説明

ベンゾジフラノン化合物およびそれを含んでなる近赤外吸収組成物

【課題】近赤外吸収組成物に含有される近赤外吸収色素として用いることのできる、新規なベンゾジフラノン化合物を提供する。
【解決手段】一般式1で表わされるベンゾジフラノン化合物。


(式中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、または−N(M)Xを表わし、R11、R12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表わし、Xは芳香族アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはスルホニル基を表わし、Mはカチオンを表わす。ただし、R〜R10で表わされる置換基のうち、少なくとも1つは−N(M)Xを表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なベンゾジフラノン化合物およびそれらを含む近赤外吸収組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベンゾジフラノン化合物は特許文献1〜5、非特許文献1〜4に記載されている。これらの化合物は、赤から青色の染顔料(色素)として知られている。
しかしながら、従来知られているベンゾジフラノン化合物は最も長い波長の光を吸収する化合物であっても近赤外領域(約700nmから1000nmの波長)に吸収極大を有するものはなかった。
【0003】
一方、近赤外吸収色素は熱線吸収フィルター、バンドパスフィルター、光学フィルター等のフィルター染料、不可視印刷用のインク、レーザー光反射防止用としての赤外線吸収塗料、フラッシュトナー、電子写真感光体、光重合又は光架橋用の増感剤、光ディスク等の光記録材料、光センサー等の用途に有用である。
【0004】
熱線吸収フィルターにおける近赤外吸収色素の使用形態としては、透明プラスチックに含有させる、透明プラスチックあるいは透明ガラスの表面に塗布する等の手段がある。これにより、透明な熱線遮断フィルターが得られる。用途としては、メガネ、自動車あるいは建材の熱線遮光剤等が挙げられる。
CCD等の撮像素子に近赤外線吸収フィルターを光学フィルターとして用いることも可能である。これら撮像素子に近赤外線吸収光学フィルターを用い、入射する近赤外線を遮断することにより、該撮像素子の分光感度を視感度に近づけることができる。この近赤外吸収フィルターに近赤外吸収色素を用いることができる。
近赤外吸収色素を不可視印刷用のインクとして用いた場合、機密文書の複写防止が可能となる。
【0005】
従来、近赤外線吸収色素としてシアニン色素、オキシム又はチオールの金属錯体、ナフトキノン化合物、フタロシアニン化合物及びナフタロシアニン化合物が知られているが、耐光堅牢性や溶解性が低いという欠点を有している。
以上のように、種々の用途で近赤外吸収色素が求められているが、従来知られている近赤外吸収色素は堅牢性、溶解性のなどの点で実用的な観点ではいまだ満足できる性能のものではなかった。
【特許文献1】特開平5−194868号公報
【特許文献2】特開平6−49071号公報
【特許文献3】特開平6−49379号公報
【特許文献4】特開平6−87807号公報
【特許文献5】特公昭61−54058号公報
【非特許文献1】Dyes and Pigments(ダイズ・アンド・ピグメンツ)、1巻、1980年、103ページ
【非特許文献2】JSDC(ジェイエスディーシー)、110巻、1994年、178ページ
【非特許文献3】Synthetic Communications(シンセティック・コミュニケーションズ)、26巻(1号)、1996年、95ページ
【非特許文献4】Dyes and Pigments(ダイズ・アンド・ピグメンツ)、48巻、2001年、107ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来知られているベンゾジフラノン化合物とは異なる色相を呈する新規なベンゾジフラノン化合物を提供することにある。また、近赤外域に吸収極大を有した新規の近赤外吸収組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、新規なベンゾジフラノン化合物を見出した。また、この新規なベンゾジフラノン化合物が近赤外域にも吸収極大を有することを見出し、近赤外吸収組成物を提供する方法を見出した。
すなわち、本発明は以下の手段を提供するものである。
<1>一般式1で表わされるベンゾジフラノン化合物。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、または−N(M)Xを表わし、R11、R12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表わし、Xは芳香族アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはスルホニル基を表わし、Mはカチオンを表わす。ただし、R〜R10で表わされる置換基のうち、少なくとも1つは−N(M)Xを表わす。)
<2>一般式2で表わされるベンゾジフラノン化合物。
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R101、R102、R104〜R110はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または−N(M)Xを表わし、R111、R112は水素原子を表わし、Xは芳香族アシル基、またはスルホニル基を表わし、Mはカチオンを表わす。)
<3>近赤外領域に極大吸収を有する近赤外吸収組成物であって、<1>または<2>項に記載のベンゾジフラノン化合物を含むことを特徴とする組成物。
<4>前記極大吸収を有する波長が700nm〜1000nmの領域内にあることを特徴とする、<3>項に記載の組成物。
<5>非酸性溶媒を含むことを特徴とする、<4>項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、新規なベンゾジフラノン化合物を提供できる。これにより従来知られているベンゾジフラノン化合物が赤〜青の色相を呈するのに対し、本発明の化合物は橙色〜赤を呈する化合物が得られる。また、本発明の化合物は近赤外域にも吸収極大を持たせることも可能であり、有用な近赤外吸収化合物の提供、さらにはこれを用いた近赤外吸収組成物を提供することができる。
また、本発明の化合物は、シアニン色素、オキシム又はチオールの金属錯体に比較し、熱、および光に対し堅牢であり、また、ナフトキノン化合物、フタロシアニン化合物及びナフタロシアニン化合物に比較し、有機溶剤に対する高い溶解性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の化合物および近赤外吸収組成物について詳細に示す。
まず、一般式1で表わされるベンゾジフラノン化合物について説明する。
式中、R〜R10で表わされるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、または沃素原子が好ましく、フッ素原子、または塩素原子が特に好ましい。
【0014】
〜R10で表わされるアルキル基は、置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。R〜R10で表されるアルキル基は総炭素数1から30のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルマルヘプチル基、ノルマルオクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、ノルマルオクタデシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、2−(4−ブトキシフェノキシ)エチル基、またはベンジル基が好ましい。特に炭素数1から6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルヘキシル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基が好ましい。
【0015】
〜R10で表わされるアリール基は、置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。R〜R10で表されるアリール基は、総炭素数6から30のアリール基が好ましく、たとえばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−アセトアミドフェニル基、4−オクタノイルアミノフェニル基、または4−(4−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル基が好ましい。
【0016】
〜R10で表わされるアルコキシ基は、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。R〜R10で表わされるアルコキシ基は総炭素数1から30のアルコキシ基が好ましく、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5,−トリメチルヘキシルオキシ基、ノルマルデシルオキシ基、ノルマルドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、プレニルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−フェノキシエトキシ基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エトキシ基、2−ベンゾイルオキシエトキシ基、メトキシカルボニルメチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、ブトキシカルボニルエチルオキシ基、または2−イソプロピルオキシエチルオキシ基が好ましい。総炭素数5から30のアルコキシ基が特に好ましく、具体的には、ノルマルペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ノルマルデシルオキシ基、ノルマルドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、プレニルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−フェノキシエトキシ基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エトキシ基、メトキシカルボニルメチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、または2−イソプロピルオキシエチルオキシ基が特に好ましい。
【0017】
〜R10で表わされるアリールオキシ基は、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。好ましくは、総炭素数60から20のアリールオキシ基であり、たとえば、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、または2−クロロフェノキシ基が好ましい。
【0018】
〜R10で表わされるアシル基は、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。R〜R10で表わされるアシル基は、総炭素数2から30のアシル基が好ましい。たとえば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、アダマンチルカルボニル基、3−メトキシカルボニルプロパノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−メトキシカルボニルベンゾイル基、4−メトキシカルボニルベンゾイル基、1−ナフトイル基、または2−ナフトイル基が好ましい。総炭素数2から10のアシル基が特に好ましく、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、2−メトキシカルボニルベンゾイル基、または4−メトキシカルボニルベンゾイル基が特に好ましい。
【0019】
〜R10で表わされるアシルオキシ基は、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。R〜R10で表わされるアシルオキシ基は、総炭素数2から20のアシルオキシ基が好ましい。たとえば、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、2−エチルヘキサノイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、4−メトキシベンゾイルオキシ基、2−メトキシベンゾイルオキシ基、4−クロロベンゾイルオキシ基、2−クロロベンゾイルオキシ基、4−メチルベンゾイルオキシ基、または2−メチルベンゾイルオキシ基が好ましい
【0020】
〜R10で表わされるアルコキシカルボニル基は、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。R〜R10で表わされるアルコキシカルボニル基は、総炭素数2から20のアルコキシカルボニル基が好ましい。たとえば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ノルマルプロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ノルマルブチルオキシカルボニル基、ターシャリーブチルオキシカルボニル基、ノルマルヘキシルオキシカルボニル基、ノルマルオクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル基、ノルマルドデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基、2−エトキシエトキシカルボニル基、2−フェノキシエトキシカルボニル基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エトキシカルボニル基、2−ベンゾイルオキシエトキシカルボニル基、メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル基、メトキシカルボニルエチルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニルエチルオキシカルボニル基、または2−イソプロピルオキシエチルオキシカルボニル基が好ましい。
【0021】
11、R12で表わされるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、または沃素原子が好ましく、フッ素原子、または塩素原子が特に好ましい。
【0022】
11、R12で表わされるアルキル基は、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。R11、R12で表されるアルキル基は総炭素数1から30のアルキル基が好ましく、たとえば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルマルヘプチル基、ノルマルオクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、ノルマルオクタデシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ベンゾイルオキシエチル基、2−(4−ブトキシフェノキシ)エチル基、ベンジル基が好ましい。特に炭素数1から6のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が特に好ましい。さらにはメチル基が最も好ましい。
【0023】
Xで表わされる芳香族アシル基は、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。Xで表わされる芳香族アシル基は、総炭素数6から30の芳香族アシル基が好ましい。たとえば、ベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、3,5−ジクロロベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−メトキシカルボニルベンゾイル基、4−メトキシカルボニルベンゾイル基、1−ナフトイル基、または2−ナフトイル基が好ましい。総炭素数6から10のアシル基が特に好ましく、具体的にはベンゾイル基、2−メトキシカルボニルベンゾイル基、4−メトキシカルボニルベンゾイル基、または3,5−ジクロロベンゾイル基が特に好ましい。
【0024】
Xで表わされるアルコキシカルボニル基は、置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。Xで表されるアルコキシカルボニル基は総炭素数2から30のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、または4−メトキシフェノキシカルボニル基が好ましい。総炭素数2から6のアルコキシカルボニル基が特に好ましく、具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル基、またはフェノキシカルボニル基が特に好ましい。
【0025】
Xで表わされるカルバモイル基は、置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。Xで表されるカルバモイル基は総炭素数1から30のカルバモイル基が好ましく、例えば、無置換のカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−ブチルカルバモイル基、N−ヘキシルカルバモイル基、N−ドデシルカルバモイル基、N,N−ジヘキシルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基、ピロリジノカルボニル基、またはヘキサメチレンイミノカルボニル基が好ましい。総炭素数1から10のカルバモイル基が特に好ましく、具体的には、無置換のカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−ブチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基、ピロリジノカルボニル基、またはヘキサメチレンイミノカルボニル基が特に好ましい。
【0026】
Xで表わされるスルホニル基は、アルキルスルホニル基でもアリールスルホニル基でもよく、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。
【0027】
Xで表されるアルキルスルホニル基は総炭素数1から30のアルキルスルホニル基が好ましく、たとえばメチルスルホニル基、トリクロロメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、パーフルオロオクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、2−ヒドロキシエチルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、3−メトキシベンジルスルホニル基、2−クロロベンジルスルホニル基、3−クロロベンジルスルホニル基、4−クロロベンジルスルホニル基、またはアリルスルホニル基が好ましい。中でも総炭素数6から30のアルキルスルホニル基が好ましく、具体的には、オクチルスルホニル基、パーフルオロオクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、2−ヒドロキシエチルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、3−メトキシベンジルスルホニル基、2−クロロベンジルスルホニル基、3−クロロベンジルスルホニル基、または4−クロロベンジルスルホニル基が特に好ましい。
【0028】
Xで表されるアリールスルホニル基は総炭素数6から30のアリールスルホニル基が好ましく、たとえば、フェニルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、4−クロロフェニルスルホニル基、3,5−ジクロロフェニルスルホニル基、3,4,5−トリクロロフェニルスルホニル基、2,4,5−トリクロロフェニルスルホニル基、2,4,6−トリクロロフェニルスルホニル基、2−ニトロフェニルスルホニル基、3−ニトロフェニルスルホニル基、4−ニトロフェニルスルホニル基、4−メトキシフェニルスルホニル基、4−オクチルオキシフェニルスルホニル基、5−クロロ−2−ドデシルオキシフェニルスルホニル基、5−クロロ−2−オクチルオキシフェニルスルホニル基、2−オクチルオキシ−5−ターシャリーオクチルフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、2,5−ジメチルフェニルスルホニル基、2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル基、2,4,6−トリ(イソプロピル)フェニルスルホニル基、4−ターシャリーブチルフェニルスルホニル基、4−フェニルフェニルスルホニル基、2−アセトアミドフェニルスルホニル基、4−アセトアミドフェニルスルホニル基、4−シアノフェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、または4−ニトロ−1−ナフチルスルホニル基が好ましい。
【0029】
+で表わされるカチオンはプロトンでもよく、また有機、無機いずれのカチオンでも良い。有機カチオンとしては、アンモニウム、またはホスホニウムが好ましい。アンモニウムの具体例として、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラメチルグアニジニウム、1−メチルピリジニウム、1−オクチルピリジニウム、1−ドデシルピリジニウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、プロトン化ジアザビシクロウンデセン、またはプロトン化ジアザビシクロノネンが好ましい。ホスホニウムの具体例としては、テトラブチルホスホニウム、トリブチルオクチルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリオクチルブチルホスホニウム、トリオクチルドデシルホスホニウム、トリオクチルヘキサデシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、トリフェニルオクチルホスホニウム、トリフェニルドデシルホスホニウム、またはトリフェニルヘキサデシルホスホニウムが好ましい。無機カチオンとしてはリチウムナトリウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムナトリウムカチオン、セシウムナトリウムカチオン、マグネシウムナトリウムカチオン、カルシウムナトリウムカチオン、ストロンチウムナトリウムカチオン、またはバリウムカチオンが好ましい。
【0030】
上記カチオンのうちn価(nは2以上の整数を表わす)のカチオンの場合、M+は1/nのカチオンを表わす。たとえばカチオンがマグネシウムカチオンの場合、M+は1/2Mg2+を表わす。
【0031】
〜R10で表わされる−N(M)Xはスルホニルアミノ基であることがさらに好ましい。
【0032】
一般式1で表わされる化合物のうち、一般式2で表わされる化合物が特に好ましい。次に、一般式2で表わされる化合物について説明する。
【0033】
一般式2中R101、R102、R104〜R110で表わされるハロゲン原子は、一般式1においてR、R、R〜R10で表わされるハロゲン原子と同義であり、好ましい例も同義である。
【0034】
一般式2中R101、R102、R104〜R110で表わされるアルコキシ基は、一般式1においてR、R、R〜R10で表わされるアルコキシ基と同義であり、好ましい例も同義である。
一般式2中R101、R102、R104〜R110で表わされるアリールオキシ基は、一般式1においてR、R、R〜R10で表わされるアリールオキシ基と同義であり、好ましい例も同義である。
一般式2中Xで表わされる芳香族アシル基は、一般式1においてXで表わされる芳香族アシル基と同義であり、好ましい例も同義である。
一般式2中Xで表わされるスルホニル基は、一般式1においてXで表わされるスルホニル基と同義であり、好ましい例も同義である。
一般式2中M+で表わされるカチオンは一般式1において表わされるカチオンと同義であり、好ましい例も同義である。
【0035】
本発明の化合物のうち、近赤外吸収化合物であるのは、好ましくは一般式1または2においてM+がプロトン以外のカチオンの場合の化合物である。
【0036】
以下に本発明の一般式1または2で表される化合物の具体例を以示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
本発明の一般式1または2の化合物は、一般式3または4の化合物と、対応する一般式5で表わされる化合物とを反応させることにより製造することができる。このとき、反応溶媒を用いても良い。用いることが可能な溶媒は、反応条件下において不活性な溶媒が好ましく、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。また、このとき、塩基を用いることが好ましい。好ましい塩基としては有機塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。中でもトリエチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが特に好ましい。トリエチルアミン、ピリジン等を溶媒兼塩基として用いても良い。反応温度は、0℃から150度が好ましく、20℃から100℃が特に好ましい。反応圧力は、常圧〜5気圧が好しく、常圧が特に好ましい。
【0046】
一般式3および4で表される化合物は、特開平5−194868号公報、特開平6−87807号公報、JSDC(ジェイエスディーシー)、110巻、1994年、178ページ、Synthetic Communications(シンセティック コミュニケ−ションズ)、26巻(1号)、1996年、95ページ、Dyes and Pigments(ダイズ アンド ピグメンツ)、48巻、2001年、107ページ等に記載の方法に従って合成することができる。
【0047】
【化11】

【0048】
(式中、R21〜R30はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、または−NHを表わし、R31、R32はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表す。ただし、R21〜R30で表わされる置換基のうち、少なくとも1つは−NHを表わす。)
【0049】
【化12】

【0050】
(式中、R121、R122、R124〜R130はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または−NHを表わし、R131、R132は水素原子を表わす。)
【0051】
【化13】

【0052】
(式中、Xは芳香族アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはスルホニル基を表わし、Dはハロゲン原子を表わす。)
【0053】
一般式3中R21〜R32で表わされるハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基は、それぞれ一般式1においてR〜R12で表わされるそれらと同義であり、好ましい例も同義である。
また、一般式4中R121、R122、R124〜R130で表わされるはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基は、それぞれ一般式1においてR、R、R〜R10で表わされるそれらと同義であり、好ましい例も同義である。
また、一般式5中Xで表わされる芳香族アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基芳香族は、一般式1においてXで表わされるそれらと同義であり、好ましい例も同義である。
【0054】
本発明の一般式1または2の化合物を含んでなる近赤外吸収組成物は、好ましくは溶液あるいは高分子化合物等のバインダに一般式1または2の化合物が含まれているものである。
【0055】
本発明の近赤外吸収組成物の好ましい態様は、一般式1または2の化合物を含んでなる溶液である。その溶液の溶媒としては、一般式1または2の化合物を溶解するものであればよい。好ましくは、非酸性の溶媒である。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル、マレイン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル系溶媒、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、イソプロピルビフェニル、ジイソプロピルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。塩基性の水あるいは水と混合する溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)との混合物であってもよい。溶液状の近赤外吸収組成物中に、一般式1または2で表される化合物は0.0001〜10質量%含有することが好ましく、0.0001〜1質量%含有することが特に好ましい。また、非酸性溶媒を含む場合には、近赤外吸収組成物中に、非酸性溶媒は1質量%以上含有することが好ましく、20質量%以上含有することがさらに好ましく、50質量%以上含有することが特に好ましい。
【0056】
本発明の近赤外吸収組成物が溶液状である場合、溶液は塩基性であることが好ましい。溶液を塩基性にするために、塩基を添加しても良い。塩基の具体例としては、有機塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。塩基の含有量は、近赤外吸収組成物中、0.1〜50質量%が好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
【0057】
本発明の近赤外吸収組成物の好ましい態様は、本発明の化合物を高分子化合物等のバインダに含んでなる近赤外吸収組成物である。バインダに含んでなる近赤外吸収組成物に用いることのできるバインダは、合成高分子化合物、天然高分子化合物およびその修飾高分子化合物のいずれであっても良い。バインダに含んでなる近赤外吸収組成物中に、一般式1または2で表される化合物は0.0001〜10質量%含有することが好ましく、0.0001〜5質量%含有することが特に好ましい。
【0058】
合成高分子化合物としては、エチレン性不飽和基を持つ化合物の重合体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリラクチド等)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。エチレン性不飽和基を持つ化合物の単量体として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、スチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、モルホリノメチルスチレン等が挙げられる。ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物も本発明に使用することができる。これらの合成高分子中に塩基を添加しても良い。塩基の具体例としては、有機塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0059】
天然高分子化合物およびその修飾高分子化合物としては、ゼラチン、フタル酸変性ゼラチン、コハク酸変性ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アガロース等が挙げられる。この合成高分子中に塩基を添加しても良い。塩基の具体例としては、有機塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0060】
本発明の化合物を高分子化合物等のバインダに含んでなる近赤外吸収組成物において、本発明の化合物は分子状に分散されていても、固体微粒子として分散されていても良い。また、本発明の近赤外吸収組成物は光硬化性組成物中、熱硬化性組成物中に本発明の化合物を含んでなるものであっても良い。光硬化性組成物、熱硬化性組成物としてエチレン性不飽和基を持つ化合物を含む組成物が好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能のアクリレートやメタクリレートが挙げられる。また更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものが挙げられる。
【0061】
本発明の近赤外吸収組成物は、近赤外領域に吸収極大を有するものである。近赤外吸収組成物が有する近赤外領域における吸収極大は、700nm〜1000nmの波長の領域内にあることが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下に以本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1 例示化合物I−1の合成
3−フェニル−7−(4−アミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7g、ピリジン20mLの混合物を80℃に加熱した。この混合物に、パラトルエンスルホニルクロリド 0.5gを添加した。そのまま1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却後、水40mLを添加した。析出した結晶を濾取し、水、メタノールで順次かけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル200mLに加熱溶解し、不溶物を濾別後、濾液を減圧濃縮した。残留物をメタノール10mLに分散し、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−{4−(4−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル}ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを0.8g得た。
H−NMR(DMSO−d)δ10.8(brS,1H)、7.8(m、4H)、7.7(d,2H)、7.5(m,3H)、7.4(d,2H)、7.3(m,3H)、7.2(S,1H)、2.3(s,3H)
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、497nmに吸収極大を有していた(5mLの濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し1000mLとした溶液を測定溶媒とした)。
【0064】
実施例2 例示化合物I−10の合成
3−フェニル−7−(4−アミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7g、ピリジン20mLの混合物を80℃に加熱した。この混合物に、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホニルクロリド 1.1gを添加した。そのまま1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却後、水60mLを添加した。析出した結晶を濾取し、水、メタノールで順次かけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル200mLに加熱溶解し、不溶物を濾別後、濾液を減圧濃縮した。残留物をメタノール40mLに分散し、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−{4−(2,4,5−トリクロロベンゼンスルホニルアミノ)フェニル}ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを1.2g得た。
H−NMR(DMSO−d)δ11.4(brS,1H)、8.3(s,1H)、8.1(s,1H)、7.9(m、4H)、7.6(m,3H)、7.3(m,2H)、7.3(s,1H)、7.2(s,1H)
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、490nmに吸収極大を有していた(5mLの濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し1000mLとした溶液を測定溶媒とした)。
【0065】
実施例3 例示化合物のI−11合成
3−フェニル−7−(4−アミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7g、ピリジン20mLの混合物を80℃に加熱した。この混合物に、3,4−ジフルオロベンゼンスルホニルクロリド 0.4mLを添加した。そのまま1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却後、水40mLを添加した。析出した結晶を濾取し、水、メタノールで順次かけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル200mLに加熱溶解し、不溶物を濾別後、濾液を減圧濃縮した。残留物を酢酸エチル5mLとメタノール40mLの混合物に分散し、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−{4−(3,4−ジフルオロベンゼンスルホニルアミノ)フェニル}ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを0.86g得た。
H−NMR(DMSO−d)δ11.0(brs,1H)、7.9(m,1H)、7.8(m,4H)、7.7(m、2H)、7.5(m,3H)、7.3(d,2H)、7.2(d,2H)
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、492nmに吸収極大を有していた(5mLの濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し1000mLとした溶液を測定溶媒とした)。
【0066】
実施例4 例示化合物I−13の合成
3−フェニル−7−(4−アミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7g、ピリジン20mLの混合物を80℃に加熱した。この混合物に、3−ニトロベンゼンスルホニルクロリド 0.7gを添加した。そのまま1時間加熱撹拌した後、室温まで冷却後、水40mLを添加した。析出した結晶を濾取し、水、メタノールで順次かけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル400mLに加熱溶解し、不溶物を濾別後、濾液を減圧濃縮した。残留物をメタノール20mLに加熱分散し、室温まで冷却後、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−{4−(3−ニトロベンゼンスルホニルアミノ)フェニル}ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを0.59g得た。
H−NMR(DMSO−d)δ11.1(brs,1H)、8.6(m,1H)、8.5(m,1H)、8.3(m、1H)、7.9(m,5H)、7.6(m,3H)、7.3(d,2H)、7.2(d,2H)
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、489nmに吸収極大を有していた(5mLの濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し1000mLとした溶液を測定溶媒とした)。
【0067】
実施例5 例示化合物I−16の合成
3−フェニル−7−(4−アミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7g、ピリジン20mLの混合物を80℃に加熱した。この混合物に、5−クロロ−2−ドデシルオキシベンゼンスルホニルクロリド 1.0gを添加した。そのまま4時間加熱撹拌した後、室温まで冷却後、水60mLを添加した。析出した結晶を濾取し、水でかけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル200mLに加熱溶解し、不溶物を濾別後、濾液を約20mLまで減圧濃縮した。残留物にメタノール20mLを加え、室温まで冷却後、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−{4−(5−クロロ−2−ドデシルオキシベンゼンスルホニルアミノ)フェニル}ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを1.1g得た。
H−NMR(DMSO−d)δ10.7(brs,1H)、7.9(m,5H)、7.7(m,1H)、7.6(m、3H)、7.3(m,5H)、4.1(d,2H)、1.6(m,2H)、1.2(m,18H)、0.8(brt,3H)
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、498nmに吸収極大を有していた(5mLの濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し1000mLとした溶液を測定溶媒とした)。
【0068】
実施例6 例示化合物I−18の合成
3−フェニル−7−(4−アミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7g、ピリジン20mLの混合物を80℃に加熱した。この混合物に、2−オクチルオキシカルボニルベンゼンスルホニルクロリド 1.0gを添加した。そのまま2時間加熱撹拌した後、室温まで冷却後、水40mLを添加した。析出した結晶を濾取し、水、メタノールで順次かけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル200mLに加熱溶解し、不溶物を濾別後、濾液を減圧濃縮した。残留物に酢酸エチル20mLおよびメタノール20mLを添加し、室温まで冷却後、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−{4−(2−オクチルオキシカルボニルベンゼンスルホニルアミノ)フェニル}ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを0.6g得た。
H−NMR(DMSO−d)δ10.9(brs,1H)、8.0(m,1H)、7.8(m,4H)、7.7(m、2H)、7.6(m,1H)、7.5(m,3H)、7.2(m,4H)、4.3(t,2H)、1.7(m,2H)、1.3(m,10H)、0.9(brt,3H)
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、493nmに吸収極大を有していた(5mLの濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し1000mLとした溶液を測定溶媒とした)。
【0069】
実施例7 例示化合物I−23の合成
3−フェニル−7−(4−アミノ−3−メチルフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7g、ピリジン14mLの混合物を80℃に加熱した。この混合物に、5−クロロ−2−ドデシルオキシベンゼンスルホニルクロリド 1.1gを添加した。そのまま3時間加熱撹拌した後、室温まで冷却後、水45mLを添加した。析出した結晶を濾取し、水でかけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル200mLに加熱溶解し、不溶物を濾別後、濾液を減圧濃縮した。残留物をメタノール10mLに加熱分散し、室温まで冷却後、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−{4−(5−クロロ−2−ドデシルオキシベンゼンスルホニルアミノ)−3−メチルフェニル}ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを0.64g得た。
H−NMR(DMSO−d)δ9.7(brs,1H)、7.9(m,2H)、7.7(m,4H)、7.6(m、3H)、7.3(m,2H)、7.2(m,2H)、4.0(t,2H)、2.2(s,3H)、1.4(m,2H)、1.1(m,18H)、0.8(brt,3H)
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、489nmに吸収極大を有していた(5mLの濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し1000mLとした溶液を測定溶媒とした)。
【0070】
実施例8 例示化合物I−39の合成
3−フェニル−7−(4−アミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7gをN,N−ジメチルアセトアミド20mLに溶解した。この混合物に、3,5−ジクロロベンゾイルクロリド 0.6gを添加した。そのまま室温で2時間撹拌した後、メタノール40mLを添加した。析出した結晶を濾取し、メタノールで順次かけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル30mLに加熱分散し、室温に冷却後、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−{4−(3,5−ジクロロベンゾイルアミノ)フェニル}ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを1.0g得た。
DMSO−dに難溶であったため、H−NMRの測定はできなかった。
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、499nmに吸収極大を有していた(5mLの濃塩酸をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し1000mLとした溶液を測定溶媒とした)。
【0071】
実施例9 例示化合物I−44の合成
3−フェニル−7−(4−アミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオン 0.7g、ピリジン20mLの混合物を80℃に加熱した後、室温まで冷却した。この混合物に、クロロギ酸イソブチル 0.4gを添加した。そのまま1時間室温で撹拌した後、水60mLを添加した。析出した結晶を濾取し、水、メタノールで順次かけ洗いした。得られた結晶を酢酸エチル400mLに加熱溶解し、不溶物を濾別後、濾液を減圧濃縮した。残留物を酢酸エチル10mLに加熱分散し、室温まで冷却後、濾取し、乾燥し、3−フェニル−7−(4−イソブチルオキシカルボニルアミノフェニル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジフラン−2,6−ジオンを0.67g得た。
H−NMR(DMSO−d)δ10.1(s,1H)、7.8−7.9(m,4H)、7.7(m,2H)、7.5−7.6(m、3H)、7.3(s,1H)、7.2(s,1H)、3.9(d,2H)、1.9(m,1H)、0.9(d,6H)
得られた化合物の吸収スペクトルを測定した結果、515nmに吸収極大を有していた(N,N−ジメチルアセトアミドを測定溶媒とした)。
【0072】
実施例10
0.64mgの実施例1の化合物(例示化合物I−1)を0.3wt%のジアザビシクロウンデセンを含むN,N−ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、近赤外吸収組成物を得た(例示化合物I−4を含む近赤外吸収組成物)。近赤外領域における吸収極大は740nmであった。
【0073】
実施例11
0.66mgの実施例3の化合物(例示化合物I−11)を0.3wt%のジアザビシクロウンデセンを含むN,N−ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、近赤外吸収組成物を得た。近赤外領域における吸収極大は700nmであった。
【0074】
実施例12
1.43mgの実施例5の化合物(例示化合物I−16)を0.3wt%のジアザビシクロウンデセンを含むN,N−ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、近赤外吸収組成物を得た。近赤外領域における吸収極大は716nmであった。
【0075】
実施例13
1.30mgの実施例6の化合物(例示化合物I−18)を0.3wt%のジアザビシクロウンデセンを含むN,N−ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、近赤外吸収組成物を得た。近赤外領域における吸収極大は716nmであった。
【0076】
実施例14
1.31mgの実施例7の化合物(例示化合物I−23)を0.3wt%のジアザビシクロウンデセンを含むN,N−ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、近赤外吸収組成物を得た。近赤外領域における吸収極大は777nmであった。
【0077】
実施例15
0.71mgの実施例8の化合物(例示化合物I−39)を0.3wt%のジアザビシクロウンデセンを含むN,N−ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、近赤外吸収組成物を得た。近赤外領域における吸収極大は774nmであった。
【0078】
実施例16
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/(ポリオキシエチレン)メタクリレート/末端にメタクリロイルオキシ基を有するポリ(メチルメタクリレート)の三元共重合高分子化合物(重量比;20/20/60)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(高分子化合物含量;65重量%)101mgに実施例7の化合物(例示化合物I−23)2.06mgを酢酸エチル1mLに溶解した溶液を加え、ガラス板に塗布、乾燥し、近赤外吸収組成物を得た。近赤外領域における吸収極大は739nmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1で表わされるベンゾジフラノン化合物。
【化1】

(式中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、または−N(M)Xを表わし、R11、R12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表わし、Xは芳香族アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはスルホニル基を表わし、Mはカチオンを表わす。ただし、R〜R10で表わされる置換基のうち、少なくとも1つは−N(M)Xを表わす。)
【請求項2】
一般式2で表されるベンゾジフラノン化合物。
【化2】

(式中、R101、R102、R104〜R110はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または−N(M)Xを表わし、R111、R112は水素原子を表わし、Xは芳香族アシル基、またはスルホニル基を表わし、Mはカチオンを表わす。)
【請求項3】
近赤外領域に極大吸収を有し、請求項1または2に記載のベンゾジフラノン化合物を含むことを特徴とする近赤外吸収組成物。
【請求項4】
前記近赤外領域が、700nm〜1000nmの波長の領域であることを特徴とする、請求項3に記載の近赤外吸収組成物。
【請求項5】
非酸性溶媒を含むことを特徴とする、請求項4に記載の近赤外吸収組成物。

【公開番号】特開2007−191596(P2007−191596A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11572(P2006−11572)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】