説明

ベーカリー製品向けチョコレート類及びベーカリー製品の製造法

【課題】SUS型トリグリセリドの配合比率が高いチョコレート類をベーカリー製品の生地中に添加して生地と共に焼成しても、ブルームが生じにくく、チョコレート本来の良好な食感を保つことができる、チョコレート風味豊かな、ベーカリー製品の製造法を提供すること。
【解決手段】カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含有し、好ましくは炭素数20〜24の脂肪酸を構成飽和脂肪酸とする二飽和―オレイン酸型グリセリドを含有するチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成することで、ブルームが生じにくく、良好なチョコレート風味を有するベーカリー製品を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン、ケーキ、クッキーなどのベーカリー製品向けチョコレート類及びベーカリー製品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
パン、ケーキ、クッキー、ビスケット、パイなどのベーカリー製品とチョコレート類とが組み合わされた、チョコレート複合菓子が製造されている。これらベーカリー製品と組み合わされるチョコレート類は、サンド、コーティング、エンロービング、フィリング等の用途で用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、焼成後の厚さが5mm以下のパイ生地でチョコレート類をサンドすることを骨子とするパイ菓子が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、ケーキ、パン、ドーナッツ、ビスケット等の菓子類の表面を被覆するコーティング用にラウリン系油脂を用いたチョコレート類が提案されている。
【0005】
しかし、これらはいずれも、先にベーカリー製品を焼成した後、チョコレート類をサンドしたり、コーティングしたりする必要があって、製造工程が増えるという問題があった。
【0006】
一方、特許文献3では、そのまま焼けるブラウニー生地が提案されているが、生地中に、ココアパウダーを含有させるものであったり、チョコレート類の含量が生地中30%までであったりと、チョコレート風味を満足させる点では充分ではなかった。
【0007】
また、一般にカカオ脂を主要な油脂とするチョコレート類においては、加熱溶融後固化する際に、テンパリングが行われていないと、ブルームと呼ばれる、表面に白い粉をふいたり、斑状に白変したりする現象を生じて、商品価値が著しく低下することがある。この、テンパリングとは、チョコレート中のSUS型トリグリセリドの安定結晶を得るための方法であり、従来、SUS型トリグリセリドを多く含むチョコレート類では、このテンパリングという煩雑な工程が必要とされていた。
【0008】
特許文献4では、アセチル化蔗糖脂肪酸エステルを添加し、カカオマス、カカオ脂含量が高い非テンパリング型チョコレート類を焼き菓子などと組み合わせて複合チョコレート菓子類を得る方法が提案されている。しかし、チョコレート油脂中のカカオ脂の配合比率は、非カカオ脂の20℃での固体脂指数SFC(%)をN20として、非カカオ脂との合計量に対するカカオ脂量が、〔0.2×N20+22.5(%)〕〜〔0.25×N20+27.5(%)〕という範囲に制限されており、また、焼成後の菓子の品温を40〜45℃まで冷却し、チョコレートを組み合わせる必要があるなど、実質的にカカオ脂のみからなるチョコレートや、チョコレートを菓子生地と共に焼成するような用途は、想定されておらず、効果は不明であった。
【0009】
特許文献5では、ベーカリー製品の生地中に添加され一緒に焼成されるチョコレートチップにおいて、混酸基トリグリセリドとして1,3−ジベヘノイル−2−オレイルグリセリドを0.3〜3重量%、および無脂乳固形分を1〜12重量%含有するベーカリー製品用チョコレートチップが提案されているが、ブルーム抑制効果を得るためには一定範囲内の無脂乳固形分が必要であり、無脂乳固形分を含まない、所謂ビターチョコレートを用いて同様のベーカリー製品を得ることは困難であった。
【0010】
特許文献6、および特許文献7では澱粉性原料、水分等をチョコレート類と混合、焼成することで食感的特徴を有するチョコレート菓子の製造法が提案されているが、澱粉原料を含むため、チョコレート本来の風味という点では、不十分であった。
【0011】
このように、これまでベーカリー製品に使用されるチョコレート類は、予め焼成したベーカリー製品と組み合わせたり、あるいは生地中に練り込む際には、カカオ脂含量に制限があったり、生地と共に焼成する際には、使用する油脂が非テンパリング型油脂や他の成分、例えば無脂乳固形分、澱粉性原料を必要とするものであったりと、チョコレート風味を強化する点、良好なチョコレート風味のベーカリー製品を得る点では、問題が多く、改善が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−155423号公報
【特許文献2】特開昭61−67444号公報
【特許文献3】特表2005−504511号公報
【特許文献4】特開2005−261251号公報
【特許文献5】特許第3406562号公報
【特許文献6】特許第3419446号公報
【特許文献7】特開2000−270775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、SUS型トリグリセリドの配合比率が高いチョコレート類をベーカリー製品の生地中に添加して生地と共に焼成しても、ブルームが生じにくく、チョコレート本来の良好な食感を保つことができる、チョコレート風味豊かな、ベーカリー製品の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は上記の課題を解決するため鋭意研究の結果、カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含有し、好ましくは炭素数20〜24の脂肪酸を構成飽和脂肪酸とする二飽和―オレイン酸型グリセリドを含有するチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成することで、ブルームが生じにくく、良好なチョコレート風味を有するベーカリー製品を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明の
第一は、カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含むベーカリー製品向けチョコレート類である。
第二は、油相中の全トリグリセリド重量に対して、SUS型トリグリセリドを50重量%以上含む、第一記載のチョコレート類である。
第三は、チョコレート類中に、アセチル化蔗糖脂肪酸エステルを0.1〜4.0重量%含む、第一又は第二記載のチョコレート類である。
第四は、チョコレート類中に、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするニ飽和一オレイン酸型グリセリドを0.3〜3.0重量%含む、第一〜三の何れか1つに記載のチョコレート類である。
第五は、カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含むチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成することを特徴とする、ベーカリー製品の製造法である。
第六は、チョコレート類中に、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするニ飽和一オレイン酸型グリセリドを含む、第五記載のベーカリー製品の製造法である。
第七は、チョコレート類を、成形/ペースト状で組み合わせることを特徴とする、第五又は第六記載のベーカリー製品の製造法である。
第八は、SUS型トリグリセリドを主成分とするグリセリド中にアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを5重量%以上含む、第一〜四何れか一つに記載のベーカリー製品向けチョコレート類に使用してなるチョコレート用油脂組成物である。
【発明の効果】
【0015】
カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含有し、好ましくは炭素数20〜24の脂肪酸を構成飽和脂肪酸とする二飽和―オレイン酸型グリセリドを含有するチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成することで、ブルームが生じにくく、良好なチョコレート風味を有するベーカリー製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含むベーカリー製品向けチョコレート類であるが、本発明におけるアセチル化蔗糖脂肪酸エステルは、蔗糖脂肪酸エステル中の残存水酸基をアセチル基にて置換したタイプの蔗糖脂肪酸エステルで、脂肪酸としては、炭素数16以上の長鎖飽和脂肪酸、エステル化度は3以上のものが好ましい。
【0017】
本発明における、SUS型トリグリセリドとは、2−不飽和―1,3ジ飽和グリセリドを表し、Sは炭素数16〜22の飽和脂肪酸残基、Uは炭素数16〜22の不飽和脂肪酸残基である。本発明において、ベーカリー製品向けチョコレート類の油相には、全トリグリセリド重量に対して、SUS型トリグリセリドが50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは60重量%、さらに好ましくは75重量%以上である。SUS型トリグリセリドを含む油脂として、代表的なものがカカオ脂であり、また、カカオ脂の代替脂肪として各種ハードバターが市場に出回っており、テンパリング型ハードバターと呼ばれる、いわゆるカカオ脂類似脂肪はいずれもSUS型トリグリセリドを主要トリグリセリド成分とするものであるが、本発明の趣旨上、SUS型トリグリセリドはカカオ脂由来であることが好ましく、カカオ脂はSUS型トリグリセリドを約80重量%含んでいる。
【0018】
本発明のチョコレート類には、上記SUS型トリグリセリド以外に他の油脂を併用してもよく、例えばナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂等の植物性油脂、乳 脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂、上記油脂類の単独または混合油の硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂等を用いることができる。
【0019】
本発明において、チョコレート類中のアセチル化蔗糖脂肪酸エステルの含有量は0.1〜4.0重量%であることが好ましく、少ないと、ブルーム防止効果が乏しく、多いと価格的に高くなるとともに、チョコレート類を成形する際のテンパリング工程が困難となる問題がある。
【0020】
本発明においては、上記アセチル化蔗糖脂肪酸エステルに加え、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするニ飽和一オレイン酸型グリセリドを併用することで、さらに焼成された後のブルーム防止効果を高めることが出来る。炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とする二飽和一オレイン酸型グリセリドの含有量は、0.3〜3.0重量%であることが好ましく、少ないとブルーム防止効果の増大が乏しくなり、多いとチョコレート類の口溶けを悪化するという問題が起こる。
【0021】
また、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とする二飽和一オレイン酸型グリセリドの中でも、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とする1,3位飽和2位オレイン酸型グリセリドは、チョコレート類を成形する際のテンパリング工程を容易にすることが出来好適である。
【0022】
本発明のベーカリー向けチョコレート類は、一般的なチョコレート類を生産する常法によって製造される。すなわち、カカオマス、油脂、ココアパウダー、糖類、粉乳等を適宜選択し、混合して生地を調製し、リファイナーにより適度な粒径にまで固形物を微細化した後、混練を行い、香料等を添加してチョコレート類を得ることができる。
【0023】
本発明のベーカリー製品の製造法においては、カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含むチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成することを特徴とし、焼成工程は、典型的にはオーブン中の焼成であるが、マイクロウェーブ照射、赤外線加熱などであってもよい。また、焼成の温度は通常100℃を超える温度が好ましく、更に好ましくは160℃以上で焼成することで、チョコレート類のブルームを生じにくくすることができる。
【0024】
本発明のチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成することで、ベーカリー製品が得られるが、小麦粉としては、薄力粉、中力粉、強力粉が例示でき、これらの単独または2種以上を混合使用することができる。また、糖類としては、単糖類、二糖類、少糖類、多糖類、及び、糖アルコールの何れを使用しても良く、またこれらの糖類を2種類以上混合使用することができる。
【0025】
本発明のチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成して得られるベーカリー製品としてはパン類、バターケーキ類、スポンジケーキ類、シュー菓子類、醗酵菓子類、パイ、ワッフル等の洋生菓子、ビスケットやクッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、カットパン、ウェハース、サブレ、マカロン等の焼き菓子、饅頭、どら焼き等の和菓子における焼き物菓子等が挙げられる。
【0026】
本発明のチョコレート類の形状は、小麦粉、糖類を含む生地との添加、分散方法によって異なるが、粒状、板状、球状、チャンク状、チップ状、ダイス状で用いることができる。また、液状、ペースト状で、小麦粉、糖類を含む生地に分散する方法でも用いることができる。
【0027】
本発明のチョコレート類は、小麦粉、糖類を含む生地と任意の比率で混合することが可能である。例えば、チョコレート類を予めチップ状に成形したものを用いる場合には、当該チョコレート類を10〜40重量%程度用いると、チョコレートの存在感が強く感じられ良好である。また、小麦粉、糖類を含む生地にチョコレート類を溶融状態で分散させる場合には、30〜70重量%程度添加すると、チョコレート風味が濃厚で、口溶けが良好なベーカリー製品が得られる。
【0028】
本発明において、SUS型トリグリセリドを主成分とするグリセリド中にアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを5重量%以上含むチョコレート用油脂組成物を既存の多様なチョコレート類に添加することで、従来のチョコレート類をベーカリー製品向けチョコレートとして使用することが可能となり、様々なチョコレート風味のベーカリー製品を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。なお、例中、%および部はいずれも重量基準を意味する。
【0030】
融点は、日本油化学協会基準油脂分析試験法(1996年版)2.2.4.2融(上昇融点)に規定の方法に準じて測定した。
トリグリセリド組成:液体高速クロマトグラフ(カラム:ODS、溶離液:アセトン/アセトニトリル=80/20、液量:0.9ml/分、カラム温度:25℃、検出器:示差屈折計)にて測定した。
【0031】
(1,3−ジベヘノイル−2−オレイルグリセリド含有油脂の調製)
高エルシン酸菜種油の極度硬化油と高オレイン酸ヒマワリ油とを用い、1−,3−位選択性を有する酵素剤にて既知の方法によりエステル交換反応を行い、さらに溶剤分別により高融点画分を分取した。この画分には62.9%の1,3−ジベヘノイル−2−オレイルグリセリド(BOB)が含まれており、融点は53.3℃であった。これをBOB脂とした。
【0032】
<チョコレート用油脂組成物Aの調製>
カカオ脂92%に、アセチル化蔗糖脂肪酸エステルである『DKエステルFA−10E(第一工業製薬株式会社製)』(エステル化度4.9)を8%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Aを調製した。
【0033】
<チョコレート用油脂組成物Bの調製>
カカオ脂代用脂である『メラノNEWSS7(不二製油株式会社製)』92%に、エステルFA−10Eを8%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Bを調製した。
【0034】
<チョコレート用油脂組成物Cの調製>
カカオ脂67%に、エステルFA−10Eを33%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Cを調製した。
【0035】
<チョコレート用油脂組成物Dの調製>
カカオ脂42%に、エステルFA−10Eを58%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Dを調製した。
【0036】
<チョコレート用油脂組成物Eの調製>
カカオ脂69%に、エステルFA−10Eを8%、BOB脂を25%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Eを調製した。
【0037】
<チョコレート用油脂組成物Fの調製>
カカオ脂70%に、エステルFA−10Eを5%、BOB脂を25%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Fを調製した。
【0038】
<チョコレート用油脂組成物Gの調製>
カカオ脂75%に、エステルFA−10Eを6.3%、BOB脂を18.7%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Gを調製した。
【0039】
<チョコレート用油脂組成物Hの調製>
カカオ脂100%からなる、チョコレート用油脂組成物Hを調製した。
【0040】
<チョコレート用油脂組成物Iの調製>
カカオ脂92%に、蔗糖脂肪酸エステルである『エステルF10第一工業製薬株式会社製)』を8%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Iを調製した。
【0041】
<チョコレート用油脂組成物Jの調製>
カカオ脂92%に、ポリグリセリン脂肪酸エステルである『サンソフトQMP−1(太陽化学株式会社製)』を8%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Jを調製した。
【0042】
<チョコレート用油脂組成物Kの調製>
カカオ脂92%に、ポリグリセリン脂肪酸エステルである『サンソフトQMP−4(太陽化学株式会社製)』を8%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Kを調製した。
【0043】
<チョコレート用油脂組成物Lの調製>
カカオ脂92%に、ポリグリセリン脂肪酸エステルである『サンソフトQMP−6(太陽化学株式会社製)』を8%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Lを調製した。
【0044】
<チョコレート用油脂組成物Mの調製>
カカオ脂75%に、BOB脂を25%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Mを調製した。
【0045】
<チョコレート用油脂組成物Nの調製>
カカオ脂50%に、BOB脂を50%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Nを調製した。
【0046】
<チョコレート用油脂組成物Oの調製>
カカオ脂63%に、BOB脂を37%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Oを調製した。
【0047】
<チョコレート用油脂組成物Pの調製>
カカオ脂25%に、エステルFA−10Eを75%完全溶解し、チョコレート用油脂組成物Pを調製した。
【0048】
<表1>チョコレート用油脂組成物の配合

【0049】
<チョコレートおよびクッキーの作製>
表2の配合にてチョコレートを作製し、おおむね7×7×10mmとなるような直方体(チャンク状)に成形した。
これを表3の配合のクッキー生地75部に対し、該チャンクチョコレート25部加え、焼成し、チョコチップクッキーを得た。
【0050】
<表2>チョコレート配合(部)

【0051】
<表3>クッキー配合(部)

注)製菓用ショートニング:商品名『パリオールM(不二製油株式会社製)』
【0052】
<実施例1〜7、比較例1〜9>
こうして得られたチョコチップクッキーについて、チョコレート部分のブルームの発生の有無について温度サイクルテストにより評価を行なった。なお、ここで言う温度サイクルテストとは、チョコチップクッキーを17℃で10時間保持した後2時間かけて30.5℃まで昇温し、30.5℃で10時間保持、さらに2時間かけて17℃まで降温する温度変化を1サイクルとし、チョコレート部分の状態変化、を観察し、食感の評価を行った。この結果を表4に示す。
【0053】
<表4>チョコチップクッキーのブルーム耐性テスト、食感評価の結果

−:良好、+:ブルーム発生・不良、++:激しくブルーム発生・不良
※比較例9はチョコレートを作製し、これをテンパリング操作後、5℃、30分間冷却したが固化が不十分で、チャンク状に成形する際に刃にチョコレートが付着したため十分な作業性が得られず、評価できなかった。
【0054】
<実施例8>
カカオマス47部、砂糖46部、ココアバター21.5部、レシチン0.4部からなるビターチョコレートにアセチル化蔗糖脂肪酸エステルであるエステルFA−10Eを0.75部、およびBOB脂を2.25部添加したチョコレート117.9部(油相中SUS型トリグリセリド比率80重量%)を55℃で融解、40℃に温調し、これに23℃の全卵25部に炭酸水素アンモニウム0.5部および重曹0.5部を溶解したものを数回に分け添加、混合し、さらに洋酒5部および3倍希釈タイプの濃縮乳(『プロベスト500』不二製油株式会社製)12.5部を数回に分け添加、混合した。これに薄力粉100部を加え、撹拌、混合を行い、生地を得た。この生地の配合を表5に示す。
【0055】
<表5>チョコレート菓子配合(部)

【0056】
この生地10gを球状に成形し、天板に乗せ、160℃、10分間焼成した。この焼成品を食したところ豊かなチョコレート風味を有し、口中でのほぐれ、口溶けのよい焼き菓子であった。また、この焼成品を温度サイクルテストにより評価を行なったところ、20サイクル後もブルームを生じず、食感も良好な状態を保っていた。この結果を表6に示す。
【0057】
<比較例10>
作製するチョコレートを表4のビターチョコレートにする以外は実施例8と同様にして焼き菓子を得た。これを温度サイクルテストにより評価を行なったところ、2サイクル後に激しくブルームを生じた。この結果を表6に示す。
【0058】
<表6>保存テスト結果

−:良好、+:ブルーム発生・不良、++:激しくブルーム発生・不良
【0059】
<実施例9>
カカオマス31部、砂糖9.4部、ココアバター7部、レシチン0.4部からなるビターチョコレートにアセチル化蔗糖脂肪酸エステルであるエステルFA−10E0.5部、およびBOB脂1.5部を添加したチョコレート49.8部(油相中SUS型トリグリセリド比率80重量%)を55℃で融解し、上白糖21.5部を加え40℃に温調した。これに23℃の全卵16.5部に炭酸水素アンモニウム0.3部および重曹0.3部を溶解したものを数回に分け添加、混合し、さらに洋酒3.3部および3倍希釈タイプの濃縮乳(『プロベスト500』不二製油株式会社製)8.3部を数回に分け添加、混合し、生地を得た。この生地の配合を表7に示す。この生地3.5gを天板に絞り、160℃、7分間焼成した。この焼成品を食したところ豊かなチョコレート風味を有し、口溶けのよい焼き菓子であった。また、この焼成品を温度サイクルテストにより評価を行なったところ、20サイクル後もブルームを生じず、食感も良好な状態を保っていた。チョコレート菓子配合を表7、結果を表8に示す。
【0060】
<比較例11>
作製するチョコレートを表8のビターチョコレートにする以外は実施例9と同様にして焼き菓子を得た。これを温度サイクルテストにより評価を行なったところ、2サイクル後に激しくブルームを生じた。この結果を表8に示す。
【0061】
<表7>チョコレート菓子配合(部)

【0062】
<表8>保存テスト結果

−:良好、+:ブルーム発生・不良、++:激しくブルーム発生・不良

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含むベーカリー製品向けチョコレート類。
【請求項2】
油相中の全トリグリセリド重量に対して、SUS型トリグリセリドを50重量%以上含む、請求項1記載のチョコレート類。
【請求項3】
チョコレート類中に、アセチル化蔗糖脂肪酸エステルを0.1〜4.0重量%含む、請求項1又は2記載のチョコレート類。
【請求項4】
チョコレート類中に、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするニ飽和一オレイン酸型グリセリドを0.3〜3.0重量%含む、請求項1〜3何れか1項に記載のチョコレート類。
【請求項5】
カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含むチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成することを特徴とする、ベーカリー製品の製造法。
【請求項6】
チョコレート類中に、炭素数20〜24の飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするニ飽和一オレイン酸型グリセリドを含む、請求項5記載のベーカリー製品の製造法。
【請求項7】
チョコレート類を、成形/ペースト状で組み合わせることを特徴とする、請求項5又は6記載のベーカリー製品の製造法。
【請求項8】
SUS型トリグリセリドを主成分とするグリセリド中にアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを5重量%以上含む、請求項1〜4何れか1項に記載のベーカリー製品向けチョコレート類に使用してなるチョコレート用油脂組成物。

【公開番号】特開2007−252364(P2007−252364A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330582(P2006−330582)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】