説明

ペプチドおよびタンパク質の薬学的因子の精製および安定化

【課題】ペプチドまたはタンパク質から1つ以上の不純物(すなわち、望ましくない成分)を除去することを容易にし、そのペプチドまたはタンパク質を精製するための方法の提供。
【解決手段】好ましい実施形態において、1つ以上の不純物(例えば、亜鉛イオン)を含むペプチド(例えば、インスリン)が、ジケトピペラジン中にトラップされ、ペプチド/ジケトピペラジン/不純物の沈殿物を形成し、次いでそれが、除去されるべき不純物についての溶媒(これは、ジケトピペラジンについて非溶媒であり、かつペプチドについて非溶媒である)を用いて洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して薬学的処方物の分野にあり、そしてより具体的には、薬学的適用において使用されるペプチドおよびタンパク質(例えば、インスリン)を精製および安定化させるための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な人において、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が産生するインスリンは、血中グルコース濃度の増加に応答して、グルコース代謝のために身体により必要とされるインスリンを産生する。インスリンは、入ってくるグルコースを代謝し、そして肝臓のグリコーゲンおよび脂質のグルコースへの変換を一時的に中止し、これにより身体に食間の代謝活性を支持させる。しかし、I型糖尿病は、β細胞破壊に起因する、インスリンを産生する低減された能力または絶対的不能を有し、そして毎日の注射またはインスリンポンプを介するインスリンの置換を必要とする。しかし、I型糖尿病よりもII型糖尿病が一般的であり、これは、インスリン耐性および漸増的に害された膵臓のβ細胞機能により特徴付けられる。II型糖尿病は、インスリンを未だ産生し得るが、これらもまた、インスリン置換治療を必要とし得る。
【0003】
II型糖尿病は、代表的に、血中グルコースレベルの増加に対する遅延性応答を示す。正常な人は、大抵、食物の消費後2〜3分以内にインスリンを放出するが、II型糖尿病は、消費の数時間後でも内因性インスリンを分泌し得ない。結果として、内因性グルコース産生は、消費後持続し(Pfeiffer,Am.J.Med.,70:579−88(1981))、そして患者は、上昇した血中グルコースレベルに起因する高血糖を経験する。
【0004】
グルコース誘導インスリン分泌の欠失は、β細胞機能の初期障害の1つであるが(Cerasiら,Diabetes,21:224−34(1972);Polonskyら,N.Engl.J.Med.,318:1231−39(1988))、β細胞の機能障害の原因および程度は、ほとんどの場合において未知である。遺伝的な機能が重要な役割を果たす一方で(Leahy,Curr.Opin.Endocrinol.Diabetes,2:300−06(1995))、いくらかのインスリン分泌障害は、後天的であるようであり、そして最適なグルコースコントロールを介して少なくとも部分的に可逆的であり得る。食事後のインスリン治療を介する最適なグルコース制御は、投与されたインスリンおよび血清インスリン濃度の急激な増加に対して応答性の正常な組織の両方を必要とすることにより、自然なグルコース誘導インスリン放出における顕著な改善を生じ得る。従って、II型糖尿病のβ細胞機能の過剰な機能の過剰な欠失を有さない患者の初期段階の処置において提示されるチャレンジは、食事後のインスリンの放出を回復することである。
【0005】
最も初期段階のII型糖尿病は、現在は、経口剤を用いて処置されるが、僅かな成功しか伴わない。インスリンの皮下注射もまた、II型糖尿病患者にインスリンを提供する際には滅多に効果的ではなく、そしてこれは、遅延した、可変的かつ表層的な作用の開始(onset)に起因してインスリン作用を実際に悪化し得る。しかし、インスリンが食事と共に静脈内に投与される場合、初期段階のII型糖尿病は、肝臓の糖生成の機能停止を経験し、そして増加した生理学的なグルコース制御を示す。さらに、これらの遊離脂肪酸レベルは、インスリン治療無しよりも早い速度で降下する。インスリンの静脈内投与は、II型糖尿病を処置する際におそらく効果的ではあるが、適切な溶液ではない。なぜなら、毎回の食事ごとに静脈内投与することは、患者にとって安全でも実行可能でもないからである。
【0006】
インスリンは、6,000ダルトンの名目上の分子量を有するポリペプチドであり、伝統的に天然産物を単離するためにブタおよびウシの膵臓を処理することにより生成されてきた。しかし、より最近では、組換え技術を使用して、インビトロでヒトインスリンを生成してきた。水溶液中の天然および組換えのヒトインスリンは、亜鉛イオンの存在下で水に溶解する場合、六量体立体配置、すなわち、組換えインスリンの6分子が六量体複合体に非共有結合的に会合する。六量体インスリンは、迅速には吸収されない。組換えヒトインスリンが患者の循環内に吸収されるためには、この六量体は、材料が血液の流れの中に移行し得る前に、最初に二量体および/または単量体の形態に会合しなければならない。吸収の遅延は、治療インスリン血中レベルを生成するために、食事の時間のおよそ半時間前に組換えヒトインスリンが投与されることを必要とし、これは、食事をする時間を正確に予測することが必要とされる患者にとって煩わしくあり得る。この遅延を克服するために、組換えヒトインスリンのアナログ(例えば、HUMALOGTM)が開発された。これは、皮下投与後に実質的に完全に、単量体形態に迅速に解離する。臨床研究は、HUMALOGTMが、皮下投与後に、組換えヒトインスリンよりも量的に早く吸収されることを示した。例えば、Anderson Jr.らに対する米国特許第5,547,929号を参照のこと。
【0007】
注射による送達に関連する不利益を回避し、そして吸収を加速する努力において、肺経路を介するインスリンの単量体アナログの投与が開発されてきた。例えば、Gondaらに対する米国特許第5,888,477号は、患者の肺組織上にインスリンの粒子を蓄積するために単量体インスリンのエアロゾル処方物を患者に吸引させることを開示する。しかし、単量体処方物は、不安定であり、そして活性を急速に失い、一方、取り込みの速度は変化しないままである。
【0008】
天然の供給源由来の迅速に吸収可能なインスリンを産生することが所望されるが、例えば、複合体から亜鉛を除去することによる六量体形態から単量体形態への変換は、不安定でありそして所望でない短い保存期間を有するインスリンを生じる。従って、インスリンの単量体形態を提供する一方で亜鉛の非存在下でその安定性を維持することが、所望される。肺投与に適切であり、迅速な吸収を提供しそして商業的に有用な保存期間を有する既製の処方物に生成され得る単量体インスリン組成物を糖尿病患者に提供することが、有利である。
【0009】
不純物(安定性またはバイオアベイラビリティーに影響する金属イオン)でのこれらの問題は、多くの他のタンパク質およびペプチドに対して生じる。
【0010】
Steinerらに対する米国特許第6,071,497号は、6.4以下のpHでは安定でありかつ6.4を超えるpHでは不安定であるジケトピペラジン微粒子、または酸性および塩基性のpHでは安定であるが、約6.4と8との間のpHでは不安定である、ジケトピペラジン微粒子中に薬物がカプセル化される微粒子薬物送達系を開示する。この特許は、肺投与に安定であり、迅速な吸収を提供し、そして商業的に有用な保存期間を有する既製の処方物に生成され得る単量体インスリン組成物を開示しない。
【0011】
従って、インスリンの血中レベルのより迅速な上昇を提供し、そして患者のコンプライアンスを保証するために簡単に投与される、II型糖尿病のための代替的なインスリン送達組成物を開発することが有利である。また、この送達組成物および送達方法を、他の生物学的活性因子(active agent)に適用することが望まれる。
【発明の概要】
【0012】
従って、特に肺投与に適切な組成物の調製において、ペプチドおよびタンパク質を精製するための改良方法を提供することが、本発明の目的である。
【0013】
肺送達に適切な安定な単量体ペプチド組成物を提供することは、本発明の別の目的である。
【0014】
インスリンおよび他の生物学的活性因子の、生体膜を横切る輸送を容易にするための方法および組成物を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0015】
血流中のインスリンまたは他の生物学的活性因子の改良された吸収のための方法および組成物を提供することは、本発明の別の目的である。
【0016】
投与の容易さにより特徴付けられる、血流中のインスリンまたは他の生物学的活性因子の改良された吸収のための方法および組成物を提供することは、本発明のなおさらなる目的である。
【0017】
ペプチドまたはタンパク質をジケトピペラジンまたは競合的な複合体化薬剤中に組み込み、1以上の不純物(すなわち、所望でない成分)のそのペプチドまたはタンパク質からの除去を容易にすることによりペプチドおよびタンパク質を精製するための方法が提供される。好ましい実施形態では、1以上の不純物(例えば、亜鉛イオン)を含む、インスリンのようなペプチドが、ジケトピペラジン中にトラップされ、ペプチド/ジケトピペラジン/不純物の沈澱を形成し、次いでこの沈澱は、ジケトピペラジンについて非溶媒でありかつペプチドについて非溶媒である、除去される不純物のための溶媒で洗浄される。あるいは、不純物と選択的に複合体を形成し、そして例えば、透析により除去する複合体化薬剤を使用することにより、不純物が除去され得る。
【0018】
処方物および方法もまた、生体膜を横切る活性因子の改良された輸送に関して提供され、これは、例えば、血中の因子濃度の迅速な増加を生じる。処方物としては、(i)荷電していても中性であってもよい活性因子、および(ii)輸送を容易にするための、因子の荷電をマスクする輸送エンハンサーおよび/または標的生体膜と水素結合を形成する輸送エンハンサーから形成される微粒子が挙げられる。好ましい実施形態では、インスリンは、フマリルジケトピペラジンおよび生物学的に活性な形態のインスリンを含む微粒子の肺送達を介して投与される。インスリン分子上の荷電は、ジケトピペラジンにインスリン分子を結合させる水素によりマスクされ、これにより、インスリンが標的膜を通過するのを可能にする。インスリンを送達するこの方法は、静脈内送達から生じる増加に匹敵する血中インスリン濃度の迅速な増加をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1aは、経時(分)的な平均血中グルコース値のグラフである。図1bは、インスリンを静脈内投与、皮下投与および吸入により投与した場合の、経時(分)的なC−ペプチドのレベル(ng/ml)を比較する実験の間の平均C−ペプチド濃度のグラフである。
【図2】図2aは、静脈内投与、皮下投与および吸入により投与されたインスリンを比較する経時(分)的なグルコース注入速度(mg/kg/分)のグラフである。図2bは、静脈内投与、皮下投与および吸入により投与されたインスリンを比較する経時(分)的な平均インスリン濃度(μU/ml)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ジケトピペラジン中のラージポリマー(例えば、タンパク質およびペプチド)のカプセル化またはトラップは、不純物または混入(例えば、金属イオンまたは他の低分子)を除去するために使用され得る。ジケトピペラジンはまた、トラップされた材料の送達を安定化および増強することの両方において作用する。処方物はまた、生体膜を横切る活性因子の増強された輸送のために開発されてきた。これらの処方物としては、(i)荷電していても中性であってもよい活性因子、および(ii)因子の荷電をマスクする輸送エンハンサーおよび/または膜と水素結合する輸送エンハンサーから形成される微粒子が挙げられる。この処方物は、処方物の投与後血中の活性因子の濃度の迅速な増加を提供し得る。
【0021】
例えば、六量体インスリンがフマリルジケトピペラジン処方物中で肺へ送達され、3〜10分以内に血中濃度のピークに達し得ることが発見された。対照的に、フマリルジケトピペラジン無しで肺経路により投与されたインスリンは、典型的には血中濃度のピークに達するのに25〜60分の間の時間を要し、一方、六量体インスリンは、皮下注射により投与された場合、血中レベルのピークに達するのに30〜90分かかる。この行為は、数回、そしてヒトを含むいくつかの種において首尾よく再現された。
【0022】
インスリンからの亜鉛の除去は、典型的に望ましくない短い保存期間を有する不安定なインスリンを生じる。インスリンの亜鉛を除去するための精製、安定化および増強された送達を、例により示す。フマリルジケトピペラジン中にトラップされたインスリンの処方物は、安定であり、そして受容可能な保存期間を有することが見出された。亜鉛レベルの測定は、亜鉛がトラッププロセスの間にほとんど除去され、安定な送達処方物中に単量体インスリンを生じたことを示した。
【0023】
多くの他のペプチド(サケカルシトニン、副甲状腺ホルモン1〜34、オクトレオチド(octreotide)、ロイプロリドおよびRSVペプチドを含む)の迅速な吸収は、そのペプチドが、肺送達後3〜10分以内に血中濃度のピークを提供するフマリルジケトピペラジン中で肺送達される場合、観察される。
【0024】
(I.材料)
(A.送達される因子)
送達される因子は、本明細書中で、活性因子としてか、またはカプセル化されるかもしくはトラップされる分子をいう。荷電種であってもよいし、そうでなくてもよい。本明細書中で記載される組成物および方法における使用のために適切な活性因子のクラスの例としては、治療剤、予防剤および診断剤、ならびに栄養補助食品(例えば、ビタミン)が挙げられる。
【0025】
ジケトピペラジンが送達される材料と複合体を形成する正確な機構は知られていないが、ジケトピペラジンは、精製される材料と複合体を形成すると考えられる。このプロセスは、トラップまたはカプセル化として本明細書中で互換可能にいわれる。
【0026】
これらの材料は、任意のポリマーまたは大有機分子、最も好ましくはペプチドおよびタンパク質であり得る。一般的に言うと、任意の形態の薬物がトラップされる。例としては、治療的活性、予防的活性または診断的活性を有する、合成無機化合物および合成有機化合物、タンパク質およびペプチド、多糖類および他の糖、脂質ならびに核酸配列が挙げられる。タンパク質は、100以上のアミノ酸残基からなるとして定義され;ペプチドは、100未満のアミノ酸残基である。他に述べなければ、用語タンパク質は、タンパク質およびペプチドの両方のことをいう。組込まれる因子は、種々の生物学的活性を有し得る(例えば、血管作用性因子、神経作用性因子、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節性因子、細胞傷害性因子、抗生物質、抗ウイルス剤、アンチセンス、抗原、および抗体)。いくつかの例において、タンパク質は、抗体または抗原であり得、そうでなければ注射により投与されて適切な応答を惹起しなければならない。代表的なポリマーとしては、タンパク質、ペプチド、多糖類、核酸分子、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
好ましいペプチドおよびタンパク質としては、ホルモン、サイトカインおよび他の免疫調節性ペプチド、ならびに抗原/ワクチンが挙げられる。好ましい実施形態において、活性因子は、モノマーインスリンまたは亜鉛を除去するために精製された安定化形態のインスリンである。別の好ましい実施形態において、活性因子は、グルカゴンである。
【0028】
活性因子(すなわち薬物)は、抗原であり得、ここでこの分子は、保護免疫応答を、特に優先的に肺に感染する因子(例えば、マイコプラスマ、肺炎を引き起こす細菌、およびRS(respiratory synticial)ウイルス)に対して惹起するように意図される。これらの場合、抗原に対する免疫応答を増大させるために、薬物をアジュバントと組合せて投与することがまた、有用であり得る。
【0029】
所望の機能を置き換えるかまたは補充する際、あるいは腫瘍の増殖の阻害のような所望の効果を達成する際に有用である任意の遺伝子は、本明細書中に記載されるマトリックスを使用して導入され得る。本明細書中で使用される場合、「遺伝子」は、30より多いヌクレオチド長、好ましくは100以上のヌクレオチド長の単離された核酸分子である。機能を置き換えるか補充する遺伝子の例としては、ADA欠損を処置するための臨床試験において使用されてきたアデノシンデアミナーゼ(ADA)のような欠失(missing)酵素、ならびにインスリンおよび凝固因子VIIIのような補因子をコードする遺伝子が挙げられる。調節をもたらす遺伝子はまた、単独でか、または特定の機能を補充するかもしくは置き換える遺伝子と組合せて投与され得る。例えば、特定のタンパク質コード遺伝子の発現を抑制するタンパク質、また逆に、タンパク質コード遺伝子の発現を誘発するタンパク質をコードする遺伝子は、マトリックス中で投与され得る。免疫応答の刺激の際に有用である遺伝子の例としては、ウイルス性抗原および腫瘍抗原、ならびにサイトカイン(腫瘍壊死因子)およびサイトカインの誘発因子(エンドトキシン)、ならびに種々の薬理学的因子が挙げられる。
【0030】
利用され得る他の核酸配列としては、相補的DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、リボザイム分子、およびRNAasePによる切断を標的化するために使用される外部誘導配列が挙げられる。
【0031】
本明細書中で使用される場合、ベクターは、遺伝子を標的細胞内に輸送する因子であり、そしてそのベクターが送達される細胞における遺伝子の発現を生じるプロモーターを含む。プロモーターは、一般的なプロモーターであり、種々の哺乳動物細胞において発現を生じるか、または細胞特異的であるか、または核対細胞質特異的でさえある。これらは、当業者に公知であり、そして標準的な分子生物学的プロトコルを使用して構築され得る。
浸入を増大させるベクター(例えば、脂質、リポソーム、脂質結合体形成分子、界面活性剤、および他の膜透増加因子)は、市販されており、そして核酸と共に送達され得る。
【0032】
画像化剤(金属、放射性同位体、放射線不透過性剤、蛍光色素、および放射線透過性剤を含む)もまた、組込まれ得る。放射性同位体および放射線不透過性剤の例としては、ガリウム、テクネチウム、インジウム、ストロンチウム、ヨウ素、バリウム、およびリンが挙げられる。
【0033】
活性因子組成物から除去され得る不純物としては、金属イオン(例えば、亜鉛)および他の二価イオンまたは多価イオン、ならびに小無機分子および溶媒残留物が挙げられる。
【0034】
(B.ジケトピペラジン)
本発明の組成物および方法において有用なジケトピペラジンは、例えば、米国特許第6,071,497号(これは、本明細書中にその全体が参考として援用される)に記載される。
【0035】
((i)一般式) ジケトピペラジンまたはその置換アナログは、ヘテロ原子および非結合電子対を含む、少なくとも6個の環原子を有する堅固な平面状の環である。窒素の1つまたは両方は、酸素と置き換えられて置換アナログのジケトモルホリンおよびジケトジオキサンをそれぞれ生じる。窒素をイオウ原子で置き換えることは可能であるが、これは安定な構造を与えない。
【0036】
ジケトピペラジンおよびそのアナログの一般式を以下に示す。
【0037】
【化1】

【0038】
ここでnは、0と7との間であり、Qは、独立して、C1〜20直鎖アルキル、分岐アルキルもしくは環状アルキル、アラルキル、アルカリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、複素環式、アルキル−複素環式または複素環式−アルキルであり;Tは、−C(O)O、−OC(O)、−C(O)NH、−NH、−NQ、−OQO、−O、−NHC(O)、−OP(O)、−P(O)O、−OP(O)、−P(O)O、−OS(O)、または−S(O)であり;Uは、酸基(例えば、カルボン酸、リン酸、ホスホン酸、およびスルホン酸)または塩基性基(例えば、一級アミン、二級アミンおよび三級アミン、四級アンモニウム塩、グアニジン、アニリン)、複素環式誘導体(例えば、ピリジンおよびモルホリン)、または少なくとも1つの酸性基および少なくとも1つの塩基性基(例えば、上記の基)を含む双性イオン性C1〜20鎖であり、ここで側鎖は、任意の位置でアルケン基またはアルキン基でさらに官能基化され得、側鎖上の1つ以上の炭素は、酸素で置き換えられて、例えば短いポリエチレングリコール鎖を生じ得、1つ以上の炭素は、上記のような酸性基または塩基性基で官能基化され得、そしてここで1位および4位の環原子Xは、OまたはNのいずれかである。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「側鎖」は、Q−T−Q−UまたはQ−Uとして定義され、ここでQ、T、およびUは、上記で定義された通りである。
【0040】
酸性側鎖の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:cisおよびtransの、−CH=CH−COH、−CH(CH)=CH(CH)−COH、−(CH−COH、−CHCH(CH)−COH、−CH(CHCOH)=CH、−(テトラフルオロ)安息香酸、−安息香酸および−CH(NHC(O)CF3)−CH−COH。
【0041】
塩基性側鎖の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:−アニリン、−フェニル−C(NH)NH、−フェニル−C(NH)NH(アルキル)、−フェニル−C(NH)N(アルキル)および−(CHNHC(O)CH(NH)CH(NH)COH。
【0042】
双性イオン性側鎖の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:−CH(NH)−CH−COHおよび−NH(CH1〜20COH。
【0043】
用語アラルキルとは、アルキル置換基を有するアリール基をいう。
【0044】
用語複素環式−アルキルとは、アルキル置換基を有する複素環式基をいう。
【0045】
用語アルカリールとは、アリール置換基を有するアルキル基をいう。
【0046】
用語アルキル−複素環式とは、複素環式置換基を有するアルキル基をいう。
【0047】
用語アルケンとは、本明細書中で言及される場合、および他に特定されない場合、C〜C10のアルケン基をいい、特にビニルおよびアリルを含む。
【0048】
用語アルキンとは、本明細書中で言及される場合、および他に特定されない場合、C〜C10のアルキン基をいう。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「ジケトピペラジン」は、上記の一般式の範囲に入るジケトピペラジンならびにその誘導体および改変体を含む。
【0050】
フマリルジケトピペラジンは、肺適用に最も好ましい。
【0051】
((ii)合成)
ジケトピペラジンは、Katchalskiら、J.Amer.Chem.Soc.68:879−80(1946)に記載されるように、アミノ酸エステル誘導体の環状二量体化により形成され得るか、ジペプチドエステル誘導体の環化により形成され得るか、またはKoppleら、J.Org.Chem.32(2):862−64(1968)に記載されるように、高沸点溶媒中でのアミノ酸誘導体の熱的脱水により形成され得る。2,5−ジケト−3,6−ジ(アミノブチル)ピペラジン(Katchalskiらは、これをリシン無水物と称した)を、J.Org.Chem.のKoppleの方法と同様に、溶融したフェノール中でのN−ε−P−L−リシンの環状二量体化、次いで酢酸中4.3MのHBrを用いるブッロク(P)−基の除去を経て調製した。この経路は、市販の出発物質を使用し、生成物において出発物質の立体化学を保存することが報告されている反応条件を含み、そして全ての工程が容易に製造のためにスケールアップされ得るので、好ましい。
【0052】
ジケトモルホリン誘導体およびジケトオキセタン誘導体は、Katchalskiら、J.Amer.Chem.Soc.68:879−80(1946)に開示される様式と同様の様式で段階的な環化により調製され得る。
【0053】
ジケトピペラジンは、放射標識され得る。放射標識を結合させる手段は、当業者に公知である。放射標識ジケトピペラジンは、例えば、トリチウムガスを二重結合または三重結合を含む上記に列挙した化合物と反応させることにより調製され得る。C−14放射標識炭素は、容易に入手可能な14C標識前駆体を使用することにより側鎖中に組み込まれ得る。これらの放射標識ジケトピペラジンは、生じた微粒子を被験体に投与した後に、インビボで検出され得る。
【0054】
((a)対称ジケトピペラジン誘導体の合成)
ジケトピペラジン誘導体は、両方の側鎖が同一である場合は対称的である。側鎖は、酸性基、塩基性基、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0055】
対称ジケトピペラジン誘導体の一例は、2,5−ジケト−3,6−ジ(4−スクシニルアミノブチル)ピペラジンである。2,5−ジケト−3,6−ジ(アミノブチル)ピペラジンは、わずかにアルカリ性の水溶液中で無水コハク酸を用いて徹底的にスクシニル化しされて、弱アルカリ性水溶液には容易に溶解するが、酸性水溶液には全く不溶性である生成物を与える。弱アルカリ性水溶液中の化合物の濃縮溶液を、適切な条件下で迅速に酸性化すると、物質が微粒子として溶液から分離する。
【0056】
他の好ましい化合物は、上記の化合物中のスクシニル基をグルタリル基、マレイル基、またはフマリル基で置き換えることにより得られ得る。
【0057】
((b)非対称ジケトピペラジン誘導体の合成)
非対称ジケトピペラジン誘導体を調製するための1つの方法は、側鎖上の官能基を保護すること、側鎖の1つを選択的に脱保護すること、脱保護された官能基を反応させて第1の側鎖を形成すること、第2の官能基を脱保護すること、そして脱保護された官能基を反応させて第2の側鎖を形成することである。
【0058】
保護された酸性側鎖を有するジケトピペラジン誘導体(例えば、シクロ−Lys(P)Lys(P)、ここでPはベンジルオキシカルボニル基、または当業者に公知の保護基である)は、選択的に脱保護され得る。これらの保護基は、制限試薬(例えば、ベンジルオキシカルボニル基の場合にはHBr、またはケイ素保護基の場合にはフッ化物イオン)を使用すること、および制御された時間間隔を使用することにより、選択的に切断され得る。このようにして、非保護、モノ−保護、およびジ−保護ジケトピペラジン誘導体を含む反応混合物が得られ得る。これらの化合物は、種々の溶媒およびpH範囲で異なる溶解度を有し、そして選択的な沈澱および除去により分離され得る。次いで、適切な溶媒(例えば、エーテル)をこのような反応混合物に加えて、これらの物質のすべてを一緒に沈澱させ得る。これにより、保護基を脱保護するために使用された反応物からジケトピペラジンを除去することにより、完了前に脱保護反応を止めることができる。混合沈澱物を水と攪拌することにより、部分的に反応した種および完全に反応した種の両方が、塩として水性媒体中に溶解し得る。未反応の出発物質は、遠心分離または濾過により除去され得る。水溶液のpHを弱アルカリ性条件に調節することにより、単一の保護基を含む非対称モノ保護生成物は、溶液から沈澱し、完全に脱保護された物質が溶液中に残る。
【0059】
塩基性側鎖を有するジケトピペラジン誘導体の場合、塩基性基もまた、選択的に脱保護され得る。上記のように、脱保護工程は、例えば、適切な溶媒を反応系に加えることにより完了前に止められ得る。慎重に溶液のpHを調整することにより、脱保護された誘導体は、濾過により除去され得、部分的に脱保護された誘導体および完全に脱保護された誘導体は、溶液中に残る。溶液のpHをわずかに酸性の条件に調整することにより、モノ保護誘導体が溶液から沈殿し、そして単離され得る。
【0060】
双性イオン性ジケトピペラジン誘導体もまた、上記のように選択的脱保護され得る。最後の段階において、pHをわずかに酸性の条件に調整することにより、遊離の酸性基を有するモノ脱保護化合物が沈澱する。pHをわずかに塩基性の条件に調整することにより、遊離の塩基性基を有するモノ脱保護化合物が沈澱する。
【0061】
他の機構による保護基の限定的な除去としては、限定された量の水素ガスをパラジウム触媒存在下で使用する水素添加により切断される保護基の切断が挙げられるがこれに限定されない。生じた生成物はまた、非対称な部分的に脱保護されたジケトピペラジン誘導体である。これらの誘導体は、本質的に上記のように、単離され得る。
【0062】
モノ保護されたジケトピペラジンが、1つの側鎖および保護基を有するジケトピペラジンを産生するために反応される。保護基および他の側鎖とのカップリングの除去は、酸性、塩基性、および両性イオン性側鎖の混合物で非対称的に置換されたジケトピペラジンを生じる。
【0063】
pHに対してこの反応を示す他の材料は、ジケトピペラジン環のアミド環窒素を官能化することにより得られ得る。
【0064】
(C.輸送エンハンサー)
好ましい実施形態において、活性因子は、膜を横切る因子の輸送を容易にするために、分解性でありかつ標的生体膜との水素結合を形成可能な輸送エンハンサーと複合体化される。輸送エンハンサーはまた、荷電する場合、その荷電をマスクし、そして膜を横切る因子の輸送を容易にするために、活性因子との水素結合を形成することが可能である。好ましい輸送エンハンサーは、ジケトピペラジンである。
【0065】
輸送エンハンサーは、好ましくは、生物分解性であり、そして活性因子の一様(linear)放出、パルス放出またはバルク放出を提供し得る。輸送エンハンサーは、天然または合成ポリマーであり得、そして化学基(アルキル(alkyly)、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、および当業者により慣用的に作製される他の改変を含む)の置換または付加を介して改変され得る。
【0066】
好ましい輸送エンハンサーは、フマリルジケトピペラジンである。輸送エンハンサーとして有用であり得る他のジケトピペラジンは上記に記載される。
【0067】
ほとんどのタンパク質およびペプチドと同様に、インスリンは、荷電分子であり、これは、荷電した生体膜を横切るその能力を妨げる。インスリンがフマリルジケトピペラジンに水素結合する場合、ペプチドの荷電はマスクされ、それにより膜(例えば、粘膜)を横切り、そして血液中へのインスリンの通過を容易にするかまたは増強することが見出されている。
【0068】
(II.方法)
(A.カプセル化)
1つの実施形態において、活性因子は、重炭酸または他の塩基性溶液中で酸性側鎖を有するジケトピペラジンを溶解し、溶液または懸濁液中の活性因子を添加し、次いで酸(例えば、1Mクエン酸)を添加することにより微粒子を沈殿させることによって、微粒子内にカプセル化される。
【0069】
別の実施形態において、活性因子は、酸性溶液(例えば、1Mクエン酸)中に塩基性側鎖を有するジケトピペラジンを溶解し、溶液または懸濁液中の活性因子を添加し、次いで重炭酸または別の塩基性溶液を添加することにより微粒子を沈殿させることによって、微粒子内にカプセル化される。
【0070】
なお別の実施形態において、活性因子は、酸性または塩基性溶液中に酸性側鎖および塩基性側鎖の両方を有するジケトピペラジンを溶解し、カプセル化される活性因子を溶液または懸濁液に添加し、次いで、その溶液を中和することにより微粒子を沈殿させることにより、微粒子内にカプセル化される。
【0071】
微粒子は、乾燥状態で貯蔵され得、そして患者への投与のために懸濁され得る。第1の実施形態において、再構築された微粒子は、酸性媒体中でその安定性を維持し、そして媒体が6と14との間の範囲で生理学的pHに近づくにつれて、解離する。第2の実施形態において、懸濁された微粒子は、塩基性媒体において安定性を維持し、そして0と6との間のpHで解離する。第3の実施形態において、再構築された微粒子は、酸性または塩基性媒体中でその安定性を維持し、そして媒体が6と8との間の範囲で生理学的pHに近づくにつれて、解離する。
【0072】
不純物は、代表的に、微粒子が沈殿する場合、除去される。しかし、不純物はまた、不純物を溶解するために粒子を洗浄することにより除去され得る。好ましい洗浄溶液は、水または水性緩衝液である。水以外の溶媒もまた、水に可溶性でない不純物を除去するために、ミクロスフェアを洗浄するか、またはジケトピペラジンを沈殿するために使用され得る。カーゴ(cargo)またはフマリル(fumaryl)ジケトピペラジンがいずれも可溶性でない任意の溶媒が、適切である。例としては、酢酸、エタノール、およびトルエンが挙げられる。
【0073】
代替の実施形態において、ジケトピペラジンの微粒子は、懸濁液(代表的には、水性懸濁液)において調製かつ提供され、次いでこれに、活性因子の溶液が添加される。次いで、懸濁液は、活性因子のコーティングを有するジケトピペラジン微粒子を生成するために、凍結乾燥するかまたはフリーズドライされる。好ましい実施形態において、活性因子は、六量体形態のインスリンである。次いで、亜鉛イオンは、適切な溶媒を用いて微粒子を洗浄することにより除去され得る。
【0074】
本明細書中に使用される場合、ジケトピペラジン中の/ジケトピペラジンを含有する、活性因子に関して、用語「トラップされる」は、ジケトピペラジンの微粒子上への活性因子のコーティングを含む。
【0075】
ジケトピペラジン微粒子は、亜鉛より高いインスリンに対する親和性を有することが見出された。インスリンは、フマリルジケトピペラジンの指定された格子状アレイ内に安定化されることが見出された。この場合、亜鉛イオンの十分な欠乏において、インスリンは、その六量体の状態とは対照的に、主に二量体または単量体である。従って、インスリンは、その単量体状態に、より容易に解離し、これは、インスリンがその生物学的活性を発揮する状態である。
【0076】
他の複合体化薬剤が、ジケトピペラジンの代わりに用いられ得る。他の代表的な複合体化薬剤としては、血清アルブミンおよび他のタンパク質、アルギニン酸、抗体、シクロデキストリン、リン脂質、およびレシチンが挙げられる。例えば、亜鉛が混入したインスリンは、ウシ血清アルブミンと複合体化され得る。この複合体は、1,000ダルトン未満の分子量カットオフを有する管(tubing)において透析除去され、亜鉛を分離かつ除去し得る。その透析物中の存在により明らかにされるように、一旦十分な量の亜鉛が透析されると、分散は、10,000ダルトン以下の分子量カットオフを有する透析管に移される。単量体のインスリンのみが、管を介して透析液中へ通過し、任意の残存する六量体亜鉛複合体化インスリンが残される。精製されたインスリンは、透析物からトラップされる。
【0077】
しかし、これらの材料は、分解しやすい(unstable)または不安定な(labile)薬物の十分な安定性を提供しないかもしれない。
【0078】
(B.投与)
本明細書中に記載される活性因子の組成物が、活性因子を必要とする患者に投与され得る。組成物は、好ましくは、微粒子の形態で投与され、これは、肺投与のための乾燥粉末形態であり得るか、または適切な薬学的キャリア(例えば、生理的食塩水)において懸濁され得る。
【0079】
微粒子は、好ましくは、投与直前までずっと、乾燥または凍結乾燥形態で貯蔵される。次いで、この微粒子は、乾燥粉末として、例えば、吸入法(例えば、当該分野で公知の乾燥粉末吸入器を使用)により直接投与され得る。あるいは、この微粒子は、例えば、エーロゾルとしての投与のための水溶液として、十分な量の薬学的キャリア中に懸濁され得る。
【0080】
微粒子はまた、経口、皮下、および静脈内経路を介して投与され得る。
【0081】
この組成物は、任意の標的化された生体膜(好ましくは、患者の粘膜)に投与され得る。好ましい実施形態において、患者は、II型糖尿病に罹患しているヒトである。好ましい実施形態において、この組成物は、生物学的に活性な形態のインスリンを患者に送達し、これは、食べることへの正常な応答を刺激する血清インスリン濃度の急上昇を提供する。
【0082】
好ましい実施形態において、六量体のインスリンが、フマリルジケトピペラジン中にトラップされ、フマリルジケトピペラジンにおいて単量体のインスリンの固体沈殿物を形成し、次いでこれは、遊離亜鉛を除去するために、水溶液を用いて洗浄される。この処方物は、皮下注射後のインスリンの取り込みの速度の2.5倍の速度で、肺投与後の血液の取り込みを示し、ここで血液レベルのピークは、投与後7.5分と10分との間で生じた。
【0083】
送達される薬物の負荷の範囲は、送達される薬物の形態および大きさ、ならびに標的組織に依存して、代表的に、約0.01%と90%との間である。ジケトピペラジンを使用する、好ましい実施形態においては、好ましい範囲は、薬物の重量の0.1%〜50%の負荷である。適切な投薬は、例えば、組み込まれた/カプセル化された因子の量、微粒子からの因子の放出の速度、および好ましい実施形態においては、患者の血中グルコースレベルによって決定され得る。
【0084】
1つの好ましい適用は、高インスリン血症の処置における適用である。好ましい実施形態において、活性因子がグルカゴンである組成物の微粒子が、連続的な皮下注入によって投与され得る。グルカゴンは、非常に不安定なペプチドであるが、例えば、ジケトピペラジンの粒子中で安定化され得る。安定化されたグルカゴン/ジケトピペラジン微粒子は、グルカゴンをジケトピペラジン(これが、グルカゴンに水素結合する)の溶液に添加することによって、作製され得、そしてこの溶液を、例えば食品酸(food acid)の添加によって酸性化する場合に、ジケトピペラジンとグルカゴンとの両方が自己集合して、例えば約2μmの平均粒子サイズを有する均一なミクロスフェアを形成する。このプロセスにおいて、約95%のグルカゴンが溶液から引き抜かれ、そしてジケトピペラジン微粒子内に等しく分配される。これらの粒子は、容易に懸濁され得、そして標準的な注入ポンプを用いて皮下に注入され得る。次いで、グルカゴン/ジケトピペラジン粒子は、皮下流体のほぼ中性のpHの環境と接触されて、ここでこれらの粒子は溶解し、これによってグルカゴンをその薬理学的に活性な状態で放出する。
【0085】
本明細書中に記載される組成物および方法を、以下の非限定的な実施例によってさらに記載する。
【0086】
(実施例1:U.S.P.注射可能インスリンからの亜鉛の除去)
フマリルジケトピペラジンにトラップされたインスリンを分析して、亜鉛がトラッププロセスの間に除去されたか否かを評価した。出発物質として使用したインスリンは、注射可能なインスリンについてのU.S.P.標準に適合し、そして分析の証明書によれば、このインスリンは、かなりの量の亜鉛(すなわち、0.41%)を含有した。次いで、このインスリンをフマリルジケトピペラジンにトラップして、固体のフマリルジケトピペラジン/インスリン混合物を、上記のように形成した。
【0087】
フマリルジケトピペラジンへのインスリンのトラップに続いて、この量の亜鉛は、理論的には、ニートなインスリンにおいて存在する場合と同じ割合で存在するはずである。分析値の証明書を使用して、フマリルジケトピペラジン/インスリンの固体収率での1グラムあたり697ppmの亜鉛を見出すと予測されることを、計算した。驚くべきことに、固体のフマリルジケトピペラジン/インスリンに存在する亜鉛の量は、ほんの6ppmであると測定された。「失われた」亜鉛は、恐らく、インスリン/フマリルジケトピペラジン沈殿を洗浄するために使用した水とともに排除された。
【0088】
(実施例2:ジケトピペラジン肺処方物中のインスリンのバイオアベイラビリティ)
(被験体および方法)
本研究は、Heinrich−Heine−University,Dusseldorfの倫理的再検討委員会により再検討および認証されて、局所的規約(Declaration of Helsinki)およびGood Clinical Practiceの規則に従って実施された。
【0089】
本研究を、5人の健全な雄性の有志において実施した。包括基準は、理学的検査により判断された場合の良好な健康、年齢:18〜40歳、ボディマス指数:18〜26kg/m、コンピュータ補助肺活量測定により測定した、ピーク呼気流に達する能力4I/秒、および80%以上の正常と予測されたFEV(FEV=1秒間の強制呼気量)であった。排除基準は、真性糖尿病1型または2型、ヒトインスリン抗体の有病率、試験投薬または類似の化学構造を有する薬物に対する過敏症の履歴、アレルギーの履歴または重篤度または多発性、試験開始前の最後の3箇月間の何らかの他の調査因子での処置、進行性致死疾患、薬物またはアルコールの乱用の履歴、他の薬物での現在の薬物治療、顕著な心臓血管疾患、呼吸器疾患、胃腸疾患、肝疾患、腎疾患、神経学的疾患、精神医学的疾患、および/または血液学的疾患の履歴、進行中の気道感染、あるいはタバコまたはニコチンの使用の証拠または履歴を有する喫煙者であると規定される患者であった。
【0090】
(研究の実施)
試験日の朝(7:30a.m.)に、被験体(夜中以降水以外絶食)が病院に来た。これらの被験体は、各処置日の前24時間にわたって、過度の運動およびアルコールの摂取を制限された。これらの被験体を、3つの処置上腕のうちの1つに無作為に割り当てた。これらの被験体に、レギュラーヒトインスリンの一定の静脈内注入を与えた。血清インスリン濃度が時点0の前2時間にわたって10〜15U/mlで確立されるように、この注入を0.15mU分−1kg−1に維持した。この低用量注入を試験の間中続けて、内因性インスリン分泌を抑制した。血中グルコースを、グルコース制御した注入システム(BIOSTATORTM)によって、グルコースクランプ(glucose clamp)の間、90mg/dlのレベルに一定に維持した。このグルコースクランプアルゴリズムは、実際に測定した血中グルコース濃度、および血中グルコース濃度を一定に維持するためのグルコース注入速度を計算する前の数分間の可変性の等級に基づいた。インスリン適用(5U i.v.注射もしくは10U s.c.注射、または市販の吸入デバイス(Boehringer Ingelheim)で適用される1つのカプセルあたり3回の深呼吸吸入(各50Uのカプセル2個))は、時点0の直前に完了しなければならなかった。クランプ実験の持続時間は、時点0から6時間であった。グルコース注入速度、血中グルコース、血清インスリン、およびC−ペプチドを測定した。
【0091】
(生体効力およびバイオアベイラビリティ)
生体効力を決定するために、グルコース注入速度の曲線の下の面積を、投与後最初の3時間(AUC0−180)および投与後6時間の全観察期間(AUC0−360)に対して計算し、そして適用したインスリンの量と相関付けた。バイオアベイラビリティを決定するために、インスリン濃度の曲線の下の面積を、投与後最初の3時間(AUC0−180)および投与後6時間の全観察期間(AUC0−360)に対して計算し、そして適用したインスリンの量と相関付けた。
【0092】
このクランプ研究において、100UのTECHNOSPHERETM/インスリンの吸入は、十分に耐性があり、そして達成された血清インスリン濃度から計算した場合に、最初の3時間について、25.8%の相対バイオアベイラビリティで、かなりの血中グルコース低下効果を有することが実証された。TECHNOSPHERETMは、特定のpH(代表的には低pH)において規則的な格子アレイに自己集合する、ジケトピペラジンから形成される微粒子(本明細書中でミクロスフェアとも呼ばれる)である。これらは代表的に、約1μmと約5μmとの間の平均直径を有するよう生成される。
【0093】
(結果)
薬物速度論結果を図1および2、ならびに表1に示す。
【0094】
(効力の結果)
100UのTECHNOSPHERETM/インスリンの吸入(100Uの吸入)は、13分後(静脈内(i.v.)(5U):5分、皮下(s.c.)(10U):121分)のインスリン濃度のピーク、および180分後(i.v.:60分,s.c.360分)のベースラインへのインスリンレベルの戻りを明らかにした。グルコース注入速度により測定した場合の生物学的作用は、39分後(i.v.14分、s.c.:163分)にピークとなり、そして360分(i.v.:240分、s.c.:>360分)より長く持続した。絶対的なバイオアベイラビリティ(i.v.適用との比較)は、最初の3時間については14.6±5.1%であり、そして最初の6時間については15.5±5.6%であった。相対的なバイオアベイラビリティ(s.c.適用との比較)は、最初の3時間については25.8±11.7%であり、そして最初の6時間については16.4±7.9%であった。
【0095】
【表1】

【0096】
(安全性の結果)
TECHNOSPHERETM/インスリンは、全ての患者において安全であることが示された。1人の患者は、呼吸系の変質のいかなるさらなる症状も徴候もなしに、吸入の間咳をしていた。
【0097】
(結論)
100UのTECHNOSPHERETM/インスリンの吸入は、十分に耐性があり、そして達成された血清インスリン濃度から計算した場合に、最初の3時間について、25.8%の相対バイオアベイラビリティで、かなりの血中グルコース低下効果を有することが実証された。
【0098】
(要約)
本研究において、TECHNOSPHERETM/インスリン(実施例1の処方物)の吸入は、健全なヒト被験体において、インスリン濃度の迅速なピーク(Tmax:13分)および作用の迅速な開始(Tmax:39分)を有する時間−作用プロフィール、ならびに6時間より長きにわたる持続した作用を有することが実証された。100UのTECHNOSPHERETM/インスリンの吸入の後に測定した全代謝効果は、10Uのインスリンの皮下注射の後より大きかった。TECHNOSPHERETM/インスリンの相対生体効力は、19.0%であると計算され、一方で相対バイオアベイラビリティは、最初の3時間において、25.8%であると決定された。
【0099】
これらのデータはまた、TECHNOSPHERETM/インスリンの吸入が、s.c.インスリン注射の作用の開始(これは、i.v.インスリン注射の作用の開始に近かった)よりずっと迅速な作用の開始を生じ、一方でTECHNOSPHERETM/インスリンの作用の持続時間が、s.c.インスリン注射の作用の持続時間に匹敵したことを示す。
【0100】
薬物は十分に耐性であり、そして重篤な不利な事象は、全試行の間に報告されなかった。
【0101】
(実施例3:専有ペプチドからの不純物の除去)
不純物を含む専有ペプチドを、フマリルジケトピペラジンにトラップし、ペプチド/フマリルジケトピペラジン沈殿物を形成した。この沈殿物を水で洗浄して、不純物を除去した。このペプチドは、かなり不安定であり、そしてフマリルジケトピペラジンへのこのペプチドのトラップは、その安定性を、乾燥粉末と注射用水性懸濁液との両方として、顕著に改善する。
【0102】
(実施例4:安定化されたグルカゴン処方物)
(処方物)
グルカゴンを、滅菌条件下で、酸性溶液中でフマリルジケトピペラジン(3,6−ビス[N−フマリル−N−(n−ブチル)アミノ]−2,5−ジケトピペラジン)と沈殿させることによって、安定化複合体に処方した。この複合体を洗浄し、そして凍結乾燥して、ジケトピペラジン/グルカゴン(本明細書中以下で「TG」と称する)の滅菌乾燥粉末処方物を得た。これは、所望の処方パラメータに依存して、1.2〜8.2重量%のグルカゴンを含有する(外科医が容量を一定に保ちながら用量を増加させることを可能にする)。このTG粉末を、MiniMed507C注入ポンプでの皮下送達に適した適切な媒体中に懸濁させた。
【0103】
(安定性プロトコル)
グルカゴンおよびTGを、注入媒体中に懸濁させ、そして150時間までの種々の時間にわたって、水浴中40℃でインキュベートした。
【0104】
(グルカゴンのHPLC分析)
グルカゴン分析についてのUSP法の適応を使用した。Waters Symmetry Shield RP8カラム(5μm、3.9×150mm)およびガードRP8カラム(5μm、3.9×20mm)を、1mL/分の流速および214nmの検出波長で使用した。以下の移動相からなる傾斜法:A:HPLC等級の水1リットルあたり9.8g NaHPO(0.0816M)および170mg L−システイン(1.4mM)、リン酸でpHを2.6に調整;ならびにB:アセトニトリル。グルカゴン溶液を、必要に応じて水で希釈し、そして注入した。TGサンプルを、1/10の容量の1M Tris(pH10.0)をサンプルに添加してフマリルジケトピペラジンを可溶化させることによって、調製した。
【0105】
(ラット研究プロトコル)
Sprague Dawleyラット200〜250gを一晩絶食させ、そして適切な媒体中のグルカゴンまたはTG(0.75mg/kg)を皮下注射して、これらのラットを25℃で0時間、24時間、または48時間保持した。血液サンプルを、投薬後−10分、−5分、0分、5分、10分、15分、20分、30分、45分、および60分において採取し、そして血中グルコースについて分析した(HemCue B−グルコース分析器、Hemocue AB、Angelholm Sweden)。平均ベースライン(投薬前測定値)を決定し、そして引き続くデータから減算して、時間に対してプロットした。これを行うことによって、有意には分解しないようであるTG処方物が、適切な薬理学的活性を示すことを保証した。
【0106】
(結果)
40℃でのインキュベーションに続いて、HPLC分析は、グルカゴン調製物における切断生成物の増加を示した。対照的に、TGは、1つのみの小さな分解ピーク(RT=6)を有する。この分解ピークは、グルカゴンのわずかに活性が低い酸化形態に相関する。ジケトピペラジンなし(すなわち、TECHNOSPHERETMなし)でのグルカゴンは、多くの分解ピークを有し、これらのピークのうちのいくつかは、増強された効果に寄与し、そして他のものは、グルカゴンの効力を減少させた。
【0107】
TGの滅菌凍結乾燥粉末を、凍結した状態で病院に移送し、ここで、滅菌媒体中に再懸濁させた。この材料は、良好に再懸濁し、そして各バイアルを、72時間にわたって連続的に注入した。
【0108】
(結論)
グルカゴンの標準的な調製物は、連続的な皮下注入による血中グルコースの調節のためには、適切ではない。可変の量の脱アミド形態および加水分解形態を含有するような調製物の投与は、高度に可変の血中グルコースレベルを生じた。安定化したTECHNOSPHERESTM/グルカゴンの懸濁液は、凝集せず、そして臨床的に不適切な量の切断生成物を含有する。TG自体は、高インスリン血症のための治療として使用され得、そして使用されてきた。そして経時的に皮下投与される場合に、一貫した上昇したグルコースレベルを提供する。
1.活性因子を精製する方法であって、以下
除去されるべき不純物を含む活性因子を提供する工程;ジケトピペラジンにおいて該活性因子をトラップして、混合物を形成する工程;および、該混合物から全ての該不純物を本質的に除去する工程、を包含する、方法;
2.前記活性因子が、ペプチドまたはタンパク質である、1に記載の方法;
3.前記ペプチドまたはタンパク質が、インスリン、サケカルシトニン、副甲状腺ホルモン1−34、オクトレオチド、ロイプロリド、およびRSVペプチドからなる群より選択される、2に記載の方法;
4.前記活性因子がインスリンである、3に記載の方法;
5.前記不純物が多価イオンである、1に記載の方法;
6.工程(a)の活性因子がインスリン複合体であり、そして前記不純物が亜鉛イオンで
ある、4に記載の方法;
7.前記複合体が六量体のインスリンである、6に記載の方法;
8.前記ジケトピペラジンがフマリルジケトピペラジンである、1〜7のいずれか一つに
記載の方法;
9.1〜8のいずれか一つに記載の方法であって、前記活性因子が、以下、
前記ジケトピペラジンの溶液を作製する工程、該活性因子の溶液または懸濁液を作製する工程、該ジケトピペラジン溶液を、該活性因子の溶液または懸濁液と組み合わせる工程、および、該活性因子が分散される該ジケトピペラジンの微粒子を沈殿させ、それにより該混合物を形成する工程、を包含するプロセスによりトラップされる、方法;
10.前記微粒子を前記不純物についての水溶液を用いて洗浄する工程をさらに包含する、9に記載の方法;
11.ジケトピペラジン中で安定化されるペプチドを含む、患者へのペプチドの投与のための組成物;
12.前記ペプチドが二量体または単量体のインスリンである、11に記載の組成物;
13.前記ペプチドがグルカゴンである、11に記載の組成物;
14.前記ジケトピペラジンがフマリルジケトピペラジンである、11〜13のいずれか一つに記載の組成物;
15.亜鉛イオンを実質的に含まない、12に記載の組成物;
16.前記ペプチドが、前記ジケトピペラジン内で分散されるか、または該ジケトピペラジンの微粒子上にコーティングされる、11〜15のいずれか一つに記載の組成物;
17.前記微粒子が乾燥粉末の形態で提供される、16に記載の組成物;
18.前記微粒子が薬学的に受容可能なキャリア中の水性懸濁物として提供される、16に記載の組成物;
19.肺投与に適切な形態である、11、15、または17のいずれか一つに記載の組成物;
20.1〜10のいずれかの方法により作製される、11に記載の組成物;
21.活性因子を必要とするヒトの粘膜に活性因子を投与する方法であって、該方法は以下:
組成物を該粘膜に投与する工程であって、該組成物は以下:
(i)該活性因子および(ii)有効量の輸送エンハンサーから形成される微粒子を含み、もしあれば、該因子の荷電をマスクすることにより、該粘膜に該輸送エンハンサーを水素結合することによるか、またはそれらの組み合わせにより、該粘膜を横切る該活性因子の輸送を容易にする、工程、を包含する、方法;
22.前記活性因子が荷電分子である、21に記載の方法;
23.前記活性因子がインスリンである、22に記載の方法;
24.前記輸送エンハンサーが前記活性因子の荷電をマスクするために該活性因子と水素結合を形成する、21に記載の方法;
25.前記輸送エンハンサーがフマリルジケトピペラジンである、21に記載の方法;
26.前記組成物が吸入を介して肺に送達される、21〜25のいずれか一つに記載の方法;
27.インスリンを必要とする患者にインスリンを送達するための方法であって、以下、
単量体のインスリンがカプセル化されるジケトピペラジンの微粒子を含む組成物における有効量のインスリンを該患者に投与する工程、を包含する、方法;
28.前記ジケトピペラジンがフマリルジケトピペラジンである、27に記載の方法;
29.前記組成物が吸入を介して前記肺に投与される乾燥粉末形態である、28に記載
の方法;
30.前記患者がII型糖尿病である、27〜29のいずれか一つに記載の方法;
31.前記組成物が前記患者が食事を食すると同時か、またはその前の約20分未満に投与される、30に記載の方法;
32.前記組成物が1以上の単位用量のインスリンで提供され、各用量が約6IUのインスリンと等しい、27〜31のいずれか一つに記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性因子を必要とするヒトの粘膜に活性因子を投与する方法であって、該方法は以下:
組成物を該粘膜に投与する工程であって、該組成物は以下:
(i)該活性因子および(ii)有効量の輸送エンハンサーから形成される微粒子を含み、もしあれば、該因子の荷電をマスクすることにより、該粘膜に該輸送エンハンサーを水素結合することによるか、またはそれらの組み合わせにより、該粘膜を横切る該活性因
子の輸送を容易にする、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記活性因子が荷電分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性因子がインスリンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記輸送エンハンサーが前記活性因子の荷電をマスクするために該活性因子と水素結合を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記輸送エンハンサーがフマリルジケトピペラジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が吸入を介して肺に送達される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
インスリンを必要とする患者にインスリンを送達するための方法であって、以下、
単量体のインスリンがカプセル化されるジケトピペラジンの微粒子を含む組成物における有効量のインスリンを該患者に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項8】
前記ジケトピペラジンがフマリルジケトピペラジンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が吸入を介して前記肺に投与される乾燥粉末形態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者がII型糖尿病である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が前記患者が食事を食すると同時か、またはその前の約20分未満に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が1以上の単位用量のインスリンで提供され、各用量が約6IUのインスリンと等しい、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
活性因子を精製する方法であって、以下
除去されるべき不純物を含む活性因子を提供する工程;
ジケトピペラジンにおいて該活性因子をトラップして、混合物を形成する工程;および
該混合物から全ての該不純物を本質的に除去する工程、
を包含する、方法。
【請求項14】
前記活性因子が、ペプチドまたはタンパク質である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチドまたはタンパク質が、インスリン、サケカルシトニン、副甲状腺ホルモン1−34、オクトレオチド、ロイプロリド、およびRSVペプチドからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記活性因子がインスリンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記不純物が多価イオンである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
工程(a)の活性因子がインスリン複合体であり、そして前記不純物が亜鉛イオンである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記複合体が六量体のインスリンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ジケトピペラジンがフマリルジケトピペラジンである、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項13〜20のいずれか1項に記載の方法であって、前記活性因子が、以下、
前記ジケトピペラジンの溶液を作製する工程、
該活性因子の溶液または懸濁液を作製する工程、
該ジケトピペラジン溶液を、該活性因子の溶液または懸濁液と組み合わせる工程、および
該活性因子が分散される該ジケトピペラジンの微粒子を沈殿させ、それにより該混合物を形成する工程、
を包含するプロセスによりトラップされる、方法。
【請求項22】
前記微粒子を前記不純物についての水溶液を用いて洗浄する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項13〜22のいずれかの方法により作製される、ジケトピペラジン中で安定化されるペプチドを含む患者へのペプチドの投与のための組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−49684(P2013−49684A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230348(P2012−230348)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2010−209301(P2010−209301)の分割
【原出願日】平成12年6月29日(2000.6.29)
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】