説明

ベース塗料組成物およびこれを含む塗料組成物

【課題】
塗装に適した粘度に調整した際の不揮発分が高く、好ましくは規制されている揮発性有機化合物の含有量が少なく、仕上がり性や硬度などの物性に優れた塗膜を形成するのに適するベース塗料組成物およびこれを含む塗料組成物を提供する。
【解決手段】
アクリルポリオール(A)、重量平均分子量が2,000〜50,000、水酸基価が0.5〜200mgKOH/g、ガラス転移温度が−70〜0℃の範囲内にあるポリエステルポリオール(B)ならびに有機溶剤(C)を含み、(A)が、スチレン(a)、有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー(b)および水酸基含有重合性不飽和モノマー(c)を構成モノマー成分として有し、(a)および(b)の合計量が構成モノマー成分中30質量%以上であって、(B)の配合量が(A)ならびに(B)の合計量を基準にして1〜70質量%の範囲内にあることを特徴とするベース塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、自動車等の外板や部品等の塗装、補修や、産業機械、建造物、構築物、家具(鋼製も含む)等の塗装、補修に際し、アクリルラッカー、アクリルウレタン塗料、アミノアクリル樹脂塗料などが用いられており、特に自動車補修用塗料の分野では、常温乾燥性、耐久性の点から、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物を含むアクリルウレタン塗料が主に用いられている。
【0002】
当該分野において使用される水酸基含有アクリル樹脂には、最終的に得られる塗膜の光沢の点からスチレンを、研磨性の点から、イソボルニル(メタ)アクリレートまたはトリシクロデカニル(メタ)アクリレートを特定量共重合することがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、スチレン、イソボルニル(メタ)アクリレート、水酸基含有重合性不飽和モノマーおよびその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を構成成分とする重量平均分子量が2000以上で且つ20000未満の共重合体と、スチレン、イソボルニル(メタ)アクリレート、水酸基含有重合性不飽和モノマーおよびその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を構成成分とする重量平均分子量が20000〜100000の範囲内にある共重合体および硬化剤を含有する塗料組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2にはスチレン、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびトリシクロデカニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のモノマー、メタクリル酸の炭素原子数8〜20アルキルエステルおよびアクリル酸の炭素原子数4〜20のアルキルエステルから選ばれる少なくとも1種のモノマー、カルボキシル基を有さないその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を構成成分とし、特定範囲内の重量平均分子量、水酸基価の共重合体およびポリイソシアネートを含有する塗料組成物が記載されている。
【0005】
これら塗料組成物によれば、高光沢で研磨性に優れた塗膜を形成でき、耐モドリムラ性に優れるので、中でも補修用クリヤー塗料として好適に使用できるものである。
【0006】
ところでこの分野における上塗り塗料を用いた塗装仕様としては、例えばベースコート塗料を塗装するだけの1コート塗装仕上げや、ベースコート塗料を塗装した後クリヤー塗料を塗装する2コート塗装仕上げなどが知られている。
【0007】
1コート塗装仕上げ用のベースコート塗料は、塗膜に光沢を付与する目的から、通常スチレンを多く共重合した樹脂が用いられており、2コート塗装仕上げ用のベースコート塗料には、乾燥性やモドリムラ対策のためにセルロースアセテートブチレート等のセルロース成分が配合されることが多いことが知られている。
【0008】
一般にこのスチレン共重合樹脂とセルロースアセテートブチレートは相溶性が非常に悪く、これら成分を共に含有する塗料は、顔料分散性や貯蔵安定性(顔料が凝集しやすい)が低下するという問題があり、1コート塗装仕上げ用ベースコート塗料と2コート塗装仕上げ用のベースコート塗料に応じて夫々に専用の調色用原色塗料を用意する必要があった。
【0009】
近年、自補修分野においては2コート塗装仕上げが主流になりつつあるものの、ホワイト系塗色については1コート塗装仕上げの需要が多く、1コート仕上げ用ホワイトベースコート塗料としての品揃えが必要とされている。しかしながらホワイト系塗色の調色においては通常若干の黄味や青味を調整するものであり、2コート仕上げ塗装用のベースコート塗料による原色塗料を1コート仕上げ用ホワイトベース塗料の調色用の色種として使用できることが望まれていた。
【0010】
上記した問題点に関し本出願人は、特許文献3においてスチレン、水酸基含有重合性不飽和モノマー、およびその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を構成成分とする特定の重量平均分子量のビニル系樹脂と特定のセルロースアセテートブチレート変性ビニル系樹脂およびポリイソシアネート化合物を含有する1コート仕上げ用着色塗料組成物を提案した。この組成物によれば、セルロースアセテートブチレートが配合された2コート仕上げ用のベースコート塗料による原色塗料を色種として用いても調色時に不具合が生じることなく、高艶感を有する塗膜を形成することができるものであるが、塗料粘度が高く、塗装に適した粘度に調整した塗料の不揮発分濃度が低いという問題点を有している。
【0011】
また、近年揮発性有機化合物の環境に与える影響が問題となっており、従来塗料分野において通常に配合されてきたトルエン、キシレン等の有機溶剤は環境汚染物質として規制対象物質(例えば、環境汚染物質排出移動登録(POLLUTANT RELEASE AND TRANSFER REGISTERなど)とされ、これら有機溶剤を削減或いは実質的に含まないことが求められているのが実情である。
【0012】
こうした問題について例えば特許文献4には、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂並びにエステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を含んでなるベース塗料と希釈剤とからなる塗料組成物が記載されている。 かかる塗料組成物によれば規制されている揮発性有機化合物を実質的に含まず、環境及び人体に対して配慮がされており、貯蔵安定性や仕上がり性、乾燥性、硬度、付着性等に優れた塗膜を形成することが可能であるが、該組成物を用いてモノコート塗装仕上げを施した場合には、形成される塗膜の仕上がり性や硬度が十分とはいえない場合があり、上記した塗装時の塗料のハイソリッド化と共に環境に配慮し且つ形成塗膜の仕上がり性や硬度などの塗膜物性に優れた製品の開発が求められている。
【0013】
【特許文献1】特開2000−273393号公報
【特許文献2】特開2001−2979号公報
【特許文献3】特開2003−13000号公報
【特許文献4】特開2006−152259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、塗装に適した粘度に調整した際の不揮発分が高く、好ましくは規制されている揮発性有機化合物の含有量が少なく、仕上がり性や硬度などの物性に優れた塗膜を形成するのに適するベース塗料組成物およびこれを含む塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記した課題に鋭意検討した結果、スチレンおよび有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマーおよび水酸基含有重合性不飽和モノマーを構成成分として有する特定のアクリルポリオールおよび特定の性状値を有するポリエステルポリオールを特定の配合割合で含むベース塗料組成物が塗料不揮発分の割に低粘度であることを見出し、本発明に到達した。
【0016】
即ち本発明は、
1. アクリルポリオール(A)、重量平均分子量が2,000〜50,000、水酸基価が0.5〜200mgKOH/g、ガラス転移温度が−70〜0℃の範囲内にあるポリエステルポリオール(B)ならびに有機溶剤(C)を含み、アクリルポリオール(A)が、スチレン(a)、有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー(b)および水酸基含有重合性不飽和モノマー(c)を構成モノマー成分として有し、スチレン(a)および有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(b)の合計量が構成モノマー成分中30質量%以上であって、ポリエステルポリオール(B)の配合量がアクリルポリオール(A)ならびにポリエステルポリオール(B)の合計量を基準にして1〜50質量%の範囲内にあることを特徴とするベース塗料組成物、
2. 有機溶剤(C)が、その成分の一部としてケトン系有機溶剤を有機溶剤(C)中1〜50質量%含む1項に記載のベース塗料組成物、
3. 顔料(D)をさらに含む1項または2項に記載のベース塗料組成物、
4. 顔料(D)がその成分の一部として体質顔料を全顔料(D)中0.5〜80質量%の範囲内で含む3項に記載のベース塗料組成物、
5. 1項ないし4項のいずれか1項に記載のベース塗料組成物に、ポリイソシアネート(E)を含む硬化剤をさらに配合してなる2液型の塗料組成物、
6. 塗装時の不揮発分が、50質量%以上である5項に記載の塗料組成物、
7. 被塗面に、1項ないし6項に記載のベース塗料組成物または塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のベース塗料組成物によれば、粘度が低く、塗装に適した粘度で塗装する際の不揮発分を高くすることができるため塗膜を効率的に形成することができるとともに、塗装時における有機溶剤の放出量が少ないという利点を有する。また、本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜は、光沢、塗膜物性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に用いられるアクリルポリオール(A)は、スチレン(a)、有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(b)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c)を構成モノマー成分として含有するものである。
【0019】
本発明において、上記アクリルポリオール(A)は、該アクリルポリオール(A)を構成するモノマー成分合計量に基づくスチレン(a)および有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(b)の合計量が30質量%以上であることを特徴とし、その量が特に45質量%以上であることが、本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の光沢および硬度の点から好適である。
【0020】
上記アクリルポリオール(A)において、スチレン(a)の使用量としては、アクリルポリオール(A)を構成するモノマー成分に基いて5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲内にあることが、本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の光沢の点から好適である。
【0021】
上記有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(b)としては、炭素数が10〜20の有橋脂環式炭化水素基と重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができ、炭素数が10〜20の有橋脂環式炭化水素基の代表例として、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。該モノマーの具体例としては、例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
該有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(b)の使用量としては、アクリルポリオール(A)を構成するモノマー成分に基いて5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲内にあることが、本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の光沢の点から好適である。
【0023】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物、例えば、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(以上、いずれもダイセル化学(株)製、商品名)等の商品名で表されるもの等を挙げることができ、単独で、または2種以上を組合わせて使用することができる。
【0024】
該水酸基含有重合性不飽和モノマー(c)の使用量としては、アクリルポリオール(A)を構成するモノマー成分に基いて5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲内であることが本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の硬度、仕上がり性の点から望ましい。
【0025】
上記アクリルポリオール(A)において、該アクリルポリオール(A)を構成するモノマー成分としては、その他の重合性不飽和モノマー(d)をその成分の一部として含むことができる。かかるその他の重合性不飽和モノマー(d)としては、上記モノマー(a)、(b)および(c)と共重合可能であって、該モノマー(a)、(b)および(c)以外の重合性不飽和モノマーを挙げることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)等のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテルなどの(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ベオバモノマー(シェル化学社製)、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。これらの化合物は、1種でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0026】
本発明において上記アクリルポリオール(A)は、重量平均分子量が2,000〜40,000、好ましくは6,000〜15,000の範囲内にあることがベース塗料組成物を含む塗料組成物の塗装作業性の点から好適である。
【0027】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0028】
また、アクリルポリオール(A)のガラス転移温度としては、30〜90℃、好ましくは40〜80℃の範囲内にあることが本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の硬度の点から好適である。
【0029】
本明細書において、ガラス転移温度(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
式中、W、W・・・Wは各モノマーの質量%〔=(各モノマーの配合量/モノマー全質量)×100〕であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、Polymer Hand Book (4th Edition)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成したものを試料とし、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析「DSC−50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜+100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を使用する。
【0030】
本発明におけるポリエステルポリオール(B)は、多塩基酸と多価アルコールとを常法に従って縮合反応することにより製造することができる。
【0031】
多塩基酸としては、例えばアジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられ、多価アルコールとしては、例えばエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ネオペンチルグリコ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ペンタエリスリト−ル、ソルビト−ルなどが挙げられる。さらに必要に応じて、脱水ひまし油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ト−ル油脂肪酸などの脂肪酸や安息香酸などの一塩基酸、油脂類を共重合成分として使用することができる。
【0032】
本発明において上記ポリエステルポリオール(B)は、重量平均分子量が2,000〜50,000の範囲内であり、好ましくは5,000〜25,000の範囲内にあることが好ましい。
【0033】
ポリエステルポリオール(B)の重量平均分子量が2,000未満では、本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の乾燥性が著しく低下することがあり、50,000を超えるとベース塗料組成物の粘度が高くなることに伴い、ベース塗料組成物を含む塗料組成物の塗装作業性が低下するかまたは塗装時の不揮発分が低くなるために好ましくない。
【0034】
また、該ポリエステルポリオール(B)の水酸基価としては、0.5〜200mgKOH/gの範囲内にあり、特に40〜140mgKOH/gの範囲内にあることが望ましい。
【0035】
ポリエステルポリオール(B)の水酸基価が0.5mgKOH/g未満では、本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の被塗面に対する付着性や耐水性が低下することがあり、一方200mgKOH/gを超えるとベース塗料組成物の粘度が高くなることに伴い、ベース塗料組成物を含む塗料組成物の塗装作業性が低下するかまたは塗装時の不揮発分が低くなり、好ましくない。
【0036】
また、ポリエステルポリオール(B)のガラス転移温度としては、−70〜0℃の範囲内にあり、好ましくは−65〜−10℃の範囲内にあることが好適である。
【0037】
ポリエステルポリオール(B)のガラス転移温度が−70℃未満では、本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の乾燥性が低下し、一方0℃を越えると、本発明のベース塗料組成物を含む塗料組成物の塗装作業性が低下し、好ましくない。
【0038】
ポリエステルポリオール(B)のガラス転移温度は、示差走査型熱分析「DSC−50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜+100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を使用する。
【0039】
本発明のベース塗料組成物に含まれる有機溶剤(C)は、主としてベース塗料組成物の製造安定性の点から配合されるものであり、従来公知の有機溶剤を制限なく使用することができる。
【0040】
本発明においてはベース塗料組成物に含まれる各樹脂同士の相溶性および形成塗膜の乾燥性を向上させることが可能であることから、有機溶剤(C)として例えばエステル系有機溶剤およびケトン系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を使用することが適している。
【0041】
該有機溶剤(C)におけるエステル系有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられ、ケトン系有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、イソホロンなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0042】
上記有機溶剤(C)において、特にケトン系有機溶剤を使用するとベース塗料組成物の粘度を低下させることができ、有機溶剤(C)中にケトン系有機溶剤が1〜50質量%、特に2〜40質量%含むことが好適である。
【0043】
上記有機溶剤(C)は、ベース塗料組成物の製造のいずれの段階においても混合することができ、あるいは塗料中に含まれる樹脂の製造において、反応溶媒または希釈溶媒として配合することもできる。
【0044】
本発明のベース塗料組成物は上記アクリルポリオール(A)、ポリエステルポリオール(B)および有機溶剤(C)を含有してなり、ポリエステルポリオール(B)の配合量が、アクリルポリオール(A)およびポリエステルポリオール(B)の合計量を基準にして1〜70質量%の範囲内にあるものであり、好ましくは5〜55質量%の範囲内にあることが好ましい。
【0045】
ポリエステルポリオール(B)の配合量が1質量%未満では、本発明のベース塗料組成物を含む塗料組成物の粘度が高くなり、塗装作業性が悪くなるか、もしくは塗装時の不揮発分が低くなり好ましくない。一方、70質量%を越えると本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の乾燥性が低下するので好ましくない。
【0046】
本発明のベース塗料組成物は、必要に応じて有機金属化合物を含有することができる。該有機金属化合物としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどが挙げられ、これらは1種または2種以上混合して用いることができる。これらには、さらに必要に応じて第三級アミン、りん酸化合物など公知のウレタン硬化触媒を併用することもできる。
【0047】
上記有機金属化合物を含ませることによって、後述のポリイソシアネート硬化剤を配合した場合などにおいて塗膜の乾燥性を向上させる効果がある。
【0048】
その使用量は、通常、ベース塗料組成物中に含まれる樹脂の合計100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.02〜5質量部の範囲内が適当である。
【0049】
上記ベース塗料組成物に用いられる顔料(D)としては、通常塗料分野で用いられる光輝性顔料、着色顔料、体質顔料等の顔料が特に制限なく使用できる。
【0050】
光輝性顔料として例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄等のメタリック顔料;マイカ、金属酸化物コーティング雲母粉、金属酸化鉄コーティングアルミナフレーク、金属酸化物コーティングシリカフレーク、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料を挙げることができ、着色顔料としては、酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;等をあげることができ、体質顔料としては、亜鉛粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などを挙げることができる。
【0051】
本発明のベース塗料組成物において顔料を配合する場合、その配合量は、顔料の種類に応じて適宜調整することができ、ベース塗料組成物に含まれる樹脂の合計質量を基準にして、一般に1〜250質量%、好ましくは2〜240質量%の範囲内とするのが適当である。
【0052】
また、上記顔料(D)は、その成分の一部として体質顔料を含むとベース塗料組成物の粘度を低減させ、塗装作業性を向上させつつ良好な仕上がり性を得ることができ、好ましい。
【0053】
そのような目的で使用しうる体質顔料の具体例としては上述の通りであり、中でもその平均粒子径が0.1〜2μm、特に0.15〜1.0μmの範囲内のものであると塗装作業性、形成塗膜の色調の点から好適である。
【0054】
本明細書において個々の体質顔料の粒子径は、電子顕微鏡観察により得られた画像に撮影された粒子の中心を通る線分長さの平均値とするものであり、平均粒子径は、このようにして得られた粒子径の平均値とする。
【0055】
また、その粒子の形状としては、特に制限されるものではないが、球状であるとベース塗料組成物の粘度が高くなりすぎず、不揮発分を高く設計することができ、望ましい。
【0056】
本明細書において球状なる用語は完全なる真球のみならず、やや扁平状の球、部分的に平坦な面及び/又は突起を有する球も包含し、対称であっても非対称であってもよい。
【0057】
上記体質顔料の使用量としては全顔料(D)中0.5〜80質量%、特に1〜60質量%の範囲内にあることが適している。
【0058】
上記本発明のベース塗料組成物は、さらに必要に応じて、上記(A)および(B)以外の樹脂、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、顔料分散剤、硬化触媒などの塗料用添加剤を配合することができる。
【0059】
上記の通り得られる本発明のベース塗料組成物は、希釈シンナーにより塗装に適した粘度に調整した後塗装することができるが、ポリイソシアネート(E)を含む硬化剤を配合することにより2液型の塗料組成物として供することが適している。この場合、ベース塗料組成物と硬化剤成分は使用直前に混合され、必要に応じて希釈シンナーにより塗装に適した粘度に調整され塗装に供されることが望ましい。
【0060】
このような場合に適用可能なポリイソシアネート(E)としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が包含され、その具体例としてはヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(または2,6−)ジイソシアネート、1,3−(または1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類化合物;これらのジイソシアネート化合物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネ−ト化合物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ルなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0061】
上記ベース塗料組成物とポリイソシアネートを含む硬化剤成分との配合割合は、上記ベース塗料組成物に含まれる樹脂中の水酸基に対してイソシアネート基が、NCO/OHの当量比で、通常、0.2〜3.0、好ましくは0.5〜1.5となる範囲内であることが適当である。
【0062】
本発明のベース塗料組成物およびそれを含む塗料組成物はハイソリッド型であることができ、塗装時における揮発性物質の放散量を少なくせしめることができる。具体的には塗装時の塗料不揮発分が、50質量%以上、特に60質量%以上とすることができる。
【0063】
本明細書において塗装時の不揮発分は、温度が20℃、湿度が60%の条件において塗装に適した粘度に調整した塗装直前の試料をブリキ皿に1.0g秤量し、加熱温度105℃、3時間で蒸発成分を除き、残量を質量百分率として算出することによって求めることができる。
【0064】
また、上記ベース塗料組成物およびそれを含む塗料組成物は、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなどの)めっき鋼板などの金属;これらの金属表面に燐酸塩処理、クロメート処理などの化成処理を施した表面処理金属;プラスチック、木材、コンクリート、モルタル等の被塗物素材に、直接にまたは該被塗物素材にプライマーおよび/または中塗および/または上塗着色ベースを塗装した被塗物の硬化塗膜面または未硬化塗膜面に塗布でき、乾燥させることによって塗膜物性が良好で、仕上り性に優れた塗膜を形成することができる。
【0065】
被塗面の具体例としては、乗用車、トラック、バス、オートバイ、電車等の車両;航空機;建造物;家電製品などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0066】
その塗装手段としては、スプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装等特に制限はなく、乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよい。
【0067】
また、本発明の塗装方法においては、上記本発明のベース塗料組成物およびそれを含む塗料組成物を塗装するだけのモノコート塗装仕上げ用として使用することによって、光沢、仕上がり性、硬度等に優れた塗膜を形成することができるが、必要に応じて形成塗膜上に従来公知のクリヤー塗料を塗装し2コート塗装仕上げとすることも可能である。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ここで「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0069】
共重合体溶液の製造
製造例1
撹拌装置、温度計、還流冷却器、サーモスタットおよび滴下用ポンプを備えた反応容器に、酢酸ブチル60部を仕込み、撹拌しながら125℃まで昇温し、下記単量体と重合開始剤との混合物を滴下用ポンプを利用して3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成し反応を終了した。得られた共重合体溶液(A1)は不揮発分60%であり、該共重合体の重量平均分子量は10000、ガラス転移温度は73℃であった。
スチレン 40部
イソボルニルアクリレート 25部
イソブチルメタクリレート 2部
2−エチルヘキシルアクリレート 5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 28部
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 6.1部。
【0070】
製造例2
上記製造例1において、滴下物を下記組成とする以外は上記製造例1と同様にして、共重合体溶液(A2)を得た。得られた共重合体溶液(A2)は不揮発分60%であり、重量平均分子量は10000、ガラス転移温度は43℃であった。
スチレン 40部
イソボルニルアクリレート 20部
2−エチルヘキシルアクリレート 13.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 19部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 7.5部
t−ブチルパーオキシヘキサノエート 6.1部。
【0071】
製造例3
撹拌装置、温度計、還流冷却器、サーモスタットおよび滴下用ポンプを備えた反応容器に、酢酸ブチル60部を仕込み、撹拌しながら115℃まで昇温し、下記単量体と重合開始剤との混合物を滴下用ポンプを利用して3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成し反応を終了した。得られた共重合体溶液(A3)は、不揮発分55%であり、共重合体の重量平均分子量は約26000、ガラス転移温度は43℃であった。
スチレン 40部
イソボルニルアクリレート 20部
n−ブチルアクリレート 21部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 19部
t−ブチルパーオキシヘキサノエート 1.7部。
【0072】
製造例4
上記製造例1において滴下物を下記組成とする以外は上記製造例1と同様にして、共重合体溶液(A4)を得た。得られた共重合体溶液(A4)は不揮発分60%であり、重量平均分子量は10000、ガラス転移温度は55.4℃であった。
スチレン 10部
イソボルニルアクリレート 15部
イソブチルメタクリレート 42部
2−エチルヘキシルアクリレート 5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 28部
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 6.1部。
【0073】
製造例5
加熱装置、温度計、攪拌機、精留塔および水分離器の付属した還流冷却器を備えた反応器に下記成分を仕込み加熱し、3時間かけて160℃から230℃まで昇温させた。
ヘキサヒドロ無水フタル酸 26.7部
アジピン酸 28部
ネオペンチルグリコ−ル 5.3部
1,6−ヘキサンジオ−ル 40部
これを230℃で1時間保ち、生成した縮合水(7.4部)を精留塔を用いて留去させた。次いで酢酸ブチルを5部加え、酢酸ブチルと縮合水を還流させ水分離器を用いて水を取り除いた。酢酸ブチル添加の2時間後から、酸価を測定し始め、酸価が2以下になったところで120℃まで冷却した後、酢酸ブチルで不揮発分70%となるよう希釈し、ポリエステル樹脂溶液(B1)を得た。該樹脂溶液の樹脂の重量平均分子量は20,000、水酸基価は55、ガラス転移温度は−60℃であった。
【0074】
製造例6
上記製造例5において、配合組成を下記組成とする以外は上記製造例5と同様にして、ポリエステル樹脂溶液(B2)を得た。
ヘキサヒドロ無水フタル酸 33部
アジピン酸 16部
ネオペンチルグリコ−ル 30部
1,6−ヘキサンジオ−ル 21部
該樹脂溶液の樹脂の重量平均分子量は20,000、水酸基価は53、ガラス転移温度は−10℃であった。
【0075】
製造例7
上記製造例5において、配合組成を下記組成とする以外は上記製造例5と同様にして、ポリエステル樹脂溶液(B3)を得た。
ヘキサヒドロ無水フタル酸 34部
アジピン酸 13部
ネオペンチルグリコ−ル 28部
1,6−ヘキサンジオ−ル 25部
該樹脂溶液の樹脂の重量平均分子量は12,000、水酸基価は120、ガラス転移温度は−12℃であった。
【0076】
製造例8
上記製造例5において、配合組成を下記組成とする以外は上記製造例5と同様にして、ポリエステル樹脂溶液(B4)を得た。
ヘキサヒドロ無水フタル酸 24部
アジピン酸 24部
ネオペンチルグリコ−ル 13部
1,6−ヘキサンジオ−ル 39部
該樹脂溶液の樹脂の重量平均分子量は13,000、水酸基価は120、ガラス転移温度は−55℃であった。
【0077】
顔料分散ペーストの製造
製造例9〜18
上記製造例で得られた各共重合体溶液および樹脂溶液を表1に示す配合量で配合し、さらに平均粒子径0.25〜0.3μmの酸化チタン顔料、顔料分散剤(「BYK161」、商品名、BYK−chemie社製)、体質顔料(平均粒子径0.6μmの球状の沈降性硫酸バリウム、平均粒子径0.6μmの球状の炭酸カルシウム、鱗片状のタルク)、酢酸ブチルを表1に示す配合で加え、ディスパーで約20分攪拌した後、サンドミルで分散し、各顔料分散ペーストを得た。
【0078】
【表1】

【0079】
1コート仕上げ用ホワイト塗料の作成
実施例1〜22および比較例1〜4
下記表2に示す配合で各成分を混合して各主剤を作成し、硬化剤(注2)を表2にしたがって配合した後、希釈シンナー(注3)により不揮発分が65質量%となるように希釈して、ホワイト塗料を夫々作成した。希釈した各ホワイト塗料の粘度を表2に示す。また、希釈した各ホワイト塗料を、新車用ホワイト塗料を塗装した工程板上に気温20℃にて乾燥膜厚60μmとなるようにスプレー塗装を行い、各試験塗板を得た。これらについて下記方法、基準にて評価を行った。評価結果を表2にあわせて示す。
【0080】
【表2】

【0081】
評価基準
(*1)塗料粘度:希釈した各ホワイト塗料を20℃に調整した後イワタカップに満たし、全量が流出するまでの時間をストップウォッチを用いて測定した。
(*2)塗装感:スプレー塗装時の塗装感(◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る)
(*3)仕上がり性:各試験塗板の光沢を目視判定した。(◎:光沢が非常にあり良好、○:光沢良好、△:光沢に劣る、×:光沢が非常に低く不良)
(*4)乾燥性:上記で得られた希釈した各ホワイト塗料を、温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室中で、塗装膜厚100μmとなるようにドクターブレードにてガラス板に塗装し、指で触って塗料が指に付かなくなるまでの指触乾燥時間を測った(◎:乾燥時間5分未満、○:乾燥時間5分以上且つ10分未満、△:10以上且つ15分未満、×:15分以上)
(*5)耐水性:各試験塗板を、温度20℃・湿度75%の恒温恒湿室中で7日間放置後、20℃の水道水に7日間浸漬後の塗面状態を調べた(○:異常
なし、△:ツヤ引けあり、×:フクレ発生)。
(*6)付着性:上記(*5)における水道水に浸漬後の各試験塗板を、直ちに布で水分を拭き取り、2mm四方の碁盤目を100個ナイフで素地に達するようにカットし、粘着テ−プによる剥離試験を行なった(○:碁盤目残数90以上、△:碁盤目残数50〜89、×:碁盤目残数50以下)。
(注1)「STANN BL」:三共有機合成社製、ジブチル錫ジラウレート
(注2)「デュラネートTPA100」:旭化成社製、ポリイソシアネート
(注3)「レタンPGエコシンナー20」:関西ペイント社製、希釈シンナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリオール(A)、重量平均分子量が2,000〜50,000、水酸基価が0.5〜200mgKOH/g、ガラス転移温度が−70〜0℃の範囲内にあるポリエステルポリオール(B)ならびに有機溶剤(C)を含み、アクリルポリオール(A)が、スチレン(a)、有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー(b)および水酸基含有重合性不飽和モノマー(c)を構成モノマー成分として有し、スチレン(a)および有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(b)の合計量が構成モノマー成分中30質量%以上であって、ポリエステルポリオール(B)の配合量がアクリルポリオール(A)ならびにポリエステルポリオール(B)の合計量を基準にして1〜70質量%の範囲内にあることを特徴とするベース塗料組成物。
【請求項2】
有機溶剤(C)が、その成分の一部としてケトン系有機溶剤を有機溶剤(C)中1〜50質量%含む請求項1に記載のベース塗料組成物。
【請求項3】
顔料(D)をさらに含む請求項1または2に記載のベース塗料組成物。
【請求項4】
顔料(D)が、その成分の一部として体質顔料を全顔料(D)中0.5〜80質量%の範囲内で含む請求項3に記載のベース塗料組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のベース塗料組成物に、ポリイソシアネート(E)を含む硬化剤をさらに配合してなる2液型の塗料組成物。
【請求項6】
塗装時の不揮発分が、50質量%以上である請求項5に記載の塗料組成物。
【請求項7】
被塗面に、請求項1ないし6に記載のベース塗料組成物または塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2008−163204(P2008−163204A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354781(P2006−354781)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】