説明

ペット展示用ディスプレイ及びペット展示販売ブース

【課題】販売用ペットに生じるストレスが少なく、かつ展示スペースを有効活用することが可能なペット展示用ディスプレイ及びそれを用いたペット展示販売ブースを提供することを目的とする。
【解決手段】展示用ディスプレイ30は、第2展示ケース20aが第1展示ケース20の上方に所定の空間を隔てて設けられているため、上方からの圧迫感が減少し第1展示ケース20に収容された販売用ペットPのストレスを軽減することができる。また、ペット展示用ディスプレイ30は販売用ペットPのストレス軽減を図りながら、第1展示ケース20、第2展示ケース20aを上下に2段積載することが可能であるため、デッドスペースが少なく展示スペースを有効に活用することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの販売を行うペットショップ等で使用するペット展示用ディスプレイ及びペット展示販売ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットショップ等で犬や猫などのペットを販売する場合、販売用ペットを顧客側の壁面が透明な比較的小型のケージに個別に収容して展示し、顧客が販売用ペットの様子を観察できるようにしながら販売を行うことが一般的である。このようなケージの例として、下記[特許文献1]には生産コストの低減を図った安価なペット用ケースに関する考案が開示されている。
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3029300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなケージは箱状で内部が狭く、特にケージ内における天井方向からの圧迫感は、販売用ペットに対するストレスの発生要因の一つとなっている。また、上方が開放されたケージはこのストレスの発生要因を除くことが可能なものの、積み重ねて使用することが困難なため展示スペースを有効活用できないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、販売用ペットに生じるストレスが少なく、かつ展示スペースを有効活用することが可能なペット展示用ディスプレイ及びそれを用いたペット展示販売ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)販売用ペットPを収容可能な床面積を有する床部21と少なくとも一面が透明でかつ販売用ペットPが自力で乗り越えることが不可能な高さを備えた展示壁部23と開閉部25により開閉可能な出入口22を備えた側壁部33とを有する上方が開口した第1展示ケース20と、
第1展示ケース20と同等もしくはそれよりも小さい床面積を有する床部21aと少なくとも一面が透明でかつ販売用ペットが自力で乗り越えることが不可能な高さを備えた展示壁部23と開閉部25により開閉可能な出入口22を備えた側壁部33とを有する第2展示ケース20aと、を有し、
第2展示ケース20aが第1展示ケース20の上方に所定の空間を隔てて設置されることを特徴とするペット展示用ディスプレイ30を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)前記第1展示ケース20及び第2展示ケース20aの出入口22の下端が床部21、21a上面よりも高い位置に設けられ、
前記出入口22の開放時に出入口22の下端と床部21、21a上面との間に所定の高さの段差部35を形成することを特徴とする上記(1)のペット展示用ディスプレイ30を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)顧客C側に位置する少なくとも一面が透明領域を備えた展示壁3であるペット展示販売ブースにおいて、
当該展示壁3側に前記第1展示ケース20及び第2展示ケース20aの透明な展示壁部32側が位置するように1つ以上の上記(1)又は(2)のペット展示用ディスプレイ30を配置したことを特徴とするペット展示販売ブース50を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)顧客C側に位置する少なくとも一つの面が透明な領域を備えた壁部3aと、複数の販売用ペットが十分に歩きまわることが可能な床面積を有する展示床部1と、を有する放飼い展示ブース54を備えたことを特徴とする上記(3)のペット展示販売ブース50aを提供することにより、上記課題を解決する。
(5)ペット用ホテル施設、ペット用トリミング施設、セルフウォシュ施設のうち1つ以上を備えたことを特徴とする上記(3)又は(4)のペット展示販売ブースを提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るペット展示用ディスプレイは、上記の構成により、
販売用ペットに対するストレスを軽減しながら、展示スペースを有効活用することが可能となる。
また、本発明に係るペット展示販売ブースは、上記の構成により、
販売用ペットに対するストレスを軽減しながら、効果的に販売用ペットの展示販売を行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係るペット展示用ディスプレイ及びペット展示販売ブースの実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るペット展示用ディスプレイの例を示す斜視図である。図2は、本発明に係るペット展示用ディスプレイの変形例を示す斜視図である。図3は、本発明に係るペット展示販売ブースの例を示す模式的な平面図である。
【0009】
図1に示す本発明に係るペット展示用ディスプレイ30は、上方が開口した第1展示ケース20と、第1展示ケース20と同等もしくはそれよりも小さい床面積を有する第2展示ケース20aとを有している。そして、第2展示ケース20aは第1展示ケース20の上方に所定の空間を隔てて設置される。
【0010】
ペット展示用ディスプレイ30を構成する第1展示ケース20は、販売用ペットPを収容可能な床面積を有する床部21と、販売用ペットPが自力で乗り越えることが不可能な高さを備えた展示壁部23と、開閉部25により開閉可能な出入口22を備えた側壁部33と、を有しておりペット展示用ディスプレイ30の台座31上に載置される。また、第2展示ケース20aは第1展示ケース20と同等もしくはそれよりも小さい床面積を有する床部21aと販売用ペットPが自力で乗り越えることが不可能な高さを備えた展示壁部23と開閉部25により開閉可能な出入口22を備えた側壁部33とを有している。
【0011】
台座31は所定の厚さを有していることが好ましく、これにより顧客は立った姿勢のままで楽に第1展示ケース20、第2展示ケース20aに収容された販売用ペットPを観察することができる。また、台座31の下部にはキャスタ39を設置することが好ましく、これによりペット展示用ディスプレイ30の移動が容易となり、簡単にペット展示販売ブースのレイアウト変更が可能となる。
【0012】
第1展示ケース20、第2展示ケース20aの展示壁部23は透明なガラスやアクリル等の合成樹脂で形成され、顧客はこの展示壁部23を介して第1展示ケース20、第2展示ケース20a内に収容された販売用ペットPを観察することが出来る。尚、展示壁部23は3面とも透明であることが好ましいが、少なくとも顧客側に位置する一面が透明であれば良い。この際、展示壁部23の不透明な領域には木材や金属、不透明な合成樹脂を用いても良い。
【0013】
また、第1展示ケース20、第2展示ケース20aの床部21、21aの床面積は、複数の仔犬もしくは仔猫を収容した場合でもそれらの販売用ペットPに過度のストレスを生じさせない程度の面積を有していることが好ましい。
【0014】
側壁部33に形成された出入口22は、販売用ペットPの出し入れや展示ケース内部の清掃、給餌などのメンテナンス等に用いられ開閉部25によって開閉可能となっている。出入口22の開閉部25は、図1に示すように、左右方向に開閉する2枚の扉を用いることが好ましいが、上方向、下方向に開閉する扉や引き戸、着脱式の扉、シャッター等を用いても良い。尚、開閉部25には販売員が第1展示ケース20、第2展示ケース20a内を観察できるよう覗き窓を備えることが好ましく、また開閉部25は顧客から販売員による作業等が見えにくいように不透明とすることが好ましい。また、開閉部25は一枚で構成しても良いが、収容された複数の販売用ペットPの内から特定の販売用ペットPを取り出す作業のように出入口22が比較的小さい方が容易な作業もあるため、図1のように開閉部25を複数で構成し出入口22の大きさを選択可能とすることが好ましい。この際、個々の開閉部25毎に止め具を設置し、一方の開閉部25を開放している間に他方の開閉部25が開放しないようにすることが好ましい。
【0015】
また、出入口22を床部21、21aの上面よりも所定の寸法だけ高い位置に設け、出入口22が開放されたときには出入口22の下端と床部21、21aの上面との間に所定の高さの段差部35を形成することが好ましい。この段差部35は特に収容されている販売用ペットPが仔犬である場合、出入口22の開放時に販売用ペットPの逃亡、落下をある程度防止する障壁として機能する。これは、仔犬が数センチの段差であってもこれを越えることを嫌悪する性質を利用したものである。尚、この段差部35は販売員にとってはさほど大きな段差ではなく作業上の大きな障壁となることはない。この段差部35の高さは、50mm以上ではメンテナンス作業に支障をきたし、また5mm以下では上記の販売用ペットPに対する機能が十分でないため、5mm〜50mm程度、特に20mm±5mm程度が好ましい。
【0016】
更に、段差部35は開閉部25が閉じた場合には、開閉部25の前面と段差部35の前面とが略一面となるようにし、第1展示ケース20、第2展示ケース20aの内側に段差部35が突出しないことが好ましい。段差部35が第1展示ケース20、第2展示ケース20aの内側に突出する場合、販売用ペットPが段差部35の突出部を齧る傾向があり、段差部35が金属等の硬い材質の場合には販売用ペットPの特定部分が擦れて傷つき商品価値が下がる可能性がある。また、段差部35が木材や合成樹脂等の軟らかい材質の場合には、段差部35が摩耗して長期的には段差部35の機能を失うこととなる。
【0017】
ペット展示用ディスプレイ30の所定の位置には、必要に応じて第1展示ケース20、第2展示ケース20a内を照らす照明や第1展示ケース20、第2展示ケース20a内を保温するヒーター等を設けても良い。
【0018】
さらに、第1展示ケース20、第2展示ケース20aの展示壁部23は、図2に示すように、展示壁部23の上端を内側に所定の幅折り返し、販売用ペットPの越境防止の機能を強化しても良い。
【0019】
また、図2に示すように、第1展示ケース20、第2展示ケース20aの内部に脱着可能な仕切り版23aを設けて、第1展示ケース20、第2展示ケース20aを複数の区画に分割し、販売用ペットPの個別展示を可能とすることもできる。
【0020】
また更に、第1展示ケース20、第2展示ケース20aには、第1展示ケース20、第2展示ケース20aを個別に覆うカーテン等の遮蔽物を設置可能として、第1展示ケース20、第2展示ケース20aがメンテナンス中や空もしくは売却済み等の販売用ペットPが収容されている場合に、これを覆い隠すようにしても良い。
【0021】
尚、第1展示ケース20、第2展示ケース20aを側壁部33ごと取り外し可能とすれば、第1展示ケース20、第2展示ケース20aを販売用ペットPとともに移動させることで、販売用ペットPの運搬、展示が容易に行えるようなる。
【0022】
そして本発明に係るペット展示用ディスプレイ30は、第2展示ケース20aが第1展示ケース20の上方に所定の空間を隔てて設けられているため、上方からの圧迫感が減少し第1展示ケース20に収容された販売用ペットPのストレスを軽減することができる。さらに、第2展示ケース20aの床面積が第1展示ケース20の床面積よりも小さい場合には、第1展示ケース20の上方は部分的に開放され、販売用ペットPに対するストレスがなお一層軽減される。
【0023】
また、上段に位置する第2展示ケース20aの上方は開放されているため圧迫感が少なく、第2展示ケース20aに収容された販売用ペットPのストレスも軽減することができる。尚、第2展示ケース20aの上部に販売用ペットPを落下物等から保護するための蓋を設置する場合でも、この蓋を透明なアクリル等の部材で構成し販売用ペットPの視野を確保することで、販売用ペットPに対する圧迫感を減らしそのストレス軽減を図ることが出来る。
【0024】
また、ペット展示用ディスプレイ30は販売用ペットPのストレス軽減を図りながら、第1展示ケース20、第2展示ケース20aを上下に2段積載することが可能であるため、デッドスペースが少なく展示スペースを有効に活用することが出来る。
【0025】
上記のペット展示用ディスプレイ30は、例えば図3に示すような個別展示ブースとして機能するペット展示販売ブース50に用いられる。図3に示すペット展示販売ブース50は、顧客C側に位置する少なくとも一つの面が透明領域を備えた展示壁3を有している。そして、ペット展示用ディスプレイ30は、ペット展示販売ブース50の展示壁3側にペット展示用ディスプレイ30の透明な展示壁部32側が位置するように配置される。尚、ペット展示用ディスプレイ30は展示壁3に沿って複数並列に配置することが好ましいが、特に単体で用いても構わない。尚、前述のように、ペット展示用ディスプレイ30の台座31にキャスタ39が設置されている場合には、ペット展示販売ブース50内におけるペット展示用ディスプレイ30の配置を容易に変更することができる。
【0026】
更に、本発明に係るペット展示販売ブースはペット展示販売ブース50に加えて、顧客C側に位置する少なくとも一つの面が透明な領域を備えた壁部3aと複数の販売用ペットPが十分に歩きまわることが可能な床面積の展示床部1を有する放飼い展示ブース54を備えたペット展示販売ブース50aとしても良い。この際、ペット展示用ディスプレイ30はペット展示販売ブース50aの個別展示ブースとして機能するペット展示販売ブース50に用いられる。また、ペット展示用ディスプレイ30は放飼い展示ブース54内に設置するようにしても良い。尚、放飼い展示ブース54とは、比較的大きな空間に複数の販売用ペットPを放し飼い状態で展示しその行動を観察することで、狭い展示ブース内では十分に把握することが難しかったペット固有の性格や協調性などを顧客Cに理解してもらうためのものである。
【0027】
また更に、ペット展示販売ブース50、50aには、ペット用ホテル施設、ペット用トリミング施設、セルフウォシュ施設等の付帯施設を設けても良い。尚、ペット用ホテルとは、顧客の飼育しているペットを一時的に預かって飼育するものである。また、トリミングブースとは、顧客の飼育しているペットの毛を顧客の要望にあわせてカットして整えたり、トリミングブースに設けられたペット用入浴設備にペットを入浴させペットの汚れを除去するものである。また、セルフウォシュとは前述のペット用入浴設備と同様なものであり、所定の料金を払って顧客自身がペットの入浴及び洗浄を行うものである。
【0028】
そして、ペット展示用ディスプレイ30を用いた本発明に係るペット展示販売ブース50、50aは、ストレスの軽減された健康な販売用ペットPを展示スペースを有効活用しながら効率良く販売することが出来る。
【0029】
尚、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るペット展示用ディスプレイの例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るペット展示用ディスプレイの変形例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るペット展示販売ブースの例を示す模式的な平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 展示床部
3 展示壁
3a 壁部
20 第1展示ケース
20a 第2展示ケース
21、21a 床部
22 出入口
23 展示壁部
25 開閉部
30 ペット展示用ディスプレイ
33 側壁部
35 段差部
50、50a ペット展示販売ブース
54 放飼い展示ブース
P 販売用ペット
C 顧客

【特許請求の範囲】
【請求項1】
販売用ペットを収容可能な床面積を有する床部と少なくとも一面が透明でかつ販売用ペットが自力で乗り越えることが不可能な高さを備えた展示壁部と開閉部により開閉可能な出入口を備えた側壁部とを有する上方が開口した第1展示ケースと、
第1展示ケースと同等もしくはそれよりも小さい床面積を有する床部と少なくとも一面が透明でかつ販売用ペットが自力で乗り越えることが不可能な高さを備えた展示壁部と開閉部により開閉可能な出入口を備えた側壁部とを有する第2展示ケースと、を有し、
第2展示ケースが第1展示ケースの上方に所定の空間を隔てて設置されることを特徴とするペット展示用ディスプレイ。
【請求項2】
前記第1展示ケース及び第2展示ケースの出入口の下端が床部上面よりも高い位置に設けられ、
前記出入口の開放時に出入口の下端と床部上面との間に所定の高さの段差部を形成することを特徴とする請求項1記載のペット展示用ディスプレイ。
【請求項3】
顧客側に位置する少なくとも一面が透明領域を備えた展示壁であるペット展示販売ブースにおいて、
当該展示壁側に前記第1展示ケース及び第2展示ケースの透明な展示壁部側が位置するように1つ以上の請求項1又は請求項2記載のペット展示用ディスプレイを配置したことを特徴とするペット展示販売ブース。
【請求項4】
顧客側に位置する少なくとも一つの面が透明な領域を備えた壁部と、複数の販売用ペットが十分に歩きまわることが可能な床面積を有する展示床部と、を有する放飼い展示ブースを備えたことを特徴とする請求項3記載のペット展示販売ブース。
【請求項5】
ペット用ホテル施設、ペット用トリミング施設、セルフウォシュ施設のうち1つ以上を備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のペット展示販売ブース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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