0.01〜70重量%とするのがよい。
【0027】
上記の医薬製剤の投与方法について特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、患者の症状の程度等に応じた方法で投与される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には経口投与される。また、注射剤の場合には、単独でまたはブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、あるいは必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。
【0028】
本発明の医薬製剤の投与量は用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常、有効成分である一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物又はその塩は、1日あたり体重1kgに対して0.001〜100mg、好ましくは0.001〜50mgを1回〜数回に分けて投与される。
【0029】
上記投与量は、種々の条件で変動するので、上記範囲より少ない投与量で充分な場合もあるし、また上記範囲を超えた投与量が必要な場合もある。
【0030】
本発明で引用した特許、特許出願及び文献は、参考として挿入される。
【発明の効果】
【0031】
本発明のベンゾアゼピン化合物及びその塩は、優れたバソプレッシン拮抗作用を有している。
【0032】
本発明のベンゾアゼピン化合物及びその塩は、例えば、バソプレッシン拮抗作用、血管拡張作用、血圧降下作用、肝糖放出抑制作用、メサンギウム細胞増殖抑制作用、水利尿作用、血小板凝集抑制作用等を有し、血管拡張剤、血圧降下剤、水利尿剤、血小板凝集抑制剤として有用であり、高血圧、浮腫(例えば、心性浮腫、肝性浮腫、腎性浮腫、脳性浮腫 等)、腹水、心不全(例えば重症心不全等)、腎機能障害、バソプレシン分泌異常症候群(SIADH)、肝硬変、低ナトリウム血症、低カリウム血症、糖尿病、循環不全、多発性嚢胞腎(PKD)等の予防及び治療に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0034】
実施例1
(2S,3S,4S,5R,6R)−3,4,5−トリス−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−6−{(S)−1−[4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−5−イルオキシ}−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸メチルエステルの合成
【0035】
【化3】

【0036】
N−[4−((R)−5−ヒドロキシ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル)フェニル]−2−メチルベンズアミド2.6g(6.5ミリモル)(特開平9−168396号公報の参考例28で得られる化合物)、臭化水銀(II)5.1g(14ミリモル)及びモレキュラーシーブス4A7.0gを1,2−ジクロロエタン26mlに懸濁し、55〜60℃でしばらく撹拌した。懸濁液を室温まで冷却し、これに(2S,3S,4S,5R,6R)−6−ブロモ−3,4,5−トリス−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸メチルエステル6.7g(13ミリモル)を加え、60℃で3.5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、不溶物を濾去した。濾物をジクロロメタン125mlで洗浄し、濾液及び洗液を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥物を濾過後、濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=70:30→30:70)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して無色無定形固体の(2S,3S,4S,5R,6R)−3,4,5−トリス−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−6−{(S)−1−[4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−5−イルオキシ}−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸メチルエステル2.4g(収率43%)を得た。
【0037】
H−NMR(DMSO−d,100℃)δppm:1.09(9H,s),1.10(9H,s),1.11(9H,s),1.54−2.00(3H,m),2.14−2.43(1H,m),2.36(3H,s),3.67(3H,s),3.92−4.44(1H,m),4.54(1H,d,J=10.0Hz),4.98−5.20(3H,m),5.26(1H,d,J=7.8Hz),5.44(1H,t,J=9.3Hz),6.74(1H,dd,J=1.0Hz,J=7.8Hz),7.06(1H,dt,J=1.5Hz,J=7.5Hz),7.11−7.30(5H,m),7.31−7.45(3H,m),7.49−7.60(2H,m),10.01(1H,bs)。
【0038】
実施例2
(2S,3S,4S,5R,6R)−3,4,5−トリス−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−6−{(S)−1−[4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−5−イルオキシ}−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸の合成
【0039】
【化4】

【0040】
(2S,3S,4S,5R,6R)−3,4,5−トリス−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−6−{(S)−1−[4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−5−イルオキシ}−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸メチルエステル2.0g(2.4ミリモル)をテトラヒドロフラン(THF)30ml及び水3mlの混合溶媒に溶解し、得られる溶液を0℃に冷却した。これに水酸化リチウム120mg(2.9ミリモル)を加え、同温度で10時間撹拌した。更に水酸化リチウム24mg(0.6ミリモル)を追加して同温度で終夜撹拌した。反応液に1N−塩酸7ml及び水100mlを加え、ジエチルエーテル(100ml×2回)で抽出した。有機層を飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥物を濾過後、濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル:エタノール=10:10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して無色無定形固体の(2S,3S,4S,5R,6R)−3,4,5−トリス−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−6−{(S)−1−[4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−5−イルオキシ}−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸1.7g(収率86%)を得た。
【0041】
H−NMR(DMSO−d,100℃)δppm:1.07(9H,s),1.09(9H,s),1.10(9H,s),1.51−2.06(3H,m),2.14−2.42(1H,m),2.36(3H,s),2.68−3.45(1H,m),3.91−4.58(1H,m),4.38(1H,d,J=10.0Hz),4.95−5.27(4H,m),5.39(1H,t,J=9.3Hz),6.74(1H,dd,J=0.75Hz,J=7.8Hz),7.06(1H,dt,J=1.5Hz,J=7.5Hz),7.11−7.30(5H,m),7.31−7.46(3H,m),7.47−7.64(2H,m),10.01(1H,bs),12.08−13.31(1H,br)。
【0042】
実施例3
(2S,3S,4S,5R,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−{(S)−1−[4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−5−イルオキシ}−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸の合成
【0043】
【化5】

【0044】
(2S,3S,4S,5R,6R)−3,4,5−トリス−(2,2−ジメチルプロピオニルオキシ)−6−{(S)−1−[4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−5−イルオキシ}−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸3.1g(3.8ミリモル)のエタノール溶液(30ml)を0℃に冷却し、5N−水酸化ナトリウム水溶液15mlを加えて室温で2日撹拌した。反応液に90%エタノール100mlを加えて希釈し、DOWEX(R)50WX8を少量ずつ加えて撹拌し、pH=4とした。得られた混合物を濾過後、濾物をエタノール及び水で洗浄し、濾液及び洗液を合わせて減圧下に濃縮した。残渣に水200mlを加え、均一溶液になるまでエタノールを加えた後、減圧下に濃縮した。残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(ODS−S−50A、メタノール:5%酢酸=55:45)で精製し、精製物を減圧下に濃縮した。残渣をエタノールに溶解し、水を加えて生成した不溶物を濾取し、乾燥して無色無定形固体の(2S,3S,4S,5R,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−{(S)−1−[4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−5−イルオキシ}−テトラヒドロピラン−2−カルボン酸1.3g(収率61%)を得た。
【0045】
H−NMR(DMSO−d:DO=4:1,100℃)δppm:1.31−2.17(4H,m),2.30(3H,s),2.67−3.57(4H,m),3.66(1H,d,J=9.5Hz),3.75−4.66(1H,m),3.38(1H,d,J=7.3Hz),4.95−5.19(1H,m),6.77(1H,d,J=7.5Hz),7.05(1H,dt,J=1.3Hz,J=7.5Hz),7.11−7.25(5H,m),7.26−7.37(2H,m),7.41−7.67(2H,m),7.48(1H,d,J=8.5Hz)。
【0046】
実施例4
2−メチル−N−(4−{5−[(Z)−メチルイミノ]−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル}フェニル)ベンズアミド−N−オキシドの合成
【0047】
【化6】

【0048】
2−メチル−N−[4−(5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル)フェニル]ベンズアミド(特開平6−80641号公報、実施例1の原料化合物)3.99g(10.0ミリモル)、N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩8.52g(0.1モル)及びピリジン8.13ml(0.1モル)をメタノール200mlに加え、冷却管に20gのモレキュラーシーブス3A 1/16を充填したユニットを取り付け、2.5時間加熱還流下撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、生成した不溶物を濾取した。濾液については後記実施例5に従って処理した。濾物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1→30:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル:メタノール=10:10:1→10:10:2)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣をメタノールから再結晶して白色粉末の2−メチル−N−(4−{5−[(Z)−メチルイミノ]−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル}フェニル)ベンズアミド−N−オキシド3.26g(収率76%)を得た。
融点;262−265℃。
【0049】
実施例5
2−メチル−N−(4−{5−[(E)−メチルイミノ]−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル}フェニル)ベンズアミド−N−オキシドの合成
【0050】
【化7】

【0051】
実施例4の濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1→30:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(山善(株)製のシリカウルトラパックSI−B(商品名),ジクロロメタン:酢酸エチル:メタノール=5:5:1→5:5:2)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣をイソプロピルアルコールから再結晶して無色針状晶の2−メチル−N−(4−{5−[(E)−メチルイミノ]−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル}フェニル)ベンズアミド−N−オキシド31mg(収率1.6%)を得た。
融点;184−188℃。
【0052】
実施例6
N−{4−[5−(N−ヒドロキシ−N−メチルアミノ)−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル]フェニル}−2−メチルベンズアミドの合成
【0053】
【化8】

【0054】
2−メチル−N−(4−{5−[(Z)−メチルイミノ]−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル}フェニル)ベンズアミド−N−オキシド109mg(0.26ミリモル)をエタノール5mlに懸濁し、得られる懸濁液に水素化硼素ナトリウム52mg(1.3ミリモル)を加え、1時間加熱還流下に撹拌した。得られる混合物に更に水素化硼素ナトリウム52mg(1.3ミリモル)を加え、2時間加熱還流下に撹拌した。室温まで冷却し、反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥物を濾過後、濾液を減圧下に濃縮した。残渣をハイフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1→40:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して白色粉末110mg(収率100%)を得た。エタノール−水(3:7)から再結晶して白色粉末のN−{4−[5−(N−ヒドロキシ−N−メチルアミノ)−2,3,4,5−テトラヒドロベンゾ[b]アゼピン−1−カルボニル]フェニル}−2−メチルベンズアミドを得た。
融点 189−192℃。
【0055】
実施例7
実施例1、2及び3と同様にして下記化合物を製造する。
【0056】
【化9】

【0057】
高分解FABMS;
3236(M+H)の計算値:606.2451,実測値:606.2445。
【0058】
実施例8
実施例4及び5と同様にして、下記化合物(8−1)及び(8−2)を製造する。
(8−1)
【0059】
【化10】

【0060】
高分解FABMS;
2626(M+H)の計算値:444.1923,実測値:444.1923
(8−2)
【0061】
【化11】

【0062】
高分解FABMS;
2626(M+H)の計算値:460.1872,実測値:460.1852。
【0063】
実施例9
結合阻害実験(ラットV2−受容体)
5mM MgCl、1mM EDTA及び0.1%BSAを含む100mMのトリス−HCl緩衝液(pH=8.0)にて適宜希釈したV2−受容体を豊富に含む腎臓細胞膜溶液に種々の濃度の試験化合物及び一定量の[H]AVPを加え、4℃で2時間反応させた。10倍量の氷冷した5mM MgCl、1mM EDTA及び0.1%BSAを含む100mMのトリス−HCl緩衝液(pH=8.0)を加えて反応を終了させた後、ワットマン(Whatman)GF/Bフィルターを介して吸引濾過し、5mM MgCl及び1mM EDTAを含む10mMのトリス−HCl緩衝液(pH=8.0)にて洗浄後、結合した[H]AVPとフリーの[H]AVPとを分離した。シンチレーションバイアルに移した後,アクアゾール−2(Aquasol−2)を加え、シンチレーションカウンターにて比活性を測定した。なお,非特異的結合を求めるため、非標識AVP(最終濃度1μM)存在下での結合も併せて検討した。各試験化合物存在下での[H]AVPの結合率を算出後、回帰分析を行い、[H]AVPの結合を50%阻害する各化合物の濃度(IC50)を求めた。
【0064】
結果を表1に示す。表1において、各測定値は平均値±標準誤差で表した。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは、水素原子を示す。
は、−O−R基又は−N(R)−O−R基を示す。
また、R及びRは、一緒になって=N(R)→O基を示す。
は、低級アルキル基を示す。
は、基
【化2】

を示す。
は、低級アルキル基を示す。
は、水素原子又はR基(Rは前記に同じ)を示す。
は、置換基として水酸基又は−OR基(Rは前記に同じ)を有することのある低級アルキル基を示す。
、R及びR10は、各々保護基を有していてもよい水酸基を示す。
11は、保護基を有していてもよいカルボキシル基を示す。]
で表されるベンゾアゼピン化合物又はその塩。
【請求項2】
請求項1に記載のベンゾアゼピン化合物又はその塩を有効成分として含有する医薬。
【請求項3】
バソプレッシン拮抗剤として使用される請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
血管拡張剤、血圧降下剤、水利尿剤又は血小板凝集抑制剤として使用される請求項2に記載の医薬。

【公開番号】特開2008−37800(P2008−37800A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214541(P2006−214541)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】