ベンゾトリアゾール誘導体化合物
【課題】380〜400nmの長波長領域に高い吸収性能を持ちながら、優れた耐光性能をも持ち合わせ、また紫外線吸収剤モノマーとしても有効な紫外線吸収性の新規化合物を提供すること。
【解決手段】下記の一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール誘導体化合物とする。R2及びR4は各々独立して炭素数1〜8のアルキレン基。R3は水素原子又はメチル基。
【解決手段】下記の一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール誘導体化合物とする。R2及びR4は各々独立して炭素数1〜8のアルキレン基。R3は水素原子又はメチル基。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾトリアゾール誘導体化合物に関し、また当該新規化合物を含有する380〜400nmの紫外線領域で高い吸収を示す紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂は自然光の紫外線の作用によって劣化を生じて、軟化、脆化または変色などの現象を伴ってその機械的強度が著しく低下することはよく知られている。このような光による劣化を防ぐため、従来より各種の紫外線吸収剤が樹脂の加工工程中に添加され、使用されている。また、太陽光や照明器具から発生する紫外線を遮断する目的で、紫外線吸収剤が添加されたシートやフィルムが使用されている。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、サリシレート系又はトリアジン系の化合物が知られている。
【0003】
しかし、従来より使用されている紫外線吸収剤は、それ自身の揮散、ブリードを生じるという特性を有しているために、ブリード、揮発への対応として添加量を増加した場合には光照射環境下で着色も増加してしまい、添加された樹脂の耐光性、熱変色性などの点でいまだ満足されるものではなかった。
【0004】
紫外線吸収剤のブリード、揮発を抑えるために、紫外線吸収剤に重合性基を導入し、単独重合もしくは共重合を行って紫外線吸収剤ポリマーとする試みが特許文献1〜5で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−38411号公報
【0006】
【特許文献2】特開昭63−185969号公報
【0007】
【特許文献3】特開昭63−227575号公報
【0008】
【特許文献4】特開平3−281685号公報
【0009】
【特許文献5】特開平9−34057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これらに記載された紫外線吸収剤ポリマーはブリードや揮発の防止効果はあったが、350nm以上、特に380〜400nmの長波長領域の紫外線を吸収する能力が十分とは言えず、充分な効果を得るために紫外線吸収剤ポリマーの添加量を多くする必要があり、結果としてコストがかかる、さらにフィルム等が着色する問題があった。
【0011】
そこで本発明における課題は、380〜400nmの長波長領域の吸収を高め、かつ、重合性基を持った化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、下記一般式(1)で示される新規のベンゾトリアゾール誘導体化合物を、紫外線吸収剤モノマーとして用いることを上記課題の主要な解決手段とする。
【化1】
一般式(1)
[式中、R1は
【化2】
【化3】
【化4】
又は
【化5】
を表す。R2及びR4は各々独立して炭素数1〜8のアルキレン基を表す。R3は水素原子又はメチル基を表す。]
【0013】
上記一般式(1)で示される新規のベンゾトリアゾール誘導体化合物は、好ましくはR2及びR4が各々独立して炭素数2〜4のアルキレン基で表される化合物である。
【0014】
上記一般式(1)で示される新規のベンゾトリアゾール誘導体化合物は、さらに好ましくはR2及びR4がエチレン基で表される化合物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体一般式(1)は、ベンゾトリアゾール構造にセサモールを化学修飾した化合物であり、最大吸収波長λmaxが365nm以上で、その時の吸光度εは20000以上であり、長波長領域の紫外線吸収能力が特に高い。
【0016】
また、重合性の二重結合を有していることから、単独重合もしくは共重合を行うことが可能であり、実験でも容易に重合可能であったことから、従来技術の課題を解決し得る紫外線吸収剤モノマーとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は紫外線吸収剤モノマーとして、下記一般式(1)によって示す化合物を用いたものである。以下に下記一般式(1)において表される化合物について説明する。
【0018】
【化1】
一般式(1)
[式中、R1は
【化2】
【化3】
【化4】
又は
【化5】
を表す。]
【0019】
一般式(1)中、該任意の置換基の例としてR2及びR4は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の置換されても良い炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキレン基が挙げられる。
【0020】
上記の置換基の中でも好ましくは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。
【0021】
上記の置換基の中でもさらに好ましくは、エチレン基である。
【0022】
R3は水素原子又はメチル基を表す。
【0023】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)としては、例えば、次に示すものを挙げることができる。2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレート、4−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]ブチルメタクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルアクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、4−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルメタクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルアクリレート、2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、4−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]ブチルメタクリレート、2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチル
2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、4−(メタクリロイルオキシ)ブチル
2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−(アクリロイルオキシ)エチル
2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート等。
【0024】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)を合成する方法に特に限定はなく、従来公知の方法を広く用いることができ、たとえば、下記(化6〜化10)に示した反応式を経て合成することができる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0025】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物の重合方法は、単独重合であっても共重合であってもよい。共重合可能な他の重合性モノマーは特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチルなどのメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0026】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物の単独重合体又は共重合体は、樹脂中に添加しても良いし、樹脂上に塗布しても良い。添加又は塗布可能な樹脂は特に限定されるわけではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ-3−メチルブチレン、ポリメチルペンテンなどのα−オレフィン重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、臭素化ポリエチレン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、内部可塑性ポリ塩化ビニルなどの含ハロゲン合成樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、スチレンと他の単量体(無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン樹脂、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、メタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオキシベンゾイル、ポリイミド、ポリマレイミド、ポリアミドイミド、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、水溶性樹脂、粉体塗料用樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0027】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物の単独重合体又は共重合体の用途は特に限定されないが、例えば、偏光板保護フィルム、反射防止フィルムなどの光学フィルム、メガネ、コンタクトレンズなどのプラスチックレンズ、医薬品、食品、化粧品、衣類などを包装する包装材料、ビニールハウスなどの農業用フィルム、防虫シート、色素増感型太陽電池用積層フィルムなどが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明で実施したベンゾトリアゾール誘導体化合物の合成法及び化合物の特性を示す。ただし合成方法はこれに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
[中間体;6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールの合成]
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、常法にて合成した2−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)エタノール8.0g(0.044モル)、62.5%硫酸17.2g(0.110モル)、水80mlを入れて混合し、36%亜硝酸ナトリウム水溶液8.8g(0.046モル)を3〜7℃で滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を113g得た。300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メタノール50ml、水酸化ナトリウム2.8g(0.070モル)、炭酸ナトリウム6.0g(0.057モル)、セサモール6.1g(0.044モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、赤色結晶を14.6g得た。この14.6gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロフェニルアゾ)]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを5.9g得た。
【0030】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、この赤色結晶5.9g(0.018モル)、イソプロピルアルコール30ml、水20ml、水酸化ナトリウム0.9g(0.023モル)、ハイドロキノン0.1g、60%ヒドラジン水和物1.1g(0.013モル)を入れて、50〜55℃で1時間撹拌させた後、62.5%硫酸でpH7に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール−N−オキシドを4.7g得た。
【0031】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、N−オキシド体4.7g(0.015モル)、メチルイソブチルケトン100ml、水35ml、亜鉛末2.0g(0.031モル)を入れて混合し、62.5%硫酸7.0g(0.045モル)を70〜75℃を保って1時間で滴下し、同温度で1時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水70mlで洗浄し、活性炭0.2gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からメチルイソブチルケトン100mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール40mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール20mlで洗浄した後、乾燥機にて60℃で乾燥し、6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを2.6g得た。収率14%(2−(4−アミノフェニル)エタノールから)であった。融点は179℃。
【0032】
(実施例2)
[化合物(a);2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレートの合成]
【化11】
化合物(a)
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール4.0g(0.013モル)、トルエン40ml、メタクリル酸1.8g(0.021モル)、メタンスルホン酸0.4g(0.004モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水30ml、炭酸ナトリウム0.6g(0.006モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.2gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からトルエン40mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール100mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール40mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶を4.2g得た。この4.2gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(a)を3.4g得た。収率69%(6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールから)であった。融点は137℃。
【0033】
また、化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは368nmであり、この時の吸光度εは22500であった。スペクトルを図1に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜 500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
セル:1cm石英
なお、以下の実施例3〜6も本実施例と同様の測定条件で紫外〜可視吸収スペクトルの測定を行った。
【0034】
また、HPLC分析により、化合物(a)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:Inertsil ODS−3 4.6×150mm 5μm
カラム温度:25℃
移動相: アセトニトリル/水=9/1(リン酸3ml/L)
流速:1.0ml/min
<測定結果>
HPLC面百純度:96.0%
なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件でHPLC測定を行った。
【0035】
また、化合物(a)の赤外線吸収スペクトルも測定した。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:FTIR−8400S((株)島津製作所製)
検体:1/200(KBr)
得られた赤外線吸収スペクトルを図6に示す。なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件で赤外線吸収スペクトル測定を行った。
【0036】
また、化合物(a)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:JEOL AL−300
共振周波数:300MHz(1H−NMR)
溶媒:クロロホルム−d
1H−NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、tはtriplet、ddはdoublet doublet、bはbroad singlet、mはmultipletの略とする。以下の実施例すべてにおいても同様である。
得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。なお、以下の実施例3も本実施例と同様の測定条件でNMR測定を行った。
δ11.3(s,OH),7.9−8.0(m,2H,benzotriazol−H),7.72(s,1H,benzotriazol−H),7.37(m,1H,phenol−H),6.67(s,1H,=CH2−H),6.08(t,1H,phenol−H),6.01(s,2H,O−CH2−O−H),5.55(s,1H,=CH2−H),4.45(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),3.15(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),1.92(s,3H,CH3−H)
【0037】
(実施例3)
[化合物(b);2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルアクリレートの合成]
【化12】
化合物(b)
メタクリル酸をアクリル酸とした以外は実施例2と同様にして、化合物(b)を収率38%(6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールから)で得た。融点120℃、最大吸収波長λmaxが367nmの時の吸光度εは20600、HPLC面百純度90.2%であった。紫外〜可視吸収スペクトルを図2に示す。赤外線吸収スペクトルを図7に示す。
【0038】
また、化合物(b)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ11.3(s,OH),7.9−8.0(m,2H,benzotriazol−H),7.72(m,1H,benzotriazol−H),7.3−7.4(m,1H,phenol−H),6.67(s,1H,=CH2−H),6.3−6.5(m,1H,=CH−H),6.05−6.02(s,1H,phenol−H),6.01(s,2H,O−CH2−O−H),4.47(t,2H,O−CH2−CH2−O−H),3.15(m,2H,O−CH2−CH2−O−H)
【0039】
(実施例4)
[化合物(c);2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレートの合成]
【化13】
化合物(c)
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、パラヒドロキシオルソニトロアニリン13.5g(0.086モル)、62.5%硫酸34.3g(0.219モル)、水68mlを入れて混合し、36%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3g(0.090モル)を3〜7℃で滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を132g得た。500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メタノール96ml、水50ml、水酸化ナトリウム5.5g(0.138モル)、炭酸ナトリウム12.0g(0.113モル)、セサモール12.1g(0.088モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、赤色結晶を32.2g得た。この32.2gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、6−(4−ヒドロキシ−2−ニトロフェニルアゾ)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを8.0g得た。
【0040】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、この赤色結晶8.0g(0.026モル)、イソプロピルアルコール50ml、水50ml、水酸化ナトリウム2.9g(0.073モル)、ハイドロキノン0.1g、60%ヒドラジン水和物2.6g(0.031モル)を入れて50〜55℃で1時間撹拌させ、62.5%硫酸でpH7に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、6−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール−N−オキシドを4.8g得た。
【0041】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、N−オキシド体4.8g(0.017モル)、メチルイソブチルケトン100ml、水30ml、亜鉛末4.2g(0.064モル)を入れて混合し、62.5%硫酸15.4g(0.098モル)を70〜75℃を保って1時間で滴下し、同温度で3時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水100mlで洗浄し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液を5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、メチルイソブチルケトン10mlで洗浄した後、60℃で乾燥し、6−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを1.7g得た。
【0042】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、6−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール1.7g(0.0063モル)、メチルイソブチルケトン55ml、2−クロロエタノール4.6g(0.0571モル)、炭酸ナトリウム3.2g(0.0302モル)、ヨウ化カリウム0.1gを入れて、113〜118℃で20時間還流脱水した。25mlの水を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水25mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン55mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール60mlを加えて5℃まで冷却し、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール10mlで洗浄し、乾燥機で乾燥して、6−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを1.2g得た。
【0043】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、6−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール1.2g(0.0038モル)、トルエン65ml、メタクリル酸1.3g(0.0151モル)、メタンスルホン酸0.5g(0.0052モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水40ml、炭酸ナトリウム0.9g(0.0085モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からトルエン65mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール50mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール10mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶を0.8g得た。この0.8gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(c)を0.6g得た。収率2%(パラヒドロキシオルソニトロアニリンから)であった。融点146℃、最大吸収波長λmaxが369nmの時の吸光度εは23500、HPLC面百純度97.8%であった。紫外〜可視吸収スペクトルを図3に示す。赤外線吸収スペクトルを図8に示す。
【0044】
また、化合物(c)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置: VARIAN Mercury300
共振周波数:300MHz(1H−NMR)
溶媒:クロロホルム−d
得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件でNMR測定を行った。
δ=11.3(b,OH),7.78(d,1H,J=8.4Hz,benzotriazol−H),7.26(s,1H,benzotriazol−H),7.15(dd,1H,J=9.2Hz,J=2.26Hz,J=2.31Hz,benzotriazol−H),7.13(d,1H,J=2.15Hz,phenol−H),6.68(s,1H,phenol−H,),6.18(s,2H,O−CH2−O−H),6.01(s,1H,=CH2−H),5.61(s,1H,=CH2−H),4.57(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),4.32(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),1.97(s,3H,CH3,−H)
【0045】
(実施例5)
[化合物(d);2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート
【化14】
化合物(d)
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、3−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)プロピオン酸31.6g(0.150モル)、水150ml、炭酸ナトリウム8.9g(0.084モル)、36%亜硝酸ナトリウム水溶液30.3g(0.158モル)を入れて50〜55℃で撹拌して溶解する。別の容器に62.5%硫酸59.0g(0.376モル)、水150mlを入れて混合し、これに3〜7℃で溶解液を滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を427g得た。1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メタノール275ml、水酸化ナトリウム8.6g(0.215モル)、炭酸ナトリウム12.8g(0.121モル)、セサモール20.8g(0.150モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、赤色結晶を82.4g得た。この82.4gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、4−[(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)アゾ]−3−ニトロベンゼンプロピオン酸を41.5g得た。
【0046】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、この赤色結晶41.5g(0.116モル)、イソプロピルアルコール140ml、水120ml、水酸化ナトリウム6.8g(0.170モル)、ハイドロキノン0.3g、60%ヒドラジン水和物13.3g(0.159モル)を入れて50〜55℃で1時間撹拌させ、62.5%硫酸でpH7に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、茶色結晶を27.9g得た。この27.9gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、3−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)-2H−ベンゾトリアゾール−5−イル)プロピオン酸−N−オキシドを22.8g得た。
【0047】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、N−オキシド体22.8g(0.066モル)、メチルイソブチルケトン450ml、水150ml、亜鉛末8.8g(0.135モル)を入れて混合し、62.5%硫酸31.3g(0.199モル)を70〜75℃を保って1時間で滴下し、同温度で3時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水250mlで洗浄し、活性炭0.3gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液を5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、メチルイソブチルケトン30mlで洗浄した後、60℃で乾燥し、3−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]プロピオン酸を4.0g得た。
【0048】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、3−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]プロピオン酸4.0g(0.012モル)、トルエン120ml、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9.6g(0.074モル)、メタンスルホン酸1.1g(0.011モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水120ml、炭酸ナトリウム0.7g(0.007モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からトルエン120mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール30mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール20mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶を4.3g得た。この4.3gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(d)を1.6g得た。収率2%(3−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)プロピオン酸から)であった。融点84℃、最大吸収波長λmaxが368nmの時の吸光度εは22800、HPLC面百純度90.8%であった。紫外〜可視吸収スペクトルを図4に示す。赤外線吸収スペクトルを図9に示す。
【0049】
また、化合物(d)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.3(b,OH),7.82(d,1H,J=7.92Hz,benzotriazol−H),7.70(s,1H,benzotriazol−H),7.34(d,1H,J=1.65Hz,benzotriazol−H),7.31(d,1H,J=1.48Hz,phenol−H),6.89(s,1H,Phenol−H,),6.09(s,1H,C=CH2−H),6.02(s,2H,O−CH2−O−H),5.62(m,1H,C=CH2−H),3.14(t,2H,O−CH2−CH2−O−H),2.77(t,2H,O−CH2−CH2−O−H),1.92(s,4H,pH−CH2−CH2−H),1.59(s,3H,CH3−H)
【0050】
(実施例6)
[化合物(e);2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化15】
化合物(e)
3−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)プロピオン酸を4−アミノ−3−ニトロ安息香酸とした以外は実施例5と同様にして、化合物(e)を収率2%(4−アミノ−3−ニトロ安息香酸から)で得た。融点183℃、最大吸収波長λmaxが379nmの時の吸光度εは20300、HPLC面百純度88.6%であった。紫外〜可視吸収スペクトルを図5に示す。赤外線吸収スペクトルを図10に示す。
【0051】
また、化合物(e)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.8(b,OH),8.70(s,1H,benzotriazol−H),8.15(dd,1H,J=8.91Hz,J=1.49Hz,J=0.66Hz,benzotriazol−H),8.12(dd,1H,J=8.91Hz,J=0.65Hz,J=0.66Hz,benzotriazol−H),7.85(s,1H,J=1.48Hz,phenol−H),6.18(s,1H,phenol−H,),6.17(s,2H,O−CH2−O−H),5.62(q,1H,C=CH2−H),4.66(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),4.55(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),1.97(s,3H,=C−CH3−H),
【0052】
(実施例7)
[共重合体(f);化合物(a)/メタクリル酸メチル共重合体(50wt%/50wt%)の合成]
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置、ガス吹き込み管を取り付け、化合物(a)20g、メタクリル酸メチル20g、酢酸エチル20g、トルエン20g、2,2’‐アゾビス(2‐メチルブチロニトリル)0.6gを入れて、窒素流量10ml/minで1時間フラスコ内を窒素置換後に、78〜92℃で10時間還流状態にて重合反応を行った。重合反応終了後、酢酸エチル10g、トルエン10gを追加して共重合体(f)の溶液を得た。この溶液の不揮発分は41.6%であり、粘度は1190mPa・s/25℃であり、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は30500、数平均分子量(Mn)は12400、多分散度は2.46であった。
【0053】
上記の溶液を減圧下で脱溶剤して得られた共重合体(f)の紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは368nmであった。スペクトルを図11に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜450nm
溶媒:クロロホルム
濃度:20ppm
セル:1cm石英
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体は、350〜400nm、特に380〜400nmの長波長領域の吸収が高く、また、重合性の二重結合を有していることから、紫外線吸収剤モノマーとして有効である。この紫外線吸収剤モノマーを単独重合もしくは共重合して得られた紫外線吸収剤ポリマーは、樹脂用の紫外線吸収剤として好適に利用でき、なかでも光学フィルム、プラスチックレンズ、包装材料、農業用フィルム、防虫シート、色素増感型太陽電池用積層フィルム等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図2】化合物(b)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図3】化合物(c)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図4】化合物(d)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図5】化合物(e)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図6】化合物(a)の赤外線吸収スペクトルである。
【図7】化合物(b)の赤外線吸収スペクトルである。
【図8】化合物(c)の赤外線吸収スペクトルである。
【図9】化合物(d)の赤外線吸収スペクトルである。
【図10】化合物(e)の赤外線吸収スペクトルである。
【図11】共重合体(f)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾトリアゾール誘導体化合物に関し、また当該新規化合物を含有する380〜400nmの紫外線領域で高い吸収を示す紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂は自然光の紫外線の作用によって劣化を生じて、軟化、脆化または変色などの現象を伴ってその機械的強度が著しく低下することはよく知られている。このような光による劣化を防ぐため、従来より各種の紫外線吸収剤が樹脂の加工工程中に添加され、使用されている。また、太陽光や照明器具から発生する紫外線を遮断する目的で、紫外線吸収剤が添加されたシートやフィルムが使用されている。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、サリシレート系又はトリアジン系の化合物が知られている。
【0003】
しかし、従来より使用されている紫外線吸収剤は、それ自身の揮散、ブリードを生じるという特性を有しているために、ブリード、揮発への対応として添加量を増加した場合には光照射環境下で着色も増加してしまい、添加された樹脂の耐光性、熱変色性などの点でいまだ満足されるものではなかった。
【0004】
紫外線吸収剤のブリード、揮発を抑えるために、紫外線吸収剤に重合性基を導入し、単独重合もしくは共重合を行って紫外線吸収剤ポリマーとする試みが特許文献1〜5で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−38411号公報
【0006】
【特許文献2】特開昭63−185969号公報
【0007】
【特許文献3】特開昭63−227575号公報
【0008】
【特許文献4】特開平3−281685号公報
【0009】
【特許文献5】特開平9−34057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これらに記載された紫外線吸収剤ポリマーはブリードや揮発の防止効果はあったが、350nm以上、特に380〜400nmの長波長領域の紫外線を吸収する能力が十分とは言えず、充分な効果を得るために紫外線吸収剤ポリマーの添加量を多くする必要があり、結果としてコストがかかる、さらにフィルム等が着色する問題があった。
【0011】
そこで本発明における課題は、380〜400nmの長波長領域の吸収を高め、かつ、重合性基を持った化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、下記一般式(1)で示される新規のベンゾトリアゾール誘導体化合物を、紫外線吸収剤モノマーとして用いることを上記課題の主要な解決手段とする。
【化1】
一般式(1)
[式中、R1は
【化2】
【化3】
【化4】
又は
【化5】
を表す。R2及びR4は各々独立して炭素数1〜8のアルキレン基を表す。R3は水素原子又はメチル基を表す。]
【0013】
上記一般式(1)で示される新規のベンゾトリアゾール誘導体化合物は、好ましくはR2及びR4が各々独立して炭素数2〜4のアルキレン基で表される化合物である。
【0014】
上記一般式(1)で示される新規のベンゾトリアゾール誘導体化合物は、さらに好ましくはR2及びR4がエチレン基で表される化合物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体一般式(1)は、ベンゾトリアゾール構造にセサモールを化学修飾した化合物であり、最大吸収波長λmaxが365nm以上で、その時の吸光度εは20000以上であり、長波長領域の紫外線吸収能力が特に高い。
【0016】
また、重合性の二重結合を有していることから、単独重合もしくは共重合を行うことが可能であり、実験でも容易に重合可能であったことから、従来技術の課題を解決し得る紫外線吸収剤モノマーとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は紫外線吸収剤モノマーとして、下記一般式(1)によって示す化合物を用いたものである。以下に下記一般式(1)において表される化合物について説明する。
【0018】
【化1】
一般式(1)
[式中、R1は
【化2】
【化3】
【化4】
又は
【化5】
を表す。]
【0019】
一般式(1)中、該任意の置換基の例としてR2及びR4は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の置換されても良い炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキレン基が挙げられる。
【0020】
上記の置換基の中でも好ましくは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。
【0021】
上記の置換基の中でもさらに好ましくは、エチレン基である。
【0022】
R3は水素原子又はメチル基を表す。
【0023】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)としては、例えば、次に示すものを挙げることができる。2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレート、4−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]ブチルメタクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルアクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレート、4−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]ブチルメタクリレート、2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルアクリレート、2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、4−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]ブチルメタクリレート、2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、2−(メタクリロイルオキシ)エチル
2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、4−(メタクリロイルオキシ)ブチル
2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−(アクリロイルオキシ)エチル
2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート等。
【0024】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)を合成する方法に特に限定はなく、従来公知の方法を広く用いることができ、たとえば、下記(化6〜化10)に示した反応式を経て合成することができる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0025】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物の重合方法は、単独重合であっても共重合であってもよい。共重合可能な他の重合性モノマーは特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチルなどのメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0026】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物の単独重合体又は共重合体は、樹脂中に添加しても良いし、樹脂上に塗布しても良い。添加又は塗布可能な樹脂は特に限定されるわけではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ-3−メチルブチレン、ポリメチルペンテンなどのα−オレフィン重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、臭素化ポリエチレン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、内部可塑性ポリ塩化ビニルなどの含ハロゲン合成樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、スチレンと他の単量体(無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン樹脂、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、メタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオキシベンゾイル、ポリイミド、ポリマレイミド、ポリアミドイミド、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、水溶性樹脂、粉体塗料用樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0027】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物の単独重合体又は共重合体の用途は特に限定されないが、例えば、偏光板保護フィルム、反射防止フィルムなどの光学フィルム、メガネ、コンタクトレンズなどのプラスチックレンズ、医薬品、食品、化粧品、衣類などを包装する包装材料、ビニールハウスなどの農業用フィルム、防虫シート、色素増感型太陽電池用積層フィルムなどが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明で実施したベンゾトリアゾール誘導体化合物の合成法及び化合物の特性を示す。ただし合成方法はこれに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
[中間体;6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールの合成]
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、常法にて合成した2−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)エタノール8.0g(0.044モル)、62.5%硫酸17.2g(0.110モル)、水80mlを入れて混合し、36%亜硝酸ナトリウム水溶液8.8g(0.046モル)を3〜7℃で滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を113g得た。300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メタノール50ml、水酸化ナトリウム2.8g(0.070モル)、炭酸ナトリウム6.0g(0.057モル)、セサモール6.1g(0.044モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、赤色結晶を14.6g得た。この14.6gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロフェニルアゾ)]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを5.9g得た。
【0030】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、この赤色結晶5.9g(0.018モル)、イソプロピルアルコール30ml、水20ml、水酸化ナトリウム0.9g(0.023モル)、ハイドロキノン0.1g、60%ヒドラジン水和物1.1g(0.013モル)を入れて、50〜55℃で1時間撹拌させた後、62.5%硫酸でpH7に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール−N−オキシドを4.7g得た。
【0031】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、N−オキシド体4.7g(0.015モル)、メチルイソブチルケトン100ml、水35ml、亜鉛末2.0g(0.031モル)を入れて混合し、62.5%硫酸7.0g(0.045モル)を70〜75℃を保って1時間で滴下し、同温度で1時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水70mlで洗浄し、活性炭0.2gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からメチルイソブチルケトン100mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール40mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール20mlで洗浄した後、乾燥機にて60℃で乾燥し、6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを2.6g得た。収率14%(2−(4−アミノフェニル)エタノールから)であった。融点は179℃。
【0032】
(実施例2)
[化合物(a);2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレートの合成]
【化11】
化合物(a)
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール4.0g(0.013モル)、トルエン40ml、メタクリル酸1.8g(0.021モル)、メタンスルホン酸0.4g(0.004モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水30ml、炭酸ナトリウム0.6g(0.006モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.2gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からトルエン40mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール100mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール40mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶を4.2g得た。この4.2gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(a)を3.4g得た。収率69%(6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールから)であった。融点は137℃。
【0033】
また、化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは368nmであり、この時の吸光度εは22500であった。スペクトルを図1に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜 500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
セル:1cm石英
なお、以下の実施例3〜6も本実施例と同様の測定条件で紫外〜可視吸収スペクトルの測定を行った。
【0034】
また、HPLC分析により、化合物(a)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:Inertsil ODS−3 4.6×150mm 5μm
カラム温度:25℃
移動相: アセトニトリル/水=9/1(リン酸3ml/L)
流速:1.0ml/min
<測定結果>
HPLC面百純度:96.0%
なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件でHPLC測定を行った。
【0035】
また、化合物(a)の赤外線吸収スペクトルも測定した。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:FTIR−8400S((株)島津製作所製)
検体:1/200(KBr)
得られた赤外線吸収スペクトルを図6に示す。なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件で赤外線吸収スペクトル測定を行った。
【0036】
また、化合物(a)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:JEOL AL−300
共振周波数:300MHz(1H−NMR)
溶媒:クロロホルム−d
1H−NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、tはtriplet、ddはdoublet doublet、bはbroad singlet、mはmultipletの略とする。以下の実施例すべてにおいても同様である。
得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。なお、以下の実施例3も本実施例と同様の測定条件でNMR測定を行った。
δ11.3(s,OH),7.9−8.0(m,2H,benzotriazol−H),7.72(s,1H,benzotriazol−H),7.37(m,1H,phenol−H),6.67(s,1H,=CH2−H),6.08(t,1H,phenol−H),6.01(s,2H,O−CH2−O−H),5.55(s,1H,=CH2−H),4.45(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),3.15(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),1.92(s,3H,CH3−H)
【0037】
(実施例3)
[化合物(b);2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルアクリレートの合成]
【化12】
化合物(b)
メタクリル酸をアクリル酸とした以外は実施例2と同様にして、化合物(b)を収率38%(6−[5−(2−ヒドロキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールから)で得た。融点120℃、最大吸収波長λmaxが367nmの時の吸光度εは20600、HPLC面百純度90.2%であった。紫外〜可視吸収スペクトルを図2に示す。赤外線吸収スペクトルを図7に示す。
【0038】
また、化合物(b)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ11.3(s,OH),7.9−8.0(m,2H,benzotriazol−H),7.72(m,1H,benzotriazol−H),7.3−7.4(m,1H,phenol−H),6.67(s,1H,=CH2−H),6.3−6.5(m,1H,=CH−H),6.05−6.02(s,1H,phenol−H),6.01(s,2H,O−CH2−O−H),4.47(t,2H,O−CH2−CH2−O−H),3.15(m,2H,O−CH2−CH2−O−H)
【0039】
(実施例4)
[化合物(c);2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イルオキシ]エチルメタクリレートの合成]
【化13】
化合物(c)
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、パラヒドロキシオルソニトロアニリン13.5g(0.086モル)、62.5%硫酸34.3g(0.219モル)、水68mlを入れて混合し、36%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3g(0.090モル)を3〜7℃で滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を132g得た。500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メタノール96ml、水50ml、水酸化ナトリウム5.5g(0.138モル)、炭酸ナトリウム12.0g(0.113モル)、セサモール12.1g(0.088モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、赤色結晶を32.2g得た。この32.2gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、6−(4−ヒドロキシ−2−ニトロフェニルアゾ)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを8.0g得た。
【0040】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、この赤色結晶8.0g(0.026モル)、イソプロピルアルコール50ml、水50ml、水酸化ナトリウム2.9g(0.073モル)、ハイドロキノン0.1g、60%ヒドラジン水和物2.6g(0.031モル)を入れて50〜55℃で1時間撹拌させ、62.5%硫酸でpH7に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、6−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール−N−オキシドを4.8g得た。
【0041】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、N−オキシド体4.8g(0.017モル)、メチルイソブチルケトン100ml、水30ml、亜鉛末4.2g(0.064モル)を入れて混合し、62.5%硫酸15.4g(0.098モル)を70〜75℃を保って1時間で滴下し、同温度で3時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水100mlで洗浄し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液を5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、メチルイソブチルケトン10mlで洗浄した後、60℃で乾燥し、6−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを1.7g得た。
【0042】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、6−(5−ヒドロキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール1.7g(0.0063モル)、メチルイソブチルケトン55ml、2−クロロエタノール4.6g(0.0571モル)、炭酸ナトリウム3.2g(0.0302モル)、ヨウ化カリウム0.1gを入れて、113〜118℃で20時間還流脱水した。25mlの水を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水25mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン55mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール60mlを加えて5℃まで冷却し、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール10mlで洗浄し、乾燥機で乾燥して、6−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オールを1.2g得た。
【0043】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、6−[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−オール1.2g(0.0038モル)、トルエン65ml、メタクリル酸1.3g(0.0151モル)、メタンスルホン酸0.5g(0.0052モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水40ml、炭酸ナトリウム0.9g(0.0085モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からトルエン65mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール50mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール10mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶を0.8g得た。この0.8gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(c)を0.6g得た。収率2%(パラヒドロキシオルソニトロアニリンから)であった。融点146℃、最大吸収波長λmaxが369nmの時の吸光度εは23500、HPLC面百純度97.8%であった。紫外〜可視吸収スペクトルを図3に示す。赤外線吸収スペクトルを図8に示す。
【0044】
また、化合物(c)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置: VARIAN Mercury300
共振周波数:300MHz(1H−NMR)
溶媒:クロロホルム−d
得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件でNMR測定を行った。
δ=11.3(b,OH),7.78(d,1H,J=8.4Hz,benzotriazol−H),7.26(s,1H,benzotriazol−H),7.15(dd,1H,J=9.2Hz,J=2.26Hz,J=2.31Hz,benzotriazol−H),7.13(d,1H,J=2.15Hz,phenol−H),6.68(s,1H,phenol−H,),6.18(s,2H,O−CH2−O−H),6.01(s,1H,=CH2−H),5.61(s,1H,=CH2−H),4.57(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),4.32(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),1.97(s,3H,CH3,−H)
【0045】
(実施例5)
[化合物(d);2−[3−{2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート
【化14】
化合物(d)
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、3−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)プロピオン酸31.6g(0.150モル)、水150ml、炭酸ナトリウム8.9g(0.084モル)、36%亜硝酸ナトリウム水溶液30.3g(0.158モル)を入れて50〜55℃で撹拌して溶解する。別の容器に62.5%硫酸59.0g(0.376モル)、水150mlを入れて混合し、これに3〜7℃で溶解液を滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を427g得た。1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メタノール275ml、水酸化ナトリウム8.6g(0.215モル)、炭酸ナトリウム12.8g(0.121モル)、セサモール20.8g(0.150モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3〜7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、赤色結晶を82.4g得た。この82.4gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、4−[(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)アゾ]−3−ニトロベンゼンプロピオン酸を41.5g得た。
【0046】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、この赤色結晶41.5g(0.116モル)、イソプロピルアルコール140ml、水120ml、水酸化ナトリウム6.8g(0.170モル)、ハイドロキノン0.3g、60%ヒドラジン水和物13.3g(0.159モル)を入れて50〜55℃で1時間撹拌させ、62.5%硫酸でpH7に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、茶色結晶を27.9g得た。この27.9gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、3−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)-2H−ベンゾトリアゾール−5−イル)プロピオン酸−N−オキシドを22.8g得た。
【0047】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、N−オキシド体22.8g(0.066モル)、メチルイソブチルケトン450ml、水150ml、亜鉛末8.8g(0.135モル)を入れて混合し、62.5%硫酸31.3g(0.199モル)を70〜75℃を保って1時間で滴下し、同温度で3時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水250mlで洗浄し、活性炭0.3gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液を5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、メチルイソブチルケトン30mlで洗浄した後、60℃で乾燥し、3−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]プロピオン酸を4.0g得た。
【0048】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、3−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]プロピオン酸4.0g(0.012モル)、トルエン120ml、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9.6g(0.074モル)、メタンスルホン酸1.1g(0.011モル)を入れて、110〜115℃で4時間還流脱水した。水120ml、炭酸ナトリウム0.7g(0.007モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からトルエン120mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール30mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール20mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶を4.3g得た。この4.3gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(d)を1.6g得た。収率2%(3−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)プロピオン酸から)であった。融点84℃、最大吸収波長λmaxが368nmの時の吸光度εは22800、HPLC面百純度90.8%であった。紫外〜可視吸収スペクトルを図4に示す。赤外線吸収スペクトルを図9に示す。
【0049】
また、化合物(d)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.3(b,OH),7.82(d,1H,J=7.92Hz,benzotriazol−H),7.70(s,1H,benzotriazol−H),7.34(d,1H,J=1.65Hz,benzotriazol−H),7.31(d,1H,J=1.48Hz,phenol−H),6.89(s,1H,Phenol−H,),6.09(s,1H,C=CH2−H),6.02(s,2H,O−CH2−O−H),5.62(m,1H,C=CH2−H),3.14(t,2H,O−CH2−CH2−O−H),2.77(t,2H,O−CH2−CH2−O−H),1.92(s,4H,pH−CH2−CH2−H),1.59(s,3H,CH3−H)
【0050】
(実施例6)
[化合物(e);2−(メタクリロイルオキシ)エチル 2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化15】
化合物(e)
3−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)プロピオン酸を4−アミノ−3−ニトロ安息香酸とした以外は実施例5と同様にして、化合物(e)を収率2%(4−アミノ−3−ニトロ安息香酸から)で得た。融点183℃、最大吸収波長λmaxが379nmの時の吸光度εは20300、HPLC面百純度88.6%であった。紫外〜可視吸収スペクトルを図5に示す。赤外線吸収スペクトルを図10に示す。
【0051】
また、化合物(e)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.8(b,OH),8.70(s,1H,benzotriazol−H),8.15(dd,1H,J=8.91Hz,J=1.49Hz,J=0.66Hz,benzotriazol−H),8.12(dd,1H,J=8.91Hz,J=0.65Hz,J=0.66Hz,benzotriazol−H),7.85(s,1H,J=1.48Hz,phenol−H),6.18(s,1H,phenol−H,),6.17(s,2H,O−CH2−O−H),5.62(q,1H,C=CH2−H),4.66(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),4.55(m,2H,O−CH2−CH2−O−H),1.97(s,3H,=C−CH3−H),
【0052】
(実施例7)
[共重合体(f);化合物(a)/メタクリル酸メチル共重合体(50wt%/50wt%)の合成]
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置、ガス吹き込み管を取り付け、化合物(a)20g、メタクリル酸メチル20g、酢酸エチル20g、トルエン20g、2,2’‐アゾビス(2‐メチルブチロニトリル)0.6gを入れて、窒素流量10ml/minで1時間フラスコ内を窒素置換後に、78〜92℃で10時間還流状態にて重合反応を行った。重合反応終了後、酢酸エチル10g、トルエン10gを追加して共重合体(f)の溶液を得た。この溶液の不揮発分は41.6%であり、粘度は1190mPa・s/25℃であり、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は30500、数平均分子量(Mn)は12400、多分散度は2.46であった。
【0053】
上記の溶液を減圧下で脱溶剤して得られた共重合体(f)の紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは368nmであった。スペクトルを図11に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜450nm
溶媒:クロロホルム
濃度:20ppm
セル:1cm石英
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体は、350〜400nm、特に380〜400nmの長波長領域の吸収が高く、また、重合性の二重結合を有していることから、紫外線吸収剤モノマーとして有効である。この紫外線吸収剤モノマーを単独重合もしくは共重合して得られた紫外線吸収剤ポリマーは、樹脂用の紫外線吸収剤として好適に利用でき、なかでも光学フィルム、プラスチックレンズ、包装材料、農業用フィルム、防虫シート、色素増感型太陽電池用積層フィルム等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図2】化合物(b)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図3】化合物(c)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図4】化合物(d)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図5】化合物(e)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図6】化合物(a)の赤外線吸収スペクトルである。
【図7】化合物(b)の赤外線吸収スペクトルである。
【図8】化合物(c)の赤外線吸収スペクトルである。
【図9】化合物(d)の赤外線吸収スペクトルである。
【図10】化合物(e)の赤外線吸収スペクトルである。
【図11】共重合体(f)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【化1】
一般式(1)
[式中、R1は
【化2】
【化3】
【化4】
又は
【化5】
を表す。R2及びR4は各々独立して炭素数1〜8のアルキレン基を表す。R3は水素原子又はメチル基を表す。]
【請求項2】
上記一般式(1)におけるR2及びR4が各々独立して炭素数2〜4のアルキレン基である、請求項1記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【請求項3】
上記一般式(1)におけるR2及びR4がエチレン基である、請求項1記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物を含有する紫外線吸収剤。
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【化1】
一般式(1)
[式中、R1は
【化2】
【化3】
【化4】
又は
【化5】
を表す。R2及びR4は各々独立して炭素数1〜8のアルキレン基を表す。R3は水素原子又はメチル基を表す。]
【請求項2】
上記一般式(1)におけるR2及びR4が各々独立して炭素数2〜4のアルキレン基である、請求項1記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【請求項3】
上記一般式(1)におけるR2及びR4がエチレン基である、請求項1記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物を含有する紫外線吸収剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−25680(P2012−25680A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163808(P2010−163808)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]