説明

ベンゾチアゾール系化合物及び該化合物を含むインク

【課題】低極性溶媒への溶解性に優れ、高い吸光係数を有するベンゾチアゾール系化合物を含むインクを提供する。
【解決手段】測定周波数1KHzにおける比誘電率が3以下であり、沸点が115℃以上である溶媒と、ベンゾチアゾール系化合物とを含むインクであって、該ベンゾチアゾール系化合物が、下記一般式(I):

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾチアゾール系化合物及び該化合物を含むインクに関し、さらに詳しくは、特定の化学構造を有するベンゾチアゾール系化合物と、該化合物を含みディスプレイ材料又は光シャッター用として有用なインクに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロウェッティングディスプレイは、基板上に水性媒体と油性着色インクの2相で満たされた複数のピクセルを配し、ピクセルごとに電圧印加のon−offによって水性媒体/油性着色インクの界面の親和性を制御し、油性着色インクを基板上に展開/凝集させることによって行う画像表示形式である(非特許文献1)。エレクトロウェッティングディスプレイに用いられる色素には、溶媒への高い溶解性等が求められる(特許文献1)。
【0003】
特許文献2には、感熱転写記録用の色素として、色濃度及び色調の優れた性能を有するベンゾチアゾール系色素の記載がある。 また、特許文献3には、光記録媒体の記録層中に吸収極大波長が450〜630nmのアゾ化合物が示され、良好な記録特性を示す化合物としてベンゾチアゾール系化合物が例示されている。
特許文献4には、非接触タイプの熱転写記録方式において、転写部の焦げによる吐出孔のつまりを改善するために、耐熱性に優れたものアゾ色素が示され、好ましい色素の例としてベンゾチアゾール系色素が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−531917号公報
【特許文献2】特開平10−204307号公報
【特許文献3】特開平8−108625号公報
【特許文献4】特開2000−280635号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Nature”、(英国)、2003年、Vol.425、p.383−385
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2、3では、感熱転写記録用又は光記録媒体として好ましい化合物の記載はあるものの、特定の溶媒、特に低極性溶媒への溶解性及び溶媒の物性については検討されていない。
また、特許文献4においては、溶媒として沸点等の好ましい条件は記載されているものの、やはり低極性溶媒への溶解性については記載も示唆もされていない。
【0007】
本発明は、低極性溶媒への溶解性に優れ、高い吸光係数を有するベンゾチアゾール系化合物及び該化合物を用いたインクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ある種の化学構造を有するベンゾチアゾール系化合物が、炭化水素系溶媒等の低極性溶媒への溶解性に優れ、しかも高いモル吸光係数を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられ
たものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下の(1)〜(13)のとおりである。
(1)測定周波数1KHzにおける比誘電率が3以下であり、沸点が115℃以上である溶媒と、ベンゾチアゾール系化合物とを含むインクであって、該ベンゾチアゾール系化合物が、下記一般式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
[一般式(I)中、
及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
Aは、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は−COOR基を示し、
は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
mは0〜4の整数を示し、mが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するAは同一でも
異なっていても良く、
A´は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基又は−NHCOR基を示し、
は、炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
nは0〜4の整数を示し、nが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するA´は同一で
も異なっていても良い]
で表されるインク。
(2)前記溶媒が、炭化水素系溶媒、シリコーンオイル、及びフルオロカーボン系溶媒から選ばれた少なくとも1つを含んでいる前記(1)に記載のインク。
(3)前記ベンゾチアゾール系化合物が、該化合物をn−デカンに溶解させたとき、350〜750nm波長域における吸収極大波長が450〜600nmの範囲内にあり、吸収極大波長におけるモル吸光係数ε(Lmol−1cm−1)と室温(25℃)における同溶媒での飽和溶液の濃度C(molL−1)の積εCが500cm−1以上の値を示す化合物である前記(1)または(2)に記載のインク。
(4)さらに、ヘテロ環化合物及びアントラキノン系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1つを含む前記(1)〜(3)のいずれか1に記載のインク。
(5)前記ヘテロ環化合物が下記一般式(II)、(III)及び(IV)の少なくとも1つを含む前記(4)に記載のインク。
【0011】
【化2】

【0012】
[一般式(II)中、
101は置換基を有していても良い炭素数が2〜10のアルキル基を示し、
102は置換基を有していても良い炭素数が3〜10のアルキル基を示し、
フェニレン基及びフェニル基は置換基を有していても良い。]
【0013】
【化3】

【0014】
[一般式(III)中、
201は水素原子または置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
202はシアノ基または−COOR209基を示し、
209は置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
203およびR204はそれぞれ独立に置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
205、R206、R207及びR208はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または−NHCOR210基を示し、
210は水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルコキシ基または炭素数6〜20のアリール基を示し、
は窒素原子または置換基を有していても良いメチン基を示し、
203とR204は互いに結合し環構造を形成していても良い]
【0015】
【化4】

【0016】
[一般式(IV)中、
301およびR302はそれぞれ独立に置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
Dは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基または−NHCOR305基を示し、
305は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基を示し、
eは1〜4の整数を示し、eが2以上の場合、1分子中に2以上存在するDは同一であって
も異なっていてもよく、
R303は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜
10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基または−COOR306基を示し、
306は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
304は置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、置換基を有していても良い炭素数が2〜20のアルコキシカルボニル基、アルデヒド基、R307OOC(NC)C=CH−基、NC(NC)C=CH−基または下記一般式(V)で示される基を示し、
【0017】
【化5】

【0018】
307は置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
D´は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または−COOR308基を示し、
gは1〜5の整数を示し、gが2以上の場合、1分子中に2以上存在するD´は同一であ
っても異なっていてもよく、
308は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
は窒素原子、あるいは置換基として、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR309を有していても良いメチン基を示し、
309は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示す]
(6)前記アントラキノン系化合物が下記一般式(IV)で表される化合物である、前記(4)又は(5)に記載のインク。
【0019】
【化6】

【0020】
[一般式(VI)中、
Lは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキルスルファニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニ
トロ基、−COOR401基、−NHR402基又は−NHCOR403基を示し、
401は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
402は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20アルコキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
403は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
tは1〜4の整数を示し、tが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するLは同一であ
っても異なっていてもよく、
L´は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキルスルファニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、
ニトロ基、−COOR404基、−NHR405基又は−NHCOR406基を示し、
404は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
405は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
406は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
qは1〜4の整数を示し、qが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するL´は同一で
あっても異なっていてもよい。]
(7)ディスプレイ用又は光シャッター用である前記(1)〜(6)のいずれか1に記載のインク。
(8)前記(1)〜(7)のいずれか1に記載のインクを含む表示部位を有し、表示部位の電圧印加を制御することで画像を表示するディスプレイ。
(9)前記表示部位が、電気泳動粒子又は水性媒体を含む前記(8)に記載のディスプレイ。
(10)電圧印加によって着色状態を変化させることにより画像を表示する前記(8)又は(9)に記載のディスプレイ。
(11)エレクトロウェッティング方式又は電気泳動方式により画像を表示する前記(8)〜(10)のいずれか1に記載のディスプレイ。
(12)前記(8)〜(11)のいずれか1に記載のディスプレイを有する電子ペーパー。
(13)測定周波数1KHzにおける比誘電率が3以下であり、沸点が115℃以上である溶媒を少なくとも含むインクに用いられる化合物であって、該化合物が、下記一般式(VII)で表される化合物。
【0021】
【化7】

【0022】
[一般式(VII)中、
及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
Aは、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は−COOR基を示し、
は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
mは0〜4の整数を示し、mが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するAは同一でも
異なっていても良く、
A´は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基又は−NHCOR基を示し、
は、炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
nは0〜4の整数を示し、nが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するA´は同一で
も異なっていても良い]
【発明の効果】
【0023】
本発明のベンゾチアゾール系化合物は、油溶性溶媒への高い溶解性をもつためインクとして幅広く用いることができる。さらに本発明のベンゾチアゾール系化合物を含むインクは、低極性溶媒への高い溶解性と高いモル吸光係数を併せもつため、ディスプレイ及び光シャッター用に用いられるインクに有用である。
さらにディスプレイとしては、インクを含む表示部位を有し、表示部位の電圧印加を制御することで画像を表示するディスプレイ、電圧印加によって着色状態を変化させることにより画像を表示するディスプレイ、表示部位に電気泳動粒子又は水性媒体を用いて表示をさせるディスプレイに特に有用である。
【0024】
ここで、電気泳動粒子とは電荷を帯びた粒子であり、色を有していてもよく、表示部位に複数種類の電気泳動粒子を含んでいてもよい。また、水性媒体は色を有していてもよい流体であり、表示部位に複数種類の水性媒体を有していてもよい。
また、本発明のベンゾチアゾール系化合物及びインクは、エレクトロウェッティング方式のディスプレイまたは電気泳動方式のディスプレイに用いられるインクとして特に有用である。
【0025】
また、本発明のインクは、本発明のベンゾチアゾール系化合物と他の化合物と組み合わせることにより、赤色、黒色等の色相に優れた良好なインクを提供することも可能であり、光シャッターとして機能する部材としても有用である。
ディスプレイを有する表示装置であれば、どのような装置にも用いることが可能であるが、電子ペーパー用に用いることが特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではなく、種々変形して実施することが
できる。
本発明のインクは、測定周波数1KHzにおける比誘電率が3以下であり、沸点が115℃以上である溶媒とベンゾチアゾール系化合物とを含むインクであって、該ベンゾチアゾール系化合物が、下記一般式(I):
【0027】
【化8】

【0028】
[一般式(I)中、
及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
Aは、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は−COOR基を示し、
は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
mは0〜4の整数を示し、mが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するAは同一でも
異なっていても良く、
A´は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基又は−NHCOR基を示し、
は、炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
nは0〜4の整数を示し、nが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するA´は同一で
も異なっていても良い]
で表されるインクである。
【0029】
(溶媒)
本発明のインクに用いられる溶媒は、測定周波数が1kHzにおいて比誘電率が3以下であり、本発明における「低極性溶媒」とは、上記の意味である。本発明のインクは、例えば水層、油層などの層を有し、層の分裂(break up)又は層の移動(move
aside)に基づいた表示装置に用いることができる。表示を鮮明にするためには、インクが含まれる層と他の層とが混合せず、安定的に分裂又は移動することが必要であり、溶媒は、他の層との相溶性が低く、低極性である等が求められる。本発明は特定の溶媒とベンゾチアゾール系化合物をインクに含むことによって、層が安定的に分裂又は移動することが可能となる。
【0030】
また、溶媒中で電荷を帯びた粒子(電気泳動粒子)が電界によって移動する電気泳動を用いたディスプレイにおいて、溶液の誘電率が大きいと駆動の妨げとなる場合がある。本発明の溶媒と特定のベンゾチアゾール系化合物を用いることによって、粒子の移動を妨げることなく溶液の着色が可能になる。
また、本発明のインクをエレクトロウェッティング方式のディスプレイに用いる場合、溶媒のぬれ性、接触角及び表面張力がディスプレイの駆動に影響を与える場合がある。
【0031】
本発明で用いる溶媒の比誘電率は、測定周波数が1kHzにおいて3以下である。さらに好ましくは2.5以下、より好ましくは2.2以下である。比誘電率の下限は特に制限されないが、通常1.5以上、好ましくは1.7以上が適当である。溶媒の比誘電率の測定方法は実施例に示す。
インクが含まれる層の比誘電率が大きすぎると、表示装置の駆動に支障をきたす場合がある。例えば、インクが含まれない他の層が、水、塩類溶液など電気導電性又は有極性などの液体の場合、インクが含まれる層に用いられる溶媒の比誘電率が大きすぎると、層が混合する場合がある。
【0032】
本発明の溶媒の沸点は115℃以上である。また、130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。また、300℃以下であることが好ましい。沸点が高すぎないことで、溶媒の融点および粘度が高くなりすぎず、表示装置に支障をきたさず駆動できる場合があり、また、沸点が低すぎないことで、揮発性が抑えられ、安定性及び安全性を得られる場合がある。
【0033】
本発明で用いる溶媒の粘度は、特に限定されないが、溶媒温度が25℃のときの粘度が0.1m-1以上であることが好ましい。また、10000mm-1以下であることが好ましく、2000mm-1以下であることがさらに好ましく、1000mm
-1以下であることが特に好ましい。溶媒の粘度が大きすぎないことで、化合物等が溶
解し易く、表示装置に支障をきたさず駆動できる場合がある。本発明の溶媒の粘度の測定方法は実施例に示す。
【0034】
本発明の溶媒は、単独あるいは混合して用いることができる。具体例としては、炭化水素系溶媒、フルオロカーボン系溶媒、シリコーンオイル、高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。炭化水素系溶媒としては、直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、石油ナフサなどが挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えばn−デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、イソアルカン類等の脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられ、市販品としては、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(エクソン・モービル株式会社製)、IPソルベント(出光石油化学株式会社製)、ソルトール(フィリップス石油株式会社製)などが挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばハイソゾール(日本石油株式会社製)などが挙げられ、石油ナフサ系溶媒としては、シェルS.B.R.、シェルゾール70、シェルゾール71(シェル石油化学株式会社製)、ペガゾール(エクソン・モービル社製)などが挙げられる。
【0035】
フルオロカーボン系溶媒は、主にフッ素置換された炭化水素であり、例えば、C16、C18などのC2n+2で表されるパーフルオロアルカン類が挙げられ、市販品としては、フロリナートPF5080、フロリナートPF5070(住友3M社製)等が上げられる。フッ素系不活性液体としては、フロリナートFCシリーズ(住友3M社製)等、フルオロカーボン類としては、クライトックスGPLシリーズ(デュポンジャパンリミテッド社製)、フロン類としては、HCFC−141b(ダイキン工業株式会社製)、F(CFCHCHI、F(CF)6I等のヨウ素化フルオロカーボン類としては、I−1420、I−1600(ダイキンファインケミカル研究所製)等が挙げられる。
【0036】
シリコーンオイルとしては、例えば、低粘度の合成ジメチルポリシロキサンが挙げられ、市販品としては、KF96L(信越シリコーン製)、SH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン製)等が挙げられる。上述した溶媒は、単独あるいは混合して用いることができる。
好ましくは溶媒が、炭化水素系溶媒、フルオロカーボン系溶媒、及びシリコーンオイルから選ばれた1以上を含む。含有量は通常、低極性溶媒の50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
【0037】
本発明のインクは、低極性溶媒とベンゾチアゾール系化合物とを含むものであり、ベン
ゾチアゾール系化合物および必要に応じて用いるその他の化合物や添加剤等を、低極性溶媒に溶解することにより得られる。
ここで、溶解とは、ベンゾチアゾール系化合物が低極性溶媒に完全に溶解している必要はなく、低極性溶媒に溶解させた溶液が0.1ミクロン程度のフィルターを通過し、かつ吸光係数が測定可能な程度の状態であればよく、化合物の微粒子が分散している状態であってもよい。
【0038】
(ベンゾチアゾール系化合物)
本発明のベンゾチアゾール系化合物としては、上述した一般式(I)で表される化学構造を有するものである。
一般式(I)において用いられるR〜R、A、A´、n、mについて、具体例を以下に説明する。
上記一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基を示す。
【0039】
及びRの置換基を有していても良いアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2-エチルブチル、2-エチルヘキシル、 イソオクチル
基、イソノニル基、等の分岐アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルメチル基、4−ブチルメチルシクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。R及びRのアルキル基は、炭素数が2以上であることが好ましく、炭素数4以上であることがさらに好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
【0040】
及びRの置換基を有していても良いアリール基としては、5又は6員環の単環か、あるいはこれが2〜4個縮合してなる縮合環から、水素原子を1個除いて得られる基であり、具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基ナフチル基、チエニル基、ピリジル基等の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が挙げられ、炭素数が6以上であることが好ましく、また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
【0041】
及びRの炭素数が上記範囲にあることで、分子量が大きくなり過ぎず、グラム吸光係数を悪化させない場合がある。
また、R及びRは、結合して環状構造を形成しても良く、(A´)と結合して環構造を形成しても良い。
及びRのアルキル基が有していても良い置換基の具体例としては、低極性溶媒への溶解性から低極性の置換基が好ましく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数が1〜20のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基;シアノ基等が挙げられる。
【0042】
また、R及びRのアリール基が有していても良い置換基の具体例としては、低極性溶媒への溶解性から低極性の置換基が好ましく、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。
(A)におけるAは、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が
1〜20のアルキル基又は−COOR基を示す。
【0043】
Aの置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基は、Rで例示したアルキル基と同義であり、Aのアルキル基が有していても良い置換基も、Rで例示したアルキル基が有していていも良い置換基と同義である。Aのアルキル基は、炭素数が2以上であることが好ましく、炭素数4以上であることがさらに好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。 炭素数が上記範囲にあることで、分子量が大きくなり過ぎず、グラム吸光係数を悪化させない場合がある。
【0044】
は、炭素数1〜20のアルキル基を示す。Rのアルキル基の具体例としては、Rで例示したアルキル基と同義である。Rのアルキル基は、炭素数が2以上であることが好ましく、炭素数4以上であることがさらに好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。 炭素数が上記範囲にあることで、分子量が大きくなり過ぎず、グラム吸光係数を悪化させない場合がある。
【0045】
mは0〜4の整数を示し、mが2以上の場合は、1分子中に存在する2以上のAは同一
でも異なっていても良い。好ましくは、mが1以上であることで、溶解性が向上する場合がある。
(A´)におけるA´は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基又は−NHCOR基を示す。
【0046】
A´の置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基 は、Rで例示した
アルキル基の内、炭素数が1〜10のアルキル基と同義である。また、A´のアルキル基が有していても良い置換基の具体例としては、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルコキシ基、炭素数が2〜10のアルコキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。 A´の置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等の直鎖のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソオクチルオキシ基等の分岐鎖アルコキシ基;シクロプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロプロピルメチルオキシ基等のシクロアルカン構造を有するアルコキシ基等が挙げられる。また、A´のアルコキシ基が有していても良い置換基の具体例としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、ペンゾイル基、カルバゾイル基、フェニルカルボニル基等の炭素数1〜10のカルボニル基等が挙げられる。
【0047】
は炭素数が1〜10のアルキル基を示し、具体例としてはA´で例示したアルキル基と同義である。
さらにA´は、水素原子;ハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;アルコキシ基、アセチルアミノ基等のNHCOR基が好ましく、メチル基、アルコキシ基またはアセチルアミノ基が特に好ましい。
【0048】
nは0〜4の整数を示し、nが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するA´は同一で
も異なっていても良い。好ましくは、nが1以上であることで、溶解性が向上する場合が
ある。
本発明の化合物は、工業製造上、結晶性が良い、精製し易い、製造工程数が少ない、原料が入手しやすい等の条件を満たすことが好ましい。
【0049】
一般式(I)で表わされるベンゾチアゾール系化合物の具体例を以下に例示する。本発明はその要旨をこえない限りこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化9】

【0051】
本発明のベンゾチアゾール系化合物は、置換基を有する場合は置換基を含めて、その分子量が3000以下であることが好ましく、1500以下であることがさらに好ましい。また400以上であることが好ましく、500以上であることがさらに好ましい。分子量が大きすぎるとグラム吸光係数が低くなる場合がある。
上記一般式(I)で表されるベンゾチアゾール系化合物は、例えば特開平10−204
307号公報及び特開2000−280635号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
【0052】
本発明のベンゾチアゾール系化合物は、低極性溶媒への溶解性に優れることを特徴とする。本発明のベンゾチアゾール系化合物は、室温(25℃)におけるn−デカンに対する溶解度が、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。溶解度は高ければ高いほど好ましいが、通常80質量%以下程度である。溶解度が特定値以上であることで、ディスプレイなどの表示装置の表示が可能となる場合がある。
【0053】
なお、本発明のベンゾチアゾール系化合物は、エレクトロウェッティングディスプレイに用いる場合、その原理から言って水不溶性であることが望ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下であることを言う。 また、本発明のベンゾチアゾール系化合物は赤色系の色調を呈する。該化合物を、低極性溶媒に溶解した場合に380〜780nm波長域における吸収極大波長が600〜700nmの範囲内にあることが好ましく、n−デカンに溶解した場合に、380〜780nm波長域における吸収極大波長が600〜700nmの範囲にあることが好ましい。
【0054】
また、モル吸光係数は10000(Lmol−1cm−1)以上であることが好ましく、40000(Lmol−1cm−1)以上であることがディスプレイの性能を満たすためにさらに好ましい。
さらに、本発明のベンゾチアゾール系化合物は、n−デカンに溶解したときに、該溶液での吸収極大波長におけるモル吸光係数ε(Lmol1cm−1)と、同溶媒での室温(25℃)における飽和溶液の濃度C(molL−1)の積εCの値が、通常500cm−1以上、好ましくは1000cm−1以上、より好ましくは2000cm−1以上である。εC値は高いほど高耐光のため好ましく、上限は特にないが、通常40000cm−1以下である。
【0055】
本発明のインク中におけるベンゾチアゾール系化合物の濃度については、その目的に応じて任意の濃度で調製される。例えば、エレクトロウェッティングディスプレイ用の青色素として用いる場合、通常1質量%以上の濃度で、必要とされるεC値に応じて溶媒に希釈して用いられるが、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。濃度は高いほうが好ましいが通常80質量%以下程度である。
【0056】
本発明のインクは上記ベンゾチアゾール系化合物を単独で含んでいてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で含んでいてもよい。
本発明のベンゾチアゾール系化合物は、低極性溶媒への溶解性に優れ、高い吸光係数を有することから、光シャッター用材料、ディスプレイ材料、特にエレクトロウェッティングディスプレイ材料、電気泳動法ディスプレイ材料として有用である。
【0057】
本発明のインク温度が25℃時のインク粘度の下限は、特に限定されないが、通常0.1m-1以上であることが好ましい。また、上限は10000m-1以下であることが好ましく、2000m-1以下がさらに好ましく、1000m-1以下であることが特に好ましい。インクの粘度が大きすぎると、ディスプレイの駆動に支障をきたす場合がある。本発明のインクの粘度の測定方法は実施例に示す。
【0058】
本発明の溶媒と、該溶媒と色素などを含むインクの比誘電率や粘度は、溶媒とインクの値の差が小さい方が、表示装置などで用いる際の駆動特性への影響が小さくなり好ましい。 従って、本発明のインクは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、また
各用途に適した任意の添加剤を含んでいてもよいが、溶媒の特性を変化させないようにすることが好ましい。
【0059】
(他の化合物)
本発明のインクは、上記ベンゾチアゾール系化合物の他に、所望の色調とするために他の化合物を含んでいてもよい。例えば、本発明のベンゾチアゾール系化合物に、他の化合物を混合して、赤色及びその他の色とすることもでき、また、青色、黄色、赤色、紫色、橙色等の複数の色の化合物を混合して黒色とすることもできる。
【0060】
本発明のインクが含んでいてもよい他の化合物としては、使用する媒体に対して溶解性・分散性を有する化合物の中から、本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択することが可能である。
本発明のインクをエレクトロウェッティングディスプレイ用に用いる場合、他の化合物としては、任意の化合物を選択して用いることができる。例えば、ヘテロ環化合物、アントラキノン系化合物、ニトロソ化合物、ニトロ化合物、モノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、トリアゾ化合物、ポリアゾ化合物、スチルベン化合物、カロテノイド化合物、ジアリールメタン化合物、トリアリールメタン化合物、キサンテン化合物、アクリジン化合物、キノリン化合物、メチン化合物、チアゾール化合物、インダミン化合物、インドフェノール化合物、アジン化合物、オキサジン化合物、チアジン化合物、ヘテロ環化合物、硫化染料、ラクトン化合物、ヒドロキシケトン化合物、アミノケトン化合物、アントラキノン化合物、インジゴ化合物、フタロシアニン化合物、天然染料、酸化染料、無機顔料、金属錯体類等が上げられる。
【0061】
具体的には、例えば、Oil Blue N(アルキルアミン置換アントラキノン)、Solvent Green、Solvent Blue、Sudan Blue、Sudan Red、Sudan Yellow、Sudan Black;国際公開2009-063880号に記載の化合物;国際公開2010−031860号に記載の化合物
;等が挙げられる。これらの化合物は、それ自体既知のものであり、市販品として入手できる。
【0062】
この中でも、ヘテロ環化合物及びアントラキノン系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1つを含むことが好ましく、これらを任意に組み合わせることにより、好ましいインクを実現することができる。
前記ヘテロ環化合物の具体例としては特に限定はないが、下述する一般式(II)、(III)及び(IV)の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0063】
ヘテロ環化合物として、以下一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【化10】

【0065】
一般式(II)中、R101は置換基を有していてもよい炭素数が2〜10のアルキル基を示し、R102は置換基を有していてもよい炭素数が3〜10のアルキル基を示す。
101の、アルキル基としては、一般式(I)のA´で例示したアルキル基のうち、炭素数が2〜10のアルキル基と同義である R101のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基の炭素数が2〜6の直鎖のアルキル基が特に好ましい。
【0066】
102は、A´で例示したアルキル基のうち炭素数が3〜10のアルキル基と同義である。R102は、高いグラム吸光係数、および原料の入手の容易さの点から炭素数が3〜6のアルキル基が好ましい。また非極性溶媒への溶解性の点から分岐アルキル基が好ましく、R102としてはtert−ブチル基が最も好ましい。
101およびR102は任意の置換基を有していても良い。任意の置換基の例としては、低極性溶媒への溶解性を妨げない置換基が好ましく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0067】
一般式(II)中、フェニル基、フェニレン基は各々独立して置換基を有してもよい。フェニル基が有していても良い置換基としては、炭化水素系溶媒などの非極性有機溶媒への溶解性の観点から、非極性置換基が好ましく、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が1〜10のアルコキシ基、炭素数が1〜10のハロアルキル基、炭素数が1〜10のハロアルコキシ基等が挙げられ、中でも、炭素数が1〜10のアルキル基及び/又は炭素数が1〜10のアルコキシ基が好ましい。
【0068】
フェニル基が有していても良い置換基の炭素数1〜10のアルキル基及びアルコキシ基としては、一般式(I)のA´で例示した炭素数が1〜10のアルキル基及びアルコキシ基と同義である。フェニル基が有していても良い置換基のハロアルキル基及びハロアルコキシ基としては、上記のアルキル基及びアルコキシ基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換された基であり、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0069】
フェニレン基が有していても良い置換基としては、フェニル基の置換基として列記のものと同様の基が挙げられ、中でも炭素数が1〜10のアルキル基及び/又は炭素数が1〜10のアルコキシ基が好ましく、特に好ましい置換基としては、例えばメチル基、エチル基等の炭素数が1〜4アルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数が1〜4アルコキシ基が挙げられる。
【0070】
以下に、前記一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0071】
【化11】

【0072】
上記一般式(II)で表される化合物は、例えば、国際公開2009/063880号
に記載の方法に準じて合成することができる。
ヘテロ環化合物として、以下一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0073】
【化12】

【0074】
一般式(III)中、
201は水素原子または置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
202はシアノ基または−COOR209基を示し、R209は置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
203およびR204はそれぞれ独立に置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
205、R206、R207及びR208はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または−NHCOR210基を示し、R210は水素原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基を示し、
は窒素原子または置換基を有していても良いメチン基を示す。
【0075】
201の置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基は、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義であり、有していても良い置換基も一般式(I)のRで例示したアルキル基が有していても良い置換基と同義である。また、R201は、Xと結合して環状構造を形成しても良い。
201は、グラム吸光係数の観点からは分子量の小さい置換基であることが好ましく、水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基であることがより好ましい。また、R201は、製造上の観点からは無置換のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の無置換の炭素数が1〜4のアルキル基であることがより好ましい。
【0076】
202は、シアノ基または−COOR209基を示し、R209は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示す。R209のアルキル基は、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義であり、アルキル基が有していても良い置換基も同義である。R209としては、製造上またはグラム吸光係数の観点から、炭素数が1〜10のアルキル基が好ましい。
【0077】
203およびR204は、それぞれ独立に置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示す。R203およびR204は、結合して環状構造を形成しても良い。また、R203またはR204は、R206、R207とそれぞれ結合して環構造を形成しても良い。
205、R206、R207及びR208は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または置換基を有していても良い−NHCOR210基を示す。
【0078】
205、R206、R207及びR208のアルキル基の具体例としては、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義であり、アルキル基が有していても良い置換基も同義である。また、R205、R206、R207及びR208のアルコキシ基の具体例としては、一般式(I)のA´で例示したアルコキシ基に加え、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ドデカンオキシ基、トキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシブチル基等の炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルコキシ等が挙げられる。R205、R206、R207及びR208のアルコキシ基が有していても良い置換基の具体例としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、ペンゾイル基、カルバゾイル基、フェニルカルボニル基等の炭素数1〜20のカルボニル基等が挙げられる。
【0079】
さらにR205、R206、R207及びR208は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数が1〜4のアルキル基またはアセチルアミノ基の−NHCOR210基が好ましく、メチル基またはアセチルアミノ基が特に好ましい。
210は、水素原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または置換基を有していても良い炭素数が6〜20アリール基を示す。
【0080】
210のアルキル基は、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義であり、有していても良い置換基も一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義である。
210のアルコキシ基は、R205で例示したアルコキシ基と同義であり、有していても良い置換基も同義である。この中でも炭素数が3以上であることが好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。また、R210のアリール基は、一般式(I)のRで例示したアリール基と同義であり、有していても良い置換基も一般式(I)のRで例示したアリール基と同義である。
【0081】
は、窒素原子または置換基を有していても良いメチン基を示す。Xがメチン基の場合、Xは無置換でも置換基を有していても良いが、Xが有していても良い置換基としては、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、−COOR211等が挙げられる。R211は置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示す。
【0082】
としては、窒素原子、メチン基、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されたメチン基、または炭素数が2〜5のアルコキシカルボニル基で置換されたメチン基が好ましい。
上記一般式(III)で表される化合物の中で、特に好ましい化合物としては、下記表1及び表2の化合物が挙げられる。本発明はその趣旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
上記一般式(III)で表される化合物は、例えば、特開2010−203335号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
ヘテロ環化合物として、以下一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
【化13】

【0087】
一般式(IV)中、
301およびR302はそれぞれ独立に置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
Dは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基または−NHCOR305基を示し、
305は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基を示し、
eは1〜4の整数を示し、eが2以上の場合、1分子中に2以上存在するDは同一であって
も異なっていてもよく、
R303は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜
10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基または−COOR306基を示し、
306は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
304は置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、置換基を有していても良い炭素数が2〜20のアルコキシカルボニル基、アルデヒド基、R307OOC(NC)C=CH−基、NC(NC)C=CH−基または下記一般式(V)で示される基を示し、
【0088】
【化14】

【0089】
307は置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
D´は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または−COOR308基を示し、
gは1〜5の整数を示し、gが2以上の場合、1分子中に2以上存在するD´は同一であ
っても異なっていてもよく、
308は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
は窒素原子、あるいは置換基として、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR309を有していても良いメチン基を示し、
309は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示す。
【0090】
301及びR302は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示す。
301及びR302の置換基を有していても良いアルキル基としては、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義であり、アルキル基が有していても良い置換基も、一般式(I)のRで例示したアルキル基が有していてもよい置換基と置換基と同義である。
301及びR302は、炭素数が4以上であることが好ましく、炭素数5以上であることがさらに好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。炭素数が多すぎないことで、分子量が大きくならず、グラム吸光係数を悪化させない場合がある。
【0091】
また、R301及びR302の少なくとも一方が、分岐アルキル基であることが好ましく、さらに、少なくとも一方が、炭素数5〜20の分岐アルキル基であることが好ましい。また、R301及びR302は、その両方が分岐アルキル基であることが、溶解性の点からさらに好ましい。
Dは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基または−NHCOR305基を示す。また、eは1〜4の整数を示し、eが2以上の場合は、1分子中に2以上存在
するDは同一であっても異なっていてもよい。
【0092】
Dの置換基を有していても良いアルキル基は、一般式(I)のA´で例示した炭素数が1〜10のアルキル基と同義であり、有していても良い置換基も一般式(I)のA´のアルキル基で例示した置換基と同義である。
Dの置換基を有していても良いアルコキシ基は、一般式(I)のA´で例示した炭素数が1〜10のアルコキシ基と同義であり、有していても良い置換基も一般式(I)のA´のアルコキシ基で例示した置換基と同義である。
【0093】
Dのアルキル基及びアルコキシ基は、炭素数が8以下であることが好ましく、6以下であることが、グラム吸光係数の点で有利となりさらに好ましい。
305は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基を示す。
【0094】
305の置換基を有していても良いアルキル基は、一般式(I)のA´で例示したアルキル基と同義であり、有していても良い置換基も、一般式(I)のA´のアルキル基で例示した置換基と同義である。R305のアルキル基は、炭素数が9以下であることが好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
305のアルコキシ基は、一般式(I)のA´で例示したアルコキシ基と同義のものに加え、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ドデカンオキシ基、トキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシブチル基等の炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルコキシ等が挙げられ、この中でも炭素数が3以上であることが好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。R305のアルコキシ基が有していても良い置換基の具体例としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数が1〜20のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、ペンゾイル基、カルバゾイル基、フェニルカルボニル基等の炭素数1〜20のカルボニル基等が挙げられる。
【0095】
305のアリール基は、一般式(I)のRで例示したアルコキシ基と同義であり、
有していても良い置換基も、一般式(I)のRのアルコキシ基で例示した置換基と同義である。R305のアリール基は、炭素数が10以上であることが好ましく、また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
305の炭素数が多すぎないことで、分子量が大きくなりすぎず、グラム吸光係数が悪化しない場合がある。
【0096】
303は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基または−COOR306基を示す。
303の置換基を有していても良いアルキル基及びアルコキシ基は、一般式(I)のA´で例示したアルキル基及びアルコキシ基と同義であり、有していても良い置換基も、一般式(I)のA´のアルキル基及びアルコキシ基で例示した置換基とそれぞれ同義である。
【0097】
303のアルキル基、アルコキシ基は、炭素数が9以下であることが好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
303のアリール基は、一般式(I)のRで例示したアリール基と同義であり、その中でも置換基を有していてもよいフェニル基であることが好ましい。
306は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示す。R306のアルキル基は、一般式(I)のA´で例示したアルキル基と同義であり、有していても良い置換基も、一般式(I)のA´のアルキル基で例示した置換基と同義である。R306の炭素数は、8以下であることが好ましく、6以下であることがさらに好ましい。
【0098】
303及びR306の炭素数が多すぎないことで、分子量が大きくなりすぎず、グラム吸光係数が悪化しない場合がある。
304は置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、置換基を有していても良い炭素数が2〜20のアルコキシカルボニル基、アルデヒド基、R307OOC(NC)C=CH−基、NC(NC)C=CH−基または下記一般式(V)で示される基を示す。
【0099】
【化15】

【0100】
304のアルキル基は、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義のものが挙げられ、アルキル基が有していても良い置換基も一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義である。R304のアルキル基は炭素数が3以上であることが好ましい。また、炭素数が18以下であることが好ましく、16以下であることがさらに好ましい。
304のアルケニル基は、炭素―炭素不飽和結合の位置は特に限定されず、複数の不飽和結合を有していても良い。また直鎖でも分岐でもよく、任意の置換基を有していても良い。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、この中でも、炭素数が3以上であることが好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
【0101】
304のアルケニル基が有していても良い置換基の具体例としては、低極性溶媒への溶解性から低極性の置換基が好ましく、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。
304のアルコキシ基は、一般式(IV)のR305で例示したアルコキシ基と同義のものが挙げられ、この中でも炭素数が3以上であることが好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
【0102】
304のアルコキシ基が有していても良い置換基の具体例としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数が1〜20のアルキル基、ホルミル基、アセチル基、ペンゾイル基、カルバゾイル基、フェニルカルボニル基等の炭素数1〜20のカルボニル基等が挙げられる。
304のアルキルカルボニル基に含まれるアルキル基は、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義のものが挙げられ、炭素数が1以上であることが好ましい。また、炭素数が18以下であることが好ましく、16以下であることがさらに好ましい。
【0103】
304のアルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基は、一般式(IV)のR305で例示したアルコキシ基と同義のものが挙げられ、炭素数が1以上であることが好ましい。また、炭素数が18以下であることが好ましく、16以下であることがさらに好ましい。
304のアルキルカルボニル基が有していても良い置換基の具体例としては、炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられ、R304のアルコキシカルボニル基が有していても良い置換基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基等が挙げられる。R304の炭素数が適当な範囲にあることで、分子量が大きくなりすぎず、グラム吸光係数が悪化しない場合がある。
【0104】
307は置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示す。R307のアルキル基は、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義のものが挙げられ、R307のアルキル基が有していても良い置換基としては、一般式(I)のRで例示したアルキル基が有していても良い置換基と同義である。R307の炭素数は、2以上が好ましく、4以上がさらに好ましい。また、18以下が好ましく、16以下であることがさらに好ましい。炭素数が適当な範囲にあることで、分子量が大きくなりすぎず、グラム吸光係数が悪化しない場合がある。
【0105】
(D´)のD´は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または−COOR308基を示す。また、gは1〜5の整数を示し、gが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するD´は同一であっても異なっていてもよい。
D´のアルキル基は、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義のものが挙げられ、また、D´のアルキル基が有していても良い置換基としては、一般式(I)のRで例示したアルキル基が有していても良い置換基と同義である。 D´のアルキル基は炭素数が3以上であることが好ましい。また、炭素数が18以下であることが好ましく、16以下であることがさらに好ましい。
【0106】
D´のアルコキシ基は、一般式(IV)のR305で例示したアルコキシ基と同義のものが挙げられ、このなかでも、炭素数が4以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましい。また、炭素数が16以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
また、D´のアルコキシ基が有していても良い置換基は、一般式(IV)のR305
例示したアルコキシ基が有していてもよい置換基と同義である。
【0107】
308は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基であり、一般式(I)のA´で例示したアルキル基と同義のものが挙げられ、また、R308のアルキル基が有していても良い置換基としては、一般式(I)のA´で例示したアルキル基が有していても良い置換基と同義である。R308のアルキル基の中でも、炭素数が2以上であることが好ましく、また、8以下が好ましく、6以下であることがさらに好ましい。
【0108】
各基の炭素数が適当な範囲にあることで、分子量が大きくなりすぎず、グラム吸光係数が悪化しない場合がある。
は窒素原子、あるいは置換基として、ハロゲン原子、シアノ基又は−COOR309を有していても良いメチン基を示す。R309は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示す。
【0109】
309の置換基を有していても良いアルキル基及びアルキル基が有していても良い置換基は、一般式(I)のA´で例示したアルキル基及びアルキル基が有していても良い置換基と同義のものが挙げられ、この中でも、炭素数が8以下であることが好ましく、6以下であることがさらに好ましい。各基の炭素数が多すぎないことで、分子量が大きくなりすぎず、グラム吸光係数が悪化しない場合がある。
【0110】
以下に、前記一般式(IV)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0111】
【化16】

【0112】
【化17】

【0113】
【化18】

【0114】
上記一般式(IV)で表されるヘテロ環化合物は、例えば、特開平3−256793号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
以上に説明した一般式(II)〜(IV)等で表されるヘテロ環化合物は、グラム吸光係数の点から、置換基を有する場合は置換基も含めて、その分子量が、通常2000以下、好ましくは1000以下であり、また、通常300以上、好ましくは400以上である。
【0115】
アントラキノン系化合物の具体例としては特に限定はないが、下記一般式(VI)で表される化合物が好ましい。
【0116】
【化19】

【0117】
一般式(VI)中、Lは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキルスルファニル基、シアノ基、ヒドロ
キシ基、アミノ基、ニトロ基、−COOR401基、−NHR402基又は−NHCOR403基を示し、tは1〜4の整数を示し、tが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するLは同一であっても異なっていてもよい。
【0118】
401は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
402は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20アルコキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
403は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示す。
【0119】
また、L´は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキルスルファニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、−COOR404基、−NHR405基又は−NHCOR406基を示し、qは1〜4の整数を示し、qが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するL´は同一であっても異なっていてもよい。
【0120】
404は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
405は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
406は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示す。
【0121】
L及びL´の置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基は、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義であり、L及びLのアルキル基が有していても良い置換基も、一般式(I)のRのアルキル基が有していても良い置換基でと同義である。
L及びL´の置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基は、一般式(IV)のR305で例示したアルコキシ基と同義であり、また、アルコキシ基が有していても良い置換基も同義である。
【0122】
L及びL´の置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキルスルファニル基と
しては、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基、シクロヘキシルスルファニル基、オクチルスルファニル基、2−エチルヘキシルスルファニル基等が挙げられる。また、アルキルスルファニル基が有していても良い置換基としては、炭素数が1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。
【0123】
401及びR404は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義であり、R401及びR404のアルキル基が有していても良い置換基も、一般式(I)のRのアルキル基が有していても良い置換基と同義である。
402及びR405は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示す。
【0124】
402及びR405のアルキル基としては、一般式(I)のRで例示したアルキル
基と同義であり、R402及びR405のアルキル基が有していても良い置換基も、一般式(I)のRのアルキル基が有していても良い置換基と同義である。R402及びR405のアルコキシ基としては、一般式(IV)のR305で例示したアルコキシ基と同義であり、また、アルコキシ基が有していても良い置換基も同義である。
【0125】
402及びR405のアリール基としては、一般式(I)のRで例示した置換基と同義であり、R402及びR405のアリール基が有していても良い置換基としては、一般式(I)のRのアリール基が有していても良い置換基と同義である。
403及びR406は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示す。
【0126】
403及びR406のアルキル基としては、一般式(I)のRで例示したアルキル基と同義であり、R403及びR406のアルキル基が有していても良い置換基も、一般式(I)のRのアルキル基が有していても良い置換基と同義である。
一般式(VI)で表わされるアントラキノン化合物の具体例を以下に例示するが、その要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0127】
【化20】

【0128】
【化21】

【0129】
上記一般式(VI)で表されるアントラキノン系化合物は、例えば、米国特許5558808号公報、特表平11−506151号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
上記一般式(VI)で表されるアントラキノン系化合物は、グラム吸光係数の点から、
置換基を有する場合は置換基も含めて、その分子量が、通常2000以下、好ましくは1000以下であり、また、通常300以上、好ましくは400以上である。
【0130】
一般式(I)〜(VI)を含むインク中における化合物の濃度については、その目的に応じて任意の濃度で調製される。エレクトロウェッティングディスプレイ用の化合物として用いる場合、通常0.2質量%以上の濃度で、必要とされるεC値に応じて溶媒に希釈して用いられるが、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。濃度は高いほうが好ましいが通常40質量%以下程度である。
【0131】
本発明のインクを黒として用いる場合、上記一般式(I)に加え、(II)〜(VI)の化合物のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。これの化合物を含むことにより、
可視光領域内の広い波長範囲において高い光吸収を実現することができる。また、これらの化合物を混合して用いた場合でも、溶媒に対する溶解性が低下することなく高い溶解性を示す点で優れている。
さらに、本発明のインクは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、また各用途に適した任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0132】
(用途)
本発明のインクはディスプレイ用に好適に用いられる。ディスプレイとしては、インクを含む表示部位を有し、表示部位の電圧印加を制御することで画像を表示するディスプレイ、電圧印加によって着色状態を変化させることにより画像を表示するディスプレイ、表示部位に電気泳動粒子又は水性媒体を用いて表示をさせるディスプレイに特に有用である。
【0133】
ここで、電気泳動粒子とは電荷を帯びた粒子であり、色を有していてもよく、表示部位に複数種類の電気泳動粒子を含んでいてもよい。また、水性媒体は色を有していてもよい流体であり、表示部位に複数種類の水性媒体を有していてもよい。水性媒体とは、水、非帯電性(non-charged)の液体、水と親和性のある液体、水と表面張力が類似している液
体が挙げられ、例えばジオール、トリオールなどのアルコール類、アルカリ金属ハロゲン化物等の無機塩を含む液体等が挙げられる。
【0134】
また、本発明のベンゾチアゾール系化合物及びインクは、エレクトロウェッティング方式のディスプレイまたは電気泳動方式のディスプレイに用いられるインクとして特に有用である。
また、本発明のベンゾチアゾール系化合物と他の化合物と組み合わせることにより、黒色の色相に優れた良好な黒色インクを提供することも可能であり、光シャッターとして機能する部材としても有用である。
【0135】
本発明のインクは、ディスプレイを有する表示装置であれば、どのような装置にも用いることが可能であるが、電子ペーパー用に用いることが特に有用である。
ディスプレイの方式としては、エレクトロウェッティング法、電気泳動法などが例示される。ディスプレイの用途としては、コンピューター用、電子ペーパー用、電子インク用など様々なものが挙げられ、既存の液晶表示ディスプレイの用途のほとんどを代替することができる可能性がある。本発明のインクは、中でも、エレクトロウェッティングディスプレイ用のインクとして特に好ましい。
【実施例】
【0136】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<溶媒及びインクの粘度測定方法>
溶媒及びインクの粘度を、CAC MATERIALS CO. Ltd製の粘度計VISCOMATE MODEL VM-10Aを用いて測定した。
【0137】
<溶媒及びインクの比誘電率測定法>
アジレント・テクノロジー株式会社製のプレシジョンLCRメータ 4284Aを用いて
インピーダンスメーター法により測定した。溶媒及びインクのそれぞれを電極間隔30μmに対向、並行平板のITO電極付きガラス基板で挟持した後、測定周波数1KHz,テ
スト信号電圧0.1V印加時の等価並列容量を測定し、下式による計算で比誘電率を決定し、評価した。
【0138】
比誘電率=等価並列容量×電極間隔/電極面積/真空の誘電率(ε
<中間体M−1の合成>
【0139】
【化22】

【0140】
2-エチル-1-ヘキサノール20g,トリエチルアミン 21ml,ジクロロメタン100mlを混合・冷却し、 4-ニトロベンゾイルクロリド25.5gを加えたのち、室温にて3時間攪拌した。
反応液をヘキサン-水で抽出し、得られた有機層を濃縮した後シリカゲルカラムクロマト
グラフィーで精製してエステル体37.8g を得た。
エステル体 36.3g、メタノール200ml、パラジウム-カーボン 0.57gを混合し、ヒドラ
ジン15.5g、メタノール10mlの混合溶液を滴下・攪拌した。反応液をろ過し、ろ液を濃縮したのち、得られた固体を水洗し、アミン体 31.4gを得た。
【0141】
アミン体 25.0g 、酢酸140ml、チオシアン酸ナトリウム33g を混合・冷却し、ブロミ
ン17.6g、酢酸20mlの混合溶液を滴下・攪拌した。反応液をろ過後、ろ液を酢酸エチルー水にて抽出し、得られた有機層を濃縮してM-1 20gを得た
<中間体M−2の合成>
【0142】
【化23】

【0143】
2-エチル-1-ヘキサノールの代わりにn-オクタノールを用いた以外はM−1と同様にし
てM−2を合成した。
<中間体M−3の合成>
【0144】
【化24】

【0145】
2-エチル-1-ヘキサノールの代わりに2-エチル-1-ブタノールを用いた以外はM−1と同様にしてM−3を合成した。
<中間体C−1の合成>
【0146】
【化25】

【0147】
3-アミノー4-メチル アセトアニリド5.0g、N,N−ジメチルホルムアミド 25ml、1−ブロモ−2−エチルヘキサン6.3g、炭酸カリウム 5.3gの混合物を120℃で9時間攪拌した
。放冷後、濾過し、濾液に水を加えトルエンで抽出した。
得られた有機層を濃縮した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して,モノア
ルキル体 4.0g を得た。
【0148】
モノアルキル体 3.8g、N−メチルピロリドン 20ml、ヨードエタン4.5g、炭酸カリウム
3.0gの混合物を70℃で8時間攪拌した。放冷後、濾過し、濾液に水を加えヘキサンで抽出した。
得られた有機層を濃縮した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、C−1 3.3g を得た。
<中間体C−2の合成>
【0149】
【化26】

【0150】
3-アミノ-4-メチルアセトアニリド3.5g、N,N−ジメチルホルムアミド 25ml、イソブチルヨージド10.1g、炭酸カリウム 7.0gの混合物を120℃で24時間攪拌した。放冷後、濾
過し、濾液に水を加えトルエンで抽出した。
得られた有機層を濃縮した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して C-2を2.7g を得た。
<中間体C−3の合成>
【0151】
【化27】

【0152】
3-アミノー4-メチルアセトアニリドのかわりに3-アミノアセトアニリドを用いた以外はC−1と同様にして、C−3を合成した。
<中間体C−4の合成>
【0153】
【化28】

【0154】
3-アミノー4-メチルアセトアニリドのかわりに3-メチルアニリンを用い、1−ブロモ−2−エチルヘキサンのかわりに1-ブロモオクタンを用いた以外はC−1と同様にして、
C−4を合成した。
<中間体C−5の合成>
【0155】
【化29】

【0156】
3-アミノー4-メチル アセトアニリドのかわりに3-メチルアニリンを用い、イソブチル
ヨージドのかわりに1-ブロモブタンを用いた以外はC−2と同様にして、C−5を合成
した。
<中間体C−6の合成>
【0157】
【化30】

【0158】
3-アミノ-4-メチルアセトアニリド を原料に、1−ブロモ−2−エチルヘキサンのかわりにイソブチルヨージドを用いた以外C−1と同様にしてC−6を合成した。
<中間体C−7の合成>
【0159】
【化31】

【0160】
3-アミノー4-メチル アセトアニリドのかわりに3-メチルアニリンを用いた以外はC−
2と同様にして、C−7を合成した。
<中間体C−8の合成>
【0161】
【化32】

【0162】
3-アミノー4-メチル アセトアニリドのかわりに2,5-ジメトキシアニリンを用い、イソブチルヨージドのかわりに1-ブロモブタンを用いた以外はC−2と同様にして、C−8
を合成した。
<中間体C−9の合成>
【0163】
【化33】

【0164】
3-アミノ-4-メチルアセトアニリドを原料に、イソブチルヨージドのかわりに1-ブロモヘキサンを用いた以外はC−2と同様にして、C−9を合成した。
<中間体C−10の合成>
【0165】
【化34】

【0166】
3-アミノー4-メチル アセトアニリドのかわりに2,5-ジメトキシアニリンを用い、イソブチルヨージドのかわりに1-ブロモペンタンを用いた以外はC−2と同様にして、C−
10を合成した。
<中間体C−11の合成>
【0167】
【化35】

【0168】
3-アミノー4-メチル アセトアニリドのかわりに3-アミノ-4-メトキシアセトアニリドを用いた以外はC−1と同様にして、C−11を合成した。
<中間体C−12の合成>
【0169】
【化36】

【0170】
3-アミノー4-メチル アセトアニリドのかわりに2,5-ジメトキシアニリンを用いた以外はC−1と同様にして、C−12を合成した。
【実施例1】
【0171】
<化合物1の合成>
【0172】
【化37】

【0173】
M−1 0.369 g、酢酸3ml、プロピオン酸1ml、44%ニトロシル硫酸0.5mlを混合、攪拌
してジアゾ液にした。別容器にC-1 0.44gとTHF10ml、適当量の酢酸ナトリウムを入れて氷浴した。その中にジアゾ溶液を滴下してカップリングさせた。反応液を酢酸エチル-水
にて抽出後、有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、化合物1 0.19g を得た。
【実施例2】
【0174】
<化合物2の合成>
M−1のかわりに2-アミノ-6-チオシアノベンゾチアゾールを用い、C−1のかわりに
C−7を用いた以外は、化合物1と同様の操作で化合物2を合成した。
【実施例3】
【0175】
<化合物3の合成>
M−1のかわりに2-アミノ-6-クロロベンゾチアゾールを用い、C−1のかわりにC−
3を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物3を合成した。
【実施例4】
【0176】
<化合物4の合成>
C−1のかわりにC−3を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物4を合成した。
【実施例5】
【0177】
<化合物5の合成>
M−1のかわりに2-アミノ-6-クロロベンゾチアゾールを用い、C−1のかわりにC−
4を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物5を合成した。
【実施例6】
【0178】
<化合物6の合成>
C−1のかわりにC−5を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物6を合成した。
【実施例7】
【0179】
<化合物7の合成>
C−1のかわりにC−6を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物7を合成した。
【実施例8】
【0180】
<化合物8の合成>
C−1のかわりにC−2を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物8を合成した。
【実施例9】
【0181】
<化合物9の合成>
M−1のかわりに2-アミノ-6-オクチルベンゾチアゾールを用い、C−1のかわりにC
−8を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物9を合成した。
【実施例10】
【0182】
<化合物10の合成>
C−1のかわりにC−9を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物10を合成した。
【実施例11】
【0183】
<化合物11の合成>
M−1のかわりにM−2を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物11を
合成した。
【実施例12】
【0184】
<化合物12の合成>
M−1のかわりに2-アミノ-6-オクチルベンゾチアゾールを用い、C−1のかわりにC
−10を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物12を合成した。
【実施例13】
【0185】
<化合物13の合成>
M−1のかわりにM−3を用い、C−1のかわりにC−5を用いた以外は、化合物1の
合成と同様の操作で化合物13を合成した。
【実施例14】
【0186】
<化合物14の合成>
M−1のかわりにM−3を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物14を
合成した。
【実施例15】
【0187】
<化合物15の合成>
M−1のかわりにM−3を用い、C−1のかわりにC−7を用いた以外は、化合物1の
合成と同様の操作で化合物15を合成した。
【実施例16】
【0188】
<化合物16の合成>
M−1のかわりに2-アミノ-6-クロロベンゾチアゾールを用い、C−1のかわりにC−
11を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物16を合成した。
【実施例17】
【0189】
<化合物17の合成>
M−1のかわりに2-アミノ-6-クロロベンゾチアゾールを用い、C−1のかわりにC−
12を用いた以外は、化合物1の合成と同様の操作で化合物17を合成した。
[比較例1]
<比較例化合物1の合成>
特開平01−136787号公報の化合物M−2を比較例化合物1として合成した。
【0190】
実施例1〜17及び比較例1で合成した各化合物を以下に示す。
【0191】
【化38】

【0192】
<試験結果>
化合物1〜17、比較例化合物1について、インクの溶媒としてn-デカン(比誘電率:2.04、沸点:174℃)を用い、溶解性試験を行った。また、溶液の色、吸収極大波長(λmax)、溶解度、及びεCの試験結果を表3にまとめた。
<吸収極大波長(λmax)の測定方法>化合物1〜17、比較例化合物1をそれぞれ秤量し、100mlメスフラスコを用いてn-デカンで希釈した溶液を石英セルにとり、日立分光光度計U−4100にてスペクトル測定を行った。
得られたスペクトルからλmaxの値を読み取った。
【0193】
<溶解性試験>
各化合物のn-デカンへの溶解性を次の通り測定した。n-デカンに各化合物をそれぞれ溶解残存分が生じるまで添加し、30度で30分間超音波処理をした。5℃で24時間放置後、超小型遠心機を用い、0.1ミクロンのフィルターで遠心濾過した(遠心力5200xg)。得られた飽和溶液を適当な濃度に希釈し、あらかじめ測定した吸光係数との関係から各化合物の溶解度を計算し、またモル吸光係数ε(Lmol−1cm−1)と飽和溶液の濃度C(molL−1)の積εCの値を求めた。
【0194】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明のインクおよびベンゾチアゾール系化合物は、ディスプレイ及び光シャッター用
に好適に用いることができ、特に例えば、電子ペーパーなどのエレクトロウェッティングディスプレイ、電気泳動法式ディスプレイとして特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定周波数1KHzにおける比誘電率が3以下であり、沸点が115℃以上である溶媒と、ベンゾチアゾール系化合物とを含むインクであって、該ベンゾチアゾール系化合物が、下記一般式(I):
【化1】

[一般式(I)中、
及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
Aは、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は−COOR基を示し、
は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
mは0〜4の整数を示し、mが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するAは同一でも
異なっていても良く、
A´は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基又は−NHCOR基を示し、
は、炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
nは0〜4の整数を示し、nが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するA´は同一で
も異なっていても良い]
で表されるインク。
【請求項2】
前記溶媒が、炭化水素系溶媒、シリコーンオイル、及びフルオロカーボン系溶媒から選ばれた少なくとも1つを含んでいる請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記ベンゾチアゾール系化合物が、該化合物をn−デカンに溶解させたとき、350〜750nm波長域における吸収極大波長が450〜600nmの範囲内にあり、吸収極大波長におけるモル吸光係数ε(Lmol−1cm−1)と室温(25℃)における同溶媒での飽和溶液の濃度C(molL−1)の積εCが500cm−1以上の値を示す化合物である請求項1または2に記載のインク。
【請求項4】
さらに、ヘテロ環化合物及びアントラキノン系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1つを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク。
【請求項5】
前記ヘテロ環化合物が下記一般式(II)、(III)及び(IV)の少なくとも1つを
含む請求項4に記載のインク。
【化2】

[一般式(II)中、
101は置換基を有していても良い炭素数が2〜10のアルキル基を示し、
102は置換基を有していても良い炭素数が3〜10のアルキル基を示し、
フェニレン基及びフェニル基は置換基を有していても良い。]
【化3】

[一般式(III)中、
201は水素原子または置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
202はシアノ基または−COOR209基を示し、
209は置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
203およびR204はそれぞれ独立に置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
205、R206、R207及びR208はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または−NHCOR210基を示し、
210は水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルコキシ基または炭素数6〜20のアリール基を示し、
は窒素原子または置換基を有していても良いメチン基を示し、
203とR204は互いに結合し環構造を形成していても良い]
【化4】

[一般式(IV)中、
301およびR302はそれぞれ独立に置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
Dは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基
、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基または−NHCOR305基を示し、
305は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基を示し、
eは1〜4の整数を示し、eが2以上の場合、1分子中に2以上存在するDは同一であって
も異なっていてもよく、
R303は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜
10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が6〜20のアリール基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基または−COOR306基を示し、
306は置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
304は置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、置換基を有していても良い炭素数が2〜20のアルコキシカルボニル基、アルデヒド基、R307OOC(NC)C=CH−基、NC(NC)C=CH−基または下記一般式(V)で示される基を示し、
【化5】

307は置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
D´は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基または−COOR308基を示し、
gは1〜5の整数を示し、gが2以上の場合、1分子中に2以上存在するD´は同一であ
っても異なっていてもよく、
308は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
は窒素原子、あるいは置換基として、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR309を有していても良いメチン基を示し、
309は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基を示す]
【請求項6】
前記アントラキノン系化合物が下記一般式(IV)で表される化合物である、請求項4又は5に記載のインク。
【化6】

[一般式(VI)中、
Lは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良
い炭素数が1〜20のアルキルスルファニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニ
トロ基、−COOR401基、−NHR402基又は−NHCOR403基を示し、
401は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
402は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20アルコキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
403は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
tは1〜4の整数を示し、tが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するLは同一であ
っても異なっていてもよく、
L´は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキルスルファニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、
ニトロ基、−COOR404基、−NHR405基又は−NHCOR406基を示し、
404は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
405は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
406は、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
qは1〜4の整数を示し、qが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するL´は同一で
あっても異なっていてもよい。]
【請求項7】
ディスプレイ用又は光シャッター用である請求項1〜7のいずれか1項に記載のインク。
【請求項8】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクを含む表示部位を有し、表示部位の電圧印加を制御することで画像を表示するディスプレイ。
【請求項9】
前記表示部位が、電気泳動粒子又は水性媒体を含む請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項10】
電圧印加によって着色状態を変化させることにより画像を表示する請求項9又は10に記載のディスプレイ。
【請求項11】
エレクトロウェッティング方式又は電気泳動方式により画像を表示する請求項9〜11のいずれか1項に記載のディスプレイ。
【請求項12】
請求項9〜12のいずれか1項に記載のディスプレイを有する電子ペーパー。
【請求項13】
測定周波数1KHzにおける比誘電率が3以下であり、沸点が115℃以上である溶媒を少なくとも含むインクに用いられる化合物であって、該化合物が、下記一般式(VII)で表される化合物。
【化7】

[一般式(VII)中、
及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル
基又は置換基を有していてもよい炭素数が6〜20のアリール基を示し、
Aは、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していても良い炭素数が1〜20のアルキル基又は−COOR基を示し、
は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、
mは0〜4の整数を示し、mが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するAは同一でも
異なっていても良く、
A´は、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数が1〜10のアルコキシ基又は−NHCOR基を示し、
は、炭素数が1〜10のアルキル基を示し、
nは0〜4の整数を示し、nが2以上の場合は、1分子中に2以上存在するA´は同一で
も異なっていても良い]

【公開番号】特開2013−95878(P2013−95878A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241571(P2011−241571)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】