説明

ペダル構造

【課題】車両が前面衝突した際、車体パネルの変形によるコネクタの損傷を抑制することが可能なペダル構造の提供を目的とする。
【解決手段】ペダル構造5は、車両の運転席前方のダッシュパネル4に固定される枠体12を有するペダルボックス9と、ペダルボックス9に対して回転自在に支持されるブレーキペダル32と、枠体12の開口の内側に配置されるブレーキバルブ34と、ブレーキバルブ34に設けられる接続口41と、接続口41と連結可能なブレーキ配管40のコネクタ39と、を備えている。ペダルボックス9は、枠体12のうち開口を挟む少なくとも2箇所からそれぞれ車両前方へ突出する保護リブ31を有する。接続口41及びコネクタ39のそれぞれの前端は、2箇所の保護リブ31,31の突出先端58,58を含む鉛直面59と同じ位置又はそれよりも車両後方の車室側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル、バルブ及びペダルボックスを備えたペダル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブ内の運転席の着座位置が概ねエンジンより前方に位置する貨物車(以下、キャブオーバートラックと称する)を含む車両では、ブレーキペダル等のペダル類やブレーキバルブ等のバルブ類を予めペダルボックスに組み付けておき、このペダルボックスを運転席前方に設けられるダッシュパネルに対して装着する方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−264844号公報
【特許文献2】特開2001−253325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ペダルボックスの前方には、車両の車体パネルの一部を構成するフロントパネルが配置されている。このため、車両の衝突時、特に、他の車両や剛壁への前面衝突時に、車両前方からフロントパネルに衝突荷重が入力されると、この衝突荷重を受けてフロントパネルが車両後方へ向けて変形し、フロントリッドの裏面側がペダルボックスと接触する可能性がある。
【0005】
ここで、一般的に、ペダルボックスには、そのフロントパネル側にペダル類の操作に応じて開閉するバルブ類が配置され、このバルブ類には、車両本体側から延びる配管がコネクタを介して連結されている。このため、車両が前面衝突した際、フロントパネルが後方へ向けて変形すると、先ず、フロントパネルの裏面側がバルブ類と接触し、場合によっては、バルブ類が損傷する可能性が生じる。特に、コネクタは、バルブ類のうち衝撃荷重に対して最も脆弱な部分であるため、このコネクタに衝突荷重が作用した場合には、バルブ類と配管との連結状態が解除される恐れがある。かかる場合において、例えば、ブレーキバルブとブレーキ配管との連結状態が解除された場合には、車両を移動させるのに最低限必要とされるブレーキが作動せず、車両を自走させて安全な場所等へ移動させることが困難となる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、車両が前面衝突した際、車体パネルの変形によるコネクタの損傷を抑制することが可能なペダル構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明に係るペダル構造は、車両の運転席前方のダッシュパネルに固定される枠体を有するペダルボックスと、ペダルボックスに対して回転自在に支持されるペダルと、枠体の開口の内側に配置され、ペダルに連動して状態が変化するバルブと、バルブと車両本体側の配管とを連結可能なコネクタと、を備えている。ペダルボックスは、枠体のうち開口を挟む少なくとも2箇所からそれぞれ車両前方へ突出する保護リブを有する。2箇所の保護リブの突出先端を含む鉛直面は、コネクタの前端を含む位置又はコネクタの前端よりも車両前方に設定されている。
【0008】
上記構成では、バルブと配管とを連結するコネクタの前端が、2箇所の保護リブの突出先端を含む鉛直面と同じ位置又はそれよりも車両後方の車室側に配置される。すなわち、車両の前面衝突時において、車体パネルが車室側へ移動すると、車体パネルの車室側の裏面が先ず2箇所の保護リブに当接して、車体パネルの移動が阻止されるため、コネクタに対する衝撃荷重の入力を有効に緩和することができる。従って、バルブと配管との連結状態が維持され、車両の前面衝突後においても、ペダル操作によりバルブを作動させることができる。
【0009】
また、ペダルボックスは、該ペダルボックスにペダル及びバルブを予め取り付けた状態で、ダッシュパネルに対して装着することが可能なため、ペダル及びバルブの組付作業性の向上を確実に図ることができる。
【0010】
保護リブは、枠体と一体に形成してもよい。
【0011】
上記構成では、保護リブを枠体に取り付けるためのボルト等の部材が不要である。従って、組付作業の簡略化及び部品点数の削減を確実に図ることができる。
【0012】
また、保護リブがペダルボックスの枠体と一体的に形成されるため、保護リブ自体の剛性強度を向上させることができる。
【0013】
バルブは、略鉛直に起立した状態よりもその頂部が車両後方に位置するように傾斜させてもよく、ペダルボックスには、枠体から車両後方に膨出してバルブを内包する略箱形状のカバー部を設けてもよい。
【0014】
上記構成では、バルブが、ペダルボックスのカバー部の内側に収納されるため、保護リブの突出先端及び枠体の車両前方側の裏面は、バルブの前端よりも車両前方に配置される。従って、車両の前面衝突の際、車体パネルが枠体のうち保護リブを有しない範囲に向かって後方移動しても、車体パネルの裏面は先ず枠体の裏面に当接し、これにより、車体パネルの移動が阻止されるため、バルブの損傷を有効に抑制することができる。
【0015】
また、枠体の開口から車両前方へ突出する部分は、バルブと配管とを連結するコネクタに限定される。すなわち、保護リブによって保護すべき部分は、コネクタのみであるため、枠体の裏面から車両前方へ突出する保護リブの突出量を最小限に抑えることが可能となる。従って、ペダルボックスの軽量化、及び、ペダルボックスの車両前方の空間の省スペース化を図ることができる。
【0016】
さらに、バルブは、枠体の開口から車両前方へ突出しない状態で配置されるため、ダッシュパネルと車体パネルとの間の空間に配置される部品や装置の配置上の制約を緩和することができ、これらの部品や装置のレイアウト上の自由度を増すことができる。
【0017】
また、バルブは、その頂部を車室側へ傾斜させた状態でカバー部に収納される。すなわち、車両後方に膨出するカバー部の車室側を、バルブの側部の傾斜に沿って傾斜させることにより、ダッシュパネルの車室側下端からのカバー部の突出量を最小限に抑えることが可能となる。従って、車両の運転席の床部において、広い空間を確保することができる。
【0018】
枠体には、バルブに沿って傾斜する上板部と、この上板部の下端から曲折して下方へ延びる下板部と、を設けてもよく、保護リブは、枠体の下板部から突出させてもよい。
【0019】
上記構成では、バルブを収納可能なペダルボックスは、その枠体の上板部がバルブに沿って車室側へ傾斜する。従って、ダッシュパネルと車体パネルとの間の空間が更に拡大されるため、この空間に配置される部品や装置のレイアウト上の自由度を一段と向上させることができる。
【0020】
また、保護リブは、枠体のうち鉛直方向に延びる下板部から車両前方へ突出し、車室側に入り込んで設けられていないため、車両の前面衝突の際に生じる車体パネルの車室側への移動を、保護リブにより有効に阻止することができる。従って、枠体の開口から車両前方へ向けて突出するコネクタの損傷を有効に防止することができる。
【0021】
車両は、キャブオーバー型の車両であってもよく、ペダルは、ブレーキペダルであり、バルブは、ブレーキペダルの揺動に応じて開閉するブレーキバルブであってもよい。
【0022】
上記構成では、車体パネルとダッシュパネルとの間が比較的狭いキャブオーバー型の車両が前面衝突した際に、ブレーキバルブと配管との連結部分であるコネクタに衝撃荷重が作用し難く、ブレーキバルブと配管との連結状態が維持されるため、前面衝突後においても、ブレーキペダルの操作によりブレーキを十分に作動させることができる。従って、前面衝突後も、車両を移動させるのに最低限度必要とされるブレーキ機能が確保されるため、前面衝突後の車両を自走させて安全な場所へ移動させることができる。
【0023】
車両は、キャブオーバー型の車両であってもよく、ペダルは、クラッチペダルであり、バルブは、クラッチペダルの揺動に応じて内部容積が変化するマスターシリンダであってもよい。
【0024】
上記構成のように、本発明に係るペダル構造は、オートマチック車(AT車)のみならず、クラッチペダルと、クラッチペダルに連結されるマスターシリンダとを備えたマニュアル車(MT車)にも適用することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、車両の前面衝突時において、車体パネルの変形によるバルブと配管とを連結するコネクタの損傷を、簡単な構成によって有効に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態のキャブオーバートラックの模式側面図、図2はペダルボックスをダッシュパネルに組み付けた状態を示す側面図、図3は図2の斜視図、図4はペダルボックスの正面図、図5は図4の背面図、図6は図4の斜視図である。なお、図中FRは車両前方を、図中UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明における左右方向は、特に説明が無い限り車室内から車両前方を視た状態での左右方向を意味する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、運転席を有するキャブ2が概ねエンジン(図示省略)より前方に位置するキャブオーバートラック型の車両であり、車両1の前部には、フロントパネルの一部を構成する開閉式のフロントリッド3が配置されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、キャブ2(図1参照)内の前面側には、上下方向に延びる略板状のダッシュパネル4が配設されており、ダッシュパネル4は、キャブ2の床部(図示省略)から略鉛直に延びる下部側面部55と、下部側面部55の上端から曲折し車両後方へ向かって上方へ傾斜して延びる傾斜面部56と、傾斜面部56の上端から曲折して上方へ延びる上部側面部57とを有する。また、ダッシュパネル4の所定位置には、下部側面部55、傾斜面部56及び上部側面部57に跨って、後述するペダルボックス9のカバー部11が挿通可能な略矩形状の開口部(図示省略)が形成されている。また、この開口部の周囲には、ペダルボックス9を取り付けるためのペダルボックス取付用孔(図示省略)が形成されている。
【0029】
車両1は、ペダル構造5を備えており、このペダル構造5は、ダッシュパネル4に対して装着されるペダルボックス9と、ペダルボックス9の車室側で支持されるブレーキペダル(ペダル)32及びクラッチペダル(ペダル)33と、ペダルボックス9の車両前方側で支持されるブレーキバルブ(バルブ)34及びマスターシリンダ(バルブ)35と、車両本体側から延びるブレーキ配管(配管)40の先端部に設けられ、ブレーキバルブ34の接続口(コネクタ)41と連結可能なコネクタ39と、車両本体側から延びるマスターシリンダ用配管(配管)48の先端部に設けられ、マスターシリンダ35の接続口(コネクタ)49と連結可能なコネクタ47とを有する。
【0030】
ペダルボックス9は、略矩形状の開口10を有する略箱体状のカバー部11と、カバー部11の周縁を支持する枠体12とを備え、これらはアルミ等により一体的に形成されている。
【0031】
図4〜図6に示すように、カバー部11は、右側に設けられるブレーキバルブ収納部13と、左側に設けられるマスターシリンダ収納部14とを有し、ペダルボックス9がダッシュパネル4に装着された状態で、ダッシュパネル4の車室側から車両後方へ突出する(図2参照)。このブレーキバルブ収納部13とマスターシリンダ収納部14とは、隣り合って設けられ、共に断面略V字形状を有する。また、ブレーキバルブ収納部13とマスターシリンダ収納部14とは、それぞれの車両前方側で後述するブレーキバルブ34のブレーキバルブ本体38とマスターシリンダ35のマスターシリンダ本体46とを内包し得る形状を有する。さらに、ブレーキバルブ収納部13とマスターシリンダ収納部14とは、それぞれ車室側に最も突出する頂部15と頂部16とを有し、これらは共に略水平に設けられている。このブレーキバルブ収納部13の頂部15は、その車室側への突出量がマスターシリンダ収納部14の頂部16の車室側への突出量よりも大きく設定され、また、車両高さ方向において頂部16よりも上側の位置に設けられている。
【0032】
ブレーキバルブ収納部13の上面部17の右側端部には、略板状のブレーキペダル支持片18が突設され、このブレーキペダル支持片18の上端部には、軸支ピン21が挿通可能なブレーキペダル支持用軸孔(図示省略)が形成されている。また、上面部17の左側端部には、略板状のブレーキペダル・クラッチペダル共通支持片20が突設され、このブレーキペダル・クラッチペダル共通支持片20の上端部には、そのブレーキペダル支持片18側に軸支ピン21と嵌合可能な略円筒状のブレーキペダル支持用軸受部52がブレーキペダル支持片18側に向けて突出形成されている。また、上面部17の所定位置には、後述するブレーキバルブ34のロッド42が貫通可能なロッド挿通用孔22と、ブレーキバルブ34を取り付けるための複数のブレーキバルブ取付用孔(図示省略)とが形成されている。
【0033】
マスターシリンダ収納部14の上面部19の左側端部には、略板状のクラッチペダル支持片23が突設され、このクラッチペダル支持片23の上端部には、軸支ピン24が挿通可能なクラッチペダル支持用軸孔(図示省略)が形成されている。また、ブレーキペダル・クラッチペダル共通支持片20のクラッチペダル支持片23側には、ブレーキペダル支持用軸受部52と略同一軸心上に、軸支ピン24と嵌合可能なクラッチペダル支持用軸受部53がクラッチペダル支持片23側に向けて突出形成されている。また、上面部19の所定位置には、後述するマスターシリンダ35のロッド50が貫通可能なロッド挿通用孔51が形成されている。
【0034】
図2及び図3に示すように、枠体12は、ダッシュパネル4に形成された開口部よりも大きい略枠形状からなり、底板部25と、底板部25の両端から上方へ延びる下板部26と、下板部26の上端から曲折し車室側に向かって上方へ傾斜して延びる上板部27と、上板部27,27の上端同士を連結する天板部28と、保護リブ31とを有し、これらは一体的に形成されている。底板部25及び下板部26と、上板部27と、天板部28とは、ペダルボックス9をダッシュパネル4に装着した状態で、ダッシュパネル4の下部側面部55と、傾斜面部56と、上部側面部57とにそれぞれ当接する。また、枠体12の底板部25、下板部26及び天板部28の所定位置には、複数のダッシュパネル取付用孔29(図4参照)が形成されている。
【0035】
保護リブ31は、略板形状からなり、両下板部26,26の車両前方側の裏面から車両前方へ突出して設けられている。この2箇所の保護リブ31,31は、対向配置されており、その枠体12の裏面からの突出量は、略同一に設定されている。また、この2箇所の保護リブ31,31の突出先端58,58を含む鉛直面59は、ブレーキバルブ34とブレーキ配管40及びマスターシリンダ35とマスターシリンダ用配管48がそれぞれ連結された状態で、ブレーキ配管40のコネクタ39、後述するブレーキバルブ34の接続口41、マスターシリンダ用配管48のコネクタ47及び後述するマスターシリンダ35の接続口49のうち最もペダルボックス9の開口10から車両前方側へ突出する部分よりもやや車両前方に設定されている。
【0036】
ペダルボックス9は、ダッシュパネル4の車両前方側からカバー部11を開口部に挿通し、ダッシュパネル4の車両前方側と枠体12の車室側の裏面とを当接した状態で、ダッシュパネル4のペダルボックス取付用孔と枠体12のダッシュパネル取付用孔29とに車両前方側からボルト30を挿通して、車室側からナット(図示省略)を蝶合して閉め込むことにより、ダッシュパネル4に対して装着される。ペダルボックス9がダッシュパネル4に装着された状態において、ペダルボックス9の開口10の開口面は、フロントリッド3と対向し、ペダルボックス9とフロントリッド3との間には、比較的狭い空間が形成される。また、この空間には、ウォッシャータンク等の装置(図示省略)やこれら装置に接続されるハーネス等の部品(図示省略)が配置されている。
【0037】
図4〜図6に示すように、ブレーキペダル32は、上端部に軸支ピン21が貫通可能な軸挿通用孔(図示省略)と、下端部に運転者により踏動されるパッド36とを有する。ブレーキペダル32は、その上端部をブレーキペダル支持片18とブレーキペダル・クラッチペダル共通支持片20との間に配置した状態で、ブレーキペダル支持片18のブレーキペダル支持用軸孔及びブレーキペダル32の軸挿通用孔のそれぞれに軸支ピン21を挿通し、軸支ピン21とブレーキペダル・クラッチペダル共通支持片20のブレーキペダル支持用軸受部52とを嵌合させることにより、ペダルボックス9に対して回転自在に支持される。
【0038】
クラッチペダル33は、上端部に軸支ピン24が貫通可能な軸挿通用孔(図示省略)と、下端部に運転者により踏動されるパッド37とを有する。クラッチペダル33は、その上端部をブレーキペダル・クラッチペダル共通支持片20とクラッチペダル支持片23との間に配置した状態で、クラッチペダル支持片23のクラッチペダル支持用軸孔及びクラッチペダル33の軸挿通用孔のそれぞれに軸支ピン24を挿通し、軸支ピン24とブレーキペダル・クラッチペダル共通支持片20のクラッチペダル支持用軸受部53とを嵌合させることにより、ペダルボックス9に対して回転自在に支持される。
【0039】
ブレーキバルブ34は、略円柱状のブレーキバルブ本体38と、ブレーキ配管40(図3参照)の先端に設けられるコネクタ39と連結可能な接続口41と、ブレーキバルブ本体38の頂部から突出する略棒状のロッド42と、ブレーキバルブ本体38の頂部に配置される略円盤状のフランジ部43とを有する。ロッド42は、運転者によるブレーキペダル32の踏操作によって上下方向に摺動され、ブレーキペダル32による踏動力をブレーキバルブ本体38に伝達する。フランジ部43は、所定位置にボルト44が貫通可能なペダルボックス取付用孔(図示省略)が複数形成されている。
【0040】
ペダルボックス9に対するブレーキバルブ34の取り付けは、先ず、ペダルボックス9の車両前方側からブレーキバルブ34のロッド42をブレーキバルブ収納部13のロッド挿通用孔22に挿通する。次に、ブレーキバルブ収納部13の上面部17とペダルボックス9のフランジ部43とを当接した状態で、ブレーキバルブ収納部13のブレーキバルブ取付用孔及びブレーキバルブ34のペダルボックス取付用孔にそれぞれボルト44を挿通し、フランジ部43の下方からナット45を蝶合して締め込む。これにより、ブレーキバルブ34は、ペダルボックス9に対して固定される。また、この状態において、ブレーキバルブ34は、略鉛直に起立した状態よりもそのフランジ部43の上面が車室側に位置するように傾斜して配置される(図3参照)。
【0041】
マスターシリンダ35は、略円柱状のマスターシリンダ本体46と、マスターシリンダ本体46の上方に配置されるマスターシリンダ用オイルタンク54と、マスターシリンダ用配管48(図3参照)の先端に設けられるコネクタ47と連結可能な接続口49と、マスターシリンダ本体46の頂部から突出する略棒状のロッド50とを有する。ロッド42は、運転者によるクラッチペダル33の踏操作によって上下方向に摺動され、クラッチペダル33による踏動力をマスターシリンダ本体46に伝達する。
【0042】
マスターシリンダ35は、ペダルボックス9の車両前方側からマスターシリンダ35のロッド50をマスターシリンダ収納部14のロッド挿通用孔51に挿通し、マスターシリンダ収納部14及びマスターシリンダ35の所定位置にそれぞれ形成されたボルト挿通用孔(図示省略)にボルト(図示省略)を挿通して、ナット(図示省略)を蝶合して締め込むことにより、ペダルボックス9に対して固定される。この状態において、マスターシリンダ35は、略鉛直に起立した状態よりもその頂部が車室側に位置するように傾斜して配置される(図3参照)。
【0043】
また、本実施形態では、ブレーキペダル32、クラッチペダル33、ブレーキバルブ34及びマスターシリンダ35を予めペダルボックス9に組み付けた状態で、このペダルボックス9がダッシュパネル4に対して装着される。その後、ブレーキバルブ34の接続口41とブレーキ配管40のコネクタ39とが連結され、マスターシリンダ35の接続口49とマスターシリンダ用配管48のコネクタ47とが連結される。また、この状態において、ブレーキバルブ34の接続口41、ブレーキ配管40のコネクタ39、マスターシリンダ35の接続口49及びマスターシリンダ用配管48のコネクタ47は、ペダルボックス9の開口10の前方で且つ開口10から車両前方側に突出して配置される。
【0044】
このように、本実施形態によれば、ブレーキバルブ34とブレーキ配管40及びマスターシリンダ35とマスターシリンダ用配管48がそれぞれ連結された状態において、ブレーキバルブ34の接続口41、ブレーキ配管40のコネクタ39、マスターシリンダ35の接続口49及びマスターシリンダ用配管48のコネクタ47のそれぞれの前端が、2箇所の保護リブ31,31の突出先端58,58を含む鉛直面59よりも車両後方の車室側に配置される。すなわち、車両1の前面衝突時において、フロントリッド3が車室側へ移動すると、フロントリッド3の車室側の裏面が先ず2箇所の保護リブ31,31に当接して、フロントリッド3の移動が阻止されるため、ブレーキバルブ34とブレーキ配管40及びマスターシリンダ35とマスターシリンダ用配管48のそれぞれの連結部分に対する衝撃荷重の入力を有効に緩和することができる。従って、ブレーキバルブ34とブレーキ配管40との連結状態、及び、マスターシリンダ35とマスターシリンダ用配管48との連結状態がそれぞれ維持され、車両1の前面衝突後においても、ブレーキペダル32とクラッチペダル33との操作により、ブレーキバルブ34とマスターシリンダ35とをそれぞれ作動させることができる。
【0045】
また、ペダルボックス9は、該ペダルボックス9にブレーキペダル32、クラッチペダル33、ブレーキバルブ34及びマスターシリンダ35を予め取り付けた状態で、ダッシュパネル4に対して装着することが可能なため、ブレーキペダル32、クラッチペダル33、ブレーキバルブ34及びマスターシリンダ35の組付作業性の向上を確実に図ることができる。
【0046】
保護リブ31は、ペダルボックス9の枠体12と一体的に形成されているため、組付作業の簡略化及び部品点数の削減を確実に図ることができると共に、保護リブ31自体の剛性強度を向上させることができる。
【0047】
また、ブレーキペダル32のブレーキバルブ本体38及びクラッチペダル33のマスターシリンダ本体46が、ペダルボックス9のカバー部11の内側に収納されるため、保護リブ31の突出先端58及び枠体12の車両前方側の裏面は、ブレーキバルブ本体38及びマスターシリンダ本体46のそれぞれの前端よりも車両前方に配置される。従って、車両1の前面衝突の際、フロントリッド3が枠体12のうち保護リブ31を有しない範囲に向かって後方移動しても、フロントリッド3の裏面は先ず枠体12の裏面に当接し、これにより、フロントリッド3の移動が阻止されるため、ブレーキバルブ本体38及びマスターシリンダ本体46の損傷を有効に抑制することができる。
【0048】
ペダルボックス9の開口10から車両前方へ突出する部分は、ブレーキバルブ34とブレーキ配管40とを連結する接続口41及びコネクタ39と、マスターシリンダ35とマスターシリンダ用配管48とを連結する接続口49及びコネクタ47とに限定される。すなわち、保護リブ31によって保護すべき部分は、接続口41、コネクタ39、接続口49及びコネクタ47のみであるため、枠体12の裏面から車両前方へ突出する保護リブ31の突出量を最小限に抑えることが可能となる。従って、ペダルボックス9の軽量化、及び、ペダルボックス9の車両前方の空間の省スペース化を図ることができる。
【0049】
また、ブレーキバルブ本体38及びマスターシリンダ本体46は、ペダルボックス9の開口10から車両前方へ突出しない状態で配置されるため、ダッシュパネル4とフロントリッド3との間の比較的狭い空間に配置される部品や装置の配置上の制約を緩和することができ、これらの部品や装置のレイアウト上の自由度を増すことができる。
【0050】
さらに、ブレーキバルブ本体38及びマスターシリンダ本体46は、その頂部を車室側へ傾斜させた状態でカバー部11に収納される。すなわち、車両後方に膨出するカバー部11の車室側を、ブレーキバルブ本体38及びマスターシリンダ本体46のそれぞれの側部に沿って傾斜させることにより、ダッシュパネル4の車室側下端からのカバー部11の突出量を最小限に抑えることが可能となる。従って、車両1の運転席の床部において、広い空間を確保することができる。
【0051】
ブレーキバルブ本体38及びマスターシリンダ本体46を収納可能なペダルボックス9は、その枠体12の上板部27がブレーキバルブ本体38及びマスターシリンダ本体46に沿って車室側へ傾斜する。従って、ダッシュパネル4とフロントリッド3との間の空間が更に拡大されるため、この空間に配置される部品や装置のレイアウト上の自由度を一段と向上させることができる。
【0052】
また、保護リブ31は、枠体12のうち鉛直方向に延びる下板部26から車両前方へ突出し、車室側に入り込んで設けられていないため、車両1の前面衝突の際に生じるフロントリッド3の車室側への移動を、保護リブ31により有効に阻止することができる。従って、ペダルボックス9の開口10から車両前方へ向けて突出するブレーキバルブ34の接続口41、ブレーキ配管40のコネクタ39、マスターシリンダ35の接続口49及びマスターシリンダ用配管48のコネクタ47の損傷を有効に抑制することができる。
【0053】
フロントリッド3とダッシュパネル4との間が比較的狭い車両1が前面衝突した際に、ブレーキバルブ34とブレーキ配管40との連結部分である接続口41及びコネクタ39に衝撃荷重が作用し難く、ブレーキバルブ34とブレーキ配管40との連結状態が維持されるため、前面衝突後においても、ブレーキペダル34の操作によりブレーキを十分に作動させることができる。従って、前面衝突後も、車両1を移動させるのに最低限度必要とされるブレーキ機能が確保されるため、前面衝突後の車両1を自走させて安全な場所へ移動させることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、ペダルボックス9にブレーキペダル32、クラッチペダル33、ブレーキバルブ34及びマスターシリンダ35を配置したが、例えば、図7〜図9に示すように、ペダルボックス9にクラッチペダル33及びマスターシリンダ35を配置せずに、ブレーキペダル32及びブレーキバルブ34のみを配置することも可能である。すなわち、本発明に係るペダル構造5は、マニュアル車(MT車)に適用する場合に限られず、オートマチック車(AT車)に適用することができるため、汎用性に富み、且つ部品の共通化が可能となる。
【0055】
また、本発明に係るペダル構造5を適用可能な車両は、キャブオーバートラック型の車両に限られず、乗用自動車等の車両に適用することも可能である。
【0056】
さらに、ブレーキバルブ本体38及びマスターシリンダ本体46を、ペダルボックス9の開口10から車両前方に突出させない位置に設けたが、2箇所の保護リブ31,31の突出先端58,58を含む鉛直面59よりも車両前方に突出しない範囲内で、ペダルボックス9の開口10から車両前方側に突出させてもよい。
【0057】
また、枠体12の裏面からの2箇所の保護リブ31,31の突出量を、略同一の突出量に設定したが、異なる突出量に設定することも可能である。
【0058】
さらに、枠体12の裏面に保護リブ31を2箇所設けたが、2箇所以上設けてもよい。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るペダル構造を備えたキャブオーバートラックの模式側面図である。
【図2】ペダルボックスをダッシュパネルに組み付けた状態を示す側面図である。
【図3】図2の斜視図である。
【図4】ペダルユニットの正面図である。
【図5】図4の背面図である。
【図6】図4の斜視図である。
【図7】クラッチペダル及びマスターシリンダのみを配置したペダルボックスの正面図である。
【図8】図7の背面図である。
【図9】図7の斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
4 ダッシュパネル
5 ペダル構造
9 ペダルボックス
10 開口
11 カバー部
12 枠体
26 下板部
27 上板部
31 保護リブ
32 ブレーキペダル(ペダル)
33 クラッチペダル(ペダル)
34 ブレーキバルブ(バルブ)
35 マスターシリンダ(バルブ)
38 ブレーキバルブ本体
39 コネクタ
40 ブレーキ配管(配管)
41 接続口(コネクタ)
46 マスターシリンダ本体
47 コネクタ
48 マスターシリンダ用配管(配管)
49 接続口(コネクタ)
58 突出先端
59 鉛直面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席前方のダッシュパネルに固定される枠体を有するペダルボックスと、
前記ペダルボックスに対して回転自在に支持されるペダルと、
前記枠体の開口の内側に配置され、前記ペダルに連動して状態が変化するバルブと、
前記バルブと車両本体側の配管とを連結可能なコネクタと、を備えたペダル構造であって、
前記ペダルボックスは、前記枠体のうち前記開口を挟む少なくとも2箇所からそれぞれ車両前方へ突出する保護リブを有し、
前記2箇所の保護リブの突出先端を含む鉛直面は、前記コネクタの前端を含む位置又は前記コネクタの前端よりも車両前方に設定されている
ことを特徴とするペダル構造。
【請求項2】
請求項1に記載のペダル構造であって、
前記保護リブは、前記枠体と一体に形成されている
ことを特徴とするペダル構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のペダル構造であって、
前記バルブは、略鉛直に起立した状態よりもその頂部が車両後方に位置するように傾斜し、
前記ペダルボックスは、前記枠体から車両後方に膨出して前記バルブを内包する略箱形状のカバー部を有する
ことを特徴とするペダル構造。
【請求項4】
請求項3に記載のペダル構造であって、
前記枠体は、前記バルブに沿って傾斜する上板部と、この上板部の下端から曲折して下方へ延びる下板部と、を有し、
前記保護リブは、前記枠体の下板部から突出する
ことを特徴とするペダル構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載のペダル構造であって、
前記車両は、キャブオーバー型の車両であり、
前記ペダルは、ブレーキペダルであり、
前記バルブは、前記ブレーキペダルの揺動に応じて開閉するブレーキバルブである
ことを特徴とするペダル構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れかに記載のペダル構造であって、
前記車両は、キャブオーバー型の車両であり、
前記ペダルは、クラッチペダルであり、
前記バルブは、前記クラッチペダルの揺動に応じて内部容積が変化するマスターシリンダである
ことを特徴とするペダル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−153068(P2007−153068A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349427(P2005−349427)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(596162061)株式会社 湘南ユニテック (4)
【Fターム(参考)】