説明

ペットフード

【課題】今や子供の数よりも多くなった犬,猫の家族化、および長寿化になるペットの健康改善と、ペットの嗜好性も高くなり、飼い主の安全志向に対する食と健康に付随した付加価値のある,柑橘系果汁圧搾後の残渣を混合し、産業廃棄物のリサイクルを目的としたペットフードを開発・提供することにある。
【解決手段】柑橘類の果汁圧搾残滓を含有したペットフードであり、柑橘類の果汁圧搾残滓を含有し、蛋白質含有量が16%以上で、抗酸化能が約56〜60%であることを特徴とするペットフード。また、鶏ミンチ100部に対して、柑橘系果汁圧搾残渣(レモン圧搾残渣)100部〜150部と、他の副部材を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペットフードに関するものであり、特に、ペットの健康改善を企図し、新たな生活予防用のペットフードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、日本国内には100種類以上の柑橘類が栽培され、そのうち、温州蜜柑が例年約160万トン生産されている。そして、柑橘類には生理活性物質が含まれていることが研究報告されている。
【0003】
そして、柑橘類の果実には、抗菌作用,抗ウイルス作用,抗炎症作用,血圧降下作用,疲労回復,抗鬱作用,鎮静作用,抗ストレス作用,神経失調回復作用および神経強壮作用などを持つことが知られている。
【0004】
一方,果汁圧搾後,果皮の一部は飼料として利用されている以外、多くは廃棄処分されているのが現状である。その果皮は外果皮(フラベト:Flavedo )と中果皮(アルベト:Albedo)からなり、内面は白い柔細胞の海綿組織になっている。
【0005】
これらの中には、フラボノイド配糖体およびアデノシン以外にも、βー クリプトキサンチンあるいはオーラプテンが含まれており、強い発癌抑制効果が認められている。また、植物繊維ペクチンは血中コレステロール値を抑える作用があることも認められている。
【0006】
そして、近年のペットフードは、魚介類および野菜を混合したものが主流となっており、運動不足に加えて、過剰な栄養の取りすぎになったペットが増加していることから、今回、これらを原料とした2種類のペットフード(ドライタイプおよびソフトタイプ)の開発を試みた。
【0007】
従来のペットフードは、種々製造販売されているが、茶滓を破砕して得られる破砕茶殻を添加混合し、茶滓に含まれる茶ポリフェノール類の作用によって、ペットフードの酸化や腐敗を防止すると共に、食物繊維を含むことから整腸作用があるとの発明が開示されている。例えば、特許文献1のように。
【0008】
さらに、ツバキ科植物あるいはクスノキ科植物の生茶もしくは乾燥葉の抽出物、あるいは乾燥物を含有するペットフードの発明が開示され、ペットが排泄する糞尿の臭いを減少させるものは、存在している。例えば特許文献2のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−218356号公報
【特許文献2】特開平03−19656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、今や子供の数よりも多くなった犬,猫の家族化、および長寿化になるペットの健康改善と、ペットの嗜好性も高くなり、飼い主の安全志向に対する食と健康に付随した付加価値のある,柑橘系果汁圧搾後の残渣を混合し、産業廃棄物のリサイクルを目的としたペットフードを開発・提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のペットフードは、飲料用ジュースなどの果汁原料として圧搾後に残渣物として得られる柑橘系果汁圧搾残渣の固形物を配合したドライタイプのペットフードと、高齢化したペット(犬,猫)及び幼犬を対象とし、前記柑橘系果汁圧搾残渣を多めに加え、栄養過剰を押さえたソフトタイプのペットフードとを設けるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、従来焼却あるいは畑地などで廃棄処分されていた柑橘系果汁圧搾残滓物を素材とし、該素材に含まれているポリフェノール類(フラボノイドなど)並びに植物繊維ペクチンを有効に利用し、ペットの健康維持に寄与し、また、ペットの健康維持での調整が可能なペットフードが得られる等極めて有益なる効果を奏する。
【0013】
また、既存のペットフードに比べて、犬、猫の食いつき方がよい様子を見られた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施例を示すドライタイプのペットフード(A)の素材の説明図である。
【図2】この発明の他の実施例を示すソフトタイプのペットフード(B)の素材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の好適な実施の形態について述べると、通常、主食タイプのペットフードには、蛋白質が30%以上含まれていなければならないことが規定されている。
しかし、間食用のペットフードについては、蛋白質は16%以上含まれていなければならないことが定められている。この点に留意して下記に示した方法で、おやつ用ペットフードを調整した。
【実施例】
【0016】
そこで、この発明の一実施例として、ドライタイプのペットフード(A)として、飲料用ジュースなどの果汁原料として圧搾後に残渣物として得られる固形物を配合した
ドライタイプのペットフード(A)を作る場合を詳述すると、
原料に
鶏ミンチ(1) 120部
柑橘系果汁圧搾残渣(レモン圧搾残渣)(2) 100部
小麦粉(3) 20部
タピオカ(4) 60部
を、それぞれ添加する。
【0017】
また、とくに高齢化とともに小食化したペット(犬および猫)の健康維持を目的としたペットフードとする場合には、前記素材に、
乾燥オカラ(5) 10部
米糠若しくは大豆蛋白(6) 10部
添加して作ることもできる。
【0018】
さらに、ペットの食欲増進を図る場合には、これらに
ビーフオイル(7) 5〜10部
を、さらに添加してもよい。
【0019】
次に、この発明の他の実施例は、ソフトタイプのペットフード(B)として、高齢化したペット(犬,猫)および幼犬を対象とし、栄養過剰を抑えたペットフードを調製した。その原料は、
鶏ミンチ(1) 120部
柑橘系果汁圧搾残渣(レモン圧搾残渣)(2) 150部
小麦粉(3) 30部
タピオカ(4) 60部
乾燥オカラ(5) 30部
を、それぞれ添加する。
【0020】
なお、ペットの種類による食欲増進を図る場合には、
米糠および大豆蛋白(6) 5〜10部
鶏ガラミンチ(8) 5〜10部
牛肉(9) 5部
を、前記素材に添加する。
【0021】
これらの一実施例ならびに、他の実施例の製造方法については、柑橘系果汁圧搾残渣に含まれる水分除去を考慮し、同時に配合する素材を混練し、押し出し成型機等により、所定の形状にして得られるものであり、また、成型過程で焼成による,加熱殺菌および乾燥処理を行うものである。
【0022】
これらのペットフード中の蛋白質含有量ならびに抗酸化能に係わる分析試験を行った結果を示すと、実験方法は、
1)蛋白質の定量方法
Lowry法に準じて試薬を調整し、ついで、試作した2種類の濃度未定のペットフード資料中の蛋白質量はアルブミンを標準とした検量線用蛋白質標準溶液(20,40,60,80,100μg/mL)を用いて、650nmに設定した分光光度計の吸光度を測定し、検量線(横軸に蛋白質濃度,縦軸に吸光度)から算出した。
【0023】
2)抗酸化能測定
a.DPPHラジカル消去効果試験
2種類のペットフードを、水:メタノール(1:1)混合溶液に溶解した後、濾過し得られる溶液を凍結乾燥し測定試料とした。
それぞれの試料濃度を0.4%(w/w)に調整した後、既報に準じて操作し、517nmに設定した分光光度計で測定した。
b.活性酸素阻害効果(SOD)試験
a)の項で調製した2種類のペットフードの3mM DMSO溶液を作成し、SOD活性検出キッド(和光純薬社製)を用いて既報に準じて操作し、560nmに設定した分光光度計で測定した。
【0024】
この発明の2種類(ドライタイプ、ソフトタイプ)のペットフードの蛋白質含有量の測定結果から、いずれも16.7%の値を示した。この値は、添加する素材である大豆蛋白および米糠の添加量を調整することにより増減が可能であり、ペットの食欲状態を見ながら最適な添加量のものを与えることも可能である。
【0025】
一方、この発明のペットフードの大事な機能である抗酸化能について検討した。
活性酸素とは、我々が空気中空から取り入れている酸素が体内で変質したもので、一般的にはスーパーオキシド,ヒドロキシラジカル,過酸化水素,一重項酸素の4種類から成り立っている。
【0026】
活性酸素・フリーラジカルは生体に蛋白質変性,脂質過酸化,酸素死活,DNA切断などの障害を与え、これらにより生体膜や遺伝子等の損傷が生じ、老化をはじめ、動脈硬化、糖尿病や癌などの疾病を引き起こす要因となっている。
【0027】
生体内で生成したフリーラジカル・活性酸素は生体内に存在するSOD(Superoxide dismutase)等の抗酸化酸素によって消去されるが、過剰な酸化ストレスが生じると生体防御機構では対応できなくなるので抗酸化物質の役割が重要である。
【0028】
この発明のペットフードの中には、柑橘系果汁圧搾残渣物として外果皮(フラベト:Flavedo )と中果皮(アルベト:Albedo)部分を配合していることから、それらの中には強い発癌抑制および血圧降下などの薬理効果があるポリフェノールであるヘスベリジンおよびそのアグリコンであるヘスペレチンなどのフラボノイド配糖体およびアデノシン,β−クリプトキサンチンあるいはオーラプテンなどが含まれていることから、高い抗酸化能が期待できる。
そこで、この発明のペットフード(A),(B)の抗酸化能を測定した結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
その結果、高い抗酸化能を発現し、現在色々な食料品に用いられているα−トコフェロールの発現数値(95.5%)と比較すると、この発明のドライタイプのペットフード(A)では、55.9%、ソフトタイプのペットフード(B)では、53.8%の値を得ることができた。
【0031】
α−トコフェロールの抗酸化能を1005とした場合には、この発明のペットフードは約56〜60%の抗酸化能を持っていることがわかった。また、数パーセントの植物繊維であるペクチンが存在することから、血中コレステロール値を押さえる作用もあり、ペットの食の安全志向と健康維持に関わる高付加価値のあるペットフードとして期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明のペットフード技術を確立し、該技術を実施・販売することにより、産業上利用可能性があるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 鶏ミンチ
2 柑橘系果汁圧搾残渣(レモン圧搾残渣)
3 小麦粉
4 タピオカ
5 乾燥オカラ
6 米糠若しくは大豆蛋白
7 ビーフオイル
8 鶏ガラミンチ
9 牛肉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットフードにおいて、柑橘類の果汁圧搾残滓を含有したことを特徴とするペットフード。
【請求項2】
ペットフードにおいて、柑橘類の果汁圧搾残滓を含有し、蛋白質含有量が16%以上で、抗酸化能が約56〜60%であることを特徴とするペットフード。
【請求項3】
鶏ミンチ100部に対して、柑橘系果汁圧搾残渣(レモン圧搾残渣)100部〜150部と、他の副部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のペットフード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−60907(P2012−60907A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206591(P2010−206591)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(507415060)有限会社峰和 (2)
【Fターム(参考)】