説明

ペット用吸収性シート

【課題】紫外線から保護する素材を用いずに、低コストで印刷面を保護することができるペット用吸収性シートを提供する。
【解決手段】透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に介装される吸収体と、からなり、表面シート又は吸収体の表面側に濡れることで機能を発揮する機能性インクを用いた印刷面と、複数の折り目部分を有し、該複数の折り目部分で折り曲げた状態でまとめて包装するペット用吸収性シートにおいて、包装した状態で正面又は背面に向く折り目部分の周辺領域には、機能性インクによる印刷をしないで、それ以外の部分に機能性インクによる印刷を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用吸収性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬、猫等のペットが排泄した尿等を吸収するためのペット用吸収性シートが普及している。
こうしたペット用吸収性シートとしては、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に介装される吸収体と、を備える構成が知られている。そして、縦方向、横方向それぞれに三つ折りしたものを向きをそろえて数十個パッケージ(包装)したものが販売されるのが一般的である。
【0003】
また、図4に示すように、排尿と同時に尿のpHを判別するために、表面側(表面シートそれ自体、または吸収体の表面シート側)に尿などで濡れることで機能を発揮すべく特殊な機能性インクで印刷されたデザイン(図柄、模様など)を施されたペット用吸収性シートがある。しかし、そのような機能性インク(例えばpHインジケーター)は、耐光性が弱く日光などがあたると退色してしまうという問題があった。
そこで、例えば、特許文献1に見られるようなパッケージに紫外線からの保護機能を持たせる対策が考えられる。特許文献1には、おむつに含まれている接着剤の劣化を防ぐべく、そのパッケージに紫外線からの保護エリアを設けた吸収性製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−540064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような紫外線からの保護エリアを設けるには、パッケージ(包装)素材や、裏面シート素材に紫外線を通さない機能をもたせる必要があるため、加工方法が制限されたり、製造コストのアップにつながるという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、紫外線から保護する素材を用いず、特殊な加工方法を実施しなくても低コストで印刷面を保護することで、機能性を付与されたデザインの本来機能を損なわないペット用吸収性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に介装される吸収体と、からなり、
前記表面シート又は前記吸収体の表面側に濡れることで機能を発揮する機能性インクを用いた印刷面と、複数の折り目部分を有し、該複数の折り目部分で折り曲げた状態でまとめて包装するペット用吸収性シートにおいて、
前記印刷面は、
印刷部と非印刷部とからなり、
前記まとめて包装した状態で正面に向く折り目部分のうち光が当たる部分は非印刷部であることを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、ペット用吸収性シートがまとめて包装された状態で保管されたり棚に陳列されたりする間に、正面から受ける光(日光や蛍光灯の光)により、機能性インクの印刷が退色することを防止することができる。また、折り目皺により印刷面のデザイン性および機能性を損なうことも防止できる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のペット用吸収性シートにおいて、前記まとめて包装した状態で背面に向く折り目部分のうち光が当たる部分も非印刷部であることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を有することは無論のこと、特に、背面から受ける光による退色をも防止することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2のいずれか一項に記載のペット用吸収性シートにおいて、前記印刷部の一部は、折り目の中心からその両側に50mmの幅をもつ領域内に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果が得られることは無論のこと、特に、機能性インクの本来の目的である濡れることで発揮する機能をも十分に引き出すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ペット用吸収性シートがまとめて包装された状態で保管されたり棚に陳列されたりする間に受ける光(日光や蛍光灯の光)により機能性インクの印刷が退色することを、紫外線から保護する素材を用いずに、防止することができる。
また、折り目皺により印刷面のデザイン性および機能性を損なうことも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態の印刷面と折り目との関係を示す図である。
【図2】ペット用吸収性シートをX方向、Y方向にそれぞれ三つ折りする様子を示す図である。
【図3】XY方向のそれぞれに三つ折りした状態のペット用吸収性シートを54個まとめて包装する様子を説明する図である。
【図4】従来の印刷面と折り目との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態であるペット用吸収性シートを詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
なお、以下の説明では、ペット用吸収性シートの長手方向をX方向、X方向と直交する方向(幅方向)をY方向とする。また、ペット用吸収性シートの厚さ方向をZ方向とする。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態のペット用吸収性シートについて説明する。
ペット用吸収性シートは、例えば、図1に示すように、平面視長方形の形状となっており、例えば、図示しないペット用トイレの床面に敷いて使用されるものであり、表面からペットにより排泄された排泄物の水分をシート内に吸収することができるものである。
【0017】
具体的に、ペット用吸収性シートは、尿などの液体を速やかに透過させる透液性の表面シート2と、表面シート2の裏面側に配置される不透液性の裏面シートと、これら表面シート2と裏面シートとの間に介装される吸収体等を備えて構成されている。
また、ペット用吸収性シートの表面シート2それ自体又は吸収体の表面側の略全域に、印刷面1が設けられている。
【0018】
表面シート2は、有孔または無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどにより形成されている。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。また、不織布を製造する方法としては、公知の方法を適宜用いることができ、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、或いはこれらを組み合わせた方法等によって不織布を製造することができる。
表面シート2に多数の透孔を形成した場合には、尿等の液体がより速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0019】
裏面シートは、吸収体の底面を覆い、さらに吸収体の端面を覆って、吸収体の上面の長手両側縁部において、表面シート2側に折り返される。そして裏面シートの折り返された部分と表面シート2とがホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シール等により接着されている。
裏面シートは、液不透過性の素材であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。また、このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも裏面シートとして用いることができる。
第1実施形態においては、裏面シートの素材としてポリエチレン(PE)フィルムを用いた。
【0020】
吸収体は、尿等の水様成分を吸収するものであり、例えば、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。また、繊維集合体に、高吸水性樹脂(SAP;Super Absorbent Polymer 以下「SAP」と略す。)を組み合わせて吸収体を構成することもできる。
高吸水性樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの、あるいはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。
さらに、消臭機能を持たせるため、消臭剤を吸収体に入れてもよい。消臭剤としては、例えば、活性炭や天然鉱物(例えば、ベンナイト、カオリナイト、カネマイト等)、合成無機物(ゼオライト、アモルファスシリカ等)を用いることができる。
【0021】
第1実施形態においては、吸収体の表面にクレープ紙(20g/m2)をかぶせることとし、当該クレープ紙の肌面(肌が接する側の面:ペットが接する側の面)にpHインジケーターを含むインクを印刷部分のインク目付け10g/m2、印刷面積10パーセントにてグラビア印刷をした。図1に示すように、折り目101、102の両側のある一定幅の領域(まとめて包装した状態で正面、背面にそれぞれ向く折り目部分のうち光が当たる部分)を避けてペットの足跡を模した図柄をおよそ全面に亘って印刷してある。
【0022】
デザインは、排尿後も視覚的に滲まない、例えば油性インクによって施すことが好ましい。これにより、デザインの滲みが防止でき、排尿範囲のデザインを明確に把握できるようになる。吸水による滲み防止のため、インク組成物にアクリル樹脂や非イオン性の水溶性ポリマーやポリビニルアルコール等の親水基及び疎水基を持つ樹脂を結合剤として含有させることができる。さらに、前記インク組成物には、でんぷん、カオリン、合成シリカ、ガラス、微結晶セルロース、イオン交換セルロース、珪酸アルミニウム等の吸水性粉末を含有し、尿とpHインジケーターとの接触を促進させ、pHインジケーターの呈色反応を促進させることもできる。
【0023】
インク組成物には、尿との接触により尿のpHに応じて変色するpHインジケーターを含有することができる。前記pHインジケーターとして、リトマス、メチルオレンジ、メチルレッド、ブロモチモールブルー、チモールブルーなどから選択した1種又は2種以上のものを含有させることができる。特にメチルレッドとブロモチモールブルーとの混合指示薬を使用することにより、pH4.0〜9.0の酸性、中性及びアルカリ性の広い範囲の観測が可能となるため好ましい。
なお、pHインジケーターだけでなく、排尿があったかどうかを判別するための発現性インク(初期状態では、何も印刷されていないように見えていて、排尿を検知すると印刷内容が発現するインク)や消滅インク(初期状態では印刷内容が見えていて、排尿を検知するとそれが消えるインク)を用いることもできる。
【0024】
図2に示すように、折り方は肌面を内側にしてX方向、Y方向それぞれ三つ折りである。折り目101、102にてX方向の三つ折りをし(図2(a)、(b))、折り目103,104にてY方向の三つ折りを行う(図2(c),(d))。
【0025】
図3に示すように、XY方向それぞれに三つ折りしたペット用吸収性シートを、向きをそろえて多数(ここでは54個)整然と並べて、まとめて包装する。その際、包装(パッケージ)の素材は、ポリエチレン(PE)フィルムを用いることができる。図3に示すように、折り目101が向く向きは54個についてすべて共通であり、それがパッケージの正面となる。正面は、パッケージに商標や商品の説明などが印刷される面である。正面の反対側の背面には折り目102が揃って向いている。また、天面には折り目103が向き、地面には折り目104が向く。
【0026】
【表1】

【0027】
表1は、折り目の両側の印刷を避ける部分(光が当たる部分)の幅をどれだけにするかを決めるために行った実験のデータを示す。pHインジケーターを含むインクを用いて折り目にまたがって印刷を行ったものをパッケージ状態にして、太陽光の当たる室内で60日間放置したものに基づいて、退色の具合を調べた。この結果、折り目から5mm離れた場所では、パッケージ状態の保管により退色を防ぐ効果が認められた。そして、10mm離れた場所では、パッケージ状態の保管により退色を完全に防止する効果があることがわかった。
ここで、用いたペット用吸収性シートは、パルプ180g/m2、 SAP60g/m2、クレープ紙20g/m2、バックシート18g/m2、吸収体寸法290mm×390mm、製品寸法330mm×430mm、製品の三つ折り状態での厚み14mm(無加重下、図2での103方向からの厚み)である。
【0028】
特に日中に留守にする飼育者が増加傾向にあることから厚型、すなわち、複数回の排尿に対応するペット用吸収性シートが求められている。一般的な厚型レギュラーサイズ(約35×45cm)のペット用吸収性シートでは、1回の排尿量を30ccとして、2〜3回分の排尿を吸収するように設計される。
3回分の排尿をした際に機能性デザインの変化を目視できるようにするためには、少なくとも短手方向に互いに重ならない3個の円(一回の排尿により拡散する領域)が接するように吸収能力を備えていなければならず(表1の実施要項はその能力を備えている)、一回あたりの排尿直径が10cm以下になる。このように、短手方向で3回分の排尿に対応できるスペースがあれば、それよりも長い長手方向には3回分の吸収スペースは十分にあるため、短手方向にて尿の拡散する領域を判断すれば済む。
【0029】
したがって、もしも折り目の両側の印刷しない幅を10cm以上にしてしまうと、排尿を確実には検出することができなくなる。そこで、非印刷部の幅を折り目の両側を合わせて10cm、つまり折り目から両側にそれぞれ5cm以内とした。逆に言えば、折り目の中心から50mm以内の場所には印刷部があるようにする。
なお、厚型のペット用吸収性シートでは、吸収回数は2〜3回分であるが、薄型のペット用吸収性シートでは吸収回数は1〜2回分であり、前述のように短手方向にて拡散する領域を計算すると、一回あたりの排尿直径が15cm以下、すなわち折れ線から片側7.5cm以下である。
【0030】
第1実施形態のペット用吸収性シートは、折り目101、すなわちパッケージングにおいて正面に向く側の折り目両側から、光が当たる部分にはデザインを印刷せず、一方で両側50mm以内にはpHインジケーターを含むインクによる図柄を印刷することとしたものである。この第1実施形態によれば、ペット用吸収性シートがまとめて包装された状態で保管されたり棚に陳列されたりする間に、特に正面から受ける光(日光や蛍光灯の光)により機能性インクの印刷が退色することを、紫外線から保護する素材を用いずに防止することができる。また、折り目皺により印刷面のデザイン性および機能性を損なうことも防止できる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のペット用吸収性シートについて説明する。
【0032】
第2実施形態のペット用吸収性シートは、パッケージしたときに正面に向く折り目部分101だけでなく、背面に向く折り目部分102についても、印刷範囲から除外するものである。さらに天面に向く折り目部分103、地面に向く折り目部分104についても、印刷範囲から除外することとしてもよい。
【0033】
このような第2実施形態のペット用吸収性シートによれば、第1実施形態のペット用吸収性シートと同様の効果が得られることに加えて、パッケージ保管の際の退色防止効果がさらに発揮され、ペット用吸収性シートの機能性が高まる。
【0034】
なお、本発明は、上記第1、第2実施形態に限定されるものではなく、具体的な構造について適宜変更可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1、91 印刷面(表面シート又は吸収体の表面側)
2、92 表面シート
101、901 折り目部分(まとめて包装した状態で正面に向く折り目部分)
102、902 折り目部分(まとめて包装した状態で背面に向く折り目部分)
103 折り目部分(まとめて包装した状態で天面に向く折り目部分)
104 折り目部分(まとめて包装した状態で地面に向く折り目部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に介装される吸収体と、からなり、
前記表面シート又は前記吸収体の表面側に濡れることで機能を発揮する機能性インクを用いた印刷面と、複数の折り目部分を有し、該複数の折り目部分で折り曲げた状態でまとめて包装するペット用吸収性シートにおいて、
前記印刷面は、
印刷部と非印刷部とからなり、
前記まとめて包装した状態で正面に向く折り目部分のうち光が当たる部分は非印刷部であることを特徴とするペット用吸収性シート。
【請求項2】
前記まとめて包装した状態で背面に向く折り目部分のうち光が当たる部分も非印刷部であることを特徴とする請求項1に記載のペット用吸収性シート。
【請求項3】
前記印刷部の一部は、折り目の中心からその両側に50mmの幅をもつ領域内に設けられることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載のペット用吸収性シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−213338(P2012−213338A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79510(P2011−79510)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】