説明

ベント孔状態検出装置及び押出機

【課題】ベントアップを早期かつ正確に検出することを可能とするベント孔状態検出装置及び押出機を提供。
【解決手段】押出機1に用いられ、シリンダー2の途中に設けられたベント孔5から混練中に発生する副生成物をシリンダー2の外部に排出するときのベント孔5内の副生成物の状態を検出するベント孔状態検出装置10であって、ベント孔5の排出口5b内に向けて赤外線を出射してベント孔5の内部又はスクリュー3までの距離を測定する第1赤外線センサ12と、ベント孔5の排出口5bに沿って赤外線を出射して排出口5bを覆う位置までの距離を測定する第2赤外線センサ13と、第1赤外線センサ12及び第2赤外線センサ13が測定した測定結果に基づいて、ベント孔5の排出口5bにおける副生成物の盛り上がり状態及びベント孔の閉塞状態を検出する状態検出手段14と、検出したベント孔5の状態を出力する状態出力手段15と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダー内のスクリューを回転させることにより、可塑性樹脂を混練させた生成物を前記シリンダーの外部に押し出す押出機に用いられ、前記シリンダーの途中に設けられたベント孔から前記混練中に発生する副生成物を前記シリンダーの外部に排出するときの前記ベント孔内の前記副生成物の状態を検出するベント孔状態検出装置及び押出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出機には、材料の溶融混練中に熱やせん断にて発生する余分な物質(以下、副生成物)を、押出機の外部へ放出又は強制排出するベント孔がバレルの途中に設けられている。そして、ベント孔は、その周辺のスクリュー溝や排気室を減圧し、さらに、ベント孔の直下及びその先端側数ピッチのスクリューの輸送能力を、ベント孔の根元側のスクリューの輸送能力よりも大きくする構造として、ベント孔直下のスクリュー溝を樹脂で充満しない状態で押出を行いつつ、合成樹脂中の水分や揮発分を除去している。
【0003】
また、ベント孔は押出機の製造条件や混練中の材料の溶融状態により、ベント孔を閉塞又はベント孔から外部に盛り上がる(以下、ベントアップ)現象が発生することが知られている。そして、このような問題が発生すると、副生成物を押出機内に留まらせ、生成物に含まれる虞があるため、生成物の品質を低下させる原因となっていた。そのため、ベントアップの発生を防止するには、人がベント内を定期的に目視で監視し、ベントアップ発生の有無を確認する作業を行わなければならなかった。そのため、ベントアップを早期に発見するための監視作業の効率化又は無人化が望まれていた。
【0004】
ベントアップの問題を解消するための出願としては、特許文献1,2等のものが知られている。まず、図3において、特許文献1に示すベント押出機100は、スクリュー101と、バレル102と、ベント孔103と、排気室104と、を有している。そして、ベント孔103に連通する排気室104内の上部の天板に、赤外線検知式の温度センサー107を設け、該温度センサー107によってベント孔103直下のスクリュー溝底面またはその部分に存在する樹脂の温度を測定して温度変化を検知し、ベントアップの初期を素早く知ることを可能としていた。
【0005】
また、特許文献2は、シリンダー途中に配置したベント孔の上にベントバッフル部を設けてなる連続式混練機において、透過型光センサの透光部と受光部とをベントバッフル部の上蓋部に隣接して設置している。このような構成とすることで、透光部からベント孔内にせりあげってくる樹脂の上面に指向して光線を発信し、受光部に戻ってくる光量により樹脂の上面までの距離を測定し、該距離が予め定められた距離を超えた場合に警報している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−29730号公報
【特許文献2】特開平10−138237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、押出機の種類によっては、該押出機内を通過する溶融樹脂の挙動が不均一であるため、その挙動によってはベント孔を溶融樹脂の薄い膜が覆うことがあった。しかしながら、これはベントアップではなく、ベント孔に溶融樹脂の薄い膜が張っているだけであり、スクリューの推進力により押出方向へ潜り進むことが多々あった。特許文献1の押出機のように温度センサを用いる場合、ベント孔直下のスクリュー溝底面またはその部分に存在する樹脂の温度を測定していたため、ベントアップを早期に検知しようとすると、そのような状態をベントアップとして検知してしまい、誤認と見なされるという問題があった。
【0008】
また、ベント孔の形状が複雑な場合、温度を検知する温度センサーがベント孔下のスクリュー溝底面またはベント孔内に存在する樹脂まで届かないため、樹脂の温度を正確に検知することができないという問題があった。
【0009】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、ベントアップを早期かつ正確に検出することができるベント孔状態検出装置及び押出機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のベント孔状態検出装置は、シリンダー内のスクリューを回転させることにより、可塑性樹脂を混練させた生成物を前記シリンダーの外部に押し出す押出機に用いられ、前記シリンダーの途中に設けられたベント孔から前記混練中に発生する副生成物を前記シリンダーの外部に排出するときの前記ベント孔内の前記副生成物の状態を検出するベント孔状態検出装置であって、前記ベント孔の排出口内に向けて赤外線を出射して、前記ベント孔の内部又は前記スクリューまでの距離を測定する第1赤外線センサと、前記ベント孔の排出口に沿って赤外線を出射して、前記排出口を覆う位置までの距離を測定する第2赤外線センサと、前記第1赤外線センサ及び前記第2赤外線センサが測定した測定結果に基づいて、前記ベント孔の排出口における前記副生成物の盛り上がり状態及び前記ベント孔の閉塞状態を検出する状態検出手段と、前記検出したベント孔の状態を出力する状態出力手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のベント孔状態検出装置において、前記第1赤外線センサは、前記ベント孔の排出口における相異なる部分に複数の赤外線の各々を出射する構成とし、前記状態検出手段は、前記第1赤外線センサ及び前記第2赤外線センサが測定した測定結果に基づいて、前記ベント孔内の閉塞状態を検出する手段であることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載の押出機は、シリンダー内のスクリューを回転させることにより、可塑性樹脂を混練させた生成物を前記シリンダーの外部に押し出す押出機において、前記シリンダーの途中に設けられて、前記混練中に発生する副生成物を前記シリンダーの外部に排出するベント孔と、請求項1又は2に記載のベント孔状態検出装置と、前記ベント孔に連通して前記副生成物が排出されるベント室と、を有し、前記第1赤外線センサ及び前記第2赤外線センサが前記ベント室内に設けられていることを特徴する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1に記載した本発明によれば、第1赤外線センサがベント孔の内部又はスクリューまでの距離を測定し、第2赤外線センサがベント孔の排出口に沿って該排出口を覆う位置までの距離を測定し、これらの赤外線センサの測定結果に基づいてベント孔の排出口における盛り上がり状態及びベント孔内の閉塞状態の双方を検出可能としたことから、ベントアップとベント孔に膜が張った状態とを区別することができるため、ベントアップを早期かつ正確に検出することができる。従って、ベントアップが発生した際は、その現象の発見遅れを防止することができ、ベント孔内が副生成物の充満による除去に要する作業時間を短縮できる。また、ベントアップを正確に発見することから、ベント孔を溶融樹脂の薄い膜が張った状態をベントアップと誤検出することを防止できるため、監視作業の効率化又は無人化に貢献することができる。さらに、第1赤外線センサからの赤外線をベント孔内の排出口付近まで入射できれば良いため、ベント孔の形状の複雑化にも対応することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、ベント孔の排出口における相異なる部分に第1赤外線センサから複数の赤外線の各々を出射するようにしたことから、ベント孔内の全体的な閉塞状態を検出することができるため、ベント孔内の閉塞状態をより一層正確に検出することができる。また、第1赤外線センサと第2赤外線センサとから同時に赤外線を出射することで、ベント孔内及び排出口付近を立体的に捉えることができるため、より一層正確にベントアップとベント孔内の閉塞状態を検出することができる。
【0015】
以上説明したように請求項3に記載した本発明によれば、シリンダーからベント孔に副生成物が侵入すると、ベント室内の第1赤外線センサ及び第2赤外線センサの測定結果に基づいてベント孔状態検出装置がベントアップ及びベント孔内の閉塞状態を検出して出力することから、ベントアップとベント孔に膜が張った状態とを区別することができるため、ベントアップを早期かつ正確に検出することができる。従って、ベントアップが発生した際は、その現象の発見遅れを防止することができ、ベント孔内が副生成物の充満による除去に要する作業時間を短縮できる。また、ベントアップを正確に発見することから、ベント孔を溶融樹脂の薄い膜が張った状態をベントアップと誤検出することを防止できるため、監視作業の効率化又は無人化に貢献することができる。さらに、第1赤外線センサからの赤外線をベント孔内の排出口付近まで入射できれば良いため、ベント孔の形状の複雑化にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るベント孔状態検出装置の基本構成を示す構成図である。
【図2】図1中の状態検出手段が実行する状態検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】従来の押出機の概略構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るベント孔状態検出装置を有する押出機の実施形態の一例を、図1,2の図面を参照して以下に説明する。
【0018】
図1において、押出機1は、シリンダー2と、スクリュー3と、ベント孔状態検出装置10と、を有して構成している。そして、押出機1は、シリンダー2内のスクリュー3を、図示しない駆動手段で回転させることにより、可塑性樹脂を混練させた生成物をシリンダー2の外部に押し出す。なお、可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエステル樹脂、等が挙げられる。
【0019】
シリンダー2は、ベント孔状態検出装置10を組み込むようにシリンダー2の途中に設けられた穴部4を有している。穴部4は、ベント孔状態検出装置10が有するシリンダー2の一部である底部11aが組み付けられることで、塞がれた状態となる。そして、本実施形態では、ベント孔状態検出装置10の底部11aにベント孔5を形成し、該底部11aがシリンダー2に組み込まれることで、シリンダー2の途中にベント孔5を配置する場合について説明する。なお、このような実施形態に代えて、シリンダー2にベント孔5を直接形成する実施形態とすることもできる。
【0020】
スクリュー3は、回動されることで、可燃性樹脂を混練して生成物を生成する共に、該生成物を押出方向Mに移動させてシリンダー2の外部に押し出す。
【0021】
ベント孔状態検出装置10は、ベント室11と、第1赤外線センサ12と、第2赤外線センサ13と、状態検出手段14と、状態出力手段15と、を有して構成している。なお、ベント孔状態検出装置10は、ベント室11がシリンダー2に一体に形成されている場合、ベント室11はその構成から削除される。
【0022】
ベント室11は、ベント孔5に連通して設けられて、シリンダー2内で混練中に発生した副生成物がベント孔5から排出される。ベント室11は、上記ベント孔5を有する底部11aと、側壁部11bと、天井部11cと、を有し、例えば、中空箱状、中空円柱状、等の形状で一体に形成されている。
【0023】
底部11aは、略方形状に形成されており、その中央部を貫通するベント孔5が形成されている。ベント孔5は、シリンダー2内に連通し、ベント室11内に開放された流路となっている。本実施形態のベント孔5は、図1に示すように、屈折部5aを有する形状とした場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、従来のように直線的にベント孔5を形成しても良い。また、ベント孔5は、シリンダー2の外部に副生成物を排出する。
【0024】
側壁部11bは、底部11aの縁部から立設している。天井部11cは、底部11aと対向するように側壁部11bの端部に形成されている。そして、側壁部11bの底部11a寄りには、第2赤外線センサ13を収容する第2取付部11dが形成されている。該第2取付部11dは、第2赤外線センサ13がベント室11内を底部11aに沿って赤外線を出射するように第2赤外線センサ13を配置する。
【0025】
副生成物を排出するベント孔5の排出口5bと対向する天井部11cの部分には、第1赤外線センサ12を収容する第1取付部11eが形成されている。該第1取付部11eは、第1赤外線センサ12が出射した赤外線がベント孔5内に入射するように第1赤外線センサ12を配置する。
【0026】
このように構成したベント室11は、底部11aと側壁部11bと天井部11cとによって囲まれた空間に、ベント孔5からの副生成物が排出される。なお、副生成物とは、シリンダー2内の材料の溶融混練中に熱やせん断によって発生する余分な物質を意味している。
【0027】
第1赤外線センサ12は、ベント孔5の排出口5b内に向けて赤外線を出射して、ベント孔5の内部又はスクリュー2までの距離を測定する。本実施形態では、ベント孔5が複雑な形状であるため、その屈折部5a付近までの距離を測定する場合について説明する。また、第1赤外線センサ12は、所定の距離まで赤外線を出射し、該赤外線が副生成物(検出物)で反射した反射光を受光する。該受光した反射光のエネルギーは、第1赤外線センサ12から副生成物までの距離によって変化することから、該エネルギーを副生成物までの距離と換算することができる。そして、第1赤外線センサ12は、該受光した赤外線のエネルギーを電気信号に変換して状態検出手段14に出力する。また、第1赤外線センサ12は、投光部と受光部とをセットで設け、該投光部から赤外線を出射し、該赤外線の反射光を受光部で受信する構成となっている。
【0028】
第1赤外線センサ12は、ベント孔5の排出口5bにおける相異なる測定ポイント部分に複数の赤外線の各々を出射するように構成している。例えば、ベント孔5内の閉塞状態の検出が可能なように、排出口5bに対して広範囲に測定ポイントを分散させて複数の赤外線の各々をベント孔5内に入射させる。このように複数の赤外線を出射する場合は、上述した投光部と受光部のセットを複数の赤外線の数だけ配置する。
【0029】
第2赤外線センサ13は、ベント孔5の排出口5bに沿って赤外線を出射して、排出口5bを覆う位置までの距離を測定する。本実施形態では、第2赤外線センサ13の測定対象範囲を排出口5bを完全に横断する範囲とした場合について説明するが、これに代えて、排出口5bの通信付近までというように、副生成物の盛り上がりを検出できれば種々異なる実施形態とすることができる。
【0030】
第2赤外線センサ13の基本構成は、第1赤外線センサ12と同一であり、ベント室11の底部11aに沿って平行に複数の赤外線を出射している。そして、第2赤外線センサ13は、底部11aに最も近い赤外線が、ベント孔5からのベントアップとベント孔5に膜が張った状態とを区別可能な底部11aからの高さであることが望ましい。また、本実施形態では、第2赤外線センサ13が複数の赤外線を平行に出射する場合について説明するが、これに代えて、1本の赤外線のみを出射する構成とすることもできる。
【0031】
状態検出手段14は、CPU(中央処理装置)、ROM(読み出し専用メモリ)、及びRAM(随時書き込み読み出しメモリ)を有するマイクロプロセッサユニット等で構成されている。そして、状態検出手段14は、上述した第1赤外線センサ12及び第2赤外線センサ13と状態出力手段15と電気的に接続されている。状態検出手段14は、第1赤外線センサ12及び第2赤外線センサ13が測定した測定結果に基づいて、ベント孔5の排出口5bにおける副生成物の盛り上がり状態及びベント孔5内の閉塞状態を検出するための状態検出プログラム等を記憶している。
【0032】
状態出力手段15は、状態検出手段14の制御によって動作し、例えば表示装置、警報装置等が製品の仕様等に応じて用いられる。本実施形態の状態出力手段15は、状態検出手段14から出力が要求されたベント孔5の状態を示す情報を利用者に対して表示する場合について説明する。
【0033】
次に、状態検出手段14が前記状態検出プログラムを実行したときに行う状態検出処理の一例を、図2に示すフローチャートを参照して以下に説明する。なお、状態検出処理は、終了要求の発生等に応じて強制的に終了されることを前提としている。
【0034】
状態検出手段14は、図2に示すステップS11において、第1赤外線センサ12から測定結果を取得して第1測定結果としてRAM等に記憶し、ステップS12において、第2赤外線センサ13から測定結果を取得して第2測定結果としてRAM等に記憶し、その後ステップS13の処理に進む。
【0035】
状態検出手段14は、ステップS13において、第1測定結果及び第2測定結果と、ベント孔5が空洞状態のときに測定した判定基準距離と、を比較して、測定結果が変化しているか否かを判定する。なお、判定基準距離は、各センサに対して予め設定した測定距離となっている。
【0036】
第1測定結果は、ベント孔5が副生成物によって閉塞されると、その測定結果が変化する(測定している距離が短くなる)ことから、複数の赤外線の各々に対応した距離の変化を解析することで、ベント孔5内の閉塞状態を検出することができる。また、第2測定結果は、ベント孔5の排出口5bからのベントアップ(盛り上がり)の状態に応じて変化することから、複数の赤外線の各々に対応した距離の変化を解析することで、ベントアップの状態を検出することができる。よって、第1測定結果と第2測定結果との双方を参照することで、ベント孔5の状態を立体的に検出することができる。
【0037】
状態検出手段14は、測定結果は変化していないと判定した場合(S13でN)、ステップS11に戻り、一連の処理を繰り返す。一方、状態検出手段14は、測定結果は変化したと判定した場合(S13でY)、ステップS14の処理に進む。
【0038】
状態検出手段14は、ステップS14において、第1測定結果を参照して、ベント孔5内が閉塞状態であるか否かを判定する。なお、閉塞状態の判定方法の一例としては、複数の赤外線が出射された複数の測定ポイントの各々に対して、測定距離が短く変化した測定ポイントを特定し、その測定距離と測定ポイントに基づいてベント孔5の閉塞状態を判定する。そして、全ての測定ポイントに対する距離の減少が等しい場合は、ベント孔5の排出口5bに膜が張っている状態と判別することができる。
【0039】
状態検出手段14は、測定距離が短くなった測定ポイントがない場合は、閉塞状態ではないと判定し(S14でN)、ステップS11に戻り、一連の処理を繰り返す。一方、状態検出手段14は、測定距離が短くなった測定ポイントが存在する場合は、閉塞状態であると判定し(S14でY)、ステップS15の処理に進む。
【0040】
状態検出手段14は、ステップS15において、第2測定結果を参照して、ベント孔5の排出口5bにベントアップが発生しているか否かを判定する。なお、ベントアップの判定方法の一例としては、ベントアップが発生した場合、測定距離が突如短くなることから、測定距離が短く変化したか否かを判定する。
【0041】
状態検出手段14は、ベントアップが発生したと判定した場合(S15でY)、ステップS16において、ベントアップが発生したことを示す状態情報を生成し、該状態情報の出力を状態出力手段15に要求し、その後ステップS11に戻り、一連の処理を繰り返す。これにより、状態出力手段15は状態情報を作業者等に対して出力することで、ベントアップの発生を知らせる。
【0042】
状態検出手段14は、ベントアップが発生していないと判定した場合(S15でN)、ステップS17において、ベント孔5の排出口5bに膜が張った状態であることを示す状態情報を生成し、該状態情報の出力を状態出力手段15に要求し、その後ステップS11に戻り、一連の処理を繰り返す。これにより、状態出力手段15は状態情報を作業者等に対して出力することで、ベント孔5の排出口5bに膜が張った状態であることを知らせる。
【0043】
なお、状態情報としては、監視作業の効率化又は無人化に貢献することができれば、ベント孔5にベントアップや膜が張った状態が発生しているか否かを示す情報としてもよいし、測定結果を示す情報としてもよい。
【0044】
次に、上述した押出機1が有するベント孔状態検出装置10の動作(作用)の一例を以下に説明する。
【0045】
ベント孔状態検出装置10は、起動されると、第1赤外線センサ12及び第2赤外線センサ13の駆動させることで、赤外線を出射させる。このとき、押出機1は、通常に可動している場合は、スクリュー3が回転すると共に、シリンダー2内の可塑性樹脂は混練されて押出方向Mに向かって移動されている。
【0046】
シリンダー2内に副生成物が発生していない場合、ベント孔5内は常に空洞状態となっている。そして、シリンダー2内に副生成物が発生すると、該副生成物はベント孔5内に侵入して充満を開始し、その後副生成物がベント孔5の排出口5bからベント室11内に盛り上がってベントアップが発生する。
【0047】
ベント孔状態検出装置10は、第1赤外線センサ12によってベント孔5内までの距離を測定し、第2赤外線センサ13によってベント孔5の排出口5bを覆うように横断する距離を測定している。
【0048】
シリンダー2内に副生成物が発生すると、この副生成物はベント孔5内に徐々に充満し、やがてはベントアップが始まる。この場合、ベント孔状態検出装置10が測定する第1測定結果は、閉塞状態が始まった後はその状態に応じて前記判定基準距離よりも距離が徐々に短くなっていく。また、第2測定結果は、ベントアップが発生していない場合は一定の距離であり、ベントアップが発生した直後は一定の距離から急激に減少する。
【0049】
ベント孔状態検出装置10は、第1測定結果及び第2測定結果を参照して、第1測定結果のみに距離の減少が発生している場合、ベント孔5内に閉塞状態または排出口5b付近に膜が張っていると判定し、この状態を示す状態情報を生成して作業者等に対して出力する。よって、作業者等は出力された状態情報を参照することで、ベント孔5に膜が張っていることを認識することができる。
【0050】
また、ベント孔状態検出装置10は、第1測定結果及び第2測定結果の双方に距離の減少が発生している場合、ベント孔5にベントアップが発生していると判定し、ベントアップの発生を示す状態情報を生成して作業者等に対して出力する。よって、作業者等は出力された状態情報を参照することで、ベントアップの発生を早期に認識できるため、監視作業を行う必要がなくなる。
【0051】
以上説明した押出機1によれば、シリンダー2からベント孔5bに副生成物が侵入すると、ベント室11内の第1赤外線センサ12及び第2赤外線センサ13の各測定結果に基づいて、ベント孔状態検出装置10がベントアップ及びベント孔内の閉塞状態を検出して状態情報を作業者等に出力することから、ベントアップとベント孔に膜が張った状態とを区別することができるため、ベントアップを早期かつ正確に検出することができる。従って、ベントアップが発生した際は、その現象の発見遅れを防止することができ、ベント孔5内が副生成物の充満による除去に要する作業時間を短縮できる。また、ベント孔状態検出装置10がベントアップを正確に発見することから、ベント孔5を溶融樹脂の薄い膜が張った状態をベントアップと誤検出することを防止できるため、監視作業の効率化又は無人化に貢献することができる。さらに、第1赤外線センサ12からの赤外線をベント孔5内の排出口付近まで入射できれば良いため、ベント孔5の形状の複雑化にも対応することができる。
【0052】
また、押出機1は、ベント孔5の排出口5bにおける相異なる部分に第1赤外線センサから複数の赤外線の各々を出射するようにしたことから、ベント孔5内の全体的な閉塞状態を検出することができるため、ベント孔5内の閉塞状態をより一層正確に検出することができる。また、第1赤外線センサ12と第2赤外線センサ13とから同時に赤外線を出射することで、ベント孔5内及び排出口5b付近を立体的に捉えることができるため、より一層正確にベントアップとベント孔5内の閉塞状態を検出することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態の第1赤外線センサ12と第2赤外線センサ13は、測定種類を光透過に変更し、発信された光線透過量の減少に基づいて判定する実施形態としても、上述した効果を得ることができる。
【0054】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 押出機
2 シリンダー
3 スクリュー
5 ベント孔
10 ベント孔状態検出装置
11 ベント室
12 第1赤外線センサ
13 第2赤外線センサ
14 状態検出手段
15 状態出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー内のスクリューを回転させることにより、可塑性樹脂を混練させた生成物を前記シリンダーの外部に押し出す押出機に用いられ、前記シリンダーの途中に設けられたベント孔から前記混練中に発生する副生成物を前記シリンダーの外部に排出するときの前記ベント孔内の前記副生成物の状態を検出するベント孔状態検出装置であって、
前記ベント孔の排出口内に向けて赤外線を出射して、前記ベント孔の内部又は前記スクリューまでの距離を測定する第1赤外線センサと、
前記ベント孔の排出口に沿って赤外線を出射して、前記排出口を覆う位置までの距離を測定する第2赤外線センサと、
前記第1赤外線センサ及び前記第2赤外線センサが測定した測定結果に基づいて、前記ベント孔の排出口における前記副生成物の盛り上がり状態及び前記ベント孔の閉塞状態を検出する状態検出手段と、
前記検出したベント孔の状態を出力する状態出力手段と、
を有することを特徴とするベント孔状態検出装置。
【請求項2】
前記第1赤外線センサは、前記ベント孔の排出口における相異なる部分に複数の赤外線の各々を出射する構成とし、
前記状態検出手段は、前記第1赤外線センサ及び前記第2赤外線センサが測定した測定結果に基づいて、前記ベント孔内の閉塞状態を検出する手段であることを特徴とする請求項1に記載のベント孔状態検出装置。
【請求項3】
シリンダー内のスクリューを回転させることにより、可塑性樹脂を混練させた生成物を前記シリンダーの外部に押し出す押出機において、
前記シリンダーの途中に設けられて、前記混練中に発生する副生成物を前記シリンダーの外部に排出するベント孔と、
請求項1又は2に記載のベント孔状態検出装置と、
前記ベント孔に連通して前記副生成物が排出されるベント室と、
を有し、
前記第1赤外線センサ及び前記第2赤外線センサが前記ベント室内に設けられていることを特徴する押出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−224862(P2011−224862A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96596(P2010−96596)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】