説明

ベータ−セラム乳製品、中性脂肪除去及び/又は極性脂質濃縮乳製品、及び当該製品の製造方法

低レベルの中性脂肪、及び/又は高レベルの極性脂質を有する乳製品の製造方法であって、近臨界二酸化炭素又はジメチルエーテルを用いて抽出することによる方法に関する。これらの製品は、乳児用調製粉乳における成分として使用されてもよい。ベータ・セラムを含む乳児用調製粉乳が特許請求される。「ベータ-セラム」は、水中油乳濁液から油中水乳濁液への相反転を経た60%を超える脂肪を含む乳製品から分離された水性乳成分、例えばバターオイルの生産のあいだに産生されるセラムを意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳製品及び当該乳製品の製造方法を提供する。本発明の乳製品は、乳児用調製粉乳(infant formulas)に使用するのに適している乳製品を含む。
【背景技術】
【0002】
市販されている乳児用調製粉乳は、通常ヒト以外の乳汁を用いて製造される。しかしながら、ヒト乳汁の栄養組成は、ヒト以外(例えば、ウシ、ヒツジ、水牛、又はヤギ)の乳汁の栄養組成とは幾つかの点で異なる。
【0003】
ヒト以外の全乳、例えばウシ、ヤギ、又はヒツジの乳汁は、ヒト乳汁より高い割合の飽和脂肪酸を含み、そしてリノール酸及びα-リノール酸、つまり通常の乳児の成長及び発達に必須である多価不飽和脂肪酸を欠いている。また、乳脂肪中に見られる酪酸が乳幼児において腐敗性の嘔吐(putrid vomit)を引き起こすこともある。
【0004】
その結果、標準的な乳児用調製粉乳は、一般的に、スキムミルクなどの低脂肪乳製品を用いて製造される。低脂肪乳製品を用いることは、乳脂肪中の不所望な成分が乳児用調製粉乳中に含まれないということを意味するが、リン脂質及び(グリコ)スフィンゴリピドレベルがヒト乳汁中のレベルよりかなり低いということも意味する。
【0005】
乳児用調製粉乳中のリン脂質及び(グリコ)スフィンゴリピド(特に、ガングリオシドGM3、ガングリオシドGD3、セラミド、及びスフィンゴミエリン)レベルをヒト乳汁中に見られるレベルに増加させることが、以下の:
・腸の成熟の亢進、それにより感染リスクが低下する;
・腸内細菌叢を改善し、そして抗原を競合的に結合することによる感染の予防;
・アレルギー発達の予防;及び
・最適な神経発達
を引き起こしうることが、最近の5〜10年の研究により示された。
【発明の開示】
【0006】
その結果、不所望な成分を最小にするか又は取り除く一方、十分なレベルの所望される脂質を含む乳児用調製粉乳を産生することが望まれている。
【0007】
このことを達成するために現在使用されている一の方法は、基となる調製粉乳に脂質含有抽出物及び他の個々の成分を加えることであり、それにより所望される栄養プロファイルを有する乳児用調製粉乳が産生される。脂質抽出物は、慣用される抽出溶媒を用いて製造されうる(例えば、WO94/18289号は、溶媒抽出技術を用いてリン脂質を含む脂肪濃縮物からスフィンゴミエリンを抽出する方法を記載する)。かかるリン抽出物は、製造コストが高い。さらに、その使用について幾つかの管轄当局の規制認可が得られるまでに大規模な毒性試験及び安全性試験が必要とされる。
【0008】
この目的を達成するために使用される他の方法は、乳児用調製粉乳中にバターミルクを含めることである。バターミルクは以下の3つの過程:
(1)Fritzバター製法又はバッチバター製法のいずれかを用いた伝統的なバターの製造
(2)図1に示されるクリームからのバター-オイル(無水乳脂肪又はAMFとしても知られている)の伝統的な製造
(3)図2に示されるトゥー-セラム・プロセス(two-sera process)を用いたクリームからのバターオイルの製造、ここでバターミルクは、二次スキム(secondary skim)液とベータ-セラム(beta serum)液とを混合することにより産生される
のうちの一つの間に産生される含水副産物液である。
【0009】
バターミルクを含む乳児用調製粉乳は、ヒト以外の乳汁よりも少ない量しか乳脂肪の不所望な成分を含まないが、低脂肪乳製品よりも高いレベルのリン脂質及び(グリコ)スフィンゴリピドを含む。しかしながら、これらの所望される脂質についてのレベルは、ヒト乳汁のリン脂質及び(グリコ)スフィンゴリピドレベルと同等のレベルを達成するために乳清を主原料とする乳児用調製粉乳において使用されるバターミルクに十分なほど高くはない。
【0010】
二酸化炭素を溶媒として用いた超臨界抽出が、バターミルク粉末から中性脂肪を抽出するために知られている。Astaire J. C, Ward R., German J. B., 及びJimenez- Flores R. (2003) Concentration of Polar MFGM Lipids from Buttermilk by Microfiltration and Supercritical Fluid Extraction J. Dairy Sci. 86, 2297-2307は、タンパク質に富みかつ極性脂質のレベルが高められた生成物を製造するために、二酸化炭素を溶媒として使用するバターミルクの超臨界抽出を記載する。しかしながら、そのようにして産生されたバターミルク粉末は、それでも低いレベルの極性脂質、最大で乾燥粉末重量の2%しか有さず、そうして乳児用調製粉乳に適さない。
【0011】
適切な生成物を提供するための一の可能な方法は、乳製品において脂質成分からタンパク質成分を分離することである。
【0012】
ジメチルエーテル(DME)は、生卵の黄身から(Yanoら、US4,157,404号)及び乾燥卵粉末から(Yanoら、US4,234,619号)脂質を抽出するのに使用されてきた。当該方法は、脂質及びタンパク質成分を分離された流れに分画することを引き起こす。US4,157,404号において、Yanoは、脂質が生卵の黄身(75%の含水率)から抽出できる一方、タンパク質が変性されるということを記載した。US4,234,619号において、Yanoは、卵の黄身が乾燥している場合タンパク質は変性されないが、リン脂質が部分的にしか抽出できないということを記載した。
【0013】
WO 2004/066744号は、ジメチルエーテルを溶媒とする近臨界抽出を用いて水性の乳汁から脂質を抽出することを記載する。WO 2004/066744号により、超臨界CO2又は未臨界ジメチルエーテルのいずれもが、乳清タンパク質濃縮(WPC)粉乳から実用的な収率で脂質を抽出できないということが開示された。しかしながら、当該文献は、乳脂肪球被膜物質に富む粉末からの脂質の抽出を開示してはいない。
【0014】
液化ジメチルエーテルを用いた抽出により、高ラクトース含量(ここで、高いとは全粉末の少なくとも30重量%を意味する)の粉乳流から脂質を抽出する試みは、上手くいかなかった。
【0015】
その結果、本発明の対象は、乳児用調製粉乳に使用することができる改善されたか又は代わりの乳製品を提供すること、及び/又は少なくとも有用な選択を公衆に提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、低レベルの中性脂肪又は高レベルの極性脂質の両方を有する乳製品を製造する方法に関する。これらの製品は、乳児用調製粉乳中の構成要素として使用されうる。
【0017】
こうして、本発明は、以下のステップ:
(1)乾燥ベータ-セラム(beta-serum)を準備し;そして
(2)当該ベータ-セラムを近臨界二酸化炭素抽出プロセスにかける
を含む、中性脂肪除去ベータ-セラム乳製品を製造する方法を提供する。
【0018】
本明細書に使用される「ベータ-セラム」という用語は、水中油乳濁液から油中水乳濁液への相反転が行われた60%を超える脂肪を含む乳製品から分離された水性の乳成分を意味する。クリームはベータ-セラムの製造のための好ましい開始物質である。例えば、ベータ-セラムは、図2に示されるようにクリームからバターオイル(またの名を、無水乳脂肪又はAMF)を製造する間に産生される。
好ましくは、乾燥されたベータ-セラムは粉末である。
【0019】
好ましくは近臨界二酸化炭素圧力は少なくとも73.2barであり、そして温度は304.2〜373K(超臨界領域)の範囲であるか;又は二酸化炭素圧力は蒸気圧より大きいか又は蒸気圧に等しく、そして温度は273〜304.1K(未臨界領域)である。より好ましくは、二酸化炭素圧は、少なくとも250barであり、そして温度は313〜353Kの範囲である。
【0020】
好ましくは、ベータ-セラムのラクトース含量は、抽出プロセスの前に低下される。好ましくは、ラクトース含量は限外ろ過により低減される。本発明の特に好ましい実施態様では、ラクトース含量は、限外ろ過のあいだに膜分離法によりさらに低減される。
【0021】
好ましくは、ラクトース含量は、近臨界二酸化炭素ステップの前において(乾燥重量ベースで)30%以下に低減される。より好ましくは、ラクトース含量は、近臨界二酸化炭素ステップの前に(乾燥重量ベースで)25%以下に低減される。より好ましくは、ラクトース含量は、近臨界二酸化炭素ステップの前に(乾燥重量ベースで)20%以下に低減される。最も好ましくは、ラクトース含量は、近臨界二酸化炭素ステップの前に(乾燥重量ベースで)10%以下に低減される。
【0022】
好ましくは、中性脂肪除去ベータ-セラム乳製品は、リン脂質、スフィンゴリピド、及び糖脂質に富む。好ましくは、乳製品は、約50〜70%のタンパク質(TN×6.38)、好ましくは少なくとも60%のタンパク質(TN×6.38);5〜25%のリン脂質及び糖脂質、好ましくは15〜25%のリン脂質及び糖脂質;そして0〜10%の中性脂肪、好ましくは約5%の中性脂肪を含む。最も好ましい乳製品は、約5%未満の中性脂肪を含む。
【0023】
本発明は、以下のステップ:
(1) 乾燥高脂肪低ラクトース乳製品物質を準備し;
(2) 当該開始物質を近臨界二酸化炭素抽出プロセスにかけ;
続いて乳製品を分画して脂質濃縮分画及び脂質除去分画を生成し;以下のステップ:
(3) 当該脂質除去乳製品を液体ジメチルエーテル抽出プロセスにかける
を含む中性脂肪除去乳製品の製造方法を提供する。
【0024】
好ましくは、近臨界二酸化炭素圧は、少なくとも73.2barであり、そして温度は304.2〜373K(超臨界領域)の範囲であり;又は二酸化炭素圧は蒸気圧より大きいか又は蒸気圧に等しく、そして温度は273〜304.1K(未臨界領域)の範囲である。より好ましくは二酸化炭素圧は、少なくとも250barであり、そして温度は313〜353Kの範囲である。
【0025】
好ましくは、ジメチルエーテルは液化され、そして少なくとも抽出温度における蒸気圧と等しい圧力に加圧され、そしてより好ましくは蒸気圧より少なくとも10bar大きい。好ましくは、温度は273〜373Kの範囲であり、そしてより好ましくは293〜353Kの範囲である。
【0026】
「高脂肪」という用語は、固体の10%w/wを超える脂肪、好ましくは固体の15%w/wを超える脂肪、そして最も好ましくは固体の20%w/wを超える脂肪を含むことを意味する。
【0027】
「低ラクトース」という用語は、ラクトース含量が(乾燥重量ベースで)30%以下であることを意味する。より好ましくは、ラクトース含量は、(乾燥重量ベースで)25%以下である。より好ましくは、ラクトース含量は、(乾燥重量ベースで)20%以下である。より好ましくは、ラクトース含量は、(乾燥重量ベースで)10%以下である。
【0028】
好ましくは、ベータ-セラムのラクトース含量が、抽出プロセスの前に低減される。好ましくはラクトース含量は、限外ろ過により低減される。特に好ましい本発明の実施態様では、ラクトース含量は、限外ろ過のあいだにおける膜分離によりさらに低減される。
【0029】
好ましくは、高脂肪低ラクトース乳製品開始物質は、ラクトースを低減されたベータ-セラムである。或いは、高脂肪低ラクトース開始物質は、ラクトースを低減されたバターミルクである。
【0030】
好ましくは、高脂肪低ラクトース乳製品開始物質は、近臨界二酸化炭素ステップの前にスプレー乾燥される。或いは、高脂肪低ラクトース乳製品開始物質は、近臨界二酸化炭素ステップの前に凍結乾燥されるか又は吸引乾燥される。
【0031】
脂質濃縮分画は、好ましくは、少なくとも50%のリン脂質及び糖脂質を含み、そして中性脂肪を実質的に低減される。より好ましくは、脂質濃縮分画は、少なくとも80%リン脂質及び糖脂質を含み、そして実質的に中性脂肪を含まない。
【0032】
好ましい実施態様では、脂質除去分画は、乳脂肪球被膜タンパク質について濃縮され、そして粉末ベースで65〜79%(TN×6.38)のタンパク質、8〜12%のラクトース、リン脂質を含む5〜11%の脂肪、より好ましくは約72%のタンパク質(TN×6.38)、9%のラクトース、リン脂質(分画の6%)を含む8%の脂肪、5%灰分(ash)、及び4%の水分を含む。
【0033】
本発明は、脂質濃縮分画及び脂質除去分画を産生する方法であって、以下のステップ:
(1) 高脂肪低ラクトース乳製品開始物質を準備し;そして
(2) 当該開始物質を液体ジメチルエーテル抽出プロセスにかける
を含む方法を提供する。
【0034】
脂質除去分画は、乳脂肪球被膜タンパク質の全てを含み、その結果、乳脂肪球被膜タンパク質成分と強く関わる健康上の効用を与えるために、乳児用調製粉乳中に使用することができる。
【0035】
好ましくは、ジメチルエーテルは液化され、そして少なくとも抽出温度における蒸気圧に等しい圧力にかけられ、そしてより好ましくは、蒸気圧よりも少なくとも10bar高い圧力である。好ましくは、当該温度は273〜373Kの範囲であり、そしてより好ましくは293〜353Kの範囲である。
【0036】
「高脂肪」という用語は、固体の10%w/wより多い脂肪、好ましくは固体の15%w/wより多い脂肪、そして最も好ましくは固体の20%w/wより多い脂肪を含むことを意味する。
【0037】
「低ラクトース」という用語は、ラクトース含量が(乾燥重量ベースで)30%以下であることを意味する。より好ましくは、ラクトース含量が(乾燥重量ベースで)25%以下であることを意味する。より好ましくは、ラクトース含量が(乾燥重量ベースで)20%以下であることを意味する。より好ましくは、ラクトース含量が(乾燥重量ベースで)10%以下であることを意味する。
【0038】
好ましくは、ベータ-セラムのラクトース含量は、抽出プロセスの前に低減される。好ましくは、ラクトース含量は限外ろ過によりベータ-セラム又は開始物質中で低減される。本発明の特に好ましい実施態様では、ラクトース含量はさらに限外ろ過の間に膜分離法によりさらに低減される。
【0039】
好ましくは、高脂肪低ラクトース乳製品開始物質は、ラクトースが低減されたベータ-セラムである。或いは、高脂肪低ラクトース乳製品開始物質は、ラクトースが低減されたバターミルクである。
【0040】
好ましくは、 高脂肪低ラクトース乳製品開始物質は、液体ジメチルエーテル抽出ステップ前にスプレー乾燥される。或いは、高脂肪低ラクトース乳製品開始物質は、液体ジメチルエーテル抽出ステップ前に凍結乾燥されるか又は吸引乾燥される。
【0041】
一の実施態様では、脂質濃縮分画は、少なくとも40%のリン脂質及び糖脂質を含む。当該方法は、最初に中性脂肪をCO2で取り除くことはせず、そしてDMEが極性及び中性脂肪の両方を抽出するので、DME脂質抽出物は、供給物とだいたい同じ中性脂肪対リン脂質の比を含むであろう。例えば、約1.2のリン脂質に対する中性脂肪を含む供給物について、3%水分に基づくDME脂質抽出物の組成は、リン脂質(分画の35〜45%)を含む80〜90%の脂肪、5〜9%の灰分、2〜5%のラクトース、及び2〜3%の水分を含む。
【0042】
脂質除去分画は、乳脂肪球被膜タンパク質に富み、そして粉末ベースで約60〜80%のタンパク質(TN×6.38)、6〜12%のラクトース、リン脂質(分画の5〜9%)を含む5〜11%の脂肪、好ましくは73%のタンパク質(TN×6.38)、9%のラクトース、リン脂質(分画の7%)を含む8%の脂肪、5%の灰分、及び3%の水分を含む。
【0043】
本明細書に記載される生成物中のタンパク質のレベルは、サンプル中の総窒素(TN)に6.38の係数を掛けることにより計算される。
【0044】
本発明は、本発明の方法により産生される生成物、並びにかかる生成物を含む組成物及び乳児用調製粉乳を提供する。
【0045】
本明細書に使用される「乳児用調製粉乳」という用語は、0〜12月齢の乳児用に設計された調製粉乳、6〜12月齢の乳児用に設計された調製粉乳(継続して用いる調製粉乳)、及び幼児及び小児用に設計された調製粉乳(1〜7歳、育児用乳/粉乳)を含む。
【0046】
好ましくは、本発明は、以下の:
(a) 30〜60%のラクトース
(b) 15〜35%の植物油
(c) 0〜40%のスキムミルク粉末
(d) 0〜40%の乳清タンパク質濃縮物
(e) 1〜50%の本発明の方法により産生される生成物
を含む乳児用調製粉乳を提供する。
【0047】
より好ましくは、本発明は、以下の:
(a) 40〜60%のラクトース
(b) 20〜30%の植物油
(c) 10〜15%のスキムミルク粉末
(d) 6〜8%の80%タンパク質乳清タンパク質濃縮物(WPC80)
(e) 1〜5%の本発明の方法により産生される生成物
を含む乳児用調製粉乳を提供する。
【0048】
乳児用調製粉乳は、以下の:
(a) ビタミン混合物
(b) ミネラル混合物
(c) レシチン
(d) 抗酸化剤
(e) 安定剤
(f) ヌクレオチド
のうちの少なくとも1つであって2〜4%のものを含んでもよい。
【0049】
好ましい実施態様では、これらの乳児用調製粉乳は、2700〜3000kJ/Lを提供するように剤形されてもよい。
本発明は、ベータ-セラムを構成要素として含む乳児用調製粉乳を提供する。
【0050】
好ましくは、当該乳児用調製粉乳は、以下の:
(a) 30〜60%のラクトース
(b) 15〜35%の植物油
(c) 0〜40%のスキムミルク粉末
(d) 0〜40%の乳清タンパク質濃縮物
(e) 1〜50%のベータ-セラム粉末
を含む。
【0051】
より好ましくは、乳児用調製粉乳は以下の:
(a) 40〜60%のラクトース
(b) 20〜30%の植物油
(c) 10〜15%のスキムミルク粉末
(d) 6〜8%の80%タンパク質乳清タンパク質濃縮物(WPC80)
(e) 1〜10%のベータ-セラム粉末
を含む。
【0052】
最も好ましくは、乳児用調製粉乳は以下の:
(a) 40〜60%のラクトース
(b) 20〜30%の植物油
(c) 10〜15%のスキムミルク粉末
(d) 6〜8%の80%タンパク質乳清タンパク質濃縮物(WPC80)
(e) 2〜5%のベータ-セラム粉末
を含む。
【0053】
乳児用調製粉乳は、以下の:
(a) ビタミン混合物
(b) ミネラル混合物
(c) レシチン
(d) 抗酸化剤
(e) 安定化剤
(f) ヌクレオチド
のうちの少なくとも1つであって、2〜4%のものを含んでもよい。
【0054】
好ましい実施態様では、乳児用調製粉乳は、2700〜3000kJ/Lを提供するように調製される。
【0055】
本発明は、極性脂質に富むか又は中性脂肪を欠く、或いはその両方のベータ-セラムから得られる分画を構成要素として含む乳児用調製粉乳を提供する。
【0056】
好ましくは、乳児用調製粉乳は以下の:
(a) 30〜60%のラクトース
(b) 15〜35%の植物油
(c) 0〜40%のスキムミルク粉末
(d) 0〜40%の乳清タンパク質濃縮物
(e) 1〜50%の極性脂質に富むか又は中性脂肪を欠き、或いはその両方のベータ-セラムから得られる分画
を含む。
【0057】
より好ましくは、乳児用調製粉乳は、以下の:
(a) 40〜60%のラクトース
(b) 20〜30%の植物油
(c) 10〜15%のスキムミルク粉末
(d) 6〜8%の80%タンパク質乳清タンパク質濃縮物(WPC80)
(e) 1〜5%の極性脂質に富むか又は中性脂肪を欠き、或いはその両方のベータ-セラムから得られる分画
を含む。
【0058】
乳児用調製粉乳は、以下の:
(a) ビタミン混合物
(b) ミネラル混合物
(c) レシチン
(d) 抗酸化剤
(e) 安定化剤
(f) ヌクレオチド
のうちの少なくとも1であって、2〜4%のものを含む。
【0059】
好ましい実施態様では、これらの乳児用調製粉乳は、2700〜3000kJ/Lを提供するように調製されうる。
【0060】
本発明の生成物、組成物、及び乳児用調製粉乳は、健康上の利益を提供するために投与されうる。
【0061】
例えば、以下の健康上の利益が予期される:
・腸の成熟の亢進
・感染リスクの低下
・腸内細菌叢の改善及び抗原への競合的結合
・感染予防
・アレルギー発達の予防
・神経発達の最適化
・皮膚病変の治療
・免疫系の発達の最適化
・最適な免役機能の維持
・結腸癌の予防又は治療
【0062】
本発明者は、ベータ-セラム中のリン脂質及びガングリオシドのレベルによって、当該ベータ-セラムが乳児用調製粉乳の強化に使用するために適したものとなることを発見した。本発明者はまた、中性脂肪のレベルを低下させるか又は極性脂質のレベルを増加させるか、或いはその両方となるようにするため、高脂肪であるが低ラクトースである乳製品(低ラクトースベータ-セラムを含む)を加工し、そうして乳児用調製粉乳の強化にさらに適している生成物を製造することができることを発見した。
【0063】
本発明において記載されるプロセスは、毒性の残存物を残さない加工及び抽出技術を利用するので、最終的な乳製品のさらなる過程を必要としない。
【0064】
さらに、溶媒として二酸化炭素を用いて限外ろ過及び近臨界抽出を使用することは、その生成物の使用についての規制認可を得ることが容易であることが意味される。なぜなら、アセトン及びエタノールなどの慣用溶媒の使用に比べて、生成物中に最小の溶媒残渣しか存在しないか又は全く存在しないからである。さらに、慣用される溶媒はタンパク質を強く変性させるので、これらの溶媒の使用は、乳児用調製粉乳に用いる乳製品の製造には不適となる。
【0065】
本明細書に使用される「乳」という用語は、乳汁を含むもの又は乳汁に関するもの、並びにその製品を意味する。乳は、ヒト、ウシ、水牛、及びヤギにより産生される乳汁を含むが、これらの動物に限られることはない。
【0066】
全ての物質は、物質の液体及び気体状態が同一になる固有の「臨界」点を有する。物質の臨界点を超えているが臨界点の付近である点では、当該物質は液体及び気体の両方の性質を有する流体状態になる。当該流体は、液体に近い密度を有し、そして気体に近い粘度及び拡散性を有する。本明細書に使用される「超臨界」という用語は、物質の臨界点を超えた圧力-温度領域を指す。本明細書で使用される「未臨界」という用語は、液体についての蒸気圧と等しいか又は蒸気圧を超えるが、臨界温度より以下である圧力-温度領域を指す。本明細書で使用される「近臨界」という用語は、「超臨界」及び「未臨界」領域の両方を包含し、そして臨海点の付近の圧力及び温度を指す。
以下の実施例は、本発明の実施をさらに記載する。
【実施例】
【0067】
実施例1:乳清タンパク質濃縮粉末の抽出
本実施例により、高濃度乳清タンパク質を有する粉末からの脂質の抽出は、かなり低い脂質収率をもたらすということが示される。80.26重量%のタンパク質、6.83重量%の脂質、及び3.57%の水分を含む乳清タンパク質濃縮物粉末を、二酸化炭素、プロパン、ジメチルエーテル(DME)などの近臨界溶媒を用いて抽出した。溶媒、圧力、温度、使用される固体の重量、使用される溶媒の重量、及び脂質収率を、表1に与える。
【表1】

【0068】
実施例2:超臨界CO2を用いた標準ラクトース・ベータ・セラム粉末の抽出
本実施例により、標準ラクトース含量を有するベータ-セラム粉末から中性脂肪を抽出することが可能であるが、ラクトース含量が低下された粉末を用いた場合より、収率が有意に低いということが示される。最終的な粉末におけるタンパク質含量及び総リン脂質含量は低い。以下の組成:バッチ1-総タンパク質29.4%、ラクトース42.5%、総脂肪19.7%、水分3.1%、及び灰分6%;バッチ2-総タンパク質31.7%、ラクトース44.6%、総脂肪20.6%、水分2.3%、及び灰分6.1%を有するベータ・セラム粉末を、超臨界CO2、300bar及び313Kを用いて抽出した。総脂肪は、中性脂肪、リン脂質、ガングリオシド、セラミド、及びセレブロシド、例えばラクトシルセラミドから構成される。脂肪抽出結果及び抽出物中のリン脂質の重量を表2に示す。中性脂肪のみが超臨界CO2により抽出される一方、他のタイプの脂肪、特にリン脂質は当該溶媒に溶解しない。
【0069】
【表2】

【0070】
抽出後の粉末組成は:バッチ1-総タンパク質32.0%、ラクトース47.9%、総脂肪13.6%、水分3.8%、及び灰分3%;バッチ2-総タンパク質34.2%、ラクトース44.2%、総脂肪11.3%、水分3.5%、及び灰分6.3%であった。
【0071】
バッチ2の粉末を乳清タンパク質変性について試験した。カゼインタンパク質は変性していないと推測された。代表的な粉末サンプルをとり、そして水と混合して約3%の乳清タンパク質溶液を与えた。塩酸を用いてpH4.6でカゼインを沈殿させ、そして遠心により溶液から取り除いた。残った可溶性乳清タンパク質の組成を逆相クロマトグラフィーにより測定した。可溶性の乳性タンパク質は、供給物中における13.43g/100gのタンパク質から、抽出粉末中における8.39g/100gのタンパク質へと減少した。未変性(未変性)ベータ-ラクトグロブリンはかなり大きく低下した。タンパク質の変性は、実施例3に記載される生成物よりも当該粉末を乳児用調製粉乳に適していないものにする。
【0072】
実施例3:超臨界CO2を用いた低ラクトースベータ-セラム粉末の抽出
本実施例により、90%の収率で低ラクトースベータ-セラム粉末から中性脂肪を抽出することが可能であることが示された。限外ろ過によりベータ-セラムのラクトース濃度を、体積濃度因子8へと低下させた。最終粉末におけるタンパク質含量及び総リン脂質含量は高い。以下の組成:バッチ3-低ラクトースの総タンパク質48.3%、ラクトース14.4%、総脂肪30.1%、水分3.0%、及び灰分4.8%;バッチ4-総タンパク質52.0%、ラクトース7.8%、総脂肪31.9%、水分2.7%、及び灰分4.8%を有する低ラクトースベータ-セラム粉末を300bar及び313Kで超臨界CO2において抽出した。脂肪抽出結果及び抽出物中のリン脂質の重量を表3に示す。超臨界CO2により中性脂肪のみが抽出される一方、他のタイプの脂肪、特にリン脂質は当該溶媒に溶解しない。
【0073】
【表3】

【0074】
抽出後の粉末組成は、バッチ3-総タンパク質57.3%、ラクトース15.1%、総脂肪18.7%、総リン脂質14.4%、水分4.1%、及び灰分5.7%;バッチ4-総タンパク質61.6%、ラクトース10.1%、総脂肪21.9%、総リン脂質16.8%、水分4.5%、及び灰分5.6%であった。超臨界CO2で抽出されたバッチ3及び4は、ガングリオシドのレベルを〜0.7重量%に増加させた。残りの粉末における総脂肪とリン脂質及びガングリオシド含量との間の残りの差は、主にセラミド及びセレブロシド、特にラクトシルセラミドから構成される。
【0075】
バッチ3(低ラクトース)及び4(極めて低いラクトース)からの粉末をタンパク質変性について試験して、実施例2のように乳児用調製粉乳への使用に適していることを保証した。可溶性乳清タンパク質は、供給物における12.20g/100gのタンパク質からバッチ3についての抽出粉末における13.57g/100gのタンパク質へと増加し;そして供給物における12.44g/100gのタンパク質からバッチ4についての抽出粉末における12.94g/100gのタンパク質へと増加した。タンパク質変性がないこと、並びに抽出された低ラクトース粉末においてタンパク質及びリン脂質含量が高いことは、それらを乳児用調製粉乳にかなり適したものとする。
【0076】
実施例4:超臨界CO2を用い、続いて近臨界ジメチルエーテルを用いた標準及び低ラクトースベータ-セラム粉末の抽出
本実施例により、超臨界CO2で予め抽出されたベータ-セラム粉末からリン脂質を高収率で抽出することは、当該粉末のラクトース含量が低減された場合に限り可能であることが示され;そしてジメチルエーテル抽出温度が抽出収率に影響を与えることが示される。本実施例により、抽出温度を制御することによって抽出後における粉末中の最終リン脂質含量を制御することが可能であるということが示される。実施例2及び3において生成された部分的に脱脂された粉末バッチ2(標準ラクトース含量、供給重量4318.7g)、バッチ3(低ラクトース、供給重量2952.6g)、及びバッチ4(極めて低いラクトース、供給重量2668.2g)を、それぞれ12.236kg、13.828kg、及び5.117kgのジメチルエーテルを用いて、40bar及び293Kで再抽出し;次にそれぞれ13.037kg、10.962kg、及び6.965kgのジメチルエーテルを用いて40bar及び323Kで再抽出した。抽出収率の結果を表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
脂質抽出物の全体はまた、かなりのレベルのガングリオシド、バッチ4について293Kで2.5重量%;及びバッチ4について323Kで1重量%を含んだ。全ての粉末のタンパク質含量は、ジメチルエーテル抽出後において供給物に対して増加した。CO2及びジメチルエーテル抽出の後の粉末組成は、バッチ2-総タンパク質34.6%、ラクトース47.1%、総脂肪8.9%、総リン脂質6.3%、水分2.7%、及び灰分6.7%;バッチ3-総タンパク質64.4%、ラクトース17.9%、総脂肪8.4%、総リン脂質5.7%、水分3.6%、及び灰分5.4%;バッチ4-総タンパク質73.2%、ラクトース8.7%、総脂肪7.6%、水分4.3%、及び灰分5.1%であった。両方の粉末は、かなりのレベルのガングリオシド、約0.4重量%を有した。残渣粉末における総脂肪と、リン脂質及びガングリオシド含量との間の残りの差は、主にセラミド及びセレブロシド、特にラクトシルセラミドから構成される。
【0079】
超臨界CO2及びジメチルエーテル抽出の後のバッチ2(標準ラクトース含量)、バッチ3(低ラクトース)、及びバッチ4(極めて低いラクトース含量)の粉末を、実施例2に記載されるようにタンパク質変性について試験した。可溶性乳清タンパク質は、バッチ2について13.43g/100gのタンパク質からDME抽出された粉末における8.00g/100gのタンパク質へと低減した。可溶性乳清タンパク質は、供給物中における12.20g/100gのタンパク質からバッチ3の抽出粉末における15.23g/100gのタンパク質へと;そして供給物における12.44g/100gのタンパク質からバッチ4の抽出粉末における16.98g/100gのタンパク質へと増加した。タンパク質の変性がないこと、及び抽出された低ラクトース粉末におけるタンパク質及びリン脂質含量が高いことが、これらを乳児用調製粉乳にかなり適したものとする。ジメチルエーテルでの抽出は、見かけ上の乳清タンパク質の溶解度を増加させる予期していない効果を有した。この効果は供給物からラクトースを取り除くことにより最初に低減される。
【0080】
実施例5:ジメチルエーテルを用いた標準及び低ラクトース粉末の抽出
本実施例により、ベータ-セラム粉末から中性脂肪及びリン脂質の両方を高収率で抽出することは、粉末を前もって超臨界CO2で抽出せずにジメチルエーテルを溶媒として使用した際に当該粉末のラクトース含量が低下された場合に限って可能であることが示され、そしてジメチルエーテル抽出の温度が抽出収率に影響を及ぼすことが示される。本実施例はまた、抽出温度を制御することにより、抽出後における粉末の最終リン脂質含量を制御することが可能であることを示す。実施例2に与えられる組成を有するバッチ2(標準ラクトース含量、供給重量4245.6);並びに実施例3に与えられる組成を有するバッチ3(低ラクトース、供給重量3407.5g)及びバッチ4(極めて低いラクトース、供給重量3204.4g)を、それぞれ13.426kg、12.666kg、及び13.938kgのジメチルエーテルを用いて40bar及び273293Kで抽出し;そして次にそれぞれ15.727kg、11.673kg、及び11.123kgのジメチルエーテルを用いて40bar及び323Kで再抽出した。抽出収率の結果を表5に示す。
【0081】
【表5】

【0082】
全ての粉末のタンパク質含量は、ジメチルエーテル抽出後に、供給物に比較して増大した。ジメチルエーテル抽出後の粉末組成は:バッチ2-総タンパク質34.8%、ラクトース44.2%、総脂肪16.3%、リン脂質8.3%、水分2.3%、及び灰分6.2%;バッチ3-総タンパク質65.1%、ラクトース15.3%、総脂肪8.3%、リン脂質6.7%、水分2.2%、及び灰分5.3%;バッチ4-総タンパク質73.3%、ラクトース8.8%、総脂肪8.3%、総リン脂質6.8%、水分2.6%、及び灰分5.2%であった。バッチ3及び4では、総脂質とリン脂質含量との間の差は、ガングリオシド、セラミド、及びセレブロシドから構成される。
【0083】
ジメチルエーテル抽出後のバッチ2(標準ラクトース含量)、バッチ3(低ラクトース)、及びバッチ4(極めて低いラクトース)からの粉末を、実施例2と同様にタンパク質変性について試験した。可溶性乳清タンパク質は、バッチ1について13.43g/100gのタンパク質から14.38g/100gに、バッチ3について供給物における12.20g/100gのタンパク質から抽出粉末における15.47g/100gのタンパク質に;そしてバッチ4について供給物における12.44g/100gのタンパク質から抽出における15.55g/100gのタンパク質に増加した。タンパク質変性がないこと、及びDME抽出された低ラクトース粉末においてタンパク質含量が高いことは、それらを幅広い食品用途、特にスポーツ栄養に適したものとする。ジメチルエーテルでの抽出は、見掛け上の乳清タンパク質溶解度を増加させる予期せぬ効果を有した。当該効果は、供給物からラクトースを取り除くことにより最初に低減される。ジメチルエーテルのみを抽出溶媒として用いる場合、総脂質及びリン脂質の抽出収率は、高ラクトース含量を有する粉末(バッチ2)ではかなり低い。中性脂肪の高含量は、当該粉末を乳児用調製粉乳に適さないものとする。
【0084】
実施例6:選択された乳製品におけるリン脂質及びガングリオシドのレベル
ヒト乳汁のリン脂質含量は、通常、200〜400mg/Lの範囲である(Jensen RG (1989) Textbook of Gastroenterology and Nutrition in Infancy、第二版、E. Lebenthal (編), Raven Press Ltd, New York, 157-208)。
【0085】
Harzer G, Haug M, Dieterich I & Gentner PR (1983) Changing patterns of human milk lipids in the course of the lactation and during the day. American Journal of Clinical Nutrition, 37, 612-621によると、分娩後36日目の人乳中のリン脂質組成は、ホスファチジルコリン(PC)24.9%、ホスファチジルエタノールアミン(PE)27.7%、ホスファチジルセリン(PS)9.3%、ホスファチジルイノシトール(PI)5.4%、及びスフィンゴミエリン(SM)32.4%である。
【0086】
表6は、以下の:
・ベータ・セラム粉末(生成物A)
・低ラクトースベータ・セラム粉末(生成物B)
・中性脂肪除去ベータ-セラム粉末(生成物C)、及び
・DME抽出後の生成物Cの脂質抽出物(生成物D)及び残渣粉末(生成物E)
からなるリン脂質含量を示す。
これらの生成物は牛の乳汁に由来する。
【0087】
生成物A(ベータ-セラム粉末)を図2に記載される方法を用いて生成した。生成物B(低ラクトースベータ-セラム粉末)を生成物Aの限外ろ過により生成した。生成物Cを実施例3に記載される方法を用いて製造した。生成物D及びEを実施例4のバッチ4について記載される方法を用いて製造した。但し、一段式DME抽出を55℃で行った。
【0088】
オーブン乾燥ではなく脂質抽出物を吸引蒸発及び凍結乾燥する改変Rose-Gottlieb法により計測した(低温乾燥は、脂質抽出物中のアンモニアの存在のためにオーブン乾燥中に生じるリン脂質の加水分解を最小にする)。総リン脂質含量は、改変Rose-Gottlieb法の脂質抽出物のリン脂質含量に25.5を掛けることにより計算される(McDowell AKR (1958) Phospholipids in New Zealand dairy products. Journal of Dairy Research, 25, 192-202.を参照のこと)。
【0089】
個々のリン脂質を31P NMRにより計測した。
【0090】
Pan XL & Izumi T (2000) “Variation of the ganglioside compositions of human milk, cow's milk and infant formulas” Early Human Development, 57, 25-31により、ガングリオシドGD3及びガングリオシドGM3がヒト乳汁中の総ガングリオシドの約60%を占めるということ、並びに乳児用調製粉乳の総ガングリオシド含量が、脂質結合シアル酸(LBSA)含量により計測されるとヒト乳汁の総ガングリオシド含量よりも有意に低いということが示された。ヒト乳汁中のガングリオシドGD3及びガングリオシドGM3の含量は、授乳の段階に左右されて10〜16mg/Lの範囲である(Nakanoら、2001 Sialic acid in human milk: Composition and functions. Acta Paediatrica Taiwanica, 42, 11-17)。表6は、生成物A、生成物B、生成物C、生成物D、及び生成物EのガングリオシドGD3及びガングリオシドGM3含量を示す。ガングリオシドGD3及びガングリオシドGM3レベルを以下のように計算した。サンプルをクロロホルム/メタノール/水6:3:0.45中に溶解し、そしてろ過した。ガングリオシドを次に、強アニオン交換固相抽出によりGM3及びGD3分画に分離し、そしてSvennerholmのレゾルシノール法(Svennerholm, L. 1957. Quantitative estimation of sialic acids. II. A colorimetric resorcinol-hydrochloric acid method. Biochim. Biophys. Acta. 24:604-611)により、シアル酸を定量した。次に、GM3及びGD3の濃度を計算するためにシアル酸レベルを使用した。
【0091】
【表6】

【0092】
実施例7:選択された乳製品を含む乳児用調製粉乳
そのまま与えることができる(ready to feed)(RTF)乳児用調製粉乳(IF)中の「総」ガングリオシド(ガングリオシドGD3+ガングリオシドGM3)含量を16mg/Lの分だけ増加させるために粉末ベースの乳児用調製粉乳に加える必要のある各生成物(A、B、C、D、及びE)の割合(%)を示す。
【0093】
標準乳児用調製粉乳中のこれらの成分のベースライン・レベルは0%であり、当該乳児用調製粉乳粉末が13%の全固形分になるように再構成され、そしてRTF IFの密度が1.0kg/lであると仮定する。
【0094】
表7に示されるベータ-セラム生成物の添加割合は、乳児用調製粉乳の個々のリン脂質含量を、ヒト乳汁において見られる含量よりも高いレベルに増加することができる。唯一の例外は生成物Eであり、生成物Eでは、添加されたPE及びPSレベルは、ヒト乳汁中に見られるレベルよりわずかに低い(標準乳児用調製粉乳中の当該成分のベースレベルがこれらの不足分をおそらく補填するであろう)。生成物Dは、乳児用調製粉乳をインスタント化するために一般的に使用され、それにより再構成しやすくする大豆レシチンの代わりに使用することができることに留意すべきである。
【0095】
【表7】

【0096】
実施例8:乳児用調製粉乳
そのまま与えることができる(ready to feed)の全固形分=13.0%
乳清-対-カゼイン比=60:40(乳清タンパク質は、総タンパク質の少なくとも60%である)
タンパク質標的6=14g/L
脂肪標的6,7=35.4〜37.6g/L
炭水化物標的6=72.1〜72.9g/L
6鉄分入りSimilac Advance及び鉄分入りEnfamil LIPILのレベルに基づく。鉄分入りEnfamil LIPILのレベルは、100calあたりのgとして報告されており(g/100gと比較のこと)、その結果、当該製品について2800kJ/LのRTFエネルギー含量が想定される。
7それぞれSimilac及びEnfamilの製品についての見積もりレベル
【0097】
これらの標的レベルは、乳児用調製粉乳(2700〜3000kJ/L)のANZFAエネルギー必要量に適合する。タンパク質、炭水化物、及び脂肪レベルの合計と、13%全固形分との差は、ビタミン及びミネラル混合物、抗酸化剤、レシチン(最終乳児用調製粉乳をインスタント化するために使用される)、及びおそらくヌクレオチド/ヌクレオシドであると想定された。これらの成分は、典型的に粉末乳児用調製粉乳の約3%に達する。
【0098】
乳児用調製粉乳を調製するのに使用されるオイル混合物は、ヒト乳汁の脂肪酸プロファイルに近い脂肪酸プロファイルを達成するために植物油の混合物を含む。乳児用調製粉乳に一般的に使用される植物油は、高オレイン酸パーム油、高オレイン酸ひまわり油、高オレイン酸紅花油、ココナッツ油、及び大豆油である。さらに、多くの高級ブランドは、差かな微細藻類及び真菌油をそれぞれドコサヘキサエン酸及びアラキドン酸の原料として含んだ。
【0099】
乳児用調製粉乳1(ベータ-セラム粉末-生成物Aを用いる):
栄養粉乳(nutritional formula)は以下の:
a. 約46.54%のラクトース
b. 約26.92%の油混合物(45%高オレイン酸パーム油、20%大豆油、20%ココナッツ油、及び15%の高オレイン酸紅花油又は高オレイン酸ひまわり油)
c. 約13.85%のスキムミルク粉末(SMP)
d. 約6.54%のALACEN392(80%タンパク質の乳清タンパク質濃縮物)
e. 約3.15%のベータ-セラム粉末(生成物A)
f. 約3.00%のビタミン及びミネラル混合物、レシチン、抗酸化剤/安定剤、任意成分、例えばヌクレオチド
を含む。
【0100】
乳児用調製粉乳2(低ラクトースベータ-セラム粉末-生成物Bを用いる):
栄養粉乳は以下の:
a. 約47.69%のラクトース
b. 約26.92%の油混合物
c. 約13.85%のSMP
d. 約6.54%のALACEN392
e. 約1.92%の低ラクトースベータ-セラム粉末(生成物B)
f. 約3.08%のビタミン及びミネラル混合物、レシチン、抗酸化剤/安定剤、任意の成分、例えばヌクレオチド
を含む。
【0101】
乳児用調製粉乳3(生成物3を用いる):
栄養粉乳は以下の:
a. 約47.69%のラクトース
b. 約26.92%の油混合物
c. 約13.85%のSMP
d. 約6.54%のALACEN392
e. 約1.73%の生成物C
f. 約3.27%のビタミン及びミネラル混合物、レシチン、抗酸化剤/安定剤、任意の成分、例えばヌクレオチド
を含む。
【0102】
乳児用調製粉乳4(生成物Dを用いる)
栄養粉乳は以下の:
a. 約46.54%のラクトース
b. 約26.92%の油混合物
c. 約16.15%のSMP
d. 約6.77%のALACEN392
e. 約0.51%の生成物D
f. 約3.11%のビタミン及びミネラル混合物、レシチン、抗酸化剤/安定剤、任意の成分、例えばヌクレオチド
を含む。
【0103】
乳児用調製粉乳5(生成物Eを用いる):
栄養粉乳は、以下の:
a. 約50.77%のラクトース
b. 約26.92%の油混合物
c. 約8.23%のSMP
d. 約6.00%のALACEN392
e. 約4.40%の生成物E
f. 約3.68%のビタミン及びミネラル混合物、レシチン、抗酸化剤/安定剤、任意の成分、例えばヌクレオチド
を含む。
【0104】
上の例は、本発明の実施について例示する。本発明が多くの変法及び改変を用いて行われうるということが当業者に評価されよう。例えば、抽出のための温度及び圧力は、開始物質のタンパク質及びラクトース含量が変えられるのと同様に変えられてもよい。
【0105】
また、本発明の乳製品は、消費者における皮膚又は一般的栄養利益用の製品、例えばスポーツ栄養及び高齢者用食品において使用されることが認められよう。
【0106】
本明細書において使用される「含む」という用語は、「少なくとも一部からなる」を意味し、つまり、当該用語を含む明細書中の記載を解釈する場合に、各記載における当該用語の後に続く特徴は、その全てが存在することを必要とするが、他の特徴が存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、クリームからバターオイルを製造する従来の方法、並びに当該方法の間におけるバターミルクの生産についての模式図を示す。
【図2】図2は、クリームからバターオイルを製造するための方法、並びに当該方法の間におけるベータ-セラムの生産についての模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
(1) 乾燥ベータ-セラムを準備し;そして
(2) 当該ベータ-セラムを近臨界二酸化炭素抽出プロセスにかける
を含む中性脂肪除去ベータ-セラム乳製品の製造方法。
【請求項2】
前記近臨界二酸化炭素圧が、少なくとも73.2barであり、そして温度が304.2〜373Kの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素圧が蒸気圧以上であり、そして温度が273K〜304.1Kの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二酸化炭素圧が少なくとも250barであり、そして温度が313〜353Kの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ベータ-セラムのラクトース含量が抽出プロセスの前に低減される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ラクトース含量が、限外ろ過により低減される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ラクトース含量が、限外ろ過のあいだに膜分離法によりさらに低減される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ベータ-セラムのラクトース含量が、近臨界二酸化炭素ステップの前に(乾燥重量に基づいて)30%以下に低減される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ラクトース含量が、近臨界二酸化炭素ステップの前に(乾燥重量に基づいて)25%以下に低減される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ラクトース含量が、近臨界二酸化炭素ステップの前に(乾燥重量に基づいて)20%以下に低減される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ラクトース含量が、近臨界二酸化炭素ステップの前に(乾燥重量に基づいて)10%以下に低減される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記中性脂肪除去ベータ-セラム乳製品がリン脂質、スフィンゴリピド、及び糖脂質中に濃縮される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記中性脂肪除去ベータ-セラム乳製品が、およそ:
(a) 50〜70%のタンパク質(TN×6.38)
(b) 5〜25%のリン脂質及び糖脂質、及び
(c) 0〜10%の中性脂肪
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記中性脂肪除去乳製品が、以下の:
(a)少なくとも60%のタンパク質(TN×6.38)、
(b)15〜25%のリン脂質及び糖脂質、及び
(c)約5%の中性脂肪
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記中性脂肪除去ベータ-セラム乳製品が、約5%未満の中性脂肪を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
以下のステップ:
(1)乾燥高脂肪低ラクトース乳製品開始物質を準備し;
(2)当該開始物質を近臨界二酸化炭素抽出プロセスにかけ;
続いて、当該乳製品を分画して脂質濃縮分画及び脂質除去分画を生成して、以下のステップ:
(3)当該脂質除去乳製品を液体ジメチルエーテル抽出プロセスにかける
を含む中性脂肪除去乳製品を製造する方法。
【請求項17】
前記近臨界二酸化炭素圧が少なくとも73.2barでありそして温度が304.2〜373Kの範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記二酸化炭素圧が蒸気圧以上であり、そして温度が273〜304.1Kの範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記二酸化炭素圧が、少なくとも250barであり、そして温度が313〜353Kの範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ジメチルエーテルが液化され、そして抽出温度において少なくとも蒸気圧に等しい圧力に加圧される、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記液体ジメチルエーテルの圧力が蒸気圧より少なくとも10bar大きい、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ジメチルエーテルの温度が273〜373Kの範囲である、請求項16〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ジメチルエーテルの温度が293〜353Kの範囲である、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、固形分の10%(w/w)を超える脂肪を含む、請求項16〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、固形分の15%(w/w)を超える脂肪を含む、請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、固形分の20%(w/w)を超える脂肪を含む、請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、(乾燥重量ベースで)30%以下である、請求項16〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、(乾燥重量ベースで)25%以下である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、(乾燥重量ベースで)20%以下である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、(乾燥重量ベースで)10%以下である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、抽出プロセス前に低減される、請求項16〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ラクトース含量が、限外ろ過により低減される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ラクトースが、限外ろ過のあいだの膜分離法によりさらに低減される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質がラクトース低減ベータ-セラムである、請求項16〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、ラクトース低減バターミルクである、請求項16〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、近臨界二酸化炭素ステップ前にスプレー乾燥される、請求項16〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、近臨界二酸化炭素ステップ前に凍結乾燥される、請求項16〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、近臨界二酸化炭素ステップの前に吸引乾燥される、請求項16〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記脂質濃縮分画が、少なくとも50%のリン脂質及び糖脂質を含み、そして実質的に中性脂肪を低減される、請求項16〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記脂質濃縮分画が、少なくとも80%のリン脂質及び糖脂質を含み、そして実質的に中性脂肪を含まない、請求項16〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記脂質除去分画が、乳脂肪球被膜タンパク質に富み、そして粉末ベースで以下の:
(a) 65〜79%のタンパク質(TN×6.38)、
(b) 8〜12%のラクトース、
(c) リン脂質(分画の4〜9%)を含む5〜11%の脂肪
を含む、請求項16〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記脂質除去分画が、粉末ベースで以下の:
(a) 約72%のタンパク質(TN×6.38)、
(b) 9%のラクトース
(c) リン脂質(分画の6%)を含む8%の脂肪
(d) 5%の灰分、及び
(e) 4%の水分
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
脂質に富む分画及び脂質除去分画を製造する方法であって、以下のステップ:
(1) 高脂肪低ラクトース乳製品開始物質を準備し;そして
(2) 開始物質を液体ジメチルエーテル抽出プロセスにかける
を含む、前記方法。
【請求項44】
前記ジメチルエーテルが液化され、そして抽出温度での蒸気圧に少なくとも等しい圧力に加圧される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記液体ジメチルエーテルの圧力が、前記蒸気圧より少なくとも10bar大きい、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ジメチルエーテルの温度が273〜373Kの範囲である、請求項43〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ジメチルエーテルの温度が、293〜353Kの範囲である、請求項43〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、固形分の10%(w/w)を超える脂肪を含む、請求項43〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、固形分の15%(w/w)を超える脂肪を含む、請求項48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、固形分の20%(w/w)を超える脂肪を含む、請求項49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、(乾燥重量ベース)で30%以下である、請求項43〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、(乾燥重量ベース)で25%以下である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、(乾燥重量ベース)で20%以下である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、(乾燥重量ベース)で10%以下である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質のラクトース含量が、抽出プロセス前に低減される、請求項43〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ラクトース含量が、限外ろ過により低減される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ラクトース含量が、限外ろ過のあいだに膜分離によりさらに低減される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、ラクトース低減ベータ-セラムである、請求項43〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質がラクトース低減バターミルクである、請求項43〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、液体ジメチエーテル抽出ステップ前にスプレー乾燥される、請求項43〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、液体ジメチエーテル抽出ステップ前に凍結乾燥される、請求項43〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記高脂肪低ラクトース乳製品開始物質が、液体ジメチエーテル抽出ステップ前に吸引乾燥される、請求項43〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記脂質濃縮分画が少なくとも40%のリン脂質及び糖脂質を含む、請求項43〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記脂質濃縮分画が以下の:
(a) リン脂質(分画の35〜45%)を含む80〜90%の脂肪
(b) 5〜9%の灰分、
(c) 2〜5%のラクトース、及び
(d) 2〜3%の水分
を含む、請求項43〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記脂質除去分画が、乳脂肪球被膜タンパク質に富み、そして粉末ベースで以下の:
(a) 60〜80%のタンパク質(TN×6.38)、
(b) 6〜12%のラクトース、及び
(c) リン脂質(分画の5〜9%)を含む5〜11%の脂肪
を含む、請求項43〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記脂質除去分画が、粉末ベースで以下の:
(a) 73%のタンパク質(TN×6.38)、
(b) 9%のラクトース、
(c) リン脂質(分画の7%)を含む8%の脂肪
(d) 5%の灰分、及び
(e) 3%の水分
を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
請求項1〜66のいずれか一項に記載される方法により産生される生成物。
【請求項68】
請求項67に記載の生成物を含む、組成物。
【請求項69】
請求項67に記載の生成物を含む、乳児用調製粉乳。
【請求項70】
以下の:
(a)30〜60%のラクトース
(b)15〜35%の植物油
(c)0〜40%のスキムミルク粉末
(d)0〜40%の乳清タンパク質濃縮物
(e)1〜50%の請求項67に記載の生成物
を含む、請求項69に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項71】
以下の:
(a) 40〜60%のラクトース
(b) 20〜30%の植物油
(c) 10〜15%のスキムミルク粉末
(d) 6〜8%の80%タンパク質の乳清タンパク質濃縮物(WPC80)
(e) 1〜5%の請求項67に記載の生成物
を含む、請求項70に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項72】
以下の:
(a) ビタミン混合物
(b) ミネラル混合物
(c) レシチン
(d) 抗酸化剤
(e) 安定剤
(f) ヌクレオチド
のうちの少なくとも1つであって2〜4%のものをさらに含む、請求項69〜71のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項73】
前記乳児用調製粉乳が、2700〜3000kJ/Lを提供する、請求項69〜72のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項74】
ベータ-セラムを含む乳児用調製粉乳。
【請求項75】
以下の:
(a) 30〜60%のラクトース
(b) 15〜35%の植物油
(c) 0〜40%のスキムミルク粉末
(d) 0〜40%の乳清タンパク質濃縮物
(e) 1〜50%のベータ-セラム粉末
を含む、請求項74に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項76】
以下の:
(a) 40〜60%のラクトース
(b) 20〜30%の植物油
(c) 10〜15%のスキムミルク粉末
(d) 6〜8%の80%タンパク質の乳清タンパク質濃縮物(WPC80)
(e) 1〜10%のベータ-セラム粉末
を含む、請求項75に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項77】
以下の:
(a) 40〜60%のラクトース
(b) 20〜30%の植物油
(c) 10〜15%のスキムミルク粉末
(d) 6〜8%の80%のタンパク質の乳清タンパク質濃縮物(WPC80)
(e) 2〜5% ベータ-セラム粉末
を含む、請求項76に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項78】
以下の:
(a) ビタミン混合物
(b) ミネラル混合物
(c) レシチン
(d) 抗酸化剤
(e) 安定剤
(f) ヌクレオチド
のうちの少なくとも1つであって2〜4%のものをさらに含む、請求項74〜76のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項79】
前記乳児用調製粉乳が、2700〜3000kJ/Lを提供する、請求項74〜78のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項80】
極性脂質に富むか又は中性脂肪を欠くベータ-セラム、或いはその両方であるベータ-セラムから取得される分画を成分として含む乳児用調製粉乳。
【請求項81】
以下の:
(a) 30〜60%のラクトース
(b) 15〜35%の植物油
(c) 0〜40%のスキムミルク粉末
(d) 0〜40%の乳清タンパク質濃縮物
(e) 極性脂質に富むか又は中性脂肪を欠くベータ-セラム、又はその両方であるベータ-セラムから取得される1〜50%分画
を含む、請求項80に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項82】
以下の:
(a) 40〜60%のラクトース
(b) 20〜30%の植物油
(c) 10〜15%のスキムミルク粉末
(d) 6〜8%の80%の乳清タンパク質濃縮物(WPC80)
(e) 極性脂質に富むか又は中性脂肪を欠くベータ-セラム、又はその両方であるベータ-セラムから取得される1〜5%分画
を含む、請求項80に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項83】
以下の:
(a) ビタミン混合物
(b) ミネラル混合物
(c) レシチン
(d) 抗酸化剤
(e) 安定剤
(f) ヌクレオチド
のうちの少なくとも1つであって、2〜4%であるものをさらに含む、請求項80〜82のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項84】
前記乳児用調製粉乳が、2700〜3000kJ/Lを提供する、請求項80〜83のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳。
【請求項85】
腸の成熟を亢進するための医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項86】
感染のリスクを低減するための医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項87】
腸内細菌叢を改善し、そして競合的に抗原に結合するための医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項88】
感染予防用の医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項89】
アレルギー発達の予防用の医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項90】
神経発達を最適化するための医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項91】
皮膚病変の治療用の医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項92】
免疫系の発達を最適化するための医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項93】
最適な免疫機能を維持するための医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項94】
結腸癌の予防又は治療用の医薬の製造における、請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳の使用。
【請求項95】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、腸の成熟を亢進する方法。
【請求項96】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、感染のリスクを低減する方法。
【請求項97】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、腸内細菌叢を改変し、そして抗原を競合的に結合するための方法。
【請求項98】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することによる、感染の予防方法。
【請求項99】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、アレルギーの発達を予防する方法。
【請求項100】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、神経発達を最適化する方法。
【請求項101】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、皮膚病変を治療する方法。
【請求項102】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、免疫系を最適化する方法。
【請求項103】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、最適な免疫機能を維持する方法。
【請求項104】
請求項67に記載の生成物、請求項68に記載の組成物、又は請求項69〜84のいずれか一項に記載の乳児用調製粉乳を投与することにより、結腸癌を予防又は治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−515455(P2008−515455A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536638(P2007−536638)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/NZ2005/000262
【国際公開番号】WO2006/041316
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504214246)フォンテラ コ−オペレイティブ グループ リミティド (17)
【Fターム(参考)】