説明

ベンゾイルフェニル酢酸を使用して、血管形成関連障害を処置するための方法

【課題】血管形成に関連する障害に罹患しているか、または該障害の素因を有する患者の該血管形成に関連する障害を処置もしくは予防する方法を提供すること
【解決手段】新血管形成に関連する障害(眼科的な血管形成に関連する障害(例えば、糖尿病性網膜症および滲出性黄斑変性)を含む)を処置するための3−ベンゾイルフェニル酢酸および誘導体(ネパフェナクを含む)の使用が開示される。血管形成に関連する障害に罹患しているか、または該障害の素因を有する患者の該血管形成に関連する障害を処置もしくは予防する方法であって、該方法は、治療的有効量の以下の式の3−ベンゾイルフェニル酢酸もしくは誘導体を該患者に投与する工程を包含する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、血管形成疾患を処置または予防するための特定の3−ベンゾイルフェニル酢酸および誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
3−ベンゾイルフェニル酢酸およびその特定の誘導体は、抗炎症活性を有することが公知である。米国特許第4,254,146号、同第4,045,576号、同第4,126,635号および同第4,503,073号、ならびに英国特許出願番号2,071,086Aおよび同2,093,027Aは、抗炎症活性を有する種々の3−ベンゾイルフェニル酢酸、その塩およびエステル、ならびにその水和物を開示する。米国特許第4,568,695号は、抗炎症活性を有する2−アミノ−3−ベンゾイルフェニルエチルアルコールを開示する。米国特許第4,313,949号は、抗炎症活性を有する2−アミノ−3−ベンゾイル−フェニルアセトアミドを開示する。
【0003】
2−アミノ−3−ベンゾイルベンゼン酢酸(アムフェナク)および2−アミノ−3−(4−クロロ−ベンゾイル)ベンゼン酢酸の特定の誘導体はまた、経口投与の場合に、胃腸への副作用が最小であるか、またはまったくない非ステロイド系抗炎症プロドラッグを発見するための試みにおいて、Walshら、J.Med Chem.、33:2296〜2304(1990)によって、評価されてきた。
【0004】
米国特許第4,683,242号は、2−アミノ−3−ベンゾイルフェニル酢酸、その塩およびエステルならびにその水和物およびアルコラートの、炎症を制御し、疼痛を緩和するための経皮投与を教示する。
【0005】
米国特許第4,910,225号は、特定のベンゾイルフェニル酢酸の、眼炎症、鼻炎、または耳炎を制御するための局所投与を教示する。‘225特許においては、眼、鼻および耳への局所投与のための抗炎症剤として、酢酸のみが開示されており、エステルまたはアミドは、言及も教示もされていない。
【0006】
米国特許第5,475,034号は、眼の炎症性障害および眼の疼痛を処置するために有用な3−ベンゾイルフェニル酢酸の特定のアミド誘導体およびエステル誘導体(ネパフェナク(nepafenac)を含む)を含む局所的に投与可能な組成物を開示する。‘035特許の第15欄、第35行〜39行によると、「このような障害としては、ブドウ膜炎、強膜炎、上強膜炎、角膜炎、外科的に誘導された炎症および眼内炎が挙げられるが、これらに限定されない」。
【0007】
米国特許第6,066,671号は、3−ベンゾイルフェニル酢酸の特定のアミド誘導体およびエステル誘導体(ネパフェナクを含む)の、GLC1A緑内障を処置するための局所的使用を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,066,671号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(発明の要旨)
特定の3−ベンゾイルフェニル酢酸および誘導体(ナパフェナク(2−アミノ,3−ベンゾイル−フェニルアセトアミド)を含む)が、血管形成に関連する障害の処置に有用であることが、今回見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明の方法に有用な3−ベンゾイルフェニル酢酸および誘導体は、以下の式(I)のものである。
【0011】
【化4】

R=H、C1〜4分枝アルキル、C1〜4直鎖アルキル、CF、SR
Y=OR’、NR”R’;
R’=H、C1〜10分枝アルキル、C1〜10直鎖アルキル、非置換、置換(以下のXによって規定されるような置換)、非置換複素環、置換複素環(以下のXによって規定されるような置換)、−(CHZ(CHn’A;
n=2〜6;
n’=1〜6;
Z=なし、O、C=O、OC(=O)、C(=O)O、C(=O)NR、NRC(=O)、
【0012】
【化5】

CHOR、NR
=0〜2;
=H、C1〜6分枝アルキル、C1〜6直鎖アルキル、非置換アリール、置換アリール(以下のXによって規定されるような置換)、非置換複素環、置換複素環(以下のXによって規定されるような置換);
A=H、OH、必要に応じて、非置換アリール、置換アリール(以下のXによって規定されるような置換)、非置換複素環、置換複素環(以下のXによって規定されるような置換)、−(CHOR
R”=H、OH、OR’;
独立して、XおよびX’=H、F、Cl、Br、I、OR’、CN、OH、
【0013】
【化6】

CF、R、NO
=C1〜6分枝アルキル、C1〜6直鎖アルキル;
m=0〜3;
m’=0〜5;
W=O、H。
【0014】
本明細書中で使用される場合、酸(Y=OH)は、薬学的に受容可能な塩も含む。
【0015】
本発明の方法で使用するための好ましい化合物は、式Iの化合物であり、ここで:
R=H、C1〜2アルキル;
Y=NR’R”;
R’=H、C1〜6分枝アルキル、C1〜6直鎖アルキル、−(CHZ(CHn’A;
Z=なし、O、CHOR、NR
=H;
A=H、OH、非置換アリール、置換アリール(以下のXによって規定されるような置換);
XおよびX’(独立して)=H、F、Cl、Br、CN、CF、OR’、SR、R
R”=H;
=C1〜4直鎖アルキル、C1〜4分枝アルキル;
m=0〜2;
m’=0〜2;
W=H;
n=2〜4;
n’=0〜3
である。
【0016】
本発明の組成物または方法に使用するための最も好ましい化合物は、2−アミノ−3−(4−フルオロベンゾイル)−フェニルアセトアミド;2−アミノ−3−ベンゾイル−フェニルアセトアミド(ネパフェナク);および2−アミノ−3−(4−クロロベンゾイル)−フェニルアセトアミドである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従って、治療有効量の式(I)の化合物が、局所的にか、局部的にか、または全身に投与されて、血管形成に関連する障害を処置または予防する。このような障害として、腫瘍細胞(例えば、前立腺癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、腎癌、結腸癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、黒色腫、肝癌、肉腫およびリンパ腫)の増殖に関する障害が挙げられる。眼の血管形成に関連する障害として、滲出性黄斑変性;増殖性糖尿病性網膜症;虚血性網膜症(例えば、網膜の静脈または動脈の閉塞);未熟児網膜症;血管新生緑内障;虹彩ルベオーシス;角膜新生血管形成;毛様体炎;鎌状赤血球網膜症;および翼状片が挙げられるが、これらに限定されない。特定の障害(例えば、鎌状赤血球網膜症および網膜の静脈または動脈の閉塞)は、新脈管形成および神経変性の両方の要素によって特徴付けられ得る。本発明に従って、式(I)の化合物を投与して、新血管形成によって特徴付けられる障害を、少なくとも部分的に、処置または予防する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
式(I)の化合物は、種々の方法(眼への局所的な全ての送達形態(例えば、結膜下への注入または移植、硝子体内への注入または移植、テノン下(sub−Tenon)への注入または移植、外科的な灌注溶液の組み込みなどを含む)で投与され得る。さらに、式(I)の化合物は、全身に投与(例えば、経口投与または静脈投与)され得る。注入可能な組成物、移植物、および全身投与のために適切な薬学的ビヒクルまたは投薬形態が、公知である。しかし、式(I)の化合物および特にY=NR’R”であるような化合物は、好ましくは眼へ局所的に投与され、局所的に投与可能な種々の眼科的組成物(例えば、溶液、懸濁液、ゲルまたは軟膏)に処方され得る。
【0019】
水溶液または懸濁液中の式(I)の化合物を含む薬学的組成物(必要に応じて、多回用量での使用のための保存剤、および他の慣用的に使用される眼科的アジュバンドを含有する)は、眼へ局所的に投与され得る。最も好ましい送達形態は、水性点眼剤であるが、ゲルまたは軟膏もまた使用され得る。水性点眼剤、ゲルおよび軟膏は、慣用的な技術によって処方され得、1以上の賦形剤を含む。例えば、局所的に投与可能な組成物は、張度調整剤(例えば、マンニトールまたは塩化ナトリウム);保存剤(例えば、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム−1(polyquaternium−1)、またはクロルヘキシジン;緩衝剤(例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸およびクエン酸);ならびに濃化剤(thickening agent)(例えば、高分子量のカルボキシビニルポリマー(カルボマーとして公知のこれらを含む)、ヒドロキシエチルセルロース、またはポリビニルアルコール)を含み得る。
【0020】
眼科的な血管形成関連障害の処置または予防において使用される式(I)の化合物の用量は、予防または処置される障害の型、患者の年齢および体重、ならびに調製物の形態/投与経路に依存する。局所的な眼への投与のために意図される組成物は、代表的には、約0.001〜約4.0%(w/v)、好ましくは約0.01〜約0.5%(w/v)の量で式(I)の化合物を含み、1回に1〜2滴ずつ、1日数回投与される。同様に、他の形態の調製物についての代表的な用量は、注入について約1〜100mg/日/成人であり、そして経口調製物について約10〜1000mg/成人であり、それぞれ、1日に1回から数回投与される。
【実施例】
【0021】
さらなる治療剤が、式(I)の化合物を補充するために添加され得る。
【0022】
以下の実施例は、本発明の種々の局面を例示するために示されるが、いかなる観点ににおいても本発明の範囲を限定することを意図しない。パーセンテージは、重量/用量に基づいて表現されている。
【0023】
(実施例1)
以下の処方物は、本発明において有用な局所的組成物の代表である。
【0024】
(処方物1)
式(1)の化合物 0.01〜0.5%
ポリソルベート80 0.01%
塩化ベンザルコニウム 0.01%+10%過剰
EDTA二ナトリウム 0.1%
リン酸ナトリウム 0.03%
リン酸二ナトリウム 0.1%
塩化ナトリウム 290〜300mOsm/Kgまで
NaOHおよび/またはHClで pH4.2〜7.4
pHを調整する
水 100%まで
(処方物2)
式(1)の化合物 0.01〜0.5%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.5%
ポリソルベート80 0.01%
塩化ベンザルコニウム 0.01%+5%過剰
EDTA二ナトリウム 0.01%
リン酸二ナトリウム 0.2%
塩化ナトリウム 290〜300mOsm/Kgまで
NaOHおよび/またはHClで pH4.2〜7.4
pHを調整する
水 100%まで
(処方物3)
ネパフェナク 0.1+6%過剰
カーボポール(carbopol)974P 0.08%
チロキサポール 0.01%
グリセリン 2.4%
EDTA二ナトリウム 0.01%
塩化ベンザルコニウム 0.01%
NaOHおよび/またはHClでpHを調整する pH7.5±0.2
水 100%まで。
【0025】
本発明は、特定の好ましい実施形態を参照することによって記載されている;しかし、本発明の特殊な特徴または本質的な特徴から逸脱することなしに、他の特定の形態またはそのバリエーションにおいて、本発明を実施し得ることが理解されるべきである。従って、上記されるこれらの実施形態は、全ての観点において例示的かつ非限定的であるとみなされ、本発明の範囲は、上記の明細書によってではなく、添付の特許請求の範囲によって、示される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
例えば、本発明の好ましい実施形態によれば、以下が提供される。
(項1) 血管形成に関連する障害に罹患しているか、または該障害の素因を有する患者の該血管形成に関連する障害を処置もしくは予防する方法であって、該方法は、治療的有効量の以下の式の3−ベンゾイルフェニル酢酸もしくは誘導体を該患者に投与する工程を包含する、方法:
以下:
【化1】

ここで、
R=H、C1〜4分枝アルキル、C1〜4直鎖アルキル、CF、SR
Y=OR’、NR”R’;
R’=H、C1〜10分枝アルキル、C1〜10直鎖アルキル、非置換、置換(以下のXによって規定されるような置換)、非置換複素環、置換複素環(以下のXによって規定されるような置換)、−(CHZ(CHn’A;
n=2〜6;
n’=1〜6;
Z=なし、O、C=O、OC(=O)、C(=O)O、C(=O)NR、NRC(=O)、
【化2】

CHOR、NR
=0〜2;
=H、C1〜6分枝アルキル、C1〜6直鎖アルキル、非置換アリール、置換アリール(以下のXによって規定されるような置換)、非置換複素環、置換複素環(以下のXによって規定されるような置換);
A=H、OH、必要に応じて、非置換アリール、置換アリール(以下のXによって規定されるような置換)、非置換複素環、置換複素環(以下のXによって規定されるような置換)、−(CHOR
R”=H、OH、OR’;
独立して、XおよびX’=H、F、Cl、Br、I、OR’、CN、OH、
【化3】

CF、R、NO
=C1〜6分枝アルキル、C1〜6直鎖アルキル;
m=0〜3;
m’=0〜5;ならびに
W=O、H。
(項2) 上記項1に記載の方法であって、ここで:
R=H、C1〜2アルキル;
Y=NR’R”;
R’=H、C1〜6分枝アルキル、C1〜6直鎖アルキル、−(CHZ(CHn’A;
Z=なし、O、CHOR、NR
=H;
A=H、OH,非置換アリール、置換アリール(以下のXによって規定されるような置換);
独立して、XおよびX’=H、F、Cl、Br、CN、CF、OR’、SR、R
R”=H;
=C1〜4分枝アルキル、C1〜4直鎖アルキル;
m=0〜2;
m’=0〜2;
W=H;
n=2〜4;ならびに
n’=0〜3
である、方法。
(項3) 上記項2に記載の方法であって、前記3−ベンゾイルフェニル酢酸または誘導体が、2−アミノ−3−(4−フルオロベンゾイル)−フェニルアセトアミド;2−アミノ−3−ベンゾイル−フェニルアセトアミド;および2−アミノ−3−(4−クロロベンゾイル)−フェニルアセトアミドからなる群より選択される、方法。
(項4) 前記血管形成に関連する障害が、眼の血管形成に関連する障害である、上記項1に記載の方法。
(項5) 前記3−ベンゾイルフェニル酢酸または誘導体が、眼に局所的に投与される、上記項4に記載の方法。
(項6) 前記治療的有効量の3−ベンゾイルフェニル酢酸または誘導体が、約0.001〜約4.0%(w/v)である、上記項5に記載の方法。
(項7) 前記血管形成に関連する障害が、滲出性黄斑変性;増殖性糖尿病性網膜症;虚血性網膜症;未熟児網膜症;血管新生緑内障;虹彩ルベオーシス;角膜新生血管形成;毛様体炎;鎌状赤血球網膜症;および翼状片からなる群より選択される、上記項4に記載の方法。
(項8) 前記3−ベンゾイルフェニル酢酸または誘導体が、経口投与、静脈投与、結膜下への注入もしくは移植、テノン下への注入もしくは移植、硝子体への注入もしくは移植、または外科的な灌注溶液の組み込みによって、投与される、上記項1に記載の方法。
(項9) 前記血管形成に関連する障害が、前立腺癌;肺癌;乳癌;膀胱癌;腎癌;結腸癌;胃癌;膵臓癌;卵巣癌;黒色腫;肝癌;肉腫およびリンパ腫からなる群より選択される、上記項1に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明


【公開番号】特開2012−193214(P2012−193214A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−158552(P2012−158552)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2002−518950(P2002−518950)の分割
【原出願日】平成13年8月13日(2001.8.13)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】