説明

ベーカリー食品用上掛け組成物及びこれを使用したベーカリー食品

【課題】本発明は、低甘味で様々な味付けができ、また光沢が持続し、ドーナツ、パン等のベーカリー食品の乾燥を防ぐベーカリー食品用上掛け組成物及びこれを使用したベーカリー食品を提供することを目的とする。
【解決手段】κ-カラギーナン0.4〜1.2質量%及び水溶性固形分を含むことを特徴とするベーカリー食品用上掛け組成物である。 また前記ベーカリー食品用上掛け組成物で被覆したことを特徴とするベーカリー食品である。
【効果】低甘味で様々な味付けができ、また光沢が持続し、ドーナツ、パン等のベーカリー食品の乾燥を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベーカリー食品用上掛け組成物及びこれを使用したベーカリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツ、パン等のベーカリー食品の仕上げとして表面を高濃度の糖水溶液等で被覆する方法が行われている。
この方法には、ドーナツ、パン等に光沢を与えて外観上の商品価値を上げる他、味付け、乾燥防止等の効果がある。
この方法に使用する素材は「アイシング」と総称され、ドーナツに多用されるグレーズ(グラス)等多くの種類がある。
例えば、油脂、平均粒度を50μm〜300μmに粉砕した糖及び平均粒度を50μm未満に微粒化した粉乳を主成分とする上掛け組成物が知られている(例えば特許文献1参照)。
これらはいずれも糖類を主要な原料としているため、甘味が強く醤油味、ソース味等の味を出し難いという問題があった。
また、アイシングは乾燥すると割れて欠片が生じ易くまた剥離しやすくなり商品価値を著しく損なうため流通には注意が必要であった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−84974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低甘味で様々な味付けができ、また光沢が持続し、ドーナツ、パン等のベーカリー食品の乾燥を防ぐベーカリー食品用上掛け組成物及びこれを使用したベーカリー食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、κ-カラギーナン及び水溶性固形分を含有するベーカリー食品用上掛け組成物は低甘味で様々な味付けができ、また光沢が持続し、ドーナツ、パン等のベーカリー食品の乾燥を防ぐことを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、 κ-カラギーナン0.4〜1.2質量%及び水溶性固形分を含むことを特徴とするベーカリー食品用上掛け組成物である。
また、水溶性固形分が30〜60質量%であることを特徴とするベーカリー食品用上掛け組成物である。
更に本発明は前記上掛け組成物で被覆したことを特徴とするベーカリー食品である。
【発明の効果】
【0006】
低甘味で様々な味付けができ、また光沢が持続し、ドーナツ、パン等のベーカリー食品の乾燥を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のベーカリー用上掛け組成物とは、焼成後のパンやフライ後のドーナツ等のベーカリー食品の仕上げとして被覆する仕上げ材をいう。
ベーカリー食品としては、ケーキドーナツ、イーストドーナツ、シュードーナツ、カリントウ、揚げせんべいなどの揚げ菓子、クッキー、ケーキ、スコーン、マフィン、バームクーヘン、クラッカー、シューなどの焼き菓子、食パン、バターロール、デニッシュ、クロワッサンなどのパン類が挙げられる。
【0008】
本発明で使用するκ-カラギーナン(カッパー型カラギーナン)は海藻の紅藻類に属するスギノリやツノマタを原料とする抽出物であり、ガラクトース、アンヒドロガラクトースを主成分とする多糖類である。
カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニアイオンなどと反応しゲル化するためゲル化剤としてゼリー、プリン、アイスクリームなどに使用されている。
本発明のベーカリー食品用上掛け組成物は、これらイオンのうち少なくとも1種類以上を含有している。
通常、ベーカリー食品用上掛け組成物として使用する場合、しょうゆ等の調味料にこれらのイオンがふくまれているため、あえてゲル化のためにイオンを添加する必要はないが、含まれていない場合には、別に加える必要がある。
【0009】
ベーカリー食品用上掛け組成物は完全にゲル化してしまうと、剥離しやすくなるため、ゾルの状態を維持しかつ容易に流れださない粘度が必要である。
また、ベーカリー食品は、内部構造がスポンジ状であり、ベーカリー食品用上掛け組成物の水分が移行しやすいので容易に水分移行が起きないことが必要である。例えば、米菓子であるみたらし団子等では、このような問題は起きない。
また、一度使用した上掛け組成物を再度使用するためには可逆的に熱により粘度が変化することが必要である。
カラギーナンは、κ型の他に、λ型(ラムダ型)、ι型(イオタ型)が知られているが、本発明にはκ-カラギーナンを使用する。他の型のカラギーナンでは、ベーカリー食品用上掛け組成物としてのこれらの効果が不十分である。
また、他の増粘剤として、寒天、ゼラチン、ペクチン、カロブビーン、キサンタンガム類等はベーカリー食品上掛け組成物としてこれらの効果が不十分である。
しかし、κ-カラギーナンと併用することはできる。
【0010】
κ-カラギーナンの含有量は、ベーカリー食品用上掛け組成物中0.4〜1.2質量%である。
好ましくは、0.8〜1.0質量%である。
添加量が、0.4質量%未満ではベーカリー食品用上掛け組成物の粘度が十分でなく、1.2質量%を超えるとすぐに固まってしまい作業性が悪くなる傾向がある。
【0011】
本発明の水溶性固形分とは、穀粉、澱粉、糖類等の加熱時に水に溶けるものをいう。
本発明で使用できる穀粉は、特に限定されず、例えば、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、もち米粉、トウモロコシ粉、大豆粉、オーツ粉末等が挙げられ、澱粉としては、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、もち米澱粉、さつまいも澱粉、さご澱粉、くず澱粉等が挙げられる。
また未加工の澱粉に限定されるものではなくα化した澱粉やエーテル化、酢酸エステル化、架橋、酸化などの処理をした化工澱粉も使用することができ、これらの一種または二種以上を使用することができる。
糖類は、蔗糖、乳糖、果糖、オリゴ糖、転化糖、ぶどう糖、粉糖、麦芽糖、ステビア、アスパルテーム等を使用することができる。
【0012】
水溶性固形分の添加量は、ベーカリー食品用上掛け組成物中30〜60質量%である。好ましくは、40〜60質量%である。
30質量%未満では、付着率が低くなり、ベーカリー食品から流れ落ちてしまう傾向がある。
60質量%を超えると付着率は高くなるが、付着量が多くなり過ぎる傾向がある。
【0013】
また、本発明のベーカリー食品用上掛け組成物には、通常たれに使用されている副資材が使用できる。
例えば、醤油、味噌、ソース、塩、みりん、酒類、酢、卵、野菜・果実類、油脂類、エキス類、調味料、香辛料、乳製品などを挙げることができる。
【0014】
本発明のベーカリー食品用上掛け組成物はκ−カラギーナン及び水溶性固形分を水に加熱溶解して製造することができる。
例えば、以下の方法で製造することができる。
(1)κ−カラギーナン、水溶性固形分の一部を粉体の状態で混合する。混合の方法は特に限定はなく、均一に混ぜることができればよい。 前記混合した粉体に使用する水全量の約半量を加え、撹拌しながら85℃まで加温して、溶解する。
(2)水溶性固形分の残りを残りの水に混合し、前記溶解液に加え、再び85〜90℃に加温し、調味料、色素などを加え撹拌し溶解する。
【0015】
前記ベーカリー食品用上掛け組成物はパウチ袋に充填して、90〜100℃の湯中で30分間殺菌することが出来、常温での保管が可能である。
【0016】
このようにパウチ袋に充填した本発明のベーカリー食品用上掛け組成物は加熱してそのまま使用することが出来るので従来のアイシングのように毎回調製する必要が無い。
【0017】
前記調製された上掛け組成物は、70〜80℃程度に保温した状態で被覆を行う。
これより低温でも可能であるが温度が低くなると粘度が上昇し作業性が悪くなる。
被覆する方法としては、例えばグレーザーを用いて上掛け組成物を流し掛けしたり、浸漬機を用いて浸漬したり、容器に上掛け組成物を入れベーカリー食品を浸したり、あるいはハケ等を用いて塗布したりすることができる。
これらの加熱調理して製造されたベーカリー食品の表面に、本発明の上掛け組成物を前記のように適量、掛けたり、浸漬、塗布した後、自然に放置すると、その後温度が下がって上掛け組成物の粘度が上昇しゾルの状態を維持し、かつ容易に流れ出さない状態になる。
被覆は前記ベーカリー食品の一部分でも全体でもよい。
【実施例】
【0018】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
(1)ベーカリー食品用上掛け組成物の調整
κ-カラギーナン0.4質量%、砂糖36質量%を均一に混合した後、水23質量%を加え撹拌しながら85℃まで加熱した。
完全に溶解したところで、小麦澱粉4質量%、醤油10質量%、みりん2質量%、カラメル色素0.1質量%、水24.5質量%を混合したものを加えさらに攪拌し完全に溶解させてみたらし風味を有する本発明のベーカリー食品用上掛け組成物を得た。
前記ベーカリー食品用上掛け組成物をパウチ袋に充填し、95℃で30分間殺菌した後自然冷却した。
【0019】
[実施例2〜4及び比較例1〜4]
実施例1において、配合を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にしてベーカリー食品用上掛け組成物を得た。
【表1】

【0020】
(2)ケーキドーナツの調製
表2の配合割合の原料をパン用竪型ミキサーにより低速1分間、中高速1分間混捏して均一な生地とした。
この生地を1cm厚に伸ばし、リング型の抜き型で1個45gに抜いた。型抜きした生地を180℃の揚げ油中に投入し、片面1分づつ、計2分間フライし、ケーキドーナツを調製した。
【0021】
【表2】

【0022】
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られたベーカリー食品用上掛け組成物で、前記ドーナツを被覆した。
被覆は、ベーカリー食品用上掛け組成物を容器に入れて電子レンジで4分間加熱して溶解したものに前記ドーナツの一部を浸した後、室温で30分間保管して行った。
【0023】
保管後、官能評価を行った。
官能評価は、各項目について10人の専門パネラーによる5点評価で行った
【0024】
評価基準
外観
5 表面に非常に光沢があり、均一に被覆されている。
4 表面に光沢があり、均一に被覆されている。
3 表面にやや光沢があり、均一に被覆されている。
2 表面にやや光沢がなく、一部不均一に被覆されている。
1 表面に光沢がなく、上掛け組成物が固まっている。

食感
5 滑らかで、口溶け非常に良い。
4 滑らかで、口溶け良い。
3 滑らかさはやや欠けるが、口溶け良い。
2 ダマ状になり、口溶け悪い。
1 ダマ状になり、口内に残る。
【0025】
得られた評価結果を表3に示す。
【表3】

【0026】
本発明品は、何れも表面に非常に光沢があり、均一に被覆されていて、滑らかで、口溶けが非常に良かった。ドーナツは乾燥もせず湿っぽくもならず良い食感であった。
また、上掛け組成物の風味も良く、味も良好であった。
【0027】
[実施例5]
κ-カラギーナン0.8質量%、砂糖36質量%を均一に混合した後、水23質量%を加え撹拌しながら85℃まで加熱した。
完全に溶解したところで、小麦澱粉4質量%、キャラメル10質量%、エヴァミルク2質量%、キャラメルフレーバー0.1質量%、水24.1質量%を混合したものを加えさらに攪拌し完全に溶解させてキャラメル風味を有する本発明のベーカリー食品用上掛け組成物を得た。
前記ベーカリー食品用上掛け組成物をパウチ袋に充填し、95℃で30分間殺菌した後自然冷却した。
実施例1〜4と同様に、前記ベーカリー食品用上掛け組成物を容器に入れて電子レンジで4分間加熱して溶解したものに前記ドーナツの一部を浸した後、室温で30分間保管して行った。
本発明品は、表面に非常に光沢があり、均一に被覆されていて、滑らかで、口溶けが良かった。また、キャラメル風味も良好であった。
【0028】
[実施例6]
(1)バターロールの調製
表4の配合割合のバター以外の原料をパン用竪型ミキサーを使用して、低速2分間中速5分間混捏し、バターを加えさらに低速1分間、中速5分間、高速1分間混捏し、均一な生地とした。
生地温度は27℃であった。前記生地を90分間発酵させ50gに分割し25分間ベンチタイムをとった後、成型し、さらに50分間ホイロ時間をとって200℃で10分焼成した。
【0029】
【表4】

実施例2の上掛け組成物を容器に入れて電子レンジで4分間加熱してゾル状とし、バターロールの表面にハケで塗布して室温で30分間保管した。
保管後、官能評価を行った。
バターロールにおいても、表面に非常に光沢があり、均一に被覆されていて、滑らかで、口溶けが非常に良かった。
バターロールは乾燥せず湿っぽくもならず良い食感であった。
【0030】
[実施例7]
(1)クッキーの調製
表5の配合割合の薄力粉とバターを混捏し、砂状になったら、それ以外の原料を加え、更に混捏して均一な生地とした。生地を冷蔵庫で1時間休ませた。
この生地を2mm厚に伸ばし、円形の抜き型で1個10gに抜いた。
型抜きした生地を170℃で10分間焼成し、クッキーを調製した。
【表5】

実施例5の上掛け組成物を容器に入れて電子レンジで4分間加熱してゾル状とし、クッキーの表面にハケで塗布して室温で30分間保管した。
保管後、官能評価を行った。
クッキーにおいても、表面に非常に光沢があり均一に被膜されていて、滑らかで口溶けが非常に良かった。クッキーの表面は乾燥しにくくなり、良い食感が持続した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
κ-カラギーナン0.4〜1.2質量%及び水溶性固形分を含むことを特徴とするベーカリー食品用上掛け組成物。
【請求項2】
水溶性固形分が30〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載のベーカリー食品用上掛け組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のベーカリー食品用上掛け組成物で被覆したことを特徴とするベーカリー食品。


【公開番号】特開2006−271291(P2006−271291A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97118(P2005−97118)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】