説明

ペット用キャリーケース

【課題】側板内に蓄冷材、蓄熱材等を収納することによって、ペットに好適な居住環境を有するペット用キャリーケースを提供する。
【解決手段】床板、上板及び周囲の側板によって略直方体に形成されたケース本体の下面にキャスターを設け、上面には取っ手及び/又はバンドを取り付けてなり、ケース本体の一面をペットの出入りする出入口とすると共に、前記出入口を開閉する扉板を設け、前記出入口の両側の側板は、通気性を有する内側壁と断熱性を有する外側壁とによって形成し、内側壁と外側壁との間に蓄冷材又は蓄熱材等の温度調節材を収納し、前記出入口側に開口する空隙を設けてなることを特徴とする。前記空隙の開口部には開口部を塞ぐ開閉自在な蓋を設けることが好ましい。また、上面には開閉自在な蓋を有する覗き窓を設けることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば犬、猫等のペットを入れて運搬するペット用キャリーケースに係り、夏季、冬季のいずれの場合でも居住環境を良好に維持しながら運搬することができるペット用キャリーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物に触れたり、一緒に過ごすときは、気持ちがゆったりして癒されます。人と動物の共同生活には長い歴史があり、人の歴史において動物は多くの働きをし、人と動物は一緒に生活してきました。最近では、動物と生活することで精神生活の安寧や子供の成長、健康の増進、機能障害の回復、また、他人とのコミュニケーションの促進などに有効な効果をもたらすといわれている。
【0003】
犬、猫等のペットは、専用のキャリーケースに入れられて運搬されるが、冬季の寒さや夏季の厚さはペットにとっては耐え難い。そこで、ペット用ハウスには、床を上板と下板からなる二重構造にして、この二重構造とした空間に保温液を貯蔵するためのタンクを着脱自在に挿入するようにしたものがあり、また、屋根側の略全面に蓄冷材を収納可能な収納室を設けたものが提案されている。
【0004】
前者の例として特開平7−16032号公報があり、後者の例として特開2005−118012号公報がある。
【特許文献1】特開平7−16032号公報
【特許文献2】特開2005−118012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献はいずれも所定の場所に設置して使用するペットハウスに関するものであり、ペットを運搬するキャリーケースについては何ら提案されていない。特開平7−16032号公報記載のペットハウスは、床を保温するものであるから、ペットの体が直接保温液によって加熱されることになり、ペットによっては低温火傷をするおそれがあり、また保温液を貯蔵するタンクが雨水等によって汚染されやすい。
【0006】
さらに、特開2005−118012号公報記載のペットハウスは、屋根側の略全面に設けた収納室に蓄冷材を収納するものである。屋根側に蓄冷材を収納した場合には、直接日に当たるから長時間冷却できないばかりでなく、冷気を効率よく循環することができない。この発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、側壁に設けた収納室に蓄冷材又は蓄熱材を収納するようにしたペット用キャリーケースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るペット用キャリーケースは、床板、上板及び周囲の側板によって略直方体に形成されたケース本体の下面にキャスターを設け、上面には取っ手及び/又はバンドを取り付けてなり、ケース本体の一面をペットの出入りする出入口とすると共に、前記出入口を開閉する扉板を設け、前記出入口の両側の側板は、通気性を有する内側壁と断熱性を有する外側壁とによって形成し、内側壁と外側壁との間に蓄冷材又は蓄熱材等の温度調節材を収納し、出入口側に開口する空隙を設けてなることを特徴とする。前記空隙の開口部には開口部を塞ぐ開閉自在な蓋を設けることが好ましい。また、上面には開閉自在な蓋を有する覗き用開口部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
この発明のペット用キャリーケースは、室内の温度が容易に調節され、ペットに好適な居住環境を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図示する実施形態について説明する。ペット用キャリーケース1(以下、単にキャリーケースという)は、図1に示すように、ペットを収容するケース本体2と、このケース本体2の底面に設けたキャスタ3と、ケース本体2の上面に取り付けた取っ手4及び/又はバンド5とで構成されている。
【0010】
ケース本体2は、略直方体に形成されており、床板6と上板7と両側板8と背板9と正面側の扉板10によって構成されている。前記床板6と上板7と背板9は、プラスチック板あるいは金属板等の強度の高い外壁の内面に、発泡プラスチック板あるいは断熱性のある板を内壁として固着した二重構造であって、上板7の中央部には多数の通気孔11を有する開閉自在な蓋が形成されている。尚、前記床板6と上板7と背板9は、前記構造に限定されるものではなく、木製板によって形成してもよい。
【0011】
また、扉板10も、前記床板6と上板7と背板9と同様に、プラスチック板あるいは金属板等の強度の高い外壁の内面に、発泡プラスチック板あるいは断熱性のある板を内壁として固着した二重構造とすることができ、あるいは木製板によって形成してもよい。
【0012】
前記扉板10は、開閉自在であって、図示しない蝶番またはヒンジを介して一方側の側板8に回動自在に取り付けられている。扉板10は、扉本体10aと固定部10bからなり、図示する実施形態では、扉本体10aと固定部10bとはヒンジ10cを介して折曲自在に連設されている。
【0013】
前記扉本体10aの中央部には、多数の通気孔11が形成されている。前記固定部10bは、扉本体10aを閉じたときに側板8に固定する固定手段であって、中間部に透孔10dが形成されており、側板8の外面に設けた図示しない留め具を前記透孔10dに挿入して固定するように構成されている。
【0014】
尚、固定部10bと側板8との固定手段は、前記実施形態に限らず任意の公知の手段に変更することができる。例えば、透孔10dをボタン孔とし側板8には留め具に代えてボタンを設けてもよく、また、ホック形式としても良く、固定部10bと側板8にループ部とフック部のいずれか一方を設けた面ファスナー形式としてもよく、さらに、固定部10bに代えて扉本体10aの内側にフックを設け、前記フックを対向する側壁8に設けた係止片に係止させる構成であってもよい。また、扉本体10aまたは固定部10bと側板8との固定手段は、面ファスナーであってもよい。
【0015】
側板8、8は、内側壁13と外側壁14とによって形成されており、内側壁13と外側壁14との間には蓄冷材又は蓄熱材等の温度調節材15を収納する空隙16が設けられている。内側壁13には、空隙16に収納された温度調節材15による冷熱又は温熱を効率よく循環させるために多数の通気孔11が形成されている。尚、内側壁13は、通気性があれば前記構成に限定されるものではなく、通気性がよく吸水性に優れた布によって形成してもよい。
【0016】
前記外側壁14は、プラスチック板あるいは金属板等の強度の高い外面壁14aの内面に、発泡プラスチック板あるいは断熱性のある板を内面壁14bとして固着した二重構造とすることが好ましい。例えば、発泡プラスチック板としてウレタン樹脂を用いることができる。また、外面壁14aには、表面にビニール製又は皮製のシートを貼着してもよい。
【0017】
また、両側壁8、8の扉板10を設けた側の端部は開口しており、この開口部には空隙16を開閉する蓋17が取り付けられている。蓋17の側端を外側壁14の外面壁14aに蝶番またはヒンジを介して回動自在に取り付けてなり、縦方向のヒンジ18を介して蓋本体17aと固定部17bの2つに折り曲げられるように形成されている。蓋本体17aが空隙16の開口部を閉塞し、固定部17bが内側壁13に固定される。
【0018】
前記固定部17bの内面と内側壁13の室内側の表面には、それぞれ面ファスナー19のフック部とループ部のいずれか一方が貼着されており、この面ファスナーによって固定するように構成されている。尚、固定部17bと内側壁13の室内側との固定は、前記面ファスナー19に限定するものではなく、他の公知の手段、例えばボタン、ホック等による構成、あるいは固定部17bを単に空隙16に差し込む構成であってもよい。また、固定部17bを省略し、扉本体17aによって閉じるようにしてもよい。
【0019】
空隙16を塞ぐ蓋17を設けることによって、温度調節材が不用意に飛び出すのを押さえることができると共に、機密性が高まり断熱性が良くなる。
【0020】
ケース本体2の上面に形成した覗き用開口部12は、開閉自在な蓋12a,12aを有しており、前記蓋12a,12aを開けると開口され収納したペットを覗くことができる。前記蓋12a,12aは、摘み12b、12bを持って引き上げると蝶番又はヒンジ12c、12cを回転軸として回動され、覗き用開口部12を開口させることができる。覗き用開口部12を開口させることによって、収容したペットに声をかけたり、触ったりして慰めることができ、収納されているペットの不安や寂しさを解消することができる。
【0021】
さらに、ケース本体2の上面には、取っ手4及び/又はバンド5が取り付けられている。取っ手4は持ち上げて移動するときに使用することができ、バンド5は、調節部材5aで長さの調節が可能であり、両端部はケース本体2の扉板10側に取り付けられていて、バンド5を牽引することによりケース本体2の底面に設けたキャスタ3によって走行させることができる。また、ケース本体2の上面には、図示するのを省略したが、肩掛けバンドを取り付けてもよい。肩掛けバンドを取り付けた場合には、容易に運搬することができるとともに、運搬中でも上記覗き窓12を開けることによってペットに直接話しかけたり触れることができる。
【0022】
ケース本体2の底面に設けたキャスタ3は、四隅部に設けても良いが、後端部にのみ設け、扉板10を設けた前端部には、ケース本体2を水平にするためにキャスタ3と同じ高さの突起を設けてもよい。
【0023】
この発明に係るペット用キャリーケース1は、上記のように構成したので室内のペット居住環境を良好に維持することができる。即ち、空隙16内に、夏季であれば蓄冷材を収納し、冬季であれば蓄熱材を収納すると、側板8は断熱材によって形成されており室内側にのみ通気可能であるから、冷気又は暖気が室内に流入することによって室内が冷却又は暖房されることになる。上板7には通気孔11が設けられているから、室内の冷気又は暖気は効率よく循環することになり、全体的に均一な温度調節が可能である。
【0024】
また、暖かい空気は上方に冷たい空気は下方に循環することから、冷気はペットのいる床板6側に流れることになり、一方、暖気はペットに触れ暖められてから上昇することになり、常に最適な環境を維持することができる。また、蓄冷材、蓄熱材等の温度調節材を側板内に収納するようにしたから、ペットが自ら室内の中央部に寄ったり、いずれかの側壁に近づいたりすることによって調節をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を示す上面斜視図である。
【図2】同じく断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1:ペット用キャリーケース
2:ケース本体
3:キャスター
4:取っ手
5:バンド
6:床板
7:上板
8:側板
9:背板
10:扉板
10a:扉本体
10b:固定部
10c:ヒンジ
10d:透孔
11:通気孔
12:覗き用開口部
13:内側壁
14:外側壁
15:温度調節材
16:温度調節材収納用空隙
17:蓋
18:ヒンジ
19:面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板、上板および周囲の側板によって略直方体に形成されたケース本体の下面にキャスターを設け、上面には取っ手及び/又はバンドを取り付けてなり、側板の一面をペットが出入りする出入口とすると共に、前記出入口を開閉する扉板を設け、前記出入口の両側の側板は、通気性を有する内側壁と断熱性を有する外側壁とによって形成し、内側壁と外側壁との間に蓄冷材又は蓄熱材等の温度調節材を収納し、出入口側に開口する空隙を設けてなることを特徴とするペット用キャリーケース。
【請求項2】
空隙を塞ぐ開閉自在な蓋を設けてなることを特徴とする請求項1に記載のペット用キャリーケース。
【請求項3】
上面には開閉自在な蓋を有する覗き用開口部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のペット用キャリーケース。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−28(P2009−28A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162316(P2007−162316)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(305012647)株式会社上原興業 (2)
【Fターム(参考)】