説明

ベンダムスチンアルキルエステル、ベンダムスチン、およびそれらの誘導体の製造のためのプロセス

【課題】ベンダムスチンアルキルエステル、ベンダムスチン、およびそれらの誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る方法を用いて、これらの化合物の製造は、再現性よく高収率で可能である。この目的のために、ヒドロキシル基含有エステルが、出発物質として使用され、このヒドロキシル基含有エステルのヒドロキシル基はハロゲン基によって簡単に置換される。この置換は、(i)塩化オキサリルおよび(ii)ジアルキルホルムアミド、ジアルキルアセトアミドまたはジメチルスルホキシドの存在下で可能である。その後の反応で、得られたエステルは、加水分解され、酸を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)によって表されるエステル化合物
【化1】

またはその塩の製造方法に関する。式(I)中、Xはハロゲンラジカルを表し、RおよびRは(1)RはHであり、Rは−CH(CHCOORであるか、(2)Rは−CH(CHCOORであり、RはHであるか、または(3)RおよびRは一緒に、式(II)によって表されるラジカル
【化2】

を表すように選択され、式(II)中、R、RおよびRの各々は、独立にアルキルラジカルを表し、mおよびnの各々は、独立に0〜12の範囲の数を表す。また本発明は、対応して加水分解されたエステル、すなわち、式(VII)によって表される化合物
【化3】

またはその塩の製造方法に関する。式(VII)中、Xはハロゲンラジカルを表し、R11およびR12は、(1)R11はHであり、R12は−CH(CHCOOHであるか、(2)R11はCH(CHCOOHであり、R12はHであるか、または(3)R11およびR12は一緒に、式(VIII)によって表されるラジカル
【化4】

を表すように選択され、式(VIII)中、Rはアルキルラジカルを表し、mおよびnの各々は、独立に0〜12の範囲の数を表す。
【背景技術】
【0002】
上に示された式(VII)に係る構造を有する化合物は、種々の癌についての化学療法のために使用される。それらの効果には、内在性のDNAまたはRNAのアルキル化が含まれ、このアルキル化によって、特に、DNA複製の防止および、その結果として、対応する細胞のアポトーシスが導かれる。上記の化合物の用途分野には、主に、種々の白血病およびリンパ腫、多発性骨髄腫、ならびに気管支癌の処置が含まれる。構造上は、これらの化合物は、ナイトロジェンマスタードから誘導される。
【0003】
ベンダムスチン 4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸はこの群を代表するが、当該化合物は、最初にOzegowskiおよびKrebsによって1963年に記載された(非特許文献1)。
【0004】
1つの有利なベンダムスチンの製造方法は、特許文献1に公知である。この文献の中に開示された合成は、4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エステルの塩素化によって製造される、対応するベンダムスチンエステル、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エステルを介して実施される。この出発化合物の2つの末端ヒドロキシル基を塩素によって置換するために、塩化チオニルが使用される。ベンダムスチンは、現実に、特許文献1に記載される方法を用いて、かなりの量を得ることができる。しかしながら、この方法の短所は、ベンダムスチンは非常に不安定な収率で得られ、またこの収率は、たとえ上記出発物質を増やしても、著しく低下するということである。
【0005】
この問題を解決するために、塩酸水溶液の中で直接反応を停止するために、塩化チオニルおよび4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エステルの反応混合物を混合し、これにより過剰の塩化チオニルを破壊することが特許文献2に提案されている。この方策によって、ベンダムスチンエステルおよび同じく最終的にはベンダムスチン収率の量的な増加が成し遂げられうる。
【0006】
しかしながら、さらなる試験において、特許文献2の方法を用いたとしても、80%を超える収率までのベンダムスチンエステルまたはベンダムスチンの収率の上昇は成し遂げられ得ないということが示された。加えて、この方法の場合、困難なしにはベンダムスチンエステルまたはベンダムスチンから分離することができず、従って生成物の品質に悪影響を及ぼす可能性がある副生成物が生成すると判定された。またベンダムスチンエステルまたはベンダムスチンの得られた収率は、再現性よく得ることができず、逆に、同じ試験条件を維持するとしても、かなりばらつきうる。これは、特に、特許文献2の方法を工業規模で実施するための試験において示された。その際、この反応の制御は、大過剰の塩化チオニルの必要性のため、困難であることが判明した。別の問題は、塩化チオニルが使用されるとき、大量の酸性のプロセス排出ガスが発生し、この排出ガスの精製の必要性が高まるという事実に起因して、加工経済性の視点から生じる。特許文献2の方法が式(I)または(VII)によって表すことができる他の化合物の製造に転用されるときに、同様の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第34727号明細書
【特許文献2】独国特許第159877号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】OzegowskiおよびKrebs、J.Pract.Chem.、1963年、第20号、178−86頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記先行技術に鑑み、本発明の基礎を形成する問題は、上記の構造を有する化合物を再現性よく高収率で製造することを可能にする方法を提供することにある。さらには、この方法は、工業規模で容易に実施できるものでなければならない。加えて、この方法については、大量の酸性のプロセス排出ガスを発生させるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、独立請求項の方法によって解決された。
【0011】
かくして、本発明は、式(I)によって表される化合物またはその塩の製造方法であって、
【化5】

式(I)中、Xはハロゲンラジカルを表し、RおよびRは、(1)RはHであり、Rは−CH(CHCOORであるか、(2)Rは−CH(CHCOORであり、RはHであるか、または(3)RおよびRは一緒に、式(II)によって表されるラジカル
【化6】

を表すように選択され、式(II)中、R、RおよびRの各々は、独立にアルキルラジカルを表し、mおよびnの各々は、独立に0〜12の範囲の数を表し、当該方法では、式(III)によって表される化合物
【化7】

は、式(IV)によって表される化合物
【化8】

(式(IV)中、RはHまたはアルキルラジカルを表し、RおよびRの各々は、独立にアルキルラジカルを表す)、および式(V)によって表される化合物
【化9】

(式(V)中、RおよびR10の各々は、独立にアルキルラジカルを表す)からなる群から選択される化合物(i)を含有する混合物との反応に供され、この混合物は式(VI)によって表される化合物(ii)
【化10】

をも含有する方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、式(VII)によって表される化合物
【化11】

またはその塩の製造方法であって、式(VII)中、Xはハロゲンラジカルを表し、R11およびR12は、(1)R11はHであり、R12は−CH(CHCOOHであるか、(2)R11は−CH(CHCOOHであり、R12はHであるか、または(3)R11およびR12は一緒に、式(VIII)によって表されるラジカル
【化12】

を表すように選択され、式(VIII)中、Rはアルキルラジカルを表し、mおよびnの各々は、独立に0〜12の範囲の数を表し、当該方法が実施され、得られた式(I)によって表されるエステル化合物はエステル加水分解を受ける方法、を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
驚くべきことに、式(IV)および(V)に係る化合物のうちの少なくとも1つならびに式(VI)に係る化合物を含む混合物の使用を通して、式(I)に係る化合物の中の末端ヒドロキシル基を穏和な条件下でかつ適度な反応時間で、ハロゲン化物基で選択的に置換することができ、所望の生成物が再現性よく高収率で得られるということが判明した。1つの理論に結び付けられることは望まないが、この反応が、式(VI)または(V)に係る化合物、ならびに式(VI)に係る化合物から形成される中間体として生成した、活性化されたイミニウムイオンを経由して進行することは疑いがない。
【0014】
本発明に係る方法は、一方で、式(I)によって表される化合物
【化13】

またはその塩の製造を含む。
【0015】
式(I)において、ラジカルXは、ハロゲンラジカルを表す。このハロゲンラジカルは、例えば、塩素ラジカルまたは臭素ラジカルを含むことができる。本発明によれば、式(I)中の両方のラジカルXは同じ置換基を表す。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、これらのハロゲンラジカルは塩素ラジカルである。
【0016】
ラジカルRおよびRは異なる意味を表すことができる。
【0017】
第1の選択肢(1)によれば、ラジカルRは水素を含む。この場合、ラジカルRは、ラジカル−CH(CHCOORを表す。このラジカルでは、Rはアルキルラジカルを表す。このアルキルラジカルは、分岐アルキルラジカルまたは非分岐アルキルラジカルを含むことができる。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、このアルキルラジカルは非分岐アルキルラジカルである。このアルキルラジカルの鎖長はさらには限定されない。例えば、このアルキルラジカルは、1〜20個の炭素原子、従って例えば1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜4個の炭素原子または1個もしくは2個の炭素原子を有することができる。このアルキルラジカルは、特に、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカルまたはブチルラジカルであることができる。ラジカルRでは、指数mは、0〜12の範囲、好ましくは0〜10の範囲、さらにより好ましくは0〜8の範囲、非常にとりわけ好ましくは0〜6の範囲、特に0〜3の範囲の整数をとることができる。例えば、指数mは数2をとることができる。
【0018】
第2の選択肢(2)によれば、ラジカルRは水素を含む。この場合、ラジカルRは、ラジカル−CH(CHCOORを表す。このラジカルでは、Rは、アルキルラジカルを表す。このアルキルラジカルは、分岐アルキルラジカルまたは非分岐アルキルラジカルを含むことができる。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、このアルキルラジカルは、非分岐アルキルラジカルである。このアルキルラジカルの鎖長はさらには限定されない。例えば、このアルキルラジカルは、1〜20個の炭素原子、従って例えば1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、または1個もしくは2個の炭素原子を有することができる。このアルキルラジカルは、特に、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカルまたはブチルラジカルであることができる。ラジカルRでは、指数mは、0〜12の範囲の整数、好ましくは0〜10の範囲、さらにより好ましくは0〜8の範囲、非常にとりわけ好ましくは0〜6の範囲、特に0〜3の範囲の整数をとることができる。例えば、指数mは数2をとることができる。
【0019】
第3の選択肢(3)によれば、ラジカルRおよびラジカルRは、式(II)によって表されるラジカル
【化14】

を形成する。
【0020】
従って、この選択肢は、ベンゾイミダゾール構造を有する複素環式環系を表す。これは、以下の式(IX)
【化15】

によって再生することができる。
【0021】
ここでラジカルRは、アルキルラジカルを表す。アルキルラジカルRは、分岐アルキルラジカルを含むことができるが、好ましくは非分岐アルキルラジカルを含むことができる。このアルキルラジカルの鎖長はさらには限定されない。例えば、このアルキルラジカルは、1〜20個の炭素原子、従って例えば1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、または1個もしくは2個の炭素原子を有することができる。このアルキルラジカルは、特に、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、またはブチルラジカルであることができる。ラジカルRは、同様に、アルキルラジカルを表す。アルキルラジカルRは、同様に、分岐アルキルラジカルを含むことができるが、好ましくは非分岐アルキルラジカルを含むことができる。このアルキルラジカルの鎖長はさらには限定されない。例えば、このアルキルラジカルは、1〜20個の炭素原子、従って例えば1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、または1個もしくは2個の炭素原子を有することができる。このアルキルラジカルは、特に、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカルまたはブチルラジカルであることができる。指数nは、0〜10の範囲の整数を表すことができる。好ましくは、nは、0〜8の範囲の整数、より好ましくは0〜6の範囲の整数、さらにより好ましくは0〜4の範囲の整数、とりわけ好ましくは0〜3の範囲の整数を表す。例えば、指数nは数2をとることができる。
【0022】
1つの好ましい実施形態によれば、式(I)に係る化合物は、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸アルキルエステルまたは4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸アルキルエステルを含む。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、式(I)に係る化合物は、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エチルエステルまたは4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸エチルエステルを含む。
【0023】
本発明によれば、上記のエステルだけでなく、その塩も製造することができる。この塩では、好ましくは、式(I)に係る化合物の窒素原子のうちの少なくとも1つ、特に環構造の一部ではない窒素原子は、プロトン化されている。このときプロトン化されたエステルは、対応するアニオンと組み合わせて存在する。このアニオンは、好ましくはハロゲン化物イオンを含む。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、このエステルは塩酸塩として存在する。非常にとりわけ好ましい実施形態によれば、この塩酸塩は、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸アルキルエステルまたは4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸アルキルエステル、例えば4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エチルエステルまたは4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸エチルエステル、の塩酸塩を含む。
【0024】
式(I)に係る化合物の製造のための脱離生成物として、式(III)によって表される化合物
【化16】

が使用される。ここで、ラジカルR、R、R、RおよびR、ならびに指数mおよびnは、上でそれらに割り当てられた意味を表す。1つの好ましい実施形態によれば、この脱離生成物は、4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸アルキルエステルまたは4−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸アルキルエステル、特に4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エチルエステルまたは4−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸エチルエステルを含む。
【0025】
この脱離生成物は、少なくとも1つの化合物(i)および1つの化合物(ii)を含有する混合物との反応に供される。
【0026】
化合物(i)は、式(IV)によって表される化合物
【化17】

および式(V)によって表される化合物
【化18】

からなる群から選択される。
【0027】
式(IV)に係る化合物では、ラジカルRは、水素またはアルキルラジカルを表す。アルキルラジカルとしては、分岐アルキルラジカル、しかし好ましくは非分岐アルキルラジカルを使用することができる。これらのアルキルラジカルは、好ましくは、1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子、とりわけ好ましくは1〜4個の炭素原子、非常にとりわけ好ましくは1〜2個の炭素原子、特に1個の炭素原子を含むことができる。
【0028】
ラジカルRおよびRは、独立にアルキルラジカルを表す。ここで、分岐アルキルラジカル、しかし好ましくは非分岐アルキルラジカルも、このアルキルラジカルとして使用することができる。これらのアルキルラジカルは、好ましくは、1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子、とりわけ好ましくは1〜4個の炭素原子、非常にとりわけ好ましくは1〜2個の炭素原子を含むことができる。
【0029】
とりわけ好ましい式(V)に係る化合物は、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)である。
【0030】
式(V)中のラジカルRおよびR10は、独立にアルキルラジカルを表す。ここでも、分岐アルキルラジカル、しかし好ましくは非分岐アルキルラジカルを、このアルキルラジカルとして使用することができる。これらのアルキルラジカルは、好ましくは、1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子、とりわけ好ましくは1〜4個の炭素原子、非常にとりわけ好ましくは1〜2個の炭素原子、特に1個の炭素原子を含むことができる。1つの好ましい式(V)に係る化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0031】
化合物(ii)は、式(VI)によって表される化合物を含む。
【化19】

式中、Xは、ハロゲンラジカル、好ましくは塩素を表す。従って、塩化オキサリルが、式(VI)に係る化合物として好ましい。
【0032】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸アルキルエステルまたはその塩が、4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸アルキルエステルと塩化オキサリルおよびジメチルホルムアミドとの反応によって生成される。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エチルエステルまたはその塩酸塩が、4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エチルエステルを塩化オキサリルおよびジメチルホルムアミドとの反応に供することにより、生成される。
【0033】
式(VI)によって表される化合物(ii)は、式(III)に係る化合物に対して少なくとも等モル量で、しかし好ましくはモル過剰で使用される。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、式(III)に係る化合物に対する式(VI)に係る化合物のモル比は、少なくとも1.3、さらにより好ましくは少なくとも1.5である。
【0034】
本発明の1つの好ましい実施形態では、最初に化合物(i)(すなわち、式(IV)および/または(V)に係る化合物)および(ii)(すなわち、式(VI)に係る化合物)は、互いに合わされ、次いで式(III)に係る化合物に接触させられる。この目的のために、化合物(i)および(ii)ならびに式(III)に係る化合物は、ともに個々に存在し、また好ましくは適切な溶媒の中で合わせられる。溶媒として、例えば、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、またはテトラヒドロフランまたはジオキサンなどの他の非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0035】
好ましくは、本発明に係る方法については、適切な溶媒に溶解された式(VI)に係る化合物が反応容器の中に与えられ、そして任意に冷却され、この際、0〜10℃の温度範囲、従って例えば1〜5℃の温度範囲または1〜3℃の範囲が、とりわけ有利であることが判明した。
【0036】
式(IV)または式(V)に係る化合物も、好ましくは適切な溶媒に溶解され、次いで任意に冷却される。この際、0〜10℃の温度範囲、従って例えば1〜5℃の温度範囲または1〜3℃の範囲が、同様にとりわけ有利であることが判明した。
【0037】
本発明の1つの可能な実施形態によれば、次の工程で、式(VI)に係る化合物および式(IV)または(V)に係る化合物が合わされる。これは、例えば、式(VI)に係る化合物を含有する溶液が、例えば式(IV)または(V)に係る化合物を含有する溶液に滴下されるという方法で実施することができる。しかしながら、明らかに、式(IV)または(V)に係る化合物を含有する溶液を、例えば式(VI)に係る化合物を含有する溶液に滴下することもできる。従ってこの工程で、好ましくは、化合物(i)および(ii)を含む溶液が得られる。
【0038】
この時点で、この溶液は、式(III)に係る化合物を含有する溶液と混合されることが好ましい。この目的のために、例えば、式(III)に係る化合物を含有する溶液を、化合物(i)および(ii)を含有する溶液に滴下することができる。
【0039】
この後、得られた反応混合物の中に含有される化合物の反応は、当業者によく知られた方法によって制御することができる。
【0040】
例えば、反応混合物を、還流しながら撹拌することができる。
【0041】
還流しながらの反応混合物の撹拌は、例えば、少なくとも1時間の間、好ましくは少なくとも2時間の間、さらにより好ましくは少なくとも4時間の間、とりわけ好ましくは少なくとも6時間の間、実施することができる。1つの好ましい実施形態によれば、還流しながらの反応混合物の撹拌は、1〜24時間の間、より好ましくは2〜20時間の間、さらにより好ましくは4〜16時間の間、とりわけ好ましくは6〜12時間の間、実施される。
【0042】
この反応は、任意に、不活性ガス雰囲気の中で、従って例えば窒素雰囲気中または希ガス雰囲気中で実施することができる。
【0043】
反応後、反応生成物は、反応混合物のpH値に応じて、遊離塩基としてまたは塩として存在する。例えば、式(I)に係る反応生成物はベンダムスチンエチルエステルを含み、これは、7.5以上のpH値では遊離塩基として、より低いpH値では塩として、例えば塩酸塩として存在する。これに関して、pH値を適切な値に設定することにより、式(I)に係る反応生成物を遊離塩基としてまたは塩として得ることが可能である。
【0044】
反応後、式(I)によって表される反応生成物は、第1の実施形態に係る反応混合物から単離することができる。あるいは、しかしながら、第2の実施形態によれば、式(VII)に係る生成物を生成するために、この反応混合物を、エステル加水分解を実施するために直接使用することもできる。
【0045】
反応混合物からの式(I)に係る反応生成物の単離が所望されるならば、これは、従来の方法で行うことができる。例えば、有機相および水相を生成するために、反応混合物を水と混合してもよい。有機相は式(I)に係る反応生成物を含有するが、他方で水相は、水溶性の成分、例えば塩を有機相から除去するために使用される。
【0046】
次の工程で、式(I)に係る反応生成物を遊離塩基または対応する塩へと変換するために、所望または必要に応じて、pH値を設定することができる。反応生成物が反応混合物の中に例えば塩として存在する場合、塩を遊離塩基に変換するために、塩基を加えることにより、反応混合物のpH値を高めることができる。これは、例えば、炭酸カリウムなどの塩基性溶液を、水と混合した反応混合物に加えることによって行うことができる。
【0047】
次いで、反応混合物および水から生成された混合物は、水溶性成分を有機相から水相へと移すようにするために、十分に混合されることが好ましい。次いで、この有機相は、好ましくはこの混合物から除去され、中和され、他方で、水相は混合され、そして、有機溶媒で、従って例えば反応前に式(III)に係る化合物または化合物(i)および(ii)を溶解するために使用した溶媒または複数の溶媒のうちの1つで抽出される。次いで、式(I)に係る反応生成物を得るために、この有機相または合わせた有機相を、一定の重量に到達するまで例えば真空中で乾燥することができる。
【0048】
式(I)に係る反応生成物は、典型的には式(VII)によって表される化合物
【化20】

またはその塩の製造のための中間体として使用される。
【0049】
式(VII)において、ここでXは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子または臭素原子、とりわけ好ましくは塩素原子を表す。
【0050】
ラジカルR11およびR12は、異なる意味を表すことができる。
【0051】
第1の選択肢(1)によれば、ラジカルR11は水素を含む。この場合、ラジカルR12は、ラジカル−CH(CHCOOHを表す。ラジカルR12では、指数mは、0〜12の範囲の整数、好ましくは0〜10の範囲、さらにより好ましくは0〜8の範囲、非常にとりわけ好ましくは0〜6の範囲、特に0〜3の範囲をとることができる。例えば、指数mは数2をとることができる。
【0052】
第2の選択肢(2)によれば、ラジカルR12は水素を含む。この場合、ラジカルR11は、ラジカル−CH(CHCOOHを表す。ラジカルR12では、指数mは、0〜12の範囲、好ましくは0〜10の範囲、さらにより好ましくは0〜8の範囲、非常にとりわけ好ましくは0〜6の範囲、特に0〜3の範囲の整数をとることができる。例えば、指数mは数2をとることができる。
【0053】
第3の選択肢(3)によれば、ラジカルR11およびラジカルR12は、式(VIII)によって表されるラジカル
【化21】

を形成する。
【0054】
従って、この選択肢は、ベンゾイミダゾール構造を有する複素環式環系を表す。これは、以下の式(X)
【化22】

によって再掲することができる。
【0055】
ここで、ラジカルRは、アルキルラジカルを表す。アルキルラジカルRは、分岐アルキルラジカルを含むことができるが、しかし好ましくは非分岐アルキルラジカルを含むことができる。このアルキルラジカルの鎖長さらには限定されない。例えば、このアルキルラジカルは、1〜20個の炭素原子、従って例えば1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、または1個もしくは2個の炭素原子を有することができる。このアルキルラジカルは、特に、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、またはブチルラジカルであることができる。指数nは、0〜10の範囲の整数を表すことができる。好ましくは、nは、0〜8の範囲の整数、より好ましくは0〜6の範囲の整数、さらにより好ましくは0〜4の範囲の整数、とりわけ好ましくは0〜3の範囲の整数を表す。例えば、指数nは数2をとることができる。
【0056】
1つの好ましい実施形態によれば、式(I)に係る化合物は、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸または4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸を含む。
【0057】
本発明によれば、上記の酸だけでなく、その塩も生成することができる。この塩では、好ましくは、式(I)に係る化合物の窒素原子のうちの少なくとも1つ、特に環構造の一部ではない窒素原子は、プロトン化されている。次いでプロトン化されたエステルは、対応するアニオンと組み合わせて存在する。このアニオンは、好ましくはハロゲン化物イオンを含む。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、このエステルは塩酸塩として存在する。1つの非常にとりわけ好ましい実施形態によれば、このエステルは、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸または4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸の塩酸塩を含む。
【0058】
式(VII)に係る化合物の製造のために、最初に、式(I)に係る化合物の製造のための上記の方法が実施され、得られた反応生成物はエステル加水分解を受ける。この目的のために、得られた反応生成物は、上記のとおり、最初に単離され次いで加水分解されてもよいし、または直接(すなわち、前もっての単離なしに)酸へと変換されてもよい。
【0059】
1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、本発明の範囲において、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸またはその塩は、第1の工程で、4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸アルキルエステルまたはその塩が塩化オキサリルおよびジメチルホルムアミドとの反応に供されて、4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸アルキルエステルまたはその塩が形成され、第2の工程で、得られた4−[5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸アルキルエステルまたはその塩が加水分解されるというようにして、生成される。
【0060】
エステル加水分解のために、式(I)に係る反応生成物は、好ましくは酸と混合される。この際、好ましくは無機酸、特に塩酸が酸として使用される。この酸は、典型的には濃酸、例えば濃塩酸(32%)として使用される。酸の添加に由来するpH値の減少によって、より強力な塩基性pH値に対して不安定である式(I)に係る反応生成物は、安定化される。
【0061】
式(I)に係る反応生成物は、酸が、単離された式(I)に係る反応生成物、適切な溶媒中の単離された式(I)に係る反応生成物の溶液、またはこれまでに記載されかつ単離された式(I)に係る反応生成物を含有する反応混合物と合わされるようにして、酸と混合することができる。
【0062】
次いで得られた混合物は、好ましくは10〜80℃の温度範囲で、より好ましくは15〜70℃の温度範囲で、さらにより好ましくは20〜60℃の温度範囲で撹拌される。
【0063】
反応時間は、好ましくは30分間〜6時間、より好ましくは1時間〜4時間、さらにより好ましくは1時間〜3時間に等しい。
【0064】
反応後、混合物の中に含有される可能性が高い有機成分、例えば溶媒または溶媒ラジカルは、取り除かれうる。これは、好ましくは、これらの有機成分の蒸留により実施することができる。
【0065】
別の任意の工程では、酸に加えてこの時点では式(VII)に係る加水分解されたエステルを含有する混合物が、活性炭と混合され、撹拌される。この活性炭は、混合物の中に含有される可能性が高い混入物質を吸収によって結合するために使用することができる。次いで活性炭は、例えば濾過によって混合物の残部から分離することができる。
【0066】
次いで、混合物の中に含有される酸は、従来の方法で式(VII)に係る加水分解されたエステルから除去される。この目的のために、酸は、式(VII)に係る加水分解されたエステルから蒸留によって分離されることが好ましい。式(VII)に係る化合物は残渣として残り、この残渣は、例えば、固体としてまたは油状液体として存在しうる。
【0067】
必要に応じて、この残渣は、さらに精製することができる。残渣が例えば油状液体として存在する場合、最初に、式(VII)に係る化合物の沈殿物は、適切な溶液を用いて生成することができる。沈殿物溶液として、特に、水およびさらにケトンまたはアルコールを含有する混合物を使用することができる。この際、アセトンが適切なケトンであり、エタノールが適切なアルコールであることが判明した。沈殿後、得られた残渣は、沈殿物溶液から分離することができる。
【0068】
必要に応じて、残留する残渣は、その後、適切な洗浄溶液で洗浄し、次いで乾燥することができる。洗浄溶液として、好ましくは水および酢酸エチルを使用することができる。
【0069】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、しかしながら、以下の実施例は、限定するものと理解されるべきではない。
【実施例】
【0070】
実施例1a:ベンダムスチンエチルエステルの製造
26.7gの塩化オキサリル(1.6当量)を、279mlのジクロロメタンに溶解し、1℃に冷却した。1℃で、17mlのジメチルホルムアミド(DMF)および50mlの乾燥ジクロロメタンの混合物をゆっくり加えた。115mlのジクロロメタン中の23gの4−(5−(ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ)−1−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ブタン酸エチルの溶液を、得られた反応混合物に加えた。この反応混合物を、還流しながら8時間撹拌し(45℃のジャケット温度)、冷却し、次いで50mlの超純水と混合した。25% KCO溶液の添加によって、pH値をpH 8〜9.5に調整した。強力で十分な混合後、有機相を分離し、水相を、さらなる83mlのジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を、一定の重量に到達するまで、真空中で乾燥した。
【0071】
この実験を6回行った。ベンダムスチンエチルエステルの以下の収率を得た。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例1b:ベンダムスチンの製造
実施例1aで得たベンダムスチンエチルエステル原料生成物を、210mlの32% HClに溶解し、40℃のジャケット温度で2時間撹拌した。この溶液を室温まで冷却し、8gの活性炭と混合し、30分間撹拌し、滅菌フィルターに通して濾過した。塩酸を蒸留によって分離し、残渣を400mlの水/アセトンと混合した。沈殿物を濾別し、水および酢酸エチルで洗浄し、乾燥した。
【0074】
この実験を2回行った。ベンダムスチンの以下の収率を得た。各々は、4−(5−(ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ)−1−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ブタン酸エチルから出発する方法に関する。
【0075】
【表2】

【0076】
比較例2a:ベンダムスチンエチルエステルの製造
ベンダムスチンアルキルエステルの別の製造方法は、同様に、脱離生成物としてのエチル−4−(5−(ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミノ)−1−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)アルキルエステルから出発する。この際、この脱離生成物の中のヒドロキシル基の脱離傾向(outgoing trend)は、活性化基(例えば、p−トシル基、メシル基またはトリフラート基)の付加によって増大される。次いで、ハロゲン化物によるこの活性化基の交換は、穏和な条件下で、例えばジメチルホルムアミドまたはエタノール中での塩化リチウムによる処理によって、可能である。
【0077】
対応する実験では、42.2gの4−(5−(ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミノ)−1−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ブタン酸エチルを、500mlの乾燥ジクロロメタンに溶解し、41.6mlのトリエチルアミン(TEA)と混合した。この溶液を、150mlの乾燥ジクロロメタン中で52.2gのメタンスルホン酸無水物とゆっくり混合し、25℃で3時間撹拌した。この反応溶液から、30℃、真空中で溶媒を除去した。得られた残渣を、400mlの乾燥エタノールに溶解し、30.5gの塩化リチウムと混合し、70℃で18時間撹拌した。次いで、エタノールを40℃で蒸留によって分離し、残渣を400mlのジクロロメタン(DCM)中で取り込み、16.6mlのトリエチルアミン(TEA)と混合した。200mlの水を添加した後、pH値を、濃KCO溶液を用いて7.5〜9の間に調整した。得られた相を分離し、水相をさらなる250mlのDCMで抽出し、精製した有機相を100mlの半濃厚塩化ナトリウム溶液で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空中で溶媒を除去した。
【0078】
この実験を4回行った。ベンダムスチンエチルエステルの以下の収率を得た。
【0079】
【表3】

【0080】
比較例2b:ベンダムスチンの製造
比較例2aで得たベンダムスチンエチルエステル原料生成物を、210mlの32% HClに溶解し、40℃のジャケット温度で2時間撹拌した。この溶液を室温まで冷却し、8gの活性炭と混合し、30分間撹拌し、滅菌フィルターに通して濾過した。塩酸を蒸留によって分離し、残渣を400mlの水/アセトンと混合した。沈殿物を濾別し、水および酢酸エチルで洗浄し、乾燥した。
【0081】
この実験を2回行った。ベンダムスチンの以下の収率を得た。各々は、4−(5−(ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ)−1−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ブタン酸エチルから出発する方法に関する。
【0082】
【表4】

【0083】
比較例3a:ベンダムスチンエチルエステルの製造
ベンダムスチンエチルエステルを、独国特許第159877号明細書(特許文献2)の特定の実施例に従って生成した。この際、18.3molの塩化チオニル(2.175kg)を使用して、(4.305kgの4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エチルエステルの中の)22.3molのヒドロキシル基を置換した。しかしながら、これは、不完全な変換しか生じず、およそ47面積%の所望の生成物が反応混合物の中に得られたにすぎなかった。
【0084】
この理由のため、さらなる実験では塩化チオニルの量を増やした。4−[5−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル]ブタン酸エチルエステルに対する比における塩化チオニルの量の3倍化(独国特許第159877号明細書(特許文献2)に係る0.82当量から2.46当量へ)により、87面積%の所望の生成物が導かれ、これは、研究した変法のうちで最適の結果を代表した。
【0085】
ベンダムスチンエチルエステルの以下の収率を得た。
【0086】
【表5】

【0087】
上記の手順に従って得た物質は、2回実施した再結晶にもかかわらず、ICHガイドラインの仕様要求条件を満足しなかった。
【0088】
これらの実験は、本発明に係る方法が、驚くべきことに、先行技術から公知の方法と比べて著しく増大した再現性のある収率を与えるということを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)によって表される化合物
【化1】

またはその塩の製造方法であって、式(I)中、Xはハロゲンラジカルを表し、RおよびRは、(1)RはHであり、RはCH(CHCOORであるか、(2)RはCH(CHCOORであり、RはHであるか、または(3)RおよびRは一緒に、式(II)によって表されるラジカルを表すように選択され、
【化2】

式(II)中、R、RおよびRの各々は、独立にアルキルラジカルを表し、mおよびnの各々は、独立に0〜12の範囲の数を表し、
式(III)によって表される化合物
【化3】

は、式(IV)によって表される化合物
【化4】

(式(IV)中、RはHまたはアルキルラジカルを表し、RおよびRの各々は、独立にアルキルラジカルを表す)、および式(V)によって表される化合物
【化5】

(式(V)中、RおよびR10の各々は、独立にアルキルラジカルを表す)からなる群から選択される化合物(i)を含有する混合物との反応に供され、この混合物は式(VI)によって表される化合物(ii)
【化6】

をも含有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
Xは塩化物を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
およびRは一緒に、式(II)によって表されるラジカルを表す、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
nは1〜3の範囲の整数である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
は、メチルラジカル、エチルラジカル、およびプロピルラジカルからなる群から選択されるアルキルラジカルを表す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
はメチルラジカルを表す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
は、メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、およびブチルラジカルからなる群から選択されるアルキルラジカルを表す、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
はHであり、RはCH(CHCOOHである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項9】
mは1〜3の範囲の整数である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
mは2に等しい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式(IV)によって表される化合物は、ジアルキルホルムアミドを含む、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ジアルキルホルムアミドは、ジメチルホルムアミドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(IV)によって表される化合物は、ジメチルアセトアミドを含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
式(V)によって表される化合物は、ジメチルスルホキシドを含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
式(VI)によって表される化合物は、塩化オキサリルを含む、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
式(III)に係る化合物に対する式(VI)に係る化合物のモル比は少なくとも1.3に等しい、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応は、塩素化溶媒または非プロトン性溶媒の中で実施される、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
式(VII)によって表される化合物またはその塩の製造方法であって、
【化7】

式(VII)中、Xはハロゲンラジカルを表し、R11およびR12は、(1)R11はHであり、R12はCH(CHCOOHであるか、(2)R11はCH(CHCOOHであり、R12はHであるか、または(3)R11およびR12は一緒に、式(VIII)によって表されるラジカルを表すように選択され、
【化8】

式(VIII)中、Rはアルキルラジカルを表し、mおよびnの各々は、独立に0〜12の範囲の数を表し、
前記方法は請求項1に従って実施され、得られた式(I)によって表されるエステル化合物はエステル加水分解を受けることを特徴とする、方法。

【公開番号】特開2012−131790(P2012−131790A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−273992(P2011−273992)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(511221998)ヘレウス プレシャス メタルズ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (8)