説明

ペットフード組成物および方法

【課題】高齢コンパニオンペットの精神能力衰退開始を阻害する。
【解決手段】コンパニオンペット用食餌であって、該ペットの通常の栄養所要量を満たし、前記コンパニオンペットの高齢期における精神能力の衰退開始を阻害するのに足る量の酸化防止剤またはその混合物を含んでなる食餌として与える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
犬および猫などのコンパニオンアニマルは、高齢化により不具合を生じると考えられる。これら不具合のいくつかは、一般的な格言に示されている。これらの一つは、“老犬に新しい芸は教えられない”である。この格言は、犬は、高齢化するにつれ、精神能力および体力が低下すると考えられる、という観察に起因する。思考、学習および記憶に関連づけられる精神活動が減退すると考えられる(Cummings BJ,Head E,Ruehl W,Milgram NW,Cotman CW 1996:The canine as an animal model of aging and dementia;Neurobiology of aging 17:259−268)。これに加えて、高齢動物では、精神能力の変化により行動変化が現れることがある。多くの原因として、この能力減退が特定されてきた。
【0002】
これらの能力損失は、高齢のイヌおよびネコで一般に観察されている。7歳以上の犬および7歳以上のネコは高齢とみなされ、この不具合に直面している可能性がある。
著しいレベルの少なくとも1種の酸化防止剤を、成体コンパニオンペットの食餌中に存在させるか、または食餌の他にペットに与えると、高齢コンパニオンペットの精神能力の衰退開始を阻害し、および/または成体コンパニオンペットの精神能力を高齢期までさらに維持することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Cummings BJ,Head E,Ruehl W,Milgram NW,Cotman CW 1996:The canine as an animal model of aging and dementia;Neurobiology of aging 17:259−268
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本発明に従い、成体ペットの通常の栄養所要量を満たすコンパニオンペット用食餌であって、前記コンパニオンペットの高齢期における精神能力の衰退開始を阻害するのに足る量の酸化防止剤またはその混合物をさらに含んでなる食餌がある。
【0005】
本発明の他の観点は、高齢コンパニオンペットの精神能力の衰退の阻害方法であって、該方法は、成体期にある前記ペットに、この阻害を達成するのに足るレベルで酸化防止剤またはその混合物を与えることを含んでなる。
【0006】
さらに本発明に従い、成体コンパニオンペットの通常の栄養所要量を満たし、そしてビタミンE、ビタミンC、α−リポ酸、L−カルニチンからなる群より選択される酸化防止剤およびその任意の混合物を、前記ペットの高齢期における精神能力の衰退を阻害するのに足る量でさらに含んでなる、コンパニオン成体ペット用食餌である。
【0007】
本発明のさらに他の観点は、高齢コンパニオンペットの精神能力の向上方法であって、該方法は、成体期にある該ペットに、精神能力を向上させるのに足る量の酸化防止剤またはその混合物を与えることを含んでなる。
【0008】
本発明の他の観点は、成体コンパニオンペットの精神能力の向上方法であって、該ペットに、前記ペットの精神能力を向上させるのに足る量の酸化防止剤またはその混合物を与えることを含んでなる方法である。
【0009】
これらの方法のすべてにおいて、酸化防止剤またはその混合物を、動物の食餌中に投与することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
成体コンパニオンペット、例えばイヌおよびネコに与えられる食餌は、同年齢の動物に与えられる標準的普通食である。以下は、年齢1〜6歳のイヌ用の典型的食餌である。
【0011】
【表1】

【0012】
コンパニオン成体ペットの食餌に著しい量の酸化防止剤またはその混合物を加えると、高齢ペットにおいて、行動の明確な変化の開始、詳細には、問題解決能力によって具体的に示される精神能力の衰退の開始を遅らせることができる。成体という用語は、一般に少なくとも1〜6歳のイヌおよび少なくとも1〜6歳のネコを意味するものとする。高齢の犬または猫は、7歳以上である。
【0013】
イヌおよびネコに関する精神能力の損失は、何年もの間観察されてきた。この精神能力の損失は、非常に多くの様式で発現する。例えばイヌの場合、見当識障害、屋内での粗相(house soiling)、変容した睡眠−覚醒パターン、ヒトおよび他のペットとの低下または
変容した相互関係、ならびに学習および集中不能として発現することができる。これらの状態は、ネコでも同様に発現することができる。人で示されるようなアルツハイマー病は、イヌおよびネコではみられない。
【0014】
この精神能力の損失について、多くの理論が唱えられてきた。今までのところ、本発明者らは、この精神能力の損失を阻害するか、または客観的パラメーターにより測定される精神能力の肯定的変化を犬および猫に実際にもたらすことができる、食餌の作用経路を認識していない。
【0015】
本発明者らは、この衰退開始の遅延を達成することに成功している。本発明者らの発明の食餌を成体コンパニオンペットに用いることにより、高齢ペットの精神能力をより長期間維持できることを示すことができる。実質的に、精神能力の衰退は、停止または遅延させることができる。記憶および学習能を改善することができる。全体的な精神的敏捷性を高めることができる。年齢に関連する認知的衰弱を遅らせうる。認知的機能不全症候群に関しては、その進行を高齢犬において遅らせることができ、この症候群による臨床徴候を制御することができる。適切な場合の予防と、これらの成分を必要とするペットが、標的グループ(target group)である。
【0016】
これを達成する食餌中成分は、酸化防止剤またはその混合物である。酸化防止剤は、フリーラジカルを失活させる材料である。そのような材料の例には、イチョウ、シトラスパルプ、ブドウの搾りかす、トマトの搾りかす、ニンジンおよびホウレンソウなどの食物(好ましくはすべて乾燥させたもの)、ならびに、β−カロテン、セレン、補酵素Q10(ユビキノン)、ルテイン、トコトリエノール、大豆イソフラボン、S−アデノシルメチオニン、グルタチオン、タウリン、N−アセチルシステイン、ビタミンE、ビタミンC、α−リポ酸、L−カルニチンなどのようなさまざまな他の材料が含まれる。ビタミンEは、トコフェロールまたはトコフェロールの混合物およびそのさまざまな誘導体、例えばビタミンEの酢酸エステル、コハク酸エステル、パルミチン酸エステルなどのようなエステル
として、投与することができる。α体が好ましいが、β、γおよびδ体が含まれてもよい。d体が好ましいが、ラセミ混合物は許容しうる。それらの形および誘導体は、ペットによって摂取された後、ビタミンE様の活動において作用することになる。ビタミンCは、この食餌中に、アスコルビン酸およびそのさまざまな誘導体として投与することができる、その誘導体は、例えばカルシウムリン酸塩、コレステリル(cholesteryl)塩、2−モノ
ホスフェートなどであり、ペットによって摂取された後、ビタミンC様の活動において作用することになる。それらは、液体、半固体、固体および熱安定形のような任意の形であることができる。α−リポ酸は、食餌中に、αリポ酸またはそのリポエート(lipoate)誘
導体(米国特許第5621117号にあるようなもの)、ラセミ混合物、塩、エステルもしくはアミドとして、投与することができる。L−カルニチンは、食餌中に投与することができ、カルニチンのさまざまな誘導体、例えば塩酸塩、フマル酸塩およびコハク酸塩のような塩ならびにアセチル化カルニチンなどを用いることができる。
【0017】
食餌中に投与する量を、すべて食餌の重量%(乾燥物質基準)で、遊離材料として測定される活性材料自体として算出する。使用する最大量により、毒性がもたらされるべきでない。少なくとも約100ppmまたは少なくとも約150ppmのビタミンEを用いることができる。約500〜約1000ppmの好ましい範囲を使用することができる。必須ではないが、約2000ppmまたは約1500ppmの最大値を通常は超えない。ビタミンCについては、少なくとも約50ppm、望ましくは少なくとも約75ppmおよびより望ましくは少なくとも約100ppmを用いる。非毒性の最大値を使用することができる。α−リポ酸の量は、少なくとも約25、望ましくは少なくとも約50ppm、より望ましくは約100ppmから変動させることができる。最大量は、約100ppm〜600ppmから、ペットに対する非毒性が維持される量まで、変動させることができる。好ましい範囲は、約100ppm〜約200ppmである。L−カルニチンの場合、イヌに関しては約50ppm、望ましくは約200ppm、より望ましくは約300ppmが有用な最小値である。ネコに関しては、約100ppm、200ppmおよび500ppmなど、わずかに高い最小値のL−カルニチンを使用することができる。非毒性最大量、例えば約5000ppm未満を使用することができる。イヌでは、より少ない量、例えば約5000ppm未満を使用することができる。イヌの場合、好ましい範囲は約200ppm〜約400ppmである。ネコの場合、好ましい範囲は約400ppm〜約600ppmである。
【0018】
約1〜15ppmのβ−カロテンを使用することができる。
約0.1〜最高約5ppmのセレンを使用することができる。
少なくとも約5ppmのルテインを使用することができる。
【0019】
少なくとも約25ppmのトコトリエノールを使用することができる。
少なくとも約25ppmの補酵素Q10を使用することができる。
少なくとも約50ppmのS−アデノシルメチオニンを使用することができる。
【0020】
少なくとも約1000ppmのタウリンを使用することができる。
少なくとも約25ppmの大豆イソフラボンを用いることができる。
少なくとも約50ppmのN−アセチルシステインを用いることができる。
【0021】
少なくとも約50ppmのグルタチオンを用いることができる。
少なくとも50ppmのイチョウの抽出物を用いることができる。
以下は、ORAC(酸素ラジカル吸収能力)含量の高い原料成分である。1%混在物として食餌に加えると(トウモロコシなどの低ORAC成分を合計5%置換するため)、食餌全体のORAC含量が増加し、これらの成分を含有する食餌を摂食した動物の血漿のORAC含量が増加した。好ましくは、1%で加えて他の4種の1%成分と組合わせて食餌への添加を合計5%にする場合、Trolox等価物の乾燥物質1gあたりのORAC含量が>25umolであるあらゆる成分を用いることができる。
ホウレンソウの搾りかす
トマトの搾りかす
シトラスパルプ
ブドウの搾りかす
ニンジンの顆粒
ブロッコリ
緑茶
イチョウ
トウモロコシグルテン穀粉
【実施例】
【0022】
実施例1
2〜4歳の成体ビーグル犬17匹(対照n=8、酸化防止剤強化n=9)を、無作為に対照群または強化食餌群においた。対照食餌は、59ppmのビタミンEおよび<32ppmのビタミンCを含有していた。試験食餌は、900ppmのビタミンEおよび121ppmのビタミンC、260ppmのL−カルニチンおよび135ppmのαリポ酸を有していた。その食餌を開始して約1カ月後、犬に与えた最初の問題解決課題はランドマーク識別学習課題(landmark discrimination learning task)であり、これは空間的注意の
試験であった(Milgram et al.,1999 Milgram,N.W.,Adams,B.,Callahan,H.,Head,E.,Mackay,B.,Thirlwell,C., & Cotman(1999),C.W. Landmark Discrimination Learning in the Dog.Learning & Memory,6:54−61)。
【0023】
ランドマーク識別学習では、被験体が、ある目的物への接近度に基づき特定の目的物を選択することが求められる。しかしながら、初期学習は、犬の目的物識別課題の学習能に基づいている。われわれはこれまでに、識別学習に対する年齢の影響は、課題の難易度に依存することを見いだしている。
【0024】
ランドマーク0試験を学習させたとき、強化食餌の成犬は、対照食物の成犬より誤りが少なかった(対照群の平均=31.1、強化群の平均=15.1)。それらの成犬を、ランドマークがポジティブウェル(positive well)からさらに離れているランドマーク1および2の試験に進ませた。強化食餌の成犬は、対照の成犬に比べて、少ない誤りでランドマーク0〜2を学習した(対照でのランドマーク0+1+2の平均誤り数=132.9;強化食餌の犬でのランドマーク0+1+2の平均誤り数=87.1)。
実施例2
この試験では、無作為な発生源の成犬を30匹使用した。犬は、試験開始前に、少なくとも10カ月齢であり、妊娠しておらず、授乳しておらず、適度な体重を有していた。動物を、食餌で処置するために、各群雄3匹および雌3匹で無作為に5群に分けた。
【0025】
すべての犬に、2週間の予備給餌期間中、American Association of Feed Control Officials(AAFCO 2000)により提唱されているすべての栄養勧告量を満たすかそれを超える対照食物(0ppmのdl−α−リポ酸を加えたもの)を与えた(表1)。予備給餌期間に続き、犬を、以下のdl−α−リポ酸標的混在率(乾燥物質基準)の一つを有する5処置群に無作為に分けた:0ppm、150ppm、1500ppm、3000ppm、4500ppm。すべての食餌、対照およびα−リポ酸において、ビタミンEを加えて600〜1000国際単位のレベルで存在させ、ビタミンCを100〜200ppmのレベルで加えた。
【0026】
試験食物は、水を除き唯一の栄養源であった。新鮮な水を適宜提供した。犬を選択して初期体重を測定した後、食物の予想MEに基づき、各犬について食物投与量を算出した。初期食物投与量の算出は、以下の式により算出されるような、標準活動度をもたらす因子により修正されている犬に関する維持エネルギー必要量(MER)に基づいていた:
MER(kcal/日)=1.6×RER(静止エネルギー必要量)
式中、RER(kcal/日)=70×体重(kg)0.75
犬の体重を毎週測定し、最適体重を維持するのに十分な食物を与えるために、必要に応じて食物投与量を調整した。最適体重を、5点目盛りの3に決定した。犬の体重が初期体重の−10%以内に維持されなかった場合、食物投与量の調整後、その犬を試験から除外した。体重および食物摂取量の測定値をすべて記録した。
【0027】
試料を粉砕し、0.100±0.001gの試料を5.0mLのリン酸緩衝液(10mM NaHPO、2mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.9% NaCl、pH 7.4)中に2回抽出した。250μLの抽出物を、Teflonライニングを施した蓋付きの5mLのガラス製遠心分離管内に入れた。15μLのEDTA溶液(100mM EDTA、約1MのNaOHでpHを7.8に調整したもの)および50μLの新たに調製した5mM ジチオエリトリトール(DTE)を加えた。それらの溶液をボルテックスし、室温で5分間インキュベートした。その後、10μLの1M HPOおよび2.0mLのジエチルエーテルを加えた。管の蓋を閉め、ボルテックスし、室温において1500×gで3分間遠心分離した。エーテル層を別個の5mLのガラス製遠心分離管に移し、水層を1.5mLのエーテルでさらに2回抽出した。同一試料からの抽出物をすべて合わせた。その後、抽出物を、室温において水浴中の窒素蒸発器中で乾燥する。この時点で試料の蓋を閉め、一晩凍結させた。
【0028】
その後、乾燥した抽出物を解凍し、70μLのSDS/EDTA溶液(0.11%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、15mM EDTA、0.9% NaCl)および5μLの新たに調製した1mM DTEで再構成した。その後、各管に、新たに調製したNaBHを50μL加えた。それらの管をボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。10分後、試料を−70℃で凍結させた。溶液を解凍する前に、20μLの2M HClを加えた。溶液を解凍した後、800μLの100mM NHHCOを加えた。それらの溶液をボルテックスし、アセトニトリル中の100mM モノブロモビマン(momobromobimane)溶液(mBBr)を5μL加えた。その後、溶液を室温の遮光下で90分間インキュベートした。
【0029】
1.5mLのジクロロメタンでの抽出によりインキュベートした後、過剰のmBBrおよびDTE誘導体を試料から除去した。水層をHPLCに付した。30%アセトニトリルと1%酢酸からなり約2MのNHOHでpH 3.95に調整した移動相を用い、これを流速1.0mL/分でポンプで送って1回の注入につき15分間のアイソクラチック溶出を行い、リポ酸を分離した。この調製では、押出された食物の密度が1g/mLに等しいと仮定している。
【0030】
全血球計算および血液生化学分析のために、試験の開始2週間前と、さらに試験の0、28、56、84、112、140および168日目に、血液を無菌で採取した。これに加えて、リンパ球を分離するために、食餌療法(dietary intervention)の0、28および84日目に15mLの全血を採取した。
【0031】
ヘパリン添加(heparainzed)全血を50mLのAccuspin円錐形遠心分離管(Sigma Chemical)上に層状に入れ、等容量のリン酸緩衝食塩液(PBS)を加えた。試料を、700gで30分間、ブレーキを使用せずに遠心分離した。単球層を回収し、15mLの円錐形遠心分離管に移し、1〜3mLのPB中に再懸濁させ、前記のように遠心分離した(第1の洗浄)。第2の洗浄を、第1の洗浄のように実施した。最後に、細胞を回収し、過塩素酸(10% w/v)中に懸濁させ、分析まで−70℃で凍結させた。
【0032】
試料を、−70℃の冷凍庫から、ドライアイスを入れた冷却器に移した。バイアルを、冷却遠心器中、1200rpmで5分間遠心分離した。グルタチオン(GSH)を分析するための上澄みの一部を、円錐形試験管に移した。
【0033】
酸可溶性抽出物の誘導体化は、Jones(Jones et al)により修正された、Reedおよび共同研究者(Fariss et al)の方法によっていた。
簡潔にいうと、150μLの抽出物または外部標準を1.5mLのエッペンドルフチューブ内に加え、続いて20μLのγ−glu−glu内部標準を加え、50μLのIAAを加えた後、混合した。その溶液を、KOH−KHCO希釈標準溶液を用いて約10のpH(紫色)に調整した。溶液を、遮光下の室温で1時間インキュベートした。サンガー試薬を総容量と同容量で加え、その溶液を室温の遮光下で一晩(20時間)インキュベートした。
【0034】
インキュベートした後、溶液を12000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを別の1.5mLのエッペンドルフチューブ内に移した。200μLの上澄みを、300μLの入口部を有する褐色オートバイアル内に加え、その上端にHPLC分析用クリンパーを取りつけた。
【0035】
溶媒および分離条件は、記載されているとおりであった(Fariss,Jones)。GSHおよびGSSGのレベルを、標準試料に関して定量した。γ−グルタミル−グルタメートを内部標準として用いて、誘導体化効率を評価した。
【0036】
ベースラインに対する臨床化学、血液学および体重の値の比較を、ウィンドウズ版SAS上で有意性をP<0.05に設定して、対応のあるt検定(paired t-test)として解析した。各測定時間の値の平均を、有意性をP<0.05に設定した一元配置ANOVAにより分離した。84日目とベースラインのGSH:GSSGの差を、有意性をP<0.05に設定したウィンドウズ版SASでの一元配置ANOVAにより、群間解析した。
結果
7回にわたる逐次アッセイ(0、28、56、84、112、140、168日目)で決定した食物中のリポ酸濃度(ppm)は、期待されるアッセイ感度と、われわれの設備で典型的に生じる生成パラメーターの範囲内であった(表1)。
【0037】
食物摂取データに目立つ点はなかった。すべての群において大半の動物は、平均して、6カ月目に試験開始時より多くの食物を摂取した。4500ppm混在群で初期に若干の体重減少が起こったが、その変化は6カ月目の時点までに反転したと思われる点を除き、体重データに目立つ点はなかった。体調の評点は、この軽度の体重減少による影響を受けなかったと思われる。
【0038】
日常的な身体検査は、栄養に関連する異常またはdl−α−リポ酸の毒性の証拠を示さなかった。試験母集団のすべての動物が、試験の経過全体の期間中、正常を維持した。試験の経過中に、一部の動物で嘔吐が時折観察されたが、嘔吐がリポ酸に帰因しうるという結論が導かれるような傾向は観察されなかった。最高混在群の動物1匹を、体重減少および白血球増加症のため、21日目に試験から除外した。この動物の白血球増加症は、試験終了時までに消退しなかった。これは、他のいくつかの疾患過程に帰因すると推測される。
【0039】
28、56、84、112、140および168日目の血清の生化学的値を同一群の犬
に関する初期値と比較すると、いくつかの統計的な差が認められた。しかしながら、これらの値は実験室での参照範囲(laboratory reference range)内にあるかそれに非常に近く、数カ月にわたり一貫した傾向が認められたので、これらの差はすべて生物学的に重要でないと判断した。各期間における対照群と他の処置群との比較もいくつかの統計的差を示したが、これらの値は臨床検査室での参照範囲内にあるかそれに非常に近く、傾向が存在しなかったので、これらの差はすべて生物学的に重要でないと判断した。
【0040】
28、56、84、112、140および168日目の血液学的値を同一群の犬に関する初期値と比較すると、いくつかの統計的な差が認められた;しかしながら、これらの値は実験室での参照範囲内にあるかそれに非常に近く、傾向が存在しなかったので、これらの差はすべて生物学的に重要でないと判断した。各期間における対照群と他の処置群との比較は、いくつかの統計的差を示した;しかしながら、これらの値は臨床検査室での参照範囲内にあるかそれに非常に近く、傾向が存在しなかったので、これらの差はすべて生物学的に重要でないと判断した。
GSH:GSSG比
84日間にわたる給餌でのGSH:GSSG比の変化は、すべての補強群で比が増大し、食餌による著しい全体的作用を示していた(P=0.024)(表2)。ANOVAでは、最低および最高混在群に関し基礎食物群と比較しての有意差が示されたが、もっとも大きな数値的増加は、最低混在レベルにおいてであった。すなわち、最高および最低混在群に関するGSH:GSSG比の変化は、この同一期間中に基礎食物群で観察された変化と有意に異なっていた。84日目の4点に関する比は、これらの試料のすべて(対照群で1匹、処置群で3匹)でGSSGが検出されなかったため、決定することができなかった。したがって、補強群に関する値は、アッセイの感度が十分に高く、84日目の低レベルのGSSGを検出できていたならば、さらに高いGSH:GSSG比を示していた可能性がある。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
αリポ酸に関し、さらに観察を適用することができる。食餌中のαリポ酸の長期給餌は、安全かつ有効である。還元型グルタチオン(GSH)対酸化型グルタチオン(GSSG)の比が向上する。食餌中のαリポ酸の長期投与は、最低1、2、3、4、5または6カ月間から、1、2、3、4、5年間または動物の一生涯を含むさらに長期間までであることができる。αリポ酸は、食餌中でカプセル化など特別な保護をしなくても機能し、医薬に用いられるような単位剤形、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤などの状態で食餌中に存在する必要はない。リポ酸は、食餌中に、食餌の最低約25、50、75または100ppmで提供される。最高範囲はその毒性レベルをほんの少し下回り、食餌の約400、300または200ppmと幅広い。一般に、1日あたり約6または7mg/動物の体重1kgを超えることはなく、より一般には約5mg/kgを超えない。αリポ酸は、酸化的傷害に対する動物の抵抗能を改善するほか、酸化防止剤の防御能力を改善する。このすべては、適量存在する他の酸化防止剤、例えばビタミンEおよびビタミンCと共にもたらされる。このことは、αリポ酸の作用が、ビタミンCおよび/またはビタミンEの作用を超えることを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成体ペットに関する通常の栄養所要量を満たすコンパニオンペット用食餌であって、前記コンパニオンペットの高齢期における精神能力の衰退開始を阻害するのに足る量の酸化防止剤またはその混合物をさらに含んでなる、前記食餌。
【請求項2】
ペットがイヌである、請求項1に記載の食餌。
【請求項3】
イヌが1〜6歳である、請求項2に記載の食餌。
【請求項4】
ペットがネコである、請求項1に記載の食餌。
【請求項5】
ネコが1〜6歳である、請求項4に記載の食餌。
【請求項6】
ビタミンEが食餌の少なくとも約100ppmで存在する、請求項1に記載の食餌。
【請求項7】
ビタミンC、L−カルニチン、α−リポ酸又はその混合物からなる群より選択される酸化防止剤が食餌中に存在する、請求項6に記載の食餌。
【請求項8】
ビタミンC、L−カルニチン、α−リポ酸又はその混合物からなる群より選択される酸化防止剤が食餌中に存在する、請求項1に記載の食餌。
【請求項9】
少なくとも約50ppmのビタミンCが食餌中にある、請求項8に記載の食餌。
【請求項10】
少なくとも約25ppmのα−リポ酸が食餌中にある、請求項8に記載の食餌。
【請求項11】
少なくとも約50ppmのL−カルニチンが食餌中に存在する、請求項8に記載の食餌。
【請求項12】
高齢コンパニオンペットの精神能力の衰退開始の阻害方法であって、成体期にある前記ペットに、この阻害を達成するのに足る量の酸化防止剤またはその混合物を与えることを含んでなる方法。
【請求項13】
ペットがイヌである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
イヌが1〜6歳である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ペットがネコである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ネコが少なくとも1〜6歳である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ビタミンEを、食餌で測定して少なくとも約100ppmでペットに与える、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
ビタミンC、L−カルニチン、α−リポ酸又はその混合物からなる群より選択される酸化防止剤をペットに与える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ビタミンC、L−カルニチン、α−リポ酸又はその混合物からなる群より選択される酸化防止剤をペットに与える、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも約50ppmのビタミンCが食餌中にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも約25ppmのα−リポ酸が食餌中にある、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも約50ppmのL−カルニチンが食餌中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
成体ペットの通常の栄養所要量を満たすコンパニオンペット用食餌であって、該食餌中に少なくとも約100ppmのビタミンE、少なくとも約50ppmのビタミンC、少なくとも約25ppmのα−リポ酸および少なくとも約50ppmのL−カルニチンをさらに含んでなる、前記食餌。
【請求項24】
成体ペットが1〜6歳のイヌである、請求項23に記載の食餌。
【請求項25】
成体ペットが1〜6歳のネコである、請求項23に記載の食餌。
【請求項26】
成体コンパニオンペットの精神能力の向上方法であって、該ペットに、前記ペットの精神能力を向上させるのに足る量の酸化防止剤またはその混合物を与えることを含んでなる方法。
【請求項27】
成体ペットの通常の栄養所要量を満たし、前記ペットの精神能力を向上させるのに足る量の酸化防止剤またはその混合物をさらに含んでなる、コンパニオンペット用食餌。
【請求項28】
コンパニオンペットの高齢期における酸化的傷害に対する抵抗能の改善方法であって、成体期にある前記ペットに、栄養所要量を満たす食餌を与えることを含んでなり、前記食餌が少なくとも約25ppmのリポ酸を有し、そして前記食餌を少なくとも1カ月間与える、前記改善方法。
【請求項29】
コンパニオンペットの高齢期における酸化的傷害に対する抵抗能の改善方法であって、高齢期にある前記ペットに、栄養所要量を満たす食餌を与えることを含んでなり、前記食餌が少なくとも約25ppmのリポ酸を有し、そして前記食餌を少なくとも1カ月間与える、前記改善方法。

【公開番号】特開2010−279357(P2010−279357A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137171(P2010−137171)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【分割の表示】特願2007−62332(P2007−62332)の分割
【原出願日】平成13年10月25日(2001.10.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.ウィンドウズ
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】