説明

ペット用衣服

【課題】 光触媒作用を有する酸化チタンを用い、持続的に防臭・抗菌性を備えることを可能としたペット用衣服の提供。
【解決手段】 少なくともペットの胴体を覆う胴体覆い部を備え、光触媒作用を有する酸化チタンを固着してなり、ペットの腹部を覆う部分に、防臭・抗菌加工が施された裏地を設ける。また、前記防臭・抗菌加工が施された裏地は、備長炭微粉末を含有して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は犬・猫等のペット用衣服に関し、特に防臭・抗菌性を持続的に備えることを可能としたペット用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペット用衣服としては、面ファスナテープを用いてペットの種類、体型に応じて寸法調整を可能としたものや、裁断を工夫して着脱性を向上させたものなど、様々なものが考案されている。
例えば、図6に示すように、背面部分に設けられて通気孔となるメッシュ体と、メッシュ体を覆うカバー部とを備えて構成することにより、通気性を向上させ、熱のこもらないペット用衣服を提供するものとして、特許文献1がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−073020
【0004】
ところで、ペットを飼っている者にとって、ペットが発する悪臭や細菌の増殖といった問題があるが、従来はペット用トイレに防臭剤を置く等して対処していた。
【0005】
一方で、近年さまざまな産業分野において、酸化チタンが有する光触媒作用が注目を集めており、脱臭、有害物質の除去、防汚等の目的で、空気清浄器や外壁・建材等の種々の用途に酸化チタンが用いられている。
酸化チタンを繊維に含有させて、長期に亘って消臭効果を持続し、耐光堅牢度を良好とした消臭繊維を提供するものとしては、特許文献2がある。
【0006】
【特許文献2】特開2003−313728
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ペットが発する悪臭や細菌の増殖に対処するに際し、従来の方法では、防臭剤を定期的に取り替える必要があり、手間がかかっていた。また、ペットが移動すると防臭効果が得られないという問題があった。特許文献1を含めた従来のペット用衣服によっても、かかる問題を解消することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、光触媒作用を有する酸化チタンを用いることによって、持続的に防臭・抗菌性を備えることを可能としたペット用衣服を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1記載のペット用衣服は、少なくともペットの胴体を覆う胴体覆い部を備え、光触媒作用を有する酸化チタンが固着されてなることを要旨とする。
【0010】
また、請求項2記載のペット用衣服は、請求項1記載の構成において、ペットの腹部を覆う部分に、防臭・抗菌加工が施された裏地が設けられたことを要旨とする。
【0011】
また、請求項3記載のペット用衣服は、請求項2記載の構成において、前記防臭・抗菌加工が施された裏地は、備長炭微粉末を含有してなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るペット用衣服によれば、少なくともペットの胴体部を覆う胴体覆い部を備え、光触媒作用を有する酸化チタンを固着して構成したため、紫外線に照射される酸化チタンの光触媒作用により、ペットから発せられる悪臭やペットの細菌の増殖を持続的に防止し得るペット用衣服を提供することができる。
さらに、本発明に係るペット用衣服によれば、ペットが移動したときでも、ペットの居場所に関わらず上記効果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るペット用衣服は、ペットの胴体を覆う胴体覆い部の他に、前脚を覆う前脚覆い部、後脚を覆う後脚覆い部、頭部を覆うフード部等を備えることとしてもよいが、防臭・抗菌効果を有効に得るために、胴体覆い部を少なくとも備えて構成する。
【0014】
本発明に係るペット用衣服は、「二酸化チタン」(「TiO」、本発明では簡略名称「酸化チタン」を用いる)が有する光触媒作用を活用したものである。
酸化チタンは、主として顔料によく用いられ、その他化粧品や歯磨き粉、さらに食品添加物としても認められる安全無害な物質であるが、紫外線が当たると光触媒として作用する物質であることが知られている。
酸化チタンの光触媒作用とは、紫外線の照射による触媒作用により、空気中の酸素と水に反応して活性酸素を発生し、その活性酸素によって空気中に含まれる悪臭成分等の有機物質、微生物、細菌などを酸化分解して、無害な水と二酸化炭素に変化させるというものである。
【0015】
太陽光には紫外線がエネルギーとして約3%含まれており、また蛍光灯の光にもわずかではあるが紫外線が含まれる。屋外であれば、たとえ日陰でも十分な紫外線量が得られるが、屋内では、窓から入る太陽光を除けば、蛍光灯のわずかな紫外線しかないこととなる。しかしながら、屋内であっても、ペットが発する悪臭や細菌のような微細な量の処理であれば、酸化チタンの光触媒作用による効果を十分に得ることができる。
酸化チタンは、活性酸素を生成する過程において、それ自体が変化したり劣化したりするものではないため、紫外線が当たる限り、その効果を持続させることが可能である。
【0016】
酸化チタンは粉末体であるため、酸化チタンを光触媒として利用するためには、風で飛んだり、水に流されたりすることがないように、ペット用衣服を形成する繊維に酸化チタンを固着する必要がある。固着方法は、酸化チタンが光触媒作用を生じ得るものであれば、如何なる方法であってもよいが、少なくとも紫外線の照射を受ける衣服外表面に、酸化チタンを固着させるものとする。
また、防臭・抗菌の効果を有効に得るために、なるべく衣服の全体に酸化チタンを固着させることが好ましいが、例えば背部のみに固着させる等、衣服の一部のみに酸化チタンを固着させることとしても構わない。
【0017】
繊維の熱可塑性を利用して繊維の表面に固定したり、樹脂バインダーで繊維に結合・付着させて固定することもできるが、このような方法では、酸化チタンの繊維に対する結合力が弱く繊維表面から脱落しやすいため、酸化チタンを繊維に含有して固着させることが好ましい。
すなわち、酸化チタンを含有させる繊維を湿式紡糸法などにより紡糸後、乾燥処理されていない未乾燥状態で酸化チタンの分散液を接触させることにより、繊維に酸化チタンを強固に固着させることが好ましい。酸化チタン分散液を繊維に接触させる方法は、繊維を酸化チタン分散液に侵漬する他、繊維に酸化チタン分散液をスプレーで噴霧する等、いずれの手段でもよい。
酸化チタンを含有させる繊維としては、ポリビニルアルコール系繊維、アクリル系繊維等の合成繊維、酢酸セルロース繊維等の半合成繊維、レーヨンなどの再生繊維等が好ましい。
酸化チタンを含有させた繊維は、該繊維を単独で用いることとしてもよいし、該繊維を含む紡績糸、織物、編物、不織布などの形態として用いることとしてもよい。
【0018】
また、酸化チタンを繊維に含有する場合、その強力な光触媒作用によって有害有機物だけでなく繊維自身も分解される場合があるため、例えば、酸化チタンの表面をリン酸カルシウムによって被覆すると一層好ましい。リン酸カルシウムは光触媒として不活性であり、かつ多孔質であるため、酸化チタン表面に被覆することにより、酸化チタンが有する光触媒機能を損なうことなく、繊維の耐久性を高めることが可能となる。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例は、光触媒作用を有する酸化チタンが固着されてなるペット用衣服に関する。
【0020】
図1に示すように、本実施例に係るペット用衣服(1)は、ペットの胴体を覆う胴体覆い部(2)と、胴体覆い部(2)と連通して設けられ、ペットの前脚を覆うための前脚覆い部(3)とから構成される。胴体覆い部(2)の背部(4)は、腹部(5)よりも長めに形成されている。
【0021】
胴体覆い部(2)と前脚覆い部(3)とは、いずれも光触媒作用を有する酸化チタンを含有した繊維を用いて形成されるが、本実施例においては、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる芯部と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリステル、ブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステル、及びリン酸カルシウムで被覆された光触媒酸化チタンからなる鞘部を有する芯鞘構造の繊維を用いて形成する。
このような繊維であれば、酸化チタンがリン酸カルシウムで被覆されているため、酸化チタンの光触媒作用によるポリエステル繊維自体の劣化を防ぐことができる。さらに、芯鞘構造であるため、製糸時に、酸化チタンの凝集によるフィラメントの糸切れを防止することができて好ましい。
【0022】
リン酸カルシウムは、酸化チタンに対して0.2重量%以上10重量%以下で被覆することが好ましい。0.2重量%未満であると、ポリエステル繊維の劣化を防ぐことが難しく、逆に10重量%を超えると、光触媒酸化チタンの十分な性能が得られないためである。
酸化チタンの含有量は0.1重量%以上5重量%以下が好ましく、0.5重量%以上2重量%以下がより好ましい。0.1重量%未満であると、十分な消臭効果が得られにくく、逆に5重量%を超えても、消臭性能に変化が無くコストが無駄となるためである。
芯部と鞘部との重量比率は40:60〜80:20が好ましく、50:50〜70:30がより好ましい。重量比率が40:60未満であると、繊維表面に露出しない酸化チタンが増加してコストが無駄となり、逆に80:20を超えると、安定して鞘部が形成されないためである。
【0023】
本実施例に係る芯鞘繊維は、以下のごとく製造する。すなわち、リン酸カルシウムで被覆された酸化チタンを、ブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに混練してマスターバッチを形成し、該マスターバッチを、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに混合して鞘成分とする。そして、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる成分を芯成分とし、既知の芯鞘型複合紡糸機にて溶融紡糸すれば、上記のような芯鞘構造繊維を得ることができる。
【0024】
図2は、本実施例に係るペット用衣服の着用状態を示す図である。この図に示すように、胴体覆い部(2)の一端からはペット(20)の頭部が外出し、他端からはペット(20)の尾、尻、後脚が外出するとともに、前脚覆い部(3)からは、前脚が外出するようにして着用される。
また、胴体覆い部(2)の背部(4)は、ペット(20)の尾近傍まで達しており、紫外線の照射を受け易い部分の面積を極力大きくとる一方、胴体覆い部(2)の腹部(5)は切欠した形状として、排泄等が容易に行えるようにしている。
【0025】
上記のごとくペット用衣服(1)が着用されると、衣服を形成する繊維に含有された酸化チタンの光触媒作用によって、ペット用衣服(1)に紫外線が照射される限り、ペット(20)が発する悪臭や細菌の消臭・殺菌の効果が、持続的に得られることとなる。
【0026】
表1は、本実施例に係るペット用衣服(1)に用いた繊維の、消臭性に関する試験結果を示すものである。
試験は、500ミリリットル三角フラスコ内に、12×12cmの大きさの試料を入れ、ガス(ホルムアルデヒド)初期濃度を60ppmとし、検知管法によって2時間後と24時間後のガス濃度を測定することにより行った。また、試験室温度は20℃、紫外線強度は1mW/cm(試料表面)とした。
なお、比較例1は、試料を入れないで同様に操作したものである。
【0027】
【表1】

【0028】
表1によれば、本実施例に係るペット用衣服(1)に用いた繊維は、三角フラスコ内のホルムアルデヒド濃度を24時間後には7.5分の1に削減し、その効果は比較例1の約6倍であった。
【0029】
以上、本実施例によれば、酸化チタンの光触媒作用により、持続的に防臭・抗菌性を発揮するペット用衣服を提供することが可能となる。
特に本実施例では、酸化チタンをリン酸カルシウムで被覆したため、繊維自体の劣化を防ぐことができるとともに、芯鞘構造の繊維によってペット用衣服(1)を形成したため、紡糸の際の糸切れ等を防止することも可能となる。
【実施例2】
【0030】
本発明の第2の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例は、光触媒作用を有する酸化チタンが固着されてなるペット用衣服に関し、特に腹部を覆う部分に防臭・抗菌加工を施した裏地を設けたペット用衣服に関する。
【0031】
図3に示すように、本実施例に係るペット用衣服(1)は、ペットの胴体を覆う胴体覆い部(2)と、胴体覆い部(2)と連通して設けられ、ペットの前脚を覆うための前脚覆い部(3)と、胴体覆い部(2)の首部側に連設され、ペットの頭部を覆うためのフード部(10)とから構成される。
胴体覆い部(2)には、ペットの首部から腹部にかけてを覆う部分を開閉自在とするための開閉手段であるファスナー(11)が設けられている。開閉手段は、ファスナーの他に、ボタンや面状テープのようなものであってもよい。このような開閉手段を設けると、ペットへの衣服の着脱が容易となり好ましい。
胴体覆い部(2)、前脚覆い部(3)、フード部(10)は、前実施例と同様にして、いずれも光触媒作用を有する酸化チタンを含有した繊維を用いて形成されている。
【0032】
図4は、本実施例に係るペット用衣服の、胴体覆い部(2)に設けられたファスナー(11)を左右に開いた状態を示している。この図に示すように、胴体覆い部(2)の、ファスナー(11)によって分割される左右の腹部(5)には、裏地(12)が設けられている。裏地(12)は、胴体覆い部(2)に一体化させて縫着することとしてもよいし、胴体覆い部(2)から取り外しできるように、ファスナーやボタン等で固定することとしてもよい。取り外し自在にしておけば、裏地(12)のみを取り替えることが可能となり好ましい。
【0033】
本実施例に係る裏地(12)は、木炭微粉末を含有してなるポリエステル繊維により形成された不織布である。木炭微粒子は、種々の木材から得られたものが利用できるが、中でもウバメカシを高温で焼成して得た備長炭の微粒子が好適であり、本実施例では備長炭微粒子を用いる。
備長炭は多孔性で微細な孔を多数有しており、防臭、抗菌、調湿等の効果を有する。また生物が生きていく上で必要な7〜12μの遠赤外線を放射し、血行促進や健康増進の効能も有している。備長炭が有するこれらの効能は、繊維に練り込まれたときにも認められるものである。
【0034】
本実施例に係る裏地(12)の製造に際しては、まずポリエステル樹脂中に備長炭微粉末を含有させてマスターバッチをつくり、これを溶融混合して紡糸する。紡糸した繊維は縮れをつけた後、切断して綿状にする。そして該綿状物によって不織布を形成する。
【0035】
図5は、本実施例に係るペット用衣服(1)の着用状態を示す図である。この図に示すように、背部(4)が腹部(5)よりも長く構成されているとともに、胴体覆い部(2)の一端に連設されたフード部(10)によって、ペット(20)の頭部を覆って着用することができるようになっており、紫外線の照射を受ける部分の面積を大きくとれるようにしている。
【0036】
図5のごとくペット用衣服(1)が着用されると、上述した酸化チタンの光触媒作用によって、ペット(20)が発する悪臭や細菌の消臭・殺菌の効果を持続的に得られるが、本実施例では、備長炭を含有させた裏地(12)によってさらに以下の効果を奏する。
すなわち、胴体覆い部(2)のなかでも腹部(5)は紫外線が届きにくく、酸化チタンの光触媒作用が、背部(4)などと比較して活発ではないが、本実施例によれば、丁度その部分に設けられた裏地(12)に含有される備長炭の働きによって、防臭・抗菌の効果を補うことが可能となる。従って、このような裏地(12)を有しないものと比較して、効率的かつ一層確実に防臭・抗菌の効果を得ることができる。
なお、本実施例では、特に備長炭の微粉末を用いたが、他に活性炭などを用いて裏地(12)を形成することとしてもよい。また、裏地をメッシュ状に形成することとすれば、通気性を保つことができ好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、持続的に防臭・抗菌性を発揮し得るペット用衣服を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施例に係るペット用衣服の全体図である。
【図2】第1の実施例に係るペット用衣服の着用状態を示す図である。
【図3】第2の実施例に係るペット用衣服の全体図である。
【図4】第2の実施例に係るペット用衣服の展開図である。
【図5】第2の実施例に係るペット用衣服の着用状態を示す図である。
【図6】従来技術を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ペット用衣服
2 胴体覆い部
3 前脚覆い部
4 背部
5 腹部
10 フード部
11 ファスナー
12 裏地
20 ペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともペットの胴体を覆う胴体覆い部を備えたペット用衣服であって、光触媒作用を有する酸化チタンが固着されてなるペット用衣服。
【請求項2】
ペットの腹部を覆う部分に、防臭・抗菌加工が施された裏地が設けられたことを特徴とする請求項1記載のペット用衣服。
【請求項3】
前記防臭・抗菌加工が施された裏地は、備長炭微粉末を含有してなることを特徴とする請求項2記載のペット用衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−67878(P2006−67878A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254428(P2004−254428)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000103688)オクイ株式会社 (9)