説明

ペットの熱中症危険度報知システム、情報記憶媒体及びプログラム

【課題】 犬等のペットの熱中症危険度を報知すること。
【解決手段】 入力部11により入力された気温及び湿度に基づいてCPU11が不快指数を求め、求められた不快指数に基づいて犬の熱中症危険度レベルを決定し、決定された犬の熱中症危険度レベルを出力部14が出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬等のペットの熱中症危険度を報知する報知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に加えて、都市部におけるヒートアイランド現象の影響で、夏季における30度以上の観測時間帯が著しく増加している。このような気候変動に伴い、熱中症や暑気あたり(夏バテ)の患者が年々急増しており、社会問題となっている。そこで、特許文献1に開示されている発明のように、測定された温度及び湿度より不快指数を求め、求めた不快指数を表示手段に表示する不快指数表示装置が知られている。
【0003】
また、このような気候変動に伴って、人間のみならず犬が熱中症にかかるケースも急増している。
【特許文献1】特開平5−72358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、犬が熱中症や暑気あたりにかかっても、その症状に飼い主が気付かない場合が多く、かなり重症な状態で動物病院に運ばれてくるケースが増加している。人間はほぼ全身に汗腺があるが犬は肉球にしか汗腺がなく、汗で体温を下げる効率は人間の130分の1であって体温調節が取りにくい動物である。そのため、犬は人間より熱中症や暑気あたりにかかりやすい。更に、犬は人間よりも体高が低い為、アスファルト等の輻射熱の影響を受けやすく、飼い主にとっては散歩に快適な気候・時間帯であっても犬にとっては不快である場合も多い。
【0005】
また、近年、犬以外のペットを飼う家庭が増加し、中には暑さに弱いペット(例えば、ウサギ、フェレット、シマリス等)もあり、これらのペットが飼い主の気付かないうちに暑気あたりや熱中症にかかるケースも今後増加すると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、犬等のペットの熱中症危険度を報知するための熱中症危険度報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の犬の熱中症危険度報知システムは、気温及び湿度を入力する入力手段と、該入力手段により入力された気温及び湿度に基づいて不快指数を求める演算手段と、不快指数とペットの熱中症危険度レベルが対応付けられた危険度レベル情報が記憶された記憶手段と、前記演算手段により求められた不快指数に基づいて、前記記憶手段に記憶された危険度レベル情報からペットの熱中症危険度レベルを決定する決定手段と、該決定手段により決定されたペットの熱中症危険度レベルを出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の犬の熱中症危険度報知システムは、不快指数を入力する入力手段と、不快指数とペットの熱中症危険度レベルが対応付けられた危険度レベル情報が記憶された記憶手段と、前記入力手段により入力された不快指数に基づいて、前記記憶手段に記憶された危険度レベル情報からペットの熱中症危険度レベルを決定する決定手段と、該決定手段により決定されたペットの熱中症危険度レベルを出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記ペットが犬であり、前記危険度レベル情報が、前記不快指数が68以下をレベル1、69以上74以下をレベル2、75以上80以下をレベル3、81以上をレベル4として、前記不快指数と前記犬の熱中症危険度レベルを対応付けたものであることとしてもよい。
【0010】
尚、不快指数の値の小数点以下は切り下げ、切り上げ、四捨五入の何れかの方法によって整数化されるものとする。
【0011】
また、請求項4のように、請求項3に記載のペットの熱中症危険度報知システムであって、前記出力手段によって出力されたペットの熱中症危険度レベルがレベル2以上のときに、危険であることをレベルに応じて報知するための報知手段を更に備えることとしてもよい。
【0012】
請求項5に記載の情報記憶媒体は、不快指数とペットの熱中症危険度レベルが対応付けられた危険度レベル情報を記憶していることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記ペットが犬であり、前記危険度レベル情報が、前記不快指数が68以下をレベル1、69以上74以下をレベル2、75以上80以下をレベル3、81以上をレベル4として、前記不快指数と前記犬の熱中症危険度レベルを対応付けたものであることとしてもよい。
【0014】
請求項7に記載のプログラムは、コンピュータに、気温及び湿度に基づいて不快指数を求める処理と、該求められた不快指数に基づいて、ペットの熱中症危険度レベルを決定する処理と、該決定されたペットの熱中症危険度レベルを出力させる処理と、を実行させることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載のプログラムは、コンピュータに、不快指数に基づいて、ペットの熱中症危険度レベルを決定する処理と、該決定されたペットの熱中症危険度レベルを出力させる処理と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のペットの熱中症危険度報知システムによれば、不快指数から犬等のペットの熱中症危険度レベルを算出し、熱中症危険度レベルを出力手段に出力させることができるため、その出力された熱中症危険度レベルを報知することによって、飼い主は現在の気候がペットにとって熱中症を引き起こしやすい気候であるか否かを簡単に認識することができる。これにより、ペットが熱中症にかかるリスクを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、本実施の形態では、ペットとして犬の熱中症危険度報知システムを例に説明するが、本発明の適用対象は犬に限定されるものではない。
【0018】
図1は犬の熱中症危険度報知システム1のシステム構成について説明するためのブロック図である。犬の熱中症危険度報知システム1は、入力部(入力手段)11と、CPU(演算手段、決定手段)12と、記憶部(記憶手段、情報記憶媒体)13と、出力部(出力手段)14とを備えて構成されている。
【0019】
入力部11は、気温及び湿度を入力するための手段である。入力部11は、数字キー等を備えたキーボード等によって構成され、押下されたキーに対応した押下信号をCPU12に出力する。
【0020】
CPU12は、各部の制御、種々の演算等を行う。具体的には、入力部11により気温及び湿度が入力されると、記憶部13に記憶された熱中症危険度レベル決定プログラム132を読み出して犬の熱中症危険度レベル決定処理を行う。
【0021】
記憶部13は、プログラムやデータ等が予め記憶された記憶媒体であり、具体的には、犬の熱中症危険度レベルテーブル131と、熱中症危険度レベル決定プログラム132が記憶されている。犬の熱中症危険度レベルテーブル131は、犬の熱中症危険度レベルと不快指数とが対応付けて記憶されたデータテーブルである。犬の熱中症危険度レベルテーブル131のデータ構成については、後述する。熱中症危険度レベル決定プログラム132は、入力された気温及び湿度に基づいて不快指数を求め、該不快指数に基づいて犬の熱中症危険度レベルテーブル131から犬の熱中症危険度レベルを決定する処理をCPU12に実現させるためのプログラムである。
【0022】
出力部14は、CPU12によって決定された犬の熱中症危険度レベルを出力する手段であり、表示装置(ディスプレイ)、プリンタ等によって構成される。
【0023】
次に熱中症危険度レベルについて説明する。表1は人間と犬の熱中症発症の危険基準値を示した表である。
【表1】

【0024】
人間の熱中症危険基準値は気温26℃、湿度60%(日本体育協会より発表)となり、不快指数に換算すると74.224となる。不快指数においても、74.224以上が人間が不快と感じる数値であることから、熱中症危険基準値と不快指数のロジックは同じであることが言える。そこで、図2に示す不快指数曲線に従って、犬の熱中症危険基準値(気温22℃、湿度60%)から不快指数を求めると68.6となった。即ち、人間と犬の熱中症危険基準となる不快指数の差が5であることが分かる。
【0025】
従って、不快指数から導き出された人間の熱中症危険度レベルより、それぞれ不快指数を5減算することにより、犬の熱中症危険度レベルを設定することができる。表2は、人間と犬の熱中症危険度レベルを示した表である。
【表2】

【0026】
このようにして設定された犬の熱中症危険度レベルを用いて、犬の熱中症危険度レベルテーブル131が設定される。図3は犬の熱中症危険度レベルテーブル131のデータ構成の一例を示した図である。
【0027】
図4は、熱中症危険度レベル決定処理の流れを説明するためのフローチャートである。まず、CPU12は入力された気温及び湿度を用いて不快指数を求める(ステップS1)。T=気温(摂氏温度)、H=相対湿度[%]としたとき、不快指数は式(1)を用いて求められる。
【0028】
不快指数(DI)=0.81T+0.11H(0.99T−14.3)+46.3
・・・(1)
尚、求められた不快指数は、小数点以下は切り下げ、切り上げ、四捨五入の何れかの方法によって整数化されるものとする。
【0029】
次に、CPU12は、不快指数に基づいて、犬の熱中症危険度レベルテーブル131から犬の熱中症危険度レベルを決定し(ステップS2)、出力部14に熱中症危険度レベルを出力する(ステップS3)。
【0030】
出力部14は、犬の熱中症危険度レベル決定処理によって決定された熱中症危険度レベルを出力する出力手段であり、CPU12と電気的に接続されている表示装置(ディスプレイ)等に熱中症危険度レベルが表示される。または、CPU12と電気的に接続されたプリンタ等に熱中症危険度レベルが印刷されて出力される。
【0031】
尚、出力部14は熱中症危険度レベルをデータとして外部に出力する通信手段を備えたものであってもよい。具体的には、図5に示すように、出力部14aは通信部2と、ネットワーク3と、複数の端末装置4を備えた犬の熱中症危険度放置システム1aとしてもよい。
【0032】
図5の犬の熱中症危険度報知システム1aにおいて、CPU12によって決定された犬の熱中症危険度レベルは通信部2を介してネットワーク3に送信され、犬の熱中症危険度レベルが各端末装置4に送信される。ネットワーク3は、汎用プロトコルに基づいたインターネット、イントラネット、LAN、無線媒体により情報の送受信可能な複数の基地局がネットワークを構成する通信回線網等や放送網によって構成される。端末装置4は、例えば、デジタル放送対応の家庭用テレビ、インターネットに接続可能なパソコンや携帯電話、街頭や電車内等の公共の場に設置される表示装置(電光掲示板)等である。更に、このような端末装置をテレビ局やラジオ局に設置し、アナウンサーがテレビやラジオで犬の熱中症危険度レベルを放送することによって、多くの人に犬の熱中症危険度レベルを知らせることができる。
【0033】
また、図6に示すように「ワンちゃん夏バテ予報」と称して、飼い主が危険度を簡単に認識できるように犬の熱中症危険度レベルに応じて家庭用テレビ、パソコンや携帯電話、電光掲示板等の表示装置に表示されるようにしてもよい。図6(a)は熱中症危険度レベルがレベル1のときに表示される画面の一例であり、図6(b)はレベル2のときに表示される画面の一例である。図6(c)はレベル3のときに表示される画面の一例であり、図6(d)はレベル4のときに表示される画面の一例である。
【0034】
更に飼い主が熱中症危険度を認知しやすいように、レベル2以上のときは音声や警告音等によって熱中症危険度が報知されるようにしてもよい。具体的には、決定されたレベルがレベル2以上のときに、CPU12は指示信号を出力して音声や警告音等を出力するスピーカ(報知手段)を動作させることにより、飼い主に対して現在犬が熱中症にかかりやすい気候であることを報知することによって、飼い主は危険度を簡単に認知することができる。
【0035】
以上説明したように、不快指数から犬の熱中症危険度レベルを決定し、熱中症危険度レベルを表示装置やプリンタ等に出力させたり、または犬の熱中症危険度レベルを通信部2を介してネットワーク3に送信し、各端末装置4に出力させたりすることによって、飼い主は現在の気候が犬にとって熱中症を引き起こしやすい気候であるか否かを簡単に知ることができる。これにより、犬が熱中症にかかるリスクを低減させることができる。
【0036】
尚、本実施の形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、入力部11において気温及び湿度が入力されることとしたが、不快指数が入力されることとしてもよい。この場合、CPU12は不快指数に基づいて犬の熱中症危険度レベルを決定する。また、外部の温度測定器及び湿度測定器によって測定された気温及び湿度のデータが入力部11を介してCPU12に入力されるようにしてもよい。 更に、犬の熱中症危険度レベルテーブル131を他のペットの熱中症危険度レベルテーブルに置き換えることによって、CPU12に対して他のペットの熱中症危険度レベルを決定させることができる。この場合、記憶部13としてメモリカード、半導体メモリやハードディスク等が例示される。メモリカードの場合、他のペットの熱中症危険度レベルテーブルが記憶されたメモリカードに交換することによって、CPU12に対して犬以外のペットの熱中症危険度レベルを決定させることができる。または、半導体メモリ、ハードディスクの場合、記憶部13にアクセス可能な操作手段を用いて犬の熱中症危険度レベルテーブル131を他のペットの熱中症危険度レベルテーブルに書き換えることによって、CPU12に対して他のペットの熱中症危険度レベルを決定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】犬の熱中症危険度報知システムのブロック図
【図2】不快指数曲線
【図3】犬の熱中症危険度レベルテーブルのデータ構成を示す図
【図4】犬の熱中症危険度レベル決定処理を説明するためのフローチャート
【図5】ネットワークを含む犬の熱中症危険度報知システムのブロック図
【図6】出力部に表示される画面例
【符号の説明】
【0038】
1 犬の熱中症危険度報知システム
11 入力部
12 CPU
13 記憶部
14 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気温及び湿度を入力する入力手段と、
該入力手段により入力された気温及び湿度に基づいて不快指数を求める演算手段と、
不快指数とペットの熱中症危険度レベルが対応付けられた危険度レベル情報が記憶された記憶手段と、
前記演算手段により求められた不快指数に基づいて、前記記憶手段に記憶された危険度レベル情報からペットの熱中症危険度レベルを決定する決定手段と、
該決定手段により決定されたペットの熱中症危険度レベルを出力する出力手段と、
を備えることを特徴とするペットの熱中症危険度報知システム。
【請求項2】
不快指数を入力する入力手段と、
不快指数とペットの熱中症危険度レベルが対応付けられた危険度レベル情報が記憶された記憶手段と、
前記入力手段により入力された不快指数に基づいて、前記記憶手段に記憶された危険度レベル情報からペットの熱中症危険度レベルを決定する決定手段と、
該決定手段により決定されたペットの熱中症危険度レベルを出力する出力手段と、
を備えることを特徴とするペットの熱中症危険度報知システム。
【請求項3】
前記ペットが犬であり、
前記危険度レベル情報が、前記不快指数が68以下をレベル1、69以上74以下をレベル2、75以上80以下をレベル3、81以上をレベル4として、前記不快指数と前記犬の熱中症危険度レベルを対応付けたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペットの熱中症危険度報知システム。
【請求項4】
前記出力手段によって出力されたペットの熱中症危険度レベルがレベル2以上のときに、危険であることをレベルに応じて報知するための報知手段を更に備えることを特徴とする請求項3に記載のペットの熱中症危険度報知システム。
【請求項5】
不快指数とペットの熱中症危険度レベルが対応付けられた危険度レベル情報を記憶していることを特徴とする情報記憶媒体。
【請求項6】
前記ペットが犬であり、
前記危険度レベル情報が、前記不快指数が68以下をレベル1、69以上74以下をレベル2、75以上80以下をレベル3、81以上をレベル4として、前記不快指数と前記犬の熱中症危険度レベルを対応付けたものであることを特徴とする請求項5に記載の情報記憶媒体。
【請求項7】
コンピュータに、
気温及び湿度に基づいて不快指数を求める処理と、
該求められた不快指数に基づいて、ペットの熱中症危険度レベルを決定する処理と、
該決定されたペットの熱中症危険度レベルを出力させる処理と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
不快指数に基づいて、ペットの熱中症危険度レベルを決定する処理と、
該決定されたペットの熱中症危険度レベルを出力させる処理と、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−345826(P2006−345826A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179424(P2005−179424)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(597173071)マスターフーズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MASTER FOODS LIMITED
【Fターム(参考)】