説明

ベンド管用測定治具

【課題】構造が簡単で、かつ、使い勝手に優れ、しかもベンド管の管芯長を正確に計測することのできるベンド管用測定治具を提供する。
【解決手段】ベンド管の管芯長を計測するためのベンド管用測定治具10であって、ベンド管の表面に載置可能な第1ブロックB1を備え、第1ブロックの下面2には、逆V字状に凹んだ溝部3が形成され、第1ブロックの上面4には、溝部の溝条方向と直交する方向における第1ブロックの上面の水平状態を測定する水平器5と、溝部の溝条位置と対向する位置で管芯長の測定治具を設置する基準部6と、が設けられ、溝部、水平器及び基準部を備えた第1ブロックと同様に構成された第2ブロックB2と、第1ブロックの溝部の溝条方向と第2ブロックの溝部の溝条方向とが同一軸心上を移動するように、第1ブロックおよび第2ブロックの少なくとも一方を移動自在に保持するガイド部材7a,7bと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベンド管用測定治具に係り、特に大口径のベンド管の管芯長を測定するのに好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエチレンパイプ(PE管)等の配管の管路設計において、管路中にベンド管が含まれる場合は、そのベンド管の管芯長を考慮して設計されている。また、管路を施工する際、管の長さを調整しなければならない場合があり、その調整される管がベンド管の場合も管芯長の計測が行われる。管芯長の測定にあたっては、コンベックス等の測定器を用いて行われている。なお、特許文献1では、リンク機構を応用してベンド管の曲がり角度を測定する測定器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−313001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被測定管がベンド管の場合、口径が小さいときは上述したコンベックス等の測定器で比較的正確に測定することができるが、口径が大きくなるほど管芯長を正確に計測することが困難となり、特に、呼び径300以上のような大口径のベンド管の場合は、測定誤差が大きくなるという問題点を有していた。
【0005】
このような問題点を解決するために、大口径のベンド管の管芯長を正確に計測するための測定治具の開発が要望されている。しかも、測定治具の用いられる施工現場は、作業スペースが狭い等の制約がある環境であるため、複雑で大型の測定治具は不適であり、このため、構造が簡単で、かつ、使い勝手に優れた測定治具の開発が望まれていた。なお、特許文献1ではベンド管の角度を測定することはできるが、管芯長を計測するものではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造が簡単で、かつ、使い勝手に優れ、しかもベンド管の管芯長を正確に計測することのできるベンド管用測定治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、ベンド管の管芯長を計測するためのベンド管用測定治具であって、前記ベンド管の表面に載置可能な第1ブロックを備え、該第1ブロックの下面には、逆V字状に凹んだ溝部が形成され、前記第1ブロックの上面には、前記溝部の溝条方向と直交する方向における前記第1ブロックの上面の水平状態を測定する水平器と、前記溝部の溝条位置と対向する位置で前記管芯長の測定治具を設置する基準部と、が設けられ、前記溝部、前記水平器及び前記基準部を備えた前記第1ブロックと同様に構成された第2ブロックと、前記第1ブロックの溝部の溝条方向と前記第2ブロックの溝部の溝条方向とが同一軸心上を移動するように、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックの少なくとも一方を移動自在に保持するガイド部材と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記ガイド部材が、2本のガイド棒からなることを特徴としている。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記基準部が、前記溝部の溝条方向と同方向に伸びる突条体からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るベンド管用測定治具は、下面が逆V字状に凹んだ溝部と、上面の水平状態を測定する水平器と、上面に設けられた基準部とを備えた第1ブロック、その第1ブロックと同様に構成されている第2ブロック、及び第1ブロックの溝部の溝条方向と第2ブロックの溝部の溝条方向とが同一軸心上を移動するように、それらブロックを移動自在に保持するガイド部材を備えているだけであるため、構造が簡単なベンド管用測定治具とすることができる。このように構造が簡単なベンド管用測定治具であるにもかかわらず、このベンド管用測定治具を2組使用することで、大口径のベンド管の管芯長を正確に計測することができる。しかも、このベンド管用測定治具は構造が簡単で使用方法も簡単であるため、作業スペースが狭い等の制約された環境でも容易に使用することができる。
また、本発明に係るベンド管用測定治具は、ガイド部材を2本のガイド棒で構成することで、第1ブロック及び第2ブロックの移動を正確、かつ、円滑に行うことができる。
さらに、本発明に係るベンド管用測定治具は、基準部を溝部の溝条方向と同方向に伸びる突条体で構成することで、その突条体を利用してコンベックス等の測定器を容易にセットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るベンド管用測定治具の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るベンド管用測定治具の使用状態を示す斜視図である。
【図3】図2のA部の拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るベンド管用測定治具を使用した距離測定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るベンド管用測定治具について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るベンド管用測定治具10の斜視図であって、このベンド管用測定治具10は同一構成の二つのブロック、すなわち、第1ブロックB1及び第2ブロックB2を有している。
【0013】
第1ブロックB1及び第2ブロックB2が同一構成であるため、以下、第1ブロックB1を例に説明する。第1ブロックB1は、金属製等の剛性体で作られていて、下面2を除いて略直方体形状のブロック体1で構成されている。
【0014】
このブロック体1の下面2は、逆V字状に凹んだ溝部3が形成されている。この逆V字状の溝部3の角度は、後述するベンド管Pの口径を考慮して決められている。すなわち、ブロック体1の下面2が図2〜図4に示されるように、ベンド管P上に安定して載置できるように決められている。なお、溝部3の形状は、ブロック体1がベンド管P上に安定して載置できればよいため、逆U字状に凹んでいてもよい。
【0015】
また、このブロック体1の上面4には水平器5が設けられている。この水平器5は、ブロック体1の下面2に設けられている溝部3の最も凹んだ位置(逆V字の頂点位置)の線条に当たる溝条3aの方向と直交する方向の水平状態を測定できるように設けられている。
【0016】
さらに、このブロック体1の上面4には、突条体(基準部)6が設けられている。この突条体6は、ブロック体1の下面2に設けられている溝部3の溝条3aの位置と対向する位置で、その溝条3aの方向と同方向に伸びるように形成されている。
【0017】
第2ブロックB2は、上述した第1ブロックB1と同様に構成され、2本のガイド棒(ガイド部材)7a,7bを介して両ブロックB1,B2が平行移動できるように構成されている(図1の矢印X参照)。すなわち、2本のガイド棒7a,7bは、各ブロックB1,B2に所定の間隔を保って、かつ、ガイド棒7a,7bの径より僅かに大きく開けられている2個の貫通孔8a,8bに挿入されるように構成されている。これらガイド棒7a,7bの軸心方向及び貫通孔8a,8bの軸心方向の関係は、第1ブロックB1の溝部3の溝条3aの方向と第2ブロックB2の溝部3の溝条3aの方向とが同一軸心方向を保って移動できるように決められている。なお、第1ブロックB1は、ガイド棒7a,7bの一方の端部付近(図1ではガイド棒7a,7bの手前側)において、図示しない固定ねじを介してガイド棒7a,7bに固定され、第2ブロックB2のみが移動できるように構成されている。もちろん、両ブロックB1,B2とも、ガイド棒7a,7bを自由に摺動できるようにしてもよい。
【0018】
以下、上記構成からなるベンド管用測定治具10を使用したベンド管Pの管芯長の測定方法を図2〜図4を用いて説明する。
まず、ベンド管Pを図示しない水平に保たれている載置面に載置するとともに、上述したベンド管用測定治具を2組用意する。そして、図2に示すように、1組のベンド管用測定治具10Aはベンド管Pの一方の端部P1の直線部分に、他の組のベンド管用測定治具10Bはベンド管Pの他方の端部P2の直線部分にセットする。図2及び図4の鎖線で示される(a)は、ベンド管Pの他方の端部P2の部分にセットされる他の組のベンド管用測定治具10Bを表わしている。
【0019】
両端部P1,P2に対するベンド管用測定治具10A,10Bのセットは、図3に示されるように、第1ブロックB1の正面(第1ブロックB1の面のうち、第2ブロックB2と対向する面と反対側の面)がベンド管Pの端部P1(またはP2)の面と一致するようにしてベンド管P上に載置する。そして、第1ブロックB1及び第2ブロックB2の水平器5が共に水平を示すように載置位置を調整する。この調整されたときの第1ブロックB1及び第2ブロックB2の方向は、両端部P1,P2におけるベンド管Pの中心位置と一致することになる。なお、両ブロックB1,B2の間隔が大きいほど、突条体6,6を結ぶ線がベンド管Pの中心軸線と一致する精度が高まるため、ベンド管Pの直線部分の範囲内で可能な限り両ブロックB1,B2の間隔を広げるとよい。
【0020】
次に、図4に示される線分L1,L2は、各組のベンド管用測定治具10A,10Bの第1ブロックB1及び第2ブロックB2の突条体6,6を結ぶ線を表わしていて、これら両線L1,L2の交点Oが分かれば、ベンド管Pの管芯長を求めることができる。したがって、第1ブロックB1及び第2ブロックB2の各突条体6,6にそれぞれコンベックス等の測定器をセットして、各端部P1,P2から交点Oまでの長さ(L1,L2)を計測すれば、ベンド管Pの管芯長を求めることができる。
【0021】
上記構成からなるベンド管用測定治具10は、第1ブロックB1の下面2に設けられた逆V字状に凹んだ溝部3と、その溝部3の溝条3aの方向と直交する方向における前記第1ブロックB1の上面4の水平状態を測定する、その上面4に設けられた水平器5と、溝部3の溝条3aの位置と対向する位置で第1ブロックB1の上面4に設けられた突条体6と、第1ブロックB1と同様に構成されている第2ブロックB2と、第1ブロックB1の溝部3の溝条3aの方向と第2ブロックB2の溝部3の溝条3aの方向とが同一軸心上を移動するように、それらブロックB1,B2を移動自在に保持するガイド棒7a,7bとで構成されるため、構造が簡単なベンド管用測定治具10とすることができる。このように構造が簡単なベンド管用測定治具10であるにもかかわらず、このベンド管用測定治具10は、このベンド管用測定治具10を2組使用することにより、呼び径が「300mm」を超えるような大口径のベンド管であっても管芯長を正確に計測することができる。しかも、このベンド管用測定治具10は構造が簡単で使用方法も簡単であるから、作業スペースが狭い等の制約された環境でも容易に使用することができる。
【0022】
また、上記構成からなるベンド管用測定治具10は、2本のガイド棒7a,7bを有しているため、第1ブロックB1及び第2ブロックB2の移動を円滑に行うことができる。
【0023】
さらに、上記構成からなるベンド管用測定治具10は、突条体6を利用してコンベックス等の測定器を容易にセットすることができる。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1…ブロック体 2…下面 3…溝部 3a…溝条 4…上面 5…水平器 6…突条体(基準部) 7a,7b…ガイド棒(ガイド部材) 10(10A,10B)…ベンド管用測定治具 B1…第1ブロック B2…第2ブロック P…ベンド管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンド管の管芯長を計測するためのベンド管用測定治具であって、
前記ベンド管の表面に載置可能な第1ブロックを備え、
該第1ブロックの下面には、逆V字状に凹んだ溝部が形成され、
前記第1ブロックの上面には、前記溝部の溝条方向と直交する方向における前記第1ブロックの上面の水平状態を測定する水平器と、前記溝部の溝条位置と対向する位置で前記管芯長の測定治具を設置する基準部と、が設けられ、
前記溝部、前記水平器及び前記基準部を備えた前記第1ブロックと同様に構成された第2ブロックと、
前記第1ブロックの溝部の溝条方向と前記第2ブロックの溝部の溝条方向とが同一軸心上を移動するように、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックの少なくとも一方を移動自在に保持するガイド部材と、を備えていることを特徴とするベンド管用測定治具。
【請求項2】
前記ガイド部材は、2本のガイド棒からなることを特徴とする請求項1に記載のベンド管用測定治具。
【請求項3】
前記基準部は、前記溝部の溝条方向と同方向に伸びる突条体からなることを特徴とする請求項1または2に記載のベンド管用測定治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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