説明

ベンゾフェノン誘導体の製造法

【課題】抗腫瘍活性等を有するベンゾフェノン誘導体の合成中間体の製造法等の提供。
【解決手段】式(III)


(式中、Rは置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、Rは置換基を有していてもよい低級アルコキシカルボニルを表す。Rは置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、Rは置換基を有していてもよい脂肪族複素環アルキルを表す。)で表されるベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍活性等を有するベンゾフェノン誘導体の合成中間体の製造法等に関する。
【背景技術】
【0002】
2-{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミドが、Hsp90拮抗剤、抗腫瘍剤等として有用であることが知られている(特許文献1及び2)。特許文献1の記載によると、該化合物のベンゾフェノン骨格の構築に、安息香酸誘導体とジヒドロキシベンゼン誘導体のフリーデル−クラフツ反応が使用されている。本合成において、ヒドロキシがアリルで保護されたジヒドロキシベンゼン誘導体が用いられている。
【0003】
ジヒドロキシベンゼン誘導体と安息香酸誘導体のフリーデル−クラフツ反応によるベンゾフェノン誘導体の合成において、ヒドロキシが無保護のジヒドロキシベンゼン誘導体を用いる例が知られている(特許文献1、3及び4、非特許文献1〜7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/000778号
【特許文献2】国際公開第2006/088193号
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0137421号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0029976号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「オーガニック・アンド・バイオモレキュラー・ケミストリー(Organic and Biomolecular Chemistry)」、2007年、第5巻、第3号、494頁
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)」、1949年、第71巻、3663頁
【非特許文献3】「シンセシス(Synthesis)」、2006年、第12号、2047頁
【非特許文献4】「ジャーナル・オブ・ケミカル・リサーチ(Journal of Chemical Research)」、ミニプリント、2003年、第12号、1258頁
【非特許文献5】「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」、1954年、第19巻、1243頁
【非特許文献6】「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」、2006年、第71巻、第17号、6374頁
【非特許文献7】「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)」、1918年、第40巻、1246頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抗腫瘍活性等を有するベンゾフェノン誘導体の合成中間体の製造法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(24)に関する。
(1)式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R2は置換基を有していてもよい低級アルコキシカルボニルを表す)で表される化合物またはその塩、及び式(II)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R3は置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R4は置換基を有していてもよい脂肪族複素環アルキルを表す)で表される化合物またはその塩を、酸の存在下、反応させることを特徴とする、式(III)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ前記と同義である)で表されるベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(2)R1が低級アルキルである前記(1)記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(3)R1がエチルである前記(1)記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(4)R2が低級アルコキシカルボニルである前記(1)〜(3)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(5)R2がメトキシカルボニルである前記(1)〜(3)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(6)R3が低級アルキルである前記(1)〜(5)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(7)R3がメチルである前記(1)〜(5)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【0014】
(8)R4が、脂肪族複素環アルキルである前記(1)〜(7)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(9)R4が、2位が脂肪族複素環基で置換されたエチルである前記(1)〜(7)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(10)R4が2-モルホリノエチルである前記(1)〜(7)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(11)酸がルイス酸である前記(1)〜(10)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(12)酸が三フッ化ホウ素またはその錯体である前記(1)〜(10)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(13)式(I)
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R1及びR2はそれぞれ前記と同義である)で表される化合物またはその塩、及び式(II)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R3及びR4はそれぞれ前記と同義である)で表される化合物またはその塩を、酸の存在下、反応させ、式(III)
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ前記と同義である)で表されるベンゾフェノン誘導体またはその塩を得る工程を含むことを特徴とする、式(IV)
【0021】
【化7】

【0022】
(式中、R1、R3及びR4はそれぞれ前記と同義であり、
R5は置換基を有していてもよいN-低級アルキルアミノカルボニルまたは置換基を有していてもよいN,N-ジ低級アルキルアミノカルボニルを表す)で表されるベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(14)R1が低級アルキルである前記(13)記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(15)R1がエチルである前記(13)記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(16)R2が低級アルコキシカルボニルである前記(13)〜(15)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(17)R2がメトキシカルボニルである前記(13)〜(15)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(18)R3が低級アルキルである前記(13)〜(17)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(19)R3がメチルである前記(13)〜(17)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【0023】
(20)R4が、脂肪族複素環アルキルである前記(13)〜(19)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(21)R4が、2位が脂肪族複素環基で置換されたエチルである前記(13)〜(19)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(22)R4が2-モルホリノエチルである前記(13)〜(19)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(23)R5がN,N-ビス(2-メトキシエチル)アミノカルボニルである前記(13)〜(22)のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
(24)式(IV)で表される化合物が
【0024】
【化8】

【0025】
で表される2-{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミドである、前記(13)記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、抗腫瘍活性等を有するベンゾフェノン誘導体の合成中間体の製造法等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表される化合物を、それぞれ化合物(I)、(II)、(III)及び(IV)という。他の式番号の化合物についても同様である。
化合物(I)、(II)、(III)及び(IV)の各基の定義において、
低級アルキル、ならびに低級アルコキシカルボニル、N-低級アルキルアミノカルボニル及びN,N-ジ低級アルキルアミノカルボニルの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。N,N-ジ低級アルキルアミノカルボニルの2つの低級アルキル部分は同一でも異なっていてもよい。
【0028】
脂肪族複素環アルキルのアルキレン部分は、前記低級アルキルから水素原子を1つ除いたものと同義である。
脂肪族複素環基及び脂肪族複素環アルキルの脂肪族複素環基部分としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む3〜8員の単環性脂肪族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂肪族複素環基等があげられ、より具体的にはアジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペリジル、アゼパニル、1,2,5,6-テトラヒドロピリジル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピラゾリニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、5,6-ジヒドロ-2H-ピラニル、テトラヒドロチオピラニル、オキサゾリジニル、モルホリノ、モルホリニル、チオキサゾリジニル、チオモルホリノ、チオモルホリニル、2H-オキサゾリル、2H-チオキサゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリジニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチオキサゾリル、ベンゾジオキソリニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ジヒドロ-2H-クロマニル、ジヒドロ-1H-クロマニル、ジヒドロ-2H-チオクロマニル、ジヒドロ-1H-チオクロマニル、テトラヒドロキノキサリニル、テトラヒドロキナゾリニル、ジヒドロベンゾジオキサニル、ジヒドロキノリル、ジヒドロイソキノリル、ジヒドロジベンゾアゼピニル等があげられる。
【0029】
置換低級アルキル、置換低級アルコキシカルボニル、N-置換低級アルキルアミノカルボニル、N-低級アルキル-N-置換低級アルキルアミノカルボニル及びN,N-ジ置換低級アルキルアミノカルボニルにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3のヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、低級アルコキシ等があげられる。置換基の置換位置は特に限定されない。ここで、低級アルコキシの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義である。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各原子を表す。
【0030】
置換脂肪族複素環アルキルにおける置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜3のヒドロキシ、ハロゲン、オキソ、低級アルキル、低級アルコキシ、脂肪族複素環基等があげられる。置換基の置換位置は特に限定されない。ここで、低級アルキル及び脂肪族複素環基はそれぞれ前記と同義である。低級アルコキシの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義である。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各原子を表す。
【0031】
化合物(I)、(II)、(III)及び(IV)の塩としては、例えば酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。
化合物(I)、(II)、(III)及び(IV)の酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、アンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、有機アミン付加塩としては、モルホリン付加塩、ピペリジン付加塩等があげられ、アミノ酸付加塩としては、グリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩等が挙げられる。
【0032】
次に、本発明の製造法について説明する。なお、以下に示す製造法において、定義した基が該製造法の条件下で変化するか、または該製造法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される保護基の導入及び除去方法[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版(Protective Groups in Organic Synthesis, fourth edition)、グリーン(T.W.Greene)著、John Wiley & Sons Inc.(2006年)等に記載の方法]等を用いることにより、目的化合物を製造することができる。
製造法
【0033】
【化9】

【0034】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ前記と同義である)
化合物(III)は、化合物(I)及び化合物(II)を酸存在下、溶媒中もしくは無溶媒で反応させることにより、得ることができる。
酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、塩酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、下記のルイス酸等が挙げられ、化合物(I)に対して、好ましくは1〜50当量用いられる。
【0035】
ルイス酸としては、例えば塩化アルミニウム(III)、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、四塩化チタン、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素−ジメチルスルフィド錯体、三塩化ホウ素、塩化亜鉛、塩化鉄、アルミニウムトリフレート、銅トリフレート等があげられる。酸としてルイス酸を用いる場合、化合物(I)に対して、好ましくは1〜50当量用いられる。
【0036】
三フッ化ホウ素の錯体としては、例えば三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素−ジメチルスルフィド錯体等があげられる。
添加剤として、1〜10当量の無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、塩化チオニル、クロロギ酸イソブチル、1,1’-ジカルボニルイミダゾール等を添加することにより、反応を促進することもできる。
【0037】
溶媒としては、例えばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等の不活性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒、アセトニトリル、プロピルオニトリル等のニトリル溶媒が挙げられ、これらは単独または混合して用いられる。また、トリフルオロ酢酸を溶媒として用いることもでき、エーテル溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒を用いる場合、必要に応じて過剰量の酸を用いて反応を行ってもよい。
【0038】
反応は、通常-50 ℃から用いる溶媒の沸点の間の温度で、5分間〜24時間行われる。
化合物(I)は、公知の方法[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第二版(Comprehensive Organic Transformations, second edition)、ラロック(R. C. Larock)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1999年)等]またはそれらに準じた方法により得ることができる。
【0039】
化合物(II)は、市販品として、または公知の方法[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第二版(Comprehensive Organic Transformations, second edition)、ラロック(R. C. Larock)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1999年);バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ (Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters)(2009年)等]もしくはそれらに準じた方法により得ることができる。
【0040】
化合物(IV)は、本発明の製造法で得られる化合物(III)から、エステル加水分解、アミド化等の工程を経て合成することができる。それらの変換は、公知の方法[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第2版(Comprehensive Organic Transformations 2nd edition)、R. C. ラロック(Larock)著、Vch Verlagsgesellscaft Mbh(1999年)、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版(Protective Groups in Organic Synthesis, 4th edition)、グリーン(T.W.Greene)著、John Wiley & Sons Inc.(2006年)等に記載の方法]に従って行なうことが可能である。
【0041】
上記各製造法における目的化合物は、有機合成化学で常用される分離精製法、例えば、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、化合物(III)は特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
化合物(III)及び(IV)の中には、幾何異性体、光学異性体等の立体異性体が存在し得るものもあるが、本発明は、これらを含め、全ての可能な異性体及びそれらの混合物を包含する。
【0042】
また、化合物(III)及び(IV)は、水あるいは各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明に包含される。
本発明によって得られる化合物(III)としては、例えば以下の化合物等があげられる。
【0043】
【化10】

【0044】
以下に、本発明の態様を実施例及び参考例で説明する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
フリーデル−クラフツ反応による{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}酢酸メチル(化合物1)の製造
化合物A(599 g, 1.89 mol)をトリフルオロ酢酸(2.70 L)に懸濁させ、25 ℃で無水トリフルオロ酢酸(284 mL, 2.05 mol)を滴下し、30分間攪拌した。化合物B(360 g, 1.71 mol)を25 ℃で加え、10分間攪拌した。25 ℃で三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体(3.60 L)を滴下し、5分間攪拌後、80 ℃で1時間攪拌した。直ちに50 ℃に冷却し、減圧濃縮した。酢酸エチル(3.60 L)、水(1.80 L)、6 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(2.85 L)を加え、分液した。水層を酢酸エチル(1.80 L)で抽出後、有機層を合わせて減圧濃縮し、化合物1を得た。化合物1はそのまま次工程に用いた。
1H NMR (CD3OD) : 1.07 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 2.61 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 2.65 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 2.86 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 3.44 (s, 3H), 3.53 (s, 2H), 3.70 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 3.84 (s, 3H), 4.22 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 6.34 (s, 1H), 6.97 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 2.0, 8.2 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 2.0 Hz, 1H).
【実施例2】
【0046】
化合物1を用いる2-{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミド 1塩酸塩(化合物4)の製造
工程1:{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}酢酸(化合物2)の製造
実施例1で得られた化合物1の全量を、10 ℃以下に冷却した4 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(2.70 L)に溶解させ、30 ℃で3時間攪拌した。反応混合物に水(1.08 L)及び10 ℃以下に冷却した4 mol/L塩酸(2.16 L)を25 ℃で加え、pH 6.0に調整した。25 ℃で2時間、5 ℃で1時間攪拌した後、析出した結晶を濾過して、粗体を得た。得られた粗体を50% アセトニトリル水溶液(5.40 L)に懸濁させ、50 ℃で1時間、25 ℃で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、50% アセトニトリル水溶液(1.08 L)で洗浄し、50 ℃で8時間減圧乾燥して、化合物2(593 g, 含量:93.4%, 1.21 mol, 化合物Bからの収率:70.8%)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) : 1.01 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 2.43-2.51 (m, 6H), 2.70 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 3.35 (s, 2H), 3.57 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.76 (s, 3H), 4.13 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 6.36 (s, 1H), 7.00 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.20 (dd, J = 2.0, 8.3 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 9.16 (br s, 1H), 9.47 (br s, 1H).
【0047】
工程2:{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミド(化合物3)の製造
化合物2(582 g, 1.18 mol)をTHF(5.83 L)に懸濁させ、25 ℃でビス(2-メトキシエチル)アミン(374 mL, 2.53 mol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(233 g, 1.52 mol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(292 g, 1.52 mol)を加え、30 ℃で3時間攪拌した。反応混合物に酢酸エチル(5.82 L)、20% 食塩水(5.82 L)を加え、分液した。有機層を20% 食塩水(2.91 L)で洗浄後、硫酸ナトリウム(1.75 kg)で乾燥、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル(4.66 L)を加え、50 ℃で30分間攪拌後、25 ℃で2時間、5 ℃で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、50 ℃で8時間減圧乾燥して、粗体-1(570 g、含量:92.8%、920 mmol, 収率78.0%)を得た。粗体-1(1.65 kg, 2.57 mol)をアセトン(16.5 L)に懸濁させ、50 ℃で1時間、25 ℃で1時間、5 ℃で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、10 ℃以下に冷却したアセトン(3.30 L)で洗浄し、50 ℃で8時間減圧乾燥して、粗体-2(1.45 kg、含量:100%、2.52 mol, 収率:98.1%)を得た。粗体-2(1.44 kg, 2.51 mol)をアセトン(7.19 L)、エタノール(7.19 L)に懸濁させ、50 ℃で溶解させた後、30 ℃で1時間、5 ℃で3時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、10 ℃以下に冷却したアセトン/エタノール=1:1(2.88 L)で洗浄し、50 ℃で8時間減圧乾燥して、化合物3(1.28 kg、含量:100%、2.23 mol, 収率:88.8%)を得た。
1H NMR (CDCl3) : 1.03 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 2.46 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 2.59 (m, 4H),2.85 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 3.25 (s, 3H), 3.29 (s, 3H), 3.36 (m, 4H), 3.43 (d, J = 4.2 Hz, 2H), 3.47 (d, J = 4.2 Hz, 2H), 3.60 (s, 2H), 3.72 (m, 4H), 3.86 (s, 3H), 4.19 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 6.14 (s, 1H), 6.84 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.40 (dd, J = 2.0, 8.2 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 2.0 Hz, 1H).

【0048】
工程3:化合物4の製造
化合物3(1.27 kg, 2.21 mol)をエタノール(9.38 L)に懸濁させ、60 ℃で水(102 mL)を滴下し、溶解させた。エタノール(363 g)に懸濁させた活性炭(126 g)を加え、60 ℃にて15分間攪拌した。活性炭を濾過し、60 ℃に加温したエタノール(2.53 L)で洗浄した。濾液に60 ℃にて12 mol/L塩酸(275 mL)を加え、15分間攪拌した。種晶を添加し、55 ℃で1時間、50 ℃で1時間、45 ℃で1時間、40 ℃で1時間、35 ℃で1時間、30 ℃で2時間、5 ℃で2時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、10 ℃以下に冷却した97% エタノール水溶液(3.80 L)で洗浄し、50 ℃で減圧乾燥して、化合物4(1.28 kg、含量:98.7%、2.07 mol, 収率93.7%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 0.99 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 2.37 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 2.45-2.50 (m, 4H), 2.70 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.04 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.07 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 3.22 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.31 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.38 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.51 (s, 2H), 3.57 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.76 (s, 3H), 4.13 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 6.34 (s, 1H), 6.99 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.24 (dd, J = 8.4, 1.9 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 9.05 (br s, 1H), 9.34 (br s, 1H).

【0049】
参考例1:3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)安息香酸 1塩酸塩(化合物A)の製造
工程1
バニリン酸エチル(200 g, 1.02 mol)をアセトニトリル(2.0 L)に溶解し、炭酸カリウム(317 g, 2.29 mol)及び4-(2-クロロエチル)モルホリン塩酸塩(199 g, 1.07 mol)を加え、60 ℃で6時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で1000 mLまで濃縮し、3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)安息香酸エチル(化合物C)を含むアセトニトリル溶液を得た。そのまま次工程に用いた。
1H-NMR (DMSO-d6): 1.31 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 2.48 (t, J = 4.5 Hz, 4H), 2.71 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 3.57 (t, J = 4.5 Hz, 4H), 3.82 (s, 3H), 4.14 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 4.28 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 7.07 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.56 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 1H).
【0050】
工程2
工程1で得られた化合物Cのアセトニトリル溶液にエタノール(500 mL)及び3 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(850 mL, 2.55 mol)を加え、45 ℃で3時間攪拌した。反応混合物を5 ℃に冷却し、濃塩酸で中和し、酢酸エチル(500 mL)及び2-メチル-1-プロパノール(1.50 L)を加え、分液した。水層に酢酸エチル(250 mL)及び2-メチル-1-プロパノール(750 mL)を加え、抽出した後、有機層をあわせて、減圧下で1000 mLまで濃縮した。残渣に酢酸エチルを加え、15 ℃で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、粗体(318 g, 83%)を得た。粗体(5.0 g, 13 mmol)にメタノール(50 mL)を加え、還流下2時間攪拌した。反応混合物を15 ℃まで冷却し、15 ℃で2時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、化合物A(3.3 g, 74%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 3.20-3.37 (m, 2H), 3.38-3.70 (m, 2H), 3.57 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.82 (s, 3H), 3.85-4.00 (m, 2H), 3.91 (s, 2H), 4.55 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 7.12 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.56 (dd, J = 8.4, 1.8 Hz, 1H).

【0051】
参考例2:2-エチル-3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸メチル(化合物B)の製造
工程1
窒素雰囲気下、3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸メチル(2.77 kg, 15.2 mol)を三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体(5.51 kg, 38.8 mol)に懸濁し、10 ℃まで冷却した。無水酢酸(1.55 kg, 15.2 mol)を10 ℃以下で加え、30 ℃まで昇温し、12時間攪拌した。反応混合物を5 ℃まで冷却し、10 ℃以下に冷却した水(27.7 L)に加え、10 ℃以下で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、水(8.3 L)で洗浄した。得られた結晶に10 ℃に冷却した水(13.9 L)を加え、10 ℃ 以下で30分攪拌した。析出した結晶を濾過し、水(4.2 L)で洗浄した後、50 ℃で減圧乾燥し、2-アセチル-3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸メチル(化合物D)(2.77 kg, 80.3%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 2.39 (s, 3H), 3.56 (s, 5H), 6.14 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 6.28 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 9.80 (br s, 1H), 10.08 (br s, 1H).
【0052】
工程2
窒素雰囲気下、化合物D(5.32 kg, 23.8 mol)、10% パラジウム炭素(Pd/C)(55.6%含水品)(2.41 kg)を2-プロパノール(58.8 kg)及び水(3.8 L)に懸濁した。水素雰囲気下へと置換し、30 ℃で12時間激しく攪拌した。窒素雰囲気下に置換した後、Pd/Cを濾別し2-プロパノール(6.5 kg)及びアセトン(6.5 kg)で洗浄し、濾液を減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル(9.7 kg)を加え、50 ℃に加熱し溶解させた。冷却しながらn-ヘプタン(25.9 kg)を3時間かけて加え、20 ℃で15時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、酢酸エチル/n-ヘプタン(4/11)(8.1 kg)で洗浄した後、50 ℃で減圧乾燥し、粗体(2.14 kg)を取得した。得られた粗体(2.10 kg)に酢酸エチル(6.62 kg)を加え、55 ℃に加熱し溶解させた。反応混合物にn-ヘプタン(15.1 kg)を45 ℃以上で滴下し、10分攪拌した後、20 ℃で3時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、n-ヘプタン(2.9 kg)で洗浄した後、50 ℃で減圧乾燥し、化合物B(1.82 kg, 36%)を取得した。
1H-NMR (DMSO-d6): 0.94 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 2.40 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 3.50 (s, 2H), 3.58 (s, 3H), 6.06 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.19 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.94 (br s, 1H), 9.07 (br s, 1H).

【0053】
比較例1:アリルオキシを有するベンゼン誘導体を用いたフリーデル−クラフツ反応を含む2-{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミド(化合物3)の製造
工程1:アリルオキシを有するベンゼン誘導体を用いたフリーデル−クラフツ反応
化合物A(4.7 g, 16 mmol)と2-(3,5-ジアリルオキシ-2-エチルフェニル)酢酸メチル(化合物E)(4.3 g, 15 mmol)にトリフルオロ酢酸(43 mL)と無水トリフルオロ酢酸(7.5 mL, 53 mmol)を加え、1.5時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、酢酸エチル(100 mL)と水(100 mL)を加え、6 mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpHを9.0に調整後、分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=100/0〜10/1)で精製し、3,5-ジアリルオキシ-2-エチル-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル酢酸メチル(化合物F)(7.0 g, 86%)を得た。
1H-NMR (CDCl3):1.09 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 2.57-2.70 (m, 6H), 2.83 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.45 (s, 3H), 3.58 (s, 2H), 3.69 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 3.82 (s, 3H), 4.21 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 4.42 (d, J = 4.8 Hz, 2H), 4.63 (d, J = 4.8 Hz, 2H), 4.96-5.09 (m, 2H), 5.29 (dd, J = 10.5, 1.5 Hz, 1H), 5.54 (dd, J = 17.3, 1.5 Hz, 1H), 5.63-5.78 (m, 1H), 6.04-6.18 (m, 1H), 6.63 (s, 1H), 6.96 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.29 (dd, J = 8.4, 1.8 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 1.8 Hz, 1H).
【0054】
工程2
化合物F(6.0 g, 11 mmol)にメタノール(54 mL)と2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(42 mL)を加え、60 ℃で2時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、4 mol/L塩酸でpHを6.8に調整後、析出した結晶を濾過して、3,5-ジアリルオキシ-2-エチル-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル酢酸(化合物G)(4.4 g, 75%)を得た。
1H-NMR (acetone-d6):1.12 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 2.53 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 2.69 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 2.76 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 3.58 (s, 2H), 3.58 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 3.81 (s, 3H), 4.18 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 4.47 (dt, J = 4.8, 1.7 Hz, 2H), 4.68 (dt, J = 5.0, 1.7 Hz, 2H), 5.00 (dq, J = 10.5, 1.7 Hz, 1H), 5.04 (dq, J = 17.1, 1.7 Hz, 1H), 5.28 (dq, J = 10.5, 1.7 Hz, 1H), 5.48 (dq, J = 17.1, 1.7 Hz, 1H), 5.71 (ddt, J = 17.1, 10.5, 4.8 Hz, 1H), 6.14 (ddt, J = 17.1, 10.5, 5.0 Hz, 1H), 6.72 (s, 1H), 6.96 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.30 (dd, J = 8.3, 2.1 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 2.1 Hz, 1H).
【0055】
工程3
化合物G(100 mg, 0.19 mmol)にTHF(1 mL)、1,1’-ジカルボニルジイミダゾール(0.036 mL, 0.24 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(31 mg, 0.20 mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド塩酸塩(39.1 mg, 0.20 mmol)を加え、20 ℃で8時間攪拌した。反応混合物に酢酸エチル(15 mL)と水(15 mL)を加えて、分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0〜97/3)で精製し、2-{3,5-ジアリルオキシ-2-エチル-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミド(化合物H)(111 mg, 92%)を得た。
1H-NMR (CDCl3):1.09 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 2.53-2.66 (m, 6H), 2.85 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.15 (s, 3H), 3.19 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.29 (s, 3H), 3.34 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.35-3.48 (m, 4H), 3.72 (t, J = 4.5 Hz, 4H), 3.77 (s, 2H) ,3.88 (s, 3H), 4.18 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 4.36 (dt, J = 4.8, 1.7 Hz, 2H), 4.55 (dt, J = 4.8, 1.7 Hz, 2H), 5.07-4.97 (m, 2H), 5.28 (dq, J = 10.2, 1.7 Hz, 1H), 5.44 (dq, J = 17.4, 1.7 Hz, 1H), 5.69 (ddt, J = 17.4, 10.2, 4.8 Hz, 1H), 6.07 (ddt, J = 17.4, 10.2, 4.8 Hz, 1H), 6.40 (s, 1H), 6.80 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 1.8 Hz, 1H).
【0056】
工程4
化合物H(2.6 g, 4.0 mmol)に1,4-ジオキサン(44 mL)、ギ酸アンモニウム(1.0 g, 16 mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.15 g, 0.21 mmol)を加え、2時間加熱還流した。反応混合物を25 ℃まで冷却した後、酢酸エチル(25 mL)、メタノール(25 mL)、活性炭(0.15 g)を加え、25 ℃で2時間攪拌した。反応混合物をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=100/0〜80/20)で精製した後、酢酸エチルで結晶化して2-{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミド(化合物3)(2.1 g, 94%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 0.99 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 2.37 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 2.45-2.50 (m, 4H), 2.70 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.04 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.07 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 3.22 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 3.31 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.38 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.51 (s, 2H), 3.57 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.76 (s, 3H), 4.13 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 6.34 (s, 1H), 6.99 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.24 (dd, J = 8.4, 1.9 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 9.05 (br s, 1H), 9.34 (br s, 1H).

【0057】
上記の比較例1はヒドロキシをアリルで保護したベンゼン誘導体を用いたフリーデル−クラフツ反応を鍵工程とする2-{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミド(化合物3)の製造法を示したものである。一方、実施例1はヒドロキシが無保護のベンゼン誘導体を用いたフリーデル−クラフツ反応であり、実施例2は実施例1で得られたベンゾフェノン誘導体からの化合物4の製造法を示したものである。なお、ここでは実施例1及び2の製造法を発明法、比較例1の製造法を従来法と呼ぶことする。従来法では、化合物3を製造するためにフリーデル−クラフツ反応から4工程を要し、さらに、フリーデル−クラフツ反応に要する原料2-(3,5-ジアリルオキシ-2-エチルフェニル)酢酸メチル(化合物E)は、国際公開第2005/000778号の実施例5記載のように、ヒドロキシをアリルで保護する工程が必要である。一方、発明法はヒドロキシの保護、脱保護が不要なため、3工程で化合物3を製造することができる。工業的な製造を志向した場合、工程数がより少ない製造法が望まれており、従来法に比べて発明法は工業化により適していると考えられる。また、従来法ではヒドロキシを保護するために、アリルブロミドを使用するが、これは変異原性を有することが知られている。さらに、従来法ではヒドロキシ上のアリルを脱保護するためにビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドが用いられているが、化合物4が医薬の有効成分ということを考慮すると、化合物4への残留パラジウムの量が厳しく制限される。従って、ヒドロキシの保護、脱保護に用いられる試薬を考慮すると、保護及び脱保護を含まない発明法は工業化により適した製造法と言える。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、抗腫瘍活性等を有するベンゾフェノン誘導体の合成中間体の製造法等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化11】

(式中、R1は置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R2は置換基を有していてもよい低級アルコキシカルボニルを表す)で表される化合物またはその塩、及び式(II)
【化12】

(式中、R3は置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R4は置換基を有していてもよい脂肪族複素環アルキルを表す)で表される化合物またはその塩を、酸の存在下、反応させることを特徴とする、式(III)
【化13】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ前記と同義である)で表されるベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項2】
R1が低級アルキルである請求項1記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項3】
R1がエチルである請求項1記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項4】
R2が低級アルコキシカルボニルである請求項1〜3のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項5】
R2がメトキシカルボニルである請求項1〜3のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項6】
R3が低級アルキルである請求項1〜5のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項7】
R3がメチルである請求項1〜5のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項8】
R4が、脂肪族複素環アルキルである請求項1〜7のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項9】
R4が、2位が脂肪族複素環基で置換されたエチルである請求項1〜7のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項10】
R4が2-モルホリノエチルである請求項1〜7のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項11】
酸がルイス酸である請求項1〜10のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項12】
酸が三フッ化ホウ素またはその錯体である請求項1〜10のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項13】
式(I)
【化14】

(式中、R1及びR2はそれぞれ前記と同義である)で表される化合物またはその塩、及び式(II)
【化15】

(式中、R3及びR4はそれぞれ前記と同義である)で表される化合物またはその塩を、酸の存在下、反応させ、式(III)
【化16】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ前記と同義である)で表されるベンゾフェノン誘導体またはその塩を得る工程を含むことを特徴とする、式(IV)
【化17】

(式中、R1、R3及びR4はそれぞれ前記と同義であり、
R5は置換基を有していてもよいN-低級アルキルアミノカルボニルまたは置換基を有していてもよいN,N-ジ低級アルキルアミノカルボニルを表す)で表されるベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項14】
R1が低級アルキルである請求項13記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項15】
R1がエチルである請求項13記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項16】
R2が低級アルコキシカルボニルである請求項13〜15のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項17】
R2がメトキシカルボニルである請求項13〜15のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項18】
R3が低級アルキルである請求項13〜17のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項19】
R3がメチルである請求項13〜17のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項20】
R4が、脂肪族複素環アルキルである請求項13〜19のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項21】
R4が、2位が脂肪族複素環基で置換されたエチルである請求項13〜19のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項22】
R4が2-モルホリノエチルである請求項13〜19のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項23】
R5がN,N-ビス(2-メトキシエチル)アミノカルボニルである請求項13〜22のいずれかに記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。
【請求項24】
式(IV)で表される化合物が
【化18】

で表される2-{2-エチル-3,5-ジヒドロキシ-6-[3-メトキシ-4-(2-モルホリン-4-イルエトキシ)ベンゾイル]フェニル}-N,N-ビス(2-メトキシエチル)アセトアミドである、請求項13記載のベンゾフェノン誘導体またはその塩の製造法。


【公開番号】特開2013−6804(P2013−6804A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141366(P2011−141366)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】