説明

ペット用トイレシート

【課題】ペットのオーナーには排泄の有無を視認し得る消臭性のペット用トイレシートを提供すること。
【解決手段】本発明のペット用トイレシート1は、光透過性の液透過性表面シート2と吸収体4とを備えている。吸収体4と表面シート2の間に、吸収体4側から上側に黒色系成分を含有する有色シート5及び中間シート6がこの順で配されている。有色シート5は液透過性のシートであり、中間シート6は黒色系成分よりもL*値が大きく、液保持可能性であって、表面シート2よりも光透過率が低いシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬や猫等のペット(小動物)の排泄液の処理に用いられるペット用トイレシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬や猫等のペットを住居内で飼育する場合、ペットが排泄した尿等の排泄物を吸収するために、トイレシートが使用されている(例えば下記特許文献1参照)。同文献に記載のシートは、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在する例えば吸水ポリマーのような液保持性の吸収体を備えている。このようなシートは、一般的には床に載置して用いられ、ペットがその上で排尿をすると、吸収体の吸収性によって、排泄物が吸収される。このようなシートは、ペットの大きさにもよるが、通常1〜数回の尿を吸収した後に、又は1日使用した後に新しいシートと交換される。
【0003】
ペット用トイレシートに排尿がなされると住居内に尿臭が拡散する。これを防ぐものとして、消臭機能を付与したシートが知られている(例えば、特許文献2〜4)。これらの技術によれば、尿臭に対する有効な消臭効果が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−92940号公報
【特許文献2】特開平1−120234号公報
【特許文献3】特開2008−142014号公報
【特許文献4】特開2008−161150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消臭剤を配合したトイレシートでは、その消臭性能が高ければ高いほど、嗅覚的にペットの排尿の有無を判断することが困難になる。特に、特許文献2のように、消臭剤として活性炭等の黒色系のものを使用した場合には、尿の色が見えないか極めて見え難くなるため、ペットのオーナーも排尿の有無を視認することが困難となる。特に、ペットが排尿している行動を見逃した場合に、長時間経過後、排尿の有無を判断することが困難である。
【0006】
従って本発明の課題は、ペットの排尿の有無を、客人等からは排尿後のシートであることが分かり難いにも拘わらず、ペットのオーナーからは分かり易いペット用トイレシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、排泄側表面に配置された光透過性である液透過性の表面シートと液保持性の吸収体を含むペット用トイレシートであって、前記表面シートと吸収体との間には、黒色系成分を含む液透過性の有色シートと、該有色シートと表面シートとの間に、前記黒色系成分よりもL*値が大きく、かつ、光透過率が表面シートよりも低い液保持可能な有色の液透過性の中間シートが配されているペット用トイレシートを提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のペット用トイレシートは、排尿直後から暫くの間は排尿の有無をペットのオーナーには分かり易いので交換時期判断に役立つ上、排尿後長時間経過後には排尿の有無が視認し難くなり、長時間の使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のペット用トイレシートの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のI−I線断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1の消臭シート5の斜視図である。
【図4】図4は、図3のII−II線断面図である。
【図5】図5は、本発明のペット用トイレシートの別の実施形態を示す図である。
【図6】図6は、本発明のペット用トイレシートの更に別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のペット用トイレシートについて、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態のペット用トイレシート1(以下、「トイレシート1」ともいう。)は、図1、図2に示すように、排泄側表面に配置された液透過性の表面シート2、排泄側遠方に配置された液不透過性の裏面シート3とそれらシート2,3の間に液保持性の吸収体4を備えている。表面シート2と吸収体4の間には、黒色系成分としての黒色系消臭剤を含む有色シートとしての消臭シート5を備え、更に、消臭シート5と表面シート2の間に中間シート6を備えている。
【0011】
なお本発明のペット用トイレシート又はペット用トイレシートを構成する材料においては、ペットが排泄を行う際に近い側を「排泄側表面」又は「上側」、遠い側を「排泄側遠方」又は「下側」と呼ぶ。また、上下方向に対して垂直な方向を「面方向」と呼ぶ。
【0012】
表面シート2は、光透過性であり、かつ液透過性である。ここで光透過性とは、通常家庭で使用される照明を一方の面から照射した場合に反対側の面から照射した光が見える程度のもの、即ち、表面シートの上側から光を照射した場合に照射側と反対側(下側)の面と接して配される部材が視認できる程度の性質を備えたものを言う。より具体的には、JIS K 7105法に準拠した全光線透過率測定方法に従った反射率として、反射・透過率計((株)村上色彩研究所製、商品名「HR−100」)を用い、表面シートの任意の点10点を、A光源で全光透過率Ttの値を測定し、その平均値を持って光透過率とし、当該値が30〜90%、特に40〜80%のものが好ましい。当該範囲であると、後述するメカニズムにおいて、排尿の有無が視認しやすいと共に、通常状態では下層側シートの色が適度に遮蔽され、視覚的に柔らかな印象となるので、室内に置くペットシートとして周囲との調和が取りやすく好ましい。
【0013】
表面シート2としては、例えば不織布や多孔性フィルムシート等を用いることができる。好ましくは、液保持性がないか極めて低いもので、液を素早く下側へ通過させやすい材料がよい。そのような材料を使用することにより、表面の液残りが少なくなるので尿臭が発生・拡散し難くなり、また、消臭シートと尿が接触し易くなるので、より消臭効果が発揮し易い。したがって、表面シート2の材料としては撥水性繊維からなる不織布又はそれを親水化処理した不織布や、樹脂性の多孔性フィルムシートが好ましい。
【0014】
表面シート2に不織布を使用する場合には、ペットが特に犬等の場合には、いたずらで引っ掻いたり、掘り起こす動作などをするために、十分な強度を有するものが好ましい。そのような不織布としては、ヒートロール不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。十分な液透過性及び機械的強度の確保、並びに経済性の観点から、不織布の坪量は10〜100g/m2、特に15〜40g/m2であることが好ましい。
【0015】
図2に示すように、液不透過性の裏面シート3は排泄側遠方に配されるもので、本実施形態(トイレシート1)においては最も下側に位置するものであることから、使用状態においてはトイレシートと共に使用するトイレトレーや床等と直接接触する部位となる。そこで、裏面シート3は透湿性がないか低いものであると、トイレシートに尿が排泄された後放置されていても床やトイレトレーに湿気が溜まり難いので好ましい。裏面シート3としては、合成樹脂製の液不透過性フィルムや、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層(SMS)不織布等の耐水圧が高い撥水性の不織布を用いることができるが、低透湿性という点からは合成樹脂製のフィルムを用いることが好ましい。
【0016】
液保持性の吸収体4としては、パルプ等のセルロース系繊維からなる吸液性繊維と、高吸収性ポリマー等のヒドロゲル材料からなる粒子との混合体から構成されているものや、又は該混合体がティッシュペーパーや不織布等からなる液透過性シートで包被されて構成されているもの、更には、2枚の不織布の間に膨潤可能な状態で高吸収性ポリマーが挟持されたパルプレス構造のものや、特開平8−246395号公報記載の吸収性シートなどを使用することができる。本実施形態(トイレシート1)では、吸水性ポリマー、解繊パルプ等の混合物を主とする吸収体4を未晒しパルプ製の紙によって包被して吸収構造体としている。
【0017】
トイレシート1を平面視した形状は、図1に示すように、長方形状であるが、平面視した形状に特に制限はなく、例えば楕円形、多角形等の形状であってもよい。トイレシート1を構成する吸収体4を平面視した形状は、特に限定されないが、トイレシート1を平面視した形状と一致していることが好ましく、トイレシート1においては、長方形状である。トイレシート1を構成する表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の外周よりも外方に延出しており、トイレシート1においては、互いに同形同大に形成されており、トイレシート1の輪郭と一致する輪郭を有している。
【0018】
図2に示すように、表面シート2と吸収体4との間、即ち吸収体4の上側には黒色系消臭剤を含む液透過性の消臭シート5が配置されている。本発明において「黒色系」とは、CIE−L***表色系におけるL*値が20以下のもの、好ましくは15以下、更に好ましくは10以下のものを指す。ここで「黒色系消臭剤のL*値」とは、黒色系消臭剤そのもののL*値のことであり、粒状等の場合には、シャーレ等に出来る限り隙間なく敷き詰めて測定される。本明細書においては、例えば、口内径30mm、高さ15mmの透明ガラスシャーレに黒色系消臭剤を敷き詰め、蓋をしない状態で色差計によって測定する。これに代えて、粉末体を充填し得るセルやアタッチメントを備えた色差計を用いても良い。本実施形態(トイレシート1)においては、消臭シート5は吸収体4とともに未晒しパルプ製の紙によって包被されて吸収構造体の一部を構成している。消臭シート5が吸収体4の上側に配置されることにより、吸収体4が吸収保持した尿の臭いを有効に消臭することができる。
消臭シート5を平面視した形状は、特に限定されないが、トイレシート1においては、吸収体4と同形同大に形成されている。消臭シート5のL*値は25以下、特に20以下、更には15以下となるように黒色系消臭剤が配されていることが、長時間経過後の尿の存在を遮蔽する観点から好ましい。また、黒色系成分が消臭剤の場合には十分な消臭機能を確保する点で好ましい。なお、消臭シート5のL*値の測定方法は、後述する中間シート6の測定方法と同じである。
【0019】
本実施形態(トイレシート1)における消臭シート5は、図3,図4に示すように、黒色系消臭剤として活性炭を含む消臭層51を、上側のパルプシート52及び下側のパルプシート53に挟持された構造となっている。消臭層51とパルプシート52,53とは、抄き合わせ又は接着剤等を用いた貼り合わせにより積層される。消臭層51の大きさはパルプシート52、53の大きさよりやや小さくされ、2枚のパルプシート52、53の接合部5sを左右に形成して活性炭を含む消臭層51を介在封入するようにする。そのため両シート52、53の長さが消臭層51より左右に長くされ、消臭層51の左右端縁51tを越え延在するようにされている。一方、前後方向においては消臭層51とパルプシート52,53の長さがそろえられている。消臭シート5の厚みは、用途に応じて適宜調整されればよいが、好ましくは0.1〜2.0mm、更に好ましくは0.2〜0.5mmである。パルプシート52、53の厚みは、用途に応じて適宜調整されればよいが、好ましくは0.1〜2.0mm、更に好ましくは0.2〜0.5mmである。
本発明においてシート材の厚みは、特に断らない限り、測定法としてはキーエンス社製のレーザー厚み計(商品名:LK−080)にて0.245kPaの荷重下で測定した値を厚みとする。
【0020】
本実施形態(トイレシート1)における消臭シート5は非抗菌性の黒色系消臭剤を含有した消臭層51を2枚のパルプシート(親水性)52、53の間に介在してなる(図3参照)。消臭層51は、多孔性の黒色系消臭剤と該黒色系消臭剤を保持する繊維原料とを主体としてなる。繊維原料としては、NBKP、LBKP等の木材パルプの他、藁、綿等の非木材パルプ等の公知の天然繊維が使用できる。また、シート強度を向上させる目的で、ポリエチレン繊維等の合成繊維を適宜混合してもよい。消臭層51における繊維原料の含有率は、好ましくは50〜99質量%、更に好ましくは70〜97質量%である。50質量%以上とすることにより、シート強度やフレキシブル性が十分なものとなり、99質量%以下とすることにより消臭効果が十分に奏される。
【0021】
消臭シート5の消臭層51を構成する黒色系消臭剤は多孔性であり、孔直径2〜20nmの細孔の容積が多孔性の黒色系消臭剤1g中に0.2ml/g以上のものが好ましく、0.6ml/g以上となるように、該細孔を有しているものがより好ましい。孔直径が小さすぎると粒子径が大きい場合など、吸着速度が遅くなり、消臭機能が発揮できないことがある。細孔の容積が小さすぎると、消臭剤の必要量が多くなり、製品のコストが嵩んだり、十分な消臭能力が発揮されない場合がある。
【0022】
消臭シート5の黒色系消臭剤は、その少なくとも一部が疎水性であるのが好ましい。少なくとも一部が疎水性であるとは、少なくとも表面が疎水性であることを好ましくは意味し、これにより、多孔性の黒色系消臭剤が濡れにくくなり、排泄物で濡れることにより消臭性能が低下することが少なくなる。また、多孔性の黒色系消臭剤の平均粒子径は、1〜500μmとするのが、トイレシート1へ導入する際の固定性、分散性及び風合いの点から好ましい。
【0023】
消臭シート5の黒色系消臭剤としては種々用いることができるが、活性炭、備長炭、竹炭、コーヒー殻などを使用することができる。これらの中でも、活性炭を用いることが好ましい。活性炭としては、水蒸気賦活活性炭や薬品賦活活性炭を用いることができるが、薬品賦活活性炭が尿臭の消臭効果が高いので好ましい。薬品賦活活性炭としては、塩化亜鉛賦活活性炭、リン酸賦活活性炭等が挙げられる。
【0024】
消臭シート5の黒色系消臭剤の含有量は、トイレシートの飽和吸収量(g)に対し2〜20nmの細孔の容積が0.3ml/100g以上であるのが好ましく、0.6ml/100g以上であるのが更に好ましい。0.3ml/100g以上とすることにより、十分な消臭効果を発揮することができる。なお、前記飽和吸収量は、下記のようにして測定される。
飽和吸収量;トイレシートを生理食塩水に30分間浸漬する。30分経過後吸収性物品を引き上げ、30分間水切りを行い、水切り後の重量(g)から浸漬前の重量(g)を差し引き、これを飽和吸収量とする。消臭層51は、多孔性の黒色系消臭剤及び繊維原料を含有したスラリーから、常法通り、通常の湿式抄紙法によりシート状に成形して得ることができる。
【0025】
前記のようにして得られた消臭層51とパルプシート52、53とは、常法通り、抄紙機上で抄き合わされるか、又は貼り合わせ機を用いて接着剤等により貼り合わされることにより、2枚のパルプシートの間に消臭層51を介在させた消臭シート5とすることができる。その後、スリット工程において所望のシート巾に調整されて、本実施形態(トイレシート1)の消臭シート5とすることができるが、その際、両側部が消臭層51を介在していないことから、黒色系消臭剤が脱落せず、製品及び製造ラインが汚れることがなく好ましい。
【0026】
消臭シート5を構成するパルプシート52、53としては、液透過性の材料が用いられ、具体的には、紙、不織布等が用いられる。紙とした場合、繊維原料としては、消臭層51と同様のものが使用できる。また、不織布とした場合、例えば、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等の公知の不織布がいずれも使用できる。本実施形態(トイレシート1)においては、パルプシート52,53に紙を用いており、尿などの液体が、パルプシート52,53と接触した際にパルプシート上で面方向に拡散し、一部は暫くの間パルプシート上に残るので、黒色系消臭剤の色を浮き立たせる効果があり、好ましい。特に、パルプシート52,53に未晒しパルプを用いると面方向の拡散性がより高く、また、消臭効果と黒色系消臭剤の遮蔽効果が付加できるので好ましい。また、パルプシート52,53に紙を使用する場合には、クレープ加工した紙を用いることにより、液拡散性を高めることが可能となり好ましい。クレープ加工としてはドライクレープを用いると、液と接触した後にクレープ部分が伸びて面積が広がることから、黒色系消臭剤の色を浮き立たせる面積が広がることが期待でき、好ましい。
【0027】
本発明においては、消臭シート5と表面シート2との間には、黒色系消臭剤よりもL*値が大きく、かつ、光透過率が表面シート2よりも低い液保持可能な有色の液透過性中間シート6が配されている。本発明において「有色」とは、無色透明を除くのみならず、白色も除くことを意味する。尚、本明細書において「白色」とはL*値が90以上であり、「白色系」とはL*値が80以上であることを意味する。中間シート6は、トイレシート1においては、吸収体4及び消臭シート5の外周よりも外方に延出しており、図2に示すように、吸収体4の上側に消臭シート5を重ねたものを、被覆しており、包んでいる。
【0028】
トイレシート1は、図2に示すように、吸収体4及び消臭シート5を包んだ中間シート6を、表面シート2及び裏面シート3の間に配し、包んだ形状の中間シート6の外周よりも外方に延出した、表面シート2及び裏面シート3の部分を互いに固定することにより形成されている。尚、中間シート6は、トイレシート1においては、吸収体4及び消臭シート5を包んでいるが、包んでなくてもよく、消臭シート5と表面シート2との間に配されていればよい。中間シート6が消臭シート5と表面シート2との間に配されることにより、以下の効果が奏される。
【0029】
まず、排尿前のトイレシート1においては、黒色系消臭剤の黒色が遮蔽されて、室内で使用するトイレシートと室内の雰囲気との美観の調和を取りやすい。また、排尿された直後においては、黒色系消臭剤の黒色を浮き立たせることにより、消臭剤によって嗅覚的に分かり難くなった排尿の有無をペットのオーナーが視覚的に判断しやすくなる。排尿直後の視覚性の効果は、以下のメカニズムによって説明される。即ち、ペットがトイレシート1に排尿すると、尿は表面シート2を素早く通過した後に中間シート6に到達する。ここで、中間シート6は液保持性可能であるため、液を保持した状態でそれより下側にある消臭シート5に押し当てられる。また、中間シート6は液透過性でもあるので、中間シート6に到達した尿の大部分は下側へ透過され、消臭シート5に受け渡される。このとき、消臭シート5の、上側に位置するパルプシート52の濡れた部分に存在する黒色系消臭剤の黒色が、濡れていない部分と比較して浮き出て見える。中間シート6が液保持可能なために、この浮き出て見える時間が暫く続くことから、排尿直後から暫くの間は、表面シート2側から排尿の有無を、ペットのオーナーが視認することが容易になる。次いで、消臭シート5に受け渡された尿が、更に下側に通過し、最終的に吸収体4に保持される。尿が通過した消臭シート5においては、黒色系消臭剤の黒色が目立ち難くなるため、排尿されてから時間が経過することにより、排尿後のシートであることが分かり難くなる。従って、排尿されてから時間が経過すると、排尿後のシートを見られたくない客人等からは排尿後のシートであることが分かり難くなる。尚、トイレシート1を構成する吸収体4の坪量を変更することによって、排尿後のシートであることを分かり難くする時間を調整することができ、例えば、排尿直後から20〜40分程度経過後に、排尿後のシートであることを分かり難くするには、吸収体4の坪量が50〜300g/m2、特に80〜250g/m2であることが好ましい。
【0030】
中間シート6は、L***表色系のL*値が黒色系消臭剤よりも大きく、具体的には、黒色系消臭剤よりもL*値が2〜40、特に2〜30、更に5〜25高いことが、未使用時の遮蔽効果の観点、及び濡れた際に黒色系消臭剤が浮き出て見え易くなるので好ましい。また、中間シート6は、L*値が消臭シート5より大きいことがなお好ましい。
【0031】
また、中間シート6のL*値は消臭シート5のL*値よりも2〜30、特に5〜30、更に7〜25高いことが、同様の観点から好ましい。ここでシートのL*値は、消臭シート5の黒色系消臭剤が存在する場所で、かつ、中間シート6が当該場所と重なる部分において上記関係となっていればよい。つまり、消臭シートにおいて中央部にのみ黒色系消臭剤を配して周辺部には配しないような場合、中央部においてL*値が当該関係となっていれば本発明の効果は奏されるので、周辺部において当該関係となっている必要はない。
【0032】
中間シート6のL*値は、具体的には5〜60、特に10〜50であると、未使用時の遮蔽効果と、室内の美観との調和を両立する観点から、そして、排尿後の視認性の観点から好ましい。なお、中間シート6のL*値は色差計によって測定できる。例えば、日本電色工業(株)のハンディ型分光色差計NF777(商品名)を用い、照明条件C、視野角条件2°、正面受光条件0/45°、光束径φ10mmの測定条件で、トイレシート1で配した枚数分の中間シート6の反射光を測定して求めることができる。このとき、背景板としてL*値が95以上の白色板を用いて測定することが好ましい。
【0033】
中間シート6は光透過性であるが、表面シート2よりも光透過性が低い。このため、未使用時の遮蔽性に優れるとともに、表面シート側から排尿の有無の確認がし易くなっている。表面シート2と中間シート6の光透過率の差は20〜90%、特に25〜70%であることが好ましい。なお、光透過率の測定方法は、表面シート2における測定方法と同様にして行う。
【0034】
本発明のトイレシート1は、表面シート2の上側から測定したL*値が4〜70、特に10〜65、更に20〜65であると、未使用時の遮蔽効果と、室内の美観との調和を両立する観点から、そして、排尿後の視認性の観点から好ましい。
【0035】
中間シート6は液透過性であるとともに液保持可能である。ここで液保持可能とは、吸収体4に求められるような半永久的な保持能力に限定するものではなく、一時的な保持力を有する場合も含むものである。中間シート6は消臭シート5よりも上側に存在することから、一時的な保持力を有するものであることが臭いを外部に漏らしにくいので好ましい。液透過性でかつ液保持可能な性質を有する材料としては、ティッシュペーパー等の薄葉紙、ダンボール紙等の厚紙を含む紙製品、親水性繊維を構成成分とする親水性の不織布や織布が挙げられる。
【0036】
中間シート6を構成するシートが紙製品の場合には、該構成シートの坪量が10〜50g/m2、特に20〜45g/m2であると液体透過性と液保持性のバランスが良く、また、遮蔽効果も十分なので好ましい。特に、クレープ加工した紙を用いることが、未使用時の遮蔽性と排尿後の視認性の両立の観点から好ましい。中間シート6の繊維原料としては、NBKP、LBKP等の木材パルプの他、藁、綿等の非木材パルプ等の公知の天然繊維が使用できる。また、シート強度を向上させる目的で、ポリエチレン繊維等の合成繊維を適宜混合してもよい。
【0037】
中間シート6の好ましいシート材料としては、未晒しパルプ製の紙が挙げられる。未晒しパルプ製の紙はそれ自体が茶色であって遮蔽性に優れるとともに、木材成分による消臭性能が付与され、また、リグニン等の成分によって適度な親水性を備えていることから面方向への液拡散性と下方向への液透過性のバランスが良い。このために、排尿後の液拡散面積が適度なので排尿の有無が視認し易い。更に、中間シート6に未晒しパルプ製の紙を用いると、消臭シート5の黒色系消臭剤の遮蔽効果が付加できる。
【0038】
本発明のトイレシートにおいては、消臭シート5の方が中間シート6よりも液拡散速度が速いことが好ましい。こうすることによって、消臭シート5の表面では液が相対的に長い時間残り易く、面方向に拡がることで中間シート6の広い面積で尿が一時的に保持しやすい状態となる。したがって、排尿から比較的長い時間が経過した後であっても排尿の有無が視認し易くなる。液吸収速度をこのような関係とするためには、構成するシート材料を中間シート6よりも消臭シート5の方の親水性を低くする方法や、同等の吸収速度のシート材料を使用しながら消臭シート5に使用する消臭剤を疎水性のものとする方法等が挙げられる。後者の方法を使用することが、長期に亘った消臭性能を得られるとともに、大量の尿を一度に排泄された場合に消臭が素早く行われるので好ましい。なお、吸収速度は以下のようにして測定される。
液拡散速度の測定方法: 各シートを直径30mmのシャーレの上に緊張状態で静置し、上方から赤く着色した生理食塩水5mlを、ピペットを用いて1箇所に10秒かけて滴下する。滴下終了後の液の広がり面積を測定し、これを拡散速度とした。
【0039】
本発明のトイレシートによれば、排尿の有無を排尿後暫く時間が経過した後であっても視認することが可能である。また、黒色系消臭剤の色が遮蔽されて柔らかい印象を与えることができるので、室内の環境との調和が取りやすい。黒色系成分として黒色系消臭剤を使用すれば、消臭効果を十分に発揮させて室内に尿臭が広がることを抑制しながら、上述の効果を奏することができる。したがって、室内でペットを飼う家庭においては、臭いや美観のことを気にする負担を軽減しながら、トイレシートの取替え時期を判断しやすくなる。
【0040】
以上、本発明のペット用トイレシートを好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、本発明の効果を損ねない範囲で、別のシート部材を挿入することも可能である。図5及び6にはそれぞれ上記実施形態の変形例であるペット用トイレシート1B,1Cを示した。ペット用トイレシート1Bでは、中間シート6と表面シート2の間(図5)に白色系のシート7を配置し、ペット用トイレシート1Cでは、中間シート6と消臭シート5の間(図6)に白色系のシート7を配置している。また図示していないが、更に、中間シート6と表面シート2の間及び中間シート6と消臭シート5の間(図7)に白色系のシート7を配置しても良い。白色系のシート7は紙や不織布を用いることができ、排尿がなされてシートが濡れたときに中間シート6及び消臭シート5それぞれの色を視認可能なものであれば良い。中間シートとして消臭又は抗菌性能のあるもの(例えば、未晒しパルプ製の紙)を用いた場合には、図6のように白色系シートとして液保持可能なものを配することにより、排尿の視認可能時間を更に長くすることが可能になる。また、黒色系成分としては、消臭剤に代えて黒色系染料、黒色系粉末などを使用することも可能である。
【0041】
また、本発明のペット用トイレシートの各構成材料には、本発明の効果を損ねない範囲で種々添加剤を配合しても良い。添加材としては、抗菌剤、無色系又は淡色系の消臭剤、香料などが挙げられる。
【0042】
本実施形態のペット用トイレシート1は、犬や猫などの動物用トイレシートとして好適であるが、このほか、ウサギ、ハムスター等の動物用トイレシートとしても使用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ペット用トイレシート
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 消臭シート
51 黒色系消臭剤を含む消臭層
52、53 パルプシート
5s 接合部
6 中間シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄側表面に配置された光透過性である液透過性の表面シートと液保持性の吸収体を含むペット用トイレシートであって、
前記表面シートと吸収体との間には、黒色系成分を含む液透過性の有色シートと、該有色シートと表面シートとの間に、前記黒色系成分よりもL*値が大きく、かつ、光透過率が表面シートよりも低い液保持可能な有色の液透過性の中間シートが配されているペット用トイレシート。
【請求項2】
前記中間シートが未晒しパルプ製シートである、請求項1に記載のペット用トイレシート。
【請求項3】
前記有色シートが、前記黒色系成分を2枚の未晒しパルプ製シートで挟持したものである請求項1又は2に記載のペット用トイレシート。
【請求項4】
液拡散速度が、前記中間シートよりも前記有色シートの方が速い、請求項1〜3の何れか1項に記載のペット用トイレシート。
【請求項5】
前記有色シートと前記中間シートのL***表色系のL*値の差が2〜30である請求項1〜4の何れか1項に記載のペット用トイレシート。
【請求項6】
前記黒色系成分が消臭剤である請求項1〜5の何れか1項に記載のペット用トイレシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−130285(P2012−130285A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285405(P2010−285405)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】