説明

ペプチド−ポリマー共役体

本発明は、ポリマー部分とインターフェロン部分、エリスロポエチン部分、または成長ホルモン部分との共役体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照項
本出願は、2008年7月31日に出願された米国仮出願第61/085,072号の優先権を主張するものであり、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞生物学および組み換えタンパク質の技術はタンパク質治療の発展をもたらしている。
【0003】
それにも関わらず、未だ大きな障壁が存在している。ほとんどのタンパク質はタンパク質分解され、したがって循環期間が短い。低い水溶性と抗体の中和を誘起するという他の欠点も含む。
【0004】
ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)がタンパク質へ付着すると、タンパク質分解酵素のタンパク質骨格へ到達が阻害され、結果としてタンパク質の安定性が増大する。さらに、水溶性も改善し、免疫力が最小になる。ポリマーをタンパク質へ付着する効果的な方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
概要
本発明の一形態は化学式Iのポリマー−ポリペプチド共役体に関する:
【0006】
【化1】

【0007】
式中、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、C1−10のアルキル、C2−10のアルケニル、C2−10のアルキニル、アリール、ヘテロアリール、C3−8のシクロアルキルまたはC3−8のヘテロシクロアルキルであり;AおよびAは、それぞれ独立して、ポリマー部分(例えば、ポリアルキレンオキサイド部分)であり;G、G、およびGは、それぞれ独立して、結合または結合性官能基であり;Pはインターフェロン−β(INF−β)部分、エリスロポエチン(EPO)部分、または成長ホルモン(GH)部分であり、;mは0または1〜10の整数であり;およびnは1〜10の整数である。これらの共役体において、INF−β部分、EPO部分、またはGH部分のN末端はGと結合している。
【0008】
上記式において、前記ポリマーポリペプチド共役体は以下の特徴の1以上を有している;AおよびAは分子量2〜100kD(好ましくは10〜30kD、具体的には20kD)を有するポリアルキレンオキサイド基である;GおよびGは、それぞれ、
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、O原子はAまたはAに結合し、N原子は化学式Iに示される炭素原子と結合している)である;GおよびGは、それぞれ、尿素、スルホンアミドまたはアミド(その中のN原子は化学式Iに示される炭素原子に結合している)である;mは4である;nは2である;ならびにR、R、R、R、およびRは、それぞれHである。これらの共役体のいくつかにおいて、PはrINF−β Ser17またはINF−βのN末端に1〜4の追加のアミノ酸残基を含む修飾INF−β部分である。
【0011】
本発明の他の実施態様は化学式IIのポリマー−ペプチド共役体に関する:
【0012】
【化3】

【0013】
式中、Aはポリマー部分(例えば、ポリアルキレンオキサイド基)であり;GおよびGは、それぞれ独立して、結合または結合性官能基であり;LはC2−10のアルケニレンまたはC2−10のアルキニレンであり;およびPはINF−β部分、EPO部分またはGH部分である。これらの共役体において、INF−β部分、EPO部分またはGH部分のN末端はGに結合している。
【0014】
化学式IIにおいて、前記ポリマー−ペプチド共役体は以下の特徴の1以上を有している:AおよびAは分子量2〜100kD(好ましくは10〜30kD、具体的には20kD)を有するポリアルキレンオキサイド基である;GおよびGは結合である;Cはアルケニレンである;ならびにR、R、R、R、およびRはそれぞれ水素である。
【0015】
本発明の他の実施態様は化学式IIIのポリマー−ペプチド共役体に関する:
【0016】
【化4】

【0017】
式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、C1−10のアルキル、C2−10のアルケニル、C2−10のアルキニル、アリール、ヘテロアリール、C3−8のシクロアルキルまたはC3−8のヘテロシクロアルキルであり;nは2〜10の整数であり;Aはポリマー部分であり;Gは結合性官能基であり;およびPはペプチド部分であり、前記ペプチド部分のN末端の窒素原子が上記式中に示される
【0018】
【化5】

【0019】
部分における炭素原子に結合している。
【0020】
化学式IIにおいて、前記ポリマー−ペプチド共役体は1以上の以下の特徴を有している;nは1である;Aは分子量10〜40kDまたは20〜30kDを有しているポリアルキレンオキサイド部分である;Gは
【0021】
【化6】

【0022】
であり、式中O原子はAに結合しており、N原子は炭素原子に結合している;およびPはINF部分、EPO部分、GH部分である。
【0023】
本明細書で使用されている「C1−10のアルキル」との語は、1〜10の炭素原子を含む直鎖状または分枝状炭化水素の一価のラジカルを意味する。アルキル基の具体例はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、およびn−ペンチルを含む。同様に、「C2−10のアルケニル」との語は、2〜10の炭素原子および1以上の二重結合を含む直鎖状または分枝状炭化水素の一価のラジカルを意味する。「C2−10のアルキニル」との語は、2〜10の炭素原子および1以上の三重結合を含む直鎖状または分枝状炭化水素の一価のラジカルを意味する。「C2−10のアルケニレン」との語は、2〜10の炭素原子および1以上の二重結合を含む直鎖状または分枝状炭化水素の二価のラジカルを意味する。「C2−10のアルキニレン」との語は、2〜10の炭素原子および1以上の三重結合を含む直鎖状または分枝状炭化水素の二価のラジカルを意味する。
【0024】
本明細書で使用されている「アリール」との語は、少なくとも一つの芳香環を有する炭化水素環システム(単環または二環)を意味する。アリール部分の具体例は、限定されないが、フェニル、ナフチル、およびピレニルを含む。
【0025】
本明細書で使用されている「ヘテロアリール」との語は、環システムの部分にO、NまたはSのような少なくとも一つのヘテロ原子を含み、残りが炭素である少なくとも一つの芳香環を有する炭化水素環システム(単環または二環)について使用されている。ヘテロアリール部分の具体例は、限定されないが、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、キナゾリニルおよびインドリルを含む。
【0026】
本明細書で使用されている「シクロアルキル」との語は、炭素のみを環原子に有している部分的にまたは完全に飽和している単環または二環システムについて使用されている。具体的には、限定されないが、シクロプロパニル、シクロペンタニルおよびシクロヘキサニルを含む。
【0027】
本明細書で使用されている「ヘテロシクロアルキル」との語は、環原子として、炭素に加えて、一以上のヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)を有している単環または二環システムについて使用されている。具体的には、限定されないが、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリンおよび1,4−オキサゼパンを含む。
【0028】
本明細書で使用されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アルケニレン、アルキニレン、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルは置換および非置換部分の両方を含む。置換基の具体例はC−C10のアルキル、C−C10のアルケニル、C−C10のアルキニル、C−Cのシクロアルキル、C−Cのシクロアルケニル、C−C10のアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、アミノ、C−C10のアルキルアミノ、C−C20のジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、C−C10アルキルスルホンアミド、アリールスルホンアミド、ヒドロキシ、ハロゲン、チオ、C−C10のアルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ニトロ、アシル、アシルオキシ、カルボキシルおよびカルボン酸エステルを含む。
【0029】
「ポリマー部分」との語は直鎖状、分枝状または星型ポリマー由来の一価のラジカルを意味する。ポリマー部分の分子量は2〜100kDであってもいい。ポリマー部分の具体例は、限定されないが、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリイソプロピレンオキサイド、ポリブテニレンオキサイド、ポリエチレングリコールおよびそれらのコポリマーを含む。デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドまたはカルボハイドレートに基づくポリマーのような他のポリマーも、それらが抗原性、毒性または免疫応答を引き起こさない限り使用されうる。
【0030】
「ポリペプチド部分」との語は、天然ポリペプチドまたは修飾ポリペプチドのどちらかに由来する一価のラジカルを意味する。前記天然のペプチドはINF−α2b、INF−β、GH、EPOおよび顆粒球コロニー刺激因子、または抗体でありうる。前記修飾ペプチドは、例えばINF−α2bのN末端にINFおよび1〜4の追加のアミノ酸残基を含むペプチドでありうる。そのような修飾INFの具体例は、
【0031】
【化7】

【0032】
であり、INFはINF−α2b部分を表し、そのN末端のアミノ基がカルボニル基に結合している。
【0033】
「インターフェロンβ」との語は、ウィルス増殖および細胞増殖を抑制しならびに免疫反応を調節する高度に同一のタンパク質類を意味する。Derynck et al.,(1980). Nature 285 (5766): 542-7;およびTaniguchi et al.,(1980). Gene 10(1):11-5を参照。天然のINFβ類およびそれらの機能的等価体、すなわち、ポリペプチドは少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%または99%)野生型カウンターパートと同一である。INF−βの具体例はAvonex、BetaseronおよびRebifのような購入可能な薬に有効成分を含んでいる。例えば、Etemadifar M. et al., Acta Neurol. Scand., 2006, 113(5): 283−7を参照。
【0034】
以下に列挙されるものは典型的なヒトINF−βタンパク質の前駆体または成熟体のどちらかのアミノ酸配列である。
【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
一例において、INF−βは変異rINF−β Ser17(組み換えINF−βであって、セリンが天然の成熟INF−β配列における17位のシステインの位置にある)である。当該成熟体のアミノ酸を以下に示す:
【0038】
【化10】

【0039】
他の例において、前記INF−βは修飾された天然INF−βであって、1〜4の追加のアミノ酸残基が前記天然INF−βのN末端に結合している。
【0040】
肝臓または腎臓で生成されたEPOは赤血球生成または赤血球の生成を調製する糖タンパク質ホルモンである。それは天然EPOおよびその機能的等価体の両方を含む。米国特許第5,621,080号および米国特許出願公開第20050176627号を参照。ヒトEPOのアミノ酸配列(前駆体および成熟体における)を以下に示す:
【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
本発明の共役体を作製するのに使用されるEPOはEPOタンパク質であり、適当な種、例えばヒト、ネズミ、ブタまたはウシにより生成された前駆体または成熟体のどちらかでありうる。一例において、EPOタンパク質は、上記されている前記アミノ酸配列の一つと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%または99%)で同一のアミノ酸配列を有している。他の例において、前記EPOは1〜4の追加のアミノ酸残基が前記天然EPOのN末端に結合した修飾された天然EPOである。
【0044】
「成長ホルモン」との語は、天然のヒト成長ホルモンを意味し、前駆体または成熟体のどちらかであって、その機能は様々である。すなわち、天然のヒト成長ホルモンと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または99%)同一のアミノ酸配列を有しており、人成長ホルモンと同等の生理作用を有している。一例において、前記成長ホルモンは1〜4の追加のアミノ酸残基が前記天然の成長ホルモンのN末端に結合している修飾された天然の成長ホルモンである。前記天然のヒト成長ホルモンのアミノ酸配列(前駆体および成熟体)を以下に示す:
【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
二つのアミノ酸配列の「パーセントの同一性」はKarlinおよびAltschulのProc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264−68,1990とKarlinおよびAltschulのProc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−77,1993において変更されているアルゴリズムを使用して決定している。そのようなアルゴリズムはAltschulらのJ. Mol. Biol. 215:403−10, 1990のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質調査は前記発明で使用するためにタンパク質分子と同一のアミノ酸配列を得るためにXBLASTプログラム、スコア=50、語幅=3で行われうる。ギャップが二つの配列の間に存在していることで、ギャップされているBLASTはAltschulらのNucleic Acids Res. 25(17):3389−3402, 1997に記載されているように利用されうる。BLASTとギャップされているBLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラムの初期設定のパラメーターが使用されうる。
【0049】
「結合性官能基」との語は、2価の官能基を意味し、一端はポリマー部分に結合しており、他端はペプチド部分に結合している。具体的には、限定されないが、−O−、−S−、カルボン酸エステル、カルボニル、カーボネート、アミド、カーバメート、尿素、スルフォニル、スルフィニル、アミノ、イミノ、ヒドロキシアミノ、ホスホネートまたはホスフェート基を含む。
【0050】
上記のペプチド−ポリマー共役体は、可能であれば、遊離の形態または塩の形態でありうる。例えば、塩は本発明のペプチド−ポリマー共役体のアニオンと正電荷を帯びた基(例えば、アミノ)との間に形成されうる。適当なアニオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩および酢酸塩を含む。同様に、塩は本発明のペプチド−ポリマー共役体のカチオンと負電荷を帯びた基(例えば、カルボン酸塩)の間に形成されうる。適当なカチオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンおよびテトラメチルアンモニウムイオンのようなアンモニウムカチオンを含む。
【0051】
さらに、前記ペプチド−ポリマー共役体は一以上の二重結合または一以上の不斉中心を有していてもいい。そのような共役体はラセミ体、ラセミ混合物、一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、およびシスもしくはトランスまたはEもしくはZ体の二重結合異性体でもありうる。
【0052】
本発明のポリマー−ペプチド共役体の具体例は以下に示される:
【0053】
【化16】

【0054】
式中、mPEGは分子量20kDを有するメトキシキャップされたポリエチレングリコールを表し、およびrINF−β Ser17、EPOおよびGHのN末端は上記の構造式の最も右側の炭素に結合している。
【0055】
あるタンパク質は治療効能を有する。したがって、ペプチド部分を含んでいる本発明の共役体は、病気を治療するために使用されうる。例えば、INF−βはHCVまたはHBV感染を治療するための免疫調節薬物である。Journal of Vascular and Interventional Radiology 13 (2002): 191−196を参照。このように、C型肝炎ウィルス(HCV)感染症またはB型肝炎ウィルス(HBV)感染症を上記INF−β−ポリマー共重合体を用いて治療する方法は本発明の範囲内に含まれる。他の例において、EPOは骨髄で赤血球の形成を促進する、腎臓より生成されるホルモンである。それは慢性腎臓疾患による貧血、エイズの抗ウィルス(ジドブジン)治療による貧血および癌に関連する貧血を治療するための免疫調節薬物として使用されている。最新の研究において、EPOは神経新生を増進し、脳卒中後の回復において重大な役割をすることがわかっている。例えば、P. T. Tsai, Journal of Neuroscience, 2006, 26: 1269を参照。このように、本発明の他の態様は貧血の治療方法または上記EPOポリマー共役体による神経新生の増進方法に関係している。
【0056】
治療的使用およびHCV感染症、HBV感染症、もしくは貧血の治療または神経新生の増進のための薬剤を製造するための共役体の使用と同様、上記INF−βポリマー共役体を含む組成物をHCV感染症もしくはHBV感染症の治療へ使用し、および上記EPOポリマー共役体を含む組成物を貧血の治療または神経新生の増進へ使用するのは本発明の範囲内に含まれる。
【0057】
本発明の一以上の具体例の詳細は以下の記載で説明される。本発明の他の特徴、目的および利益は当該記載および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
詳細な説明
本発明のペプチド−ポリマー共役体は化学分野でよく知られた合成方法で調製されうる。例えば、リンカー分子の官能基と反応しやすい官能基を有する二つのポリマー分子と一以上の活性な官能基を有するリンカー分子と結合することができる。実質的に官能基を有するペプチド分子は前記リンカー分子の官能基と反応し本発明のペプチド−ポリマー共役体を形成する。二つの例の合成式を本明細書に記載する。
【0059】
以下のスキーム1は化学式Iのペプチド−ポリマー共役体の調製例を示している。アセタール基を有するジアミン化合物1はN−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートmPEG(すなわち化合物2)と反応してジPEG化化合物3を形成し、続いてアルデヒド4に変換される。このアルデヒド化合物は遊離のアミノ基を有するペプチドH−Pと反応し還元的アルキル化を経て本発明のペプチド−ポリマー共役体を与える。
【0060】
【化17】

【0061】
以下のスキーム2は化学式IIのペプチド−ポリマー共役体の調製例を示している。化学物質6はポリマー部分とアルデヒド官能基を有している。当該物質は遊離のアミノ官能基を有しているペプチド7と反応することができる。最終生成物8は、続けて、例えば水素化によりまたはNaBHCNにより還元され、ペプチド−ポリマー共役体9を与える。
【0062】
【化18】

【0063】
以下のスキーム3は化学式IIIのペプチド−ポリマー共役体の調製例である。βアミノ酸から調製されうるアセタール基を有する化合物10はN−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートmPEG2と反応してPEG化化合物11を形成し、続いてアルデヒド12に変換される。このアルデヒド化合物は遊離のアミノ基を有するペプチドH−Pと反応して還元的アルキル化を経て、所望の化合物13を与える。
【0064】
【化19】

【0065】
上記の化学反応は溶媒、試薬、触媒、保護基および脱保護基試薬ならびに特定の反応条件を含む。それらは本明細書に具体的に記載されている工程の前後のどちらかに、ペプチド−ポリマー共役体の合成を最終的に可能とするために適当な保護基の付加または除去を含んでいてもいい。さらに、様々な合成工程は所望のポリペプチド−ポリマー共役体を与えるために順序を替えてまたはその順序で行われてもいい。応用可能なペプチド−ポリマー共役体の合成において有用な合成化学変換および保護基を用いた方法(保護および脱保護)は当業者に知られており、例えばR.Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2d. Ed., John Wiley and Sons (1991); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);および L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)ならびにそれらの続版に含有されている。
【0066】
このように合成されるペプチド−ポリマー共役体はイオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、電気泳動、透析、限外濾過または限界遠心分離のような方法によってさらに精製され得る。
【0067】
本発明のペプチド−ポリマー共役体はその共役体の形状で薬学的に活性であってもいい。また、それは、前記ペプチド部分とポリマー部分との間のリンカーを酵素的に切断することで、インビボで(例えば、加水分解を経て)薬学的に活性なペプチドを放出しうる。インビボでのリンカーの切断に含まれる酵素の例は酸化的酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アミノオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼ)、還元的酵素(例えば、ケトリダクターゼ)、および加水分解酵素(例えば、プロテアーゼ、エステラーゼ、スルファターゼまたはホスファターゼ)を含む。
【0068】
このように、本発明の一態様は、病気(例えば、HCVもしくはHBV感染症、または貧血)を治療するために上記ペプチド−ポリマー共役体の一以上を有効的量投与する方法に関連している。具体的には、被験者に1以上のペプチド−ポリマー共役体を有効量投与して、病気は治療されうる。そのような被験者は適当な診断方法の結果に基づき医療従事者によって認定されうる。
【0069】
本明細書において使用されるように、「治療している」または「治療」との語は、ペプチド−ポリマー共役体を含む組成物を、疾患、疾患の症状、疾患の2次的な病気または疾患、疾患への素因を有する者に、疾患、疾患の症状、疾患の2次的な病気または疾患または疾患への素因の治療、緩和、軽減、医療または改善する目的をもって塗布または投与することとして定義されている。「有効的な量」は治療されている被験者に治療効果を与えるペプチド−ポリマー組成物の量を意味する。当該治療効果は客観的(すなわち、いくつかの試験または標識を用いた測定)または主観的(すなわち、被験者の効果を主張または効果の感覚)であってもいい。
【0070】
本発明の方法を実効するため、上述される組成物の一以上を有する組成物は、非経口的、経口的、経鼻的、経直腸的、局所的、または口膣的に投与されうる。本明細書で使用される「非経口的」との語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉、関節、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内、腹腔内、気管内または頭蓋内注射であって、いかなる適当な注入技術であってもよいことを意味する。
【0071】
無菌注射剤組成物は、1,3−ブタンジオール溶液のような無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶液中の溶液または懸濁液でありうる。用いられうる許容可能な賦形剤および溶媒はマニトール、水、リンゲル溶液(Ringer’s solution)および等張食塩水である。さらに、固定油は溶媒または懸濁化剤(例えば、合成モノグリセリドまたはジグリセリド)として伝統的に用いられる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射剤の調製において有用であり、天然の薬学上許容されうるオイルとしてはオリーブオイルまたはカストールオイルのようなものがあり、特にそれらのポリオキシエチル化されたものである。これらのオイル溶液または懸濁液はまた長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロースもしくは同様の分散剤を含みうる。他の通常用いられているツィーン(Tweens)もしくはスパン(Span)または他の同様の乳化剤または薬学上許容されうる固体、液体または他の剤形の製造において通常使用されうる生物学的増進剤もまた処方目的で使用されうる。
【0072】
経口投与用の組成物は、カプセル、錠剤、乳化剤および水性懸濁液を含むいかなる経口に許容されうる剤形であることができる。錠剤の場合、通常使用される担体はラクトースおよびトウモロコシデンプンを含む。経口投与用のカプセル形において有用な希釈剤はラクトースおよび乾燥したトウモロコシデンプンを含む。水性懸濁剤または乳化剤が経口的に投与される時、活性成分は懸濁されまたは乳化または懸濁化剤と併用される油層に懸濁されまたは溶解されうる。望むのであれば、特定の甘味料、香味料、または着色剤が加えられうる。
【0073】
鼻エアロゾルまたは吸入組成物は薬剤処方の分野で良く知られた技術に基づき調製されうる。例えば、そのような組成物は、ベンジルアルコールまたは他の適当な防腐剤、生物学的利用能を増進するための吸収促進剤、当該分野で知られているフッ化炭素および/または他の溶剤または分散剤を用いて生理食塩水の溶液として調製される。一以上の上記化合物を有している組成物は直腸投与用の座薬の形でも投与されうる。
【0074】
薬学上許容されうる担体は日常的に一以上の活性な上述の共役体と共に使用される。医薬組成物において担体は組成物の活性成分と愛称がよいという意味で「許容されうる」(および、好ましくは該活性成分を安定化させれる)ものでなければならず、治療される被験者に有害であってはならない。一以上の溶剤は上述の化合物の運搬のため医薬品賦形剤として利用されうる。
【0075】
他の担体の具体例はコロイド状酸化シリコン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびD&C Yellow #10を含む。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は単に実例として解釈されるべきであり、いかなる方法であっても開示されたものに限定されない。
【0077】
当業者は、さらなる検討なく、本明細書に基づき、本発明を最大限に利用することができると考えられる。本明細書に引用されているすべての出版物は、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
実施例1:IFN−β−ジPEGポリマー共役体
・ジPEGアルデヒドの調製
【0079】
【化20】

【0080】
20kDのPEGO(C=O)OSuを(アメリカ、カリフォルニア州のSunBio Inc.)から購入した20kDのmPEGOHからBioconjugate Chem. 1993, 4, 568−569に記載されている方法によって調製した。
【0081】
6−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ヘキサン−1,5−ジアミンの塩化メチレン溶液(ジアミンを9.03mg、47.8μmol含む11.97gの溶液)を20kDのPEGO(C=O)OSu(1.72g、86.0mmol)を含むフラスコに加えた。PEGO(C=O)OSuを完全に溶解した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(79μL、478μmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間攪拌し、その後、攪拌しながらメチルt−ブチルエーテル(200mL)を滴下して加えた。最終的に得られた沈殿を集め、真空乾燥して白色固体としてジPEGアセタール(1.69g、98%)を得た。
【0082】
【化21】

【0083】
【化22】

【0084】
ジPEGアセタール(4.0g、0.2mmol)をpH2.0の緩衝液(クリティック酸(critic acid)、40mL)中懸濁した。当該反応混合物を35℃で24時間攪拌し、その後塩化メチレン(3x50mL)で抽出した。混合した有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮し、それから塩化メチレン(20mL)に再溶解した。当該溶液を攪拌しながらメチルt−ブチルエーテル(400mL)に滴下して加えた。最終的に得られた沈殿を集め、減圧乾燥して白色固体としてジPEGアセタール(3.8g、95%)を得た。
【0085】
【化23】

【0086】
また、ジPEGアルデヒドを以下の方法で調製した:
市販のホモリシン(中国のAstatech Pharmaceutical Co.,Ltd.)の二つのアミノ基をベンジルオキシカルボニルによって保護した。当該N−保護したホモリシンをエステル化し、還元してアルデヒド化合物を形成した。当該アルデヒド基を続いてエチレングリコールで保護した。それから、ベンジルオキシカルボニル保護基をパラジウム触媒の存在下での水素添加により除去した。当該N−脱保護した化合物を、穏和な塩基条件下で活性化したmPEGOH(大韓民国のSunbio Chemicals Co.,Ltd.)と反応した。最終生成物は、25℃で72時間pH2.0のクエン酸緩衝液中攪拌して、アルデヒド保護基を除去した。109gのジPEGポリマーアルデヒドを得た(収率:95%)。純度は97.7%以上(HPLCで決定)であり、95%以上(H NMR解析で決定)であった。
【0087】
ヒトrhINF−β Ser17の調製
ヒトINF−β Ser17をエンコードしたDNAフラグメントを発現ベクターpET24aにコピーし、発現プラスミドrhIFN−b Ser17−pET24aを生成した。この発現プラスミドを大腸菌(E.coli)に転移し、陽性形質転換細胞、すなわち前記発現プラスミドを運搬するクローンを選択し、培養しおよび結果物である大腸菌培養物を−80℃で保存した。
【0088】
上述の保存した大腸菌培養物10μlを、Terrific Brothとグリセロールからなる種培地200mlに37℃および200rpmで15時間植菌した。このようにして得た大腸菌培養物150mlを、グルコース(10g/L)、MgSO・7HO(0.7g/L)、(NHHPO(4g/L)、KHPO(3g/L)、KHPO(6g/L)、クエン酸塩(1.7g/L)、酵母エキス(10g/L)、カナマイシン(50mg/ml)、クロラムフェニコール(50mg/ml)、消泡剤、およびFeSO・7HO(10mg/L)、ZnSO・7HO(2.25mg/L)、CuSO・5HO(1mg/L)、MnSO・HO(0.5mg/L)、HBO(0.3mg/L)、CaCl・2HO(2mg/L)、(NHMo24(0.1mg/L)、EDTA(0.84mg/L)、およびCl(50mg/L)を含む少量の元素を含む2.5Lの培地に移し、37℃で培養した。OD600の大腸菌培養物が120〜140に達した時、IPTG(1M)を培養物に加え、rhIFN−b Ser17の発現を誘導した。当該誘導された培養物を37℃、300rpmで3時間培養した。必要に応じて、800g/lのグルコースおよび20g/LのMgSOを含むフィード培地を培養中、大腸菌培養物に加えた。
【0089】
上記のようにして得られた大腸菌培養体を大腸菌細胞を集菌するため遠心分離した。当該細胞をPBS緩衝液(0.1M NaHPO、0.15M NaCl)中に再懸濁し、APVホモジナイザー中に分散した。このようにして得た当該均質化された溶液を10,000rpm、4℃で15分間遠心分離した。沈殿(封入体を含んでいる)を集め、PBSに再懸濁して、室温で20〜30分間攪拌し、懸濁液を形成した。NaOH(6N)を当該懸濁液に加え、そのpHを12に調製し、前記封入体に含まれるタンパク質を溶解した。2分後、懸濁液のpH値を6NのHClで7.5に調製した。その後、当該懸濁液を遠心分離し、このようにして形成された上清を集め、そのタンパク質濃度を分光光度計を用いて決定した。当該上清をリフォールディング緩衝液(TEA、pH8.3)と混合し、室温で24〜48時間攪拌することなく培養した。その後、濃縮して、TFFシステムとMillipore Inc.より入手できるPLCCCカセットを使用して透析した。最終的に得られた溶液を限外濾過、透析およびSPFF Sepharoseカラムを用いて分別した。このようにして得られた画分A9およびA10は、前記組み換えタンパク質rhIFN−b Ser17を含んでおり、さらに他のSPFF Sepharoseカラムを用いて分別して、(画分A8〜A10中)の組み換えタンパク質の純度を高めた。これらのrhIFN−b Ser17を含んでいる部分を、さらにゲル濾過(Superdex 75 HR 10/300)で精製して、90%以上の純度を有するrhIFN−b Ser17タンパク質(1mg/ml)を得た。当該組み換えタンパク質の生物活性は>2×10IU/mg proteinであった。
【0090】
IFN−β−ジPEGポリマー共役体の調製
18.9gのrhIFN−b Ser17と1.51gのジPEGアルデヒドを26mLの0.1M リン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に懸濁した。この溶液に、400eq.のNaCNBH(ベルギー、Acros Organics)を加えた。当該反応混合物を室温で16時間攪拌し、その後25mMのトリス−HCl(pH7.8)を用いて透析した。当該粗生成物をイオン交換カラムで精製し、2mgのIFN−b−di−PEGポリマーを得た。
【0091】
ヒトINF−βの調製
大腸菌プロモーターに動作可能なように結合されたIFN−βのエンコード配列を有する組み換え大腸菌BLR (DE3)−RIL細胞を、50μl/mLのカナマイシンと50μl/mLのクロラムフェニコールを添加した250mLのSYN培地(10g/Lのセレクトソイトン(select soytone)、5g/Lの酵母エキス、および10g/LのNaCl)中培養した。その後、当該細胞を、振盪培養器中220rpmで一晩(すなわち、16時間)37℃で培養した。
【0092】
上記のオーバーナイトの培養物250mLを、10g/Lの塩基性グルコース、0.7g/Lの供給MgSO、30mLの供給少量成分(10g/LのFeSO・7HO、2.25g/LのZnSO・7HO、1g/LのCuSO・5HO、0.5g/LのMnSO・HO、0.3g/LのHBO、2g/LのCaCl・2HO、0.1g/Lの(NHMo24、0.84g/LのEDTA、50ml/LのHCl)、25μl/mLのカナマイシンおよび25μl/mLクロラムフェニコールを添加した3.0Lの基本培地(10g/Lのグルコース、0.7g/LのMgSO・7HO、4g/Lの(NHHPO、3g/LのKHPO、6g/LのKHPO、2g/Lのクエン酸塩、10g/Lの酵母エキスおよび2g/Lのイソロイシン)中培養し、5リッターの発酵槽(ニュージャージー州エジソンのBioflo 3000;Brunswick Scientation Co.)中培養した。発酵中、培地のpHを37%のNHOH溶液の自動添加によりpH7.1に制御した。溶解した酸素(D0)レベルを30%に維持した。D0レベルが40〜60を超えたときに供給するように設定したプログラム−制御したポンプを使用して前記供給溶液(800g/Lのグルコース、20g/LのMgSO、50μl/mLのカナマイシンおよび50μl/mLのクロラムフェニコール)を加えた。前記発酵媒地中の細胞密度(OD600)が180から200に達したとき、4mLの1Mイソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を酵母培地に加え、30mLの供給少量成分と25gの酵母エキスと一緒にIFN−β発現を誘導した。細胞をIPTG誘導したあと、遠心分離によって5時間かけて集菌した。
【0093】
前記細胞ペレットをPBS緩衝液(0.1M リン酸ナトリウム、0.15M 塩化ナトリウム、pH7.4)中、およそ1:3(湿重量g/mL)の割合で懸濁し、マイクロフルイダイザーで分散し、その後4℃で20分間10,000rpmで遠心分離をした。前記封入体(IB)を含むペレットをPBS緩衝液で2度洗浄し、上記のように遠心分離をして、1LのPBS溶液(0.1Mのリン酸ナトリウム、0.15Mの塩化ナトリウム、pH7.4、3%の両性洗浄剤 3−14、5mMのDTT)中懸濁した。30分間攪拌した後、前記ペレットを溶解するために攪拌しながら、前記懸濁液を6.0M NaOHでpH12に調整した。その後、前記懸濁液のpHを6NのHClを用いてpH7.5に調整した。20分間10,000rpmで遠心分離して、溶解したIFNβを含む上清を集めた。
【0094】
その後、溶解したINF−βを以下のようにリフォールディングするようにした。上述の上清をリフォールディング混合物を形成するために10Lの新たに調製したリフォールディング緩衝液(100mMのトリス−HCl(pH7.6)、0.5MのL−アルギニン、2mMのEDTA)に希釈した。当該混合物を攪拌せずに48時間培養した。培養後、リフォールドした組み換えINF−βを含む当該混合物を20mMのトリス(100mMのNaCl、0.05%の両性洗浄剤3−14、pH7.0である)緩衝液に対して透析した。
【0095】
前記透析された混合物を、予め平衡化し、20mMのトリス−HCl、100mMのNaCl緩衝液(pH7.0)で洗浄したSP−セファロースカラム(GE Amersham Pharmacia)に充填した。INFβを20mMのトリス−HCl緩衝液(pH7.0)と200mMのNaClを含む溶液で溶出した。INFβを含む画分を280nmの吸収度に基づき集めた。それらに含まれているINFβを、予め平衡化し、1.0Mの硫酸アンモニウム、20mMの酢酸ナトリウムおよび0.05%の両性洗浄剤(pH 4.5)を含む溶液で洗浄した疎水相互作用カラム(GE healthcareブチルセファロース 高速流)でさらに精製した。INFβを0.5Mの硫酸アンモニウムおよび20mMの酢酸ナトリウムを含む溶液を使用して溶出した。タンパク質を含む画分を280nmの吸収度に基づき集めた。これらの画分を溜め、IFNβの濃度をBCAタンパク質測定(ピアス、BCATM Protein測定器)で決定した。
【0096】
PEG−IFN−β共役体の調製
水(1.46mL)中、ジPEGアルデヒド(296mg、7.4μmol)の溶液に2Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH4.0、0.37mL)、両性洗浄剤3−14(1.48mL、10%水溶液)およびINF−β(20mMの酢酸ナトリウム、0.7%の硫酸アンモニウムおよび0.05%の合成洗剤を含むpH4.5の緩衝液3.7mL中に14.8mg)を加えた。当該反応混合物を室温で10分間攪拌し、シアノ水素化ホウ素水溶液(400mM、92.5μL、37μmol)を加えた。当該反応混合物を暗所で40時間攪拌し、SP HPセファロースクロマトグラフィーで精製した。所望のPEG−IFNβ共役体を含む画分を保持時間および吸収度280nmに基づいて集めた。共役体の濃度をBCAタンパク質測定器(ピアス、BCATM Protein測定器)で決定した。
【0097】
ラットにおける薬物動態学的研究
薬物動態学的研究をラットモデルで行い、IFN−βおよびPEG−IFN−βの血中半減期を調べた。オスのラット(250〜350gm)に600μg/kgのIFNβ(n=3)およびPEG−IFN b(n=3)を静注投与した。投与前および投与後0.1、1、2、4、6、10、24、48、72、および96時間でそれぞれのラットから血液(250μL)を採取した。当該血液から血清試料を調製し、試料中に含まれるIFN−βの量を酵素結合免疫測定法(ELISA)によって解析した。IFN−βおよびPEG−IFN−βの血中半減期を、最後3点の血清濃度から計算すると、それぞれ2時間および20時間であった。
【0098】
実施例2:EPO−PEGポリマー共役体
PEG−EPOの調製
水(2.67mL)中、ジPEGアルデヒド(267mg、6.1μmol)の溶液に、2.0Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH4.0、1mL)およびEPO(20mMのリン酸ナトリウムおよび150mMのNaClを含むpH7.3の緩衝液3.03mL中に10mg)を加えた。当該反応混合物を室温で10分間攪拌し、続いてシアノ水素化ホウ素水溶液(400mM、100μL、40μmol)を加えた。当該反応混合物を暗所で17時間攪拌し、SP Toyopearlカラム(Tosoh製)を用いて精製した。当該カラムをpH4.5の酢酸ナトリウム緩衝液20mMで均一にした。前記反応混合物を0.3−0.4mg/mlの濃度に希釈し、前記SP Toyopearlカラムに充填した。所望のPEG−EPO共役体を含む画分を保持時間および吸収度280nmに基づいて集めた。共役体の濃度を280nmのUV吸収度で決定した。
【0099】
ラットにおける薬物動態学的研究
薬物動態学的研究をラットモデルで行い、EPOおよびPEG−EPOの血中半減期を比較した。オスのラット(250〜350gm)に25μg/kgのEPO(n=5)およびPEG−EPO(n=5)を静注投与した。投与前および投与後0.088、0.75、1.5、3、6、10、24、および48時間でそれぞれのラットから血液(250μL)を採取した。PEG−EPO治療されているラットにおいては、血液サンプルをさらに投与後72および96時間でも採取した。当該血液から血清サンプルを調製し、酵素結合免疫測定法(ELISA)によって解析し、そこに含まれているEPOの量を決定した。その結果、EPOの血中半減期は9時間であり、一方、PEG−EPOの血中半減期は著しく増加し、すなわち38時間であることを示している。
【0100】
EPO−PEGポリマー共役体の調製
0.1Mのリン酸塩緩衝液(pH5.0)に0.2mgのEPO(台湾のCashmere Scientific Company)と4mgのジPEGアルデヒド(20当量)を懸濁した。この溶液に400当量のNaCNBHを加えた。当該反応混合物を室温で16時間攪拌した。EPO−ジPEGポリマーの形態をHPLCで確かめた。
【0101】
実施例3:GH−PEGポリマー共役体
Met−hGHの調製
発現Met−hGH機能のある形質転換大腸菌BLR (DE3)−RIL細胞をMet−hGHを発現させるため、上記の発酵方法で培養した。
【0102】
遠心分離して細胞を集菌し、細胞ペレットを約1:3(湿重量g/mL)の割合でTE緩衝液(50mMのトリス−HCl、1mMのEDTA、pH8.0)に懸濁した。その後、当該細胞をマイクロフルイダイザーで拡散し、10,000rpmで20分間遠心分離した。封入体(IB)を含む前記ペレットをTED緩衝液(50mMのトリス−HCl、1mMのEDTA、2%のデオキシコール酸塩、pH8.0)で2度洗浄し、上記するように遠心分離し、ならびにMilliQ水に懸濁し、20,000rpmで15分間遠心分離した。前記IBを400mlの50mM TUD溶液(50mMのTris−HCl、4Mの尿素、2.5mMのDTT、pH10.0)に懸濁し、当該懸濁液を20,000rpmで20分間遠心分離し、上清を集めた。
【0103】
当該上清を新たに調製したリフォールディング緩衝液(50mMのTris−HCl、0.5mMのEDTA、5%グリセロール 10mMのGSH/1mMのGSSG、pH8.0)2.0Lに希釈した。その後、このように形成された混合物を攪拌せずに36時間培養し、20mMのトリス緩衝液(pH7.0)に対して透析した。
【0104】
Met−hGHを含む当該透析した混合物を、前処理として均等化し20mMのトリス−HCl緩衝液、pH 7.0で洗浄したQ−セファロースカラム(ペンシルベニア州ピッツバーグのGE Amersham Pharmacia)に充填した。Met−hGHを20mMのトリス−HCl緩衝液、pH7.0および100mMのNaClを含む溶液で溶出した。Met−hGHを含む画分を280nmの吸光度で決定し、集め、溜め、20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)流速5ml/minで前処理して洗浄した疎水性相互作用カラム(ペンシルベニア州ピッツバーグのGE Amersham Pharmacia)に充填した。Met−hGHを20mMの酢酸ナトリウム緩衝液と150mMの硫酸アンモニウムを含む溶液で抽出した。Met−hGHを含む画分を集め、BCAタンパク質測定器(ピアス、BCATM Protein測定器)を用いて、Met−hGH濃度を決定した。
【0105】
PEG−Met−hGH共役体の調製
リン酸ナトリウム緩衝液(pH4.0、374μL)とヒトGH(20mMの酢酸ナトリウムと150mMのNaClを含むpH4.5緩衝液6.5mL中に22.4mg)を、水(387μL)中のジPEGアルデヒド(74mg、1.7μmol)の溶液に加えた。当該反応混合物を室温で10分間攪拌し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液(400mM、140mL、56mmol)を加えた。当該反応混合物を暗所で17時間攪拌し、SP XLセファロースクロマトグラフィーによって精製した。所望のポリマー−タンパク質共役体を含む画分を、保持時間と280nmにおける吸光度に基づき集めた。共役体の濃度をBradford法(イリノイ州ロックフォード、ピアス)を使用するタンパク質測定キットで決定した。
【0106】
ラットにおける薬物動態学的研究
薬物動態学的研究をラットモデルで行い、Met−hGHおよびPEG−Met−hGHの血中半減期を比較した。オスのラット(250〜350gm)に100μg/kgの投与量でMet−hGH(n=5)またはPEG−Met−EPO(n=5)を静注投与した。投与前および投与後0.083、1、2、4、8、12、および24時間でMet−hGHで治療されたラットから、および投与前および投与後0.33、1、4、8、12、24、48、72、および96時間後にPEG−Met−EPOで治療されたラットから血液サンプルを採取した。当該血液から血清サンプルを調製し、酵素結合免疫測定法(ELISA)によって解析し、hGH濃度を決定した。Met−hGHおよびPEG−Met−hGHの血中半減期はそれぞれ3時間と35時間であった。
【0107】
他の実施例
本明細書に開示されている全ての特徴はいかなる組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書に開示されているそれぞれの特徴は同一の、等価の、または同様の目的を与える代替可能な特徴で置き換えられてもよい。このように、明示的に述べられていない限り、開示されているそれぞれの特徴は等価なまたは同様の特徴の包括的なシリーズの単なる例である。
【0108】
上記から、当業者は容易に本願発明の本質的な特徴を解明でき、その精神および範囲から離れることなく様々な変更および改良を行い、様々な使用および条件に適応させられる。このように、他の実施態様もまた以下の特許請求の範囲内のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式のペプチド−ポリマー共役体:
【化1】

式中、
、R、R、R、およびRはそれぞれ独立してH、C1−10のアルキル、C2−10のアルケニル、C2−10のアルキニル、アリール、ヘテロアリール、C3−8のシクロアルキルまたはC3−8のヘテロシクロアルキルであり;
およびAはそれぞれ独立してポリマー部分であり;
、GおよびGはそれぞれ独立して結合または結合性官能基であり;
Pはインターフェロン−β部分、エリスロポエチン部分、および成長ホルモン部分からなる群から選択され、PのN末端の窒素原子はGと結合しており;
mは0または1〜10の整数であり;ならびに
nは1〜10の整数である。
【請求項2】
Pがインターフェロンβ部分である、請求項1の共役体。
【請求項3】
PがrINF−β Ser17である、請求項2の共役体。
【請求項4】
PがN末端に1〜4の追加のアミノ酸残基を含む修飾インターフェロン−β部分である、請求項2の共役体。
【請求項5】
Pがエリスロポエチン部分である、請求項1の共役体。
【請求項6】
およびAがそれぞれ2〜100kDの分子量を有するポリエチレングリコール部分である、請求項1の共役体。
【請求項7】
およびAがそれぞれ10〜30kDの分子量を有するポリエチレングリコール部分である、請求項1の共役体。
【請求項8】
およびGがそれぞれ
【化2】

式中、OはAまたはAに結合しており、N原子は炭素原子に結合している;
であり、および
が結合である、請求項7の共役体。
【請求項9】
mが4であり、nが2であり、ならびにR、R、R、R、およびRがそれぞれHである、請求項8の共役体。
【請求項10】
Pがインターフェロンβ部分である、請求項9の共役体。
【請求項11】
PがrINF−β Ser17である、請求項10の共役体。
【請求項12】
PがN末端に1〜4の追加のアミノ酸残基を含む修飾インターフェロン−β部分である、請求項10の共役体。
【請求項13】
Pがエリスロポエチン部分である、請求項9の共役体。
【請求項14】
Pが成長ホルモン部分である、請求項9の共役体。
【請求項15】
Pが成長ホルモン部分である、請求項1の共役体。
【請求項16】
前記共役体が
【化3】

式中、mPEGは分子量20kDを有するメトキシキャップされたポリエチレングリコール部分である、
である、請求項1の共役体。
【請求項17】
前記共役体が
【化4】

式中、mPEGは分子量20kDを有するメトキシキャップされたポリエチレングリコール部分である、
である、請求項1の共役体。
【請求項18】
前記共役体が
【化5】

式中、mPEGは分子量20kDを有するメトキシキャップされたポリエチレングリコール部分である、
である、請求項1の共役体。
【請求項19】
下記式のペプチド−ポリマー共液体:
【化6】

式中、
、R、RおよびRはそれぞれ独立してH、C1−10のアルキル、C2−10のアルケニル、C2−10のアルキニル、アリール、ヘテロアリール、C3−8のシクロアルキルまたはC3−8のヘテロシクロアルキルであり;
nは2〜10の整数であり;
Aはポリマー部分であり;
Gは結合性官能基であり;ならびに
Pはペプチド部分であり、前記ペプチド部分のN末端の窒素原子は上記式中に示される
【化7】

部分中の炭素原子に結合している。
【請求項20】
Gが
【化8】

であり、O原子はAに結合しており、N原子は炭素原子に結合している、請求項19の共役体。
【請求項21】
Aが分子量10〜40kDを有するポリエチレングリコール部分である、請求項20の共役体。
【請求項22】
Aが分子量20〜30kDを有するポリエチレングリコール部分である、請求項21の共役体。
【請求項23】
Pがインターフェロン部分である、請求項22の共役体。
【請求項24】
Pがエリスロポエチン部分である、請求項22の共役体。
【請求項25】
Pが成長ホルモンである、請求項22の共役体。
【請求項26】
nが1である、請求項19の共役体。

【公表番号】特表2011−529910(P2011−529910A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521347(P2011−521347)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/052347
【国際公開番号】WO2010/014874
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(508197376)ファーマエッセンティア コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】