説明

ベーカリー用油脂組成物

【課題】乳化安定性に優れ、生地に練りこむことで品質に優れたベーカリー製品を焼き上げることができる乳化組成物に用いられうる油脂組成物を提供する。
【解決手段】
(a)ジアシルグリセロール 5〜60質量%
(b)ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物 5〜35質量%、及び
(c)モノアシルグリセロール 5〜60質量%
を含有するベーカリー用油脂組成物であって、
該モノアシルグリセロールはシス不飽和モノアシルグリセロールを含み、
ベーカリー用油脂組成物中の該シス不飽和モノアシルグリセロールの含有量が、前記のヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の含有量1に対して0.05〜0.5(質量比)である、ベーカリー用油脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パン類に代表されるベーカリー製品は、一般的に、仕込み−混捏−発酵−ベンチ−成形−ホイロ−焼成等の工程を経て製造される。市場に出回るパン類の大部分は、工場の製造ラインで大量生産されたものであるが、このような大量生産方式では、パン生地に対する機械的負荷が大きいために生地に損傷が生じやすく、パンの品質が制約される。通常、パン類の品質はソフト感やしっとり感、口解け感や歯切れの良さ、あるいは風味といった観点から評価されるが、このようなパンの品質には、特に、発酵、成形工程での生地物性が大きく影響する。そのため、パン生地の物性を改良するための生地改良剤が開発されてきている。
【0003】
現在、上記の生地改良剤として、モノアシルグリセロール、有機酸モノアシルグリセロール、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン等を含有する乳化組成物が広く用いられている。
上記モノアシルグリセロールは、生地の泡(気泡)を安定化する作用があることが知られている。また、小麦粉の澱粉と複合体を形成することで生地の機械への付着を抑制してパン製造の効率化に寄与すると同時に、焼成後のパンにおいて澱粉の老化を防ぐことも知られている(特許文献1、2参照)。
また、コハク酸モノアシルグリセロールやジアセチル酒石酸モノアシルグリセロール等の有機酸モノアシルグリセロールは、小麦粉中のグルテンに作用してグルテンネットワークを緻密化し、生地の進展性が向上することが知られている(特許文献3、4参照)。
【0004】
モノアシルグリセロールは、液晶状態(ニート相)で使用するとよりソフトなパンが焼き上がることが知られているが、パン製造の作業環境温度(20〜40℃程度)で容易に結晶化してしまう。結晶化したモノアシルグリセロールを含む製剤は生地に馴染みにくいだけでなく、生地中の気泡を安定化することができない。したがって、発酵時や焼成時に生地のボリュームの低下を招きやすく、製造されるパンの品質の向上が制約される。このような問題を回避するために、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、ステアロイル乳酸塩、及びリン脂質を特定量含有する油相と、糖を特定量含有する水相を特定比で組み合わせて乳化油脂組成物とし、これをパン生地に配合することにより、パン生地の発酵時や焼成後にボリュームが向上し、生地伸展性や機械耐性が良く、焼成後のパンの食感向上、老化防止を図ることも報告されているが(特許文献5参照)、これを用いて製造したパンの品質は未だ十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−124052号公報
【特許文献2】特開平4−197130号公報
【特許文献3】特開平5−236919号公報
【特許文献4】特開平7−79687号公報
【特許文献5】特開2011−072272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生地に練りこむことで品質に優れたベーカリー製品を焼き上げることができる乳化組成物に用いられうる油脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、モノアシルグリセロールと、ジアシルグリセロールと、ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物とを所定量含有し、かつシス不飽和モノアシルグリセロールの含有量が、該ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の含有量に対して質量比(シス不飽和モノアシルグリセロール/ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物)で0.05〜0.5である油脂組成物を用いて調製した乳化組成物が、生地の成形性を向上させる効果があり、また、この生地を用いることでソフト感、しっとり感、口解け感、歯切れ及び風味のいずれも良好で品質に優れたベーカリー製品が焼き上がることを見い出した。
【0008】
本発明は、
(a)ジアシルグリセロール 5〜60質量%
(b)ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物 5〜35質量%、及び
(c)モノアシルグリセロール 5〜60質量%
を含有するベーカリー用油脂組成物であって、
該モノアシルグリセロールはシス不飽和モノアシルグリセロールを含み、
ベーカリー用油脂組成物中の該シス不飽和モノアシルグリセロールの含有量が、前記のヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の含有量1に対して0.05〜0.5(質量比)である、ベーカリー用油脂組成物に関する。
に関する。
また、本発明は、前記油脂組成物を油相中に含有するベーカリー用乳化組成物に関する。
また、本発明は、前記ベーカリー用乳化組成物を含有する生地から製造されるベーカリー製品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、乳化後に生地に練りこむことで、ソフト感、しっとり感、口解け感、歯切れ及び風味のいずれも良好で品質に優れたベーカリー製品を焼き上げることができる。また、本発明のベーカリー用油脂組成物を用いた乳化組成物は、モノアシルグリセロールの結晶化が抑制されるため、乳化安定性に優れると同時に高品質なベーカリー製品の安定供給に寄与する。さらに、本発明のベーカリー用油脂組成物を用いた乳化組成物は、生地の成形性を向上させることでベーカリー製品の製造効率を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のベーカリー用油脂組成物について以下に詳細に説明する。
【0011】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、ジアシルグリセロールと、ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物と、モノアシルグリセロールとを特定量含有し、当該モノアシルグリセロールには特定量のシス不飽和モノアシルグリセロールが含まれる。本発明のベーカリー用油脂組成物は、乳化後に生地に練りこむことでパン類や菓子類といったベーカリー製品の製造に用いられる。
【0012】
本発明に用いられる(a)ジアシルグリセロールに特に制限はないが、良好な口解け感としっとり感とを得る観点から、その構成脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合は90質量%以上であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましく、91〜98質量%であることがさらに好ましく、92〜98質量%であることが特に好ましい。また、前記不飽和脂肪酸に占めるトランス型不飽和脂肪酸の割合は0〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3.5質量%であることがより好ましい。
また、前記不飽和脂肪酸の好ましい炭素数は14〜24、より好ましくは16〜22であるが、風味及び酸化安定性等の観点から少なくともオレイン酸を含むことが好ましい。ジアシルグリセロールの構成脂肪酸に占めるオレイン酸の割合は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25〜90質量%、さらに好ましくは30〜80質量%、特に好ましくは35〜70質量%である。さらに、本発明の油脂組成物はジアシルグリセロールとして2分子のオレイン酸がエステル結合したオレイン−オレインジアシルグリセロールを含有することが好ましいが、その含有量は、ジアシルグリセロールの総量に対して98質量%未満であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。
【0013】
本発明に用いられるジアシルグリセロールは、良好な風味と酸化安定性を得る観点から、その構成脂肪酸にリノール酸を含むことが好ましい。該構成脂肪酸に占めるリノール酸の割合は、15〜65質量%、より好ましくは20〜60質量%、さらに好ましくは30〜55質量%、特に好ましくは35〜50質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明に用いられるジアシルグリセロールは、良好な風味と酸化安定性を得る観点からその構成脂肪酸にリノレン酸を含有することが好ましい。該構成脂肪酸に占めるリノレン酸の割合は、15質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0〜13質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは2〜9質量%である。前記リノレン酸はα−リノレン酸であることが好ましい。
【0015】
本発明に用いられるジアシルグリセロールの構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸の割合は、0〜10質量%であることが好ましく、0〜7質量%であることがより好ましく、2〜7質量%であることがさらに好ましく、2〜6質量%であることが特に好ましい。該飽和脂肪酸の炭素数は通常には14〜24であるが、16〜22であることが好ましい。当該飽和脂肪酸には、パルミチン酸やステアリン酸が含まれることが好ましい。
【0016】
本発明に用いられるジアシルグリセロールは、その構成脂肪酸中に炭素数12以下の脂肪酸を含んでもよいが、その割合が多すぎると風味が悪化する。したがって、構成脂肪酸の総量に対する炭素数12以下の脂肪酸の割合は5質量%以下であることが好ましく、0〜2質量%であることがより好ましく、0〜1質量%であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明に用いられるジアシルグリセロールには、良好な風味等を得る観点から、グリセリンの1位及び3位のヒドロキシル基に脂肪酸がエステル結合した構造をもつ1,3−ジアシルグリセロールが含まれることが好ましい。前記ジアシルグリセロールに占める1,3−ジアシルグリセロールの割合は50質量%以上であることが好ましく、52〜100質量%であることがより好ましく、54〜90質量%であることがさらに好ましく、56〜80質量%であることが特に好ましい。
また、本発明に用いられるジアシルグリセロールは、1,2−ジアシルグリセロール及び/又は2,3−ジアシルグリセロールを含んでもよいが、良好な風味を得る観点から、ジアシルグリセロールに占める1,2−ジアシルグリセロール及び/又は2,3−ジアシルグリセロールの割合は、30質量%以下であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが特に好ましい。
【0018】
本発明のベーカリー用油脂組成物中のジアシルグリセロールの含有量は5〜60質量%であり、5〜50質量%であることがより好ましく、5〜40質量%であることがさらに好ましく、5〜30質量%であることが特に好ましい。また、本発明のベーカリー用油脂組成物中のジアシルグリセロールの含有量を10〜50質量%とすることも好ましく、さらに10〜40質量%とすることも好ましく、さらに10〜30質量%とすることも好ましく、さらには10〜14質量%とすることも好ましい。
【0019】
本発明に用いる(b)ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物は、ヒドロキシ酸(オキシ酸)が有するヒドロキシル基(ヒドロキシル基を2つ以上の有する場合には、いずれか1つのヒドロキシル基)と脂肪酸とがエステル結合した構造を有する化合物である。上記モノエステル化合物を構成するヒドロキシ酸は、1分子中にヒドロキシル基及びカルボキシル基の双方を有する限り特に制限はない。上記ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。ヒドロキシ酸が光学活性である場合には、D体であってもL体であってもよく、両者が混在していてもよい。また、上記ヒドロキシ酸には、2分子以上のヒドロキシ酸が、ヒドロキシル基とカルボキシル基との間で脱水縮合により直鎖状に連結した構造の化合物も含まれる。上記ヒドロキシ酸は、乳酸及び/又は2分子以上の乳酸が脱水縮合した構造の直鎖ラクチドであることが好ましい。直鎖ラクチドを構成する乳酸単位の数は2〜5の整数であることが好ましい。
【0020】
また、上記モノエステル化合物を構成する脂肪酸は、炭素数12〜22であることが好ましく、炭素数14〜22であることがより好ましく、炭素数16〜20であることがさらに好ましい。また、上記脂肪酸は、飽和脂肪酸であることが好ましく、より好ましくはステアリン酸及び/又はパルミチン酸である。
【0021】
本発明に用いるヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物には、塩の形態のものも含まれる。
上記のヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の好ましい例として、ステアロイル乳酸及びパルミトイル乳酸又はこれらの塩が挙げられ、なかでもステアロイル乳酸カルシウム及び/又はステアロイル乳酸ナトリウムが好適に用いられる。
なお、本発明に用いるヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物には、モノアシルグリセロールが有するグリセリン由来の2つのヒドロキシル基のいずれか一つをポリカルボン酸でエステル化した構造を有する化合物、すなわちアニオン系の有機酸モノアシルグリセロールは含まれない。
下記に、ステアロイル乳酸カルシウム(式(1))及びステアロイル乳酸ナトリウム(式(2))の構造を示す。
【0022】
【化1】

【0023】
本発明におけるベーカリー用油脂組成物中のヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の含有量は、5〜35質量%であり、5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは6〜22質量%、特に好ましくは7〜20質量%である。
【0024】
本発明のベーカリー用油脂組成物は(c)モノアシルグリセロールを含有する。当該モノアシルグリセロールには、シス不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするシス不飽和モノアシルグリセロールが含まれるが、シス不飽和モノアシルグリセロール以外に飽和モノアシルグリセロール、トランス不飽和モノアシルグリセロールが含まれていてもよい。
【0025】
本発明のベーカリー用油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量は5〜60質量%であり、5〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。本発明に用いられるモノアシルグリセロールは、グリセリンの1位のヒドロキシル基に脂肪酸がエステル結合した構造をもつ1−モノアシルグリセロールであっても、グリセリンの2位のヒドロキシル基に脂肪酸がエステル結合した構造をもつ2−モノアシルグリセロールであってもよく、これらの混合物であってもよいが、1−モノアシルグリセロールを含むことが好ましい。なお、本発明における「モノアシルグリセロール」には、有機酸モノアシルグリセロールは含まれない。
【0026】
本発明のベーカリー用油脂組成物中のシス不飽和モノアシルグリセロールの含有量は、ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の含有量を1としたときの質量比、すなわちシス不飽和モノアシルグリセロール/ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物で0.05〜0.5であり、好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.06〜0.3、さらに好ましくは0.06〜0.2、さらに好ましくは0.06〜0.18、特に好ましくは0.06〜0.15であり、0.06〜0.08とすることが殊更に好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のシス不飽和モノアシルグリセロールの含有量は、モノアシルグリセロール総含有量を1としたときの質量比、すなわちシス不飽和モノアシルグリセロール/モノアシルグリセロールで0.01〜0.5であることが好ましく、0.01〜0.4であることがより好ましく、0.01〜0.3であることがさらに好ましく、0.01〜0.2であることが特に好ましく、0.03〜0.15であることが殊更好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のシス不飽和モノアシルグリセロールの含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは0.6〜5質量%、特に好ましくは0.7〜3質量%であり、0.9〜2.6質量%とすることが殊更に好ましい。
本発明に用いられるシス不飽和モノアシルグリセロールを構成するシス不飽和脂肪酸は、炭素数14〜22であることが好ましい。このような不飽和脂肪酸としては、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。
【0027】
本発明のベーカリー用油脂組成物中の飽和モノアシルグリセロールの含有量は、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%であり、さらに好ましくは6〜25質量%である。当該飽和モノアシルグリセロールを構成する飽和脂肪酸の炭素数は14〜22であることが好ましい。前記炭素数14〜22の飽和脂肪酸には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が含まれる。
【0028】
本発明のベーカリー用油脂組成物中のトランス不飽和モノアシルグリセロールの含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%であり、さらに好ましくは0.15〜0.55質量%である。当該トランス不飽和モノアシルグリセロールを構成する不飽和脂肪酸の炭素数は14〜22であることが好ましい。前記炭素数14〜22の不飽和脂肪酸には、エライジン酸が含まれる。
【0029】
本発明のベーカリー用油脂組成物には、トリアシルグリセロールが含有されてもよい。本発明のベーカリー用油脂組成物のトリアシルグリセロールの好ましい含有量は1〜60質量%であり、10〜55質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。本発明に用いられうるトリアシルグリセロールに特に制限はないが、例えば、大豆油、オリーブ油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、綿実油等に由来するトリアシルグリセロールを用いることができる。
【0030】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、リン脂質を含有してもよい。本発明のベーカリー用油脂組成物には、当該リン脂質として、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸等又はこれらの酵素処理物から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。また、上記リン脂質として、大豆レシチンや卵黄レシチン等の天然レシチン又はその酵素分解物を用いることもできる。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のリン脂質含有量に特に制限はないが、0〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。なお、レシチンにはリン脂質以外の成分を含むものが多いが、このようなレシチンを用いる場合には、リン脂質としての含有量が上記濃度範囲内となるように前記油脂組成物中に含有させる。
【0031】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有してもよい。本発明のベーカリー用油脂組成物中のポリグリセリン脂肪酸エステル含有量に特に制限はないが、含有量が0〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてはポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノオレート、ポリグリセリンモノベヘネートを好適に用いることができる。
【0032】
本発明のベーカリー用油脂組成物中のモノアシルグリセロールとジアシルグリセロールの含有量は、油脂を配合することで調整されうる。当該「油脂」とは、モノアシルグリセロール及びジアシルグリセロールのいずれかを少なくとも含有するものであり、植物油、動物油等の原料油脂とグリセリンとのエステル交換反応、又は原料油脂由来の脂肪酸組成物とグリセリンとのエステル化反応等任意の方法により得られうる。エステル交換反応やエステル化反応は、アルカリ又は酸性触媒等を用いた化学反応法やリパーゼ等の油脂加水分解酵素を用いた生化学反応法等により行うことができる。上記エステル交換反応は、例えば原料油脂とグリセリンとをナトリウムメトキシド等の塩基性触媒の存在下で反応させることで行うことができる。また、上記エステル化反応は、例えば上記原料油脂由来の脂肪酸組成物とグリセリンとを酵素の存在下で反応させることで行うことができる。
上記原料油脂は、構成脂肪酸として炭素数16〜22の脂肪酸を有していることが好ましく、炭素数18の不飽和脂肪酸を有することがより好ましい。原料油脂の具体例として、ナタネ油、コーン油、大豆油、パーム油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、米油、ひまわり油、ごま油、ラード、牛脂、魚油、もしくはこれらの分別油、エステル交換油、硬化油、又はこれらの混合油脂が挙げられる。上記のように調製した油脂のアシルグリセロール組成は後述する方法で測定することができる。
【0033】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、上記の反応により得られた油脂と、ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物含有製剤中に含有している油脂とを含んでもよい。また、本発明のベーカリー用油脂組成物は、上記の反応により得られた油脂と、前記原料油脂と、ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物含有製剤中に含まれる油脂とを含んでもよい。また、本発明のベーカリー用油脂組成物は、精製したモノアシルグリセロール、リン脂質含有製剤中の油脂及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステル含有製剤中の油脂をさらに含んでもよい。精製モノアシルグリセロールは、原料油脂を部分分解した後分離精製することで得られうる。
【0034】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、本発明のベーカリー用乳化組成物の油相成分として用いられうる。
本発明のベーカリー用乳化組成物は、水相成分として、(d)糖類、(e)水及び(f)乳化剤を含有する。上記糖類としては、グルコース、マルトース、フルクトース、シュークロース、ラクトース、トレハロース、マルトトリオース、マルトテトラオース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類や澱粉加水分解物、又はこれらを還元した糖アルコールが挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物であってもよい。良好な乳化安定性と保存性(防腐性)が得られ、しかもパンに適度の甘みを付与する観点から、水相成分中の糖類の含有量は30〜70質量%であり、30〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは35〜55質量%、さらに好ましくは40〜55質量%含有される。
【0035】
水相成分中の水の含有量は、乳化安定性と保存性の観点から20〜60質量%であり30〜60質量%であることが好ましく、35〜60質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましく、45〜60質量%であることが特に好ましい。
【0036】
水相成分中の乳化剤は、HLB値が10以上の乳化剤であることが好ましく、HLB10〜15であることがより好ましく、HLB10〜14であることがさらに好ましい。本発明において、HLB値は下記の数式で表されるGriffin法(W.C.Griffin,J.Soc.Cosmetic.Chemists.,1,311(1949))により計算した値である。

HLB=20×(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)

このような乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン誘導体(例えばリゾレシチン)等を挙げることができるが、水への分散性と乳化安定性の観点からショ糖脂肪酸エステルが好適に用いられる。ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。水相成分中の上記乳化剤の含有量は好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0037】
本発明のベーカリー用乳化組成物は、水中油型乳化組成物であることが好ましい。
本発明のベーカリー用乳化組成物は、例えば、上記油相成分と、上記水相成分とを通常の方法で乳化混合することで得ることができる。より具体的には、例えば80℃程度まで加熱した上記油脂組成物をホモミキサーを用いて攪拌し、ここに40℃程度まで加熱した上記水溶液を加えて攪拌乳化することで得られうる。本発明の乳化組成物を安定した水中油型の乳化組成物とするために、上記水相成分は、上記油相成分に対して質量比(水相質量/油相質量)で1.5以上であることが好ましく、1.5〜4であることがより好ましい。このようにして調製した乳化組成物では、モノアシルグリセロールのニート相が安定化し、油滴の界面にモノアシルグリセロールが液晶状態で存在しうる。モノアシルグリセロールが結晶化せずに液晶の状態で存在することで、乳化組成物がパン生地に馴染みやすくなってパン等のベーカリー製品の品質にムラが生じにくくなると同時に、優れた品質のベーカリー製品に仕上げることができる。油滴の界面に液晶の層が存在することは、X線回析により確認することができる。
【0038】
本発明のベーカリー用油脂組成物を用いたベーカリー用乳化組成物は、ベーカリー製品の製造に用いられる。本発明のベーカリー用乳化組成物を生地に練り込むことで、ソフト感やしっとり感、口解け感や歯切れの良さ、風味等の品質に優れたベーカリー製品に仕上げることができる。
上記ベーカリー製品に特に制限はなく、食パン、菓子パン、特殊パン、調理パン等が挙げられる。食パンとしては、白パン、黒パン、フランスパン、バラエティーブレッド、ロール類(テーブルロール、バンズ、バターロール等)が挙げられ、特殊パンとしてはマフィン等が挙げられる。調理パンとしては、ホットドック、ハンバーガー等が挙げられ、菓子パンとしてはジャムパン、あんパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、リッチグッズ(クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュ、ペストリー等)が挙げられる。
また、本発明のベーカリー用乳化組成物は乳化安定性に優れるため、ベーカリー製品の品質にムラが生じにくく、製品のロット間差が抑えられて歩留まりが向上しうる。
また、本発明のベーカリー用乳化組成物を生地に練る込むことで生地の成形性(作業性)が向上し、ベーカリー製品の製造効率が向上する。
【0039】
本発明の乳化組成物をパン類等のベーカリー製品の製造に使用する場合には、小麦粉100質量部に対して、乳化組成物を1〜10質量部配合し練りこむことで生地を製造することが好ましいが、更に1〜8質量部、特に1〜6質量部、殊更1〜4質量部配合することが、パン生地の発酵時や焼成後のボリュームが向上し、生地伸展性(機械耐性)と食感(パンの老化防止)向上の両立を図ることができる点から好ましい。前記生地を焼成することでベーカリー製品が得られる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、下記実施例において、TAGはトリアシルグリセロールを、DAGはジアシルグリセロールを、MAGはモノアシルグリセロールを意味し、特に断わりのない限り、成分組成を示す数値は質量%を意味する。
【0041】
[分析方法]
アシルグリセロール組成:
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
【0042】
構成脂肪酸組成:
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの01調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定した。
【0043】
[ジアシルグリセロール含有油脂の調製]
ウインタリングにより飽和脂肪酸を低減させた大豆油脂肪酸455質量部と、菜種油脂肪酸195質量部と、グリセリン107質量部とを、リポザイムIM(ノボザイムス社)を使用して40℃、0.07hPaで5時間エステル化反応を行った。次いで酵素を濾別し、235℃で分子蒸留して未反応の脂肪酸とモノアシルグリセロールとを留去し、更に脱色、水洗した。こうして得られた油脂150質量部に10%クエン酸水溶液7.5質量部を加え、60℃で20分間攪拌した後、110℃で脱水した。これを235℃で2時間脱臭することで油脂Aを得た。なお、大豆油脂肪酸及び菜種油脂肪酸は、大豆白絞油(昭和産業社製)及び菜種白絞油(昭和産業社製)をそれぞれ酵素(商品名:リパーゼAYアマノ、天野エンザイム社製)で加水分解することで調製した。
【0044】
ヘキサンに含浸しスラリー化したワコーゲルC−200(和光純薬製)をカラムに充填する。カラム上層から油脂A/ヘキサン混合液を滴下し、60ml/分で通液させた。溶出溶媒は、ヘキサン/酢酸エチル比率を80/20に調整した混合系を用い、油脂を溶出させ、回収した。画分をそれぞれトッピングし、油脂を回収し、ジアシルグリセロール高含有油脂Bを得た。
【0045】
[調製例1 ベーカリー用油脂組成物の調製]
菜種白絞油(日清オイリオ製)、ジアシルグリセロール高含有油脂(上記油脂A又は上記油脂B)、不飽和モノアシルグリセロール(商品名:エキセルO−95R、花王社製)、飽和モノアシルグリセロール(商品名:エキセルT−95R、花王社製)、ステアロイル乳酸ナトリウム(武蔵野化学研究所製)、ステアロイル乳酸カルシウム(武蔵野化学研究所製)、レシチン(商品名:レシチンデラックス、日清オイリオ製)及びポリグリセリンモノステアレート(花王社製)を下記表1及び2に示す割合で混合し、80℃に加熱して攪拌溶解することで調製した。
【0046】
[調製例2 ベーカリー用乳化組成物の調製]
ソルビトール(商品名:ソルビトール70W、花王社製)、マルトース(商品名:ハイマルトースMC−45、日本食品化工社製)、ショ糖脂肪酸エステル(商品名:S−1170、三菱化学社製)及び水を下記表1及び2に示す割合で混合し、40℃に加熱して攪拌溶解することで水相を得た。
なお、表1及び2の上欄に記載の各成分の数値は油相成分と水相成分の合計を100質量%としたときの質量%を示す。
【0047】
上記水相を調製例1で得たベーカリー用油脂組成物(油相成分)に徐々に添加しながらホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて50℃、7000rpmで攪拌乳化し、水中油型の乳化組成物である本発明品1〜11及び比較品1〜9を得た。得られた各乳化組成物を15℃まで冷却し、冷蔵庫(5℃)にて1日保存した後、下記の試験例に用いた。表1及び2の下欄には、各調製品の油脂組成物(油相成分)中におけるシス不飽和モノアシルグリセロール、ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物及びジアシルグリセロールの濃度(質量%)並びに油脂組成物中のヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の含有量1に対するシス不飽和モノアシルグリセロールの含有量(質量比)を併せて示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
比較品1〜5及び7は、油相成分中におけるヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物に対するシス不飽和モノアシルグリセロールの比率が本発明の規定よりも低い例であり、比較品5ではさらにジアシルグリセロール含量も本発明の規定より低くなっている例である。また、比較品9は油相成分中におけるヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物に対するシス不飽和モノアシルグリセロールの比率が本発明の規定よりも高い例である。また、比較品6及び8は、油相成分中におけるヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物に対するシス不飽和モノアシルグリセロールの比率が本発明で規定する範囲内ではあるが、比較品6はジアシルグリセロール含量が本発明の規定よりも低いものであり、比較品8はジアシルグリセロール含量が本発明の規定よりも高いものである。
【0051】
[調製例3 パンの調製]
上記各乳化組成物を用いて下記方法によりパンを製造した。
【0052】
25℃において、強力小麦粉(日清製粉社製)70.0質量部、イースト(オリエンタル酵母社製)3.0質量部、イーストフード(オリエンタル酵母社製)0.1質量部、全卵5.0質量部、ブドウ糖3.0質量部、上記乳化組成物2.0質量部及び水35.0質量部をボール(10コート)に入れ、竪型ミキサー(10コートミキサー、攪拌にフック使用、関東混合機工社製)を用い、25.0±0.5℃の温度下、低速で3分間、続いて高速で2分間混捏した。混捏した生地を28.0℃(湿度80%)で2時間30分発酵(中種発酵)させた(発酵終了温度29.0±0.5℃)。
続いて上記中種発酵生地に、強力小麦粉(日清製粉社製)30.0質量部、砂糖22.0質量部、食塩1.0質量部、脱脂粉乳2.0質量部、水15.0質量部を加えて、上記竪型ミキサーを用いて低速で3分間、続いて高速3分間混捏後、ショートニング6.0質量部を添加し、さらに低速で3分間続いて高速で5分間混捏して本捏生地を得た(捏上生地温度28.0±0.5℃)。
本捏生地を28.0℃(湿度80%)で30分間静置(フロアータイム)することで混捏時の生地のダメージを回復させてから、約80gの生地に分割した。分割生地を28.0℃(湿度80%)で20分間静置(ベンチタイム)して分割による生地ダメージを回復させてから、モルダーで成形した。成形物を天板に載せて38.0℃(湿度80%)で60分間発酵(ホイロ)させた後、210℃のオーブンで10分間焼成した。焼成後、室温(約20.0℃)で30分間静置して冷却し、ビニール袋に入れて密閉した上で20.0℃にて24時間保存し、試験用のパンとした。
【0053】
[試験例1 パン品質の官能評価]
上記調製例3で製造したパンについて、専門パネル10名にて、ソフト感、しっとり感、口解け感、風味及び歯切れの各要素を指標にして品質を評価した。また、熟練した生地調製作業者1名にて、パン生地成形時の作業性を評価した。パンのソフト感、しっとり感、口解け感、風味及び歯切れの各要素の評価基準を下記表3に、パン生地成形時の作業性に関する評価基準を下記表4に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
結果を表5に示す。
【0057】
【表5】

【0058】
なお、表5中の総合評価の基準は下記のとおりである。
<総合評価基準>
4:評価点数の合計点が28以上30以下である。
3:評価点数の合計点が20以上28未満である。
2:評価点数の合計点が10以上20未満である。
1:評価点数の合計点が10未満である。
【0059】
表5の結果から、ジアシルグリセロールの含有量が低すぎる乳化組成物用いると、パンのしっとり感や口解け感が顕著に悪化すると同時に、生地の成形性(作業性)も顕著に悪化した(比較品5及び6)。さらにヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物に対するシス不飽和モノアシルグリセロールの割合が本発明で規定するより低い比較品5においては、風味も著しく劣るものであった。また、ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物に対するシス不飽和モノアシルグリセロールの割合が低すぎたり高すぎたりすると、良好な品質のパンが得られなかった(比較品1〜4、7及び9)。さらに、ジアシルグリセロールの含有量が多すぎると、例えヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物に対するシス不飽和モノアシルグリセロールの割合が本発明の範囲内であってもパンの品質が劣っていた(比較品8)。
一方、本発明品1〜11を用いてパンを製造すると、ソフト感、しっとり感、口解け感、風味及び歯切れ並びに作業性のいずれにおいてもバランスよく良好な評価結果が得られ、その総合得点においても20点以上と比較品に比べて顕著に高い点数であった。ここで、各評価項目は官能試験の特質上やむを得ず点数で評価しているが、各評価項目における1点の差は実際の感覚で比較すると歴然とした差が認められるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ジアシルグリセロール 5〜60質量%
(b)ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物 5〜35質量%、及び
(c)モノアシルグリセロール 5〜60質量%
を含有するベーカリー用油脂組成物であって、
該モノアシルグリセロールはシス不飽和モノアシルグリセロールを含み、
ベーカリー用油脂組成物中の該シス不飽和モノアシルグリセロールの含有量が、前記のヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の含有量1に対して0.05〜0.5(質量比)である、ベーカリー用油脂組成物。
【請求項2】
ヒドロキシ酸が、乳酸及び/又は乳酸が脱水縮合した構造の直鎖ラクチドである、請求項1に記載のベーカリー用油脂組成物。
【請求項3】
脂肪酸が炭素数12〜22の飽和脂肪酸である、請求項1又は2に記載のベーカリー用油脂組成物。
【請求項4】
リン脂質を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物を油相中に含有するベーカリー用乳化組成物。
【請求項6】
(a)ジアシルグリセロール 5〜60質量%
(b)ヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物 5〜35質量%、及び
(c)モノアシルグリセロール 5〜60質量%
を含有する油相成分であって、
該モノアシルグリセロールはシス不飽和モノアシルグリセロールを含み、
油相成分中の該シス不飽和モノアシルグリセロールの含有量が、前記のヒドロキシ酸と脂肪酸とのモノエステル化合物の含有量1に対して0.05〜0.5(質量比)である油相成分と、
(d)糖類 30〜70質量%、
(e)水 20〜60質量%、及び
(f)HLB値が10以上の乳化剤 1〜10質量%
を含有する水相成分とを有し、
前記油相成分に対する前記水相成分の質量比(水相/油相)が1.5〜4であるベーカリー用乳化組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のベーカリー用乳化組成物を含有する生地から製造されるベーカリー製品。

【公開番号】特開2012−249592(P2012−249592A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125477(P2011−125477)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】