説明

ベンゾチオフェンヒドロキサム酸誘導体

本発明は、ヒドロキサム酸誘導体の新規類に関する。このヒドロキサム酸化合物は、癌の治療に使用できる。このヒドロキサム酸化合物はまた、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することができ、腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスの選択的誘導、それによるこのような細胞の増殖阻害への使用に適している。したがって、本発明の化合物は、腫瘍細胞増殖を特徴とする腫瘍を有する患者の治療に有用である。本発明の化合物はまた、TRX媒介疾患、例えば、自己免疫疾患、アレルギー性疾患及び炎症性疾患の予防及び治療、ならびに中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の予防及び/又は治療治療に有用である。本発明はさらに、ヒドロキサム酸誘導体を含む医薬組成物、及び実行しやすく、インビボにおいて治療有効量のヒドロキサム酸誘導体を生じるこれらの医薬組成物の安全な投与計画を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキサム酸誘導体の新規類に関する。このヒドロキサム酸化合物は、癌の治療に有用であり得る。このヒドロキサム酸化合物はまた、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することができ、腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスの選択的誘導、それによるこのような細胞の増殖阻害への使用に適している。したがって、本発明の化合物は、腫瘍細胞増殖を特徴とする腫瘍を有する患者の治療に有用である。本発明の化合物はまた、TRX媒介疾患、例えば自己免疫疾患、アレルギー疾患及び炎症性疾患の予防及び治療ならびに中枢神経系(CNS)の疾患、例えば神経変性疾患の予防及び/又は治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキサム酸部分を有する化合物は、有用な生物学的活性を有することが示されてきた。例えば、ヒドロキサム酸部分を有する多くのペプチジル化合物は、亜鉛エンドペプチダーゼのファミリーであるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害することが知られている。このMMPは、生理学的組織及び病理学的組織両方の分解において重要な役割を果たす。したがって、MMPの作用を阻害する能力を有するペプチジル化合物は、組織分解及び炎症に関与する状態の治療又は予防に有用性を示す。さらに、ヒドロキサム酸部分を有する化合物は、少なくとも部分的にはヒドロキサム酸基の亜鉛結合特性に基づいて、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害することが示された。
【0003】
HDACの阻害は、腫瘍抑制に関与する遺伝子の発現を含めた、遺伝子発現を抑制することができる。ヒストン脱アセチル化酵素の阻害は、腫瘍抑制遺伝子のヒストン脱アセチル化酵素媒介転写抑制を誘導することができる。例えば、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害は、癌、血球新生などの血液疾患、遺伝子関連代謝疾患の治療方法をもたらすことができる。さらに具体的に、転写調節は、細胞分化、増殖及びアポトーシスにおける主要な事象である。ヒストンアセチル化及び脱アセチル化は、細胞において転写調節が実行される機構であるという証拠がいくつかある(Grunstein,M.、Nature、389:349〜52(1997))。これらの作用は、ヌクレオソーム中のコイルDNAに対するヒストンタンパク質の親和性が改変されて、クロマチン構造が変化することによって生じるものと考えられている。同定されているヒストンは5種類である。ヒストンH2A、H2B、H3及びH4はヌクレオソームで発見されており、H1はヌクレオソーム間に位置するリンカーである。それぞれのヌクレオソームは、コア内に、各ヒストン種のうちの、ヌクレオソーム構造の外部に単独で存在するH1を除く2種を含有する。ヒストンタンパク質のアセチル化が低いとき、DNAリン酸主鎖に対するヒストンの親和性が高いと考えられる。この親和性によって、DNAがヒストンにしっかり結合するようになり、DNAは転写制御因子及び機構に近づくことができなくなる。
【0004】
アセチル化状態の調節は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)との2種類の酵素複合体の間の活性のバランスによって生じる。低アセチル化状態は、会合しているDNAの転写を阻害すると考えられる。この低アセチル化状態は、HDAC酵素を含む大きな多タンパク質複合体によって触媒される。特に、HDACは、クロマチンコアヒストンからのアセチル基の除去を触媒することが示された。
【0005】
HAT又はHDACの活性の破壊が、悪性表現型の発症に関係するいくつかの例が示された。例えば、急性前骨髄球性白血病では、PML及びRARアルファの融合によって生じた癌タンパク質が、HDACの動員によって特定の遺伝子転写を抑制するようである(Lin,R.J.他、Nature 391:811〜14(1998))。こうして、腫瘍細胞は分化を完了することができず、白血病細胞系の過剰な増殖を誘導する。
【0006】
内容を本明細書に参照により組み込む米国特許第5369108号、第5932616号、第5700811号、第6087367号及び第6511990号は、腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止又はアポトーシスの選択的誘導に有用なヒドロキサム酸誘導体を開示している。これらのヒドロキサム酸誘導体は、抗腫瘍薬としての生物学的活性に加えて、多種多様なチオレドキシン(TRX)媒介疾患及び状態、例えば炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、酸化ストレスを伴う疾患又は細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療又は予防に有用であることが最近確認された(参照により全体の内容を本明細書に組み込む2003年2月25日出願の米国特許出願第10/369094号)。さらに、これらのヒドロキサム酸誘導体は、神経変性疾患などの中枢神経系(CNS)の疾患の治療及び脳癌の治療に有用であることが確認された(参照により全体の内容を本明細書に組み込む2002年10月16日出願の米国特許出願第10/273401号を参照のこと。)。
【0007】
前記で参照した米国特許に開示されている化合物スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのヒドロキサム酸によるHDACの阻害は、X線結晶研究によって示されたように、この酵素の触媒部分との直接相互作用によって生じると考えられる(Finnin,M.S.他、Nature 401:188〜193(1999))。HDAC阻害の結果は、ゲノムに全体的な作用を有するのではなく、ゲノムの小サブセットにのみ影響を及ぼすと考えられる(Van Lint,C.他、Gene Expression 5:245〜53(1996))。HDAC阻害剤を使用して培養した悪性細胞系を使用したDNAマイクロアレイによってもたらされた証拠は、生成物が改変されている遺伝子の数は限定されている(1〜2%)ことを示している。例えば、HDAC阻害剤を使用して培養して処理された細胞は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21の誘導と一致していることが示されている(Archer,S.Shufen,M.Shei,A.,Hodin,R.PNAS 95:6791〜96(1998))。このタンパク質は、細胞周期停止に重要な役割を果たす。HDAC阻害剤は、p21遺伝子領域のヒストンの過アセチル化状態を拡大させ、p21の転写速度を増加させ、それによって遺伝子が転写機構に接近しやすくなるようにしているものと考えられる。発現がHDAC阻害剤によって影響を受けない遺伝子は、領域に伴われているヒストンのアセチル化における変化を示さない(Dressel,U.他、Anticancer Research 20(2A):1017〜22(2000))。
【0008】
さらに、SAHAなどのヒドロキサム酸誘導体は、腫瘍細胞の増殖停止、分化及び/又はアポトーシスを誘導する能力を備えている(Richon他、Proc.Natl.Acad.ScL USA、93:5705〜5708(1996))。これらの化合物は、動物における腫瘍増殖阻害に有効な用量で毒性を有さないと思われるので、腫瘍細胞が悪性になるために備わった固有の機構を標的とする(Cohen,L.A.他、Anticancer Research 79:4999〜5006(1999))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヒドロキサム酸部分を含有する化合物の多種多様な適用を考慮すると、改善された特性、例えば、潜在能力が高まっている又は生物学的利用率が増大した新規ヒドロキサム酸誘導体の開発が非常に望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本発明は、ヒドロキサム酸誘導体の新規類に関する。このヒドロキサム酸化合物は、癌の治療に使用できる。このヒドロキサム酸化合物はまた、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することができ、腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスの選択的誘導、それによるこのような細胞の増殖阻害への使用に適している。したがって、本発明の化合物は、腫瘍細胞増殖を特徴とする腫瘍を有する患者の治療に有用である。本発明の化合物はまた、TRX媒介疾患、例えば自己免疫疾患、アレルギー性疾患及び炎症性疾患の予防及び治療、ならびに中枢神経系(CNS)の疾患、例えば神経変性疾患の予防及び/又は治療治療に有用である。本発明はさらに、ヒドロキサム酸誘導体を含む医薬組成物及びインビボにおいて治療有効量のヒドロキサム酸誘導体を生じるこれらの医薬組成物の安全な従いやすい投与計画を提供する。
【0011】
ある種のヒドロキサム酸誘導体がヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤として改善された活性を示すことが、意外にも発見された。
【0012】
したがって、本発明は、ここに詳述するように、式Iによって表される化合物及びこれらの薬学的に許容される塩、溶媒和化合物若しくは水和物に関する。
【0013】
【化11】

【0014】
本発明の前記及びその他の目的、特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかとなる。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、ベンゾチオフェン又はチオフェン主鎖を有するヒドロキサム酸誘導体の新規類に関する。一実施形態では、このヒドロキサム酸誘導体は、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することができ、腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスの選択的誘導、それによるこのような細胞の増殖阻害への使用に適している。したがって、本発明の化合物は対象における癌の治療に有用である。本発明の化合物はまた、TRX媒介疾患、例えば、自己免疫疾患、アレルギー性疾患及び炎症性疾患の予防及び治療、ならびに中枢神経系(CNS)の疾患、例えば神経変性疾患の予防及び/又は治療治療に有用である。
【0016】
ある種のヒドロキサム酸誘導体がヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤として改善された活性を示すことが、意外にもおよび驚くべきことに発見された。
【0017】
化合物
本発明は、式Iによって表される化合物、すなわち、ヒドロキサム酸誘導体及び/又はこれらの立体異性体(エナンチオマーを含む)、ラセミ体、この薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、水和物又は多形体に関する。
【0018】
【化12】

Aは、
【0019】
【化13】

から選択され、RからR16及びR27は互いに独立して、水素であり又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルケニル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルであり、又はR及びR、R及びR、R11及びR12の一対またはそれ以上は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
17は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、ヒドロキシル又は−NR1819から独立して選択され、
18及びR19は、水素、非置換の又は置換されたC〜C10アルキル、非置換の又は置換されたアリール、非置換の又は置換されたヘテロシクリル、非置換の又は置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換又は置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換又は置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、−C(=O)R25、−C(=O)OR25、−C(=O)N(R26、−SO25から独立して選択され、又はR18及びR19は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
20は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択され、
21及びR26は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
22は非置換の若しくは置換されたヘテロシクリルであり、
23及びR24は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、ヒドロキシル又は−NR1819から独立して選択されており、R23及びR24は両方が水素であることはできず、R23及びR24は両方が−NR1819であることはできず、又はR23及びR24は両方がヒドロキシルであることはできず、
25は、非置換の若しくは置換C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択され、
m、p及びqは互いに独立して1又は2であり、
n及びrは互い独立して0、1又は2であり、
又はこの立体異性体、エナンチオマー、ラセミ体、薬学的に許容される塩、溶媒化和化合物、水和物若しくは多形体である。
【0020】
一実施形態では、R22は、非置換の又は置換されたイミダゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピロリル及びトリアゾリルから選択される。一実施形態では、R22は、非置換の又は置換されたトリアゾリルあるいはオキサジアゾリルから選択される。
【0021】
一実施形態では、R17は独立して、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル又は−NR1819から選択される。
【0022】
一実施形態では、R20は独立して、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから選択される。
【0023】
一実施形態では、R23及びR24は独立して、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル又は−NR1819から選択され、R23及びR24は両方が水素であること及び両方が−NR1819であることができない。
【0024】
一実施形態では、R25はアリール又はC〜C10アルキルである。
【0025】
本発明はさらに、Aが以下の群から選択される式Iの化合物に関する。
【0026】
【化14】

ここにおいて、R、R及びR〜R16は互いに独立して、水素であり又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルであり、又はR及びR、R及びR、R11及びR12の一対またはそれ以上は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
17は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルヘテロシクリル又は−NR1819から独立して選択され、
18及びR19は、水素、非置換の又は置換されたC〜C10アルキル、非置換の又は置換されたアリール、非置換の又は置換されたヘテロシクリル、非置換の又は置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルヘテロシクリル、非置換の又は置換された−C(=O)Cアリール、非置換の又は置換された−C(=O)C〜C10アルキルアリール、非置換の又は置換された−C(=O)C〜C10アルキルから独立して選択され、又はR18及びR19は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
20は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
23及びR24は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル又は−NR1819から独立して選択されて、R23及びR24は両方が水素であること又は両方が−NR1819であることはできず、
m、p及びqは互いに独立して1であり、
n及びrは互い独立して0又は1である。
【0027】
一実施形態では、n=0及び/又はr=0である。他の実施形態では、R27は水素である。
【0028】
具体的な実施形態では、R、R及びRからR16の一つまたはそれ以上は、置換されており又は置換されていなく、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)、メチル、エチル、ピロリル、イソピロリル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルから選択される。
【0029】
本発明はさらに、Aが、
【0030】
【化15】

から選択され、他の置換基が全て式Iで前述した通りである、式Iによって表される化合物に関する。一実施形態では、n=0及び/又はr=0である。一実施形態では、R27は水素である。一実施形態では、m、p及びqが互いに独立して1である。具体的な実施形態では、R、R、R、R、R、R及びR11からR16の一つ又はそれ以上が、置換されており又は置換されていなく、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)、メチル、エチル、ピロリル、イソピロリル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルから選択される。
【0031】
本発明はさらに、Aが、
【0032】
【化16】

から選択され、他の置換基は全て式Iで前述した通りである、式Iによって表される化合物に関する。一実施形態では、n=0である。他の実施形態では、R27が水素である。一実施形態では、m=1である。具体的な実施形態では、R、R、R、R11及びR12の一つまたはそれ以上が、非置換であり又は置換されており、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)、メチル、エチル、ピロリル、イソピロリル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルから選択される。
【0033】
式Iの他の実施形態では、Aが、
【0034】
【化17】

(式中、R及びR20は式Iで前述した通りである。)である。具体的な実施形態では、Rが非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルであり、R20が非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択される。一実施形態では、Rは、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルである。
【0035】
式Iの他の実施形態では、Aが、
【0036】
【化18】

(式中、R11、R12、R23及びR20は式Iで前述した通りである。)である。具体的な実施形態では、mが1であり、R11及びR12の少なくとも1個が、置換されており又は置換されていなく、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルから選択され、R23及びR24が独立して、水素、C〜Cアルキル及び−NR1819から選択され、R23及びR24は両方が水素であること又は両方が−NR1819であることはできない。一実施形態では、R11が水素であり、R12が置換されたフェニルである。具体的な実施形態では、このフェニルはメトキシ基で置換されている。一実施形態では、R23が水素であり、R24が−NR1819である。一実施形態では、R18が水素であり、R19が置換されている又は置換されていないC〜C10アルキルアリールである。一実施形態では、R18が水素であり、R19が置換されている又は置換されていないC〜Cシクロアルキルである。
【0037】
式Iの他の実施形態では、Aが、
【0038】
【化19】

(式中、R、R及びR20は式Iで前述した通りである。)である、具体的な実施形態では、R及びRの少なくとも1個が、非置換であり又は置換されており、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−シクロヘキシル、−CH−ピリジル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、−CHCH−インドリル、ピリジル、−CH(Ph)、メチル、エチル、ピロリル、イソピロリル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルから選択される。具体的な実施形態では、R20がC〜Cアルキルである。
【0039】
式Iの一実施形態では、R及びR、R及びRならびにR11及びR12が、これらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素含有複素環を形成する。前記複素環は、単環であり得、又は融合2環もしくは3環であり得る。さらに、前記複素環は、窒素に加えて、1個又はそれ以上のヘテロ原子、例えば、O、S、N及びPを含むことができる。
【0040】
本発明はさらに、式IIによって表される化合物、すなわち、ヒドロキサム酸誘導体及び/又はこの立体異性体(エナンチオマーを含む)、ラセミ体、薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、水和物若しくは多形体に関する。
【0041】
【化20】

(式中、A及びAの1つは水素であり、他方は、
【0042】
【化21】

から選択される基であり、
からR16及びR27は互いに独立して、水素又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルケニル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルであり、又はR及びR、R及びRならびにR11及びR12の一対またはそれ以上は、これらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
17は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、ヒドロキシル又は−NR1819から独立して選択され、
18及びR19は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、−C(=O)R25、−C(=O)OR25、−C(=O)N(R26、−SO25から独立して選択され、又はR18及びR19は、これらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
20は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキルあるいは非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
21及びR26は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
22は非置換の又は置換されたヘテロシクリルであり、
23及びR24は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、ヒドロキシル又は−NR1819から独立して選択されており、R23及びR24は両方が水素であることはできず、R23及びR24は両方が−NR1819であることはできず、又はR23及びR24は両方がヒドロキシルであることはできず、
25は、非置換の若しくは置換されたC10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
m、p及びqは互いに独立して1又は2であり、
n及びrは互い独立して0、1又は2である。)
又はこの立体異性体、エナンチオマー、ラセミ体、薬学的に許容される塩、溶媒化和化合物、水和物若しくは多形体に関する。
【0043】
本発明はまた、A及びAの1つが式IのAで説明した実施形態を有する式IIの化合物を包含する。一実施形態では、Aは水素である。
【0044】
式Iのヒドロキサム酸誘導体の非限定的例を示す具体的な実施形態を、以下の実験の項の表に挙げる。
【0045】
本発明の化合物の具体例には、
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]−2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
6−{1−(ベンジルアミノ)−2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソ−[(2−フェニルエチル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
6−{1−(シクロヘキシルアミノ)−2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{(1R又はS)−1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−(2−アミノフェニル)−6−(1−{[2−(4−ブロモフェニル)エチル]アミノ}エチル)−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−[1−(イソブチルアミノ)エチル]−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
6−(1−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}エチル)−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]プロピル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]ブチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
又はこの薬学的に許容される塩又は立体異性体が含まれる。
【0046】
化学的定義
本明細書では、「アルキル」とは、特定された数の炭素原子を有する分枝鎖及び直鎖の両方の飽和脂肪族炭水化物基を含むものとする。例えば、「C〜C10アルキル」におけるC〜C10は、直鎖又は分枝鎖の配置の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有する基を含むことが定義される。例えば、「C〜C10アルキル」は具体的に、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどを含む。「シクロアルキル」という用語は、特定された数の炭素原子を有する単環飽和脂肪族炭水化物基を意味する。例えば、「シクロアルキル」には、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。本発明の一実施形態では、「シクロアルキル」という用語には、直前で記載した基が含まれ、単環不飽和脂肪族炭水化物基がさらに含まれる。例えば、この実施形態で定義する「シクロアルキル」には、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロブテニルなどが含まれる。一実施形態では、炭素原子の数が明記されていなければ、「アルキル」はC〜C12アルキルを意味し、他の実施形態では、「アルキル」はC〜Cアルキルを意味する。一実施形態では、炭素原子の数が明記されていなければ、「シクロアルキル」はC〜C10シクロアルキルを意味し、他の実施形態では、「シクロアルキル」はC〜Cシクロアルキルを意味する。一実施形態では、「アルキル」の例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル及びi−ブチルが含まれる。
【0047】
「アルキレン」という用語は、特定された数の炭素原子を有する炭水化物ジラジカル基を意味する。例えば、「アルキレン」には、−CH−、−CHCH−などが含まれる。一実施形態では、炭素原子の数が明記されていなければ、「アルキレン」はC〜C12アルキレンを意味し、他の実施形態では、「アルキレン」はC〜Cアルキレンを意味する。
【0048】
「アルキルアリール」、「アルキルシクロアルキル」及び「アルキルへテロシクリル」という語句で使用されるとき、「アルキル」とは該当の部分のアルキル部分を意味し、該当部分のアリール及びヘテロアリール部分の原子数は表さない。一実施形態では、炭素原子の数が明記されていなければ、「アルキルアリール」、「アルキルシクロアルキル」及び「アルキルへテロシクリル」の「アルキル」はC〜C12アルキルを意味し、他の実施形態では、「アラルキル」はC〜Cアルキルを意味する。
【0049】
炭素原子の数が明記されていなければ、用語「アルケニル」は、炭素原子2個から10個を有し及び炭素二重結合少なくとも1個を含有する直鎖、分枝鎖又は環状の非芳香族炭水化物ラジカルを意味する。炭素−炭素2重結合が1個存在することが好ましく、非芳香族炭素−炭素2重結合が4個まで存在できる。したがって、「C〜Cアルケニル」は、炭素原子2個から6個を有するアルケニルラジカルを意味する。アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニル及びシクロヘキセニルが含まれる。アルケニル基の直鎖、分枝鎖又は環状部分は、2重結合を含有することができ、置換アルケニル基が指示されているならば、置換されていてよい。
【0050】
用語「アルキニル」は、炭素原子2個から10個を有し及び炭素3重結合少なくとも1個を含有する直鎖、分枝鎖又は環状の炭水化物ラジカルを意味する。炭素−炭素3重結合は3個まで存在できる。したがって、「C〜Cアルキニル」は、炭素原子2個から6個を有するアルキニルラジカルを意味する。アルキニル基には、エチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニルなどが含まれる。アルキニル基の直鎖、分枝鎖又は環状部分は、3重結合を含有することができ、置換アルキニル基が指示されているならば、置換されていてよい。
【0051】
ある場合には、(C〜C)アルキレン−アリールなどの0を含む炭素範囲で置換基が定義されることがある。アリールがフェニルである場合、この定義は、フェニル自身及び−CHPh、−CHCHPh、CH(CH)CHCH(CH)Phなどが含まれる。
【0052】
1実施形態では、ここで使用した「アリール」とは、少なくとも1個の環が芳香族であり、それぞれの環の原子が7個までである安定な任意の単環又は2環炭素環を意味するものとする。このようなアリール要素の例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル及びビフェニルが含まれる。アリール置換基が2環で1個の環が非芳香族の場合、結合は芳香族環を介するものと考えられる。
【0053】
他の実施形態では、「アリール」は炭素原子5個から14個の芳香族環であり、インダンなどの5又は6員シクロアルキル基と融合した炭素環芳香族基を含む。炭素環芳香族基の例には、限定はしないが、フェニル、ナフチル、例えば、1−ナフチル及び2−ナフチル;アントラセニル、例えば1−アントラセニル、2−アントラセニル;フェナントレニル;フルオレノニル、例えば9−フルオレノニル、インダニルなどが含まれる。炭素環芳香族基は、以下に記載するように、置換基の指示された数で場合によって置換されている。
【0054】
本明細書では、ヘテロアリールという用語は、少なくとも1個の環が芳香族であり、O、N及びSからなる群から選択された1個から4個のヘテロ原子を含有する、各環の原子が7個までの安定な単環又は2環を表す。他の実施形態では、ヘテロアリールという用語は、炭素及びO、N又はSから選択された1個から4個のヘテロ原子の、環原子5個から14個の単環、2環又は3環芳香族環を意味する。この定義の範囲内のヘテロアリール基には、限定はしないが、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが含まれる。以下の複素環の定義のように、「ヘテロアリール」はまた、任意の窒素含有ヘテロアリールのNオキシド誘導体を含むものと理解される。ヘテロアリール置換基が2環で1個の環が非芳香族であるか、ヘテロ原子を含まない場合、結合はそれぞれ、芳香族環又はヘテロ原子を含有する環を介するものと考えられる。
【0055】
他の実施形態では、「ヘテロアリール」は、炭素及びO、N又はSから選択された1個から4個のヘテロ原子の、環原子5個から14個の単環、2環又は3環芳香族環である。ヘテロアリールの例には、限定はしないが、ピリジル、例えば2−ピリジル(α−ピリジルとも称する)、3−ピリジル(β−ピリジルとも称する)及び4−ピリジル((γ−ピリジルとも称する);チエニル、例えば2−チエニル及び3−チエニル;フラニル、例えば2−フラニル及び3−フラニル;ピリミジル、例えば2−ピリミジル及び4−ピリミジル;イミダゾリル、例えば2−イミダゾリル;ピラニル、例えば2−ピラニル及び3−ピラニル;ピラゾリル、例えば4−ピラゾリル及び5−ピラゾリル;チアゾリル、例えば2−チアゾリル、4−チアゾリル及び5−チアゾリル;チアジアゾリル;イソチアゾリル;オキサゾリル、例えば2−オキサゾイル、4−オキサゾイル及び5−オキサゾイル;イソキサゾイル;ピロリル;ピリダジニル;ピラジニルなどが含まれる。前記で定義した複素環芳香族(又は、ヘテロアリール)は、芳香族基について以下で定義するように、置換基の指示された数で場合によって置換されていてよい。
【0056】
一実施形態では、「ヘテロアリール」にはまた、1個又はそれ以上の他のヘテロアリール又は非芳香族複素環と融合したヘテロアリールである「融合多環式芳香族」が含まれる。例には、キノリニル及びイソキノリニル、例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル、5−キノリニル、6−キノリニル、7−キノリニル及び8−キノリニル、1−イソキノリニル、3−キノリニル、4−イソキノリニル、5−イソキノリニル、6−イソキノリニル、7−イソキノリニル及び8−イソキノリニル;ベンゾフラニル、例えば、2−ベンゾフラニル及び3−ベンゾフラニル;ジベンゾフラニル、例えば、2,3−ジヒドロベンゾフラニル;ジベンゾチオフェニル;ベンゾチエニル、例えば、2−ベンゾチエニル及び3−ベンゾチエニル;インドリル、例えば、2−インドリル及び3−インドリル;ベンゾチアゾリル、例えば、2−ベンゾチアゾリル;ベンゾオキサゾリル、例えば、2−ベンゾオキサゾリル;ベンズイミダゾリル、例えば、2−ベンゾイミダゾリル;イソインドリル、例えば、1−イソインドリル及び3−イソインドリル;ベンゾトリアゾリル;プリニル、チアナフテニル、ピラジニルなどが含まれる。融合多環式芳香族環系は、ここで説明したように、置換基の指示された数で場合によって置換されていてよい。
【0057】
本明細書では、「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、O、N及びSからなる群から選択された1から4個のヘテロ原子を含有する3から10員の芳香族又は非芳香族複素環を意味するものとし、ニ式基環を含む。したがって、「ヘテロシクリル」には、前記のヘテロアリール及びそれらのジヒドロ及びテトラヒドロ類縁体が含まれる。「ヘテロシクリル」の他の例には、以下に限定はしないが、アゼチジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロチエニル及びこれらのN−オキシドが含まれる。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子又はヘテロ原子を介して生じることができる。
【0058】
一実施形態では、「複素環」(本明細書では「ヘテロシクリル」とも称する)とは、炭素及びO、N、S又はPから選択された1個から4個のヘテロ原子の、環原子5個から14個の単環、2環又は3環の飽和又は不飽和環である。複素環の例には、限定はしないが、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、ピペラジニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロドロピラニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロピラジニル、テトラヒドロピラジニル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジルなどが含まれる。
【0059】
「アルキルアリール基」」(アリールアルキル)は、芳香族基、好ましくはフェニル基で置換されたアルキル基である。好ましいアルキルアリール基は、ベンジル基である。適切な芳香族基を本明細書で説明し、適切なアルキル基を本明細書で説明する。アルキルアリール基に適した置換基を本明細書で説明する。
【0060】
「アルキルへテロシクリル」基」は、ヘテロシクリル基で置換されたアルキル基である。適切なヘテロシクリル基を本明細書で説明し、適切なアルキル基を本明細書で説明する。アルキルヘテロシクリル基に適した置換基を本明細書で説明する。
【0061】
「アルキルシクロアルキル基」は、シクロアルキル基で置換されたアルキル基である。適切なシクロアルキル基を本明細書で説明し、適切なアルキル基を本明細書で説明する。アルキルシクロアルキル基に適した置換基を本明細書で説明する。
【0062】
「アリールオキシ基」は、酸素を介して化合物に結合した任意のアリール基である(例えば、フェノキシ)。
【0063】
本明細書では、「アルコキシ基」(アルキルオキシ)は、酸素原子を介して化合物に連結した直鎖又は分枝鎖C〜C12又は環状C〜C12アルキル基である。アルコキシ基の例には、限定はしないが、メトキシ、エトキシ及びプロポキシが含まれる。
【0064】
「アリールアルコキシ基」(アリールアルキルオキシ)は、アリールアルキルのアルキル部分の酸素を介して化合物に結合したアリールアルキル基である(例えば、フェニルメトキシ)。
【0065】
本明細書では、「アリールアミノ基」は、窒素を介して化合物に結合したアリール基である。
【0066】
本明細書では、「アリールアルキルアミノ基」は、アリールアルキルのアルキル部分の窒素を介して化合物に結合したアリールアルキル基である。
【0067】
本明細書では、多くの部分又は基が、「非置換の又は置換された」と記載されている。部分が置換されていると記載されているとき、置換に使用可能であることが当業者に公知である部分の任意の一部が置換されることができることを意味する。「1個又はそれ以上の置換基で場合によって置換されている」という語句は、1実施形態では、「0個から5個の置換基」を意味し、その他の実施形態では、1個の置換基、2個の置換基、3個の置換基、4個の置換基又は5個の置換基を意味する。例えば、置換可能な基は、水素以外の基(すなわち置換基)で置換された水素原子であることができる。複数の置換基が存在できる。複数の置換基が存在するとき、この置換基は同一であり、又は異なっていることができ、置換は置換可能な部位のいずれかにあることができる。置換のこのような手段は、当業界では周知である。例示のために、本発明の範囲を限定することは企図しない、置換基である基のいくつかの例は、アルキル基(1個又はそれ以上の置換基で置換されることもできる。)、アルコキシ基(置換されることができる。)、ハロゲン又はハロ基(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−COH、−COOH、アミノ、アジド、N−アルキルアミノ又はN,N−ジアルキルアミノ(このアルキル基は置換されることができる。)、N−アリールアミノ又はN,N−ジアリールアミノ(このアリール基は置換されることができる。)、エステル(−C(O)−OR、Rは、置換されることが可能なアルキル、アリールなどの基であることができる。)、ウレア(−NHC(O)−NHR、Rは置換されることが可能なアルキル、アリールなどの基であることができる。)、カルバマート(−NHC(O)−OR、Rは置換されることが可能なアルキル、アリールなどの基であることができる。)、スルホンアミド(−NHS(O)R(Rは置換されることが可能なアルキル、アリールなどの基であることができる。)、アリール(置換されることが可能である。)、シクロアルキル(置換されることが可能である。)、アルキルアリール(置換されることが可能である。)、アルキルへテロシクリル(置換されることが可能である。)、アルキルシクロアルキル(置換されることが可能である。)及びアリールオキシである。
【0068】
立体化学
多くの有機化合物は、平面偏光の面を回転させる能力を有する光学活性型で存在する。光学活性化合物の記述における、前に付けたDおよひL又はR及びSは、不斉中心の周りの分子の絶対配置を表すために使用されている。前に付けたd及びl又は(+)及び(−)は、化合物による平面偏光の回転の印を表すために使用されており、(−)はその化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdを前に付けた化合物は、右旋性である。所与の化学構造では、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、互いに重ね合わせることができない鏡像であること以外は同一である。特定の立体異性体はまた、エナンチオマーと呼ぶことができ、このような異性体の混合物は、エナンチオマー混合物と呼ばれることが多い。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物と呼ばれる。本明細書で記載した化合物の多くは、1個又はそれ以上の不斉中心を有することができ、したがって、異なるエナンチオマー型で存在することができる。所望するならば、不斉炭素は、アスタリスク(*)で示すことができる。本発明の式において不斉炭素に対する結合が直線で示されるとき、不斉炭素の(R)及び(S)配置の両方、したがって両方のエナンチオマー及びそれらの混合物が式内に包含される。当業界で使用されるように、不斉炭素の周りの絶対配置を明記することを所望するとき、不斉炭素に対する結合の1個は楔型(平面の上の原子への結合)で示すことができ、他は短い一連の平行線又は楔(平面の下の原子への結合)で示すことができる。Cahn−Ingold−Prelogシステムは、不斉炭素に対する(R)又は(S)配置を割り当てるために使用することができる。
【0069】
本発明のHDAC阻害剤が不斉中心1個を含有するとき、この化合物は2個のエナンチオマー型で存在し、本発明には、両方のエナンチオマー及びエナンチオマーの混合物、例えば、ラセミ混合物と呼ばれる特定の50:50混合物が含まれる。エナンチオマーは、当業界で公知の方法、例えば、結晶化などによって分離可能なジアステレオ異性体塩の形成(「CRC Handbook of Optical Resolution via Diastereomeric Salt Formation by David Kozma(CRC Press、2001)参照)、結晶化、ガス−液体又は液体クロマトグラフィーなどによって分離可能なジアステレオ異性体誘導体又は複合体の形成、1個のエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、例えば酵素的エステル化、あるいはキラル環境、例えばキラルリガンドが結合したシリカなどのキラル支持体上又はキラル溶媒存在下においてのガス−液体又は液体クロマトグラフィーによって分離することができる。所望するエナンチオマーが前述の分離方法の1つによって他の化学実体に変換される場合、所望するエナンチオマー型を遊離させるために他のステップが必要であることを理解されたい。あるいは、特定のエナンチオマーは、光学活性試薬、基質、触媒又は溶媒を使用する非対称合成、あるいは非対称変換による1個のエナンチオマーの他への変換によって、合成することができる。
【0070】
本発明の化合物の不斉炭素における特定の絶対配置を指定は、指定されたエナンチオマー型の化合物がエナンチオマーとして過剰であること(ee)、言い換えると他のエナンチオマーを実質的に含まないことを意味すると理解される。例えば、「R型」の化合物は「S型」の化合物を実質的に含まず、したがって「S」型のエナンチオマー過剰である。逆に、「S型」の化合物は「R型」の化合物を実質的に含まず、したがって「R」型のエナンチオマー過剰である。本明細書において、エナンチオマー過剰とは、特定のエナンチオマーが50%を上回って存在することである。特定の絶対配置が指定されている特定の実施形態では、示された化合物のエナンチオマー過剰率は少なくとも約90%である。
【0071】
本発明の化合物が2個以上の不斉炭素を有するとき、2個以上の光学異性体を有することができ、ジアステレオ異性体型で存在することができる。例えば、2個の不斉炭素があるとき、その化合物は4個までの光学異性体及び2対のエナンチオマー((S,S)/(R,R)及び(R,S)/(S,R))を有することができる。エナンチオマーの対(例えば、(S,S)/(R,R))は互いに鏡像立体異性体である。鏡像ではない立体異性体(例えば、(S,S)及び(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオ異性体対は、当業界で公知の方法、例えば、クロマトグラフィー又は結晶化によって分離することができ、各対の個々のエナンチオマーは前述のように分離することができる。本発明には、このような化合物の各ジアステレオ異性体及びそれらの混合物が含まれる。
【0072】
本明細書では、不定冠詞及び冠詞は、文脈がそうでないことを明確に示していなければ、単数及び複数の指示物を含む。したがって、例えば、「活性剤」又は「薬学的に活性のある薬剤」は、単一の活性剤ならびに組み合わされた2種以上の異なる活性剤を含み、「担体」は、2種以上の担体の混合物ならびに単一の担体などを含む。
【0073】
本発明はまた、本明細書で開示したヒドロキサム酸誘導体のプロドラッグを包含することを企図する。化合物のいずれかのプロドラッグは、周知の薬理学的方法を使用して製造することができる。
【0074】
前記に挙げた化合物に加えて、本発明は、このような化合物の相同体及び類縁体の使用を包含することを企図する。この場合、相同体は前述の化合物と実質的に構造類似性を有する分子であり、類縁体は構造類似性に関して実質的に生物学的類似性を有する分子である。
【0075】
薬学的に許容される塩
前記のように、本明細書で説明したヒドロキサム酸誘導体は、薬学的に許容される塩の形態で調製することができる。薬学的に許容される塩は、親化合物の所望する生物学的活性を保持し、所望しない毒性効果を与えない塩である。このような塩の例は、有機酸及び無機酸の酸付加塩、例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、リン酸などであることができる酸付加塩である。薬学的に許容される塩はまた、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化鉄などの無機塩基及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基で処理することによって調製することができる。薬学的に許容される塩はまた、塩素、臭素及びヨウ素などの元素陰イオンから形成することができる。
【0076】
前記のように、開示した活性化合物は、水和物の形態で調製することができる。「水和物」という用語には、限定はしないが、半水和物、1水和物、2水和物、3水和物、4水和物などが含まれる。
【0077】
前記のように、開示した活性化合物はまた、任意の有機又は無機溶媒による、例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールなどのアルコール、アセトンなどのケトン、芳香族溶媒などによる溶媒和化合物の形態で調製することができる。
【0078】
開示した活性化合物はまた、任意の固体又は液体の物理的形態で調製することができる。例えば、化合物は結晶型、アモルファス型であることができ、任意の粒径を有する。さらに、化合物粒子は、微粒子化することができ、あるいは、塊状、粒状顆粒、粉末、油、油状懸濁液又は任意の他の形態の固体もしくは液体物理学的形態であることができる。
【0079】
本発明の化合物はまた、多形を表すことができる。本発明はさらに、本発明の化合物の異なる多形体を含む。「多形」という用語は、X線回折、IR分析、融点などの特定の物理学的特性を有する物質の特定の結晶状態のことである。
【0080】
本明細書では、不定冠詞及び冠詞は、文脈がそうでないことを明確に示していなければ、単数及び複数の指示物を含む。したがって、例えば、「活性剤」又は「薬学的に活性のある薬剤」は、単一の活性剤ならびに組み合わされた2種以上の異なる活性剤を含み、「担体」は、2種以上の担体の混合物ならびに単一の担体などを含む。
【0081】
治療方法
本発明はまた、本明細書で記載したヒドロキサム酸誘導体の使用法に関する。本明細書で示したように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は癌の治療に有用である。さらに、ヒドロキサム酸誘導体が有用であることが見い出された他の疾患は広範囲である。非限定的な例は本明細書で記載したようなチオレドキシン(TRX)媒介疾患及び本明細書で記載したような中枢神経系(CNS)の疾患である。
【0082】
1.癌の治療
本明細書で示したように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は癌の治療に有用である。したがって、一実施形態では、本発明は、治療の必要な対象における癌の治療方法に関し、前記対象に本明細書で記載したヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を投与することを含む。
【0083】
「癌」という用語は、固形癌、新生物、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫などの腫瘍細胞の増殖によって引き起こされる任意の癌のことである。特に、本発明の化合物、組成物及び方法により治療され得る癌としては、限定はしないが、心臓:肉腫(血管肉腫、線維芽肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形種;肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支線腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様過誤腫、中皮腫;消化管:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管腺癌、膵島細胞腺腫、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、横紋筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維芽腫、線維芽腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、横紋筋腫);尿生殖器管:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、一過性細胞癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、睾丸(精上皮腫、奇形癌、精上皮腫、奇形芽腫、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維芽腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺癌、血管腫:骨:骨肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫、オステオクロンフローマ(osteochronfroma)(骨軟骨外骨腫症)、良性軟骨腫、骨軟骨芽腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫及び巨細胞腫瘍;神経系:頭骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状膠細胞腫、髄芽腫、グリオーマ、脳室上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形神経膠芽腫、乏枝神経膠腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮体癌)、子宮頚部(子宮頚部癌、前癌子宮頚部異形成症)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢癌、ムチン漿液性嚢癌、未分類癌]、顆粒層−包膜細胞腫瘍、セルトーリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、陰門(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(透明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(未熟横紋筋肉腫)、輸卵管(癌);血液学的:血液(骨髄白血病[急性及び慢性]、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄性増殖疾患、多発性骨髄腫、脊髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、モールス異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;及び副腎:神経芽腫が含まれる。したがって、本明細書では「癌細胞」という用語には、前記で同定した状態のいずれか1つに罹患した細胞が含まれる。
【0084】
一実施形態では、本発明の化合物は、限定はしないが、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)及び有毛細胞白血病などの急性白血病及び慢性白血病;皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトT細胞リンパ増殖性ウイルス(HTLV)関連リンパ腫、ホジキン病及び非ホジキン病、大細胞型リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などのリンパ腫;バーキットリンパ腫;中皮腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;多発骨髄腫;脳腫瘍、神経芽細胞種、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍及び軟部肉腫などの小児固形癌、頭部及び頸部癌(例えば、口腔、咽頭及び食道)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸及び結腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫及びその他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌及び甲状腺癌などの成人の一般的固形癌が含まれる癌の治療に有用である。
【0085】
2.チオレドキシン(TRX)媒介疾患の治療
一実施形態では、ヒドロキサム酸誘導体は、対象に本明細書で記載したヒドロキサム酸化合物の1種又は複数の治療有効量を投与することを含む、チオレドキシン(TRX)媒介疾患又は障害の治療が必要な対象におけるチオレドキシン(TRX)媒介疾患及び障害の治療方法において使用される。
【0086】
TRX媒介疾患の例には、限定はしないが、急性及び慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、酸化ストレスに関連した疾患及び細胞過剰増殖を特徴とする疾患が含まれる。
【0087】
非限定的な例は、関節リウマチ(RA)及び乾癬性関節炎を含む間接の炎症状態;クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性大腸疾患;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T−細胞媒介乾癬を含む)及び皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹などの炎症性皮膚病;血管炎(例えば、壊死性血管炎、皮膚血管炎及び過敏性血管炎);好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎、皮膚又は臓器の白血球浸潤を伴う癌、脳虚血(例えば、外傷、てんかん、出血又は脳卒中の結果としての脳損傷、いずれも神経変性を引き起こし得る)を含む虚血傷害;HIV、心不全、慢性、急性又は悪性肝障害、自己免疫性甲状腺炎;全身性エリトマトーデス、シェーグレン症候群、肺疾患(例えば、ARDS);急性膵炎;筋萎縮性側索硬化症(ALS);アルツハイマー病;カヘキシー/食欲不振;喘息;アテローム性動脈硬化;慢性疲労症候群、発熱、糖尿病(例えば、インシュリン糖尿病又は若年発症糖尿病);糸球体腎炎;移植片対宿主拒絶反応(例えば、移植において);出血性ショック;痛覚過敏;炎症性大腸疾患;多発性硬化症;筋障害(例えば、特に敗血症における筋タンパク質代謝);骨粗鬆症;パーキンソン病;疼痛;早期産;乾癬;再潅流損傷;サイトカイン誘導性毒性(例えば、敗血症性ショック、エンドトキシン性ショック);照射治療による副作用、側頭顎関節疾患、腫瘍転移;又は緊張、捻挫、軟骨障害、火傷などの外傷、整形手術、感染又はその他の疾患過程によって生じた炎症状態である。アレルギー性疾患及び状態には、限定はしないが、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性の好酸球性肺炎)、遅効型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性の肺線維症、又は関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、剛直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎もしくは皮膚筋炎に関連したILD)などの呼吸器系のアレルギー性疾患、全身性アナフィラキシー又は過敏性応答、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対する)、昆虫針アレルギーなどが含まれる。
【0088】
3.中枢神経系(CNS)の疾患の治療
他の実施形態では、ヒドロキサム酸誘導体は、中枢神経系の疾患の治療が必要な対象における中枢神経系の疾患の治療方法で使用され、この対象に本明細書で記載したヒドロキサム酸化合物の1種又は複数の治療有効量を投与することを含む。
【0089】
具体的な実施形態では、CNS疾患は神経変性疾患である。他の実施形態では、この神経変性疾患は、ポリグルタミン増加疾患である遺伝性神経変性疾患などの遺伝性神経変性疾患である。一般的に、神経変性疾患は、以下のように分類することができる。
I.アルツハイマー病、アルツハイマー型の老人性認知症及びピック病(脳葉萎縮)などの、他の著しい神経学的徴候がない進行性認知症を特徴とする疾患。
II.A)主に成人で生じる症候群(例えば、ハンチントン病、運動失調及び/又はパーキンソン病の徴候を有する認知症を合併する他系統萎縮、進行性核上性麻痺(スティールリチャードソンオルスゼフスキー症候群)、びまん性レーヴィ小体疾患及び皮質歯状核黒質変性症)、B)主に小児又は青少年に生じる症候群(例えば、ハレルフォルデンスパッツ症候群及び進行性家族性ミオクロニー性てんかん)などの、他の著しい神経異常を有する進行性認知症を合併する症候群。
III.振戦麻痺(パーキンソン病)、線条体黒質変性症、進行性核上性麻痺、捻転ジストニア(捻転攣縮、変形性筋ジストニア)、痙性斜頚及びその他の運動障害、家族性振戦及びジルドゥラトゥレット症候群などの、姿勢及び行動の異常が徐々に発症する症候群。
IV.小脳変性症(例えば、小脳皮質変性症及びオリーブ橋小脳萎縮(OPCA)など)及び脊髄小脳変性症(フリードライヒ運動失調症及び関連する障害)などの、進行性失調症の症候群。
V.中枢自律神経系不全の症候群(シャイドレーガー症候群)。
VI.筋力低下及び感覚変化を伴わない消耗の症候群(筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症(例えば、乳児脊髄性筋萎縮症(ウェルドニッヒホフマン病)、若年性脊髄性筋萎縮症(ウオールフアルトクーゲルベルクウエランダー病)及び家族性脊髄性筋萎縮症のその他の形態などの運動ニューロン疾患)、原発性側索硬化症及び遺伝性痙性対麻痺。
VII.腓骨筋萎縮症(シャルコリーマリートゥース病)、肥厚性間質性多発ニューロパシー(デジュリーヌソッタ病)及び様々な形態の慢性進行性ニューロパシーなどの筋力低下及び感覚変化を伴わない消耗が合併した症候群(進行性神経筋萎縮症、慢性家族性多発ニューロパシー)。
VIII.網膜の色素変性などの進行性失明(網膜色素変性症)及び遺伝性視神経萎縮症(レーバー病)の症候群。
【0090】
定義
本発明に関連した様々な文法型の「治療」という用語は、疾患状態、疾患進行、疾患原因因子(例えば細菌又はウイルス)又は他の異常な状態の有害な作用の予防(すなわち、化学予防)、治癒、逆転、軽減、緩和、最小限化、抑制又は停止を意味する。例えば、治療には、疾患の1徴候(すなわち、全ての徴候である必要はない)の軽減又は疾患の進行の軽減を含むことができる。本発明の方法のいくつかは、病原体の物理的除去を含むので、当業者は、本発明の方法は病原体に暴露する前又は同時に本発明の化合物を投与する状況および病原体に暴露した後に(かなり後であっても)本発明の化合物を投与する状況に等しく有効であることを認識する。
【0091】
本明細書では、癌の治療は、ほ乳類、例えばヒトにおける癌転移を含む癌の進行の部分的若しくは全体的な阻害、遅延若しくは予防、癌転移を含む癌の再発の阻害、遅延若しくは予防又は癌の発症若しくは発病の予防(化学予防)を意味する。
【0092】
本明細書では、「治療有効量」という用語は、所望する治療効果又は生物学的効果を実現する任意の量を包含するものとする。この治療効果は、治療する疾患もしくは障害又は所望する生物学的効果に左右される。このように、治療効果は、疾患又は障害に関連した徴候の重症度の減少及び/又は疾患の進行の(部分的又は完全な)阻害であることができる。治療としての反応を惹起するのに必要な量は、対象の年齢、健康状態、体格及び性別に基づいて決定することができる。最適な量はまた、治療に対する対象の反応をモニターすることに基づいて決定することができる。
【0093】
本発明では、この化合物を癌の治療又は予防に使用するとき、所望する生物学的反応は、ほ乳類、例えばヒトにおける癌転移を含む癌の進行の部分的又は全体的な阻害、遅延又は予防、癌転移を含む癌の再発の阻害、遅延又は予防あるいは癌の発症又は発病の予防(化学予防)である。
【0094】
さらに、本発明では、この化合物をチオレドキシン(TRX)媒介疾患及び状態の治療及び/又は予防に使用するとき、治療有効量とは、所望する治療効果を惹起する治療を必要とする対象におけるTRXの生理学的に適切なレベルを調節、例えば、増加、減少又は維持する量である。この治療効果は、治療する特定のTRX媒介疾患又は状態に左右される。このように、治療効果は、疾患に又は障害に関連した徴候の重症度の減少及び/又は疾患又は障害の進行の(部分的又は完全な)阻害であることができる。
【0095】
さらに、本発明では、この化合物を中枢神経系(CNS)の疾患又は障害の治療及び/又は予防に使用するとき、治療有効量は治療する特定の疾患又は障害に左右される。このように、治療効果は、疾患に又は障害に関連した徴候の重症度の減少及び/又は疾患又は障害の進行の(部分的又は完全な)阻害であることができる。
【0096】
さらに、治療有効量は、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害する量であることができる。
【0097】
さらに、治療有効量は、腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導する量あるいは腫瘍細胞の最終分化を誘導する量であることができる。
【0098】
本発明の方法は、癌を有するヒト患者の治療又は化学的予防を企図する。しかし、この方法はその他の対象における癌の治療にも有効であるようである。本明細書では、「対象」は、限定はしないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又はその他のウシ科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、齧歯類又はネズミ科が含まれるほ乳類などの動物を意味する。
【0099】
ヒストン脱アセチル化酵素及びヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
本明細書で示したように、本発明のヒドロキサム酸誘導体はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤として改善された活性を示す。したがって、一実施形態では、本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素を本明細書で記載したヒドロキサム酸誘導体の1種又は複数の治療有効量と接触させることを含むヒストン脱アセチル化酵素の活性の阻害方法に関する。
【0100】
一実施形態では、このヒドロキサム酸誘導体はI型ヒストン脱アセチル化酵素(I型HDAC)の潜在的阻害剤である。I型HDACには、ヒストン脱アセチル化酵素1(HDAC−1)、ヒストン脱アセチル化酵素2(HDAC−2)、ヒストン脱アセチル化酵素3(HDAC−3)及びヒストン脱アセチル化酵素8(HDAC−8)が含まれる。具体的な実施形態では、このヒドロキサム酸誘導体はヒストン脱アセチル化酵素I(HDAC−1)の潜在的阻害剤である。他の実施形態では、このヒドロキサム酸誘導体はヒストン脱アセチル化酵素II(II型HDAC)の潜在的阻害剤である。II型HDACには、ヒストン脱アセチル化酵素4(HDAC−4)、ヒストン脱アセチル化酵素5(HDAC−8)、ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC−6)、ヒストン脱アセチル化酵素7(HDAC−7)及びヒストン脱アセチル化酵素9(HDAC−9)が含まれる。
【0101】
本明細書で使用されたように、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)とは、ヌクレオソームのコアヒストンのアミノ末端尾のリシン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素である。このように、HDACはヒストンアセチル転移酵素(HAT)と共にヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンアセチル化は遺伝子発現に影響を及ぼし、HDACの阻害剤、例えば、ヒドロキサム酸をベースにしたハイブリッド極性化合物スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、インビトロにおいて形質転換した細胞の増殖停止、分化及び/又はアポトーシスを誘導し、インビボにおいて腫瘍増殖を阻害する。HDACは、構造相同性に基づいて3つの部類に分けることができる。I型HDAC(HDAC1、2、3及び8)は、酵母RPD3タンパク質と類似性を有し、転写補助抑制因子に関連した複合体中に見いだされる。II型HDAC(HDAC4、5、6、7及び9)は酵母HDA1タンパク質と類似しており、核及び細胞質両方が細胞内で局在している。I型及びII型HDACはいずれもヒドロキサム酸をベースにしたHDAC阻害剤、例えば、SAHAによって阻害される。III型HDACは、酵母SIR2タンパク質と関連しており、ヒドロキサム酸をベースにしたHDAC阻害剤によって阻害されないNAD依存性酵素の構造的に遠縁の種類である。
【0102】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤又はHDAC阻害剤は、本明細書では、インビボ、インビトロ、又はその両方において、ヒストンの脱アセチル化を阻害することができる化合物である。このように、HDAC阻害剤は、少なくとも1種のヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する。少なくとも1種のヒストンの脱アセチル化を阻害した結果として、アセチル化ヒストンの増加が生じ、アセチル化ヒストンの蓄積は、HDAC阻害剤の活性を評価する適切な生物学的マーカーである。したがって、アセチル化ヒストンの蓄積を測定することができる方法を、関心のある化合物のHDAC阻害活性を測定するために使用することができる。ヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する化合物はまた、他の基質に結合することができ、したがって、酵素などの他の生物学的活性分子を阻害することができると理解される。本発明の化合物は、前記のヒストン脱アセチル化酵素のいずれか又は他のヒストン脱アセチル化酵素を阻害することができると理解される。
【0103】
例えば、HDAC阻害剤を投与されている患者では、末梢単核細胞及びHDAC阻害剤で処理された組織におけるアセチル化ヒストンの蓄積を適切な対照に対して測定することができる。
【0104】
特定の化合物のHDAC阻害活性は、例えば、少なくとも1種のヒストン脱アセチル化酵素の阻害を示す酵素測定法を使用してインビトロで測定することができる。さらに、特定の組成物で処理された細胞におけるアセチル化ヒストンの蓄積を測定し、化合物のHDAC阻害活性を決定することができる。
【0105】
アセチル化ヒストンの蓄積の測定は、文献で周知である。例えば、Marks,P.A.他、J.Natl.Cancer Inst.、92:1210〜1215、2000、Butler,L.M.他、Cancer Res.60:5165〜5170(2000)、Richon,V.M.他、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、95:3003〜3007、1998及びYoshida,M.他、J.Biol.Chem.、265:17174〜17179、1990を参照のこと。
【0106】
例えば、HDAC阻害剤化合物の活性を測定する酵素測定法は、以下のように実施することができる。簡単に説明すると、HDAC阻害剤化合物のアフィニティー精製ヒトエピトープタグ(フラグ)HDAC1に対する効果は、酵素調製物を基質無しで指示量の阻害剤化合物と共に氷上において約20分間インキュベートすることによって測定することができる。基質([H]アセチル標識マウス赤白血病細胞由来ヒストン)を添加して、この試料を全量30μlで37℃で20分間インキュベートすることができる。次にこの反応を停止して、遊離した酢酸塩を抽出して、遊離した放射活性の量をシンチレーションカウントで測定することができる。HDAC阻害剤化合物の活性の測定に有用な他の測定法は、BIOMOL Research Laboratories,Inc.社(Plymouth Meeting、PA)から市販されている「HDAC蛍光活性測定法、薬剤開発キットAK−500」である。
【0107】
インビボ研究は以下の通り実施することができる。動物(例えばマウス)にHDAC阻害剤化合物を腹腔内注射することができる。選択した組織(例えば脳、脾臓、肝臓など)を、投与後予定された時間に取り出すことができる。ヒストンは、本質的にYoshida他、J.Biol.Chem.265:17174〜17179、1990に記載されたように、組織から単離することができる。等量のヒストン(約1μg)を15%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動して、Hybond−Pフィルター(Amershamから入手)に移すことができる。フィルターを3%ミルクでブロックして、ウサギ精製抗アセチル化ヒストンH4ポリクローナル抗体(αAc−H4)及び抗アセチル化ヒストンH3抗体(αAc−H3)(Upstate Biotechnology,Inc.)で調べることができる。アセチル化ヒストンのレベルは、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:500)及びSuperSignal化学ルミネセンス基質(Pierce)を使用して視覚化することができる。ヒストンタンパク質の添加対照として、並行してゲルを泳動し、クーマシーブルー(CB)で染色する。
【0108】
さらに、ヒドロキサム酸をベースにしたHDAC阻害剤は、p21WAFI遺伝子の発現を上方制御することが示された。p21WAFIタンパク質は、標準的方法を使用して、様々な形質転換細胞において、HDAC阻害剤を使用して培養して2時間以内に誘導される。p21WAFI遺伝子の誘導は、この遺伝子のクロマチン領域のアセチル化ヒストンの蓄積と関連する。したがって、p21WAFIの誘導は、形質転換細胞においてHDAC阻害剤によって引き起こされたG1細胞周期停止に関連することが確認され得る。
【0109】
併用治療
本発明のヒドロキサム酸化合物は、単独にて、又は治療する疾患又は障害に適した他の治療薬と併用して投与することができる。別々の投与製剤を使用する場合、ヒドロキサム酸化合物及び他の治療薬は、本質的に同時に(同時)又は別々に時差的に(逐次)投与することができる。薬剤併用は、これらの計画全てを含む物と考えられる。ヒドロキサム酸化合物及び他の治療薬の有益な治療効果が患者によって実質的に同時に実現される限り、これらの様々な方法での投与は、本発明に適している。一実施形態では、このような有益な効果は、それぞれの活性のある薬剤の目標血中レベル濃度が実質的に同時に維持されるとき、実現される。
【0110】
本発明の化合物はまた、公知の治療薬及び抗癌剤と併用して使用される。例えば、本発明の化合物は、公知の抗癌剤と併用して使用される。本発明で開示した化合物と他の抗癌剤又は化学療法薬との併用は、本発明の範囲内である。このような薬剤の例は、Cancer Principles and Practice of Oncology、V.T.Devita and S.Hellman(著者)、6版(February 15、2001)、Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見いだすことができる。当業者は、薬剤の特定の特性及び関与する癌に基づいてどの併用が有用であるかを理解する。このような抗癌剤には、限定はしないが、以下のもの、エストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤及びその他の血管新生阻害剤、細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、アポトーシス誘導剤、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)並びに癌ワクチンを妨害する薬剤が含まれる。本発明の化合物は、放射線治療と共投与すると特に有用である。
【0111】
一実施形態では、本発明の化合物はまた、以下の、エストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤及び他の血管新生阻害剤を含む公知の抗癌剤と併用して使用する。
【0112】
「エストロゲン受容体調節因子」とは、機構に関係なく、受容体に対するエストロゲンの結合を妨害する又は阻害する化合物のことである。エストロゲン受容体調節因子の例には、限定はしないが、ジエチルスチベストロール、タモキシフェン、ラロキシフェン、インドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルオキシメステロ、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン及びSH646が含まれる。
【0113】
他のホルモン剤には、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール及びテトラゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類縁体、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、リュープロリド、酢酸メゲストロール及びミフェプリストンが含まれる。
【0114】
「アンドロゲン受容体調節因子」とは、機構に関係なく、受容体に対するアンドロゲンの結合を妨害する又は阻害する化合物のことである。アンドロゲン受容体調節因子の例には、フィナステリド及び他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール及び酢酸アビラテロンが含まれる。
【0115】
「レチノイド受容体調節因子」とは、機構に関係なく、受容体に対するレチノイドの結合を妨害する又は阻害する化合物のことである。このようなレチノイド受容体修飾剤の例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミド及びN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが含まれる。
【0116】
「細胞毒性/細胞分裂停止剤」とは、細胞機能を直接妨害する又は細胞有糸分裂を阻害しもしくは妨害することによって細胞死を引き起こす又は細胞増殖を阻害する化合物のことであり、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、干渉物質、低酸素症活性化化合物、微小管阻害剤/微小管安定化剤、有糸分裂キネシンの阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、有糸分裂進行に関与するキナーゼの阻害剤、代謝拮抗物質、生物学的反応調節因子、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血増殖因子、治療薬を標的とするモノクローナル抗体、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤及びユビキチンリガーゼ阻害剤が含まれる。
【0117】
細胞毒性物質の例には、限定はしないが、セルテネフ、カケクチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、ダカルバジン、プロカルバジン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトル、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸イムプロスルファン、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピリジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(トランス,トランス,トランス)−ビス−ミュー−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−ミュー−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン、三酸化砒素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、アントラセンジオン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、ピカトマイシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アンルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755及び4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニルダウノルビシン(国際公開第00/50032号参照)が含まれる。
【0118】
低酸素症活性化化合物の1例は、チラパザミンである。
【0119】
プロテアソーム阻害剤の例には、限定はしないが、ラクタシスチン及びボルテゾミブが含まれる。
【0120】
微小管阻害剤/微小管安定化剤の例には、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、ビノレルビン、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカリューコブラスチン(norvincaleukoblastine)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP−16)及びテニポシド(VM−26))、パクリタキセル、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、ミボブリンイセチオネート、アウリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、無水ビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン(例えば、米国特許第6284781号及び第6288237号を参照のこと)ならびにBMS188797が含まれる。
【0121】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの例には、トポテカン、ヒカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャートレウシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロオキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナンチリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン及びジメスナが含まれる。
【0122】
有糸分裂キネシン、特にヒトの有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例は、PCT公報WO01/30768、WO01/98278、WO03/050064、WO03/050122、WO03/049527、WO03/049679、WO03/049678及びWO03/39460ならびに(2003年3月4日に出願された。)係属中のPCT出願番号US60/06403、(2003年5月19日に出願された。)US03/15861、(2003年5月19日に出願された。)US03/15810、(2003年6月12日に出願された。)US03/18482及び(2003年6月12に出願された。)US03/18694に記載されている。ある実施形態では、有糸分裂キネシンの阻害剤としては、限定はしないが、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤、Kif14の阻害剤、Mphosph1の阻害剤及びRab6−KIFLの阻害剤が含まれる。
【0123】
「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤」の例には、限定はしないが、SAHA、TSA、オキサムフラチン、PXD101、MG98、バルプロ酸及びスクリプタイドが含まれる。他のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の他の例は、以下の文献、Miller,T.A.他、J.Med.Chem.46(24):5097〜5116(2003)に見いだすことができる。
【0124】
有糸分裂進行に関与するキナーゼの阻害剤」には、限定はしないが、オーロラキナーゼの阻害剤、ポロ様キナーゼの阻害剤(PLK、特にPLK−1の阻害剤)、bub−1の阻害剤及びbubーR1の阻害剤が含まれる。「オーロラキナーゼ阻害剤」の一例は、VX−680である。
【0125】
「抗増殖剤」には、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231及びINX3001などのアンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチドならびにエノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキサート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビン・オクフォスフェート、フォステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシジン(ecteinascidin)、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、メソトレキセート、ロイコバリン(leucovarin)、ヒドロキシウレア、チオグアニン(6−TG)、メルカプトプリン(6−MP)、シタラビン、ペントスタチン、フルダラビンホスフェート、クラドリビン(2−CDA)、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン及び3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾンなどの抗代謝剤が含まれる。
【0126】
治療薬を標的化するモノクローナル抗体の例には、癌細胞特異的又は標的細胞特異的モノクローナル抗体に結合した細胞毒性剤又は放射性同位元素を有する治療薬が含まれる。例として、ベキサールなどがある。
【0127】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害剤のことである。HMG−CoAレダクターゼ阻害薬の例には、限定はしないが、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、米国特許第4231938号、第4294926号、第4319039号参照)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、米国特許第4444784号、第4820850号、第4916239号参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、米国特許第4346227号、第4537859号、第4410629号、第5030447号及び第5180589号参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5354772号、第4911165号、第4929437号、第5189164号、第5118853号、第5290946号、第5356896号参照)及びアトルバスタチン(LIPITOR(登録商標)、米国特許第5273995号、第4681893号、第5489691号、第5342952号参照)が含まれる。これらの構造式及び本発明の方法で使用できる他のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、M.Yalpani、「Cholesterol Lowering Drugs」、Chemistry & Industry、pp.85〜89(1996年2月5日)及び米国特許第4782084号及び第4885314号に記載されている。本明細書では、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬という用語には、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の薬学的に許容されるラクトン及び開環酸型(すなわち、ラクトン環が開環して遊離酸を形成している)ならびに塩及びエステル型全てが含まれ、したがって、このような塩、エステル、開環酸及びラクトン型の使用は本発明の範囲に含まれる。
【0128】
「プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤」とは、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ(FPTase)、ゲラニルゲラニルタンパク質トランスフェラーゼI型(GGPTase−I)及びゲラニルゲラニルタンパク質トランスフェラーゼII型(GGPTase−II、RabGGPTaseとも称される)を含むプレニル蛋白トランスフェラーゼ酵素の1種類又はいずれかの組合せを阻害する化合物のことである。
【0129】
プレニル蛋白トランスフェラーゼ阻害薬の例は、以下の公報及び特許、WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987、米国特許5420245号、米国特許5523430号、米国特許5532359号、米国特許5510510号、米国特許5589485号、米国特許5602098号、欧州特許公開0618221、欧州特許公開0675112、欧州特許公開0604181、欧州特許公開0696593、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514、米国特許第5661152号、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736、米国特許第5571792号、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436及び米国特許第5532359号に見いだすことができる。血管新生に対するプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の役割の例は、European J.of Cancer、Vol.35、No.9、pp.1394〜1401(1999)に見られる。
【0130】
「血管新生阻害剤」とは、機序に関係なく、新たな血管の形成を阻害する化合物のことである。血管新生阻害剤の例としては、限定はしないが、チロシンキナーゼ阻害薬(例えばチロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤)、表皮由来、線維芽細胞由来もしくは血小板由来の成長因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、エリスロポエチン(エポエチン−α)、顆粒球−CSF(フィルグラスチム)、顆粒球、マクロファージ−CSF(サルグラモスチム)、ペントサンポリ硫酸、シクロオキシゲナーゼ阻害薬(非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(アスピリン及びイブプロフェンなど)、選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤(セレコキシブ及びロフェコキシブなど)(PNAS、Vol.89、p.7384(1992);JNCI、Vol.69、p.475(1982);Arch.Opthalmol.、Vol.108、p.573(1990);Anat.Rec.、Vol.238、p.68(1994);FEBS Letters、Vol.372、p.83(1995);Clin、Orthop.Vol.313、p.76(1995);J.Mol.Endocrinol.、Vol.16、p.107(1996);Jpn.J.Pharmacol.、Vol.75、p.105(1997);Cancer Res.、Vol.57、p.1625(1997);Cell、Vol.93、p.705(1998);Intl.J.Mol.Med.、Vol.2、p.715(1998);J.Biol.Chem.、Vol.274、p.9116(1999))を含む。)、ステロイド系抗炎症薬(コルチコステロイド、ミネラルコルチコイド、デキサメサゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメサゾンなど)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンII拮抗薬(Fernandez他、J.Lab.Clin.Med.105:141〜145(1985))及びVEGFに対する抗体(Nature Biotechnology、Vol.17、pp.963〜968(October 1999);Kim他、Nature、362、841〜844(1993)、WO00/44777及びWO00/61186参照。)が含まれる。
【0131】
血管新生を調節又は阻害し、本発明の化合物とも併用され得る他の治療剤には、凝固系及び繊維素溶解系を調節又は阻害する薬剤が含まれる(Clin.Chem.La.Med.38:679〜692(2000)の総説を参照。)。凝固経路及び繊維素溶解経路を調節又は阻害するこのような治療剤の例には、限定はしないが、ヘパリン(Thromb.Haemost.80:10〜23(1998))、低分子量ヘパリン及びカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビンが活性化できる繊維素溶解の阻害剤、阻害剤[TAFIa]としても知られる。)(Thrombosis Res.101:329〜354(2001)を参照。)が含まれる。TAFIa阻害剤は、PCT公報WO03/013526及び米国出願第60/349925号(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0132】
「細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを伝達するタンパク質キナーゼを阻害することにより、DNA損傷剤に対して癌細胞を感作させる化合物のことである。このような薬剤には、ATR、ATM、Chk1及びChk2キナーゼの阻害剤ならびにcdk及びcdcキナーゼ阻害剤が含まれ、具体例としては、7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(Cyclacel)及びBMS−387032が挙げられる。
【0133】
「受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤」とは、RTKを阻害し、したがって発癌及び腫瘍進行に関与する機序を阻害する化合物のことである。このような薬剤には、c−Kit、Eph、PDGF、Flt3及びc−Metの阻害剤が含まれる。他の薬剤には、Bume−Jensen and Hunter、Nature、411:355〜365、2001に記載されたように示されたRTKの阻害剤が含まれる。
【0134】
「細胞増殖及び生存シグナリング経路の阻害剤」とは、細胞表面受容体及びそれらの表面受容体の下流のシグナル伝達カスケードを阻害する医薬品を意味する。
【0135】
このような薬剤には、EGFRの阻害剤(例えば、ゲフィチニブ及びエルロチニブ)、ERB−2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ)、IGFRの阻害剤、CD20の阻害剤(リツキシマブ)、サイトカイン受容体の阻害剤、METの阻害剤、PI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)、セリン/トレオニンキナーゼ(WO03/086404、WO03/086403、WO03/086394、WO03/086279、WO02/083675、WO02/083139、WO02/083140及びWO02/083138)に記載のものなどのAktの阻害剤などがあるが、これらに限定されない。)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040及びPD−098059)及びmTORの阻害剤(例えば、WyethCCI−779及びAriad AP23573)が含まれる。このような薬剤には、小分子阻害剤化合物及び抗体拮抗剤が含まれる。
【0136】
「アポトーシス誘発剤」には、TNF受容体ファミリーの構成要素(TRAIL受容体を含む)の活性化剤が含まれる。
【0137】
本発明は、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの併用も包含する。本明細書のために、COX−2の選択的阻害薬であるNSAIDとは、細胞測定法又はミクロソーム測定法によって評価されるCOX−1についてのIC50に対するCOX−2についてのIC50の比によって測定される、COX−1阻害に対するCOX−2阻害の特異性が少なくとも100倍であるものと定義される。このような化合物には、限定はしないが、米国特許第5474995号、米国特許第5861419号、米国特許第6001843号、国特許第6020343号、米国特許第5409944号、米国特許第5436265号、米国特許第5536752号、米国特許第5550142号、米国特許第5604260号、米国特許第5698584号、米国特許第5710140号、WO94/15932、米国特許第5344991号、米国特許第5134142号、米国特許第5380738号、米国特許第5393790号、米国特許第5466823号、米国特許第5633272号及び米国特許第5932598号に開示されているものが含まれ、これらはいずれも、参照により本明細書に組み込まれる。
【0138】
本発明の治療方法で特に有用なCOX−2阻害剤は、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン及び5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン又はこれらの薬学的に許容される塩である。
【0139】
COX−2の特異的阻害剤として記載され、したがって、本発明において有用である化合物には、限定はしないが、パレコキシブ、CELEBREX(登録商標)及びBEXTRA(登録商標)又はこれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0140】
血管新生阻害剤の他の例には、限定はしないが、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクタ−6−イル(クロロアセチル)カルバマート、アセチルジナナリン(acetyldinanaline)、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1、2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースリン酸、7,7−(カルボニル−ビス−[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホナート)及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が含まれる。
【0141】
前記で使用したように、「インテグリン遮断薬」とは、生理的リガンドのαβインテグリンへの結合を選択的に拮抗し、阻害し又は妨害する化合物、生理的リガンドのαβインテグリンへの結合を拮抗し、阻害し又は妨害する化合物、生理的リガンドのαβ及びαβインテグリンの両方への結合を拮抗し、阻害し又は妨害する化合物、ならびに毛細管内皮細胞上で発現される特定のインテグリンの活性を拮抗し、阻害し又は妨害する化合物を意味する。この用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの拮抗薬のことである。この用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの任意の組み合わせの拮抗薬のことである。
【0142】
チロシンキナーゼ阻害薬の具体例をいくつか挙げると、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、イマチニブ(STI571)、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン及びEMD121974が含まれる。
【0143】
抗癌化合物以外の化合物との併用も、本発明の方法に包含される。例えば、本明細書の特許請求の化合物とPPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの併用は、ある種の悪性腫瘍の治療において有用である。PPAR−γ及びPPAR−δは、核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ及びδである。内皮細胞上へのPPAR−γの発現及び血管新生におけるその関与は、文献に報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.1998;31:909〜913;J.Biol.Chem.1999;274:9116〜9121;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000;41:2309〜2317参照。)。さらに最近になって、PPAR−γアゴニストが、VEGFに対する血管新生応答をインビトロで阻害することが示された。トログリタゾン及びロシグリタゾンマレイン酸塩はいずれも、マウスにおいて、網膜の新血管新生の発生を阻害する(Arch.Ophthamol.2001;119:709〜717)。PPAR−γアゴニスト及びPPAR−γ/αアゴニストの例には、限定はしないが、チアゾリジンジオン(DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなど)、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフロオロメチル−1,2−ベンゾイソキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN09/782856に開示されている。)及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(USSN60/235708及び60/244697に開示されている。)が含まれる。
【0144】
本発明の他の実施形態は、癌治療用の遺伝子療法と併用した、本明細書に開示されている化合物の使用である。癌を治療するための遺伝子戦略の総説については、Hall他(Am J Hum Genet 61:785〜789、1997)及びKufe他(Cancer Medicine、5版、pp876〜889、BC Decker、Hamilton 2000)を参照されたい。遺伝子治療は、任意の腫瘍抑制遺伝子を送達するために使用することができる。このような遺伝子の例には、限定はしないが、p53(組換えウイルスを介した遺伝子導入によって送達することができる。(例えば、米国特許第6069134号を参照。))、Duc−4、NF−1、NF−2、RB、WT1、BRCA1、BRCA2、uPA/uPARアンタゴニスト(「Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice」、Gene Therapy、August 1998;5(8):1105〜13)」及びインターフェロンガンマ(J.Immunol.2000;164:217〜222)が含まれる。
【0145】
本発明の化合物は、固有の多剤耐性(MDR)、特に、輸送体タンパク質の高レベル発現を伴うMDRの阻害剤と併用して投与することもできる。このようなMDR阻害剤には、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853及びPSC833(バルスポダール)などの、p−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤が含まれる。
【0146】
本発明の化合物は、単独で、又は放射線療法と共に、本発明の化合物を使用することによって生じ得る悪心又は嘔吐(急性、遅延、晩発及び先行嘔吐を含む。)を治療するための制吐剤と共に使用することができる。嘔吐を予防又は治療する場合、本発明の化合物は、他の制吐剤、特に、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン及びザチセトロン(zatisetron)、GABAB受容体アゴニスト、例えば、バクロフェン、コルチコステロイド、例えば、Decadron(デキサメタゾン)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid、Benecorten又はその他のもの、例えば、米国特許第2789118号、第2990401号、第3048581号、第3126375号、第3929768号、第3996359号、第3928326号及び第3749712号に開示されているもの、抗ドーパミン作動薬、例えば、フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン及びメソリダジン)、メトクロプラミド又はドロナビノール)と共に使用することができる。一実施形態では、本発明の化合物の投与時に生じ得る嘔吐を治療又は予防するために、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト及びコルチコステロイドから選択された制吐剤を補助剤として投与する。
【0147】
本発明の化合物と共に使用するニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、例えば、米国特許第5162339号、第5232929号、第5242930号、第5373003号、第5387595号、第5459270号、第5494926号、第5496833号、第5637699号、第5719147号;欧州特許公開0360390、0394989、0428434、0429366、0430771、0436334、0443132、0482539、0498069、0499313、0512901、0512902、0514273、0514274、0514275、0514276、0515681、0517589、0520555、0522808、0528495、0532456、0533280、0536817、0545478、0558156、0577394、0585913、0590152、0599538、0610793、0634402、0686629、0693489、0694535、0699655、0699674、0707006、0708101、0709375、0709376、0714891、0723959、0733632及び0776893;国際特許公開WO90/05525、90/05729、91/09844、91/18899、92/01688、92/06079、92/12151、92/15585、92/17449、92/20661、92/20676、92/21677、92/22569、93/00330、93/00331、93/01159、93/01165、93/01169、93/01170、93/06099、93/09116、93/10073、93/14084、93/14113、93/18023、93/19064、93/21155、93/21181、93/23380、93/24465、94/00440、94/01402、94/02461、94/02595、94/03429、94/03445、94/04494、94/04496、94/05625、94/07843、94/08997、94/10165、94/10167、94/10168、94/10170、94/11368、94/13639、94/13663、94/14767、94/15903、94/19320、94/19323、94/20500、94/26735、94/26740、94/29309、95/02595、95/04040、95/04042、95/06645、95/07886、95/07908、95/08549、95/11880、95/14017、95/15311、95/16679、95/17382、95/18124、95/18129、95/19344、95/20575、95/21819、95/22525、95/23798、95/26338、95/28418、95/30674、95/30687、95/33744、96/05181、96/05193、96/05203、96/06094、96/07649、96/10562、96/16939、96/18643、96/20197、96/21661、96/29304、96/29317、96/29326、96/29328、96/31214、96/32385、96/37489、97/01553、97/01554、97/03066、97/08144、97/14671、97/17362、97/18206、97/19084、97/19942及び97/21702;並びに英国特許公開2266529、2268931、2269170、2269590、2271774、2292144、2293168、2293169及び2302689に完全に記載されている。このような化合物の調製は、本明細書に参照により組み込んだ前述の特許及び公報に完全に記載されている。
【0148】
一実施形態において、本発明の化合物と共に使用するためのニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、米国特許第5719147号に記載されている2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン又はこれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0149】
本発明の化合物は、貧血の治療において有用な薬剤と共に投与することもできる。このような貧血治療剤は、例えば、継続的な赤血球生成受容体活性化因子(例えば、エポエチンアルファ)である。
【0150】
本発明の化合物は、好中球減少症の治療において有用な薬剤と共に投与することもできる。このような好中球減少症治療剤は、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの好中球の産生及び機能を調節する造血性増殖因子である。G−CSFの例には、フィルグラスチムが含まれる。
【0151】
本発明の化合物は、レバミソール、カルメット−ゲラン桿菌、オクトレオチド、イソプリノシン及びZadaxinなどの免疫増強薬と共に投与することもできる。
【0152】
本発明の化合物は、ビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホン酸塩、ビスホスホン酸及びジホスホン酸を含むものと考えられる)と併用して、骨癌を含む癌の治療又は予防に有用であることもできる。ビスホスホネートの例には、限定はしないがエチドロネート(Didronel)、パミドロネート(Aredia)、アレンドロネート(Fosamax)、リセドロネート(Actonel)、ゾレドロネート(Zometa)、イバンドロネート(Boniva)、インカドロネート又はシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネート及びチルドロネートが含まれ、これらの薬学的に許容される塩、誘導体、水和物及び混合物のいずれか及び全てが含まれる。
【0153】
本発明の化合物は、アロマターゼ阻害剤と併用して、乳癌の治療又は予防に有用であることもできる。アロマターゼ阻害剤の例には、限定はしないが、アナストロゾール、レトロゾール及びエキセメスタンが含まれる。
【0154】
本発明の化合物は、siRNA治療薬と併用して、癌の治療又は予防に有用であることもできる。
【0155】
本発明の化合物は、腫瘍細胞の最終分化を誘導する化合物と併用して、癌の治療又は予防に有用であることもできる。適切な分化剤には、本明細書に参照により内容を組み込む以下の参考文献の任意の1種又は複数に開示された化合物が含まれる。
【0156】
a)極性化合物(Marks他(1987);Friend,C、Scher,W.、Holland,J.W. and Sato,T.(1971)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)68:378〜382;Tanaka,M.、Levy,J.、Terada,M.、Breslow,R.、Rifkind,R.A.and Marks,P.A.(1975)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)72:1003〜1006;Reuben,R.C、Wife,R.L.、Breslow,R.、Rifkind,R.A.and Marks,P.A.(1976)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)73:862〜866);
b)ビタミンD及びレチノイン酸の誘導体(Abe,E.、Miyaura,C、Sakagami,H.、Takeda,M.、Konno,K.、Yamazaki,T.、Yoshika,S and Suda,T.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:4990〜4994;Schwartz,E.L.、Snoddy,J.R.、Kreutter,D.、Rasmussen,H.and Sartorelli,A.C.(1983)Proc.Am.Assoc.Cancer Res.24:18;Tanenaga,K.、Hozumi,M.and Sakagami,Y.(1980)Cancer Res.40:914〜919);
c)ステイロイドホルモン(Lotem,J. and Sachs,L.(1975)Int.J.Cancer 15:731〜740);
d)成長因子(Sachs,L.(1978)Nature(Lond.)274:535、Metcalf,D.(1985)Science,229:16〜22);
e)プロテアーゼ(Scher,W.、Scher,B.M.and Waxman,S.(1983)Exp.Hematol.11:490〜498;Scher,W.、Scher,B.M.and Waxman,S.(1982)Biochem.& Biophys.Res.Comm.109:348〜354);
f)腫瘍プロモーター(Huberman,E.and Callaham,M.F.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:1293〜1297;Lottem,J.and Sachs,L.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:5158〜5162);及び
g)DNA又はRNA合成の阻害剤(Schwartz,E.L.and Sartorelli,A.C.(1982)Cancer Res.42:2651〜2655,Terada,M.、Epner,E.、Nudel,U.、Salmon,J.、Fibach,E.、Rifkind,R.A.and Marks,P.A.(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)75:2795〜2799;Morin,M.J. and Sartorelli,A.C.(1984)Cancer Res.44:2807〜2812;Schwartz,E.L.、Brown,B.J.、Nierenberg,M.、Marsh,J.C and Sartorelli,A.C.(1983)Cancer Res.43:2725〜2730;Sugano,H.、Furusawa,M.、Kawaguchi,T.and Ikawa,Y.(1973)Bibl.Hematol.39:943〜954;Ebert,P.S.、Wars,I.and Buell,D.N.(1976)Cancer Res.36:1809〜1813;Hayashi,M.、Okabe,J.and Hozumi,M.(1979)Gann 70:235〜238)。
【0157】
本発明の化合物は、γ−セクレターゼ阻害剤と併用して、癌の治療又は予防に有用であることもできる。
【0158】
式Iの化合物の治療有効量を、放射線療法と併用して、及び/又はエストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、固有の多剤耐性の阻害剤、制吐剤、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強薬、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療薬、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤及び細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤から選択された第2の化合物と併用して、投与することを含む癌の治療方法も請求の範囲に含まれる。
【0159】
本明細書で記載したヒドロキサム酸化合物と併用したこれらのアプローチ全ての使用は、本発明の範囲内である。
【0160】
投与量及び投与計画
本発明のヒドロキサム酸誘導体を利用する投与計画は、属、種、年齢、体重、性別、治療する癌の種類、治療する疾患の重症度(すなわち、段階)、投与経路、患者の腎機能及び肝機能、使用した特定の化合物又はその塩を含む様々な因子にしたがって選択することができる。通常の熟練した医師又は獣医師は、治療、例えば、疾患の予防、防止(完全又は部分的)又は進行の停止のために必要な薬剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0161】
経口投与の場合、適切な1日投与量は、例えば、約5〜4000mg/mの間で1日1回、1日2回又は1日3回、継続的に(毎日)又は断続的(例えば、1週間に3〜5日)に投与される。例えば、所望する疾患を治療するために使用するとき、ヒドロキサム酸の用量は、1日当たり約2mgから約2000mgの間の範囲であることができる。
【0162】
ヒドロキサム酸誘導体は、1日に1回(QD)、又は1日に2回(BID)及び1日に3回(TID)など1日に多数回に分けて投与される。1日に1回投与するためには、適切に調製された薬剤は必要な1日用量の全量を含有する。したがって、1日に2回投与するためには、適切に調製された薬剤は必要な1日用量の半分を含有する。したがって、1日に3回投与するためには、適切に調製された薬剤は必要な1日用量の3分の1を含有する。
【0163】
さらに、投与は、継続的、すなわち毎日又は断続的であることができる。本明細書では、「断続的」又は「断続的に」という用語は、規則的又は不規則的に停止及び開始することを意味する。例えば、HDAC阻害剤の断続的投与は、1週間に1日から6日投与することができるか、又は周期的な投与(例えば、毎日投与を2から8週間連続した後、投与を行わない休止期を1週間まで設定する。)を意味することができ、あるいは隔日に投与することを意味することができる。
【0164】
一般的に、ヒドロキサム酸誘導体を約1.0mg/mLから約10mg/mLの濃度で含有する静脈内注射用製剤を調製することができる。1例では、1日の全量が約10と約1500mg/mの間であるように、静脈内注射用製剤の十分量を1日で患者に投与することができる。
【0165】
好ましくは当業界で周知の方法にしたがって約5と約12の間の範囲のpHで調製された皮下注射用製剤はまた、以下に説明した通りに、適切な緩衝剤及び等張化剤を含む。1回又は複数回の1日皮下投与で、例えば、毎日1、2又は3回で、HDAC阻害剤の1日用量を送達するために製剤することができる。
【0166】
この化合物は、適切な鼻腔内賦形剤の局所使用によって、又は当業者に周知の経皮パッチの形態を使用した経皮経路によって、鼻腔内に投与することもできる。経皮送達系の形態で投与するために、薬剤投与は、もちろん、投与計画中、断続的に投与するよりも継続的に投与される。
【0167】
本明細書で記載した投与の様々な様式、投与量及び投与計画は、具体的な実施形態を単に説明しているだけであり、本発明の広い範囲を限定するものではないことを当業者は理解されたい。投与量及び投与計画のいかなる変更、変種及び組み合わせも本発明の範囲内に含まれる。
【0168】
本発明の化合物に関して「投与」という用語及びその変種(例えば、化合物を「投与すること」)は、治療を必要とする動物の系にこの化合物又はこの化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明の化合物又はそれらのプロドラッグを1種又は複数の他の活性剤(例えば、細胞毒性剤など)と併用して提供するとき、「投与」及びその変種はそれぞれ、化合物又はそれらのプロドラッグ及びその他の薬剤と同時に、及び連続して導入することを含むものと理解される。
【0169】
本明細書では、「組成物」という用語は、特定の成分を特定の量で含む生成物、ならびに特定の成分の特定の量での組み合わせから直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含するものとする。
【0170】
本明細書では、「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又はその他の臨床医によって求められている組織、系、動物又はヒトにおける生物学的又は医学的応答を惹起する活性化合物又は医薬品の量を意味する。
【0171】
医薬組成物
本発明の化合物及びそれらの誘導体、断片、類縁体、相同体、薬学的に許容される塩又は水和物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤と一緒に、経口投与に適した医薬組成物に取り込むことができる。このような組成物は、一般的に前記の化合物のいずれかの治療有効量及び薬学的に許容される担体を含む。好ましくは、この有効量は、適切な腫瘍細胞の最終分化を選択的に誘導するために有効で、患者において毒性を引き起こす量より少ない量である。
【0172】
担体又は希釈剤として通常使用される任意の不活性な賦形剤、例えば、ガム、澱粉、糖、セルロース物質、アクリル酸又はこれらの混合物は本発明の製剤で使用することができる。好ましい希釈剤は、微結晶性セルロースである。この組成物はさらに、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)及び光沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)を含むことができ、さらに結合剤、緩衝剤、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、安定化剤、増粘剤、甘味料、フィルム形成剤から選択された1種又は複数の添加物又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。さらに、本発明の組成物は、徐放性又は即放性製剤の形態であってよい。
【0173】
一実施形態では、この医薬組成物は経口的に投与され、したがって経口投与に適した形態で、すなわち、固形又は液体調製物として製剤される。適切な固形経口用製剤には、錠剤、カプセル、丸剤、顆粒、小粒などが含まれる。適切な液体製剤には、液剤、懸濁剤、分散剤、エマルジョン、油などが含まれる。本発明の一実施形態では、この組成物はカプセル中に製剤化される。この実施形態によれば、本発明の組成物は、ヒドロキサム酸誘導体活性化合物及び不活性担体又は希釈剤に加えて、硬ゼラチンカプセルを含む。
【0174】
本明細書では、「薬学的に許容される担体」とは、薬剤投与に適合した、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤など、例えば、無菌かつ発熱物質を含まない水を含むものとする。適切な担体は、この分野の標準的参考書であり、本明細書に参照により組み込んだRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。このような担体又は希釈剤の好例には、限定はしないが、水、食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが含まれる。リポソーム及び不揮発性油などの非水性媒体も用いられる。薬学的に活性のある物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当業界では周知である。任意の従来の媒体又は薬剤がこの活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物中におけるそれらの使用は企図される。補助的な活性のある化合物はまた、組成物中に組み入れることができる。
【0175】
このような担体/希釈剤には、限定はしないが、ガム、澱粉(例えば、コーンスターチ、アルファ化澱粉)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース物質(例えば、微結晶性セルロース)、アクリル酸(例えば、ポリメチルアクリル酸)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク又はそれらの混合物が含まれる。
【0176】
液体製剤のために、薬学的に許容される担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、エマルジョン又は油であってよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン又は懸濁液が含まれ、生理食塩水及び緩衝化媒体が含まれる。油の例は、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば、ピーナツ油、ダイズ油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油及び肝油である。溶液又は懸濁液はまた、以下の成分、注射用の水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張性を調節する薬剤を含むことができる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調節することができる。
【0177】
さらに、この組成物はさらに、結合剤(例えば、アカシアゴム、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、アルギン酸、2酸化珪素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアガム、澱粉グリコール酸ナトリウム、Primogel)、様々なpH及びイオン強度の緩衝剤(例えば、トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、表面に対する吸収を防止するためのアルブミン又はゼラチンなどの添加物、界面活性剤(例えば、Tween20、Tween80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、表面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、透過増強剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール)、流動促進剤(例えば、コロイド状二酸化珪素)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化珪素、エチルセルロース、グアガム)、甘味料(例えば、スクロース、アスパルテーム、クエン酸)、矯臭剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバー)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、光沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動補助剤(例えば、コロイド状二酸化珪素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマー被覆剤(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)、被覆及びフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩)及び/又は補助剤を含むことができる。
【0178】
一実施形態では、この活性化合物は、化合物が体から迅速に排出されるのを防止する担体と共に、例えば、移植錠及びマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤で調製される。生体分解可能な生体適合ポリマー、例えば、酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ酢酸を使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかである。この物質はまた、Alza Corporation社及びNova Pharmacuitcals,Inc.社から商用に入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的化したリポソームを含む)はまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法、例えば、米国特許第4522811号に記載された通りに調製することができる。
【0179】
投与を簡便にし、製剤を均一にするためには、投与単位形態で経口組成物を製剤すると特に有利である。本明細書では、投与単位形態とは、治療対象用の単位製剤に適した、物理的に分離された単位のことで、各単位は、必要な医薬担体と共に、所望する治療効果を生じるように計算された、予め決定された量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の詳細は、活性化合物固有の特性及び実現すべき特定の治療効果、ならびに個体治療のためのこのような活性化合物の調剤業界固有の制限によって影響を受け、直接左右される。
【0180】
この医薬組成物は、投与の指示書と共に容器、パック、又はディスペンサーに含めることができる。
【0181】
本発明の化合物は、治療の初日に静脈内投与し、2日目及びその後連続して毎日経口投与することができる。
【0182】
本発明の化合物は、疾患進行の妨害又は腫瘍増殖の安定化のために投与することができる。
【0183】
活性成分を含有する医薬組成物の調製は、当業界でよく理解されており、例えば、混合、顆粒化又は錠剤形成プロセスによる。活性のある治療成分は、薬学的に許容され、この活性成分に適合した賦形剤と共に混合されることが多い。経口投与のためには、この活性剤はその目的に通常使用される添加物、例えば、媒体、安定化剤又は不活性希釈剤と共に混合され、通常の方法によって、投与に適した剤形、例えば、前記で詳述したような錠剤、被覆錠剤、硬又もしくは軟ゼラチンカプセル、水性、アルコール性または油性溶液などに変換される。
【0184】
患者に投与する化合物の量は、患者において毒性を引き起こす量を下回る。ある実施形態では、患者に投与する化合物の量は、患者の血漿中において、化合物の毒性レベル以上の化合物濃度を引き起こす量未満である。患者血漿中の化合物濃度は、約10nMに維持することが好ましい。他の実施形態では、患者血漿中の化合物濃度は、約25nMに維持する。他の実施形態では、患者血漿中の化合物濃度は、約50nMに維持する。他の実施形態では、患者血漿中の化合物濃度は、約100nMに維持する。他の実施形態では、患者血漿中の化合物濃度は、約500nMに維持する。他の実施形態では、患者血漿中の化合物濃度は、約1000nMに維持する。他の実施形態では、患者血漿中の化合物濃度は、約2500nMに維持する。他の実施形態では、患者血漿中の化合物濃度は、約5000nMに維持する。本発明の実施で患者に投与すべき化合物の最適な量は、使用する特定の化合物及び治療する癌の種類に左右される。
【0185】
本発明には、式Iの化合物の治療有効量ならびにエストロゲン受容体調節因子、アンドロゲン受容体調節因子、レチノイド受容体調節因子、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療薬、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤及び細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤から選択された第2の化合物を含む、癌の治療又は予防に有用な医薬組成物も含まれる。
【0186】
インビトロ方法:
本発明はまた、腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスの誘導、それによるこのような細胞の増殖阻害のための本発明のヒドロキサム酸誘導体の使用方法を提供する。この方法は、インビボ又はインビトロで実施することができる。
【0187】
一実施形態では、本発明は、細胞に本明細書で記載した任意の1種又は複数のヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を接触させることによる腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスの選択的誘導、それによるこのような細胞の増殖阻害のためのインビトロ法を提供する。
【0188】
具体的な実施形態では、本発明は、腫瘍細胞の最終分化を選択的に誘導し、それによってこのような細胞の増殖を阻害するインビトロ法に関する。この方法は、適切な条件下で、細胞に本明細書で記載した1種又は複数のヒドロキサム酸化合物の治療有効量を接触させることを含む。
【0189】
他の実施形態では、本発明は、腫瘍細胞の細胞増殖停止を選択的に誘導し、それによってこのような細胞の増殖を阻害するインビトロ法に関する。この方法は、適切な条件下で、細胞に本明細書で記載した1種又は複数のヒドロキサム酸化合物の治療有効量を接触させることを含む。
【0190】
他の実施形態では、本発明は、腫瘍細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、それによってこのような細胞の増殖を阻害するインビトロ法に関する。この方法は、適切な条件下で、細胞に本明細書で記載した1種又は複数のヒドロキサム酸化合物の治療有効量を接触させることを含む。
【0191】
他の実施形態では、本発明は、細胞に本明細書で記載したヒドロキサム酸化合物の任意の1種又は複数の治療有効量を接触させることを含む、腫瘍における腫瘍細胞の最終分化を誘導するインビトロ法に関する。
【0192】
本発明の方法はインビトロで実施することができるが、腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導し、HDACを阻害する方法のための好ましい実施形態は、インビボによって、すなわち治療を必要とする腫瘍細胞又は癌細胞を有する対象に化合物を投与することにより細胞を接触させることを含むものとする。
【0193】
したがって、本発明は対象に本明細書で記載した任意の1種又は複数のヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を投与することによって、対象における腫瘍細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導し、それによって対象におけるこのような細胞の増殖を阻害するためのインビボ法を提供する。
【0194】
具体的な実施形態では、本発明は、腫瘍細胞の最終分化を選択的に誘導し、それによる対象におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。この方法は、本明細書で記載した1種又は複数のヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を対象に投与することを含む。
【0195】
他の実施形態では、本発明は、腫瘍細胞の細胞増殖停止を選択的に誘導し、それによって対象におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。この方法は、本明細書で記載した1種又は複数のヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を対象に投与することを含む。
【0196】
他の実施形態では、本発明は、腫瘍細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、それによって対象におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。この方法は、本明細書で記載した1種又は複数のヒドロキサム酸誘導体の治療有効量を対象に投与することを含む。
【0197】
他の実施形態では、本発明は腫瘍細胞増殖を特徴とする腫瘍を有する患者の治療方法に関する。この方法は、本明細書で記載した1種又は複数のヒドロキサム酸誘導体を患者に投与することを含む。化合物の量は、このような腫瘍細胞の最終分化を選択的に誘導し、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを誘導し、それによってそれらの増殖を阻害するのに有効である。
【0198】
本発明は、以下の実験の詳細の項において実施例で例示される。この項は、本発明を理解するために記載されており、どのような点からも、以下の特許請求の範囲に記載される本発明を制限するものであってはならない。
【実施例】
【0199】
(実験の詳細の項)
(実施例1−合成法)
本発明の化合物は、以下に例示したように、以下の合成スキームに概略した一般的方法によって調製された。
【0200】
A1.5&6−オキソエチルベンゾチオフェン由来の化合物
スキーム1は、5&6−オキソエチルベンゾチオフェンの使用を例示している。
【0201】
【化22】

【0202】
A1のための方法。6−オキソエチルベンゾチオフェン由来の化合物
【0203】
【化23】

【0204】
エチル6−ブロモ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシレート。水素化ナトリウム(鉱油による60%分散液、0.73g、18.3mmol)をDMSO(10mL)に懸濁し、メルカプト酢酸エチル(1.11mL、10.1mmol)を、発熱を和らげるために水浴を使用して少しずつ添加した。完全に添加して、水浴を取り除き、15分間攪拌を継続した。DMSO(2mL)に溶かした4−ブロモ−2−フルオロベンズアルデヒド(1.86g、9.16mmol)の溶液を1回で添加した。暗色の溶液を15分間攪拌してから冷水(300mL)に注いだ。生成物をEtO(2×200mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮した。MPLCによって残渣を精製して、所望する生成物1.15gを得た(淡黄色固形物、44%)。H NMR(DMSO−d)δ8.37(d、J=1.8Hz、1H)、8.17(s、1H)、7.94(d、J=8.4Hz、1H)、7.60(dd、J=8.4、1.8Hz、1H)、4.32(q、J=7.2Hz、2H)、1.30(t、J=7.2Hz、3H)。
【0205】
【化24】

【0206】
ジ−tert−ブチル[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル]マロナート。ジ−tert−ブチルマロナート(1.5g、6.93mmol)をTHF(6mL)に溶かし、水素化ナトリウム(鉱油による60%分散液、0.28g、7.00mmol)を添加した。この混合物を10分間攪拌してからPd(PtBu(0.1g、0.196mmol)及びTHF(12mL)に溶かしたエチル6−ブロモ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート(1.8g、6.31mmol)の溶液を添加した。得られた混合物をN下で18時環流しながら加熱した。室温にして、飽和NHCl(150mL)を添加し、生成物をEtOAc(2×125mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物をMgSOで乾燥し、真空中で濃縮した。MPLCによって残渣を精製して、所望する生成物1.27gを得た(淡黄色固形物、48%)。H NMR(DMSO−d)δ8.17(s、1H)、8.01(s、1H)、7.99(d、J=8.4Hz、1H)、7.45(dd、J=8.4、1.8Hz、1H)、4.83(s、1H)、4.33(q、J=7.2Hz、2H)、1.40(s、18H)、1.31(t、J=7.2Hz、3H)。
【0207】
【化25】

【0208】
[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル]マロン酸。ジ−tert−ブチル[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル]マロナート(0.873g、2.08mmol)をDCM(5mL)に溶かし、TFA(5mL)を添加した。この溶液を室温で2時間攪拌した。この溶媒を真空中で除去し、残渣を飽和NaHCO−EtOAcの間で分画した。水相は2N HClで酸性化し、EtOAcで抽出した。一緒にした有機抽出物をMgSOで乾燥し、真空中で濃縮して、生成物0.60g(白色固形物、94%)を得た。H NMR(DMS0−d)δ13.10(br s、2H)、8.17(s、1H)、8.03(s、1H)、7.98(d、J=8.4Hz、1H)、7.47(dd、J=8.4、1.8Hz、1H)、4.83(s、1H)、4.33(q、J=7.2Hz、2H)、1.32(t、J=7.2Hz、3H)。
【0209】
【化26】

【0210】
[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル]酢酸。[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル]マロン酸(0.60g、1.95mmol)をHO(4mL)に懸濁してから、マイクロ波反応器において200℃で60秒間加熱した。この懸濁液をHO(50mL)で希釈して、生成物をEtOAc(3×75mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮して、生成物0.51g(白色固形物、99%)を得た。H NMR(DMSO−d)δ12.42(br s、1H)、8.15(s、1H)、7.94(d、J=8.4Hz、1H)、7.91(s、1H)、7.35(dd、J=8.4、1.8Hz、1H)、4.32(q、J=7.2Hz、2H)、3.71(s、2H)、1.32(t、J=7.2Hz、3H)。
【0211】
【化27】

【0212】
2−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−1,3−ジオキソラン。4−ブロモ−2−フルオロベンズアルデヒド(9.4g、46.3mmol)、エチレングリコール(13.2mL)、オルトギ酸トリエチル(6.6mL)及びp−トルエンスルホン酸(0.09g、0.473mmol)をDCE(50mL)中で80℃で2.5時間攪拌した。室温にして、溶液を飽和NaHCO、HO及び食塩水で順次洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮して、生成物11.4g(淡黄色油状物、100%)を得た。H NMR(CDCl)δ7.41(t、J=8.1Hz、1H)、7.30(dd、J=8.1、1.8Hz、1H)、7.25(dd、J=9.6、1.8Hz、1H)、6.02(s、1H)、4.13(m、2H)、4.04(m、2H)。
【0213】
【化28】

【0214】
ジ−tert−ブチル[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−3−フルオロフェニル]マロナート。ジ−tert−ブチルマロナート(1.95g、9.02mmol)をTHF(8mL)に溶かし、水素化ナトリウム(鉱油による60%分散液、0.36g、9.00mmol)を添加した。この混合物を10分間攪拌してからPd(PtBu(0.17g、0.333mmol)及びTHF(16mL)に溶かした2−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−1,3−ジオキソラン(2.03g、8.22mmol)の溶液を添加した。得られた混合物をN下で18時環流しながら加熱した。室温にして、飽和NHCl(150mL)を添加し、生成物をEtOAc(125mL)で抽出した。有機抽出物をMgSOで乾燥し、真空中で濃縮した。MPLCによって残渣を精製して、所望する生成物2.47gを得た(淡黄色油状物、79%)。H NMR(CDCl)δ7.50(t、J=8.1Hz、1H)、7.16(m、2H)、6.07(s、1H)、4.40(s、1H)、4.13(m、2H)、4.03(m、2H)、1.45(s、18H)。
【0215】
【化29】

【0216】
ジ−tert−ブチル[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−3−フルオロフェニル](メチル)マロナート。ジ−tert−ブチル[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−3−フルオロフェニル]マロナート(2.45g、6.41mmol)、ヨードメタン(0.80mL、12.85mmol)及び炭酸カリウム(1.78g、12.9mmol)をDMF(10mL)に懸濁し、密封管中で70℃で3時間加熱した。ヨードメタンをさらに添加し(0.60mL、9.64mmol)、75℃で3時間加熱を継続した。室温にして、HO(150mL)を添加し、生成物をEtO(2×100mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮した。MPLCによって残渣を精製して、透明な生成物0.91gを得た(オレンジ色油状物、36%)。H NMR(CDCl)δ7.47(t、J=8.1Hz、1H)、7.19(dd、J=8.1、1.8Hz、1H)、7.17(dd、J=12.0、1.8Hz、1H)、6.07(s、1H)、4.13(m、2H)、4.03(m、2H)、1.74(s、3H)、1.45(s、18H)。
【0217】
【化30】

【0218】
ジ−tert−ブチル(3−フルオロ−4−ホルミルフェニル)(メチル)マロナート。ジ−tert−ブチル[4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−3−フルオロフェニル)(メチル)マロナート(0.91g、2.30mmol)及びチオウレア(0.87g、11.4mmol)を環流するEtOH/HO(6.7mL/6.7mL)中で7時間攪拌した。室温にして、溶媒を真空中で除去した。HO(100mL)を残渣に添加して、生成物をEtOAc(2×100mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮して、透明な生成物0.81g(淡黄色ガム、100%)を得た。H NMR(CDCl)δ10.33(s、1H)、7.82(t、J=8.1Hz、1H)、7.31(dd、J=8.1、1.8Hz、1H)、7.27(dd、J=12.0、1.8Hz、1H)、1.77(s、3H)、1.46(s、18H)。
【0219】
【化31】

【0220】
ジ−tert−ブチル[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル](メチル)マロナート。水素化ナトリウム(鉱油による60%分散液、0.19g、4.75mmol)をDMSO(2.5mL)に懸濁し、メルカプト酢酸(0.28mL、2.54mmol)を、発熱を和らげるために水浴を使用して少しずつ添加した。完全に添加して、水浴を取り除き、15分間攪拌を継続した。DMSO(0.5mL)に溶かしたジ−tert−ブチル(3−フルオロ−4−ホルミルフェニル)(メチル)マロナート(0.81g、2.30mmol)の溶液を1回で添加した。オレンジ色の溶液をヒートガンで暖め、暗褐色の溶液を得た。HO(150mL)を添加して、生成物をEtOAc(2×100mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮した。MPLCによって残渣を精製して、所望する生成物0.22gを得た(淡黄色固形物、22%)。H NMR(CDCl)δ8.01(s、1H)、7.88(d、J=1.8Hz、1H)、7.81(d、J=8.4Hz、1H)、7.48(dd、J=8.4、1.8Hz、1H)、4.39(q、J=7.2Hz、2H)、1.84(s、3H)、1.47(s、18H)、1.40(t、J=7.2Hz、3H)。
【0221】
【化32】

【0222】
[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル](メチル)マロン酸。ジ−tert−ブチル[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル](メチル)マロナート(0.26、0.598mmol)をDCM(1.5mL)に溶かし、TFA(1.5mL)を添加した。この溶液を室温で2時間攪拌した。この溶媒を真空中で除去し、残渣を飽和NaHCO−EtOAcの間で分画した。水相は2N HClで酸性化し、EtOAcで抽出した。一緒にした有機抽出物をMgSOで乾燥し、真空中で濃縮して、生成物0.193g(淡黄色固形物、100%)を得た。H NMR(DMSO−d)δ13.12(br s、2H)、8.14(s、1H)、8.03(d、J=1.8Hz、1H)、7.95(d、J=8.4Hz、1H)、7.47(dd、J=8.4、1.8Hz、1H)、4.32(q、J=7.2Hz、2H)、1.77(s、3H)、1.31(t、J=7.2Hz、3H)。
【0223】
【化33】

【0224】
2−[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル]プロピオン酸。[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル](メチル)マロン酸(0.19g、0.590mmol)をHO(5mL)に懸濁してからマイクロ波反応器において210℃で40秒間加熱した。この懸濁液をHO(50mL)で希釈して、生成物をEtOAc(2×75mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮して、生成物0.15g(白色固形物、91%)を得た。H NMR(DMSO−d)δ12.41(br s、1H)、8.14(s、1H)、7.95(br s、1H)、7.94(d、J=8.4Hz、1H)、7.37(dd、J=8.4、1.8Hz、1H)、4.32(q、J=7.2Hz、2H)、3.81(q、J=7.2Hz、1H)、1.40(d、J=7.2Hz、3H)、1.31(t、J=7.2Hz、3H)。
【0225】
【化34】

【0226】
エチル6−(2−アニリノ−2−オキソエチル)−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル]酢酸(0.2g、0.757mmol)、EDCI(0.22g、1.15mmol)及びHOBt(0.16g、1.18mmol)をDMF(6mL)中で10分間攪拌し、アニリン(85mg、0.913mmol)を添加した。この溶液を室温で3日間攪拌した。この溶媒を真空中で除去し、残渣を飽和HO−EtOAcの間で分画した。水相をEtOAcでさらに抽出した。一緒にした有機抽出物を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で濃縮した。EtOを添加し、得られたベージュの固形物を濾過によって収集して、生成物0.17gを得た(66%)。H NMR(DMSO−d)δ10.21(s、1H)、8.15(s、1H)、7.96(s、1H)、7.95(d、J=8.4Hz、1H)、7.57(d、J=7.8Hz、2H)、7.42(dd、J=8.4、1.2Hz、1H)、7.27(t、J=7.2Hz、2H)、7.01(t、J=7.2Hz、1H)、4.32(q、J=7.2Hz、2H)、3.78(s、2H)、1.31(t、J=7.2Hz、3H)。
【0227】
【化35】

【0228】
6−(2−アニリノ−2−オキソエチル)−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド。N−ヒドロキシ−6−{2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソ−[(2−フェニルエチル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミドのエステルの変換と同様の方法を使用した。H NMR(DMSO−d)δ11.45(s、1H)、10.19(s、1H)、9.24(s、1H)、7.92(s、1H)、7.87(d、J=8.4Hz、1H)、7.85(d、J=7.8Hz、1H)、7.57(d、J=7.8Hz、2H)、7.38(d、J=8.4Hz、1H)、7.27(t、J=7.8Hz、2H)、7.01(t、J=7.8Hz、1H)、3.76(s、2H)。MS:計算値327(MH)、測定値327(MH)。
【0229】
前記化合物の他の類縁体は、6−(2−アニリノ−2−オキソエチル)−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミドの調製で説明したものと同様の方法で調製された。
【0230】
オキサジアゾール
【0231】
【化36】

【0232】
エチル6−{2−[2−(4−メトキシベンゾイル)ヒドラジノ]−2−オキソエチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。DMF2mLに溶かした[2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチエン−6−イル]酢酸(100mg、0.38mmol)及び4−メトキシベンゾヒドラジド(63mg、0.38mmol)の溶液に3−{[(エチルイミノ)メチレン]アミノ}−N,N−ジメチルプロパン−1−アミニウムクロリド(91mg、0.47mmol)を添加した。この反応物を周囲温度で12時間攪拌した。この反応混合物を精製するために逆相C18カラムに直接添加し、表題化合物78mg(49%)を白色固形物として得た。LC/MS(EI):計算値413.1(MH)、測定値413.1(MH)。
【0233】
【化37】

【0234】
エチル6−{[5−(4−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]メチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。THFに溶かしたエチル6−{2−[2−(4−メトキシベンゾイル)ヒドラジノ]−2−オキソエチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート(78mg、0.19mmol)及び(メトキシカルボニルスルファモイル)−トリエチルアンモニウムヒドロキシド、不活性塩(113mg、0.47mmol)をマイクロ波で100℃で10分間加熱した。この反応物をシリカのパッドで濾過して、酢酸エチルで洗浄した。有機物を留去して乾燥させ、表題化合物70mg(94%)を透明の油状物として得た。LC/MS(EI):計算値395.1(MH)、測定値395.1(MH)。
【0235】
前記オキサジアゾール類のヒドロキサム酸類縁体は、6−(2−アニリノ−2−オキソエチル)−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミドの調製で説明したものと同様の方法で調製された。
【0236】
A2.5&6−オキソベンゾチオフェン由来の化合物
スキーム2は、アミノ酸様類縁体について5&6−オキソベンゾチオフェンの使用を例示している。
【0237】
【化38】

【0238】
A2のための方法。5&6−オキソベンゾチオフェン由来の化合物
【0239】
【化39】

【0240】
ベンゾ[b]チオフェン−2,6−ジカルボン酸2−エチルエステル6−メチルエステル。無水DMF140mLに溶かした4−ホルミル−3−ニトロ−安息香酸メチルエステル(15.22g、72.78mmol)、メルカプト酢酸エチルエステル(8.70mL、79.3mmol)及びKCO(12.87g、93.12mmol)の混合物を50℃で一晩加熱した。室温まで冷却した後、この混合物を1Lの氷水に注ぎ、得られた混合物を40分間攪拌した。形成した固形物を濾過し、水4×70mLで洗浄した。乾燥後、ベンゾ[b]チオフェン−2,6−ジカルボン酸2−エチルエステル6−メチルエステルが淡色固形物として得られた。H NMR(CDCl、200MHz)δ8.56(s、1H)、8.09〜7.97(m、2H)、7.88(d、J=8.0Hz、1H)、4.40(q、J=7.2Hz、2H)、3.95(s、3H)、1.40(t、J=6.8Hz、3H)。MS(EI):計算値265.0(MH)、測定値265.0(MH)。
【0241】
【化40】

【0242】
ベンゾ[b]チオフェン−2,6−ジカルボン酸2−エチルエステル。無水ピリジン120mLに溶かしたベンゾ[b]チオフェン−2,6−ジカルボン酸2−エチルエステル6−メチルエステル(14,90g、56.38mmol)及びLiI(37.96g、283.6mmol)の混合物を3時間環流した。室温まで冷却した後、この混合物を氷冷した2N HCl(800mL)に注いだ。形成した固形物を濾過し、水3×100mLで洗浄した。乾燥後、この固形物をMeOHから結晶化し、ベンゾ[b]チオフェン−2,6−ジカルボン酸2−エチルエステルを淡色固形物として得た。H NMR(DMSO−d、200MHz)δ8.66(s、1H)、8.21(s、1H)、8.08(d、J=8.4Hz、1H)、7.96(dd、J=8.4、1.0Hz、1H)、4.34(q、J=7.2Hz、2H)、1.40(t、J=6.8Hz、3H)。MS(EI):計算値251.0(MH)、測定値251.1(MH)。
【0243】
【化41】

【0244】
6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル。無水THF250mLに溶かしたベンゾ[b]チオフェン−2,6−ジカルボン酸2−エチルエステル(6.40g、25.57mmol)の溶液に、BH(1.5MのTHF溶液、80.0mL、120mmol)を0℃でゆっくり添加した。得られた混合物を0℃で30分及び室温で一晩攪拌させた。0℃まで冷却後、この反応混合物を1N HCl(30mL)で反応停止させた。水120mLをさらに添加し、THFを真空中で除去した。形成した固形物を濾過し、水2×20mLで洗浄した。乾燥後、6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステルを淡色固形物として得た。H NMR(CDCl、200MHz)δ8.00(s、1H)、7.88〜7.76(m、2H)、7.36(d、J=9.4Hz、1H)、4.80(s、2H)、4.38(q、J=7.0Hz、2H)、2.00(brs、1H)、1.39(t、J=7.0Hz、3H)。MS(EI):計算値237.0(MH)、測定値237.1(MH)。
【0245】
【化42】

【0246】
6−ホルミル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル。CHCl110mLに溶かした6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(2.651g、11.22mmol)の溶液に、MnO(13.50g)を添加した。この混合物を室温で30分間攪拌し、その後セライトのパッドで濾過した。濾液を濃縮し、乾燥して、6−ホルミル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステルを淡色固形物として得た。H NMR(CDCl、200MHz)δ10.09(s、1H)、8.34(s、1H)、8.07(s、1H)、7.97(d、J=8.0Hz、2H)、7.88(dd、J=8.4、1.4Hz、1H)、4.40(q、J=7.0Hz、2H)、1.41(t、J=7.0Hz、3H)。MS(EI):計算値235.0(MH)、測定値235.1(MH)。
【0247】
【化43】

【0248】
6−ニトロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル。DMF(60mL)に溶かした2,4−ジニトロベンゾアルデヒド(6.45g、32.9mmol)及びKCO(5.45g、39.4mmol)の混合物にチオグリコール酸メチル(3.0mL、32.9mmol)をゆっくり添加した。この混合物をRTで1時間、次いで50℃で2時間攪拌した。得られた混合物をHO/氷に注ぎ、沈殿が形成するまで攪拌した。この固形物を濾過し、熱いMeOHで磨砕した。淡褐色の固形物が濾過された。H NMR(DMSO−d)δ9.13(s、1H)、8.33(s、1H)、8.30〜8.17(m、2H)、3.89(s、3H)。MS(EI):計算値(MH)238.01、測定値(MH) 238.10。
【0249】
【化44】

【0250】
6−アミノ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル。DMF(120mL)に溶かした6−ニトロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(3.9g、15.8mmol)の溶液に、10%Pd/C(700mg、10wt%)を攪拌しながら添加した。反応物にHを充填し、脱気及び水素再充填を3回繰り返した。スラリーをRTでバルーン圧下で4日間攪拌し、その後セライトのプラグで濾過して、溶媒を減圧下で除去した。固形物をEtOAcで洗浄し濾過して、所望するアミンを得た。H NMR(CDCl)δ7.92(s、1H)、7.65(d、J=8.4Hz、1H)、7.08(s、1H)、6.78(d、J=8.4Hz、1H)、3.92(s、3H)。MS(EI):計算値(MH)208.04、測定値(MH)208.1。
【0251】
【化45】

【0252】
5−ニトロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル。無水DMF330mLに溶かした2−クロロ−5−ニトロ−ベンズアルデヒド(31.01g、167.1mmol)の溶液に、0℃でKCO(27.80g、201.1mmol)を添加し、その後メルカプト酢酸エチルエステル(18.5mL、168.7mmol)をゆっくり添加した。0℃で20分攪拌した後、得られた混合物を室温まで暖めて、室温で一晩攪拌した。次に、この反応混合物を水1.5mLに注いだ。形成した固形物を濾過し、水600mLで洗浄した。乾燥後、5−ニトロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステルを淡色固形物として得た。MS(EI):計算値252.0(MH)、測定値252.1(MH)。
【0253】
【化46】

【0254】
5−アミノ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル。EtOH450mLに溶かした5−ニトロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(10.52g、41.89mmol)及び10%Pd/C(1.1g)の懸濁液をH1atm下で室温で4日間水素化した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮して、乾燥して、5−アミノ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステルを緑色固形物として得た。並行して5−ニトロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル10.61gに同様の方法で反応を実施した。5−アミノ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステルが全量18.37gで得られた。MS(EI):計算値222.0(MH)、測定値222.2(MH)。
【0255】
【化47】

【0256】
5−ヨード−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル。5−アミノ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(18.37g、83.02mmol)に、HCl水溶液(HO200mLに溶かした濃HCl21mL、252mmol)を添加し、得られた混合物を0℃まで冷却した。NaNOの溶液(HO60mLに6.02gを溶かす、87.25mmol)を添加し、この混合物を0℃で10分間攪拌した。NaI(HO60mLに13.07gを溶かす、87.20mmol)をゆっくり添加した。この反応混合物は、NaIを添加する間に攪拌することが困難になった。水を全量で300mL数回に分けて添加した。添加完了後、反応物を室温まで暖め、室温で2時間攪拌した。次に、この混合物をCHCl(800mL)及び水(100mL)で希釈した。有機層を分離し、飽和NaCO200mLで洗浄し、NaSOで乾燥させた。濾過後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルのパッドで濾過して、EtOAc/ヘキサン(0%から10%)で洗浄した。その後、濾液を濃縮し、残渣をMeOHで再結晶化して、5−ヨード−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステルを淡いオレンジ色の固形物として得た。MS(EI):計算値332.9(MH)、測定値333.1(MH)。
【0257】
【化48】

【0258】
5−ホルミル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル。5−ヨード−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(14.09g、42.42mmol)の溶液に、イソプロピルマグネシウムブロミド(0.7MのTHF溶液、85mL、59.5mmol)の溶液を−40℃でゆっくり添加した。この混合物を−40℃で2時間攪拌し、N−メチル−N−ピリジン−2−イル−ホルムアミド(7.65mL、63.9mmol)をゆっくり添加した。室温まで暖めた後、この混合物をさらに2.5時間攪拌した。この混合物に1N HCl250mLを注意深く添加した。10分間攪拌後、この反応混合物をCHCl(800mL)で希釈した。有機層を分離し、飽和NaCO200mLで洗浄し、NaSOで乾燥させた。濾過後、濾液を濃縮し、残渣をMeOHで再結晶化して、5−ホルミル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステルを黄色固形物として得た。H NMR(CDCl、200MHz)δ10.12(s、1H)、8.37(s、1H)、8.18(s、1H)、8.08〜7.90(m、2H)、4.44(q、J=7.2Hz、2H)、1.44(t、J=7.4Hz、3H)。MS(EI):計算値235.0(MH)、測定値235.1(MH)。
【0259】
【化49】

【0260】
エチル6−{[メトキシ(メチル)アミノ]カルボニル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。2−(エトキシカルボニル)−1−ベンゾチオフェン−6−カルボン酸(2.5g、10.0mmol)をDMF(20mL)に溶解し、0℃まで冷却した。EDCI(1.92g、10.0mmol)、次いで(MeO)NHMe・HCl(1.5g、15.0mmol)及びEtN(1.4mL、10.0mmol)をこの反応物に添加した。この反応物を0℃で1時間攪拌した。水をこの反応混合物に添加し、次にEtOで抽出した(3×)。一緒にした有機相をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して、粗アミドを得た。フラッシュクロマトグラフィーによる精製で所望するアミドが得られた。H NMR(CDC1、600MHz)δ8.20(s、1H)、8.04(s、1H)、7.87(d、J=8.4Hz、1H)、7.69(dd、J=8.4、1.0Hz、1H)、4.39(d、J=7.2Hz、2H)、3.54(s、3H)、3.38(s、3H)、1.4(t、J=7.2Hz、3H)。MS:計算値(MH)294、測定値(MH)294。
【0261】
【化50】

【0262】
エチル6−アセチル−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。THF(3mL)に溶かしたエチル6−{[メトキシ(メチル)アミノ]カルボニル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート(0.07g、0.22mmol)の溶液に、MeLi(0.15mL、1.6MのEtO溶液、0.24mmol)を−78℃で添加した。この反応物を−78℃で1時間攪拌してから、飽和塩化アンモニウム溶液を添加して反応を停止した。このとき、反応混合物を室温まで暖め、その後ヘキサン:酢酸エチル溶液(3:1)の混合物で抽出した(3×)。一緒にした有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。粗混合物にクロマトグラフィーを行って、ケトンを得た。H NMR(CDCl、600MHz)δ8.46(s、1H)、8.07(s、1H)、7.98(dd、J=8.2、1.2Hz、1H)、7.92(m、1H)、4.42(q、J=7.1Hz、2H)、2.69(s、3H)、1.42(t、J=7.2Hz、3H)。MS:計算値(MH)249、測定値(MH)249。
【0263】
【化51】

【0264】
N−ヒドロキシ−6−{2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソ−1−[(2−フェニルエチル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド。6−ホルミル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(40mg、0.182mmol)、イソシアニド(24.4mg、0.182mmol)、TFA(14.0μL、.182mmol)及びフェネチルアミン(27μL、0.218mmol)及びMeOH(50μL)をバイアル中で一緒にして、100℃で1時間加熱した。褐色の液体をフラッシュクロマトグラフィーによって酢酸エチル/ヘキサン10〜80%で精製して、粗縮合生成物を得た。この固形物をMeOH2mL及びDMF1mLに溶解し、ヒドロキシルアミン50%水溶液2mLを添加して、この溶液を24時間攪拌した。この溶液を逆相HPLCで精製して、ヒドロキサメート2 21mg(24%)を得た。H NMR(600MHz)δ2.99〜3.02(m、1)、3.05〜3.06(m、1)、3.11〜3.14(m、1)、3.24〜3.27(m、1)、3.74(s、3)、5.18(s、1)、6.85(d、2、J=9.2)、7.21〜7.25(m、3)、7.30(t、1、J=7.7)、7.43(d、1、J=9.1)、7.64(d、1、J=8.5)、7.86(s、1)、8.02(d、1、7=8.2)、8.18(s、1)。MS:計算値476(MH)、測定値476(MH)。
【0265】
A3.5&6−アミノメチルベンゾチオフェン由来の化合物
スキーム3は、1及び2アミン、エーテル、アシル化アミノメチル化合物を生成するための5&6−アミノメチルベンゾチオフェンの使用を例示する。
【0266】
【化52】

【0267】
A3.5&6アミノアルキルベンゾチオフェン由来の化合物
【0268】
【化53】

【0269】
6−アミノメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル、塩酸塩。無水THF(80mL)に溶かした6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(2.52g、10.7mmol)及びトリエチルアミン(3.00mL、21.5mmol)の溶液に、メタンスルホニルクロリド(1.24mL、16.0mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を0℃で30分攪拌し、EtOAc(400mL)で希釈し、飽和NaHCO、水及び食塩水で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させた。濾過後、濾液を濃縮し、残渣を無水DMF(60mL)に溶解した。アジ化ナトリウム(1.41g、21.6mmol)を添加後、混合物を50℃で30分間加熱した。室温まで冷却後、この混合物をEtOAc(300mL)及び水(60mL)で希釈した。有機層をさらに水及び食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させた。濾過後、濾液を濃縮し、残渣をTHF(60mL)及び水(6mL)に溶解した。トリフェニルホスフィン(3.64g、13.9mmol)を添加し、この混合物を室温で一晩攪拌し、その後濃縮した。この残渣をエーテル(400mL)に溶解し、4M HClのジオキサン溶液(6mL)を滴下した。形成した固形物をエーテル(5×30mL)で洗浄し乾燥して、6−アミノメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル塩酸塩を淡色固形物として得た。H NMR(DMSO−d、200MHz)δ8.66(brs、2H)、8.24〜8.10(m、2H)、8.06(d、J=8.6Hz、1H)、7.62(dd、J=8.4、1.6Hz、1H)、4.34(q、J=7.4Hz、2H)、4.13(s、2H)、1.32(t、J=7.0Hz、3H)。MS(EI):計算値236.1(MH)、測定値236.1(MH)。
【0270】
【化54】

【0271】
6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸2メチルエステル。無水MeOH(200mL)に溶かした6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(9.45g、40.0mmol)及びDBU(6.00mL、40.1mmol)の溶液を2日間攪拌した。濃縮後、残渣をEtOAc(800mL)に溶解し、1N HCl、水、飽和NaHCO及び食塩水で洗浄した。有機層を乾燥し、濾過し、濾液を濃縮し、乾燥して、6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルをオフホワイトの固形物として得た。H NMR(CDCl、200MHz)δ8.03(d、J=0.6Hz、1H)、7.90〜7.80(m、2H)、7.39(dd、J=8.0、1.4Hz、1H)、4.83(s、2H)、3.94(s、3H)、1.98(brs、1H)。MS(EI):計算値223.0(MH)、測定値223.1(MH)。
【0272】
【化55】

【0273】
6−アミノメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル、塩酸塩。表題化合物は、6−アミノメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル塩酸塩の調製で説明したものと同様の方法で、6−ヒドロキシメチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルから調製した。H NMR(DMSO−d、200MHz)δ8.70(brs、2H)、8.24〜8.12(m、2H)、8.05(d、J=8.4Hz、1H)、7.63(dd、J=8.0、1.0Hz、1H)、4.20〜4.14(m、2H)、3.88(s、3H)。MS(EI):計算値222.0(MH)、測定値222.1(MH)。
【0274】
【化56】

【0275】
エチル6−(1−ヒドロキシエチル)−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。THF/EtOH(20/20mL)に溶かしたエチル6−アセチル−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート(2.0g、8.06mmol)の冷却溶液(0℃)に水素化ホウ素ナトリウム(308mg、8.14mmol)を何回かに分けて添加した。2時間後、反応を飽和NHClで停止させた。得られた混合物をEtOAc(40mL)で希釈し、水及び食塩水で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過して濃縮した。得られた残渣(2.1g)は、さらに精製せずに使用した。MS(EI):計算値251(MH)、測定値251(MH)。
【0276】
【化57】

【0277】
エチル6−(1−アジドエチル)−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。トルエン(30mL)に溶かしたエチル6−(1−ヒドロキシエチル)−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート(2.0g、8.06mmol)の溶液に、ジフェニルホスホリルアジド(2.64g、9.58mmol)、次いでDBU(1.31mL、8.69mmol)を滴下した。24時間後、さらにアジド(0.5mL)及びDBU(0.3mL)をこの粘稠な溶液に添加した。添加24時間後、反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、所望する生成物(1.77g、2段階で80.4%)を得た。H NMR(CDCl、600MHz)δ8.03(d、J=0.9Hz、1H)、7.87(d、J=8.2Hz、1H)、7.81(m、1H)、7.36(dd、J=8.2、0.9Hz、1H)、4.75(q、J=6.8Hz、1H)、4.40(q、J=7.3Hz、2H)、1.58(d、J=6.8Hz、3H)、1.41(t、J=7.3Hz、3H)。MS:計算値276(MH)、測定値276(MH)。
【0278】
【化58】

【0279】
エチル6−(1−アミノエチル)−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。EtOAc(50mL)に溶かしたエチル6−(1−アジドエチル)−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート(1.7g、6.17mmol)の溶液に10%Pd/C(170mg)を添加し、得られたスラリーをH1atm下でRTで4時間水素化した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を濃縮して乾燥して所望する生成物(1.51g、98.6%)を得た。H NMR(CDCl、600MHz)δ8.01(d、J=0.9Hz、1H)、7.84(m、1H)、7.81(d、J=8.2Hz、1H)、7.38(dd、J=8.2、0.9Hz、1H)、4.39(q、J=7.3Hz、2H)、4.25(q、J=6.8Hz、1H)、1.44(d、J=6.8Hz、3H)、1.40(t、J=7.3Hz、3H)。MS:計算値250(MH)、測定値250(MH)。
【0280】
【化59】

【0281】
エチル6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシラート。エチル6−アセチル−1−ベンゾチオフェン−6−カルボキシラート(0.3g、1.21mmol)をDCE(3.0mL)に溶解した。次に、4−メトキシベンジルアミン、次いで、酢酸(0.1mL、1.69mmol)及びNaBH(OAc)(0.41g、1.93mmol)をこの反応物に添加した。この反応物を室温で5日間攪拌してから、飽和重炭酸ナトリウム溶液で反応停止した。次に、この反応混合物を酢酸エチルで抽出して(3×)、一緒にした有機層をNaSOで乾燥させた。真空で濃縮した後、粗反応混合物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、アミンを得た。H(600MHz、CDCl)δ8.03(s、1H)、7.84(s、1H)、7.82(s、1H)、7.41(d、J=8.9Hz、1H)、7.18(d、J=8.5Hz、2H)、6.85(d、J=8.5Hz、2H)、4.40(q、J=7.1Hz、2H)、3.93(q、J=6.5Hz、1H)、3.79(s、3H)、3.57(dd、J=21.0、12.9Hz、2H)、1.42〜1.26(m、6H)。MS:計算値(MH)370、測定値(MH)370。
【0282】
【化60】

【0283】
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド。N−ヒドロキシ−6−{2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソ−1−[(2−フェニルエチル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミドのエステルの変換と同様の方法を使用した。MS:計算値357(MH)、測定値357(MH)。
【0284】
前記化合物の他の類縁体は、N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミドの調製で説明したものと同様の方法で調製された。
【0285】
以下の表で記載した化合物は、前述の合成方法に類似の方法によって調製されたが、適切な開始試薬を使用した。以下に挙げた化合物は、1μM未満の濃度でヒストン脱アセチル化酵素阻害活性を示す。
【0286】
【表1】

【0287】
【表2】

【0288】
【表3】

【0289】
(実施例2)
新規化合物によるHDAC阻害
HDAC−1フラグ測定法
インビトロ脱アセチル化酵素測定法を使用して、ヒストン脱アセチル化酵素、サブタイプ1(HDAC1)を阻害する能力について新規化合物を試験した。この測定のための酵素源は、安定発現しているほ乳類細胞から免疫精製されたエピトープタグ付けHDAC1複合体であった。この基質は、アセチル化リシン側鎖を含有する市販生成物から構成された(BIOMOL Resarch Laboratories、Inc.、Plymouth Meeting、PA)。精製されたHDAC1複合体と温置することによって基質を脱アセチル化すると、脱アセチル化のレベルに正比例してフルオロフォアが生じる。酵素調製物のKmの基質濃度を使用して、脱アセチル化反応の50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)を半定量的に測定するために、高濃度の新規化合物の存在下で、脱アセチル化測定法を実施した。
【0290】
(実施例3)
細胞系におけるHDAC阻害
ATP測定法
本発明の新規化合物がヒト子宮頸癌細胞(HeLa)及び結腸癌細胞(HCT116)の増殖を阻害する能力について試験した。
【0291】
Vialight測定とも呼ばれるこの測定において、細胞増殖を定量化する手段として細胞ATP濃度を測定した。この測定法は、Cambrex社製の生物発光法(ViaLight PLUS、カタログ番号07−121)を使用する。ATPの存在下で、ルシフェラーゼはルシフェリンをオキシルシフェリン及び光に変換する。生じた光の量(565nMでの発光)を測定し、増殖の相対量と相関させる。ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)又は結腸癌細胞(HTC116)を媒体又は高濃度の化合物と共に48時間温置する。細胞増殖は、細胞溶解試薬(Vialight測定キットに供給されている)を直接培養ウェルに添加し、次いでATPをモニターする試薬(ルシフェラーゼ/ルシフェリンを含有)を添加することによって定量した。その後、生じた光の量を測定した(565nMでの発光)。生じた光の量は、565nMでの吸収によって測定され、培養中の生細胞の数と正比例する。
【0292】
本発明は、その実施形態を参考にして具体的に示され、記載されているが、記載された本発明の意味を逸脱することなく、形態及び細部を様々に変化させることが可能であることは当業者に理解される。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式によって表される化合物
【化1】

(式中、Aは
【化2】

から選択され、
からR16及びR27は互いに独立して、水素であり又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルケニル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルであり、又はR及びR、R及びR、R11及びR12の一対またはそれ以上は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
17は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、ヒドロキシル又は−NR1819から独立して選択され、
18及びR19は、水素、非置換の又は置換されたC〜C10アルキル、非置換の又は置換されたアリール、非置換の又は置換されたヘテロシクリル、非置換の又は置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、−C(=O)R25、−C(=O)OR25、−C(=O)N(R26、−SO25から独立して選択され、又はR18及びR19は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
20は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
21及びR26は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換のもしくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
22は非置換の又は置換されたヘテロシクリルであり、
23及びR24は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、ヒドロキシル又は−NR1819から独立して選択され、R23及びR24は両方が水素であることはできず、R23及びR24は両方が−NR1819であることはできず、又はR23及びR24は両方がヒドロキシルであることはできず、
25は、非置換の若しくは置換C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択され、
m、p及びqは互いに独立して1又は2であり、
n及びrは互い独立して0、1又は2である。)
又はこの立体異性体、エナンチオマー、ラセミ体、薬学的に許容される塩、溶媒化和化合物、水和物若しくは多形体。
【請求項2】
22が、イミダゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピロリル及びトリアゾリルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、
【化3】

(式中、R、R及びR〜R16は互いに独立して、水素であり又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換のもしくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルであり、又はR及びR、R及びR、R11及びR12の一対もしくはそれ以上は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
17は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルヘテロシクリル又は−NR1819から独立して選択され、
18及びR19は、水素、非置換の又は置換されたC〜C10アルキル、非置換の又は置換されたアリール、非置換の又は置換されたヘテロシクリル、非置換の又は置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、非置換の又は置換された−C(=O)Cアリール、非置換の又は置換された−C(=O)C〜C10アルキルアリール、非置換の又は置換された−C(=O)C〜C10アルキルから独立して選択され、又はR18及びR19は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
20は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
23及びR24は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル又は−NR1819から独立して選択され、R23及びR24は両方が水素であること又は両方が−NR1819であることはできず、
m、p及びqは互いに独立して1であり、
n及びrは互い独立して0又は1である。)
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、
【化4】

から選択され、他の置換基は全て請求項3に記載されている、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
n=0又はr=0であり、R27が水素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Aが、
【化5】

から選択され、他の置換基は全て請求項3に記載されている、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
n=0である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
、R、R、R11及びR12の一つまたはそれ以上が置換されていなく又は置換されており、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)、メチル、エチル、ピロリル、イソピロリル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルから選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
Aが、
【化6】

(式中、R20は請求項3に記載されており、Rは非置換の又は置換されたC〜C10アルキル、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の又は置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の又は置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルである。)
である、請求項3に記載の化合物。
【請求項10】
Aが、
【化7】

(式中、mは1であり、R11及びR12の少なくとも1個は、置換されており又は置換されていなく、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−シクロヘキシル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、ピリジル、−CH(Ph)、メチル、エチル、ピロリル、イソピロリル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルから選択され、
23及びR24は独立して、水素、C〜Cアルキル及び−NR1819から選択され、R23及びR24は両方が水素であること又は両方が−NR1819であることはできない。)
である、請求項3に記載の化合物。
【請求項11】
18が水素であり、R19が置換の若しくは非置換のC〜C10アルキルアリール又は置換の若しくは非置換のC〜Cシクロアルキルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Aが、
【化8】

(式中、R及びRの少なくとも1個は、置換されていなく又は置換されており、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CH=CHPh、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−シクロヘキシル、−CH−ピリジル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、−CHCH−インドリル、ピリジル、−CH(Ph)、メチル、エチル、ピロリル、イソピロリル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルから選択され、
20がC〜Cアルキルである。)
である、請求項3に記載の化合物。
【請求項13】
以下の構造式によって表される化合物
【化9】

(式中、A及びAの1つは水素であり、他方は、
【化10】

から選択され、
からR16及びR27は互いに独立して、水素又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルケニル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルであり、又はR及びR、R及びR並びにR11及びR12の一対またはそれ以上は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
17は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10へテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、ヒドロキシル又は−NR1819から独立して選択され、
18及びR19は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、−C(=O)R25、−C(=O)OR25、−C(=O)N(R26、−SO25から独立して選択され、又はR18及びR19は、これらが結合している窒素原子と一緒になって窒素含有複素環を形成し、前記窒素含有複素環は場合によって置換されていてよく、
20は、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
21及びR26は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
22は非置換の又は置換されたヘテロシクリルであり、
23及びR24は、水素、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリル、ヒドロキシル又は−NR1819から独立して選択され、R23及びR24は両方が水素であることは又はR23及びR24は両方が−NR1819であることはできず、又はR23及びR24は両方がヒドロキシルであることはできず、
25は、非置換の若しくは置換されたC10アルキル、非置換の若しくは置換されたアリール、非置換の若しくは置換されたC〜Cシクロアルキル、非置換の若しくは置換されたヘテロシクリル、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルアリール、非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルシクロアルキル又は非置換の若しくは置換されたC〜C10アルキルへテロシクリルから独立して選択されており、
m、p及びqは互いに独立して1又は2であり、
n及びrは互い独立して0、1又は2である。)
又はこの立体異性体、エナンチオマー、ラセミ体、薬学的に許容される塩、溶媒化和化合物、水和物の若しくは多形体。
【請求項14】
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]−2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
6−{1−(ベンジルアミノ)−2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソ−[(2−フェニルエチル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
6−{1−(シクロヘキシルアミノ)−2−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{(1R又はS)−1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]エチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−(2−アミノフェニル)−6−(1−{[2−(4−ブロモフェニル)エチル]アミノ}エチル)−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−[1−(イソブチルアミノ)エチル]−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
6−(1−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}エチル)−N−ヒドロキシ−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]プロピル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミド、
N−ヒドロキシ−6−{1−[(4−メトキシベンジル)アミノ]ブチル}−1−ベンゾチオフェン−2−カルボキシアミドから選択される化合物
又はこれらの立体異性体、エナンチオマー、ラセミ体、薬学的に許容される塩、溶媒化和化合物、水和物の若しくは多形体。
【請求項15】
ヒストン脱アセチル化酵素1(HDAC−1)に請求項1から14のいずれか一項の化合物のHDAC−1の活性を阻害するための有効量を接触させることを含む、HDAC−1の活性を阻害する方法。
【請求項16】
対象に請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を投与することを含む、対象における癌の治療方法。
【請求項17】
対象に請求項1から14のいずれか一項の化合物の治療有効量を投与するステップを含み、前記化合物の量は前記対象におけるチオレドキシン(TRX)媒介疾患の治療に有効である、対象におけるTRX媒介疾患の治療方法。
【請求項18】
対象に請求項1から14のいずれか一項の化合物の治療有効量を投与することを含む、前記対象における中枢神経系の疾患の治療方法。

【公表番号】特表2008−536925(P2008−536925A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507744(P2008−507744)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/014093
【国際公開番号】WO2006/115835
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】