説明

ベンゾノルボルネンの製造方法

本発明は、9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンの調製物のための新規な方法に関し、a)ラジカル開始剤の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロ又はブロモである)と反応させて式IIの化合物とするステップか、aa)金属触媒の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロである)と反応させて式IIの化合物(ここでXはクロロである)とするステップ、b)適切な溶媒の存在下、式IIの化合物を塩基と反応させて、式IIIの化合物とするステップ、c)1,2−デヒドロ−6−ニトロベンゼンの存在下、式IIIの化合物を、式IVの化合物に変換するステップ、及びd)金属触媒の存在下、式IVの化合物を水素化するステップ、を含んでなる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンの調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンは、例えばWO2007/048556に記載されるように、ベンゾノルボルネン殺真菌剤の調製物についての重要な中間体である。
【0003】
WO2007/048556からは、
a)亜硝酸アルキルの存在下、式A
【0004】
【化1】

【0005】
の化合物を、式B
【0006】
【化2】

【0007】
(式中、R'及びR"は、例えばC1−C4アルキルである)の化合物と反応させ、式C
【0008】
【化3】

【0009】
の化合物とすること、
b)好適な金属触媒の存在下、式Cの化合物を水素化し、式D
【0010】
【化4】

【0011】
の化合物とすること、
c)式Dの化合物をオゾン処理後、還元剤で処理し、式E
【0012】
【化5】

【0013】
の化合物とすること、
d)式Eの化合物をトリフェニルホスフィン/四塩化炭素と反応させ、式F
【0014】
【化6】

【0015】
の2,9−ジクロロメチリデン−5−ニトロ−ベンゾノルボルネンとすること、及び
e)金属触媒の存在下、式Fの化合物を水素化し、9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンとすること、
により9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンを調製することが知られている。
【0016】
従来技術の不利な点は、当該産物の収率を低減させる多数の反応ステップである。さらに、扱いが難しいオゾン処理反応、及びトリフェニルホスフィンの使用が必要である高価なステップd)は、当該プロセスを非経済的にし、且つ大スケール製造には不適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンの新規な製造方法であって、既知の方法の不利な点を回避しつつ、且つ高収率及び良好な質で、反応ステップが少なく経済的に有利な方法で、9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンの調製を可能にする製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本発明によれば、式I
【0019】
【化7】

【0020】
の9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンの製造方法であって、
a)ラジカル開始剤の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロ又はブロモである)と反応させて式II
【0021】
【化8】

【0022】
(式中、Xはクロロ又はブロモである)の化合物
とするステップか、
aa)金属触媒の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロである)と反応させて式II
【0023】
【化9】

【0024】
(式中、Xはクロロである)の化合物とするステップ、
b)適切な溶媒の存在下、式IIの化合物を塩基と反応させて、式III
【0025】
【化10】

【0026】
の化合物とするステップ、及び
c)1,2−デヒドロ−6−ニトロベンゼンの存在下、式IIIの化合物を、式IV
【0027】
【化11】

【0028】
の化合物に変換するステップ、及び
d)金属触媒の存在下、式IVの化合物を水素源と共に水素化するステップ、を含んでなる製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本方法のある実施態様は、
a)ラジカル開始剤の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロ又はブロモである)と反応させて式II
【0030】
【化12】

【0031】
(式中、Xはクロロ又はブロモである)の化合物とするステップを含んでなる。
【0032】
反応ステップa)及びaa):
式IIの化合物は、以下:
【0033】
【化13】

【0034】
(式中、Xはクロロ又はブロモである)の異性体又はその混合物として生じる可能性がある。
【0035】
反応ステップa)及びaa)の生成物は、続く反応ステップb)用に使用できる。式IIの特定の異性体又は異性体混合物の単離又は精製は必要ない。式IIの化合物及びその異性体及び式IVの化合物は、新規であり、且つ特に本発明の方法のために開発されたので、本発明のさらなる対象を構成する。
【0036】
原理上、以下のクラスの多数のラジカル開始剤を、反応ステップa)に応用できる:有機過酸化物(例えば、過酸化メチルエチルケトン、過酸化ベンゾイル)、有機アゾ化合物、金属塩及び錯体(Cu、Ru)。好ましいラジカル開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジベンゾイル及びペルオキシ二炭酸ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)から選択される。特に、アゾビスイソブチロニトリルが好ましい。
【0037】
反応ステップa)は、高温で、好ましくは20〜100℃で、好ましくは60〜100℃で、最も好ましくは80〜90℃で有利に行われる。特に過酸化物又はアゾ化合物での開始の下、ブロモトリクロロメタンの使用が好ましい。
【0038】
特に好ましい反応ステップaa)において、金属触媒の存在下、シクロペンタジエンをCCl4と反応させ、式II
【0039】
【化14】

【0040】
(Xはクロロである)の化合物とする。ステップaa)について、ラジカル開始剤の存在は、必要ではないが、触媒ローディングを低減するために有利になり得る(少量の触媒使用)。
【0041】
触媒用の好適な金属は、例えば、ルテニウム、銅、鉄、パラジウム及びロジウムから選択される。好ましい触媒は、ルテニウム(II)又は銅(I)錯体を含有する。特に好ましい触媒は、アミン−リガンド、特に、ジアミン又はトリアミンリガンドと組み合わせて、Ru(PPh33Cl2、Ru(クメン)PPh3Cl2、Ru(Cp)PPh3Cl2、グラブス(Grubbs)I(ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)−ジクロロルテニウム)及びCuClからなる群から選択される。グラブスI、CuCl/テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)又はペンタメチルジエチレントリアミンは最も好ましい触媒である。
【0042】
反応ステップaa)は、不活性溶媒の存在下で行うことができ、Ru触媒を使用する場合は溶媒無しで行うことが好ましい。反応ステップaa)は、高温で、特に20〜100℃で、好ましくは60〜100℃で、最も好ましくは60〜80℃で有利に行われる。反応ステップaa)の生成物は、可能性のある3つの異性体の混合物である。特定の異性体又は異性体混合物の単離又は精製は必要ない。
【0043】
反応ステップaa)の好ましい実施態様は、0.5〜2mol%、特に1mol%の銅I、好ましくはCuClと、1〜4mol%、特に2mol%のテトラメチルエタン−1,2−ジアミン(TMEDA)の存在下、シクロペンタジエンと、アセトニトリル中の1.5〜3等量、特に2等量の四塩化炭素との混合物を加熱することにより効率的に行われ、蒸留後に単離収率70〜80%の生成物を提供できる。
【0044】
上記のラジカル開始剤、特にN,N−アゾビスイソブチロニトリルの触媒量(通常1mol%)を反応混合物に添加することにより触媒量ローディングの低減が可能である(少量の触媒使用)。
【0045】
反応ステップaa)はさらなる利点を有する。CCl4の使用は高額ではなく、四塩化炭素の付加生成物(CTCM−シクロペンテン)は、ブロモ誘導体(BTCM−シクロペンテン)よりもより安定であり、反応は発熱性が少ないため、大スケール製造に適し、且つ次のステップで臭化物アニオンを発生させない。
【0046】
反応ステップa)及びaa)において、CCl3Br又はCCl4を、シクロペンタジエンに対して過剰量で使用し、好ましくは1等量のシクロペンタジエンに対し、1.5〜5等量、特に2〜3等量のCCl3Br又はCCl4を使用する。
【0047】
反応ステップb):
反応ステップb)の好ましい塩基は、アルカリ金属アルコラート、例えば、ナトリウムtert−ブトキシド及びカリウムtert−ブトキシド又はNaNH2又はリチウムジイソプロピルアミドなどの金属アミドである。
【0048】
ケトン及びエステル以外全ての不活性溶媒を使用できる。反応ステップb)として適切な溶媒は、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)、メチルシクロヘキサン(MCH)又はその混合物、テトラヒドロフラン(THF)、ジグリム(dyglime)及びトルエンから選択される。
【0049】
反応ステップb)として適切なさらなる溶媒はクロロベンゼンである。
【0050】
反応ステップb)は、−20〜+20℃の温度範囲で、好ましくは−10℃〜10℃の温度で、最も好ましくは−5℃〜5℃の温度で有利に行われる。
【0051】
本発明の好ましい実施態様によれば、式IIIの化合物(その溶液)は、単離することなく次の反応ステップで直接使用される。式IIIの化合物は、式Iの化合物の調製のための重要な中間体である。式IIIの化合物は、(a)Moberg, C.; Nilsson, M. J. Organomet. Chem. 1973, 49, 243-248、(b) Siemionko, R. K.; Berson, J. A. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 3870-3882、により知られている。
【0052】
しかしながら、かかる参考文献に記載される調製方法は、非常に好ましくない。その理由は以下の通りである。1)当該方法は、記載の通り再生できなかった(得られる収率が低かった)、2)非上に高額で自然発火性且つ毒性の出発物質(ニッケロセン(nickelocen))を利用する、3)多量の金属廃棄物(ニッケル含有化合物)を生成する、4)当該方法は、工業的使用のためにスケールアップできない(大量のニッケロセンの使用はできず、大量のニッケロセンは扱いが危険である)。
【0053】
これとは対照的に、シクロペンタジエンから出発する式IIIの化合物の調製は、新規且つ非常に効率的な方法であるため、本発明のさらなる対象を構成する。
【0054】
従って、本発明のさらなる対象は、式III
【0055】
【化15】

【0056】
の化合物の調製のための方法であり、
当該方法は、
a)ラジカル開始剤の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロ又はブロモである)と反応させて式II
【0057】
【化16】

【0058】
(式中、Xはクロロ又はブロモである)の化合物とするステップ、及び
b)適切な溶媒の存在下で、式IIの化合物を塩基と反応させるステップ、
を含んでなる。
【0059】
反応ステップc)
1,2−デヒドロ−6−ニトロベンゼンは、インサイチュで作られる
[例えば、L.Paquette et al, J. Amer. Chem. Soc. 99, 3734 (1977) and H. Seidel, Chemische Berichte, 34, 4351 (1901)に記載されるように、式(A)
【0060】
【化17】

【0061】
の6−ニトロアントラニル酸から出発して]。
【0062】
反応ステップc)は、高温で、好ましくは30℃〜60℃、最も好ましくは30〜40℃の温度で行われる。
【0063】
反応ステップd)
水素化反応のための好ましい金属触媒は、ラネー(Raney)ニッケル、プラチナ、好ましくは炭素などの担体上のプラチナ、好ましくは、炭素などの担体上のパラジウムからなる群から選択されるが、当該群に限定されない。特に好ましい触媒は、ラネーニッケルである。好適な水素源は、水素又はヒドラジンであり、好ましくは水素である。
【0064】
反応ステップd)は、低温から高温で、好ましくは0℃〜80℃、好ましくは30〜60℃の温度で行われる。
【0065】
本発明のプロセスの好ましい変形は、
aa)金属触媒の金属成分が、ルテニウム、銅、鉄、パラジウム及びラジウムから選択される金属触媒の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロである)と反応させて式II
【0066】
【化18】

【0067】
(式中、Xはクロロである)の化合物とするステップ、
b)適切な溶媒の存在下、式IIの化合物を、アルカリ金属アルコラートから選択される塩基と反応させ、式III
【0068】
【化19】

【0069】
の化合物とするステップ、及び
c)1,2−デヒドロ−6−ニトロベンゼンの存在下、式IIIの化合物を、式IV
【0070】
【化20】

【0071】
の化合物に変換するステップ、及び
d)金属触媒の存在下、式IVの化合物を水素源と共に水素化するステップ、を含んでなる。
【実施例】
【0072】
調製例(Preparatory example):
実施例P1:式IIaの化合物の調製
【0073】
【化21】

【0074】
アゾビスイソブチロニトリル(2.5g)をブロモトリクロロメタン(250g)に溶解させた。ブロモトリクロロメタン(650g)を不活性(窒素)雰囲気下、ガラスリアクターにロードし、且つ85℃に加熱した。アゾビスイソブチロニトリル溶液の1/3(84g)をすぐに当該リアクターに添加し、当該リアクターの含有物を再び85℃に加熱し、85℃で2.5時間の間に、アゾビスイソブチロニトリル溶液の残りの2/3(168.5g)及びシクロペンタジエン(100g、新たに蒸留した)、及びメチルシクロヘキサン(10g)を同時に添加した。反応混合物を85℃でさらに1時間攪拌し、その後、環境温度に冷却した。大量の溶媒(ブロモトリクロロメタン)を真空中で蒸発させた(60→70℃、150→50mbar)。メチルクロロヘキサン(50g)を当該蒸留残渣に添加し、蒸留を継続した(60→70℃、150→15mbar)。粗生成物(蒸留残渣)を真空中でさらに30分乾燥させた(70℃、15mbar)。式IIaの化合物の収量は、茶色オイルの形態で389gであり、純度94%、92%の収率、位置異性体の混合物であった。
【0075】
実施例P2:式IIIの化合物の調製
【0076】
【化22】

【0077】
ガラスリアクターに、不活性(窒素)雰囲気下、ブロモ(トリクロロメチル)シクロペンテン(27.83g、化合物IIa)、メチルシクロヘキセン(62mL)、メチル−tert−ブチルエーテル(62mL)及びビス(2−メトキシエチル)エーテル(ジグリム、6.7g)をロードした。混合物を、氷/NaCl浴中で−10℃まで冷却した。+5℃未満の温度を維持しながら10分間、ナトリウムtert−ブトキシド(20.3g)を固形物として当該リアクターに添加した。反応混合物を、氷冷水(80mL)及び氷(40g)の混合物で反応停止させ、その後、32%HCl(およそ3mL)で、水相のpH値を≦2に調整した。水相を分離し、有機相を、無水炭酸カリウムを用いて0℃で乾燥させた。炭酸カリウムを濾別し、メチル−tert−ブチルエーテル(10mL)でリンスした。メチルエチルケトン(10g)を内部標準として混合した濾液に添加し、6,6−ジクロロフルベン(式IIIの化合物)の濃度を、1H NMR分光分析により決定した。収率は81%[9.9%(およそ0.53M)溶液を9.7g]であった。この溶液を冷凍庫で保存し、その後、次のステップで使用した。
【0078】
実施例P3:式IVの化合物の調製
【0079】
【化23】

【0080】
前ステップで得られた6,6−ジクロロフルベンの冷却溶液(メチル−tert−ブチルエーテル/メチルシクロヘキサン=1:1中で9%)を、ガラスリアクターに入れ、素早く35℃まで加熱した。tert−ペンチルにトリル(2.66g)を当該リアクターに添加し、35℃の温度で80分間の間に、tert−ペンチルニトリル(9.46g)及びメチルエチルケトン(42mL)中の6−ニトロアントラニル酸(11.6g、96.6%)を同時に添加した。反応混合物を同じ温度でさらに30分攪拌し、その後、全ての揮発性物質をロータリーエバポレーションにより除去した。残りの残存物をメタノール(20mL)から、+5℃で15時間結晶化した。茶色結晶物質を濾過し、冷メタノール(15mL)で洗浄し、空気中で乾燥させた。収量は7.10g(42%、純度98%の生成物)であった。
【0081】
実施例P4:式IVの化合物の水素化
オートクレーブに、THF(130mL)、湿ラニーニッケル(2g)及び式IVの化合物(20g)を充填した。オートクレーブを閉め、含有物を掻き混ぜ、窒素を3回パージして酸素を除去し、その後、水素を3回パージした。水素取り込み終了後、典型的には3〜4時間後、反応塊(mass)を40℃でさらに30分保持した。この後、圧力を解放し含有物を環境温度まで冷却した。真空下で溶媒を除去し、得られたオイルを静置して結晶化させ、黄色がかった色から茶色の式Iの化合物を収量18gで得た(96%、純度94%の生成物)。
【0082】
実施例P5:グラブス−I触媒を用いる式IIaのCTCM−シクロペンタンの調製
【0083】
【化24】

【0084】
シクロペンタジエン(2.0g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.5g)、ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(グラブスの第一世代触媒、12.2mg、0.05mol%)及び四塩化炭素(14g)の混合物を、不活性(アルゴン)雰囲気下、75℃で加熱した。この変換をGCでモニターした。4時間後、反応を完了させ、収率85%で3つの異性体の混合物として、クロロ(トリクロロメチル)シクロペンテンを得た(GC、ドデカンを標準として使用した)。
【0085】
実施例P6:CuCl/TMEDA触媒を用いる式IIaのCTCM
【0086】
【化25】

【0087】
触媒溶液:
塩化銅(I)(0.99g)、テトラメチレルエチレンジアミン(TMEDA、2.32g)及びアセトニトリル(100mL)の混合物を、窒素雰囲気下75℃で25分加熱し、その後室温まで冷却した。
【0088】
シクロペンタジエン溶液:
新たに調製したシクロペンタジエン(66.0g)を、四塩化炭素(307g)中に溶解させた。
【0089】
反応:
窒素雰囲気下、アセトニトリル(80g)及び40%の触媒溶液を、窒素下でガラスリアクターに入れた。混合物を温度75℃まで加熱した。その後、40%のシクロペンタジエン溶液を一度にリアクターに入れ、温度を60℃〜70℃に維持しながら、触媒溶液の残り及びシクロペンタジエン溶液を同時に添加した。シクロペンタジエン溶液を1時間で、そして触媒溶液を1.5時間で添加した。反応混合物を70℃でさらに1時間攪拌し、環境温度まで冷却し、濾過した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残存物を真空蒸留により分画した(40〜45℃、0.1mbar)。収量は170g(75%、純度97〜98%)であり3つの位置異性体の混合物であった。
【0090】
実施例P7:式IIIの化合物の調製
【0091】
【化26】

【0092】
ナトリウムtert−ブトキシド(69.2g)をシクロベンゼン(175mL)と共に室温で30分攪拌し、微細懸濁物を生成した。
【0093】
グラスリアクターに、不活性(窒素)雰囲気下、クロロ(トリクロロメチル)シクロペンタン(69,1g)、クロロベンゼン(275ml)、及びビス(2−メトキシエチル)エーテル(ジグリム、21.1g)をロードした。混合物を−20℃に冷却し、ナトリウムtert−ブトキシドの懸濁物を、温度を+3℃未満に維持しながら、35分間かけて、少しずつ反応物に添加した。添加が完了したら、反応混合物を−5℃で3時間攪拌した。反応混合物を0.5M CHl水溶液(300ml)及び氷(200g)の混合物で反応停止させた。水相のpH値を、pH≦2となるよう制御した。水相を分離し、有機相を水と氷の同じ混合物で2回抽出した(これはtert−ブタノール及びジグリムの完全な除去のために必要であった)。6,6−ジクロロフルベンの濃度を、クロロベンゼン(溶媒)を内部標準として用いる1H NMR分光分析により決定した。収率は75%[6.8%(およそ0.52M)溶液が510g]であった。溶液を冷凍庫又はドライアイス中に保存し、その後次のステップで使用した。
【0094】
コメント:ちょうど反応停止後の収率(さらなる抽出なし)は85%であった。溶液は相分離で失われた。
【0095】
本発明のプロセスを用いて有利に調製できる好ましいベンゾノルボルネン殺真菌剤は、式V
【0096】
【化27】

【0097】
の、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドである。
【0098】
式Vの化合物は、例えばWO2007/048556に記載されている。式Vの化合物は、2つのエナンチオ体で生じる可能性がある。式Va
【0099】
【化28】

【0100】
の化合物、ここで、化学名称は、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸((1S,4R)−9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドであり、及び式Vb
【0101】
【化29】

【0102】
の化合物、ここで、化学名称は、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸((1R,4S)−9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドがある。光学回転角[α]23.5は、それぞれ(テトラヒドロフラン中で)−119.36°及び+119.23°である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

の9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンの製造方法であって、
a)ラジカル開始剤の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロ又はブロモである)と反応させて式II
【化2】

(式中、Xはクロロ又はブロモである)の化合物
とするステップか、
aa)金属触媒の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロである)と反応させて式II
【化3】

(式中、Xはクロロである)の化合物とするステップ、
b)適切な溶媒の存在下、式IIの化合物を塩基と反応させて、式III
【化4】

の化合物とするステップ、及び
c)1,2−デヒドロ−6−ニトロベンゼンの存在下、式IIIの化合物を、式IV
【化5】

の化合物に変換するステップ、及び
d)金属触媒の存在下、式IVの化合物を水素源と共に水素化するステップ、を含んでなる製造方法。
【請求項2】
a)ラジカル開始剤の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロ又はブロモである)と反応させて式II
【化6】

(式中、Xはクロロ又はブロモである)の化合物とするステップを含んでなる、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式IV
【化7】

の化合物。
【請求項4】
式III
【化8】

の化合物の製造方法であって、
a)ラジカル開始剤の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロ又はブロモである)と反応させて式II
【化9】

(式中、Xはクロロ又はブロモである)の化合物とするステップ、及び
b)適切な溶媒の存在下で、式IIの化合物を塩基と反応させるステップ、
を含んでなる製造方法。
【請求項5】
Xがブロモである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
aa)金属触媒の存在下、シクロペンタジエンをCCl4と反応させて、式II
【化10】

(式中、Xはクロロである)の化合物とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
aa)金属触媒の金属成分が、ルテニウム、銅、鉄、パラジウム及びラジウムから選択される金属触媒の存在下、シクロペンタジエンをCXCl3(ここでXはクロロである)と反応させて式II
【化11】

(式中、Xはクロロである)の化合物とするステップ、
b)適切な溶媒の存在下、式IIの化合物を、アルカリ金属アルコラートから選択される塩基と反応させ、式III
【化12】

の化合物とするステップ、及び
c)1,2−デヒドロ−6−ニトロベンゼンの存在下、式IIIの化合物を、式IV
【化13】

の化合物に変換するステップ、及び
d)金属触媒の存在下、式IVの化合物を水素源と共に水素化するステップ、を含んでなる請求項1に記載の製造方法。

【公表番号】特表2012−506842(P2012−506842A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532562(P2011−532562)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062525
【国際公開番号】WO2010/049228
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】