説明

ペイントスプレーガン用グラビティカップ

本発明は、カップ状の容器(1)と、その容器(1)上に装着可能なカバー(2)と、複数個の雄ネジ条(18)及びそれと協働する雌ネジ条(19)を有し容器(1)・カバー(2)間の連結に使用される多条型の迅速操作閉止ネジと、を備え、ペイントスプレーガン向けに使用されるグラビティカップに関する発明であり、各雄ネジ条(18)が、対応するピッチ線に沿い並ぶ複数個のネジ山断片(18a,18b,…,18j)を有し、隣り合うネジ山断片間にギャップ(18p,18q,…,18w)が存することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の通りペイントスプレーガン(塗料噴霧銃)向けのグラビティカップ(重力送り式カップ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ペイントスプレーガン用グラビティカップでは、その容器をペイントスプレーガン上部に着脱することができるよう、カップ状容器の下部に連結部付の開口を設けるのが普通である。一般に、その連結部は、容器底部に挿通された連結ソケットで構成されており、且つペイントスプレーガン上部の対応するネジ孔に螺入可能な雄ネジを有している。不測の塗料漏出を防ぐためカップ状容器上部を相応のカバーで塞ぐのが一般的である。
【0003】
グラビティカップとしては、カップ状容器を上側から塞ぐカバーに中空円筒状の連結部を設けたものも特許文献2〜5にて既に提案されている。このグラビティカップは、連結部たる連結ソケットがカバー上に直に形成されているため、ペイントスプレーガンに迅速に連結することができる。特許文献5に記載のグラビティカップであれば、容器上縁部外面にある雄ネジ条及びカバー内面にある対応する雌ネジ条で尖鋭リード角4条ネジ型の迅速操作閉止ネジが形成されているため、カップ状容器・カバー間を封止性よく連結することができる。即ち、個々の始点と次の雄ネジ条の終点とが上下方向に重なり合うよう、容器縁部外面に4本の容器側雄ネジ条が均等分布で配置されているので、約1/4周に亘り回す操作でカバーを容器に固く螺着させることができる。
【0004】
しかしながら、封止されるカップの縁に備わるスティフネスが容器上縁部外面に沿い不均一で、また注入成形時に生じる容器壁厚方向素材集積が容器縁沿いに不均等なため、従来技術に係る容器では、取扱中に容器上縁部周辺が手で絞られ局所的に変形した場合等に漏出が発生しがちである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004003438号明細書
【特許文献2】国際公開第01/12337号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/037433号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第1366823号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1902786号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、容器とその上に装着されるカバーの間をより好適に封止することができるよう、冒頭に掲げたタイプのグラビティカップを改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、請求項1記載の特徴を有するグラビティカップを提案する。従属形式請求項に記載されているのは本発明の有用な改良形態又は効果的な発展形態である。
【0008】
ここに、本発明の一実施形態に係るグラビティカップは、カップ状の容器と、その容器上に装着可能なカバーと、複数本の雄ネジ条及びそれと協働する雌ネジ条を有し容器・カバー間の連結に使用される多条型の迅速操作閉止ネジと、を備え、各雄ネジ条が、対応するピッチ線に沿い並ぶ複数個のネジ山断片を有し、隣り合うネジ山断片間にギャップが存する構成である。こうした構成では、注入成形時に生じる壁厚方向素材集積を雄ネジ条付近にてかなり抑えることができる。また、容器上縁に現れるスティフネスが上縁部外面に沿い一定になるため、迅速操作閉止ネジで容器上にカバーを螺着させる操作でより高い封止性を実現することができる。
【0009】
雄ネジ条の形成先は容器の上縁部外面、雌ネジ条の形成先はカバーとするのが望ましい。逆に、雄ネジ条の形成先をカバー、雌ネジ条の形成先を容器の上縁部外面とすることもできる。また、個々の雄ネジ条に1個又は複数個の案内ランプを設け、容器にカバーを螺着させる操作を改良例えば容易化するのが望ましい。案内ランプ(群)の形成先は個々の雄ネジ条の上面、特に隣り合う2個のネジ山断片の上面にするのが望ましい。そうした構成では、隣り合う2個のネジ山断片間即ちギャップ上方を通る案内ランプで、それらネジ山断片が橋絡されることとなる。
【0010】
雌ネジ条をカバー側フランジの内面に形成する構成であれば、迅速操作閉止ネジをその軸沿い閉止方向に進めるにつれ雌ネジ条のフランジ内周面に沿った幅が狭くなるようにするのが望ましい。この形態では、各雄ネジ条の上面に形成されている案内ランプが、カバーを容器の縁上に装着するに当たり案内支援部材として機能し、また迅速操作閉止ネジの螺着が進むとカバー側の雌ネジ条に係合する。迅速操作閉止ネジ閉止方向に沿い雌ネジ条幅が狭くなっているため、案内ランプは雌ネジ条内に楔状にはまりこむ。従って、迅速操作閉止ネジの螺着で強固な嵌着を実現することができる。注入成形時の振動等が原因で自然とゆるみ始めることもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係りカップ状容器及びその上に装着されたカバーを有するグラビティカップを示す断面図である。
【図2】図1に示したグラビティカップのカップ状容器及びカバー、特に後者の上に前者を螺着する際使用される迅速操作閉止ネジを示す図である。
【図3】図2中の領域Xをより詳細に示す図である。
【図4】図2中の領域Yをより詳細に示す図である。
【図5】図2中の領域Zをより詳細に示す図である。
【図6】迅速操作閉止ネジ上のある雄ネジ条から次の雄ネジ条への遷移領域をより詳細に示す図である。
【図7】図6中の線A−Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に備わる他の構成及び効果がわかるよう、別紙図面を参照しつつその好適な実施形態について説明する。
【0013】
図1にペイントスプレーガン用グラビティカップの断面を示す。本グラビティカップはカップ状の容器1及びその上に装着されたカバー2を備えており、そのカバー2上には容器1・カバー2間の可着脱連結に使用される連結部3が形成されている。これら、容器1、並びに連結部3付のカバー2は、共にプラスチックの注入成形で好適に形成することができる。図2に、本グラビティカップの容器1からカバー2を取り外したものの縦断面を示す。図示状態ではカバー2が取り外されているので、スプレーガンで噴霧したい液体例えば塗料を容器1内に入れることができる。入れた後は、カバー2を容器1の上縁部に被せ、迅速操作閉止ネジで容器1に螺着させる。その後は、本グラビティカップのカバー2上に形成されている連結部3を、上下反転させておいたスプレーガンの連結開口内に差し込む。噴霧時には、スプレーガンを上下反転させることで、グラビティカップをスプレーガンの上側に持ってくればよい。図示しないが、本グラビティカップには通気口となる通気弁が設けられている。この通気弁は、再閉止できるよう容器1の底部4に設けるのが望ましい。通気弁が使用後に再閉止されるのであれば、好適なことに、使い残しの塗料を本グラビティカップ内に保存することができる。
【0014】
連結部3には、成形等の手法で錐状のカバー2上に形成された管状の連結ソケット5が備わっている。そのソケット5は、先端に位置する中空筒状案内部6、在来の雌ネジに螺入可能な雄ネジ7、並びに螺入楔部8を順に連ねた構成であるので、本グラビティカップをペイントスプレーガンに手早く連結することができる。
【0015】
容器1とカバー2の間を封止性よく連結する手段としては、図2に示す如く4条型の迅速操作閉止ネジが設けられている。この迅速操作閉止ネジは、容器1の上縁部外面に形成された雄ネジ条18,18’と、それに対応するようカバー2に形成された雌ネジ条19とで構成されている。雄ネジ条18,18’は4本あり、容器1の上縁部外面に均等分布している。雄ネジ条18,18’は、それぞれ、対応するピッチ線10に沿い並ぶ複数個のネジ山断片18a,18b,…,18e,18f,…,18jで構成されており、隣り合うネジ山断片間にはギャップ18p,18q,18r,…が形成されている。雄ネジ条18,18’を構成するネジ山断片の個数は、雄ネジ条1本に付き少なくとも2個(18a,18b)、例えば4〜10個とするのが望ましいため、図2に示した例では9個(18a,18b,…,18e,18f,…,18j)とされている。
【0016】
雄ネジ条18,18’はめいめいに案内ランプ16を有している。ランプ16はいずれもネジ山断片の上面に設けられている。図5に示す例では、同じ雄ネジ条(18,18’)内で隣り合っている2個のネジ山断片(18e,18f)の上面にあるランプ16で、それらネジ山断片間が橋絡されている。
【0017】
雌ネジ条19は、図3に示す如くカバー2側フランジ11の内面にあり、それぞれ第1ウェブ12及び第2ウェブ13によって形成されている。ウェブ12,13はフランジ11の内面から突出しており、そのフランジ11の内周面に沿いある角度範囲をカバーするよう、雄ネジ条18,18’のリード角に対応するリード角で斜めに延びている。雌ネジ条19を形成しているウェブ対(12,13)の個数は雄ネジ条18,18’の本数に対応しており、図示例の場合は4本ある雄ネジ条18,18’に対応し雌ネジ条19が4本設けられている。更に、この例の場合、ウェブ12,13がフランジ11の内周面に沿い約150°に亘り延びており、またウェブ対(12,13)間でその始点同士、終点同士が約90度ずれているので、個々の雌ネジ条19の下縁をなすウェブ13が、隣の雌ネジ条19の上縁をなすウェブ12の上方まで達することとなる。そして、迅速操作閉止ネジ閉止方向に沿いウェブ12,13間が近づいていくので、各雌ネジ条19の幅も軸方向に沿い僅かに狭まっていく。
【0018】
縁のスティフネスを改善する手段としては、容器壁1aに比べ厚みがある縁フランジ9が容器1の上縁部に設けられている。4本ある雄ネジ条18,18’は、図6に示す如く、ある雄ネジ条18の終点20が次の雄ネジ条18’の始点21の直上に位置することとなるようこのフランジ9の上に設けるのが望ましい。雄ネジ条18の終点20とその次の雄ネジ条18’の始点21との間の距離は例えば4〜6mmとする。迅速操作閉止ネジは、そのリード角が尖鋭なネジ、例えば20mmのリードを有するネジとして構成するのが望ましい。このような構成では、約1/4回転させることでカバー2を容器1に対し固く螺着させることができる。
【0019】
また、図示例における雄ネジ条は、図7に明示の如くそのフランク角が約30°の台形ネジとして形成されている。無論、円形ネジ、V字ネジ等、その他の断面形状を有するネジで迅速操作閉止ネジを実現することもできる。図示例の場合、雄ネジ条外径dを100〜110mm、例えば約105mmとするのが望ましく、また雄ネジ条基底部径Dを90〜105mm、例えば約102mmとするのが望ましい。外面沿い雄ネジ条幅bは例えば1.1〜1.3mmとする。
【0020】
カバー2を容器1に装着する際には、当初、雌ネジ条19の上縁をなすウェブ12の下面が雄ネジ条18,18’の上面より上側に位置している。その後、迅速操作閉止ネジ閉止方向に沿い容器1に対しカバー2を回すと、雄ネジ条18,18’が雌ネジ条19内に入り込んでいく。案内ランプ16はこの動きを案内しつつカンチングを防止する。カバー2を更に回すとランプ16も雌ネジ条19内に入り込んでいく。雌ネジ条19の幅が先細りとなっているため、ランプ16は上側にあるウェブ12と下側にあるウェブ13で挟み込まれていく。その上にランプ16が形成されている2個のネジ山断片18e,18fの下面、特にそのランプ16の下方にある部位は、下側にあるウェブ13の上面に対しカウンタベアリングとして作用する。更に、カバー2の内面には図5に示す如く楔状の封止ウェブ22が周沿いに延設されており、そのウェブ22の外面とカバー2の内面との間に、容器上縁24を受け入れうる楔状環溝23が形成されている。この環溝23は図5中で上寄りに進むに従い細る楔状であり、カバー2を螺着させる際に容器上縁24を外向きに押す作用を有している。これにより、容器上縁24がカバー側フランジ11の内壁に押し付けられるため、封止性のよい連結が達成されることとなる。また、ウェブ22には十分な高さがあるので、装着されたカバー2内に留まっている塗料を回収し、雌ネジ条19内に逃げ込まないようにすることができる。
【0021】
本発明は、以上説明及び図示した実施形態に限定されるものではない。例えば、雄ネジ条18,18’の本数及び雌ネジ条19の本数を変えることができる。雄ネジ条を構成するネジ山断片の個数も変えることができる。雄ネジ条1本当たり少なくとも2個のネジ山断片があればよい。雌ネジ条を容器上縁部に設け雄ネジ条をカバー側に設けることもできる。雌ネジ条を、フランジ11内面の溝ではなく容器1上縁部表面の溝として形成することもできる。そのグラビティカップをスプレーガンに連結するための連結ソケットがカバー上ではなく容器の底部に設けられているグラビティカップ等に対しても、本発明に係るカバー容器間連結を適用することができる。そして、連結ソケットがカバー上に形成されている例では、塗料受入用の縮壊式内挿物(ライナ)を容器内に入れ容器上縁に固定して使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状の容器(1)と、その容器(1)上に装着可能なカバー(2)と、複数本の雄ネジ条(18)及びそれと協働する雌ネジ条(19)を有し容器(1)・カバー(2)間の連結に使用される多条型の迅速操作閉止ネジと、を備え、ペイントスプレーガン向けに使用されるグラビティカップであって、各雄ネジ条(18)が、対応するピッチ線に沿い並ぶ複数個のネジ山断片(18a,18b,…,18j)を有し、隣り合うネジ山断片間にギャップ(18p,18q,…,18w)が存することを特徴とするグラビティカップ。
【請求項2】
請求項1記載のグラビティカップであって、各雄ネジ条(18)が少なくとも2個のネジ山断片(18a,18b)を有することを特徴とするグラビティカップ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のグラビティカップであって、各雄ネジ条(18)が4〜10個のネジ山断片(18a,18b,…,18j)を有することを特徴とするグラビティカップ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載のグラビティカップであって、雄ネジ条(18)が容器(1)の上縁部外面に設けられたことを特徴とするグラビティカップ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載のグラビティカップであって、雌ネジ条(19)がカバー(2)側フランジ(11)の内面に設けられたことを特徴とするグラビティカップ。
【請求項6】
請求項5記載のグラビティカップであって、カバー(2)の内面に楔状封止ウェブ(22)が設けられており、その楔状封止ウェブ(22)の外面及びフランジ(25)の内面により形成される楔状環溝(23)内に容器上縁(24)が収まることを特徴とするグラビティカップ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項記載のグラビティカップであって、カバー(2)の上部に連結ソケット(5)が設けられており、その連結ソケット(5)を介しスプレーガンに連結されることを特徴とするグラビティカップ。
【請求項8】
請求項7記載のグラビティカップであって、螺入楔部(8)を有する迅速交換部が連結ソケット(5)の上部に設けられており、その螺入楔部(8)とスプレーガン側の対応する要素との協働を通じスプレーガンに迅速連結されることを特徴とするグラビティカップ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項記載のグラビティカップであって、各雄ネジ条(18)が案内ランプ(16)を1個又は複数個有することを特徴とするグラビティカップ。
【請求項10】
請求項9記載のグラビティカップであって、隣り合う2個のネジ山断片(18e,18f)間を橋絡するようそれら2個のネジ山断片(18e,18f)の上側に案内ランプ(16)が設けられたことを特徴とするグラビティカップ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項記載のグラビティカップであって、迅速操作閉止ネジが4本の雄ネジ条(18)を有し、それら雄ネジ条(18)が容器(1)の上縁部外面上に均等分布で設けられたことを特徴とするグラビティカップ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項記載のグラビティカップであって、雄ネジ条(18)の断面が台形であることを特徴とするグラビティカップ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項記載のグラビティカップであって、雌ネジ条(19)が迅速操作閉止ネジの軸沿い閉止方向に沿い細ることを特徴とするグラビティカップ。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項記載のグラビティカップであって、容器壁(1a)に比べ厚みがある縁フランジ(9)が容器(1)の上縁部に設けられたことを特徴とするグラビティカップ。
【請求項15】
請求項14記載のグラビティカップであって、容器壁(1a)の厚みが0.2〜1.5mm、縁フランジ(27)の厚みが0.4〜2mmであることを特徴とするグラビティカップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−506769(P2012−506769A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533558(P2011−533558)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006992
【国際公開番号】WO2010/049043
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(303033406)サタ ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (8)
【Fターム(参考)】