説明

ベーク処理装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体集積回路の製造工程、特にフォトリソグラフィープロセスにおけるフォトレジスト塗布後や露光後、あるいは現像後にベーク処理を行う装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のベーク処理装置は図3に示すように、ヒータ4と温度検出センサ8を組み込んだホットプレート2上に半導体基板(以下、ウェハという)1を乗せ、温度検出センサ8の出力信号に基づいて温度制御部7によりヒータ4の温度を制御してウェハ1に所定の温度でベーク処理を行う。
【0003】従来よりウェハをホットプレート上に直接置く方式(いわゆるコンタクトベーク)が一般的に多く用いられていたが、この方式では、ウェハの裏面がホットプレート表面と密着するためにウェハ裏面へのゴミの付着が問題となっている。
【0004】このため、最近ではウェハとホットプレートを密着させずに0.1〜0.2mm程度のすきまを設けてベーク処理を行ういわゆるプロキシミティピン3が設置されており、その上にウェハ1を乗せてベーク処理を行う方式となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】コンタクトベークでは、ホットプレートとウェハが密着しているためにウェハ温度はホットプレートの表面温度と同一になるが、プロキシミティベークではホットプレート上にウェハが密着していないためにウェハへの熱の伝わり方が、コンタクトベークが熱伝導なのに対し、プロキシミティベークでは熱伝達になるため効率が悪く、図4に示すようにホットプレートとウェハとの間隔(これをプロキシミティギャップと呼ぶ)が大きくなるに従い、ウェハの表面温度が低くなるという現象が起こる。
【0006】プロキシミティギャップはプロキシミティピンにゴミ等が付着することにより容易に変わりやすく、またウェハ自体の反りの影響によっても、プロキシミティギャップが変わってしまいやすいという欠点を持っている。
【0007】上記の理由からプロキシミティベークでは、ウェハ表面温度を一定に保つのがコンタクトベークと比べてかなり困難であるという問題点があった。
【0008】本発明の目的は、プロキシミティベークにおけるウェハ表面温度を一定に保つベーク処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係るベーク処理装置は、輻射熱センサと、演算処理部と、温度制御部とを有し、半導体基板をヒータで加熱されたホットプレート上にプロキシミティピンを介して載置し、基板のベーク処理を行うベーク処理装置であって、輻射熱センサは、ホットプレートで加熱された半導体基板からの輻射熱を検出するものであり、演算処理部は、輻射熱センサの出力信号に基づいて半導体基板の表面温度を演算するものであり、温度制御部は、演算処理部からの温度出力信号に基づいて、基板表面温度が設定温度になる出力値にホットプレート加熱用ヒータの出力を制御するものであり、前記輻射熱センサと演算処理部と温度制御部との組を複数有し、各組毎に温度制御を行ない、半導体基板面内の温度分布を制御するものである。
【0010】
【作用】ウェハの上部にウェハからの輻射熱をセンサで検出し、このセンサの出力信号からウェハの表面温度を演算し、この演算処理後の温度出力信号に基づいて予め設定した温度になるようにヒータの出力を制御する。
【0011】これによりプロキシミティギャップが変化した場合、従来の技術ではウェハの表面温度が変わってしまい所定の温度でのベーク処理ができなくなってしまうのに対し、本発明のベーク処理装置では、ウェハ表面温度の変化をウェハ上部に設けたセンサが検出し、これによりウェハが所定の温度になるようにヒータの出力を制御することができる。
【0012】
【実施例】次に本発明について図面を参照して説明する。
【0013】(参考例)図1は、本発明の参考例を示す概略図である。
【0014】図において、ウェハ1はプロキシミティピン3の上に支持されてホットプレート2上に載置されている。ウェハ1の上部には、ウェハ1からの輻射熱を検出するセンサ5が設置されており、センサ5は演算処理部6に接続されている。演算処理部6は、センサ5の出力信号に基づいてウェハ1の表面温度を演算する。
【0015】さらに温度制御部7は、演算処理部6の温度出力信号に基づいて、ホットプレート2内に組み込まれたヒータ4の出力をウェハの表面温度が設定値になるように制御する。
【0016】これにより、ウェハ1は、表面温度が設定値の下にベーク処理が行われる。
【0017】(実施例)図2は、本発明の実施例を示す概略図である。
【0018】プロキシミティベークでは通常3本のピンの上にウェハが乗る形となっているが、ウェハの裏面あるいはピンの表面に付着したゴミ等の原因により3本のピン(図2では1本のプロキシミティピンを省略して、2本のみを図示してある)の内の1本だけプロキシミティギャップが他のピンと異なる高さになってしまった場合には、この部分のウェハの温度が他の部分よりも高くなったり、あるいは低くなったりしてしまうことになる。
【0019】本発明の実施例では3個の輻射熱検出用のセンサ5を3本のプロキシミティピンの上部にそれぞれ配置し、演算処理部6,温度制御部7,ヒータ4もそれぞれ3系統設けている。
【0020】ホットプレート1内に組み込まれた3組のヒータ4は、輻射熱検出センサ5の配置に対応して設置されており、これにより3本のプロキシミティピン3の高さにズレが生じてプロキシミティギャップが不均一となってしまった場合においても、3系統のヒータ4が独立して温度制御を行うためにウェハ表面に生じる温度差を低減できるという利点がある。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ウェハ表面温度を検出して温度制御を行って、プロキシミティギャップの変化の影響を受けずに常に安定したベーク処理を行うことができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例を示す概略図である。
【図3】従来のベーク処理装置を示す概略図である。
【図4】従来のベーク処理装置におけるプロキシミティギャップとウェハ表面温度の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 ウェハ
2 ホットプレート
3 プロキシミティピン
4 ヒータ
5 輻射熱検出センサ
6 演算処理部
7 温度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 輻射熱センサと、演算処理部と、温度制御部とを有し、半導体基板をヒータで加熱されたホットプレート上にプロキシミティピンを介して載置し、基板のベーク処理を行うベーク処理装置であって、輻射熱センサは、ホットプレートで加熱された半導体基板からの輻射熱を検出するものであり、演算処理部は、輻射熱センサの出力信号に基づいて半導体基板の表面温度を演算するものであり、温度制御部は、演算処理部からの温度出力信号に基づいて、基板表面温度が設定温度になる出力値にホットプレート加熱用ヒータの出力を制御するものであり、前記輻射熱センサと演算処理部と温度制御部との組を複数有し、各組毎に温度制御を行ない、半導体基板面内の温度分布を制御するものであることを特徴とするベーク処理装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【特許番号】第2882180号
【登録日】平成11年(1999)2月5日
【発行日】平成11年(1999)4月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−107003
【出願日】平成4年(1992)4月24日
【公開番号】特開平5−299333
【公開日】平成5年(1993)11月12日
【審査請求日】平成8年(1996)3月28日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平2−259535(JP,A)
【文献】実開 平2−70426(JP,U)
【文献】実開 昭63−193833(JP,U)
【文献】実開 昭54−83368(JP,U)