ベーカリー製品用の酵素生地改良剤および風味改良剤
新規の、酵母発酵型ベーカリー製品およびこれらの製品を作製する方法を提供する。これらの製品は、非常に高い割合のマルトゲン性アミラーゼを含む生地から作製される。このような高い割合は、最終焼成後の製品において、風味の改良、貯蔵寿命の長期化、および焼成後の体積の拡大を含む属性の改良をもたらす。一実施形態では、甘い製品を実現し続けながら、生地に含まれた糖の割合を従来技術における量に比べて大幅に削減することができる。本発明は、また、ナトリウムステアロイルラクチラートおよびアゾジカルボンアミドなどの特定の化学物質を生地から完全に除去することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は格別に長い貯蔵寿命、その貯蔵寿命中保持される大きく改良された風味プロファイル、著しく拡大された焼成後の体積、およびその他の利点を有する新規のベーカリー製品に広く係る。本発明はまた多量のマルトゲン性アミラーゼを用いてベーカリー製品を作製する新規の方法をも指向する。さらに、これらの特徴は、化学添加剤を用いなくても達成可能である。
【背景技術】
【0002】
生地の強化が起こる仕組みは、小麦タンパク質の共有架橋結合、繊維質からタンパク質への水の再分配、乳化剤によるでん粉の被覆、でん粉の錯化、タンパク質の錯化および粘度制御を含めて幾つかある。共有架橋結合は、多種のタンパク質を酸化させて架橋結合を形成させ、グルテンと呼ばれるタンパク質網状構造を得ることによって実現される。ジスルフィド結合、ジチロシン結合、疎水結合、イオン結合、および小麦の繊維質とタンパク質との結合を含む上記以外の何種類かの共有架橋結合および非共有架橋結合も形成され得る。形成される架橋結合の量および種類は、使用する生地強化剤の量および種類を変化させることで調整することができる。共有架橋結合と密接に関わる作用にタンパク質の錯化がある。これは、特定の乳化剤とタンパク質との間に形成される非共有架橋結合のことである。これらの架橋結合は、イオン結合および疎水結合に基づくもので、共有架橋結合と相補性がある。
生地のアラビノキシラン繊維質部分からタンパク質部分への水の再分配は、セルラーゼ酵素またはキシラナーゼ酵素を用いることによって実現される。これらの酵素が繊維質を分解すると水が放出され、その結果、水がタンパク質に転移できるようになる。タンパク質が水を奪われた状態であった場合、タンパク質というものは正常に機能するために、最低限一定量の水を必要とするので、該転移は結果として強化作用をもたらす。
でん粉の被覆およびでん粉の錯化は、専ら乳化剤によって実現される。でん粉の被覆は、生地の混捏中にでん粉顆粒の表面に乳化剤が付着することによって起こり、でん粉による水の摂取を抑制する。その結果、タンパク質への水の供給が増すとともにオーブン内でのでん粉の糊化が遅延し、粘度が低下する。乳化剤によるでん粉の錯化は、焼成中に、でん粉顆粒が膨張を開始し、アミロースを放出することによって起きる。乳化剤はアミロースを誘発して不溶性錯体を形成させ、最終焼成製品の粘度をさらに下げ、全体的な体積を向上させる。
【0003】
生地の受ける物理的な損害を小さくするために、生地の加工の初期段階で生地の粘度を最小限に抑えることも、また好ましい。ホイロ(proofing)の間に最適な粘度を維持することもまた好ましい。これにより、物理的な衝撃による生地の崩壊を十分に防ぐ構造的な剛性を持たせながら、生地を自由に膨張させることができる。最後に、生地の塊を焼成する際に好ましいのは、生地の粘度を下げ、オーブン内で最終的な膨張を起こさせることである。加工の初期段階において生地の粘度は、水および糖などの基礎材料の変更と、セルラーゼ、キシラナーゼ、およびプロテアーゼ、ならびにL−システインまたはメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤の添加とを含む多様な方法によって制御される。これらの添加剤はホイロの後期段階および焼成の初期段階にもある程度力を発揮するが、プロテアーゼは焼成の後期段階にも粘度の低下に活用できる。
【0004】
前述した生地の調整の手法はすべて幾分か補完的なもので、併用可能であるが、いずれの場合も制限はある。過剰な架橋共有結合は生地を過度に強力かつ堅固にし、結果的に、生地を、ホイロおよび焼成において膨張の乏しい、成形の難しいものとする。同様に、非共有架橋結合も、生地を、過膨張によって形の悪いベーカリー製品を形成する可能性のある、過度に強力なものとする。L−システイン、メタ重亜硫酸ナトリウム、セルラーゼ、キシラナーゼおよびプロテアーゼの利用による生地の粘度の低下は、生地を、過度にたるんでねばねばさせ、結果的に機械加工しにくくし、最終的な焼成後の特徴を劣悪なものとする。
【0005】
パンの風味の改善は、生地の改良(調整)ほど研究者に注目されてこなかった。歴史的にパンの貯蔵寿命は、配合物および工程によるが、非常に短く、わずか1〜3日間しかなかった。パンの貯蔵寿命が短くなる主な原因は、焼成工程中に糊化されたでん粉の再結晶による老化(staling)である。しかし、老化は、焼き立てパンの風味の喪失というもう一つの重要な結果をもたらす。乳化剤の使用は、パンの貯蔵寿命を2〜3日延ばした。その後、細菌性アミラーゼの使用が、結果的に貯蔵寿命を数日延ばした。やがてマルトゲン性アミラーゼが導入され、その結果、現在のパン貯蔵寿命である約3週間に至った。しかし、現在のパン配合物は、比較的軟らかく湿り気を帯びた状態を3週間維持するかもしれないが、パンの風味はそれ以前に著しく劣化する。さらに、でん粉の結晶化が風味分子を閉じ込める可能性がある。でん粉は風味分子を平等に捕獲するのではなく、非極性分子を優先的に閉じ込める。したがって、焼成された製品のでん粉結晶化後の風味は一般的に強度が低いが、非常に不均衡である可能性もある。そのため、老化したパンの風味は、時によって、苦い、酸っぱい、またはかび臭いと形容される。加えて、一般的に好ましくない、特定のかび防止剤の味がより明確になる可能性がある。
ベーカリー製品の風味を改善するための市販の製品も存在する。その一部は合成された風味であり、その最良のものとして、酵母の発酵によって生成された風味を模倣する天然調味薬品および人工調味薬品が含まれる。これらの風味は高価な可能性があり、実際の酵母の発酵の風味と合致せず、また、人工風味の表示を要する。
別の手法としては、発酵された後、乾燥されて粉末となった乳酸菌または酵母のいずれかによって、天然発酵生地を作製する方法が挙げられる。該粉末は市販されている。この手法は実用においてさらに高価で、得られるパンの風味は、乾燥工程において揮発性風味成分の多くが失われるので、天然酵母発酵による風味と合致しない。
【0006】
従来技術に関連付けられるもう一つの問題は糖の使用である。糖をパンで使用するのは、甘味を有する最終パンを産出するためである。糖は、焼成の点で好ましくない特徴を数多く有する。第一に、糖は生地に加えられた水の中で溶解し、存在する液相の量を増加させる。そのため、生地は、一定の水を生地から除かない限り、さらに湿って、ねばねばする。糖はまた一定の水と結合し、タンパク質網状構造の成長におけるその水の利用を阻む。その結果、低糖の配合物によるのと同じグルテンの成長を得るために、追加の生地強化剤が必要となる。配合が特定のパーセンテージを超えると、糖はまた酵母の発酵を阻害し始め、より高い割合の酵母を使う必要が生じる。過剰な糖は風味には好ましいが、パンの皮がオーブンの通常の温度でこげる原因にもなる。したがって、甘いパンの場合、ベーカリーは通常、オーブンの温度を下げて焼成時間を著しく増やすことで適切な皮の色を達成する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は酵母発酵型ベーカリー製品を作製する方法を広く提供する。該方法は、穀粉、糖およびマルトゲン性アミラーゼ(maltogenic amylase、マルトース生成アミラーゼ)を含有する生地を用意することを含む。糖は、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、糖約5質量%の初期量で用意される。該生地は、次に、マルトースの割合がベーカリー製品中の乾燥固体の少なくとも約5質量%のベーカリー製品を産出するのに十分な時間および温度で焼成される。
【0008】
本発明は、また、酵母発酵型ベーカリー製品を作製するのに有用な生地を提供する。該生地は、穀粉、酵母および水を含有し、その改良点は、生地が、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、約5質量%未満の糖と、穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼとを含む点である。
【0009】
もう一つの実施形態で、生地は以下の材料、すなわち、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、エトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満と、穀粉の質量を基準とした、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド、および過酸化カルシウムの各物質をそれぞれ約15ppm未満と、少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼとを含む。
【0010】
本発明は、また、穀粉、酵母および水で作製された酵母発酵型ベーカリー製品を指向する。この実施形態において、改良点は、製品が、穀粉の質量を基準とした少なくとも約500ppmの不活化マルトゲン性アミラーゼと、ベーカリー製品中の乾燥固体の質量を基準とした、少なくとも約5質量%のマルトースとを含む点である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は風味の知覚におけるマルトゲン性アミラーゼの影響を表すグラフである。
【図2】図2は甘味の知覚におけるマルトゲン性アミラーゼの影響を表すグラフである。
【図3】図3はパンのテクスチャ(外観)におけるマルトゲン性アミラーゼの影響を表すグラフである。
【図4】図4はパンの総合的な受け入れやすさに対するマルトゲン性アミラーゼの影響を表すグラフである。
【図5】図5は幾つかのパンのサンプルについてその平均体積値をコントロールと比較して規定するグラフである。
【図6】図6は幾つかのパンのサンプルについてその平均パン屑圧縮値をコントロールと比較して表すグラフである。
【図7】図7は幾つかのパンのサンプルについてその平均パン屑接着値をコントロールと比較して表すグラフである。
【図8】図8は本発明のパンの柔らかさをコントロールのサンプルと比較して表すグラフである。
【図9】図9は本発明のパンの弾性をコントロールのサンプルと比較して表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳述すると、本発明は新規の生地配合物とともに、これらの配合物によって酵母発酵型ベーカリー製品および他のベーカリー製品を作製する新規の方法に係る。該製品としては、パン、プレッツェル、イングリッシュマフィン、バン(小型パン)、ロールパン、トルティーヤ(トウモロコシおよび穀粉のもの)、ピザ生地、ベーグルおよびクランペットから成る群から選択されるものが挙げられる。
【0013】
本発明の方法において、特定の製品に対応する複数の材料が混ぜ合わせられる。該材料とそれらの好ましい範囲を表1に記載する。
【0014】
【表1】
* 質量に基づくパーセンテージまたは穀粉100 lb.を基準にしたppm
【0015】
酵母は酵母発酵型ベーカリー製品で従来用いられた酵母であれば何でもよいが、好ましいのは圧搾酵母である。好ましい生地強化剤としては、ナトリウムステアロイルラクチラート、エトキシ化モノグリセリド、モノジグリセリドおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、ならびにそれらの混合物から成る群から選択されたものが挙げられる。
【0016】
糖は、スクロースおよび高フルクトースコーンシロップを含む、ベーカリー製品で用いられる一般的な糖であれば何でもよい。
【0017】
好ましいかび防止剤としては、プロピオン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、酢、濃縮レーズンジュース、およびそれらの混合物から成る群から選択されたものが挙げられる。好ましい油脂は、大豆油、部分的に水素添加された大豆油、ラード、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、カノーラ油、およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0018】
適切な穀粉改良剤としては、アスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、過酸化カルシウム、およびそれらの混合物から成る群から選択されたものが挙げられる。従来の乳化剤なら何を利用してもよいが、好ましい乳化剤としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(通常、ポリソルベート60と呼ばれる)、ならびに水和モノグリセリド、シトリル化モノグリセリドおよびスクシニル化モノグリセリドなどのモノグリセリド類が挙げられる。
【0019】
細菌性アミラーゼは、約80℃から約90℃の間で不活化され、それらの温度以下ででん粉の分解が進むようなものが好ましい。最も好ましいアミラーゼはマルトゲン性アミラーゼであり、より好ましくはマルトゲン性α‐アミラーゼであり、さらに好ましくはマルトゲン性α‐エキソアミラーゼである。そのようなアミラーゼのうち最も好ましいものは、ノボザイムズA/SによってNOVAMYLという商品名で販売されており、引用によって本願に組み込まれる米国特許第RE38,507号に記載されている。このマルトゲン性アミラーゼは、バチルス株NCIB 11837によって生成可能であるか、またはバチルス株11837由来のDNA配列でエンコードされたものである(マルトゲン性アミラーゼは、内容が引用により本願に組み込まれる米国特許第4,598,048号および米国特許第4,604,355号に開示されている)。本工程で利用し得るもう一つのマルトゲン性アミラーゼは、バチルス株NCIB 11608によって生成可能なマルトゲン性β‐アミラーゼである(内容が引用によって本願に組み込まれる欧州特許第234858号に開示されている)。
本発明に含み得るマルトゲン性アミラーゼ以外の他の酵素としては、菌類アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アスパラギナーゼ、およびセルラーゼから成る群から選択されるものが挙げられる。
【0020】
含まれるマルトゲン性アミラーゼの割合は、既存の製品と比べて極めて高い。本実施形態では、アミラーゼは100 lb.の穀粉を基準として、少なくとも約500ppm、好ましくは約750ppmから約4,000ppm、より好ましくは約1,500ppmから約3,500ppm、さらに好ましくは約2,500から約3,000ppmの割合で含まれる。また、アミラーゼの割合は少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANU、より好ましくは穀粉1kg当たり約5,000から約30,000MANU、さらに好ましくは穀粉1kg当たり約5,000から約10,000MANUの活性度で存在する。本願で使用するにあたって、1MANU(マルトゲン性アミラーゼノボ単位)の定義を、pHを5.0とし、37℃で30分間、0.1Mクエン酸緩衝剤1mlに対して10mgのマルトトリオース(SigmaM8378)基質の濃度で、1分間に1μモルのマルトースを放出するのに必要な酵素の量と定める。
このような高い割合でマルトゲン性アミラーゼを用いることによって、ここに記載する、多数の際立った利点が得られる。例えば、高い割合でマルトゲン性アミラーゼを用いることで、産業で一般的に用いられる他の材料の用量を大幅に削減するか、さらに好ましくは生地配合物から除去することが可能となる。一実施形態においては、ナトリウムステアロイルラクチラートなどの生地強化剤が、穀粉の総質量を100質量%とした場合、約0.2質量%未満、より好ましくは約0質量%の割合で含まれる。さらに別の実施形態では、生地は、穀粉の総質量を基準として、約5ppm未満のアゾジカルボンアミド、より好ましくは約0ppmのアゾジカルボンアミドを含む。より好ましくは、生地は、これら低い割合の(または存在しない)生地強化剤およびアゾジカルボンアミドの両方を高い割合のマルトゲン性アミラーゼと合わせて用いる。さらに好ましい実施形態では、生地はまたエトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、酢およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満(より好ましくは0%)、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド、および過酸化カルシウムの各物質をそれぞれ約15ppm未満(より好ましくは0ppm)有する。
利点として、マルトゲン性アミラーゼの割合が高いことは、非常に低糖でありながら、非常に甘い製品を形成する生地配合物を可能にし、その詳細は以下に記載する通りである。本実施形態では、穀粉の総質量を100質量%とした場合、生地中の糖の割合は糖約5質量%未満であり、より好ましくは糖約4質量%未満であり、さらに好ましくは糖約3質量%未満である。
【0021】
本発明の生地を作製するにあたって、上記の材料を「ノータイム生地工程」を用いて単純に一段階で混捏するか、「中種工程(sponge and dough process)」にかけることができる。後者では、穀粉の一部(例えば、全穀粉に対して55〜75質量%)を水、酵母、そして好ましくは(使用していれば)生地強化剤と混捏し、約3から約4時間発酵させる。こうして「スポンジ(生パン)」を形成する。
上記の時間が経過してから、残りの材料を約2から約6分間スポンジと混捏する。利点として、マルトゲン性アミラーゼは便利よくスポンジ生地に混ぜ込める「プレミックス」製品の一部として提供し得る。そのようなプレミックスはマルトゲン性アミラーゼ、希釈剤、濃度調整成分、および油脂を含むのが好ましい。アミラーゼは、プレミックスの総質量を100質量%とした場合、好ましくは約2から約10質量%、より好ましくは約4から約8質量%の割合でプレミックスに加えられる。
【0022】
希釈剤は、プレミックスの総質量を100質量%とした場合、約60から約80質量%、より好ましくは約70から約80質量%の割合で提供される。適切な希釈剤の例として、穀粉(例えば、小麦粉)、でん粉、粉末乳化剤、塩、糖、流動化剤(flow agents)、およびそれらの混合物から成る群から選択されるものが挙げられる。濃度調整成分は、プレミックスの総質量を100質量%とした場合、約15から約35質量%、より好ましくは約20から約28質量%の割合で提供される。好ましい濃度調整成分の例として、硫酸カルシウム、塩、糖、およびそれらの混合物から成る群から選択されたものが挙げられる。油脂は、プレミックスの総質量を100質量%とした場合、約0.01から約3質量%、より好ましくは約0.08から約1.5質量%の割合で提供される。適切な油脂の例として、植物油(例えば、大豆油)、鉱油、ヒマワリ油、綿実油およびそれらの混合物が挙げられる。
残りの材料をそれぞれ独立にスポンジと混ぜ合わせるにせよ、プレミックスを用いるにせよ、混捏した生地を望ましい大きさの複数の塊に成形して焼き型に入れる前に、混捏した生地を約5から約15分間寝かせると好い。続いて、約40から約50℃の温度、約65から約75%の相対湿度で、約50から約70分間の時間、生地をホイロさせるのが好ましい。その後、作製する製品の種類の要する時間および温度で製品を焼成する(例えば、約190から約220℃で、約20から約30分間)。
【0023】
上述のとおり、このように高い割合のマルトゲン性アミラーゼを用いることは、最終製品において達成される属性の著しい改良を含む数々の利点をもたらす。達成された著しい改良の一つは風味の改良である。もう一つの改良は体積の拡大である。つまり、本発明に従ってベーカリー製品が作製されると、上記範囲のマルトゲン性アミラーゼを含む製品の体積は、マルトゲン性アミラーゼを含まないという以外は同一の配合物の体積よりも、少なくとも約3%、好ましくは少なくとも約4%、より好ましくは約5から約10%大きくなる。製品がパンの場合、比容は、454gの1塊のパンにおいて、少なくとも約5.5g/cc3、好ましくは約6.0g/cc3、より好ましくは少なくとも約6.5g/cc3である。体積は、業界標準の菜種置換テストによって算出される。
【0024】
本発明に従って作製されたベーカリー製品は、また、改良された圧縮性を有する、すなわち改良された貯蔵寿命を有すると言い換えられる。よって、本発明のベーカリー製品に、実施例2に記載されたパン屑圧縮応力を加えると、本発明のベーカリー製品は約150g未満の力、好ましくは約140g未満の力、より好ましくは約130g未満の力という結果を示す。さらに、実施例2に記載された接着性テストを実施すると、本発明のベーカリー製品は約−5gから約−25gの力、より好ましくは約−10gから約−20gの力という値を示す。
【0025】
最後に、上述のとおり、本発明の方法は生地の糖の割合を実質的に減少させることによって糖に関わる問題を回避しながらも、甘い製品を実現し続ける。従来技術の方法に比べて、焼成された製品の糖全体の割合は2倍を超し、特にマルトースの割合は非常に高くなる。つまり、焼成された製品のマルトースの割合は、ベーカリー製品中の乾燥固体の総質量を100質量%とした場合、少なくとも約5質量%、好ましくは少なくとも約6質量%、より好ましくは少なくとも約8質量%となる。これは、上記のとおり開始時の糖の割合が非常に低いにも関わらず、真である。生成されたマルトースは製品の内部に閉じ込められているので、甘味を付与するが、皮の色には影響しない。したがって、マルトースの生成によって、典型的な配合物に数々の変更を加えることができる。糖の減少、水の増加、酵母の割合の削減、生地強化剤および他の化学薬品の削減、あるいは場合によっては除去が可能となる。
【実施例】
【0026】
以下の実施例は、本発明に対応した好ましい方法を提示している。しかしながら、これらの実施例は実例を示すためのものであり、そこに含まれるいかなる内容も、発明全体の適用範囲を限定するものではない。
【0027】
試験方法
焼成後、パンを、内部温度が華氏100°となるまで冷まし(50分)、その質量を量り、体積を測定し、3ミルのプラスチック袋に封入し(袋1枚につき2斤)、温度が華氏72°+/−華氏2°に制御された部屋に、焼成の4日後まで貯蔵した。その時点で、複数斤のパンを一組ずつオリバーの16ブレードスライサーで25mm+/−2mmの厚さに切り、1ポンドのパン1斤につき、10枚を得た。テクスチャプロファイル分析法(TPA)を利用して中央の4枚をテストした。測定器はステーブルマイクロシステムズのテクスチャアナライザー(TA−XT2テクスチャアナライザー‐1g分解能の25kgロードセル)だった。該測定器を実行するソフトウェアはテクスチャエキスパートエキシード2.64版だった。テクスチャアナライザー上でパンのTPAを実行する設定は、以下に示す通りである。
【0028】
【表2】
【0029】
当業者はテストする製品の種類に基づいてこれらの設定を調整できることに留意する。例えば、距離(mm記載のテスト深度)はテストする製品の種類によって調整可能である。
【0030】
TA−4プローブ(直径1と1/2インチ‐38mmのアクリル製シリンダー)を用いて、グラフの選択を、X軸が時間および自動範囲となり、Y軸が力と自動範囲となるように設定した。
パン測定の手段は、テクスチャアナライザーの台上に一枚のパンを置き、プローブがその一枚のパンの略中央かつ表面から約10mm上に来るようにその一枚を配置し、テストプログラムを実行することだった。テストは接着性および圧縮性を定量化するためのグラフを産出した。具体的には、接着性または接着値は第1曲線の終端に続く負の領域であり、前記の一枚のパンからプローブを引き出すために必要な力を表す。圧縮性は6.2mmの突き刺し深度に対応する第一曲線上の力点である(25mmのパン一枚×25%圧縮‐AACCメソッド74−09)。
【0031】
(実施例1)
冷蔵したパンの風味の向上
1.パンの調製
パンの老化は4℃近辺の温度で最も早く進む。テクスチャおよび風味の劣化に対する影響が最も悪いのが、これらの条件だと一般的に考えられている。標準的な白型焼きパン配合物を、以下の中種製パン工程に従って調製した。以下の材料、すなわち9.46 lb.のパン用小麦粉(bread flour)、0.65 lb.の圧搾酵母、0.07 lb.のナトリウムステアロイルラクチラート(SSL)(EMPLEX,カンザス州レネクサのキャラバンイングリディエンツから取得)、および21℃の水4.95 lb.を、スパイラルドーフックで取り付けられた60 qt.のミキシングボールに量り分けた。材料を、標準の60クォーツ、三速、縦型のプラネタリーミキサに入れて、一速で一分、続いて二速で二分、混捏した。油を塗った生地発酵槽にこのスポンジを入れて発酵させた。スポンジの入った生地発酵槽を発酵キャビネットに入れて28℃、相対湿度84.0%で3時間発酵させた。
【0032】
続いて以下の材料、すなわち、5.09 lb.のパン用小麦粉、0.15 lb.の脱脂粉乳、0.29 lb.の塩、1.16 lb.の糖、0.067 lb.のプロピオン酸カルシウム、0.29 lb.のGMS90(25%水性水和モノグリセリド、キャラバンイングリディエンツから取得)、0.01 lb.のDEPENDOX AXC(生地改良剤、キャラバンイングリディエンズから取得)、0.29 lb.の大豆油、0.15 lb.の圧搾酵母、上記で調製したスポンジ全部、および、粉砕された氷が総質量の三分の二を占めた3.35 lb.の水を、60 qt.のミキシングボールに量り分けた。コントロールの生地はマルトゲン性アミラーゼを全く含まなかったが、テスト用の生地は、穀粉1kg当たり10,000MANU、5,000MANU、2,000MANU、1,500MANU、1,000MANUまたは0MANUのいずれかのマルトゲン性アミラーゼ活性を含んだ。使用したマルトゲン性アミラーゼは、デンマークのノボザイムズA/Sから取得したNOVAMYLだった。使用した酵素は、酵素1g当たり10,000MANUの活性を有した。上記の活性を付与するために、生地に、穀粉1kg当たり適量の酵素を加えた(例えば、穀粉1kg当たり10,000MANUを付与するために穀粉1kg当たり1gを加え、穀粉1kg当たり5,000MANUを付与するために穀粉1kg当たり0.5gを加えた)。
【0033】
生地を一速で1分間混捏し、続いて、三速でグルテンが完全に発達するまで(約5分間)混捏した。生地をそれぞれ525gの複数の塊に分けた後、手で丸めた。生地を10分間寝かせてから伸ばし、油を引いた型に置いた。生地を44℃で相対湿度が75%の中で60分間ホイロした。回転トレーオーブンの中で、216℃で20分間パンを焼成した。続いてパンをオーブンから引き出した後すぐに型から取り出し、50分間ワイヤラックで冷ました後に気密な袋に入れた。製造後1日経った新しいコントロールパンと7日経った古い「老化コントロール」とを20℃で貯蔵した。異なる割合のマルトゲン性アミラーゼを有するパンを、活性がゼロのものを含めて、テストを行うまで3℃と4℃の間で貯蔵した。
【0034】
2.パンのテスト
本実施例の項目1で調製したパンを対象として、テストを行った。白型焼きパンの消費者調査に総勢26名の未訓練パネリストが参加した。1日目、14日目および28日目にテストが行われ、各セッションで7個から8個のサンプルが使用された。パンのサンプルは厚さ1インチで円周が2と1/2インチの円盤に切り取られた。続いて、これらの円盤を気密な袋に密封し、無作為な3桁のコードのラベルを貼り付けた。サンプルは全て一斉に供し、試食の順番は評価用紙に列記された順番によって予め決めておいた。試食の順番を無作為な仕方で管理することで、偏りを除いた。サンプルとサンプルの間に無塩クラッカーと蒸留水を提供した。パネリストは、サンプルを試食する前および必要であればそれ以外にテスト中のいつでも、クラッカーと水を使って各々の口蓋を清めるよう指示された。
消費者パネルを設定するために乱塊法の完備型計画を用いた。各パネリストは各製品を無作為な順番でテストした。取得可能な最高点を9点とする9点式嗜好尺度を用いて、消費者認識属性および受け入れやすさ試験(Consumer Perceived Attribute and Acceptance testing)を行った。感覚属性は全て、JMP統計ソフトウェアを用いて分析した。分散および最小有意差の分析(ANOVA)を使用してサンプル間の統計的差異を判断した。
【0035】
図1は、異なる複数の日について、各日の複数の平均風味点を示す。生地に加わったマルトゲン性アミラーゼの量が増すと風味も向上した。穀粉1kg当たりにマルトゲン性アミラーゼを5,000MANUの割合で加えたものが、最良の味を生成した。穀粉1kg当たり10,000MANUという割合の点数が他より低かったのは、この割合のパンの柔軟性および湿り気が他と比べてずっと高かったことから、風味認識に対するテクスチャの影響によるかもしれない。10,000MANU/kgのパンは、28日間冷蔵した後、製造後1日経ったコントロールと同じ点数をつけられた。製造後7日経ったコントロールの点数は時間の経過とともに上昇した。それは、他のパンの点数が下降し始めたので、相対的な理由によるのだろう。
【0036】
図2は、甘味の認識に対するマルトゲン性アミラーゼの影響を示す。ここでも、最も高い甘味点が見られるのは、穀粉1kg当たり5,000MANUの活性度においてであった。甘味点は、添加したマルトゲン性アミラーゼの量と著しい相互関係を有していた。ここでも、10,000MANU/kgの活性度は5,000MANU/kgの活性度よりも僅かに低い点数をもたらした。パン屑のテクスチャが柔らかいため、糖の放出がそれほど速くなく、甘味の認識が低下したのであろう。甘味の認識は経時的に低下したが、マルトゲン性アミラーゼの割合が高いパンは、調査の期間を通じて製造後1日経ったコントロールよりもはるかに甘かった。
【0037】
図3は、パンのテクスチャに対するマルトゲン性アミラーゼの影響を示す。マルトゲン性アミラーゼを増量するにつれ、パンのテクスチャも向上し、穀粉1kg当たり5,000MANUの活性度に達し、製造後1日経ったコントロールよりもよいと判断された。製造後1日経ったコントロールは、28日目には、テクスチャの点数が5,000MANU/kgの活性度のものと極めて近接した。マルトゲン性アミラーゼの割合がより高いパンは、テスト期間を通じて、割合がより低いもの、または、コントロールよりもテクスチャの点数がはるかに一定していた。
【0038】
白型焼きパンの総合的な受け入れやすさは、マルトゲン性アミラーゼを加えることで向上した。活性が5,000MANU/kgのパンは、調査期間を通じて、終始一貫して総合的な受け入れやすさの点数が高いパンを形成し、28日目には、製造後1日経ったコントロールと同様の点数となった。0%マルトゲン性アミラーゼと冷蔵していない製造後7日経ったコントロールとは一貫して点数が低かった。
【0039】
(実施例2)
高い割合のマルトゲン性アミラーゼによるパンの体積の向上
穀粉1kg当たり10,000MANUのマルトゲン性アミラーゼを加えた結果として、有害な副作用を起こさずに、糖、酵母、大豆油、および生地強化剤を削減または除去し、水を増加させることが可能であることを示す試験焼成を行った。パンは、実施例1に記載した手順に従って焼成した。焼成後、本実施例のパンを全て20℃で貯蔵した後で4日目にテクスチャ分析を行った。最終焼成後の体積、柔らかさおよびパン屑の接着性に関してパンを評価した。各テストで用いた配合を表2に示した。
【0040】
【表3】
【0041】
図5はコントロールとテストパンの最終焼成後の体積を表すグラフである。業界標準の菜種置換テストを使って体積を判断した。体積差が150立方センチメートル(cc)またはパン一斤の総体積のおおよそ5%あると有意差だと考えられる。したがって、どのテストも、体積の点ではコントロールと有意差がなかった。さらに、ホイロにかかった時間がコントロールよりも著しく長いのはテスト4およびテスト10だけだった(表3参照)。したがって、変更の大半はホイロの時間に全く影響しないか、好ましいことに、ホイロを速くした。パンの形状およびパン屑の粒は、何斤かのパンの形が崩れる結果となったテスト4を除いて、全てのパンで相似していると判断された。この結果は低すぎる酵母量と削減された糖との組み合わせに起因すると考えられた。
【0042】
【表4】
【0043】
図6は各種テストを4日間実行した後のパン屑圧縮値を示す。20gの力の差は、おおよそ貯蔵寿命1日に等しく、このテストにおいて有意差だと考えられる。したがって、実行したテストは全てコントロールよりも著しく柔らかかった。
【0044】
図7は、4日経過後の各種テストの接着性への影響を示す。接着性とはパン屑の粘着度の測定値である。接着値が−5以内の範囲のパンは乾燥していると考えられる。接着値が約−25を超えるパンは過度にねばねばしているか、ゴム状であると考えられる。約−5と約−25との間の粘着性値は、個人的な嗜好に基づき受け入れやすいと判断される。したがって、コントロールおよび全てのテスト配合は、受け入れやすい接着性値のパンを生成した。
【0045】
(実施例3)
マルトゲン性アミラーゼを用いて焼成されたパンで生成された高い割合のマルトース
実施例1の配合および手順に従ってパンを作製した。コントロールはマルトゲン性アミラーゼを含まず、テストは穀粉1kg当たり10,000MANUを含有した(ここでも、NOVAMYL)。パンの含糖量を分析し、その結果を表4に示した。
【0046】
【表5】
【0047】
コントロールおよびテスト1の開始配合物は同量の糖を含んでいた。しかし、焼成後、テスト1は含まれる糖全体の量がコントロールの3倍近くであり、コントロールより著しく甘いと判断された。フルクトース甘味を基準として、フルクトースがマルトースの約3倍甘いと考えると、テスト1はコントロールに対して略2倍甘かった。
【0048】
(実施例4)
実地試験を行って、高い割合のマルトゲン性アミラーゼが各種の生地改良剤と置き換え可能か判断した。コントロールの配合は、市販のホットドッグバンの配合であり、Do Crest60(60%エトキシ化モノグリセリド、キャラバンイングリディエンツから取得)、(GMS90強度2倍の水和モノグリセリド、キャラバンイングリディエンツから取得)、ER200酵素(オンタリオ州レクスデールのラレマンドから取得)、PBR2000酵素(ラレマンドから取得)、30ppmアゾジカルボンアミド、および市販の酵素貯蔵寿命延長剤であるFB Bun Soft 3(カンザス州ニューセンチュリのダニスコから取得)を含むものである(表5参照)。テストサンプルは穀粉1kg当たり7,500MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼ(ノボザイムズA/Sから取得)を含むものだったが、エトキシ化モノグリセリド、ER200、アゾジカルボンアミド、またはFB Bun Soft 3は添加していない。表5はコントロールと比べてテスト配合物がどう変更されたかを示す。
【0049】
【表6】
【0050】
テスト生地は、Do Crest 60、ER 200、ADAおよびFB Bun Soft 3を除いてあったが、コントロールと同じ生地混捏時間と取り扱い条件で扱われた。テスト生地は、扱いやすく、加工を通じてコントロールと似た特徴を示した。最終焼成後の製品もまた、コントロールと同等の体積、パン屑気泡構造、および全体的外観を有する。テストパンは、しかし、周囲条件または冷凍条件下で貯蔵された時は、コントロールより極めて柔らかかった(図8参照)。テストパンは、また、コントロール生地よりも弾性があった(図9参照)。
【0051】
(実施例5)
実施例4のコントロールをテストして、マルトースの割合と糖全体の割合を判断した。サンプルの総質量を基準として、マルトースの割合は2.40%であり、糖全体の割合は6.23%だった。コントロールを変更して、FB Bun Soft 3をNovamyl(R)(穀粉1kgにつき7,500MANUのNovamyl)と置き換えた。コントロールとテストサンプルとの間で、その他の材料および焼成条件は全て一致していた。このサンプルでもマルトースの割合および糖全体の割合をテストしたところ、それぞれサンプルの総質量を基準として6.03%および9.69%の値だった。したがって、テストサンプルはコントロールサンプルに対して2と1/2倍の量のマルトースを有し、その糖全体の量はコントロールサンプルより50%多かった。
【技術分野】
【0001】
本発明は格別に長い貯蔵寿命、その貯蔵寿命中保持される大きく改良された風味プロファイル、著しく拡大された焼成後の体積、およびその他の利点を有する新規のベーカリー製品に広く係る。本発明はまた多量のマルトゲン性アミラーゼを用いてベーカリー製品を作製する新規の方法をも指向する。さらに、これらの特徴は、化学添加剤を用いなくても達成可能である。
【背景技術】
【0002】
生地の強化が起こる仕組みは、小麦タンパク質の共有架橋結合、繊維質からタンパク質への水の再分配、乳化剤によるでん粉の被覆、でん粉の錯化、タンパク質の錯化および粘度制御を含めて幾つかある。共有架橋結合は、多種のタンパク質を酸化させて架橋結合を形成させ、グルテンと呼ばれるタンパク質網状構造を得ることによって実現される。ジスルフィド結合、ジチロシン結合、疎水結合、イオン結合、および小麦の繊維質とタンパク質との結合を含む上記以外の何種類かの共有架橋結合および非共有架橋結合も形成され得る。形成される架橋結合の量および種類は、使用する生地強化剤の量および種類を変化させることで調整することができる。共有架橋結合と密接に関わる作用にタンパク質の錯化がある。これは、特定の乳化剤とタンパク質との間に形成される非共有架橋結合のことである。これらの架橋結合は、イオン結合および疎水結合に基づくもので、共有架橋結合と相補性がある。
生地のアラビノキシラン繊維質部分からタンパク質部分への水の再分配は、セルラーゼ酵素またはキシラナーゼ酵素を用いることによって実現される。これらの酵素が繊維質を分解すると水が放出され、その結果、水がタンパク質に転移できるようになる。タンパク質が水を奪われた状態であった場合、タンパク質というものは正常に機能するために、最低限一定量の水を必要とするので、該転移は結果として強化作用をもたらす。
でん粉の被覆およびでん粉の錯化は、専ら乳化剤によって実現される。でん粉の被覆は、生地の混捏中にでん粉顆粒の表面に乳化剤が付着することによって起こり、でん粉による水の摂取を抑制する。その結果、タンパク質への水の供給が増すとともにオーブン内でのでん粉の糊化が遅延し、粘度が低下する。乳化剤によるでん粉の錯化は、焼成中に、でん粉顆粒が膨張を開始し、アミロースを放出することによって起きる。乳化剤はアミロースを誘発して不溶性錯体を形成させ、最終焼成製品の粘度をさらに下げ、全体的な体積を向上させる。
【0003】
生地の受ける物理的な損害を小さくするために、生地の加工の初期段階で生地の粘度を最小限に抑えることも、また好ましい。ホイロ(proofing)の間に最適な粘度を維持することもまた好ましい。これにより、物理的な衝撃による生地の崩壊を十分に防ぐ構造的な剛性を持たせながら、生地を自由に膨張させることができる。最後に、生地の塊を焼成する際に好ましいのは、生地の粘度を下げ、オーブン内で最終的な膨張を起こさせることである。加工の初期段階において生地の粘度は、水および糖などの基礎材料の変更と、セルラーゼ、キシラナーゼ、およびプロテアーゼ、ならびにL−システインまたはメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤の添加とを含む多様な方法によって制御される。これらの添加剤はホイロの後期段階および焼成の初期段階にもある程度力を発揮するが、プロテアーゼは焼成の後期段階にも粘度の低下に活用できる。
【0004】
前述した生地の調整の手法はすべて幾分か補完的なもので、併用可能であるが、いずれの場合も制限はある。過剰な架橋共有結合は生地を過度に強力かつ堅固にし、結果的に、生地を、ホイロおよび焼成において膨張の乏しい、成形の難しいものとする。同様に、非共有架橋結合も、生地を、過膨張によって形の悪いベーカリー製品を形成する可能性のある、過度に強力なものとする。L−システイン、メタ重亜硫酸ナトリウム、セルラーゼ、キシラナーゼおよびプロテアーゼの利用による生地の粘度の低下は、生地を、過度にたるんでねばねばさせ、結果的に機械加工しにくくし、最終的な焼成後の特徴を劣悪なものとする。
【0005】
パンの風味の改善は、生地の改良(調整)ほど研究者に注目されてこなかった。歴史的にパンの貯蔵寿命は、配合物および工程によるが、非常に短く、わずか1〜3日間しかなかった。パンの貯蔵寿命が短くなる主な原因は、焼成工程中に糊化されたでん粉の再結晶による老化(staling)である。しかし、老化は、焼き立てパンの風味の喪失というもう一つの重要な結果をもたらす。乳化剤の使用は、パンの貯蔵寿命を2〜3日延ばした。その後、細菌性アミラーゼの使用が、結果的に貯蔵寿命を数日延ばした。やがてマルトゲン性アミラーゼが導入され、その結果、現在のパン貯蔵寿命である約3週間に至った。しかし、現在のパン配合物は、比較的軟らかく湿り気を帯びた状態を3週間維持するかもしれないが、パンの風味はそれ以前に著しく劣化する。さらに、でん粉の結晶化が風味分子を閉じ込める可能性がある。でん粉は風味分子を平等に捕獲するのではなく、非極性分子を優先的に閉じ込める。したがって、焼成された製品のでん粉結晶化後の風味は一般的に強度が低いが、非常に不均衡である可能性もある。そのため、老化したパンの風味は、時によって、苦い、酸っぱい、またはかび臭いと形容される。加えて、一般的に好ましくない、特定のかび防止剤の味がより明確になる可能性がある。
ベーカリー製品の風味を改善するための市販の製品も存在する。その一部は合成された風味であり、その最良のものとして、酵母の発酵によって生成された風味を模倣する天然調味薬品および人工調味薬品が含まれる。これらの風味は高価な可能性があり、実際の酵母の発酵の風味と合致せず、また、人工風味の表示を要する。
別の手法としては、発酵された後、乾燥されて粉末となった乳酸菌または酵母のいずれかによって、天然発酵生地を作製する方法が挙げられる。該粉末は市販されている。この手法は実用においてさらに高価で、得られるパンの風味は、乾燥工程において揮発性風味成分の多くが失われるので、天然酵母発酵による風味と合致しない。
【0006】
従来技術に関連付けられるもう一つの問題は糖の使用である。糖をパンで使用するのは、甘味を有する最終パンを産出するためである。糖は、焼成の点で好ましくない特徴を数多く有する。第一に、糖は生地に加えられた水の中で溶解し、存在する液相の量を増加させる。そのため、生地は、一定の水を生地から除かない限り、さらに湿って、ねばねばする。糖はまた一定の水と結合し、タンパク質網状構造の成長におけるその水の利用を阻む。その結果、低糖の配合物によるのと同じグルテンの成長を得るために、追加の生地強化剤が必要となる。配合が特定のパーセンテージを超えると、糖はまた酵母の発酵を阻害し始め、より高い割合の酵母を使う必要が生じる。過剰な糖は風味には好ましいが、パンの皮がオーブンの通常の温度でこげる原因にもなる。したがって、甘いパンの場合、ベーカリーは通常、オーブンの温度を下げて焼成時間を著しく増やすことで適切な皮の色を達成する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は酵母発酵型ベーカリー製品を作製する方法を広く提供する。該方法は、穀粉、糖およびマルトゲン性アミラーゼ(maltogenic amylase、マルトース生成アミラーゼ)を含有する生地を用意することを含む。糖は、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、糖約5質量%の初期量で用意される。該生地は、次に、マルトースの割合がベーカリー製品中の乾燥固体の少なくとも約5質量%のベーカリー製品を産出するのに十分な時間および温度で焼成される。
【0008】
本発明は、また、酵母発酵型ベーカリー製品を作製するのに有用な生地を提供する。該生地は、穀粉、酵母および水を含有し、その改良点は、生地が、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、約5質量%未満の糖と、穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼとを含む点である。
【0009】
もう一つの実施形態で、生地は以下の材料、すなわち、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、エトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満と、穀粉の質量を基準とした、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド、および過酸化カルシウムの各物質をそれぞれ約15ppm未満と、少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼとを含む。
【0010】
本発明は、また、穀粉、酵母および水で作製された酵母発酵型ベーカリー製品を指向する。この実施形態において、改良点は、製品が、穀粉の質量を基準とした少なくとも約500ppmの不活化マルトゲン性アミラーゼと、ベーカリー製品中の乾燥固体の質量を基準とした、少なくとも約5質量%のマルトースとを含む点である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は風味の知覚におけるマルトゲン性アミラーゼの影響を表すグラフである。
【図2】図2は甘味の知覚におけるマルトゲン性アミラーゼの影響を表すグラフである。
【図3】図3はパンのテクスチャ(外観)におけるマルトゲン性アミラーゼの影響を表すグラフである。
【図4】図4はパンの総合的な受け入れやすさに対するマルトゲン性アミラーゼの影響を表すグラフである。
【図5】図5は幾つかのパンのサンプルについてその平均体積値をコントロールと比較して規定するグラフである。
【図6】図6は幾つかのパンのサンプルについてその平均パン屑圧縮値をコントロールと比較して表すグラフである。
【図7】図7は幾つかのパンのサンプルについてその平均パン屑接着値をコントロールと比較して表すグラフである。
【図8】図8は本発明のパンの柔らかさをコントロールのサンプルと比較して表すグラフである。
【図9】図9は本発明のパンの弾性をコントロールのサンプルと比較して表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳述すると、本発明は新規の生地配合物とともに、これらの配合物によって酵母発酵型ベーカリー製品および他のベーカリー製品を作製する新規の方法に係る。該製品としては、パン、プレッツェル、イングリッシュマフィン、バン(小型パン)、ロールパン、トルティーヤ(トウモロコシおよび穀粉のもの)、ピザ生地、ベーグルおよびクランペットから成る群から選択されるものが挙げられる。
【0013】
本発明の方法において、特定の製品に対応する複数の材料が混ぜ合わせられる。該材料とそれらの好ましい範囲を表1に記載する。
【0014】
【表1】
* 質量に基づくパーセンテージまたは穀粉100 lb.を基準にしたppm
【0015】
酵母は酵母発酵型ベーカリー製品で従来用いられた酵母であれば何でもよいが、好ましいのは圧搾酵母である。好ましい生地強化剤としては、ナトリウムステアロイルラクチラート、エトキシ化モノグリセリド、モノジグリセリドおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、ならびにそれらの混合物から成る群から選択されたものが挙げられる。
【0016】
糖は、スクロースおよび高フルクトースコーンシロップを含む、ベーカリー製品で用いられる一般的な糖であれば何でもよい。
【0017】
好ましいかび防止剤としては、プロピオン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、酢、濃縮レーズンジュース、およびそれらの混合物から成る群から選択されたものが挙げられる。好ましい油脂は、大豆油、部分的に水素添加された大豆油、ラード、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、カノーラ油、およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0018】
適切な穀粉改良剤としては、アスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、過酸化カルシウム、およびそれらの混合物から成る群から選択されたものが挙げられる。従来の乳化剤なら何を利用してもよいが、好ましい乳化剤としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(通常、ポリソルベート60と呼ばれる)、ならびに水和モノグリセリド、シトリル化モノグリセリドおよびスクシニル化モノグリセリドなどのモノグリセリド類が挙げられる。
【0019】
細菌性アミラーゼは、約80℃から約90℃の間で不活化され、それらの温度以下ででん粉の分解が進むようなものが好ましい。最も好ましいアミラーゼはマルトゲン性アミラーゼであり、より好ましくはマルトゲン性α‐アミラーゼであり、さらに好ましくはマルトゲン性α‐エキソアミラーゼである。そのようなアミラーゼのうち最も好ましいものは、ノボザイムズA/SによってNOVAMYLという商品名で販売されており、引用によって本願に組み込まれる米国特許第RE38,507号に記載されている。このマルトゲン性アミラーゼは、バチルス株NCIB 11837によって生成可能であるか、またはバチルス株11837由来のDNA配列でエンコードされたものである(マルトゲン性アミラーゼは、内容が引用により本願に組み込まれる米国特許第4,598,048号および米国特許第4,604,355号に開示されている)。本工程で利用し得るもう一つのマルトゲン性アミラーゼは、バチルス株NCIB 11608によって生成可能なマルトゲン性β‐アミラーゼである(内容が引用によって本願に組み込まれる欧州特許第234858号に開示されている)。
本発明に含み得るマルトゲン性アミラーゼ以外の他の酵素としては、菌類アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アスパラギナーゼ、およびセルラーゼから成る群から選択されるものが挙げられる。
【0020】
含まれるマルトゲン性アミラーゼの割合は、既存の製品と比べて極めて高い。本実施形態では、アミラーゼは100 lb.の穀粉を基準として、少なくとも約500ppm、好ましくは約750ppmから約4,000ppm、より好ましくは約1,500ppmから約3,500ppm、さらに好ましくは約2,500から約3,000ppmの割合で含まれる。また、アミラーゼの割合は少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANU、より好ましくは穀粉1kg当たり約5,000から約30,000MANU、さらに好ましくは穀粉1kg当たり約5,000から約10,000MANUの活性度で存在する。本願で使用するにあたって、1MANU(マルトゲン性アミラーゼノボ単位)の定義を、pHを5.0とし、37℃で30分間、0.1Mクエン酸緩衝剤1mlに対して10mgのマルトトリオース(SigmaM8378)基質の濃度で、1分間に1μモルのマルトースを放出するのに必要な酵素の量と定める。
このような高い割合でマルトゲン性アミラーゼを用いることによって、ここに記載する、多数の際立った利点が得られる。例えば、高い割合でマルトゲン性アミラーゼを用いることで、産業で一般的に用いられる他の材料の用量を大幅に削減するか、さらに好ましくは生地配合物から除去することが可能となる。一実施形態においては、ナトリウムステアロイルラクチラートなどの生地強化剤が、穀粉の総質量を100質量%とした場合、約0.2質量%未満、より好ましくは約0質量%の割合で含まれる。さらに別の実施形態では、生地は、穀粉の総質量を基準として、約5ppm未満のアゾジカルボンアミド、より好ましくは約0ppmのアゾジカルボンアミドを含む。より好ましくは、生地は、これら低い割合の(または存在しない)生地強化剤およびアゾジカルボンアミドの両方を高い割合のマルトゲン性アミラーゼと合わせて用いる。さらに好ましい実施形態では、生地はまたエトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、酢およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満(より好ましくは0%)、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド、および過酸化カルシウムの各物質をそれぞれ約15ppm未満(より好ましくは0ppm)有する。
利点として、マルトゲン性アミラーゼの割合が高いことは、非常に低糖でありながら、非常に甘い製品を形成する生地配合物を可能にし、その詳細は以下に記載する通りである。本実施形態では、穀粉の総質量を100質量%とした場合、生地中の糖の割合は糖約5質量%未満であり、より好ましくは糖約4質量%未満であり、さらに好ましくは糖約3質量%未満である。
【0021】
本発明の生地を作製するにあたって、上記の材料を「ノータイム生地工程」を用いて単純に一段階で混捏するか、「中種工程(sponge and dough process)」にかけることができる。後者では、穀粉の一部(例えば、全穀粉に対して55〜75質量%)を水、酵母、そして好ましくは(使用していれば)生地強化剤と混捏し、約3から約4時間発酵させる。こうして「スポンジ(生パン)」を形成する。
上記の時間が経過してから、残りの材料を約2から約6分間スポンジと混捏する。利点として、マルトゲン性アミラーゼは便利よくスポンジ生地に混ぜ込める「プレミックス」製品の一部として提供し得る。そのようなプレミックスはマルトゲン性アミラーゼ、希釈剤、濃度調整成分、および油脂を含むのが好ましい。アミラーゼは、プレミックスの総質量を100質量%とした場合、好ましくは約2から約10質量%、より好ましくは約4から約8質量%の割合でプレミックスに加えられる。
【0022】
希釈剤は、プレミックスの総質量を100質量%とした場合、約60から約80質量%、より好ましくは約70から約80質量%の割合で提供される。適切な希釈剤の例として、穀粉(例えば、小麦粉)、でん粉、粉末乳化剤、塩、糖、流動化剤(flow agents)、およびそれらの混合物から成る群から選択されるものが挙げられる。濃度調整成分は、プレミックスの総質量を100質量%とした場合、約15から約35質量%、より好ましくは約20から約28質量%の割合で提供される。好ましい濃度調整成分の例として、硫酸カルシウム、塩、糖、およびそれらの混合物から成る群から選択されたものが挙げられる。油脂は、プレミックスの総質量を100質量%とした場合、約0.01から約3質量%、より好ましくは約0.08から約1.5質量%の割合で提供される。適切な油脂の例として、植物油(例えば、大豆油)、鉱油、ヒマワリ油、綿実油およびそれらの混合物が挙げられる。
残りの材料をそれぞれ独立にスポンジと混ぜ合わせるにせよ、プレミックスを用いるにせよ、混捏した生地を望ましい大きさの複数の塊に成形して焼き型に入れる前に、混捏した生地を約5から約15分間寝かせると好い。続いて、約40から約50℃の温度、約65から約75%の相対湿度で、約50から約70分間の時間、生地をホイロさせるのが好ましい。その後、作製する製品の種類の要する時間および温度で製品を焼成する(例えば、約190から約220℃で、約20から約30分間)。
【0023】
上述のとおり、このように高い割合のマルトゲン性アミラーゼを用いることは、最終製品において達成される属性の著しい改良を含む数々の利点をもたらす。達成された著しい改良の一つは風味の改良である。もう一つの改良は体積の拡大である。つまり、本発明に従ってベーカリー製品が作製されると、上記範囲のマルトゲン性アミラーゼを含む製品の体積は、マルトゲン性アミラーゼを含まないという以外は同一の配合物の体積よりも、少なくとも約3%、好ましくは少なくとも約4%、より好ましくは約5から約10%大きくなる。製品がパンの場合、比容は、454gの1塊のパンにおいて、少なくとも約5.5g/cc3、好ましくは約6.0g/cc3、より好ましくは少なくとも約6.5g/cc3である。体積は、業界標準の菜種置換テストによって算出される。
【0024】
本発明に従って作製されたベーカリー製品は、また、改良された圧縮性を有する、すなわち改良された貯蔵寿命を有すると言い換えられる。よって、本発明のベーカリー製品に、実施例2に記載されたパン屑圧縮応力を加えると、本発明のベーカリー製品は約150g未満の力、好ましくは約140g未満の力、より好ましくは約130g未満の力という結果を示す。さらに、実施例2に記載された接着性テストを実施すると、本発明のベーカリー製品は約−5gから約−25gの力、より好ましくは約−10gから約−20gの力という値を示す。
【0025】
最後に、上述のとおり、本発明の方法は生地の糖の割合を実質的に減少させることによって糖に関わる問題を回避しながらも、甘い製品を実現し続ける。従来技術の方法に比べて、焼成された製品の糖全体の割合は2倍を超し、特にマルトースの割合は非常に高くなる。つまり、焼成された製品のマルトースの割合は、ベーカリー製品中の乾燥固体の総質量を100質量%とした場合、少なくとも約5質量%、好ましくは少なくとも約6質量%、より好ましくは少なくとも約8質量%となる。これは、上記のとおり開始時の糖の割合が非常に低いにも関わらず、真である。生成されたマルトースは製品の内部に閉じ込められているので、甘味を付与するが、皮の色には影響しない。したがって、マルトースの生成によって、典型的な配合物に数々の変更を加えることができる。糖の減少、水の増加、酵母の割合の削減、生地強化剤および他の化学薬品の削減、あるいは場合によっては除去が可能となる。
【実施例】
【0026】
以下の実施例は、本発明に対応した好ましい方法を提示している。しかしながら、これらの実施例は実例を示すためのものであり、そこに含まれるいかなる内容も、発明全体の適用範囲を限定するものではない。
【0027】
試験方法
焼成後、パンを、内部温度が華氏100°となるまで冷まし(50分)、その質量を量り、体積を測定し、3ミルのプラスチック袋に封入し(袋1枚につき2斤)、温度が華氏72°+/−華氏2°に制御された部屋に、焼成の4日後まで貯蔵した。その時点で、複数斤のパンを一組ずつオリバーの16ブレードスライサーで25mm+/−2mmの厚さに切り、1ポンドのパン1斤につき、10枚を得た。テクスチャプロファイル分析法(TPA)を利用して中央の4枚をテストした。測定器はステーブルマイクロシステムズのテクスチャアナライザー(TA−XT2テクスチャアナライザー‐1g分解能の25kgロードセル)だった。該測定器を実行するソフトウェアはテクスチャエキスパートエキシード2.64版だった。テクスチャアナライザー上でパンのTPAを実行する設定は、以下に示す通りである。
【0028】
【表2】
【0029】
当業者はテストする製品の種類に基づいてこれらの設定を調整できることに留意する。例えば、距離(mm記載のテスト深度)はテストする製品の種類によって調整可能である。
【0030】
TA−4プローブ(直径1と1/2インチ‐38mmのアクリル製シリンダー)を用いて、グラフの選択を、X軸が時間および自動範囲となり、Y軸が力と自動範囲となるように設定した。
パン測定の手段は、テクスチャアナライザーの台上に一枚のパンを置き、プローブがその一枚のパンの略中央かつ表面から約10mm上に来るようにその一枚を配置し、テストプログラムを実行することだった。テストは接着性および圧縮性を定量化するためのグラフを産出した。具体的には、接着性または接着値は第1曲線の終端に続く負の領域であり、前記の一枚のパンからプローブを引き出すために必要な力を表す。圧縮性は6.2mmの突き刺し深度に対応する第一曲線上の力点である(25mmのパン一枚×25%圧縮‐AACCメソッド74−09)。
【0031】
(実施例1)
冷蔵したパンの風味の向上
1.パンの調製
パンの老化は4℃近辺の温度で最も早く進む。テクスチャおよび風味の劣化に対する影響が最も悪いのが、これらの条件だと一般的に考えられている。標準的な白型焼きパン配合物を、以下の中種製パン工程に従って調製した。以下の材料、すなわち9.46 lb.のパン用小麦粉(bread flour)、0.65 lb.の圧搾酵母、0.07 lb.のナトリウムステアロイルラクチラート(SSL)(EMPLEX,カンザス州レネクサのキャラバンイングリディエンツから取得)、および21℃の水4.95 lb.を、スパイラルドーフックで取り付けられた60 qt.のミキシングボールに量り分けた。材料を、標準の60クォーツ、三速、縦型のプラネタリーミキサに入れて、一速で一分、続いて二速で二分、混捏した。油を塗った生地発酵槽にこのスポンジを入れて発酵させた。スポンジの入った生地発酵槽を発酵キャビネットに入れて28℃、相対湿度84.0%で3時間発酵させた。
【0032】
続いて以下の材料、すなわち、5.09 lb.のパン用小麦粉、0.15 lb.の脱脂粉乳、0.29 lb.の塩、1.16 lb.の糖、0.067 lb.のプロピオン酸カルシウム、0.29 lb.のGMS90(25%水性水和モノグリセリド、キャラバンイングリディエンツから取得)、0.01 lb.のDEPENDOX AXC(生地改良剤、キャラバンイングリディエンズから取得)、0.29 lb.の大豆油、0.15 lb.の圧搾酵母、上記で調製したスポンジ全部、および、粉砕された氷が総質量の三分の二を占めた3.35 lb.の水を、60 qt.のミキシングボールに量り分けた。コントロールの生地はマルトゲン性アミラーゼを全く含まなかったが、テスト用の生地は、穀粉1kg当たり10,000MANU、5,000MANU、2,000MANU、1,500MANU、1,000MANUまたは0MANUのいずれかのマルトゲン性アミラーゼ活性を含んだ。使用したマルトゲン性アミラーゼは、デンマークのノボザイムズA/Sから取得したNOVAMYLだった。使用した酵素は、酵素1g当たり10,000MANUの活性を有した。上記の活性を付与するために、生地に、穀粉1kg当たり適量の酵素を加えた(例えば、穀粉1kg当たり10,000MANUを付与するために穀粉1kg当たり1gを加え、穀粉1kg当たり5,000MANUを付与するために穀粉1kg当たり0.5gを加えた)。
【0033】
生地を一速で1分間混捏し、続いて、三速でグルテンが完全に発達するまで(約5分間)混捏した。生地をそれぞれ525gの複数の塊に分けた後、手で丸めた。生地を10分間寝かせてから伸ばし、油を引いた型に置いた。生地を44℃で相対湿度が75%の中で60分間ホイロした。回転トレーオーブンの中で、216℃で20分間パンを焼成した。続いてパンをオーブンから引き出した後すぐに型から取り出し、50分間ワイヤラックで冷ました後に気密な袋に入れた。製造後1日経った新しいコントロールパンと7日経った古い「老化コントロール」とを20℃で貯蔵した。異なる割合のマルトゲン性アミラーゼを有するパンを、活性がゼロのものを含めて、テストを行うまで3℃と4℃の間で貯蔵した。
【0034】
2.パンのテスト
本実施例の項目1で調製したパンを対象として、テストを行った。白型焼きパンの消費者調査に総勢26名の未訓練パネリストが参加した。1日目、14日目および28日目にテストが行われ、各セッションで7個から8個のサンプルが使用された。パンのサンプルは厚さ1インチで円周が2と1/2インチの円盤に切り取られた。続いて、これらの円盤を気密な袋に密封し、無作為な3桁のコードのラベルを貼り付けた。サンプルは全て一斉に供し、試食の順番は評価用紙に列記された順番によって予め決めておいた。試食の順番を無作為な仕方で管理することで、偏りを除いた。サンプルとサンプルの間に無塩クラッカーと蒸留水を提供した。パネリストは、サンプルを試食する前および必要であればそれ以外にテスト中のいつでも、クラッカーと水を使って各々の口蓋を清めるよう指示された。
消費者パネルを設定するために乱塊法の完備型計画を用いた。各パネリストは各製品を無作為な順番でテストした。取得可能な最高点を9点とする9点式嗜好尺度を用いて、消費者認識属性および受け入れやすさ試験(Consumer Perceived Attribute and Acceptance testing)を行った。感覚属性は全て、JMP統計ソフトウェアを用いて分析した。分散および最小有意差の分析(ANOVA)を使用してサンプル間の統計的差異を判断した。
【0035】
図1は、異なる複数の日について、各日の複数の平均風味点を示す。生地に加わったマルトゲン性アミラーゼの量が増すと風味も向上した。穀粉1kg当たりにマルトゲン性アミラーゼを5,000MANUの割合で加えたものが、最良の味を生成した。穀粉1kg当たり10,000MANUという割合の点数が他より低かったのは、この割合のパンの柔軟性および湿り気が他と比べてずっと高かったことから、風味認識に対するテクスチャの影響によるかもしれない。10,000MANU/kgのパンは、28日間冷蔵した後、製造後1日経ったコントロールと同じ点数をつけられた。製造後7日経ったコントロールの点数は時間の経過とともに上昇した。それは、他のパンの点数が下降し始めたので、相対的な理由によるのだろう。
【0036】
図2は、甘味の認識に対するマルトゲン性アミラーゼの影響を示す。ここでも、最も高い甘味点が見られるのは、穀粉1kg当たり5,000MANUの活性度においてであった。甘味点は、添加したマルトゲン性アミラーゼの量と著しい相互関係を有していた。ここでも、10,000MANU/kgの活性度は5,000MANU/kgの活性度よりも僅かに低い点数をもたらした。パン屑のテクスチャが柔らかいため、糖の放出がそれほど速くなく、甘味の認識が低下したのであろう。甘味の認識は経時的に低下したが、マルトゲン性アミラーゼの割合が高いパンは、調査の期間を通じて製造後1日経ったコントロールよりもはるかに甘かった。
【0037】
図3は、パンのテクスチャに対するマルトゲン性アミラーゼの影響を示す。マルトゲン性アミラーゼを増量するにつれ、パンのテクスチャも向上し、穀粉1kg当たり5,000MANUの活性度に達し、製造後1日経ったコントロールよりもよいと判断された。製造後1日経ったコントロールは、28日目には、テクスチャの点数が5,000MANU/kgの活性度のものと極めて近接した。マルトゲン性アミラーゼの割合がより高いパンは、テスト期間を通じて、割合がより低いもの、または、コントロールよりもテクスチャの点数がはるかに一定していた。
【0038】
白型焼きパンの総合的な受け入れやすさは、マルトゲン性アミラーゼを加えることで向上した。活性が5,000MANU/kgのパンは、調査期間を通じて、終始一貫して総合的な受け入れやすさの点数が高いパンを形成し、28日目には、製造後1日経ったコントロールと同様の点数となった。0%マルトゲン性アミラーゼと冷蔵していない製造後7日経ったコントロールとは一貫して点数が低かった。
【0039】
(実施例2)
高い割合のマルトゲン性アミラーゼによるパンの体積の向上
穀粉1kg当たり10,000MANUのマルトゲン性アミラーゼを加えた結果として、有害な副作用を起こさずに、糖、酵母、大豆油、および生地強化剤を削減または除去し、水を増加させることが可能であることを示す試験焼成を行った。パンは、実施例1に記載した手順に従って焼成した。焼成後、本実施例のパンを全て20℃で貯蔵した後で4日目にテクスチャ分析を行った。最終焼成後の体積、柔らかさおよびパン屑の接着性に関してパンを評価した。各テストで用いた配合を表2に示した。
【0040】
【表3】
【0041】
図5はコントロールとテストパンの最終焼成後の体積を表すグラフである。業界標準の菜種置換テストを使って体積を判断した。体積差が150立方センチメートル(cc)またはパン一斤の総体積のおおよそ5%あると有意差だと考えられる。したがって、どのテストも、体積の点ではコントロールと有意差がなかった。さらに、ホイロにかかった時間がコントロールよりも著しく長いのはテスト4およびテスト10だけだった(表3参照)。したがって、変更の大半はホイロの時間に全く影響しないか、好ましいことに、ホイロを速くした。パンの形状およびパン屑の粒は、何斤かのパンの形が崩れる結果となったテスト4を除いて、全てのパンで相似していると判断された。この結果は低すぎる酵母量と削減された糖との組み合わせに起因すると考えられた。
【0042】
【表4】
【0043】
図6は各種テストを4日間実行した後のパン屑圧縮値を示す。20gの力の差は、おおよそ貯蔵寿命1日に等しく、このテストにおいて有意差だと考えられる。したがって、実行したテストは全てコントロールよりも著しく柔らかかった。
【0044】
図7は、4日経過後の各種テストの接着性への影響を示す。接着性とはパン屑の粘着度の測定値である。接着値が−5以内の範囲のパンは乾燥していると考えられる。接着値が約−25を超えるパンは過度にねばねばしているか、ゴム状であると考えられる。約−5と約−25との間の粘着性値は、個人的な嗜好に基づき受け入れやすいと判断される。したがって、コントロールおよび全てのテスト配合は、受け入れやすい接着性値のパンを生成した。
【0045】
(実施例3)
マルトゲン性アミラーゼを用いて焼成されたパンで生成された高い割合のマルトース
実施例1の配合および手順に従ってパンを作製した。コントロールはマルトゲン性アミラーゼを含まず、テストは穀粉1kg当たり10,000MANUを含有した(ここでも、NOVAMYL)。パンの含糖量を分析し、その結果を表4に示した。
【0046】
【表5】
【0047】
コントロールおよびテスト1の開始配合物は同量の糖を含んでいた。しかし、焼成後、テスト1は含まれる糖全体の量がコントロールの3倍近くであり、コントロールより著しく甘いと判断された。フルクトース甘味を基準として、フルクトースがマルトースの約3倍甘いと考えると、テスト1はコントロールに対して略2倍甘かった。
【0048】
(実施例4)
実地試験を行って、高い割合のマルトゲン性アミラーゼが各種の生地改良剤と置き換え可能か判断した。コントロールの配合は、市販のホットドッグバンの配合であり、Do Crest60(60%エトキシ化モノグリセリド、キャラバンイングリディエンツから取得)、(GMS90強度2倍の水和モノグリセリド、キャラバンイングリディエンツから取得)、ER200酵素(オンタリオ州レクスデールのラレマンドから取得)、PBR2000酵素(ラレマンドから取得)、30ppmアゾジカルボンアミド、および市販の酵素貯蔵寿命延長剤であるFB Bun Soft 3(カンザス州ニューセンチュリのダニスコから取得)を含むものである(表5参照)。テストサンプルは穀粉1kg当たり7,500MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼ(ノボザイムズA/Sから取得)を含むものだったが、エトキシ化モノグリセリド、ER200、アゾジカルボンアミド、またはFB Bun Soft 3は添加していない。表5はコントロールと比べてテスト配合物がどう変更されたかを示す。
【0049】
【表6】
【0050】
テスト生地は、Do Crest 60、ER 200、ADAおよびFB Bun Soft 3を除いてあったが、コントロールと同じ生地混捏時間と取り扱い条件で扱われた。テスト生地は、扱いやすく、加工を通じてコントロールと似た特徴を示した。最終焼成後の製品もまた、コントロールと同等の体積、パン屑気泡構造、および全体的外観を有する。テストパンは、しかし、周囲条件または冷凍条件下で貯蔵された時は、コントロールより極めて柔らかかった(図8参照)。テストパンは、また、コントロール生地よりも弾性があった(図9参照)。
【0051】
(実施例5)
実施例4のコントロールをテストして、マルトースの割合と糖全体の割合を判断した。サンプルの総質量を基準として、マルトースの割合は2.40%であり、糖全体の割合は6.23%だった。コントロールを変更して、FB Bun Soft 3をNovamyl(R)(穀粉1kgにつき7,500MANUのNovamyl)と置き換えた。コントロールとテストサンプルとの間で、その他の材料および焼成条件は全て一致していた。このサンプルでもマルトースの割合および糖全体の割合をテストしたところ、それぞれサンプルの総質量を基準として6.03%および9.69%の値だった。したがって、テストサンプルはコントロールサンプルに対して2と1/2倍の量のマルトースを有し、その糖全体の量はコントロールサンプルより50%多かった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母発酵型ベーカリー製品または他のベーカリー製品を作製する作製方法であって、
穀粉と、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、約5質量%未満の糖と、マルトゲン性アミラーゼとを含む生地を提供する工程と、
マルトースの最終量がベーカリー製品中の乾燥固体の少なくとも約5%であるベーカリー製品を産出するのに十分な時間および温度で生地を焼成する工程とを含む作製方法。
【請求項2】
前記マルトゲン性アミラーゼが、少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合で存在する請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
前記マルトゲン性アミラーゼが、穀粉100 lbを基準として、少なくとも約500ppmの割合で存在する請求項1に記載の作製方法。
【請求項4】
前記マルトースの最終量が、ベーカリー製品中の乾燥固体の少なくとも約6%である請求項1に記載の作製方法。
【請求項5】
さらに、焼成する工程の前に前記生地をホイロする工程を含む請求項1に記載の作製方法。
【請求項6】
前記生地がさらに酵母、生地強化剤、かび防止剤、油脂、穀粉改良剤、アゾジカルボンアミド、乳化剤、および水を含む請求項1に記載の作製方法。
【請求項7】
前記生地が、
穀粉の総質量を100質量%とした場合に、約0.2質量%未満の生地強化剤と、
0ppmのアゾジカルボンアミドとを含む請求項1に記載の作製方法。
【請求項8】
前記製品が、パン屑圧縮応力の結果として約150g未満の力を産出する請求項1に記載の作製方法。
【請求項9】
前記製品が、接着値として約−5gの力から約−25gの力を産出する請求項1に記載の作製方法。
【請求項10】
前記製品がパンであり、前記パンの比容が、454gの1塊のパンにおいて少なくとも約5.5g/cc3である請求項1に記載の作製方法。
【請求項11】
前記マルトゲン性アミラーゼが、バチルス株NCIB 11837によって生成されるか、バチルス株NCIB 11837由来のDNA配列によってエンコードされる請求項1に記載の作製方法。
【請求項12】
酵母発酵型ベーカリー製品を作製する際に有用で、穀粉、酵母、および水を含む生地であって、その改良点は、前記生地が、
穀粉の総質量を100質量%とした場合に約5質量%未満の糖と、
少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼとを含む点である。
【請求項13】
前記生地が、穀粉の総質量を100%とした場合に、エトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、酢、およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満含む請求項12に記載の生地。
【請求項14】
前記生地が、穀粉の質量を基準として、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド、および過酸化カルシウムの各物質をそれぞれ約15ppm未満含む請求項12に記載の生地。
【請求項15】
前記マルトゲン性アミラーゼが、バチルス株NCIB 11837によって生成されるか、バチルス株NCIB 11837由来のDNA配列によってエンコードされる請求項12に記載の生地。
【請求項16】
穀粉、酵母、および水によって作製される酵母発酵型ベーカリー製品であって、その改良点は、前記製品が、
穀粉の質量を基準として、少なくとも約500ppmの不活化マルトゲン性アミラーゼと、
ベーカリー製品中の乾燥固体の質量を基準として、少なくとも約5質量%のマルトースとを含む点である。
【請求項17】
前記製品が、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、エトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、酢、およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満含む請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項18】
前記製品が、パン屑圧縮応力の結果として約150g未満の力を産出する請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項19】
前記製品が、接着値として約−5gの力から約−25gの力を産出する請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項20】
前記ベーカリー製品がパンであり、前記パンの比容が、454gの1塊のパンにおいて少なくとも約5.5g/cc3である請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項21】
前記マルトゲン性アミラーゼが、バチルス株NCIB 11837によって生成されるか、バチルス株NCIB 11837由来のDNA配列によってエンコードされる請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項22】
酵母発酵型ベーカリー製品を作製する際に有用で、穀粉、酵母、および水を含む生地であって、その改良点は、前記生地が、
穀粉の総質量を100質量%とした場合に、エトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満と、
穀粉の質量を基準として、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド、および過酸化カルシウムの各物質をそれぞれ約15ppm未満と、
少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼとを含む点である。
【請求項23】
前記マルトゲン性アミラーゼが、バチルス株NCIB 11837によって生成されるか、バチルス株NCIB 11837由来のDNA配列によってエンコードされる請求項22に記載の生地。
【請求項1】
酵母発酵型ベーカリー製品または他のベーカリー製品を作製する作製方法であって、
穀粉と、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、約5質量%未満の糖と、マルトゲン性アミラーゼとを含む生地を提供する工程と、
マルトースの最終量がベーカリー製品中の乾燥固体の少なくとも約5%であるベーカリー製品を産出するのに十分な時間および温度で生地を焼成する工程とを含む作製方法。
【請求項2】
前記マルトゲン性アミラーゼが、少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合で存在する請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
前記マルトゲン性アミラーゼが、穀粉100 lbを基準として、少なくとも約500ppmの割合で存在する請求項1に記載の作製方法。
【請求項4】
前記マルトースの最終量が、ベーカリー製品中の乾燥固体の少なくとも約6%である請求項1に記載の作製方法。
【請求項5】
さらに、焼成する工程の前に前記生地をホイロする工程を含む請求項1に記載の作製方法。
【請求項6】
前記生地がさらに酵母、生地強化剤、かび防止剤、油脂、穀粉改良剤、アゾジカルボンアミド、乳化剤、および水を含む請求項1に記載の作製方法。
【請求項7】
前記生地が、
穀粉の総質量を100質量%とした場合に、約0.2質量%未満の生地強化剤と、
0ppmのアゾジカルボンアミドとを含む請求項1に記載の作製方法。
【請求項8】
前記製品が、パン屑圧縮応力の結果として約150g未満の力を産出する請求項1に記載の作製方法。
【請求項9】
前記製品が、接着値として約−5gの力から約−25gの力を産出する請求項1に記載の作製方法。
【請求項10】
前記製品がパンであり、前記パンの比容が、454gの1塊のパンにおいて少なくとも約5.5g/cc3である請求項1に記載の作製方法。
【請求項11】
前記マルトゲン性アミラーゼが、バチルス株NCIB 11837によって生成されるか、バチルス株NCIB 11837由来のDNA配列によってエンコードされる請求項1に記載の作製方法。
【請求項12】
酵母発酵型ベーカリー製品を作製する際に有用で、穀粉、酵母、および水を含む生地であって、その改良点は、前記生地が、
穀粉の総質量を100質量%とした場合に約5質量%未満の糖と、
少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼとを含む点である。
【請求項13】
前記生地が、穀粉の総質量を100%とした場合に、エトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、酢、およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満含む請求項12に記載の生地。
【請求項14】
前記生地が、穀粉の質量を基準として、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド、および過酸化カルシウムの各物質をそれぞれ約15ppm未満含む請求項12に記載の生地。
【請求項15】
前記マルトゲン性アミラーゼが、バチルス株NCIB 11837によって生成されるか、バチルス株NCIB 11837由来のDNA配列によってエンコードされる請求項12に記載の生地。
【請求項16】
穀粉、酵母、および水によって作製される酵母発酵型ベーカリー製品であって、その改良点は、前記製品が、
穀粉の質量を基準として、少なくとも約500ppmの不活化マルトゲン性アミラーゼと、
ベーカリー製品中の乾燥固体の質量を基準として、少なくとも約5質量%のマルトースとを含む点である。
【請求項17】
前記製品が、穀粉の総質量を100質量%とした場合に、エトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、酢、およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満含む請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項18】
前記製品が、パン屑圧縮応力の結果として約150g未満の力を産出する請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項19】
前記製品が、接着値として約−5gの力から約−25gの力を産出する請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項20】
前記ベーカリー製品がパンであり、前記パンの比容が、454gの1塊のパンにおいて少なくとも約5.5g/cc3である請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項21】
前記マルトゲン性アミラーゼが、バチルス株NCIB 11837によって生成されるか、バチルス株NCIB 11837由来のDNA配列によってエンコードされる請求項16に記載のベーカリー製品。
【請求項22】
酵母発酵型ベーカリー製品を作製する際に有用で、穀粉、酵母、および水を含む生地であって、その改良点は、前記生地が、
穀粉の総質量を100質量%とした場合に、エトキシ化モノグリセリド、DATEM、カルシウムステアロイルラクチラート、およびナトリウムステアロイルラクチラートの各物質をそれぞれ約0.15質量%未満と、
穀粉の質量を基準として、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカルボンアミド、および過酸化カルシウムの各物質をそれぞれ約15ppm未満と、
少なくとも穀粉1kg当たり約3,000MANUの割合のマルトゲン性アミラーゼとを含む点である。
【請求項23】
前記マルトゲン性アミラーゼが、バチルス株NCIB 11837によって生成されるか、バチルス株NCIB 11837由来のDNA配列によってエンコードされる請求項22に記載の生地。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2011−521668(P2011−521668A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512437(P2011−512437)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/071620
【国際公開番号】WO2009/148467
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(509346106)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/071620
【国際公開番号】WO2009/148467
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(509346106)
【Fターム(参考)】
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