説明

ペット用棺、ペット用棺の配送及び回収方法

【課題】保管又は運搬時に嵩張らず且つリユース又はリサイクルに適したペット用棺、該ペット用棺をユーザーへ配送し、遺骸を納めた棺を火葬場へ配送し、火葬場へ配送した棺から遺骸を納めた内箱を取り出した後、棺を回収してリユース又はリサイクルを行うペット用棺の配送及び回収方法を提供する。
【解決手段】ペット用棺1は、上方が開口した組立式の棺本体12、開口部に着脱可能な蓋11、棺本体12内へ入れて使用する上方が開口した内箱2を備える。棺本体12は、底板14、底板14へ観音開き状に取着された折り畳み可能な一対の側壁15、底板に対して直立させた状態の側壁15の間へ着脱可能であって、各側壁間を繋ぐ一対の連結壁13により構成される。内箱は、棺本体内に丁度収まる程度の大きさであり、ダンボール製の組立式の内箱本体、その中に配置する中敷きと吸水シートを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用棺、および、ペット用棺の配送及び回収方法に関する。
更に詳しくは、造りや見た目が良く、保管又は運搬時には嵩張らず、且つリユース又はリサイクルに適したペット用棺であって、該ペット用棺をユーザーへ配送し、遺骸を納めたペット用棺を火葬場へ配送し、火葬場へ配送されたペット用棺から遺骸を納めた内箱を取り出し、その後、ペット用棺を回収するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犬や猫等のペットを家族のように扱う者又は家庭(以下「家庭等」という。)が増えている。
このような家庭等においては、ペットが死んだ場合に自宅等で葬式を行ったり、遺骸を荼毘に付したり(以下「火葬」という。)するケースも見受けられ、このような家庭等を対象としたペット葬儀ビジネスも存在している。
しかしながら、人間の場合と同様に、すぐに葬儀や火葬の手配できない場合もあり、また、死んだペットをそのまま放置することは飼い主にとって忍びないものである。
【0003】
このため、ペットの遺骸を納める棺として、下記特許文献1に示すようなペット用棺が提案されている。特許文献1記載のペット用棺はダンボールにより形成された組み立て式のものであって、不使用時に嵩張らず、また、火葬における燃焼性も良い。
【0004】
【特許文献1】実登3083104号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のペット用棺はダンボール等で形成された棺であるため、質感や見栄えが良くなく、ペットを家族同然に家庭等にとっては、愛したペットの遺骸を納めるものとして満足できるものではなかった。
このため、人間の棺のように木製のしっかりとした造りの棺を作り、使用することも考えられる。
【0006】
また、近年、民間のペット葬儀サービスの充実ぶりはめざましく、ペット葬儀業者自身が火葬設備や移動火葬車等(以下「火葬設備等」という。)を所有し運用していることがある。
しかしながら、このような業者の火葬設備等は、公共の葬儀場などに据え付けられた火葬装置よりも小型で火力が弱い場合があり、また、構造上連続して燃焼可能な時間に制限がある場合もあるため、前記のような木製のしっかりとした造りのペット用棺に入れたまま火葬を行うと棺の燃焼に時間が掛かってしまい、ペットの遺骸が生焼け状態になるか又は骨になるまでに時間が掛かることが考えられる。
【0007】
また、公共の火葬場においても、燃料費高騰の問題、あるいは、火葬した際に発生するCo削減の観点から、できるだけ燃焼時間の短い棺が希望されている。
【0008】
そこで、本発明者は、ペット愛好者の心情及び火葬を行う側の諸事情を勘案しつつも前記課題を解決し、更に、ペット用棺のリユース・リサイクルを通じて省資源・循環型社会を実現すべく鋭意研究を重ね、本発明を想到するに至った。
【0009】
(発明の目的)
そこで、本発明の目的は、保管又は運搬時には嵩張らず、且つリユース又はリサイクルに適した、ペット用棺を提供することにある。
【0010】
更に、本発明の他の目的としては、ペット用棺をユーザーへ配送し、遺骸を納めたペット用棺を火葬場へ配送し、火葬場へ配送されたペット用棺から遺骸を納めた内箱を取り出し、その後、ペット用棺を回収してリユース又はリサイクルを行う、前記ペット用棺の配送及び回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は、折り畳んで収納又は運搬できるペット用棺であって、ペット用棺は、組み立て式の棺本体と、棺本体の蓋と、棺本体内に納めて使用する内箱と、を備えており、棺本体は、底板と、底板へ観音開き状に取着された折り畳み可能な一対の側壁と、底板に対して直立させた状態の両側壁間へ取着する一対の連結壁と、を備えており、内箱は、可燃性素材又は主として可燃性素材により形成され、箱内面の一部又は全部が水密に設けられており、内箱を棺本体へ納めた際に、棺本体内面と内箱外面が緊密となるか又はほとんど隙間無く収まるように構成された、ペット用棺である。
【0012】
また、本発明は、折り畳んで収納又は運搬できるペット用棺であって、ペット用棺は、組み立て式の棺本体と、棺本体の蓋と、棺本体内に納めて使用する内箱と、棺本体、蓋又は内箱のいずれか又はこれらの組み合わせに施された装飾と、を備えており、棺本体は、底板と、底板へ観音開き状に取着された折り畳み可能な一対の側壁と、底板に対して直立させた状態の両側壁間へ着脱可能に設けられた一対の連結壁と、を備えており、蓋は、その下面に開口した空間部が形成され、該空間部内に取り外した各連結壁を収納することができるよう設けられており、内箱は、紙質素材又は主として紙質素材により形成され、箱内面の一部又は全部に、吸水性を備え且つ吸収した液体が内箱側へ漏れない機能を有するコーティング層が形成されているか又はコーティングシートが取着してあり、内箱を棺本体へ納めた際に、棺本体内面と内箱外面が緊密となるか又はほとんど隙間無く収まるように構成された、ペット用棺である。
【0013】
更に本発明は、前記ペット用棺の配送及び回収方法であって、該方法は、ユーザーから依頼を受けて、ユーザーのペットの遺骸がある場所へペット用棺を配送する工程と、遺骸を納めたペット用棺を火葬場へ配送する工程と、火葬場へ配送されたペット用棺から遺骸を納めた内箱を取り出し、内箱取り出し後のペット用棺を回収する工程と、を含む、ペット用棺の配送及び回収方法である。
【0014】
本明細書及び本願の特許請求の範囲にいう棺本体及び蓋は、例えば、所要の剛性を備え且つ棺として見た目の良い無垢の木材により形成されたものが挙げられるが、これに限定するものではなく、例えば、合板の表面に木目シートを貼り付けたような板材であってもよいし、竹材、石材、合成樹脂素材又は金属等の他の公知素材又はこれらの組み合わせであってもよい。
なお、棺本体及び蓋は、リユース〔Reuse〕する(内箱を使用し、火葬時に棺から内箱を取り出し、棺自体は再使用する場合)のであれば、必ずしも燃焼する素材で形成する必要はないが、一度限りの使用(ユーザーが棺を購入し、リユースを行わない場合)であれば、火葬時において速やかに燃焼する素材により形成されたものが好ましい。
【0015】
本明細書及び本願の特許請求の範囲にいう「リユース」の語は、一度又は二度以上の再使用を含む意味で使用しており、また、「リサイクル」の語は、プロダクトリサイクル〔再生利用〕、マテリアルリサイクル〔材料・製品への再資源化〕、サーマルリサイクル〔燃料化〕を含む意味で使用している。
【0016】
本明細書及び本願の特許請求の範囲にいう可燃性素材は、例えばダンボール等の紙質素材が挙げられるが、これに限定するものではなく、木質素材や竹材、合成樹脂素材等の他の公知素材又はこれらの組み合わせであってもよく、火葬時において速やかに燃焼するものがより好ましい。
【0017】
内箱の内側に形成されたコーティング層又は取着されたコーティングシートは、少なくとも底板上面に形成又は取着されていることが好ましく、底板上面に加えて、内箱の内側面の一部又は全部に形成又は取着されていてもよい。更に、前記コーティング層又はコーティングシートは、内箱内側の装飾を兼ねたものであってもよい。
【0018】
装飾は、棺本体、蓋又は内箱のいずれか又はこれらの組み合わせに施されるものであって、例えば、棺本体又は蓋、棺本体及び蓋に施された彫刻であったり、棺本体、蓋又は内箱のいずれか又はこれらの組み合わせに取着されたリボン、レース編み等の布地や編地、絵柄や彩色が施された布地又はシート、造花その他の公知の装飾が挙げられる。
【0019】
(作 用)
本発明に係るペット用棺とその配送及び回収方法の作用を説明する。
〔ペット用棺の配送及び組み立て〕
ユーザーから依頼を受け、ユーザーのペットの遺骸がある場所へペット用棺を配送し、以下の通り組み立てる。
【0020】
(1)棺本体の側壁を底板に対し直立させた状態にし、立てた側壁の間へ連結壁を取着して両側壁を繋いで、棺本体を組み立てる。
なお、蓋の下面に開口した空間部が設けられたペット用棺の場合、まず、蓋を外し、蓋内の空間部内へ収納された両側壁を取り出す。次いで、棺本体の側壁を底板に対し直立させた状態にし、立てた側壁の間へ連結壁を取着し、棺本体を組み立てる。
【0021】
(2)可燃性素材又は主として可燃性素材により形成された内箱、または、紙質素材又は主として紙質素材により形成された内箱を、組み立てた棺本体へ納め、内箱内にペットの遺骸の収納し、蓋を閉める。
前記内箱の内部は水密に設けられているか、または、箱内側の表面に、吸水性を備え且つ吸収した液体が内箱側へ漏れない機能を有するコーティング層が形成されているか又はコーティングシートが取着してあるので、ペットの遺骸から血液等の液体が出たとしても内箱の外へ染み出ず、棺本体を汚さない。
また、内箱は、棺本体へ納めた際に、棺本体内面と内箱外面が緊密となるか又はほとんど隙間無く収まるので、運搬等の際にがたつきが出ず、内箱が棺本体と一体化しているように見えて見た目が良い。
【0022】
〔火葬時〕
遺骸を納めたペット用棺を火葬場へ配送し、火葬場へ配送されたペット用棺は、棺本体から遺骸を納めた内箱が取り出され、遺骸を納めたまま内箱ごと火葬が行われる。
内箱取り出し後のペット用棺は、回収されてリユース又はリサイクルされる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、次の効果を奏する。
(1)ペット用棺が備える着脱可能な内箱は、ペットの遺骸を納めたまま火葬可能であるので、(ア)内箱及びペットの遺骸が早く燃焼するか又は燃え残りにくく、(イ)ペットの遺骸から血液等の液体が出たとしても内箱の外へ染み出ないので棺本体を汚さず且つ衛生的である、という特徴を備えている。
このため、内箱を除くペット用棺のリユース又はリサイクルが容易である。更に、リユース又はリサイクルを通じて省資源・循環型社会の実現に貢献し、また、棺ごと火葬した際に発生するCoの削減にも寄与する。
【0024】
(2)また、前記ペット用棺は、造りや見た目が良く、棺本体を折り畳んで収納することができるため、保管又は運搬時には嵩張らない。また、空間部が設けられた蓋を備えたペット用棺の場合、該空間内に取り外した連結壁を収納してひと纏まりにできるので、更に嵩張らない。
【0025】
(3)更に、本ペット用棺の配送及び回収方法によれば、ペット用棺の配送及び回収を効率的に行うことができ、ペットの葬儀におけるユーザーの負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は内箱を除くペット用棺を示す分解斜視説明図、図2は内箱を含むペット用棺を示す縦断面視説明図、図3は折り畳んだ状態の棺本体を示す縦断面図、図4は棺本体の組立態様を示す説明図、である。
ペット用棺1は、上方が開口した組み立て式の棺本体12と、該開口部に着脱可能な蓋11と、棺本体12内へ入れて使用する上方が開口した組み立て式の内箱2を備えており、以下、各構成要素について詳述する。
【0027】
棺本体12は、底板14と、底板14へ観音開き状に取着された折り畳み可能な一対の側壁15と、底板に対して直立させた状態の側壁15の間へ着脱可能であって、各側壁間を繋ぐ一対の連結壁13により構成される。
【0028】
蓋11は、上面中央部が上方へ膨らんだ形状の天板110と、天板110周縁部から下方へ延設された蓋側壁112を備えており、下面側が開口した形状となっている。天板110及び蓋側壁112に囲まれた蓋11の内側は、空間部114となる(図2参照)。
【0029】
連結壁13は、長方形の板状体である連結壁本体130と、連結壁本体130両側部の高さ方向(図1参照)に形成された蟻溝である取着溝132と、連結壁本体130の一方の面に貼り付けられた化粧板134を備えている。また、立てた状態における連結壁本体130の化粧板134貼付面側の上縁近傍には、幅方向の全長にわたって、レース編みの帯状物である装飾部材138が取着されており、装飾部材138の下側は固定されておらず自由端となっている(図1参照)。
なお、連結壁13は、棺本体12の組み立ての際に、前記化粧板134と装飾部材138が取着された方の面が棺本体12の内側となるように取り付ける。
【0030】
底板14は、底板本体140を備えており、該底板本体140は、長方形の平板(符号省略)及び平板周縁部から立ち上がった底板側壁146により形成された浅い箱状体であって、上面側が開口している。
また、底板本体140内側の空間内には、各長辺部に対向して設けられた一対の側壁載置部142と、各短辺部に対向して設けられた一対の連結壁載置部144が、各底板側壁146近傍に設けられている。
側壁載置部142と連結壁載置部144は、その高さが底板側壁146の上面より低く形成してあり、側面視で段差が生じている(図2〜4参照)。
【0031】
側壁15は、長方形の板状体である側壁本体150と、立てた状態において側壁本体150の両側縁近傍の高さ方向(図1参照)に形成された蟻ほぞである取着体152と、側壁本体150を立てた状態において内面側に位置する面に貼り付けられた化粧板154を備えている。また、立てた状態における側壁本体150の化粧板154貼付面側の上縁近傍には、幅方向のほぼ全長(連結壁13の厚み分を除く)にわたって、レース編みの帯状物である装飾部材158が取着されており、装飾部材158の下側は固定されておらず自由端となっている(図1,2参照)。
【0032】
底板14と各側壁15は複数の蝶番156により取着されており、各蝶番156は側壁本体150の基端側側面と側壁載置部142側面に釘で取り付けてある。
側壁15は、折り畳んだ状態において、先端側縁部を除く側壁15の周縁部が側壁載置部142及び連結壁載置部144に載置される(図3参照)。
一方、側壁15は、立てた状態において、側壁本体150の蝶番156が取着された側の基端側縁部が、底板本体140内の側壁及び側壁載置部142上面による側面視L字状部分(図2〜4参照)に当接して載置された状態となり、側壁15が90°以上倒れないように支持される(図2及び4参照)。
【0033】
〔内箱〕
内箱2は、ダンボールにより形成された組み立て式の内箱本体20と、内箱本体20内へ配置される中敷き220及び吸水シート240を備えている。内箱2は、棺本体12内にちょうど収まる程度の大きさに形成されている。更に、内箱2は、遺骸に掛ける布団や布状物と組み合わせて使用してもよい。
【0034】
内箱本体220は表面(特に内面)を白色に着色してもよいし、鳳凰等の図柄が施された布地又は紙等のシートを取り付けてもよい。また、鳳凰等の図柄が施された布地又は紙等のシートに加えて、レース編みの帯やシャーリング等の繊維製の飾りを組み合わせて装飾を施してもよい。
【0035】
中敷き220は内箱本体20の内底面とほぼ同じ大きさに形成されたダンボール板である。
吸水シート240は、一方の表面が吸水性を、他方の表面が防水性を有しており、内箱本体20の内底面よりも長さ及び横幅が大きく形成されている。
なお、本実施の形態では、吸水シート240は吸水性を有する面を表にして中敷き220へ接着してあり、吸水シート240の全ての縁部が中敷き220の全ての縁部からそれぞれはみ出るように(フラップ状に可動するように)配置してある。
また、中敷き220及び吸水シート240は、別々であってもよいし、一体となったものであってもよい。
【0036】
本実施の形態では、側壁と連結壁を着脱可能に繋ぐ手段として、側壁に蟻ほぞを、連結壁に蟻溝を、それぞれ形成しているが、これに限定するものではなく、例えば、バックル等の留め金具、面ファスナー等その他公知の取着手段を利用してもよい。
また、ペットの遺骸と共にペット用棺も燃やす場合(1回限りの使用)には、側壁と連結壁は、接着してもよいし、釘又は鎹、L字アングル等の金具等の公知の連結手段により繋いでもよい。
【0037】
本実施の形態では、化粧板は、連結壁本体の一方の面及び棺本体内側に位置する面の側壁本体に貼り付けられているが、これに限定するものではなく、例えば、棺本体外面を含むペット用棺の一部又は全部に貼り付けてもよい。また、化粧板は、板材に限定するものではなく、例えば、着色されているか又は模様が印刷されたシート状物であってもよい。なお、木目が美しい木材により棺本体を形成する際には、化粧板を使用しない場合もある。
【0038】
(作 用)
図5は連結壁を蓋内に格納した、ペット用棺の収納状態を示す縦断面図、図6はペットの遺骸を納めた内箱を取り出す方向の一態様を示す縦断面図である。
図1〜6を使用して、ペット用棺1の作用とその配送及び回収方法について説明する。
なお、図6では、作用の説明に必要な符号のみを記載し、詳細な符号については省略する。
【0039】
〔ペット用棺の配送〕
ユーザーからの依頼を受け、ユーザーのペットの遺骸がある場所へペット用棺1を配送する。
具体的には、以下のような態様が考えられる。
(1)まず、取次店又はコールセンターが、電話、ファックス又は電子メールによるユーザーからの依頼を受ける。
(2)次に、取次店又はコールセンターから、担当エリアに所在する配送センター又は提携した配送業者へ、ユーザーの名前、連絡先、配送先等の情報を伝え、ペット用棺1の配送指示を行う。
【0040】
なお、各配送センター又は提携した配送業者(以下、「配送担当者」という。)は、常時1又は2以上のペット用棺1を保管し、上記配送指示に対応する。
また、配送先については、ユーザーの自宅のみならず動物病院や保健所等の場合もあり、提携した動物病院等であれば、内箱2のみを常時1又は2以上保管してもらい、使用してもらうこともできる。
【0041】
〔ペット用棺の組み立て〕
ユーザーの元へ配送したペット用棺1を、以下の通り組み立てる。
(1)図5に示すように、収納時のペット用棺は、蓋11と、側壁15を折り畳んだ状態の底板14が上下に重ねられており、蓋11の空間部114に各連結壁13を重ねて格納してある。
このため、組み立ての際には、まず、蓋11を外して各連結壁13を取り出し、底板14に取り付けられた各側壁15を、底板14に対して直立させる。
【0042】
(2)次に、直立させた各側壁15の間へ各連結壁13をそれぞれ取着する。このとき、連結壁本体130の取着溝132へ、側壁本体150の取着体152を上方から嵌め入れる。取着溝132は蟻溝、取着体152は蟻ほぞであるため、取着後の各側壁15及び各連結壁13は水平方向に外れないよう固着される(図1及び図4参照)。
【0043】
(3)内箱2を組み立て、内箱本体20内底部に吸水シート240を貼り付けた中敷き220を敷く。このとき、吸水シート240は、内箱本体20の内底面よりも長さ及び横幅が大きく形成されているので、吸水シート240の縁部が持ち上がって折れ曲がり、該縁部が側壁15及び連結壁13の内面側下部に密接して沿うような状態となり、該部分により遺骸から流出した体液等がより漏れにくくなる(図2参照)。
【0044】
(4)組み立てた内箱2を、棺本体12内へ納める。棺本体12へ納めた内箱2は、棺本体12内面と内箱2外面が緊密となるか又はほとんど隙間無く収まる。また、内箱2上縁部は装飾部材138及び158により覆い隠す。このため、運搬等の際にがたつきが出ず、また、内箱が棺本体と一体化しているように見えて見た目が良い。
【0045】
なお、前記ペット用棺の組み立て(3)の工程は、(1)及び(2)の工程の前に行ってもよく、この場合、組み立てた内箱2を底板14の上に置いてから、棺本体12の組み立てを行ってもよい。
【0046】
本実施の形態においては、内箱は、棺本体内にちょうど収まる程度の大きさに形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、少し小さなサイズの内箱であっても、中敷きやスペーサー等を使用することによって棺本体内面と内箱外面が緊密となるか又はほとんど隙間無く収まり、且つ装飾部材等により該スペーサー等が見えないように隠すこともできる。
【0047】
また、本実施の形態においては、各連結壁13を重ねて蓋11の空間部114に格納してあるが、ペット用棺1のサイズに応じて、連結壁13を空間部114内に水平方向に並べて格納してもよいし、底板本体140及び折り畳んだ各側壁15に囲まれて形成された底板14内側の空間内に格納してもよい。
【0048】
〔ペットの遺骸の収納〕
組み立てた棺本体12の内箱2内へペットの遺骸の収納し、蓋11を閉める。
前記の通り、内箱2内には吸水シート220が敷いてあるため、ペットの遺骸から血液等の体液が流出したとしても内箱2の外へ染み出ず、棺本体12を汚さず且つ衛生的である。このような構造のペット用棺1は、レンタルなど繰り返し使用(リユース)する場合に好適である。
【0049】
〔ペットの遺骸を収納したペット用棺の配送〕
配送担当者はユーザーの依頼を受けてペットの遺骸を収納したペット用棺1を配送するが、例えば、以下のような態様が挙げられる。
(1)動物病院等の施設の場合は、組み立てたペット用棺1にペットの遺骸を収納し、該ペット用棺1は、配送に来た配送担当者にその場で引き渡されてユーザーの自宅又は火葬場へ配送される。
(2)自宅へペット用棺1の配送を依頼したユーザーが特に葬儀を行わない場合は、組み立てたペット用棺1にペットの遺骸を収納し、該ペット用棺1は、配送に来た配送担当者へその場で引き渡され、直接火葬場へ配送される。
(3)配送したペット用棺1を使用して自宅等で葬儀を行った場合は、葬儀終了後に、ユーザーからの連絡を受け、配送担当者が自宅等から火葬場へペット用棺1を配送する。
【0050】
〔火葬時〕
ペット用棺1が購入されたのかレンタルなのか、また、火葬する施設等(自治体や民間業者)の処理の規則によっても対応が異なるため、例えば、以下の態様が考えられる。
(1)ペット用棺1がレンタル(リユース)か、又はリサイクルを行う場合、火葬場に配送されたペット用棺1が分解され、遺骸を納めた内箱2が取り出され(図6参照)、遺骸を納めたまま内箱2ごと火葬が行われる。そして、内箱2を取り出した後のペット用棺1は、回収されてリユース又はリサイクルされる。
この結果、内箱2及びペットの遺骸は、火力が比較的弱い設備又は燃焼時間が短い場合であっても、早く燃焼するか又は燃え残りにくい。また、ペット用棺1のリユース又はリサイクルを通じて省資源・循環型社会の実現に貢献し、また、棺ごと火葬した際に発生するCoの削減にも寄与する。
(2)ペット用棺1がユーザーの購入品(1回限りの使用)である場合は、火葬場に配送されたペット用棺1は、火力の強い設備を有する施設であればそのまま火葬することもできるし、また、火葬する施設等の規則に従って、前記のように遺骸を納めたまま内箱2ごと火葬を行うこともできる。
(3)なお、火葬する施設等によっては、内箱2をも燃やすことを容認しない場合がある。この場合、ペットの遺骸は、内箱2から取り出され火葬が行われる。
【0051】
〔ペット用棺1の再収納〕
各連結壁13を各側壁15の間から上方に引き上げて取り外し、各側壁15を底板14と水平な状態に折り畳む。次に、取り外した各連結壁13を重ねて折り畳まれた各側壁15の上に載置し、蓋11を底板14に重ねることで、収納作業が完了する。(図5参照)。
前記ペット用棺1は、不使用時(即ち保管や運搬の際)に蓋11と棺本体12をひと纏まりにできるので、嵩張らない。
【0052】
前記の通り、ペット用棺1の配送及び回収方法によれば、ペット用棺1の配送及び回収を効率的に行うことができ、ペットの葬儀におけるユーザーの負担が軽減される。
【0053】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】内箱を除くペット用棺を示す分解斜視説明図。
【図2】内箱を含むペット用棺を示す縦断面視説明図。
【図3】折り畳んだ状態の棺本体を示す縦断面図。
【図4】棺本体の組立態様を示す説明図。
【図5】連結壁を蓋内に格納した、ペット用棺の収納状態を示す縦断面図。
【図6】ペットの遺骸を納めた内箱を取り出す方向の一態様を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 ペット用棺
11 蓋
110 天板
112 蓋側壁
114 空間部
12 棺本体
13 連結壁
130 連結壁本体
132 取着溝
134 化粧板
138 装飾部材
14 底板
140 底板本体
142 側壁載置部
144 連結壁載置部
146 底板側壁
15 側壁
150 側壁本体
152 取着体
154 化粧板
156 蝶番
158 装飾部材
2 内箱
20 内箱本体
220 中敷き
240 吸水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳んで収納又は運搬できるペット用棺(1)であって、
ペット用棺(1)は、組み立て式の棺本体(12)と、棺本体の蓋(11)と、棺本体内に納めて使用する内箱(2)と、を備えており、
棺本体(12)は、底板(14)と、底板(14)へ観音開き状に取着された折り畳み可能な一対の側壁(15)と、底板(14)に対して直立させた状態の両側壁(15)間へ取着する一対の連結壁(13)と、を備えており、
内箱(2)は、可燃性素材又は主として可燃性素材により形成され、箱内面の一部又は全部が水密に設けられており、
内箱(2)を棺本体(12)へ納めた際に、棺本体(12)内面と内箱(2)外面が緊密となるか又はほとんど隙間無く収まるように構成された、
ペット用棺。
【請求項2】
折り畳んで収納又は運搬できるペット用棺(1)であって、
ペット用棺(1)は、組み立て式の棺本体(12)と、棺本体の蓋(11)と、棺本体内に納めて使用する内箱(2)と、棺本体(12)、蓋(11)又は内箱(2)のいずれか又はこれらの組み合わせに施された装飾と、を備えており、
棺本体(12)は、底板(14)と、底板(14)へ観音開き状に取着された折り畳み可能な一対の側壁(15)と、底板(14)に対して直立させた状態の両側壁(15)間へ着脱可能に設けられた一対の連結壁(13)と、を備えており、
蓋(11)は、その下面に開口した空間部(114)が形成され、該空間部(114)内に取り外した各連結壁(13)を収納することができるよう設けられており、
内箱(2)は、紙質素材又は主として紙質素材により形成され、箱内面の一部又は全部に、吸水性を備え且つ吸収した液体が内箱側へ漏れない機能を有するコーティング層が形成されているか又はコーティングシート(240)が取着してあり、
内箱(2)を棺本体(12)へ納めた際に、棺本体(12)内面と内箱(2)外面が緊密となるか又はほとんど隙間無く収まるように構成された、
ペット用棺。
【請求項3】
請求項1又は2記載のペット用棺(1)の配送及び回収方法であって、
該方法は、
ユーザーから依頼を受けて、ユーザーのペットの遺骸がある場所へペット用棺(1)を配送する工程と、
遺骸を納めたペット用棺(1)を火葬場へ配送する工程と、
火葬場へ配送されたペット用棺(1)から遺骸を納めた内箱(2)を取り出し、内箱(2)取り出し後のペット用棺(1)を回収する工程と、
を含む、
ペット用棺の配送及び回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−131295(P2010−131295A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311952(P2008−311952)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(506423936)フジ創芸株式会社 (2)