説明

ベーパライザ

【課題】ベーパライザのLPG加熱装置について、ヒータユニット内部にLPGガスが侵入することによる電極板の接触不良の発生を回避できるようにする。
【解決手段】加熱板を兼ねた電極板45,45でPTCセル41をサンドイッチ状に挟んで、その外周側をシール部材46で封止して固定してなるヒータユニット42を複数枚並列した状態で流入口および流出口を有するケースに内蔵したヒータユニット42間を流路として通過する液体LPGに気化熱を供給するLPG加熱装置4を有するベーパライザ1において、ヒータユニット42に通気孔47が形成されているとともに通気孔47が連通管51を介してLPGを減圧気化して所定圧力に調整する調整室6に接続されており、ヒータユニット42内部圧力をケース44外へと逃がすことによりヒータユニット42内部の圧力の上昇を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LPG(液化石油ガス)等の液体燃料を加熱・気化してエンジンに供給するためにベーパライザに関し、殊に、PTCセルを2枚の電極板で挟持してなるヒータユニットを内蔵したLPG加熱装置を有するベーパライザに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧液状のLPGを機関に燃料として供給するため減圧・気化するとともに所定圧力に調整するLPGレギュレータの多くは、高圧のLPGを導入する入口室に、LPGを大気圧よりも少し高い圧力まで減圧する一次室、LPGを更に大気圧程度まで減圧する二次室を備えるとともに、LPGに気化熱を供給するためのエンジン冷却水を循環させる温水通路を備えている。
【0003】
そして、エンジン冷却水の熱を利用する加熱気化手段では、冷機時においてエンジン冷却水が低温であるために液体のLPGを充分に気化させることができないことがある。そこで、例えば特開平11−324813号公報に記載されているように、エンジン冷却水の熱を利用することに加えLPG流路に形成した高圧燃料室中に、図3に示すLPG加熱装置4を配置することにより、エンジン冷却水が低温の場合でも、LPGを充分に加熱・気化可能としたものが普及するようになった。
【0004】
このようなLPG加熱装置4は、加熱板を兼ねた電極板45,45でPTCセル41をサンドイッチ状に挟んで、その外周側をゴム製のシール部材46で封止して固定してなるヒータユニット42を複数枚並列した状態で流入口および流出口(図示せず)を有するケース44に内蔵し、そのヒータユニット42,42間を流路として通過する液体LPGを加熱することにより、その気化を促進させるものである。
【0005】
ところが、ヒータユニット42において電極板45,45の外周側を封止するゴム製のシール部材46は、高温下においてLPGの透過率が上昇することが知られており、図中の拡大した円形部分に示すように、高温時にヒータユニット42内部に侵入したLPGによる圧力が外部圧力よりも高くなると、電極板45,45を内側から押し広げるように膨張してPTCセル41表面との間に隙間を形成することになり、これにより通電部分の接触不良を生じてLPGの充分な加熱・気化が行われない状況に陥る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−324813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、LPG加熱装置を備えたベーパライザについて、前記加熱装置におけるヒータユニット内部に侵入するLPGによる電極板の接触不良の発生を回避できるようにするとともにヒータユニット内部に侵入したLPGをケース本体外へと排気してLPGの混入を阻止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、加熱板を兼ねた電極板でPTCセルをサンドイッチ状に挟んで、その外周側をシール部材で封止して固定してなるヒータユニットを複数枚並列した状態で流入口および流出口を有するケースに内蔵したヒータユニット間を流路として通過する液体
LPGに気化熱を供給するLPG加熱装置を有するベーパライザにおいて、前記ヒータユニットに通気孔が形成されているとともに前記通気孔が連通管を介してLPGを減圧気化して所定圧力に調整する圧力調整室に接続されており、前記ヒータユニット内部圧力をケース外である圧力調整室へと逃がすことによりヒータユニット内部の圧力の上昇を防止することを特徴とする。
【0009】
このようにヒータユニットの電極板に連通気孔を穿設して内部に高温時に侵入するLPGによる圧力上昇分をケース外へと逃がすことができるため、電極板とPTCセルとの間で接触不良を生じることを有効に回避できるものとなり、特に、前記ヒータユニットに通気孔が形成されているとともに前記通気孔が連通管を介してLPGを減圧気化して所定圧力に調整する圧力調整室に接続されていることから通気孔を外気に露出して形成するものでなく外部燃料リークに対して安全な構造とすることができる。
【0010】
また、前記圧力調整室が一次室および二次室と二段階に亘って減圧し所定圧力に調整する構成である場合にはLPGを大気圧よりも少し高い圧力まで減圧する一次室に接続されている場合には大気圧程度まで減圧する二次室に接続するよりも圧力差が少なくてすむので影響が少ない。
【発明の効果】
【0011】
ヒータユニット通気孔が形成されているとともに前記通気孔がケース外部に連通された本発明によると、ヒータユニット内部にLPGが侵入することによる電極板の接触不良の発生を有効に回避することができ、また、自身の飽和蒸気圧に相当する圧力を有する液体LPGへのLPGの流入を阻止することにより、自身の飽和蒸気圧に相当する圧力で充填されているケース内を流れる液体LPGへの過剰な気泡や塊の混入によるエンジン始動の困難性などの問題点を解決する。特に、一次室へ導入することにより外部燃料リークに対して安全な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における実施の形態のLPG加熱装置の部分縦断面図(円中は部分拡大図)である。
【図2】図1に示した実施の形態に用いられる加熱装置の拡大部分縦断面図である。
【図3】従来例に使用されている加熱装置の部分縦断面図(円中は部分拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
図1は本実施の形態であるペーパライザ1についての実施の形態を示すものであり、エンジン冷却水路2に沿ってLPG燃料通路3か配置されているとともに、前記LPG燃料通路3の一部にPTCセル41を用いたLPG加熱装置4が内蔵されており、更に前記LPG燃料通路3に付設された弁体5を介して圧力調整装置の一次室6に接続されており、気化され、更に、二次室(図示せず)により大気圧程度に減圧気化されてエンジンに送られる点については従来周知のものと同様である。
【0015】
そして、前記LPG加熱装置4は、図2に示した縦断面部分図(両端側は図示せず)のように、一対のヒータユニット42,42を並列した状態で内蔵しており、間にLPGの流路を形成するように両ヒータユニット42,42を支持プレート43で支持しながらケース44に内蔵したものである。
【0016】
そして、前記ヒータユニット42,42は、2枚の電極板45,45の間にPTCセル
41を挟んで外周側を例えばゴム製のシール部材46で封止して液体LPGが外部から内部に侵入しない状態としている。しかし、上述したように、ゴム製のシール部材47は高温時にLPGの透過率が上昇することから、シール部材47を介してヒータユニット41の内部にLPGが侵入して内部圧力が上昇することから結果電極板45,45の中央部を外側に広げ、PTCセル46表面との間に隙間を形成して接触不良を生じるという問題があった。
【0017】
そこで、本発明においては、ヒータユニット41の外側面を構成する電極板45,45のほぼ中央位置に、ヒータユニット41の内部と外部を連通させる通気孔47を穿設し、この通気孔47がケース44の例えば図示する底板48および蓋体49に形成した通孔50,50を介してLPGを減圧気化して所定圧力に調整する調整室の一次室6に接続されており、前記ヒータユニット41の内部圧力をケース44外へと逃がすことによりヒータユニット42内部の圧力の上昇を防止する。
【0018】
そのため、液体LPGのヒータユニット42内部への侵入は阻止しながら、内部にLPGが侵入して内部圧力が外部圧力よりも所定レベル以上高くなった場合に、高圧ガスが通気孔47から連通管51,51を通ってケース44の外部に通じて過剰な高圧ガスをケース44の外部である圧力調整器の一次室6に排出して内外圧力差を生じさせないことから、電極板45,45が外側に膨らむことを防止してPTCセル41の間で接触不良が生じることを有効に回避することができる。
【0019】
特に、本実施の形態では、ユニットセル2内に発生する過剰なガスは燃料である高圧な液体LPG内に排出することなしにケース3の外部に放出されるので、迅速に且つ確実にPTCセル2内のガスを排出して電極の接触不良を防止することができ、LPGはケース44内の液体LPGに排出されずにケース44の外部に排気されるので液体LPGへの過剰な気泡や塊の混入によるエンジン始動の困難性などの諸問題を生じることもない。
【0020】
殊に、本実施の形態ではヒータユニット41の内部圧力をケース3の外、即ち、外気に逃がすのでなく、LPGを減圧気化して所定圧力に調整する調整室の一次室8へと逃がすので外部燃料リークに対して安全な構造とすることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ベーパライザ、2 エンジン冷却水路、3 LPG燃料通路、4 LPG加熱装置、41 PTCセル、42 ヒータユニット、43 支持プレート、44 ケース、45
電極板、46 シール部材、47 通気孔、51 連通管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱板を兼ねた電極板でPTCセルをサンドイッチ状に挟んで、その外周側をシール部材で封止して固定してなるヒータユニットを複数枚並列した状態で流入口および流出口を有するケースに内蔵したヒータユニット間を流路として通過する液体LPGに気化熱を供給するLPG加熱装置を有するベーパライザにおいて、前記ヒータユニットに通気孔が形成されているとともに前記通気孔が連通管を介してLPGを減圧気化して所定圧力に調整する圧力調整室に接続されており、前記ヒータユニット内部圧力をケース外である圧力調整室へと逃がすことによりヒータユニット内部の圧力の上昇を防止することを特徴とするベーパライザ。
【請求項2】
前記圧力調整室が一次室および二次室と二段階に亘って減圧し所定圧力に調整する構成であるとともに前記連通管が一次室に接続されている請求項1記載のベーパライザ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87735(P2013−87735A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231019(P2011−231019)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)