説明

ペット用肢体評価装置

【課題】ペットの肢体状態を評価可能なペット用肢体評価装置を提供する。
【解決手段】ペット用肢体評価装置1は、ペットP1により踏まれたときの荷重値を検出する物理量センサ2と、物理量センサ2による検出結果を処理してペットP1の肢体情報を生成する制御部と、制御部により生成されたペットの現在の肢体情報と過去の肢体情報を記憶する記憶部とを備える。制御部は、現在と過去の肢体情報を比較し、ペットP1の現在の肢体の評価情報を生成する。従って、ペットP1に物理量センサ2を踏ませることで、ペットP1の肢体状態を評価することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの肢体状態を評価するためのペット用肢体評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内で飼育されるペットが増えており、また、栄養価の高い餌がペットに給餌されることが多いので、運動不足又は栄養の過剰摂取等に起因して肥満になるペットが増えている。また、長寿化により老齢種が増加している。このため、ペットの肢体、具体的には膝関節又は足関節等に関わる病気が増加している。
【0003】
ペットは、その肢体に異常が生じた場合、歩く速度が普段より遅くなったり、歩く時にふらついたり、足を引きずったりするが、特に関節異常の場合には、その症状は徐々に現れることが多いので、飼主がペットの関節異常の症状を視認することができたときには、関節異常の殆んどがかなり進行した状態となっている。また、関節異常は一度進行してしまうと治り難い。このため、ペットの関節異常を含む肢体異常を早期に発見するため、ペットの肢体状態を評価可能な装置が必要とされている。
【0004】
ところで、ペットの肢体状態を評価するためではないが、従来から、ペットの健康管理を行うためのペット用健康分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置においては、ペットの体重、その日に食べた餌の量、散歩の距離及び時間等の生体情報と、毛艶、抜け毛、鼻の濡れ具合、ウンチ状態・回数等の外見情報とが、ユーザによる情報入力手段の操作によってパソコン端末に入力される。そして、入力された情報と、パソコン端末内のデータベースに既に記憶されているペットの標準的な健康情報とが比較・解析手段により比較されて解析される。その結果、ペットの現在の健康状態が「大変良い、良い、普通、悪い、非常に悪い」という5段階に評価され、その情報が画面に表示される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ペットの健康状態を上述の5段階に評価することができるが、ペットの肢体異常の有無を検査し、ペットの肢体状態を評価することはできない。
【特許文献1】特開2006−318325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来の問題を解決するためになされたものであり、ペットの肢体状態を評価可能なペット用肢体評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、ペットにより踏まれたときの荷重値を検出する物理量センサと、前記物理量センサによる検出結果を処理してペットの肢体情報を生成する処理手段と、前記処理手段により生成されたペットの現在の肢体情報と過去の肢体情報又は予め計測されたペットモニタ群の肢体情報とを記憶する記憶手段と、前記記憶手段により記憶されている現在の肢体情報と過去の肢体情報又はペットモニタ群の肢体情報とを比較し、ペットの現在の肢体の評価情報を生成する情報生成手段と、を備えたペット用肢体評価装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のペット用肢体評価装置において、前記物理量センサは、床面を構成する平面部材に設けられているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、ペットが物理量センサを踏むことでペットの現在の肢体情報が生成され、その生成された現在の肢体情報と過去の肢体情報又はペットモニタ群の肢体情報とが比較されて、現在の肢体の評価情報が生成されるので、ペットに物理量センサを踏ませることで、ペットの肢体状態を評価することが可能になる。
【0010】
請求項2の発明によれば、ペットが平面部材上を通る際に自然と物理量センサを踏むので、ペットの自然な動作に基づいてその肢体状態を評価することができる。このため、ペットに対してその肢体評価時に不要なストレスを与えることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の各種実施形態に係るペット用肢体評価装置(以下、肢体評価装置という)について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る肢体評価装置の構成を示す。この肢体評価装置1は、犬等のペットP1が日常的に行動する領域内に置かれ、本装置の上を歩くペットP1の歩き方を検出し、ペットP1の肢体すなわち前肢及び後肢の状態、具体的には、前肢又は後肢の障害、けが、病気等による異常の有無を評価する装置である。
【0012】
肢体評価装置1は、ペットP1により踏まれたときの荷重値を検出する複数個の物理量センサ2と、物理量センサ2による検出結果を処理してペットP1の肢体情報を生成する制御部3(処理手段)と、制御部3により生成されたペットの現在の肢体情報と過去の肢体情報を記憶する記憶部4(記憶手段)と、を備える。制御部3は、記憶部4により記憶されている現在と過去の肢体情報とを比較して、ペットP1の現在の肢体の評価情報を生成する(情報生成手段)。制御部3及び記憶部4は筐体5に内装されており、筐体5には、上述の評価情報を表示する表示器6と、制御部3に各種指令を出すためユーザにより操作される操作部7が設けられている。筐体5からは電源供給用の電源コード51が導出されている。
【0013】
物理量センサ2は、床面に置かれる平面状のシート部材8(平面部材)に複数個埋設されており、シート部材8の平面方向に拡がって、例えばマトリクス状に均一に拡がって配列されている。物理量センサ2の検出面はシート部材8上に露出されていてもいなくても構わない。筐体5はシート部材8の角付近に取り付けられている。
【0014】
また、物理量センサ2は、物理量すなわち荷重値を起電力又はインピーダンスに変換して検出信号を出力する、ピエゾ素子を含む圧力センサ、歪みゲージすなわちロードセル、変位センサ、又は加速度センサ等により構成することができる。
【0015】
制御部3は、CPUを含むマイクロプロセッサにより構成することができ、ペットP1の肢体状態評価モードを含む各種モードを有し、肢体状態評価モード時には、ペットP1の現在の肢体情報の生成、記憶部4への肢体情報の格納及び記憶部4からの肢体情報の読み出しを含むペットP1の肢体評価処理とを行う。また、制御部3は表示器6の表示制御を行う。肢体情報には、ペットP1の各足による荷重値、前肢と後肢の各々の歩幅、歩行中の各足の間隔等(以下、各足による荷重値等という)の情報が含まれる。
【0016】
記憶部4は、ハードディスクドライブ装置、RAM、ROM、又はフラッシュメモリ等により構成することができ、ペットP1の肢体を初めて評価する際に基準となる基準肢体情報が格納されている。この基準肢体情報は、例えば、ペットの肢体が過去に正常な状態であったときの肢体情報とする。
【0017】
表示器6は、液晶モニタ又は有機ELモニタ等により構成される。表示器6の表示画面には、肢体状態評価メニューを含む各種メニュー項目、ペットP1の現在の肢体情報、過去と現在の肢体情報の比較結果、現在の肢体の評価情報等が表示される。操作部7は、操作ボタン、テンキー又はタッチパネル等により構成することができる。
【0018】
次に、上記のように構成された肢体評価装置1の使用方法を説明する。まず、ユーザによる操作部7の操作により表示器6の表示画面上で肢体状態評価メニューが選択される。そして、制御部3は肢体状態評価モードとなる。このモード時に、図3に示されるように、ペットP1がシート部材8の上を歩くと、複数の物理量センサ2が足の肉球P2で踏まれて(実線で示す)、ペットP1による荷重値を検出し、その検出信号が制御部3に出力される。制御部3は、この検出信号に基づいてペットP1の肢体評価処理を行う。
【0019】
図4は、制御部3による肢体評価処理の手順を示す。制御部3は、物理量センサ2からの検出信号に基づき、荷重を検出した物理量センサ2の位置と、検出された荷重値とを認識し(S101)、ペットの現在の肢体情報を生成する(S102)。肢体情報には、上述のように、ペットP1の各足による荷重値等の情報が含まれる。この荷重値等の情報生成に際して、まず、いずれの足による荷重かを判断するため、ペットP1の歩行方向が推定される。例えば、1個又は互いに隣接する複数個の物理量センサ2、若しくは互いに隣接しない2個又は2箇所の互いに隣接する複数個の物理量センサ2が荷重値を検出したとき、シート部材8におけるその検出位置に基づいてペットP1の歩行方向が推定される。そして、互いに隣接しない3個以上又は3箇所以上の互いに隣接する複数個の物理量センサ2が所定の時間内に荷重値を検出したとき、ペットP1がシート部材8上を通ったと判断され、上記の推定されたペットP1の歩行方向に基づき、荷重が何れの足によるのか、すなわち右前肢、左前肢、右後肢及び左後肢の何れによるのかが判断される。この判断結果に基づいて肢体情報が生成される。生成された肢体情報は記憶部4に格納される(S103)。
【0020】
制御部3は、記憶部4から過去と現在の肢体情報を読み出して比較する(S104)。過去の肢体情報は、例えば、所定の過去の期間に亘る肢体情報を平均化して得られた値、又は前回の評価時の肢体情報でよい。初回の評価の場合には、過去の肢体情報の代わりに、上述の基準肢体情報が用いられる。制御部3は、上記の比較結果に基づいて現在の肢体の評価情報を生成し(S105)、その評価情報を表示器に表示する(S106)。上記S104、105において、過去と現在の肢体情報の比較により、例えば、荷重値の偏り、前肢又は後肢の歩幅の変化、若しくは各足の間隔の変化が検出された場合には、ペットP1が股関節、膝関節又は足関節の障害、けが又は病気等に起因する痛みをかばって歩いている可能性があるため、肢体異常の可能性を示唆する評価情報が生成される。上記の検出がない場合には、肢体が正常である旨の評価情報が生成される。
【0021】
本実施形態においては、ペットP1が物理量センサ2を踏むことでペットP1の現在の肢体情報が生成され、その生成された現在と過去の肢体情報が比較されて、現在の肢体状態を示す評価情報が生成されるので、ペットP1に物理量センサ2を踏ませることで、ペットP1の肢体状態を評価することが可能になる。従って、ペットP1の肢体異常に起因して現れる歩行速度の変化、又は足元のふらつき若しくは足のひきずり等の歩き方の変化が飼主によって視認可能な程度になるまで、肢体異常の症状が進行することを防ぐことができ、肢体異常の早期発見が可能になる。
【0022】
また、ペットP1がシート部材8上を通る際に自然と物理量センサ2を踏むので、ペットP1の自然な動作に基づいてその肢体状態を評価することができる。このため、ペットP1の肢体評価時に、肢体評価のためのセンサをペットP1の体に取り付けたり、その体を押さえたりする必要がないので、ペットP1に不要なストレスを与えることを防ぐことができる。
【0023】
なお、物理量センサ2が変位センサにより構成される場合、その変位センサは、静電容量式及び電磁式のいずれでもよく、感圧抵抗体素子等を含むポテンションメータにより構成されていても構わない。その感圧抵抗体素子として、例えば、インターリンクエレクトロニクス社製のFSRシリーズの感圧抵抗体素子が用いられる。
【0024】
また、シート部材8は、ペットP1が走らずに日常的に歩く場所、さらに、誤検出を防ぐため人間が歩かない場所に設置されることが好ましい。例えば、その設置場所として、ペットP1の寝床となるゲージの入り口、ペットP1のトイレの前等が望ましい。この場合、ペットP1が走るときと比べ、ペットP1による荷重値を高精度に計測することができる。さらに、ペットP1の歩幅が狭くなるので検出面積を小さくすることができ、従って、シート部材8の大きさ、強いては物理量センサ2の個数を減らすことができる。このため、製造コストの低減を図ることができる。
【0025】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る肢体評価装置の構成要素については図1を流用して説明する。本実施形態の肢体評価装置1の記憶部4は、ペットの現在の肢体を評価するための基準として、ペットの過去の肢体情報の代わりに、予め計測されたペットモニタ群の肢体情報を記憶している。この肢体情報は、具体的には、ペットの年代を、「0〜2歳」、「3〜4歳」、「5〜6歳」、「7〜8歳」、「9〜10歳」、「11〜12歳」、「13〜14歳」、「15歳以上」の8つの年代に分けて、各年代の約1000頭のペットの肢体情報を平均して得られた年代別の肢体情報の標準値を含む。表示器6の表示画面には、年代入力メニューとして上記の8つの年代を示す文字が表示される。
【0026】
本実施形態の評価装置1においては、ペットの現在の肢体を計測する前に、表示器6の表示画面上に示された8つの年代のうち、ペットの現在の年齢を含む年代が、ユーザにより操作部7を用いて選択される。この選択に基づき、制御部3は、選択された年代の肢体情報の標準値を記憶部4から読み出し、この標準値を、ペットの現在の肢体を評価する上での基準として認識する。
【0027】
図5は、本実施形態の制御部3による肢体評価処理のフローを示す。S201〜203、205、206の処理は、上述の図4に示されるS101〜103、105、106と同じである。本実施形態においては、S104の処理に代わって、制御部3は、記憶部4により記憶されているペットモニタ群の肢体情報、すなわちユーザにより選択された年代の肢体情報の標準値とペットの現在の肢体情報とを比較して現在の肢体の評価情報を生成する(S204)。
【0028】
本実施形態においては、初回の肢体評価前に、評価の基準となる肢体情報の生成のためにペットP1にシート部材8上を通らせてペットP1の肢体状態を計測する必要がないので、初回の肢体評価時の手間を省くことができる。また、肢体情報の標準値は、年代別に約1000頭のペットの肢体情報を平均化して得られた値であるため、肢体の個体ばらつきの影響を受け難い。従って、上記の標準値を肢体の評価基準とすることで、評価精度の向上を図ることができる。
【0029】
さらに、年代別の肢体情報の標準値の中から、ペットP1の現在の年代の標準値を選択することができ、その選択された標準値と現在の肢体情報とが比較されてペットP1の現在の肢体状態が評価されるので、加齢に起因する肢体の変化に対応して高精度に肢体を評価することができる。
【0030】
(第3の実施形態)
図6及び図7は、本発明の第3の実施形態に係る肢体評価装置1の構成を示す。この肢体評価装置1においては、物理量センサ2が、建物の床面を構成する床部材9(平面部材)の内部の表面付近又は下面に設けられている。また、物理量センサ2からの検出信号を制御部3に無線送信する送信回路10が、筐体11に収納されて床部材9の内部又は下面に配設されている。筐体5には、送信部10から無線送信される検出信号を無線受信する受信回路12が設けられている。送信回路10及び受信回路12は、例えば特定小電力無線又は無線LANにより無線通信を行う。床部材9の設置場所は、第1の実施形態に係るシート部材8と同様に、ペットP1の寝床となるゲージ13の入り口等が望ましい。
【0031】
なお、本発明は、上記第1乃至第3の実施形態の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、肢体評価装置1に、評価情報を音声でもって報知するスピーカが設けられていてもよい。また、肢体評価装置1には、ペットP1のシート部材8への接近を検知する赤外線センサが設けられ、制御部3は、赤外線センサによる検知に基づいて自動的に肢体状態評価モードとなるように構成されていることが望ましい。この場合、操作部7を操作する手間を省くことができ、利便性を向上させることができる。
【0032】
また、物理量センサ2には、検出信号の電圧値又は電流値を調整するためのトリムやボリュームが設けられていてもよい。また、筐体5に赤色LEDが設けられ、その赤色LEDが異常報知のため制御部3により点灯制御されるように構成されていても構わない。また、シート部材8の代わりに、カーペット部材に物理量センサ2が埋設されていもよい。また、送信回路10及び受信回路12は、電力線又は情報通信線等を用いて通信するように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るペット用肢体評価装置の斜視図。
【図2】上記装置のブロック図。
【図3】上記装置のシート部材上をペットが歩いたときの様子を示す平面図。
【図4】上記装置の制御部による肢体評価処理のフロー図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るペット用肢体評価装置の制御部による肢体評価処理のフロー図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るペット用肢体評価装置の斜視図。
【図7】上記装置のブロック図。
【符号の説明】
【0034】
1 ペット用肢体評価装置
2 物理量センサ
3 制御部(処理手段、情報生成手段)
4 記憶部(記憶手段)
8 シート部材(第1の実施形態において平面部材を構成)
9 床部材(第2の実施形態において平面部材を構成)
P1 ペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットにより踏まれたときの荷重値を検出する物理量センサと、
前記物理量センサによる検出結果を処理してペットの肢体情報を生成する処理手段と、
前記処理手段により生成されたペットの現在の肢体情報と過去の肢体情報又は予め計測されたペットモニタ群の肢体情報とを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶されている現在の肢体情報と過去の肢体情報又はペットモニタ群の肢体情報とを比較し、ペットの現在の肢体の評価情報を生成する情報生成手段と、を備えるペット用肢体評価装置。
【請求項2】
前記物理量センサは、床面を構成する平面部材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のペット用肢体評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−124962(P2009−124962A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301228(P2007−301228)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)