ペプチドの組成物及びその調製方法
本発明は、治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、またはその類似体もしくは誘導体、および該ペプチド、ポリペプチド、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む組成物を提供し、少なくとも1種類の安定化剤は、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩、中鎖脂肪酸のエステル、中鎖脂肪酸のエーテル、または中鎖脂肪酸の誘導体であるか、または界面活性剤である。ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体および/またはそれらの誘導体の調製のための方法も提供される。該方法は、前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体と、前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を混合することを含み、前記安定化剤は、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩、中鎖脂肪酸のエステル、中鎖脂肪酸のエーテル、または中鎖脂肪酸の誘導体であるか、または界面活性剤である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第35条119(e)項のもと、2008年5月7日出願の米国特許仮出願第61/051,038号の利益を主張し、その開示は参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の組成物、およびそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
さまざまな生物活性ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質が、医学的処置に幅広く使用されている。医学的処置の大部分に関して、安定な治療効果をもたらすために持続的なレベルの生物活性ペプチドまたはタンパク質を動物またはヒトに送達する必要性がある。その上、生物活性ペプチドまたはタンパク質はまた、長期間貯蔵されてもなおその活性を維持する必要もある。しかし、多くの天然に存在する、かつ合成されたペプチドおよびタンパク質ならびにそれらの類似体は、ゲル、凝集体、フィブリル、二量体、他のポリマー、凝固物(coagulates)などを形成する傾向を示している。一部の例では、形成された物質は、活性モノマー形態に逆戻りすることが可能であり得る。他の例では、変化した状態は永久的であり、劣化した状態を示す可能性がある。一部の例示的な生物活性ペプチドには、インスリン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)およびゴナドトロピン−放出ホルモン(GnRH)類似体が含まれる。ペプチドの不安定性は、これらのペプチドの調製、プロセス、貯蔵および送達の重大な障壁となっている。
【0004】
これまで、ペプチドまたはタンパク質の溶液を安定化させるために使用することのできる、少数の方法が見出されている。例えば、米国特許第6,124,261号には、ペプチドを安定化させるために使用することのできる非水性、極性、非プロトン性ペプチド製剤が記載されている。別の例では、クエン酸緩衝剤を用いて脂肪酸アシル化タンパク質のゲル化を低減させることができる。米国特許第5,631,347号を参照されたい。
【0005】
しかし、生物活性ペプチドおよびタンパク質の多様性に起因して、改良された安定性をもつペプチドまたはタンパク質の新規な組成物およびペプチドまたはタンパク質の組成物を調製する方法を発見する継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体、および、溶液中の該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む組成物を提供し、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいはエステル、エーテル、または約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸の誘導体であるか、あるいは界面活性剤である。一部の実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、インスリン、あるいはその類似体または誘導体である。一実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、グルカゴン様ペプチド(GLP)、あるいはその類似体または誘導体である。もう一つの実施形態では、安定化剤は、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウムおよびラウリン酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0007】
本発明のもう一つの態様によれば、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の組成物の調製のための方法が提供される。一部の実施形態では、該方法は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体を、該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤と混合することを含み、該安定化剤は、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩、あるいはそのエステル、そのエーテル、またはその中鎖脂肪酸の誘導体である。一実施形態では、安定化剤は、約8〜約14炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩である。
【0008】
以下の図面は本明細書の一部をなし、本発明の特定の態様をさらに明示するために含められる。本発明は、本明細書に記載される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1以上を参照することによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】異なるアシリンバッチの調製を説明する図である。
【図2】プロピレングリコール中の異なるアシリンバッチの9%および16.7%アシリンサンプルの外観を示す図である。
【図3】水中の異なるアシリンバッチの0.5%および1%アシリンサンプルの外観を示す図である。
【図4(a)】異なるアシリンバッチの5mgおよび10mg用量のアシリンマイクロエマルジョンの外観を示す図である。
【図4(b)】マイクロエマルジョンの製剤を示す図である。
【図5】1%および0% Tween 80を含む0.1mg/mL アシリンサンプルのゲル化の比較結果をグラフによって示す図である。
【図6】5mg/mL、1mg/mL、0.1mg/mLおよび1% Tween 80を有する0.1mg/mL アシリンサンプルのゲル化の比較結果をグラフによって示す図である。
【図7】1%および1mg/mL Tween 80を有する0.1および0.01mg/mL アシリンサンプルのゲル化の比較結果をグラフによって示す図である。
【図8】0.1%、0.5%および1% Tween 80を有する0.01mg/mL アシリンサンプルのゲル化の比較結果をグラフによって示す図である。
【図9】カプリン酸ナトリウムの濃度とアシリンのゲル化との間の相関関係をグラフによって示す図である。
【図10(a)】1〜55% Capmul MCMマイクロエマルジョン製剤を説明する図である。
【図10(b)】2〜45% Capmul PG−8マイクロエマルジョン製剤を説明する図である。
【図10(c)】3〜55% Capmul MCM C10マイクロエマルジョン製剤を説明する図である。
【図11】アシリンの異なる製剤の相対的なバイオアベイラビリティの比較結果をグラフによって示す図である。
【図12】(1)10mgアシリン腸溶錠に対する、界面活性剤を含まないアシリンサンプル、および(2)10mgアシリン腸溶錠に対する、カプリン酸ナトリウムを含む5mgアシリンサンプルの、相対的なバイオアベイラビリティの比較結果をグラフによって示す図である。
【図13(a)】カプリン酸ナトリウムを含むまたは含まないインスリン製剤についてインスリンの回収率の相関関係を説明する図である
【図13(b)】カプリン酸を含むインスリン製剤からのインスリンの回復率を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明の前述のおよびその他の態様を、本明細書に記載される説明および方法に関してこれからより詳細に説明する。本発明は様々な形態に具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきでないことは、当然理解される。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0011】
本明細書において言及される全ての特許、特許出願および刊行物は、参照によりその全文が援用される。用語法において矛盾のある場合は、本明細書に準拠する。
【0012】
本明細書における本発明の説明で使用される用語法は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであって、本発明を限定するものではない。本発明の実施形態および添付される特許請求の範囲の説明において使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに示されている場合を除き、複数形も同様に含むものとする。また、本明細書において、「および/または」とは、関連する列挙項目の1以上の任意の全ての可能性のある組合せを指し、包含する。さらに、化合物、用量、時間、温度などの測定可能な値を言及する場合に本明細書において使用される用語「約」は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらに0.1%の変動を包含することを意味する。別に定義されない限り、説明で使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明の属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0013】
本明細書において使用される、「アルコール」は、1以上のヒドロキシル(OH)基が、水素(H)原子の代わりに炭素(C)原子に結合している有機化合物を意味する。一部の実施形態では、アルコールは1〜6個の炭素原子を含有する。さらに、その他の実施形態では、アルコールは1〜4個の炭素原子を含有する。例示的なアルコールとしては、限定されるものではないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールが挙げられる。
【0014】
本明細書において使用される、「ゲル化」は、関心対象の化合物が凝集を受けて、フィブリル、二量体、長いポリマー、凝固物、あるいは結果としてコロイド構造またはゲルの形成をもたらし得る構造を形成することを意味する。本出願で使用される混合物の粘度は、水溶液または固体塊中の関心対象の化合物に適用され得る。
【0015】
「ゲル化」は、様々な程度に起こってよく、通常の手段で検出できないような様式で起こってよい。例えば、粘度の増加も、溶液の流量特性の変化もない場合がある。しかし、ゲル化から生じた物質(以降「ゲル」)は、濾過などの物理的手段により除去することができ、したがって当業者に公知の分析技術により見出すことができる。ゲルの存在は、異なる投与形態の開発の際に重大な問題を引き起こす可能性がある。例えば、原体製造技術の一環としてゲル状の系を加工して薬物の粉末を得る場合、その工程中にキセロゲルが形成される可能性がある。本明細書において使用される、「キセロゲル」は、ゲル状の系から液体が除去された後にゲルから生じた固体である。キセロゲルを含有するゲル状の系から得られる粉末は、ゲル状の物質を含有しない溶液から得られる粉末とは実質的に異なる特性を有する可能性がある。場合によっては、得られる粉末(power)は生物活性を失う。そのため、ゲルの形成は、原体加工段階か、あるいは剤形を調製する段階または貯蔵段階のいずれかで有害な影響を引き起こす可能性を秘めている。
【0016】
ゲルの形成をもたらす凝集または融合(coalescence)の程度は、当業者に公知の様々な方法、例えばマイクロまたはマクロ濾過に続いて濾液のアッセイ、遠心分離に続いて上清のアッセイ、あるいは、可視もしくは紫外線法またはレーザーに基づく方法を利用するものを含む様々な光吸収または光回折法により測定することができる。表面張力、凝固点降下、粘度、またはその他の束一的な特性の測定などの液体の物理的な特性を測定する方法も使用してよい。キセロゲル形成の程度は、物質を水中に分散させ、本明細書に記載される技法を用いることによるか、あるいは、X線粉末回折、IR分光法、または粉末状の物質に行うことのできる当分野に公知のその他の方法を含む、当業者に公知の方法によって粉末を直接測定することにより測定することができる。
【0017】
本明細書において使用される、用語「ゲル化を低減させる」とは、化合物のゲル形成を中断する、遅らせる、または排除することを意味する。ゲル化が可逆性の状況では、用語「ゲル化を低減させる」は、ゲルを、生物活性を維持する化合物のモノマー形態に逆転させることも意味する。本明細書において使用される、用語「ゲル化防止剤」とは、十分な量のゲル化防止剤が使用される場合に、関心対象の化合物の少なくとも50%のゲル化を阻害することのできる薬剤、化合物、組成物またはそれらの組合せを指す。一部の実施形態では、ゲル化防止剤は、十分な量のゲル化防止剤が使用される場合に、関心対象の化合物の少なくとも80%のゲル化を阻害することができる。一部の実施形態では、ゲル化防止剤は、十分な量のゲル化防止剤が使用される場合に、関心対象の化合物の少なくとも90%のゲル化を阻害することができる。
【0018】
本明細書において使用される、「治療上効果のある」または「治療上許容される」量とは、被験体において治療上有用な応答を誘発する量を指す。治療上有用な応答は、被験体における少なくとも1種類の臨床症状のいくらかの軽減、緩和、または低下を提供し得る。当業者は、いくらかの利益が被験体に提供される限り、治療上有用な応答は完全または治癒的である必要のないことを認識する。一部の実施形態では、被験体は動物である。一部の実施形態では、被験体はヒトである。
【0019】
本明細書において使用される、用語「水混和性溶媒」は、水と混合されて溶液を形成することのできる溶媒を意味する。水混和性溶媒は、親水性相を作り出すために用いてよい。
【0020】
本発明は、治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、その類似体または誘導体、および、該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、その類似体または誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる組成物を提供する。本明細書において使用される、「安定化剤」は、本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、その類似体または誘導体の安定性を向上させる薬剤である。
【0021】
一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは中鎖脂肪酸のエステル、エーテル、または誘導体であり、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、界面活性剤である。
【0022】
本発明は、貯蔵され、加工され、かつ/または治療のために投与されるのに十分な時間、本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を維持する組成物を提供する。安定性を測定する1つの方法としては、特定の条件下で保持されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の割合を測定することである。本明細書において使用される、用語「ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が保持される」は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が、ゲル、凝集体、フィブリル、二量体、他のポリマー、凝固物を形成せず、むしろそれは一定期間の後、モノマーとして維持されるかまたはその生物活性を維持することをを意味する。一実施形態では、本発明の組成物において、ペプチド、ポリペプチドタンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも約50%が、約37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持される。一部の実施形態では、本発明の組成物において、ペプチド、ポリペプチドタンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも約80%が、約37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持される。一部の実施形態では、本発明の組成物において、ペプチド、ポリペプチドタンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも約90%が、約37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持される。一部の実施形態では、本発明の組成物において、ペプチド、ポリペプチドタンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも約95%が、約37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持される。一部の実施形態では、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体のゲル化が低下した場合に、安定性が改良されている。
【0023】
本明細書に記載される組成物は、貯蔵、加工または投与に直接使用してよい。あるいは、組成物は、貯蔵、加工または投与に適した媒質(例えば、溶媒、マイクロエマルジョンまたは固体塊)と混合して使用してもよい。媒質を使用する状況では、媒質中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性は、本明細書に記載されるように改良される。
【0024】
一部の実施形態では、安定化剤はゲル化防止剤である。一実施形態では、本発明は、治療上有効な量の1以上のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体、および、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体のゲル化を低減させる十分な量の少なくとも1種類のゲル化防止剤を含む、組成物を提供する。
【0025】
一実施形態では、組成物中の安定化剤と、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の溶解速度は、実質的に同じである。
【0026】
I.ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体および誘導体
本発明は、凝集、二量体化、重合、凝固、ゲル化またはフィブリル化する傾向を有する、あらゆるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体に適用することができる。これらのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のいずれかの類似体、誘導体、及び製薬上許容される塩は、これらの用語に含められる。本明細書において使用される、「凝集、二量体化、重合、凝固、ゲル化またはフィブリル化する傾向」とは、関心対象の化合物の少なくとも50%が、その系を一定時間(例えば少なくとも約24時間)静置した後に、凝集を受けて、特定の温度(例えば37℃)にてその系内でフィブリル、二量体、凝固するポリマー、または、結果としてコロイド構造またはゲルの形成を生じることのできる構造を形成することを指す。
【0027】
一部の実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、インスリンあるいはその類似体または誘導体である。
【0028】
一実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、グルカゴン様ペプチド(GLP)、あるいはその類似体または誘導体である。もう一つの実施形態では、少なくとも1種類のGLPは、GLP−1、GLP−1類似体、GLP−1誘導体、GLP−2、GLP−2類似体、GLP−2誘導体、およびエキセンディン−4、エキセンディン−4類似体およびエキセンディン−4誘導体からなる群から選択される。
【0029】
より多くの例示的なペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体としては、限定されるものではないが、GnRHアゴニストおよびアンタゴニスト、ソマトスタチン、ACTH、コルチコトロピン放出因子、アンジオテンシン、カルシトニン、胃抑制ペプチド、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、下垂体アデニル酸、エキセンディン、エキセンディン−3、シクラーゼ活性化ペプチド、セクレチン、エンテロガストリン(enterogastrin)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、トロンボポエチン、エリスロポエチン、視床下部放出因子、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、エンドルフィン、エンケファリン、バソプレシン、オキシトシン、オピオイドおよびその類似体、スーパーオキシドジスムターゼ、インターフェロン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、リボヌクレアーゼ、FVII、FXIII、FVIIとFXIIIの混合物、IL−20、IL−21、IL−28a、IL−29、IL−31、それらの類似体および誘導体が挙げられる。
【0030】
一部の実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、ゲル化傾向のある多様なGnRH関連化合物を含む。本明細書において使用される、「ゲル化傾向」とは、化合物の少なくとも50%が、その系を一定時間(例えば少なくとも約2時間)静置した後に、凝集を受けて、特定の温度(例えば37℃)にてその系内でフィブリル、二量体、凝固するポリマー、または、結果としてコロイド構造またはゲルの形成を生じることのできる構造を形成することを指す。本明細書において使用される、GnRH関連化合物には、GnRHアンタゴニストとGnRHアゴニストの両方が含まれる。一部の実施形態では、本発明はGnRHアンタゴニストに適用することができる。一部の実施形態では、本発明には、限定されるものではないが、以下のGnRHアンタゴニスト、アシリン(Ac−D2Nal−D4Cpa−D3Pal−Ser4Aph(Ac)−D4Aph(Ac)−Leu−ILys−Pro−DAla−NH2)、アセチル−β−[2−ナフチル]−D−Ala−D−p−クロロ−Phe−β−[3−ピリジル]−D−Ala−Ser−Nε−[ニコチノイル]−Lys−Nε−[ニコチノイル]−D−Lys−Leu−Nε−[イソプロピル]−Lys−Pro−D−Ala−NH2(本明細書においてアンチド(Antide)とも称する)、アセチル−D2Nal1、D4C1Phe2、D3Pal3、ARg5、Dglu6(AA)(本明細書においてNalGluとも称する)、アセチル−D2Nal−D4CIPhe−D3Pal−Ser−Aph(Ac)−D−Aph(Ac)−Leu−Lys(lpr)−Pro−D−Ala−NH2、アバレリックス(Specialty European Pharma,Dusseldorf,Germany)、Nal−Lys、シナレル(Synarel)、(Searle Peapack,N.J.)、ガニレリクス(Orgalutron/Antagon)(Organan,West Orange,N.J.)、セトロレリクスI(Aeterna Zentaris Inc,Frankfurt,Germany)、セトロタイド、アザリンB、5位および6位にp−ウレイド−フェニルアラニンを組み込む次世代長時間作用型GnRH類似体(デガレリクスなど)、FE200486、Ac−D2Nal−D4Cpa−D3Pal−Ser−4Aph(L−ヒドロオロチル(hydoorotyl))−D4Aph(カルバモイル(carbarnoyl))−Leu−ILys−Pro−DAla−NH2(その酢酸塩はFE200486)、Ac−D2Nal−D4Cpa−D3Pal−Ser−4Aph(Atz)−D4Aph(Atz)−Leu−ILys−Pro−DAla−NH2(この際、Atzは3’−アミノ−1H−1’,2’,4’−トリアゾール−5’−イルである)、ならびに、米国特許第5506,207号、同第5,821,230号、同第5,998,432号、同第6,156,772号、同第6,156,767号、同第6,150,522号、同第6,150,352号、同第6,147,088号、同第6,077,858号、同第6,077,847号、同第6,025,366号、同第6,017,944号、同第6,004,984号、同第6214,798号、および同第6,875,843号に記載されるアンタゴニストが含まれる。一部の実施形態では、本発明のGnRHアンタゴニストは、イオンの存在下でゲル化する傾向を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類のGnRHアンタゴニストは、アシリン、アバレリックス、アザリンB、セロトレリクス、ガニレリクス、テベレリクス、デガレリクス、アンチド、オルンチド(orntide)および米国特許第7,098,305号に記載のGnRHアンタゴニストからなる群から選択される。
【0031】
一実施形態では、少なくとも1種類のGnRHアンタゴニストは、アバレリックス、セロトレリクス、デガレリクス、ガニレリクス、およびそれらの製薬上許容される塩からなる群から選択される。
【0032】
本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される、用語「アバレリックス」とは、式Iの構造を有する化合物を指す。
【化1】
式IのIUPAC名は、アセチル−D−β−ナフチルアラニル−D−4−クロロフェニルアラニル−D−3−ピリジルアラニル−L−セリル−L−N−メチル−チロシル−D−アスパラギニル−L−ロイシル−L−N(e)−イソプロピル−リシル−L−プロリル−D−アラニル−アミドである。用語「アバレリックス」には、式Iの化合物、その製薬上許容される塩、およびこれらの平衡混合物が含まれる。用語「アバレリックス」には、式Iの化合物の結晶形、水和もしくは溶媒和結晶形、および非晶質形ならびにそれらの製薬上許容される塩も含まれる。
【0033】
本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される、用語「セトロレリクス」とは、式IIの構造を有する化合物を指す。
【化2】
式IIのIUPAC名は、アセチル−D−3−(2’−ナフチル)−アラニン−D−4−クロロフェニルアラニン−D−3−(3’−ピリジル)−アラニン−L−セリン−L−チロシン−D−シトルリン(citruline)−L−ロイシン−L−アルギニン−L−プロリン−D−アラニン−アミドである。用語「セトロレリクス」には、式IIの化合物、それらの製薬上許容される塩、およびこれらの平衡混合物が含まれる。用語「セトロレリクス」には、式IIの化合物の結晶形、水和もしくは溶媒和結晶形、および非晶質形ならびにそれらの製薬上許容される塩も含まれる。
【0034】
本明細書および請求項を通じて使用される、用語「デガレリクス」とは、式IIIの構造を有する化合物を指す。
【化3】
式IIIのIUPAC名は、N−アセチル−3−(ナフタレン(naphtalen)−2−イル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(ピリジン−3−イル)−D−アラニル−L−セリル−4−((((4S)−2,6−ジオキソヘキサヒドロピリミジン−4−イル)カルボニル)アミノ)−L−フェニルアラニル−4−(カルバモイルアミノ)−D−フェニルアラニル−L−ロイシル−N6−(1−メチルエチル)−L−リシル−L−プロリル−D−アラニンアミドである。これはFE−200486としても公知である。用語「デガレリクス」には、式IIIの化合物、それらの製薬上許容される塩、およびこれらの平衡混合物が含まれる。用語「デガレリクス」には、式IIIの化合物の結晶形、水和もしくは溶媒和結晶形、および非晶質形ならびにそれらの製薬上許容される塩も含まれる。
【0035】
本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される、用語「ガニレリクス」とは、式IVの構造を有する化合物を指す。
【化4】
式IVのIUPAC名は、(2S)−1−[(2S)−2−[[(2S)−2−[[(2R)−2−[[(2R)−2−[[(2S)−2−[[(2R)−2−[[(2R)−2−[[(2R)−2−アセトアミド−3−ナフタレン−2−イルプロパノイル]アミノ]−3−(4−クロロフェニル)プロパノイル]アミノ]−3−ピリジン−3−イルプロパノイル]アミノ]−3−ヒドロキシプロパノイル]アミノ]−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノイル]アミノ]−6−[ビス(エチルアミノ)メチリデンアミノ]ヘキサノイル]アミノ]−4−メチルペンタノイル]アミノ]−6−[ビス(エチルアミノ)メチリデンアミノ]ヘキサノイル]−N−[(2R)−1−アミノ−1−オキソプロパン−2−イル]ピロリジン−2−カルボキサミドである。用語「ガニレリクス」には、式IVの化合物、それらの製薬上許容される塩、およびこれらの平衡混合物が含まれる。用語「ガニレリクス」には、式IVの化合物の結晶形、水和もしくは溶媒和結晶形、および非晶質形ならびにそれらの製薬上許容される塩も含まれる。
【0036】
一部の実施形態では、本発明は、ゲル化傾向を有するGnRHアゴニストに適用することができる。例示的なGnRHアゴニストとしては、限定されるものではないが、ヒストレリン(histerelin)、ロイプロリドおよびゴセレリンが挙げられる。
【0037】
用語「GnRH関連化合物」、「GnRHアンタゴニスト」および「GnRHアゴニスト」には、その立体異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ混合物、ならびに誘導体、例えば、塩、酸、エステルなどを含む、そのすべての形態が含まれる。化合物は、固体、液体、溶液、懸濁液などを含む任意の適した相状態で提供されてよい。固体微粒子形態で提供される場合、粒子は任意の適したサイズまたは形態であってよく、1以上の結晶形、半結晶形および/または非晶質形が想定され得る。
【0038】
本発明で使用されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、治療効果を誘発するために十分な任意の量で存在してよく、適用される場合には、実質的に1種類の光学的に純粋な鏡像異性体の形態で、または鏡像異性体の混合物、ラセミとしてまたは別の方法のいずれかで存在してよい。当業者の認識するように、組成物中で用いられるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の実際の量は、問題になっている選択された化合物の効力によって決まる。
【0039】
本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、市販の供給源を通じて入手してもよいし、当業者に公知の方法に従って調製してもよい。本発明で適用されるGnRHアンタゴニストは、当業者に公知の方法または本発明に記載されるプロセスを用いて調製してよい。例えば、アシリンは、米国特許第5,506,207号に記載の方法にしたがって調製することができる。
【0040】
II.安定化剤
本発明において使用する安定化剤の量は大幅に変動し得る。例えば、この量は、組成物中の個々の安定化剤、溶媒系およびその他の成分によって決まる可能性がある。一般に、安定化剤の量は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも50%が、37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持されるように、系中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるのに十分であるべきである。一部の実施形態では、安定化剤の量は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも80%が、37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持されるように、系中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるのに十分であるべきである。その他の実施形態では、ゲル化防止剤の量は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも90%が、37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持されるように、系中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるのに十分であるべきである。一部の実施形態では、組成物中の安定化剤の濃度は、組成物中の安定化剤のCMC(臨界ミセル濃度)に少なくとも等しいかまたはそれ以上である。
【0041】
A.中鎖脂肪酸およびその誘導体
一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、4〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、炭素鎖長は8〜14である。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩であり、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。但し、(i)安定化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、該6〜20炭素原子の鎖長は、カルボン酸部分の鎖長に関連し、(ii)安定化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1種類のアルコキシ基は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。もう一つの実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは室温にて固体の中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する。但し、(i)安定化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、該8〜14炭素原子の鎖長は、カルボン酸部分の鎖長に関連し、(ii)安定化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1種類のアルコキシ基は、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸のナトリウム塩であり、該中鎖脂肪酸は8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、安定化剤は室温にて固体である。もう一つの実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、およびラウリン酸ナトリウムからなる群から選択される。一実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、カプリン酸ナトリウムである。
【0042】
B.界面活性剤
一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、界面活性剤である。本明細書において使用される、用語「界面活性剤」とは、それが溶解している媒質の表面張力および/またはその他の相との界面張力を低下させ、かつ、したがって、液/気界面および/またはその他の界面で積極的に吸着される薬剤を指す。本発明で用いる界面活性剤には、両方のイオン剤、すなわち陽イオン性剤、陰イオン性剤または双性イオン剤、および非イオン性剤、またはそれらの混合物が含まれる。
【0043】
陽イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化アンモニウムジセチル、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウムおよび上記の界面活性剤の塩が挙げられる。
【0044】
陰イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、ステアロイル乳酸ナトリウム、水素添加レシチン、ラウリル硫酸ナトリウム、C8−32脂肪酸およびその塩、コール酸およびそのデオキシコール酸塩などの誘導体、およびその塩、ウルソデオキシコール酸、およびタウロコール酸、酒石酸のC8−56ジエステル、リン脂質、例えばホスファチジン酸およびホスファチジルセリン、乳酸のC5−29モノエステル、アルキル−、オレフィン−、およびアルキルアリール誘導体を含む、C8−20スルホン酸塩、トリデシル−およびドデシルベンゼンスルホン酸、ならびにC5−33サルコシンおよびベタイン誘導体が挙げられる。
【0045】
双性イオン界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、リン脂質、例えばレシチン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、およびココアムホグリシネートが挙げられる。
【0046】
非イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、ステアレス類、ポリエチレングリコール類(PEG)、ポリソルベート類(例えば、Tween 80)、セテアリルグルコシド、様々な市販のソルビタン類およびそれらの誘導体、例えば、ソルビタンヘキサステアレートエトキシレートEO6モル、ソルビタンイソステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノイソステアレートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノラウレートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノオレエートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノパルミテートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノステアレートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノステアレート(monstearate)エトキシレートEO6モル、ソルビタンオレエート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンステアレート、ソルビタンテトラオレエートエトキシレートEO30モル、ソルビタンテトラオレエートエトキシレートEO40モル、ソルビタンテトラオレエートエトキシレートEO6モル、ソルビタンテトラステアレートエトキシレートEO60モル、ソルビタントリオレエートエトキシレートEO20モル、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレートエトキシレートEO20モル、およびソルビタントリステアレート、エトキシル化ヒマシ油、C5−29モノ−グリセリド類およびそれらのエトキシル化誘導体、C15−60ジグリセリド類および1〜90のPOE基を有するそのポリオキシエチレン誘導体、長鎖脂肪酸(16以上の炭素原子を有する脂肪酸)のC10−40エステル類(アルコール中10−40個の炭素原子)、C10−40アルコール類、コレステロール、エルゴステロール、およびそれらのC2−24エステルなどのステロール類、C8−96エトキシル化脂肪酸エステル類、C14−130スクロース脂肪酸エステル類、ならびに、0〜90のPOE基を有するそのポリオキシエチレン(POE)誘導体、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ソルビトールヘキサオレエートPOE(50)が挙げられる。
【0047】
一部の実施形態では、少なくとも1種類の界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート界面活性剤(例えばポリソルベート20(Tween 20)、ポリソルベート80(Tween 80)など)、ソルビタン界面活性剤、ソルビタンモノラウレートおよびポリエトキシ化ヒマシ油およびそれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1種類の界面活性剤はポリソルベートを含む。
【0048】
III.さらなる賦形剤
本発明の一部の態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種類以上の賦形剤をさらに含む。当業者の認識するように、賦形剤の的確な選択およびそれらの相対量は、最終的な剤形に一部分依存する。一部の実施形態では、賦形剤は、速度制御ポリマー材料、希釈剤、滑沢剤、崩壊剤、可塑剤、粘着防止剤、不透明剤、色素、および香味料からなる群から選択される。
【0049】
本明細書において使用される、用語「速度制御ポリマー物質」は、本発明の固体経口剤形からのGnRH関連化合物などの薬物化合物の放出を制御または遅延させる能力のある、親水性ポリマー、疎水性ポリマーならびに親水性および/または疎水性ポリマーの混合物を含む。適した速度制御ポリマー物質としては、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ポリ(エチレン)オキシド、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、親水性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート塩、ポリ(アルキルメタクリレート)およびポリ(酢酸ビニル)からなる群から選択される物質が挙げられる。その他の適した疎水性ポリマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸に由来するポリマーおよび/または共重合体ならびにそれらの個別のエステル、ゼイン、ワックス、セラックならびに硬化植物油が挙げられる。一実施形態では、速度制御ポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸およびそれらの個別のエステルに由来するポリマーあるいはアクリル酸またはメタクリル酸およびそれらの個別のエステルに由来する共重合体を含む。もう一つの実施形態では、速度制御ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。
【0050】
一部の実施形態では、少なくとも1種類の速度制御ポリマー物質は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸およびポリメタクリル酸塩ポリマー、例えばEudragit(登録商標)の商標名(Rohm GmbH,Darmstadt,Germany)で販売されているものなど、例えば、Eudragit(登録商標)L、Eudragit(登録商標)S、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS含有物質およびそれらの混合物からなる群から選択される。これらのポリマーの一部は、薬物が放出される部位を制御する遅延放出ポリマーとして使用することができる。一部の実施形態では、速度制御ポリマーには、ポリメタクリレートポリマー、例えばEudragit(登録商標)の商標名(Rohm GmbH,Darmstadt,Germany)で販売されているものなど、例えば、Eudragit(登録商標)L、Eudragit(登録商標)S、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS含有物質およびそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
一部の実施形態では、本発明は、希釈剤をさらに含んでよい。任意の適した希釈剤を本発明で用いてよい。例示的な希釈剤としては、限定されるものではないが、製薬上許容される不活性充填剤、例えば微晶質セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、糖類、および/またはそれらの混合物などが挙げられる。希釈剤の例としては、微晶質セルロース、例えばAvicelの商標(FMC Corp.,Philadelphia,Pa.)で販売されているものなど、例えば、Avicel(商標)pH101、Avicel(商標)pH102およびAvicel(商標)pH112、ラクトース、例えばラクトース一水和物、無水ラクトースおよびPharmatose DCL21など、第二リン酸カルシウム、例えばEmcompress(登録商標)(JRS Pharma,Patterson,N.Y.)、マンニトール、デンプン、ソルビトール、スクロース、ならびにグルコースが挙げられる。一部の実施形態では、不活性充填剤は微晶質セルロースを含む。一実施形態では、不活性充填剤は、ラクトース一水和物および無水ラクトースからなる群から選択されるラクトースを含む。もう一つの実施形態では、不活性充填剤は、マンニトール、デンプン、ソルビトール、スクロース、およびグルコースからなる群から選択される糖類を含む。一実施形態では、糖類はソルビトールである。
【0052】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、滑沢剤をさらに含んでよい。任意の適した滑沢剤を本発明で用いてよい。一部の実施形態では、滑沢剤は、圧縮する粉末の流動性に作用する薬剤を含む。例示的な滑沢剤としては、限定されるものではないが、コロイド状二酸化ケイ素、例えばAerosil(商標)200、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸カルシウムが挙げられる。一部の実施形態では、滑沢剤はステアリン酸である。
【0053】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、崩壊剤をさらに含んでよい。任意の適した崩壊剤を本発明で用いてよい。例示的な崩壊剤としては、限定されるものではないが、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよび加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムデンプンならびにそれらの組合せおよび混合物が挙げられる。一部の実施形態では、崩壊剤は、クロスポビドンおよびポリビニルピロリドンから選択される。
【0054】
一部の実施形態では、上記の組成物は、エンハンサーをさらに含んでよい。エンハンサーは、当業者に公知の任意の適したエンハンサーであってよい。例示的なエンハンサーとしては、限定されるものではないが、中鎖脂肪酸塩、4〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体が挙げられる。一部の実施形態では、エンハンサーは、室温にて固体である。一部の実施形態では、エンハンサーは、中鎖脂肪酸塩、中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、炭素鎖長は8〜14である。一部の実施形態では、エンハンサーは、S−シクロデキストリン、ビタミンE TPGS、没食子酸エステル、クロスポビドン、ソルビタンエステル、ポロキサマー、またはポリオキシエチレン(olyoxyethylene)グリコール化天然もしくは硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標),BASF)である。一部の実施形態では、エンハンサーは、中鎖グリセリドまたは中鎖グリセリドの混合物である。例示的なエンハンサーは、参照により全文が援用される、米国特許公開公報第2003/0091623号、および米国特許第6,372,728号にさらに記載されている。
【0055】
IV.GnRH関連化合物の調製中の共溶媒系の適用
本明細書に記載されるGnRH関連化合物は、GnRH化合物のゲル化が低減されるような様式で共溶媒系の存在下で調製されてよい。一部の実施形態では、GnRH関連化合物の調製の最終段階は、共溶媒系の存在下で実施される。一部の実施形態では、最終段階は、公知の技法、例えば凍結乾燥、トレー乾燥、噴霧乾燥、流動床乾燥、または当業者に公知のその他の同様の技法を用いる乾燥である。
【0056】
一部の実施形態では、共溶媒系は、水および少なくとも1種類の水混和性溶媒を含む。水混和性溶媒は、限定されるものではないが、線状もしくは分枝状C1−6アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトン、ペンタン−3−オン、シクロヘキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキサン、アルコール、エチレングリコール、ジグリム、モノグリム、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物から選択することができる。ある種の実施形態では、少なくとも1種類の水混和性溶媒は、線状もしくは分枝状C1−6アルコールである。例示的な適したアルコールとしては、限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、およびヘキサノールが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも1種類の水混和性溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノールおよびtert−ブタノールからなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1種類の水混和性溶媒は、メタノール、エタノール、イソ−プロパノール、tert−ブタノール、アセトニトリル(acetoniltrile)および塩化メチレンからなる群から選択される。一部の実施形態では、本発明は、2またはそれ以上の水混和性溶媒で行われてよい。一部の実施形態では、水混和性溶媒の水に対する重量比は、約1/1000〜約99/1の範囲内である。一部の実施形態では、この重量比は約3/97〜約59/41である。
【0057】
一部の実施形態では、このプロセスは、GnRH関連化合物の調製の間に酸を添加することをさらに含む。本発明で使用される酸としては、限定されるものではないが、酢酸、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸塩(trifluoracetate)、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、およびホウ酸などが挙げられる。一般に、酸の濃度は、GnRH関連化合物の塩を調製するために十分である。一部の実施形態では、酸の濃度は、本明細書において使用されるGnRH関連化合物および酸の分子量によって決まる。一部の実施形態では、濃度は、溶液の約0.5%〜約20%の範囲内である。
【0058】
V.組成物を調製する方法
本発明の一部の態様によれば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の組成物を調製するための方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体を、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体および/またはそれらの誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤と混合することを含む。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩、中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテル、もしくは誘導体であるか、あるいは界面活性剤である。本明細書において使用される、用語「混合する」とは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体および/またはそれらの誘導体と、1以上の安定化剤によって接触させる、結合する、反応させる、および/またはコーティングすることを意味する。一実施形態では、「混合する」とは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体またはそれらの誘導体と安定化剤を組成物中で結合することを意味する。一実施形態では、GnRH関連化合物は、本明細書に記載される共溶媒系の存在下で調製される。一部の実施形態では、組成物中の安定化剤の濃度は、安定化剤の臨界ミセル濃度に等しいかまたはそれ以上である。
【0059】
VI.医薬組成物および投与
一実施形態では、本発明は、治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体、および、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む医薬組成物を提供し、この際、少なくとも1種類の安定化剤は、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩、中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテル、もしくは誘導体であるか、または界面活性剤である。もう一つの実施形態では、本医薬組成物は、製薬上許容される担体をさらに含む。用語「製薬上許容される担体」は、本明細書において、それ自体は治療薬ではないが、被験体への治療薬の送達のための媒体として使用される任意の物質を指す。
【0060】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、鼻腔、舌下、口内、膣または埋め込み式リザーバによる投与などのための製剤に適し得る。一実施形態では、組成物は、経口的に、局所に、腹腔内にまたは静脈内に投与される。本発明の組成物の滅菌注射剤形態は、水性もしくは油性の懸濁液であってよい。これらの懸濁液は、適した分散剤または湿潤剤および沈殿防止剤を用いて、当分野で公知の技法に従って処方されてよい。滅菌注射用製剤はまた、無毒の非経口的に受け入れられる希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能物質の溶液または懸濁液であってもよい。用いることのできる許容される媒体および溶媒には、水、リンゲル液および等張食塩水溶液がある。その上、滅菌した硬化油は、溶媒または懸濁媒体として慣習的に用いられている。
【0061】
一部の実施形態では、本発明で使用される組成物は、経口剤形である。一部の実施形態では、経口剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末、顆粒剤または粉末を充填したカプセル剤、液体または半固体を充填したカプセル剤、顆粒剤または粉末を充填したサシェ剤、液体、乳濁液、マイクロエマルジョン、および乳濁液を形成することのできるあらゆる組成物から選択される。一実施形態では、経口剤形は、錠剤、多粒子、またはカプセル剤であってよい。一実施形態では、本明細書に記載される中鎖脂肪酸およびその誘導体は、エンハンサーとして機能してもよい。
【0062】
一部の実施形態では、経口剤形は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体ならびに安定化剤および/またはエンハンサーの胃での放出を最小化し、故に、局所安定化剤の希釈またはその中のエンハンサーの濃度を最小化し、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体および安定化剤またはエンハンサーを腸で放出する遅延放出剤形である。一部の実施形態では、経口剤形は、遅延放出急速作用発現(rapid onset)剤形である。そのような剤形は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、その類似体または誘導体および安定化剤またはエンハンサーの胃での放出を最小化し、故に、局所安定化剤の希釈またはその中のエンハンサーの濃度を最小化するが、腸の適当な部位に到達したら迅速にペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体および安定化剤またはエンハンサーを放出し、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体および安定化剤の吸収部位での局所濃度を最大化することにより、透過性または可溶性の低いペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の送達を最大化する。
【0063】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの場合、制御放出コーティングを最終剤形(カプセル剤、錠剤、多層錠剤など)に適用してよい。一実施形態では、制御放出コーティングは、本明細書に記載される速度制御ポリマー物質を含み得る。そのようなコーティング物質の溶解特性は、pH依存性であるか、またはpHと無関係であってよい。
【0064】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、その上に腸溶コーティングを有してよい。一実施形態では、腸溶コーティングは、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸)、ポリメタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む。一部の実施形態では、腸溶性組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態であってよい。
【0065】
本明細書において用いられる用語「錠剤」には、限定されるものではないが、即時放出(IR)錠剤、持続放出(SR)錠剤、マトリックス錠剤、多層錠剤、多層マトリックス錠剤、延長放出錠剤、遅延放出錠剤およびパルス放出錠剤が含まれ、そのいずれかまたは全ては、場合により、ポリマーコーティング物質、例えば腸溶コーティング、速度制御コーティング、半透性コーティングなどを含む、1以上のコーティング物質でコーティングされてよい。用語「錠剤」には、薬物化合物をオスマジェント(osmagent)(および場合によりその他の賦形剤)と合せ、半透膜でコーティングした浸透圧送達系も含まれ、該半透膜は、それを通じて薬物化合物を放出することのできるオリフィスを規定する。本発明の実践において有用であり得る錠剤固体経口剤形としては、IR錠剤、SR錠剤、被覆IR錠剤、マトリックス錠剤、被覆マトリックス錠剤、多層錠剤、被覆多層錠剤、多層マトリックス錠剤および被覆多層マトリックス錠剤からなる群から選択される剤形が挙げられる。一部の実施形態では、錠剤剤形は、腸溶コーティング錠剤形である。一部の実施形態では、錠剤剤形は、腸溶コーティングされた急速作用発現錠剤剤形である。
【0066】
本発明の実践において有用であり得るカプセル固体経口剤形としては、即時放出カプセル剤、持続放出カプセル剤、被覆即時放出カプセル剤、および遅延放出カプセル剤を含む被覆持続放出カプセル剤からなる群から選択される剤形が挙げられる。カプセル剤は、粉末、顆粒剤、多粒子、錠剤、半固体、または液体が充填されてよい。一部の実施形態では、カプセル剤形は腸溶コーティングカプセル剤形である。一部の実施形態では、カプセル剤形は、腸溶コーティング急速作用発現カプセル剤形である。カプセルは、硬ゼラチン、軟ゼラチン、デンプン、セルロースポリマー、または当業者で公知のその他の物質で作られていてよい。
【0067】
本明細書において用いられる用語「多粒子」は、複数の個別の粒子、ペレット、ミニ錠およびそれらの混合物または組合せを意味する。経口形態が多粒子カプセル剤である場合、このような硬または軟ゼラチンカプセル剤を適切に用いて多粒子を収容することができる。一部の実施形態では、サシェを適切に用いて多粒子を収容してよい。一部の実施形態では、多粒子は、速度制御ポリマー物質を含有する層でコーティングされてよい。一部の実施形態では、本発明に従う多粒子経口剤形は、インビトロおよび/またはインビボ放出特性の異なる2以上の粒子、ペレット、またはミニ錠集団のブレンドを含み得る。例えば、多粒子経口剤形は、適したカプセル剤に収容された、即時放出成分および遅延放出成分のブレンドを含み得る。
【0068】
一部の実施形態では、多粒子および1以上の補助賦形剤物質を、多層錠剤などの錠剤形態に圧縮することができる。一部の実施形態では、多層錠剤は、同一または異なる放出特性を有する、同一または異なるレベルの同じ有効成分を含有する2つの層を含み得る。一部の実施形態では、多層錠剤は、各々の層に異なる有効成分を収容してよい。単一層かまたは多層のそのような錠剤を、場合により制御放出ポリマーでコーティングして、さらなる制御放出特性をもたらすことができる。一部の実施形態では、多粒子剤形は、遅延放出急速作用発現ミニ錠を含有するカプセル剤を含む。一部の実施形態では、多粒子剤形は、ミニ錠剤遅延放出カプセル剤を含む。一部の実施形態では、多粒子剤形は、遅延放出顆粒剤を含むカプセル剤を含む。一部の実施形態では、多粒子剤形は、即時放出顆粒剤を含む遅延放出カプセル剤を含む。
【0069】
本発明において用いられる用語「エマルジョン」は、第2の非混和性の液体の中の1種類の液体の懸濁液または分散液を意味する。一部の実施形態では、エマルジョンは、水中油型もしくは水中油中水型エマルジョンである。
【0070】
本明細書において用いられる用語「マイクロエマルジョン」は、疎水性の(油性)相および親水性の(水性)相および界面活性剤がミセル構造を形成している溶液を意味する。このような分散液は透明であり長期にわたり安定している。
【0071】
その上、本明細書において用いられる「エマルジョン」または「マイクロエマルジョン」には、疎水性または親水性の液体でそれぞれ希釈すると、乳濁液またはマイクロエマルジョンを形成する親水性または疎水性の液体が含まれる。一部の実施形態では、本明細書において用いられる「エマルジョン」、または「マイクロエマルジョン」には、高温で液体であり得る固体または半固体物質が含まれ得る。例えば、該物質は室温で固体であり得る。体温(約37℃)前後で、該物質は液体であり得る。
【0072】
あるいは、本発明の製薬上許容される組成物は、直腸投与のための坐剤の形態であってよい。坐剤は、室温で固体であるが直腸温度で液体であり、したがって直腸で溶融して薬物を放出する、適した非刺激性の賦形剤と薬剤を混合することにより調製することができる。このような物質には、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0073】
本発明の製薬上許容される組成物は、活性成分が1以上の担体に懸濁または溶解されている、局所用溶液、軟膏、またはクリームの形態であってよい。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、限定されるものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が挙げられる。局所製剤が軟膏またはクリームの形態である場合、適した担体としては、限定されるものではないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2‐オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0074】
製薬上許容される組成物が眼科用製剤である場合、それは、等張性のpH調整滅菌水溶液中の、あるいは、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を含むまたは含まない等張性のpH調整滅菌生理食塩水の溶液としての溶液中の微粉化された懸濁液であってよい。あるいは、眼科用途には、製薬上許容される組成物を軟膏の形態で処方してもよい。
【0075】
本発明の製薬上許容される組成物はまた、鼻腔エアゾールによるか、または吸入投与経路により投与されてよい。このような組成物は、医薬製剤分野で周知の技法に従って調製され、ベンジルアルコールまたはその他の適した防腐剤、バイオアベイラビリティを向上させるための吸収促進剤、フルオロ炭素、および/またはその他の従来の可溶化剤または分散剤を用いる、生理食塩水中の溶液として調製されてよい。
【0076】
また、任意の特定の患者のための具体的な投薬量および治療計画は、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与の回数、排出速度、薬物の組合せ、および治療を行う医師の判断および治療される特定の疾患の重篤度を含む、多様な要因によって決まることは当然理解される。組成物中の本発明の化合物の量も、組成物中の特定の化合物によって決まる。
【0077】
VII.治療および使用方法
本発明の別の態様は、該状態に罹患している患者に本出願に記載される医薬組成物を投与することを含む、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体により治療可能な医学的状態の治療方法を提供する。本明細書において使用される医学的状態としては、限定されるものではないが、ヒトまたは動物被験体における、真性糖尿病、アルツハイマー、自己免疫疾患、結腸癌、性ホルモン依存性疾患、例えば、良性前立腺過形成、前立腺癌、エストロゲン依存性乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌、子宮内膜症および思春期早発症、および避妊が挙げられる。
【0078】
さらに、別の実施形態は、該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体および/またはそれらの誘導体により治療可能な医学的状態の治療のための薬物の製造における、本出願に記載される医薬組成物の使用を提供する。
【0079】
本明細書に記載される全ての実施形態の組合せも本発明で想定されることは当然理解される。
【0080】
これから本発明を、以下の実施例を参照してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は説明目的のために与えられるものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではない。
【0081】
[実施例]
1.アシリンの調製中の共溶媒の適用
(1)アシリンバッチの調製
アシリンの調製の最後の段階である凍結乾燥手順における変化を要約する、6種類の相異なるアシリンバッチが図1に記載される。ロットXF173/315−125、XF185/165−133およびXF173/315−151Aに関して、凍結乾燥段階で共溶媒系が使用される。水は、その他のバッチの溶媒として使用される。バッチおよび関連する凍結乾燥溶媒も図1に説明される。アシリンは、当業者に公知の方法、例えば米国特許第6,747,125号、または本出願中に記載されるプロセスに従って調製されることができる。
【実施例1】
【0082】
プロピレングリコール中の相異なるアシリンバッチのゲル化の調査を行い、結果を図2に要約する。アシリンサンプルの9%および16.7%は、図1に記載されるアシリンバッチを使用することにより調製される。XF173/315−125、XF185/165−133およびXF173/315−151Aの9%アシリンサンプルは、凍結乾燥段階の間に共溶媒を用いて調製されるアシリンを使用することにより調製される。XF173/315−125、XF185/165−133およびXF173/315−151Aのアシリンバッチは、2時間後に透明かつ非粘稠に見える。水を溶媒として使用することにより凍結乾燥されたその他のバッチは、ゲル状のアシリンの存在に起因して透明かつ非粘稠な溶液として現れなかった。
【実施例2】
【0083】
水中の相異なるアシリン薬物バッチのゲル化を調べ、結果を図3に要約する。0.5%および1%アシリンサンプルは、図1に記載されるアシリンバッチを使用することにより調製される。凍結乾燥段階中に共溶媒を使用することにより調製されるXF173/315−125、XF185/165−133およびXF173/315−151Aの0.5%および1%のアシリンサンプルは、水に溶解させると透明かつ非粘稠に見える。
【実施例3】
【0084】
標準化したマイクロエマルジョン(SM)中の相異なるアシリンバッチのゲル化傾向を調べる。結果は図4(a)に要約される。標準化したマイクロエマルジョンの製剤を図4(b)に示す。アシリンのマイクロエマルジョン中5mgおよび10mg製剤は、図1中で合成されたアシリンロットを用いて調製される。凍結乾燥段階中に共溶媒を使用することにより調製されるXF173/315−151Aのアシリンバッチの5mgおよび10mg用量は、2時間後にクリアで透明(clear and transparent)に見えた。
【0085】
2.アシリン組成物の処方におけるゲル化防止剤の適用
比較実験の一般的手順
相異なる濃度のアシリン組成物を、アシリンをpH6.8緩衝液に室温かまたは37℃のいずれかで添加することにより調製する。全てのアシリン溶液は、0.6mg/mLカプリン酸ナトリウムを含有する(カプリン酸ナトリウムは、図面中でC10と称される)。分析に先立ち、全てのサンプルを遠心し、濾過する。サンプルは、UV検出を伴う逆相HPLCにより分析する。
【実施例4】
【0086】
10mgアシリンを200mLメスフラスコに移す。pH6.8緩衝液を37℃に予熱する。次に、100mLの予熱した緩衝液および0.6mg/mLのカプリン酸ナトリウムをフラスコに添加して、0.1mg/mLのアシリンサンプルを調製する。同様の様式で、Tween 80を添加して、1% Tween 80を含む0.1mg/mLのアシリン溶液を調製する。サンプルを、37℃に温度制御された水浴中で振盪する。アシリンと緩衝液を混合した1、5、10、15、20、30および120分後に5mLのサンプルを採取する。サンプルを0.45μmフィルターに通して直ちに濾過し、最初の3mLを廃棄する。濾過したサンプルを、希釈せずにUV検出を伴う逆相HPLCにより分析する。全てのサンプルを二重反復で調製し、二重反復の平均から分析のための濃度を得た。0.1mg/mLのアシリンサンプルで1%および0%のTween 80を比較した結果を、図5にグラフを使って記録する。これらの結果は、CMCよりも低い濃度のカプリン酸ナトリウム単独が、アシリンのゲル化を低減させるには不十分であることを示す。1% Tween 80を添加することにより、ゲル化は首尾よく低減される。
【実施例5】
【0087】
実施例4と同様の試験手順を用いて、実施例5用のアシリンサンプルを調製する。0.6mg/mLのカプリン酸ナトリウムおよび0.1mg/mLのアシリンを含有するリン酸緩衝液中、5mg/mL、1.0mg/mL、0.1mg/mL、および0.1%のTweenを比較した結果を、図6にグラフを使って記録する。これらの結果は、1% Tween 80溶液だけがアシリンのゲル化を完全に阻害し得ることを示す。
【実施例6】
【0088】
実施例4と同様の試験手順を用いて、実施例6用のアシリンサンプルを調製する。0.1および0.01mg/mLのアシリンサンプル中、1%および1mg/mLのTween 80を比較した結果を、図7にグラフを使って記録する。これらの結果は、1% Tween 80が、0.1mg/mLおよび0.01mg/mLの両方のアシリンサンプルのゲル化を低減することを示す。
【実施例7】
【0089】
実施例4と同様の試験手順を用いて、実施例7用のアシリンサンプルを調製する。0.1%、0.5%および1% Tween 80を有する0.01mg/mLのアシリンサンプルを比較した結果を、図8にグラフを使って記録する。これらの結果は、1% Tween 80を含むアシリンサンプルがゲル化を著しく低減することを示す。
【実施例8】
【0090】
3.カプリン酸ナトリウム(C10)の水中アシリンのゲル化傾向への影響
図9は、様々な濃度のカプリン酸ナトリウム(C10)の水中のアシリンのゲル化への影響をグラフによって示す。カプリン酸ナトリウムの濃度が10mg/mLより低い場合、アシリンの回収率は大幅に低下し、これはアシリンのゲル化の増大を暗に示す。本発明の研究者らは、ゲル化の増大は、カプリン酸ナトリウムの添加により引き起こされるイオン濃度の増大に起因すると考える。しかし、カプリン酸ナトリウムの濃度がカプリン酸ナトリウムのCMC(約20mg/mL)に達するかそれを上回る場合、アシリンの回収率に、突然かつ大幅な増大があることが観察され、ゲル化の効果的な低減が示される。カプリン酸ナトリウムのCMCは100mM(約20mg/mL)として公知である。(「kinetic studies of the interaction of fatty acids with phosphatidylcholine vesicles(liposomes),Rogerson et al.,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces,48,24−34(2006)参照)。カプリン酸ナトリウムの濃度が約50mg/mLに達すると、アシリンの回収率はほぼ100%であり、ゲル化が完全に阻害されていることが示される。
【実施例9】
【0091】
4.相異なるアシリンサンプルの様々なマイクロエマルジョン製剤でのゲル化防止剤の適用
図11は、イヌにおけるアシリンの様々な製剤の相対的なバイオアベイラビリティをグラフによって示す。相対的なバイオアベイラビリティは、アシリンの様々な製剤の絶対的バイオアベイラビリティと、アシリンの標準的な製剤(ゲル化防止剤を全く含まない製剤)の絶対的バイオアベイラビリティを比較することにより測定される。マイクロエマルジョン1(M1/55% Capmul MCM)、マイクロエマルジョン2(M2/45% Capmul PG−8)、およびマイクロエマルジョン3(M3/55% Capmul MCM C10)の製剤を図10(a)〜(c)に説明する。標準的な溶液の処方は、5mgアシリン、550mgカプリン酸ナトリウムおよび5mL精製水である。図10および図11中の「C10」は、カプリン酸ナトリウムを表す。図10および図11中の「SLS」は、ラウリル硫酸ナトリウムを表す。図11の比較結果は、ゲル化防止剤、例えばカプリン酸ナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウムなどを含む全ての製剤が、アシリンのバイオアベイラビリティを7.8倍から32.5倍まで増大させることを示す。
【実施例10】
【0092】
図12は、相対的バイオアベイラビリティの(1)10mgアシリン腸溶錠と増強されていない(unenhanced)5mgアシリン溶液サンプルの対比、および(2)10mgアシリン腸溶錠と5mgアシリン標準サンプルの対比をグラフによって示す。アシリン標準サンプルの処方は、5mgアシリン、550mgカプリン酸ナトリウムおよび5mL精製水である。錠剤および5mgアシリンサンプル中のアシリンは、水を溶媒として用いる凍結乾燥段階を用いて調製される。錠剤には、5mgアシリンサンプルと同じ量のカプリン酸ナトリウムが収容された。110mg/mLというカプリン酸ナトリウム濃度は、阻害する溶液中のゲル化を低減するかまたは阻害さえし、かつ、アシリン溶液のバイオアベイラビリティを増強するために十分であることが観察される。図12は、増強された錠剤のバイオアベイラビリティが、増強されていない錠剤と比較して大幅に改良されていることを実証する。
【実施例11】
【0093】
5.インスリンサンプルにおけるカプリン酸ナトリウムおよびカプリン酸の適用
カプリン酸ナトリウム(C10)およびカプリン酸のウシインスリンの安定性への効果を評価する調査を行う。この調査では、29U/mgの効力をもつウシインスリンを用いて、リン酸緩衝液(pH8)中の10U/mL溶液(344.83mg/Lの溶液)を調製する。200mL容器を使用して、適切な量のC10をインスリン溶液の100mLアリコートに添加する。インスリン溶液だけを含有する2本の瓶を対照として使用する。3gのC10を瓶3および瓶4に添加し、6gのC10を瓶5および瓶6に添加し、3gのカプリン酸を瓶7および瓶8に添加し、6gのカプリン酸を瓶9および瓶10に添加する。これらの瓶を穏やかに回旋させ、6mLアリコートを各々の瓶からT=0サンプル用に取り出す。これらのサンプルを濾過し(Millex−HV 0.45μm)、最初の5mlの濾液を廃棄する。適切な試験溶液を攪拌し、6時間、24時間などのさらなるサンプルを全ての試験溶液から回収する。濾過後の溶液中のウシインスリンの量を、標準品(200mlの0.01N HCl中70mg)と対照して決定する。
【0094】
インスリン溶液を一定時間静置した後の未変化のインスリンの回収率を、表2および表3に記録し、図13(a)および(b)でグラフによって示す。カプリン酸ナトリウムを含むインスリン溶液は、カプリン酸ナトリウムを含まないインスリンサンプルまたはカプリン酸を含む溶液よりも有意に安定性が高いことが観察される。カプリン酸ナトリウムを含有するインスリンサンプルについて、溶液を37℃にて少なくとも約24時間静置した後、少なくとも90%のインスリンが回収される。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
前述の内容は本発明を例証し、それを限定すると解釈されるものではない。本発明の少数の例示的な実施形態が記載されたが、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正が可能であることを当業者は容易に認識する。したがって、全てのこのような修正は、特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内に含まれることが意図される。そのため、前述の内容は本発明を例証し、開示される具体的な実施形態に限定されると解釈されるものでないこと、および開示される実施形態、ならびにその他の実施形態に対する修正は、添付される特許請求の範囲の範囲内に含められることが意図されることは当然理解される。本発明は、以下の特許請求の範囲とその中に含まれる特許請求の範囲の相当物により定義される。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第35条119(e)項のもと、2008年5月7日出願の米国特許仮出願第61/051,038号の利益を主張し、その開示は参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の組成物、およびそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
さまざまな生物活性ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質が、医学的処置に幅広く使用されている。医学的処置の大部分に関して、安定な治療効果をもたらすために持続的なレベルの生物活性ペプチドまたはタンパク質を動物またはヒトに送達する必要性がある。その上、生物活性ペプチドまたはタンパク質はまた、長期間貯蔵されてもなおその活性を維持する必要もある。しかし、多くの天然に存在する、かつ合成されたペプチドおよびタンパク質ならびにそれらの類似体は、ゲル、凝集体、フィブリル、二量体、他のポリマー、凝固物(coagulates)などを形成する傾向を示している。一部の例では、形成された物質は、活性モノマー形態に逆戻りすることが可能であり得る。他の例では、変化した状態は永久的であり、劣化した状態を示す可能性がある。一部の例示的な生物活性ペプチドには、インスリン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)およびゴナドトロピン−放出ホルモン(GnRH)類似体が含まれる。ペプチドの不安定性は、これらのペプチドの調製、プロセス、貯蔵および送達の重大な障壁となっている。
【0004】
これまで、ペプチドまたはタンパク質の溶液を安定化させるために使用することのできる、少数の方法が見出されている。例えば、米国特許第6,124,261号には、ペプチドを安定化させるために使用することのできる非水性、極性、非プロトン性ペプチド製剤が記載されている。別の例では、クエン酸緩衝剤を用いて脂肪酸アシル化タンパク質のゲル化を低減させることができる。米国特許第5,631,347号を参照されたい。
【0005】
しかし、生物活性ペプチドおよびタンパク質の多様性に起因して、改良された安定性をもつペプチドまたはタンパク質の新規な組成物およびペプチドまたはタンパク質の組成物を調製する方法を発見する継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体、および、溶液中の該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む組成物を提供し、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいはエステル、エーテル、または約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸の誘導体であるか、あるいは界面活性剤である。一部の実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、インスリン、あるいはその類似体または誘導体である。一実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、グルカゴン様ペプチド(GLP)、あるいはその類似体または誘導体である。もう一つの実施形態では、安定化剤は、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウムおよびラウリン酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0007】
本発明のもう一つの態様によれば、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の組成物の調製のための方法が提供される。一部の実施形態では、該方法は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体を、該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤と混合することを含み、該安定化剤は、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩、あるいはそのエステル、そのエーテル、またはその中鎖脂肪酸の誘導体である。一実施形態では、安定化剤は、約8〜約14炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩である。
【0008】
以下の図面は本明細書の一部をなし、本発明の特定の態様をさらに明示するために含められる。本発明は、本明細書に記載される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1以上を参照することによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】異なるアシリンバッチの調製を説明する図である。
【図2】プロピレングリコール中の異なるアシリンバッチの9%および16.7%アシリンサンプルの外観を示す図である。
【図3】水中の異なるアシリンバッチの0.5%および1%アシリンサンプルの外観を示す図である。
【図4(a)】異なるアシリンバッチの5mgおよび10mg用量のアシリンマイクロエマルジョンの外観を示す図である。
【図4(b)】マイクロエマルジョンの製剤を示す図である。
【図5】1%および0% Tween 80を含む0.1mg/mL アシリンサンプルのゲル化の比較結果をグラフによって示す図である。
【図6】5mg/mL、1mg/mL、0.1mg/mLおよび1% Tween 80を有する0.1mg/mL アシリンサンプルのゲル化の比較結果をグラフによって示す図である。
【図7】1%および1mg/mL Tween 80を有する0.1および0.01mg/mL アシリンサンプルのゲル化の比較結果をグラフによって示す図である。
【図8】0.1%、0.5%および1% Tween 80を有する0.01mg/mL アシリンサンプルのゲル化の比較結果をグラフによって示す図である。
【図9】カプリン酸ナトリウムの濃度とアシリンのゲル化との間の相関関係をグラフによって示す図である。
【図10(a)】1〜55% Capmul MCMマイクロエマルジョン製剤を説明する図である。
【図10(b)】2〜45% Capmul PG−8マイクロエマルジョン製剤を説明する図である。
【図10(c)】3〜55% Capmul MCM C10マイクロエマルジョン製剤を説明する図である。
【図11】アシリンの異なる製剤の相対的なバイオアベイラビリティの比較結果をグラフによって示す図である。
【図12】(1)10mgアシリン腸溶錠に対する、界面活性剤を含まないアシリンサンプル、および(2)10mgアシリン腸溶錠に対する、カプリン酸ナトリウムを含む5mgアシリンサンプルの、相対的なバイオアベイラビリティの比較結果をグラフによって示す図である。
【図13(a)】カプリン酸ナトリウムを含むまたは含まないインスリン製剤についてインスリンの回収率の相関関係を説明する図である
【図13(b)】カプリン酸を含むインスリン製剤からのインスリンの回復率を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明の前述のおよびその他の態様を、本明細書に記載される説明および方法に関してこれからより詳細に説明する。本発明は様々な形態に具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきでないことは、当然理解される。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0011】
本明細書において言及される全ての特許、特許出願および刊行物は、参照によりその全文が援用される。用語法において矛盾のある場合は、本明細書に準拠する。
【0012】
本明細書における本発明の説明で使用される用語法は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであって、本発明を限定するものではない。本発明の実施形態および添付される特許請求の範囲の説明において使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに示されている場合を除き、複数形も同様に含むものとする。また、本明細書において、「および/または」とは、関連する列挙項目の1以上の任意の全ての可能性のある組合せを指し、包含する。さらに、化合物、用量、時間、温度などの測定可能な値を言及する場合に本明細書において使用される用語「約」は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらに0.1%の変動を包含することを意味する。別に定義されない限り、説明で使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明の属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0013】
本明細書において使用される、「アルコール」は、1以上のヒドロキシル(OH)基が、水素(H)原子の代わりに炭素(C)原子に結合している有機化合物を意味する。一部の実施形態では、アルコールは1〜6個の炭素原子を含有する。さらに、その他の実施形態では、アルコールは1〜4個の炭素原子を含有する。例示的なアルコールとしては、限定されるものではないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールが挙げられる。
【0014】
本明細書において使用される、「ゲル化」は、関心対象の化合物が凝集を受けて、フィブリル、二量体、長いポリマー、凝固物、あるいは結果としてコロイド構造またはゲルの形成をもたらし得る構造を形成することを意味する。本出願で使用される混合物の粘度は、水溶液または固体塊中の関心対象の化合物に適用され得る。
【0015】
「ゲル化」は、様々な程度に起こってよく、通常の手段で検出できないような様式で起こってよい。例えば、粘度の増加も、溶液の流量特性の変化もない場合がある。しかし、ゲル化から生じた物質(以降「ゲル」)は、濾過などの物理的手段により除去することができ、したがって当業者に公知の分析技術により見出すことができる。ゲルの存在は、異なる投与形態の開発の際に重大な問題を引き起こす可能性がある。例えば、原体製造技術の一環としてゲル状の系を加工して薬物の粉末を得る場合、その工程中にキセロゲルが形成される可能性がある。本明細書において使用される、「キセロゲル」は、ゲル状の系から液体が除去された後にゲルから生じた固体である。キセロゲルを含有するゲル状の系から得られる粉末は、ゲル状の物質を含有しない溶液から得られる粉末とは実質的に異なる特性を有する可能性がある。場合によっては、得られる粉末(power)は生物活性を失う。そのため、ゲルの形成は、原体加工段階か、あるいは剤形を調製する段階または貯蔵段階のいずれかで有害な影響を引き起こす可能性を秘めている。
【0016】
ゲルの形成をもたらす凝集または融合(coalescence)の程度は、当業者に公知の様々な方法、例えばマイクロまたはマクロ濾過に続いて濾液のアッセイ、遠心分離に続いて上清のアッセイ、あるいは、可視もしくは紫外線法またはレーザーに基づく方法を利用するものを含む様々な光吸収または光回折法により測定することができる。表面張力、凝固点降下、粘度、またはその他の束一的な特性の測定などの液体の物理的な特性を測定する方法も使用してよい。キセロゲル形成の程度は、物質を水中に分散させ、本明細書に記載される技法を用いることによるか、あるいは、X線粉末回折、IR分光法、または粉末状の物質に行うことのできる当分野に公知のその他の方法を含む、当業者に公知の方法によって粉末を直接測定することにより測定することができる。
【0017】
本明細書において使用される、用語「ゲル化を低減させる」とは、化合物のゲル形成を中断する、遅らせる、または排除することを意味する。ゲル化が可逆性の状況では、用語「ゲル化を低減させる」は、ゲルを、生物活性を維持する化合物のモノマー形態に逆転させることも意味する。本明細書において使用される、用語「ゲル化防止剤」とは、十分な量のゲル化防止剤が使用される場合に、関心対象の化合物の少なくとも50%のゲル化を阻害することのできる薬剤、化合物、組成物またはそれらの組合せを指す。一部の実施形態では、ゲル化防止剤は、十分な量のゲル化防止剤が使用される場合に、関心対象の化合物の少なくとも80%のゲル化を阻害することができる。一部の実施形態では、ゲル化防止剤は、十分な量のゲル化防止剤が使用される場合に、関心対象の化合物の少なくとも90%のゲル化を阻害することができる。
【0018】
本明細書において使用される、「治療上効果のある」または「治療上許容される」量とは、被験体において治療上有用な応答を誘発する量を指す。治療上有用な応答は、被験体における少なくとも1種類の臨床症状のいくらかの軽減、緩和、または低下を提供し得る。当業者は、いくらかの利益が被験体に提供される限り、治療上有用な応答は完全または治癒的である必要のないことを認識する。一部の実施形態では、被験体は動物である。一部の実施形態では、被験体はヒトである。
【0019】
本明細書において使用される、用語「水混和性溶媒」は、水と混合されて溶液を形成することのできる溶媒を意味する。水混和性溶媒は、親水性相を作り出すために用いてよい。
【0020】
本発明は、治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、その類似体または誘導体、および、該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、その類似体または誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる組成物を提供する。本明細書において使用される、「安定化剤」は、本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、その類似体または誘導体の安定性を向上させる薬剤である。
【0021】
一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは中鎖脂肪酸のエステル、エーテル、または誘導体であり、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、界面活性剤である。
【0022】
本発明は、貯蔵され、加工され、かつ/または治療のために投与されるのに十分な時間、本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を維持する組成物を提供する。安定性を測定する1つの方法としては、特定の条件下で保持されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の割合を測定することである。本明細書において使用される、用語「ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が保持される」は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が、ゲル、凝集体、フィブリル、二量体、他のポリマー、凝固物を形成せず、むしろそれは一定期間の後、モノマーとして維持されるかまたはその生物活性を維持することをを意味する。一実施形態では、本発明の組成物において、ペプチド、ポリペプチドタンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも約50%が、約37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持される。一部の実施形態では、本発明の組成物において、ペプチド、ポリペプチドタンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも約80%が、約37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持される。一部の実施形態では、本発明の組成物において、ペプチド、ポリペプチドタンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも約90%が、約37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持される。一部の実施形態では、本発明の組成物において、ペプチド、ポリペプチドタンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも約95%が、約37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持される。一部の実施形態では、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体のゲル化が低下した場合に、安定性が改良されている。
【0023】
本明細書に記載される組成物は、貯蔵、加工または投与に直接使用してよい。あるいは、組成物は、貯蔵、加工または投与に適した媒質(例えば、溶媒、マイクロエマルジョンまたは固体塊)と混合して使用してもよい。媒質を使用する状況では、媒質中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性は、本明細書に記載されるように改良される。
【0024】
一部の実施形態では、安定化剤はゲル化防止剤である。一実施形態では、本発明は、治療上有効な量の1以上のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体、および、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体のゲル化を低減させる十分な量の少なくとも1種類のゲル化防止剤を含む、組成物を提供する。
【0025】
一実施形態では、組成物中の安定化剤と、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の溶解速度は、実質的に同じである。
【0026】
I.ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体および誘導体
本発明は、凝集、二量体化、重合、凝固、ゲル化またはフィブリル化する傾向を有する、あらゆるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体に適用することができる。これらのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のいずれかの類似体、誘導体、及び製薬上許容される塩は、これらの用語に含められる。本明細書において使用される、「凝集、二量体化、重合、凝固、ゲル化またはフィブリル化する傾向」とは、関心対象の化合物の少なくとも50%が、その系を一定時間(例えば少なくとも約24時間)静置した後に、凝集を受けて、特定の温度(例えば37℃)にてその系内でフィブリル、二量体、凝固するポリマー、または、結果としてコロイド構造またはゲルの形成を生じることのできる構造を形成することを指す。
【0027】
一部の実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、インスリンあるいはその類似体または誘導体である。
【0028】
一実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、グルカゴン様ペプチド(GLP)、あるいはその類似体または誘導体である。もう一つの実施形態では、少なくとも1種類のGLPは、GLP−1、GLP−1類似体、GLP−1誘導体、GLP−2、GLP−2類似体、GLP−2誘導体、およびエキセンディン−4、エキセンディン−4類似体およびエキセンディン−4誘導体からなる群から選択される。
【0029】
より多くの例示的なペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体としては、限定されるものではないが、GnRHアゴニストおよびアンタゴニスト、ソマトスタチン、ACTH、コルチコトロピン放出因子、アンジオテンシン、カルシトニン、胃抑制ペプチド、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、下垂体アデニル酸、エキセンディン、エキセンディン−3、シクラーゼ活性化ペプチド、セクレチン、エンテロガストリン(enterogastrin)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、トロンボポエチン、エリスロポエチン、視床下部放出因子、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、エンドルフィン、エンケファリン、バソプレシン、オキシトシン、オピオイドおよびその類似体、スーパーオキシドジスムターゼ、インターフェロン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、リボヌクレアーゼ、FVII、FXIII、FVIIとFXIIIの混合物、IL−20、IL−21、IL−28a、IL−29、IL−31、それらの類似体および誘導体が挙げられる。
【0030】
一部の実施形態では、少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、ゲル化傾向のある多様なGnRH関連化合物を含む。本明細書において使用される、「ゲル化傾向」とは、化合物の少なくとも50%が、その系を一定時間(例えば少なくとも約2時間)静置した後に、凝集を受けて、特定の温度(例えば37℃)にてその系内でフィブリル、二量体、凝固するポリマー、または、結果としてコロイド構造またはゲルの形成を生じることのできる構造を形成することを指す。本明細書において使用される、GnRH関連化合物には、GnRHアンタゴニストとGnRHアゴニストの両方が含まれる。一部の実施形態では、本発明はGnRHアンタゴニストに適用することができる。一部の実施形態では、本発明には、限定されるものではないが、以下のGnRHアンタゴニスト、アシリン(Ac−D2Nal−D4Cpa−D3Pal−Ser4Aph(Ac)−D4Aph(Ac)−Leu−ILys−Pro−DAla−NH2)、アセチル−β−[2−ナフチル]−D−Ala−D−p−クロロ−Phe−β−[3−ピリジル]−D−Ala−Ser−Nε−[ニコチノイル]−Lys−Nε−[ニコチノイル]−D−Lys−Leu−Nε−[イソプロピル]−Lys−Pro−D−Ala−NH2(本明細書においてアンチド(Antide)とも称する)、アセチル−D2Nal1、D4C1Phe2、D3Pal3、ARg5、Dglu6(AA)(本明細書においてNalGluとも称する)、アセチル−D2Nal−D4CIPhe−D3Pal−Ser−Aph(Ac)−D−Aph(Ac)−Leu−Lys(lpr)−Pro−D−Ala−NH2、アバレリックス(Specialty European Pharma,Dusseldorf,Germany)、Nal−Lys、シナレル(Synarel)、(Searle Peapack,N.J.)、ガニレリクス(Orgalutron/Antagon)(Organan,West Orange,N.J.)、セトロレリクスI(Aeterna Zentaris Inc,Frankfurt,Germany)、セトロタイド、アザリンB、5位および6位にp−ウレイド−フェニルアラニンを組み込む次世代長時間作用型GnRH類似体(デガレリクスなど)、FE200486、Ac−D2Nal−D4Cpa−D3Pal−Ser−4Aph(L−ヒドロオロチル(hydoorotyl))−D4Aph(カルバモイル(carbarnoyl))−Leu−ILys−Pro−DAla−NH2(その酢酸塩はFE200486)、Ac−D2Nal−D4Cpa−D3Pal−Ser−4Aph(Atz)−D4Aph(Atz)−Leu−ILys−Pro−DAla−NH2(この際、Atzは3’−アミノ−1H−1’,2’,4’−トリアゾール−5’−イルである)、ならびに、米国特許第5506,207号、同第5,821,230号、同第5,998,432号、同第6,156,772号、同第6,156,767号、同第6,150,522号、同第6,150,352号、同第6,147,088号、同第6,077,858号、同第6,077,847号、同第6,025,366号、同第6,017,944号、同第6,004,984号、同第6214,798号、および同第6,875,843号に記載されるアンタゴニストが含まれる。一部の実施形態では、本発明のGnRHアンタゴニストは、イオンの存在下でゲル化する傾向を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類のGnRHアンタゴニストは、アシリン、アバレリックス、アザリンB、セロトレリクス、ガニレリクス、テベレリクス、デガレリクス、アンチド、オルンチド(orntide)および米国特許第7,098,305号に記載のGnRHアンタゴニストからなる群から選択される。
【0031】
一実施形態では、少なくとも1種類のGnRHアンタゴニストは、アバレリックス、セロトレリクス、デガレリクス、ガニレリクス、およびそれらの製薬上許容される塩からなる群から選択される。
【0032】
本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される、用語「アバレリックス」とは、式Iの構造を有する化合物を指す。
【化1】
式IのIUPAC名は、アセチル−D−β−ナフチルアラニル−D−4−クロロフェニルアラニル−D−3−ピリジルアラニル−L−セリル−L−N−メチル−チロシル−D−アスパラギニル−L−ロイシル−L−N(e)−イソプロピル−リシル−L−プロリル−D−アラニル−アミドである。用語「アバレリックス」には、式Iの化合物、その製薬上許容される塩、およびこれらの平衡混合物が含まれる。用語「アバレリックス」には、式Iの化合物の結晶形、水和もしくは溶媒和結晶形、および非晶質形ならびにそれらの製薬上許容される塩も含まれる。
【0033】
本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される、用語「セトロレリクス」とは、式IIの構造を有する化合物を指す。
【化2】
式IIのIUPAC名は、アセチル−D−3−(2’−ナフチル)−アラニン−D−4−クロロフェニルアラニン−D−3−(3’−ピリジル)−アラニン−L−セリン−L−チロシン−D−シトルリン(citruline)−L−ロイシン−L−アルギニン−L−プロリン−D−アラニン−アミドである。用語「セトロレリクス」には、式IIの化合物、それらの製薬上許容される塩、およびこれらの平衡混合物が含まれる。用語「セトロレリクス」には、式IIの化合物の結晶形、水和もしくは溶媒和結晶形、および非晶質形ならびにそれらの製薬上許容される塩も含まれる。
【0034】
本明細書および請求項を通じて使用される、用語「デガレリクス」とは、式IIIの構造を有する化合物を指す。
【化3】
式IIIのIUPAC名は、N−アセチル−3−(ナフタレン(naphtalen)−2−イル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(ピリジン−3−イル)−D−アラニル−L−セリル−4−((((4S)−2,6−ジオキソヘキサヒドロピリミジン−4−イル)カルボニル)アミノ)−L−フェニルアラニル−4−(カルバモイルアミノ)−D−フェニルアラニル−L−ロイシル−N6−(1−メチルエチル)−L−リシル−L−プロリル−D−アラニンアミドである。これはFE−200486としても公知である。用語「デガレリクス」には、式IIIの化合物、それらの製薬上許容される塩、およびこれらの平衡混合物が含まれる。用語「デガレリクス」には、式IIIの化合物の結晶形、水和もしくは溶媒和結晶形、および非晶質形ならびにそれらの製薬上許容される塩も含まれる。
【0035】
本明細書および特許請求の範囲を通じて使用される、用語「ガニレリクス」とは、式IVの構造を有する化合物を指す。
【化4】
式IVのIUPAC名は、(2S)−1−[(2S)−2−[[(2S)−2−[[(2R)−2−[[(2R)−2−[[(2S)−2−[[(2R)−2−[[(2R)−2−[[(2R)−2−アセトアミド−3−ナフタレン−2−イルプロパノイル]アミノ]−3−(4−クロロフェニル)プロパノイル]アミノ]−3−ピリジン−3−イルプロパノイル]アミノ]−3−ヒドロキシプロパノイル]アミノ]−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノイル]アミノ]−6−[ビス(エチルアミノ)メチリデンアミノ]ヘキサノイル]アミノ]−4−メチルペンタノイル]アミノ]−6−[ビス(エチルアミノ)メチリデンアミノ]ヘキサノイル]−N−[(2R)−1−アミノ−1−オキソプロパン−2−イル]ピロリジン−2−カルボキサミドである。用語「ガニレリクス」には、式IVの化合物、それらの製薬上許容される塩、およびこれらの平衡混合物が含まれる。用語「ガニレリクス」には、式IVの化合物の結晶形、水和もしくは溶媒和結晶形、および非晶質形ならびにそれらの製薬上許容される塩も含まれる。
【0036】
一部の実施形態では、本発明は、ゲル化傾向を有するGnRHアゴニストに適用することができる。例示的なGnRHアゴニストとしては、限定されるものではないが、ヒストレリン(histerelin)、ロイプロリドおよびゴセレリンが挙げられる。
【0037】
用語「GnRH関連化合物」、「GnRHアンタゴニスト」および「GnRHアゴニスト」には、その立体異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ混合物、ならびに誘導体、例えば、塩、酸、エステルなどを含む、そのすべての形態が含まれる。化合物は、固体、液体、溶液、懸濁液などを含む任意の適した相状態で提供されてよい。固体微粒子形態で提供される場合、粒子は任意の適したサイズまたは形態であってよく、1以上の結晶形、半結晶形および/または非晶質形が想定され得る。
【0038】
本発明で使用されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、治療効果を誘発するために十分な任意の量で存在してよく、適用される場合には、実質的に1種類の光学的に純粋な鏡像異性体の形態で、または鏡像異性体の混合物、ラセミとしてまたは別の方法のいずれかで存在してよい。当業者の認識するように、組成物中で用いられるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の実際の量は、問題になっている選択された化合物の効力によって決まる。
【0039】
本明細書に記載されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体は、市販の供給源を通じて入手してもよいし、当業者に公知の方法に従って調製してもよい。本発明で適用されるGnRHアンタゴニストは、当業者に公知の方法または本発明に記載されるプロセスを用いて調製してよい。例えば、アシリンは、米国特許第5,506,207号に記載の方法にしたがって調製することができる。
【0040】
II.安定化剤
本発明において使用する安定化剤の量は大幅に変動し得る。例えば、この量は、組成物中の個々の安定化剤、溶媒系およびその他の成分によって決まる可能性がある。一般に、安定化剤の量は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも50%が、37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持されるように、系中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるのに十分であるべきである。一部の実施形態では、安定化剤の量は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも80%が、37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持されるように、系中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるのに十分であるべきである。その他の実施形態では、ゲル化防止剤の量は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも90%が、37℃にて少なくとも約24時間組成物を静置した後に保持されるように、系中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるのに十分であるべきである。一部の実施形態では、組成物中の安定化剤の濃度は、組成物中の安定化剤のCMC(臨界ミセル濃度)に少なくとも等しいかまたはそれ以上である。
【0041】
A.中鎖脂肪酸およびその誘導体
一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、4〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、炭素鎖長は8〜14である。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩であり、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。但し、(i)安定化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、該6〜20炭素原子の鎖長は、カルボン酸部分の鎖長に関連し、(ii)安定化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1種類のアルコキシ基は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。もう一つの実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸塩、あるいは室温にて固体の中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する。但し、(i)安定化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、該8〜14炭素原子の鎖長は、カルボン酸部分の鎖長に関連し、(ii)安定化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1種類のアルコキシ基は、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、中鎖脂肪酸のナトリウム塩であり、該中鎖脂肪酸は8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、安定化剤は室温にて固体である。もう一つの実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、およびラウリン酸ナトリウムからなる群から選択される。一実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、カプリン酸ナトリウムである。
【0042】
B.界面活性剤
一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、界面活性剤である。本明細書において使用される、用語「界面活性剤」とは、それが溶解している媒質の表面張力および/またはその他の相との界面張力を低下させ、かつ、したがって、液/気界面および/またはその他の界面で積極的に吸着される薬剤を指す。本発明で用いる界面活性剤には、両方のイオン剤、すなわち陽イオン性剤、陰イオン性剤または双性イオン剤、および非イオン性剤、またはそれらの混合物が含まれる。
【0043】
陽イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化アンモニウムジセチル、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウムおよび上記の界面活性剤の塩が挙げられる。
【0044】
陰イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、ステアロイル乳酸ナトリウム、水素添加レシチン、ラウリル硫酸ナトリウム、C8−32脂肪酸およびその塩、コール酸およびそのデオキシコール酸塩などの誘導体、およびその塩、ウルソデオキシコール酸、およびタウロコール酸、酒石酸のC8−56ジエステル、リン脂質、例えばホスファチジン酸およびホスファチジルセリン、乳酸のC5−29モノエステル、アルキル−、オレフィン−、およびアルキルアリール誘導体を含む、C8−20スルホン酸塩、トリデシル−およびドデシルベンゼンスルホン酸、ならびにC5−33サルコシンおよびベタイン誘導体が挙げられる。
【0045】
双性イオン界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、リン脂質、例えばレシチン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、およびココアムホグリシネートが挙げられる。
【0046】
非イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、ステアレス類、ポリエチレングリコール類(PEG)、ポリソルベート類(例えば、Tween 80)、セテアリルグルコシド、様々な市販のソルビタン類およびそれらの誘導体、例えば、ソルビタンヘキサステアレートエトキシレートEO6モル、ソルビタンイソステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノイソステアレートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノラウレートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノオレエートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノパルミテートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノステアレートエトキシレートEO20モル、ソルビタンモノステアレート(monstearate)エトキシレートEO6モル、ソルビタンオレエート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンステアレート、ソルビタンテトラオレエートエトキシレートEO30モル、ソルビタンテトラオレエートエトキシレートEO40モル、ソルビタンテトラオレエートエトキシレートEO6モル、ソルビタンテトラステアレートエトキシレートEO60モル、ソルビタントリオレエートエトキシレートEO20モル、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレートエトキシレートEO20モル、およびソルビタントリステアレート、エトキシル化ヒマシ油、C5−29モノ−グリセリド類およびそれらのエトキシル化誘導体、C15−60ジグリセリド類および1〜90のPOE基を有するそのポリオキシエチレン誘導体、長鎖脂肪酸(16以上の炭素原子を有する脂肪酸)のC10−40エステル類(アルコール中10−40個の炭素原子)、C10−40アルコール類、コレステロール、エルゴステロール、およびそれらのC2−24エステルなどのステロール類、C8−96エトキシル化脂肪酸エステル類、C14−130スクロース脂肪酸エステル類、ならびに、0〜90のPOE基を有するそのポリオキシエチレン(POE)誘導体、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ソルビトールヘキサオレエートPOE(50)が挙げられる。
【0047】
一部の実施形態では、少なくとも1種類の界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート界面活性剤(例えばポリソルベート20(Tween 20)、ポリソルベート80(Tween 80)など)、ソルビタン界面活性剤、ソルビタンモノラウレートおよびポリエトキシ化ヒマシ油およびそれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1種類の界面活性剤はポリソルベートを含む。
【0048】
III.さらなる賦形剤
本発明の一部の態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種類以上の賦形剤をさらに含む。当業者の認識するように、賦形剤の的確な選択およびそれらの相対量は、最終的な剤形に一部分依存する。一部の実施形態では、賦形剤は、速度制御ポリマー材料、希釈剤、滑沢剤、崩壊剤、可塑剤、粘着防止剤、不透明剤、色素、および香味料からなる群から選択される。
【0049】
本明細書において使用される、用語「速度制御ポリマー物質」は、本発明の固体経口剤形からのGnRH関連化合物などの薬物化合物の放出を制御または遅延させる能力のある、親水性ポリマー、疎水性ポリマーならびに親水性および/または疎水性ポリマーの混合物を含む。適した速度制御ポリマー物質としては、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ポリ(エチレン)オキシド、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、親水性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート塩、ポリ(アルキルメタクリレート)およびポリ(酢酸ビニル)からなる群から選択される物質が挙げられる。その他の適した疎水性ポリマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸に由来するポリマーおよび/または共重合体ならびにそれらの個別のエステル、ゼイン、ワックス、セラックならびに硬化植物油が挙げられる。一実施形態では、速度制御ポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸およびそれらの個別のエステルに由来するポリマーあるいはアクリル酸またはメタクリル酸およびそれらの個別のエステルに由来する共重合体を含む。もう一つの実施形態では、速度制御ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。
【0050】
一部の実施形態では、少なくとも1種類の速度制御ポリマー物質は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸およびポリメタクリル酸塩ポリマー、例えばEudragit(登録商標)の商標名(Rohm GmbH,Darmstadt,Germany)で販売されているものなど、例えば、Eudragit(登録商標)L、Eudragit(登録商標)S、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS含有物質およびそれらの混合物からなる群から選択される。これらのポリマーの一部は、薬物が放出される部位を制御する遅延放出ポリマーとして使用することができる。一部の実施形態では、速度制御ポリマーには、ポリメタクリレートポリマー、例えばEudragit(登録商標)の商標名(Rohm GmbH,Darmstadt,Germany)で販売されているものなど、例えば、Eudragit(登録商標)L、Eudragit(登録商標)S、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS含有物質およびそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
一部の実施形態では、本発明は、希釈剤をさらに含んでよい。任意の適した希釈剤を本発明で用いてよい。例示的な希釈剤としては、限定されるものではないが、製薬上許容される不活性充填剤、例えば微晶質セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、糖類、および/またはそれらの混合物などが挙げられる。希釈剤の例としては、微晶質セルロース、例えばAvicelの商標(FMC Corp.,Philadelphia,Pa.)で販売されているものなど、例えば、Avicel(商標)pH101、Avicel(商標)pH102およびAvicel(商標)pH112、ラクトース、例えばラクトース一水和物、無水ラクトースおよびPharmatose DCL21など、第二リン酸カルシウム、例えばEmcompress(登録商標)(JRS Pharma,Patterson,N.Y.)、マンニトール、デンプン、ソルビトール、スクロース、ならびにグルコースが挙げられる。一部の実施形態では、不活性充填剤は微晶質セルロースを含む。一実施形態では、不活性充填剤は、ラクトース一水和物および無水ラクトースからなる群から選択されるラクトースを含む。もう一つの実施形態では、不活性充填剤は、マンニトール、デンプン、ソルビトール、スクロース、およびグルコースからなる群から選択される糖類を含む。一実施形態では、糖類はソルビトールである。
【0052】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、滑沢剤をさらに含んでよい。任意の適した滑沢剤を本発明で用いてよい。一部の実施形態では、滑沢剤は、圧縮する粉末の流動性に作用する薬剤を含む。例示的な滑沢剤としては、限定されるものではないが、コロイド状二酸化ケイ素、例えばAerosil(商標)200、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸カルシウムが挙げられる。一部の実施形態では、滑沢剤はステアリン酸である。
【0053】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、崩壊剤をさらに含んでよい。任意の適した崩壊剤を本発明で用いてよい。例示的な崩壊剤としては、限定されるものではないが、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよび加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムデンプンならびにそれらの組合せおよび混合物が挙げられる。一部の実施形態では、崩壊剤は、クロスポビドンおよびポリビニルピロリドンから選択される。
【0054】
一部の実施形態では、上記の組成物は、エンハンサーをさらに含んでよい。エンハンサーは、当業者に公知の任意の適したエンハンサーであってよい。例示的なエンハンサーとしては、限定されるものではないが、中鎖脂肪酸塩、4〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体が挙げられる。一部の実施形態では、エンハンサーは、室温にて固体である。一部の実施形態では、エンハンサーは、中鎖脂肪酸塩、中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテルもしくは誘導体であり、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する。一部の実施形態では、炭素鎖長は8〜14である。一部の実施形態では、エンハンサーは、S−シクロデキストリン、ビタミンE TPGS、没食子酸エステル、クロスポビドン、ソルビタンエステル、ポロキサマー、またはポリオキシエチレン(olyoxyethylene)グリコール化天然もしくは硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標),BASF)である。一部の実施形態では、エンハンサーは、中鎖グリセリドまたは中鎖グリセリドの混合物である。例示的なエンハンサーは、参照により全文が援用される、米国特許公開公報第2003/0091623号、および米国特許第6,372,728号にさらに記載されている。
【0055】
IV.GnRH関連化合物の調製中の共溶媒系の適用
本明細書に記載されるGnRH関連化合物は、GnRH化合物のゲル化が低減されるような様式で共溶媒系の存在下で調製されてよい。一部の実施形態では、GnRH関連化合物の調製の最終段階は、共溶媒系の存在下で実施される。一部の実施形態では、最終段階は、公知の技法、例えば凍結乾燥、トレー乾燥、噴霧乾燥、流動床乾燥、または当業者に公知のその他の同様の技法を用いる乾燥である。
【0056】
一部の実施形態では、共溶媒系は、水および少なくとも1種類の水混和性溶媒を含む。水混和性溶媒は、限定されるものではないが、線状もしくは分枝状C1−6アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトン、ペンタン−3−オン、シクロヘキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキサン、アルコール、エチレングリコール、ジグリム、モノグリム、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物から選択することができる。ある種の実施形態では、少なくとも1種類の水混和性溶媒は、線状もしくは分枝状C1−6アルコールである。例示的な適したアルコールとしては、限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、およびヘキサノールが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも1種類の水混和性溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノールおよびtert−ブタノールからなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1種類の水混和性溶媒は、メタノール、エタノール、イソ−プロパノール、tert−ブタノール、アセトニトリル(acetoniltrile)および塩化メチレンからなる群から選択される。一部の実施形態では、本発明は、2またはそれ以上の水混和性溶媒で行われてよい。一部の実施形態では、水混和性溶媒の水に対する重量比は、約1/1000〜約99/1の範囲内である。一部の実施形態では、この重量比は約3/97〜約59/41である。
【0057】
一部の実施形態では、このプロセスは、GnRH関連化合物の調製の間に酸を添加することをさらに含む。本発明で使用される酸としては、限定されるものではないが、酢酸、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸塩(trifluoracetate)、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、およびホウ酸などが挙げられる。一般に、酸の濃度は、GnRH関連化合物の塩を調製するために十分である。一部の実施形態では、酸の濃度は、本明細書において使用されるGnRH関連化合物および酸の分子量によって決まる。一部の実施形態では、濃度は、溶液の約0.5%〜約20%の範囲内である。
【0058】
V.組成物を調製する方法
本発明の一部の態様によれば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の組成物を調製するための方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体を、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体および/またはそれらの誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤と混合することを含む。一部の実施形態では、少なくとも1種類の安定化剤は、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩、中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテル、もしくは誘導体であるか、あるいは界面活性剤である。本明細書において使用される、用語「混合する」とは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体および/またはそれらの誘導体と、1以上の安定化剤によって接触させる、結合する、反応させる、および/またはコーティングすることを意味する。一実施形態では、「混合する」とは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体またはそれらの誘導体と安定化剤を組成物中で結合することを意味する。一実施形態では、GnRH関連化合物は、本明細書に記載される共溶媒系の存在下で調製される。一部の実施形態では、組成物中の安定化剤の濃度は、安定化剤の臨界ミセル濃度に等しいかまたはそれ以上である。
【0059】
VI.医薬組成物および投与
一実施形態では、本発明は、治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体、および、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む医薬組成物を提供し、この際、少なくとも1種類の安定化剤は、約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩、中鎖脂肪酸のエステル、またはそのエーテル、もしくは誘導体であるか、または界面活性剤である。もう一つの実施形態では、本医薬組成物は、製薬上許容される担体をさらに含む。用語「製薬上許容される担体」は、本明細書において、それ自体は治療薬ではないが、被験体への治療薬の送達のための媒体として使用される任意の物質を指す。
【0060】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、鼻腔、舌下、口内、膣または埋め込み式リザーバによる投与などのための製剤に適し得る。一実施形態では、組成物は、経口的に、局所に、腹腔内にまたは静脈内に投与される。本発明の組成物の滅菌注射剤形態は、水性もしくは油性の懸濁液であってよい。これらの懸濁液は、適した分散剤または湿潤剤および沈殿防止剤を用いて、当分野で公知の技法に従って処方されてよい。滅菌注射用製剤はまた、無毒の非経口的に受け入れられる希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能物質の溶液または懸濁液であってもよい。用いることのできる許容される媒体および溶媒には、水、リンゲル液および等張食塩水溶液がある。その上、滅菌した硬化油は、溶媒または懸濁媒体として慣習的に用いられている。
【0061】
一部の実施形態では、本発明で使用される組成物は、経口剤形である。一部の実施形態では、経口剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末、顆粒剤または粉末を充填したカプセル剤、液体または半固体を充填したカプセル剤、顆粒剤または粉末を充填したサシェ剤、液体、乳濁液、マイクロエマルジョン、および乳濁液を形成することのできるあらゆる組成物から選択される。一実施形態では、経口剤形は、錠剤、多粒子、またはカプセル剤であってよい。一実施形態では、本明細書に記載される中鎖脂肪酸およびその誘導体は、エンハンサーとして機能してもよい。
【0062】
一部の実施形態では、経口剤形は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体ならびに安定化剤および/またはエンハンサーの胃での放出を最小化し、故に、局所安定化剤の希釈またはその中のエンハンサーの濃度を最小化し、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体および安定化剤またはエンハンサーを腸で放出する遅延放出剤形である。一部の実施形態では、経口剤形は、遅延放出急速作用発現(rapid onset)剤形である。そのような剤形は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、その類似体または誘導体および安定化剤またはエンハンサーの胃での放出を最小化し、故に、局所安定化剤の希釈またはその中のエンハンサーの濃度を最小化するが、腸の適当な部位に到達したら迅速にペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体および安定化剤またはエンハンサーを放出し、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体および安定化剤の吸収部位での局所濃度を最大化することにより、透過性または可溶性の低いペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の送達を最大化する。
【0063】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの場合、制御放出コーティングを最終剤形(カプセル剤、錠剤、多層錠剤など)に適用してよい。一実施形態では、制御放出コーティングは、本明細書に記載される速度制御ポリマー物質を含み得る。そのようなコーティング物質の溶解特性は、pH依存性であるか、またはpHと無関係であってよい。
【0064】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、その上に腸溶コーティングを有してよい。一実施形態では、腸溶コーティングは、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸)、ポリメタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む。一部の実施形態では、腸溶性組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態であってよい。
【0065】
本明細書において用いられる用語「錠剤」には、限定されるものではないが、即時放出(IR)錠剤、持続放出(SR)錠剤、マトリックス錠剤、多層錠剤、多層マトリックス錠剤、延長放出錠剤、遅延放出錠剤およびパルス放出錠剤が含まれ、そのいずれかまたは全ては、場合により、ポリマーコーティング物質、例えば腸溶コーティング、速度制御コーティング、半透性コーティングなどを含む、1以上のコーティング物質でコーティングされてよい。用語「錠剤」には、薬物化合物をオスマジェント(osmagent)(および場合によりその他の賦形剤)と合せ、半透膜でコーティングした浸透圧送達系も含まれ、該半透膜は、それを通じて薬物化合物を放出することのできるオリフィスを規定する。本発明の実践において有用であり得る錠剤固体経口剤形としては、IR錠剤、SR錠剤、被覆IR錠剤、マトリックス錠剤、被覆マトリックス錠剤、多層錠剤、被覆多層錠剤、多層マトリックス錠剤および被覆多層マトリックス錠剤からなる群から選択される剤形が挙げられる。一部の実施形態では、錠剤剤形は、腸溶コーティング錠剤形である。一部の実施形態では、錠剤剤形は、腸溶コーティングされた急速作用発現錠剤剤形である。
【0066】
本発明の実践において有用であり得るカプセル固体経口剤形としては、即時放出カプセル剤、持続放出カプセル剤、被覆即時放出カプセル剤、および遅延放出カプセル剤を含む被覆持続放出カプセル剤からなる群から選択される剤形が挙げられる。カプセル剤は、粉末、顆粒剤、多粒子、錠剤、半固体、または液体が充填されてよい。一部の実施形態では、カプセル剤形は腸溶コーティングカプセル剤形である。一部の実施形態では、カプセル剤形は、腸溶コーティング急速作用発現カプセル剤形である。カプセルは、硬ゼラチン、軟ゼラチン、デンプン、セルロースポリマー、または当業者で公知のその他の物質で作られていてよい。
【0067】
本明細書において用いられる用語「多粒子」は、複数の個別の粒子、ペレット、ミニ錠およびそれらの混合物または組合せを意味する。経口形態が多粒子カプセル剤である場合、このような硬または軟ゼラチンカプセル剤を適切に用いて多粒子を収容することができる。一部の実施形態では、サシェを適切に用いて多粒子を収容してよい。一部の実施形態では、多粒子は、速度制御ポリマー物質を含有する層でコーティングされてよい。一部の実施形態では、本発明に従う多粒子経口剤形は、インビトロおよび/またはインビボ放出特性の異なる2以上の粒子、ペレット、またはミニ錠集団のブレンドを含み得る。例えば、多粒子経口剤形は、適したカプセル剤に収容された、即時放出成分および遅延放出成分のブレンドを含み得る。
【0068】
一部の実施形態では、多粒子および1以上の補助賦形剤物質を、多層錠剤などの錠剤形態に圧縮することができる。一部の実施形態では、多層錠剤は、同一または異なる放出特性を有する、同一または異なるレベルの同じ有効成分を含有する2つの層を含み得る。一部の実施形態では、多層錠剤は、各々の層に異なる有効成分を収容してよい。単一層かまたは多層のそのような錠剤を、場合により制御放出ポリマーでコーティングして、さらなる制御放出特性をもたらすことができる。一部の実施形態では、多粒子剤形は、遅延放出急速作用発現ミニ錠を含有するカプセル剤を含む。一部の実施形態では、多粒子剤形は、ミニ錠剤遅延放出カプセル剤を含む。一部の実施形態では、多粒子剤形は、遅延放出顆粒剤を含むカプセル剤を含む。一部の実施形態では、多粒子剤形は、即時放出顆粒剤を含む遅延放出カプセル剤を含む。
【0069】
本発明において用いられる用語「エマルジョン」は、第2の非混和性の液体の中の1種類の液体の懸濁液または分散液を意味する。一部の実施形態では、エマルジョンは、水中油型もしくは水中油中水型エマルジョンである。
【0070】
本明細書において用いられる用語「マイクロエマルジョン」は、疎水性の(油性)相および親水性の(水性)相および界面活性剤がミセル構造を形成している溶液を意味する。このような分散液は透明であり長期にわたり安定している。
【0071】
その上、本明細書において用いられる「エマルジョン」または「マイクロエマルジョン」には、疎水性または親水性の液体でそれぞれ希釈すると、乳濁液またはマイクロエマルジョンを形成する親水性または疎水性の液体が含まれる。一部の実施形態では、本明細書において用いられる「エマルジョン」、または「マイクロエマルジョン」には、高温で液体であり得る固体または半固体物質が含まれ得る。例えば、該物質は室温で固体であり得る。体温(約37℃)前後で、該物質は液体であり得る。
【0072】
あるいは、本発明の製薬上許容される組成物は、直腸投与のための坐剤の形態であってよい。坐剤は、室温で固体であるが直腸温度で液体であり、したがって直腸で溶融して薬物を放出する、適した非刺激性の賦形剤と薬剤を混合することにより調製することができる。このような物質には、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0073】
本発明の製薬上許容される組成物は、活性成分が1以上の担体に懸濁または溶解されている、局所用溶液、軟膏、またはクリームの形態であってよい。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、限定されるものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が挙げられる。局所製剤が軟膏またはクリームの形態である場合、適した担体としては、限定されるものではないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2‐オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0074】
製薬上許容される組成物が眼科用製剤である場合、それは、等張性のpH調整滅菌水溶液中の、あるいは、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を含むまたは含まない等張性のpH調整滅菌生理食塩水の溶液としての溶液中の微粉化された懸濁液であってよい。あるいは、眼科用途には、製薬上許容される組成物を軟膏の形態で処方してもよい。
【0075】
本発明の製薬上許容される組成物はまた、鼻腔エアゾールによるか、または吸入投与経路により投与されてよい。このような組成物は、医薬製剤分野で周知の技法に従って調製され、ベンジルアルコールまたはその他の適した防腐剤、バイオアベイラビリティを向上させるための吸収促進剤、フルオロ炭素、および/またはその他の従来の可溶化剤または分散剤を用いる、生理食塩水中の溶液として調製されてよい。
【0076】
また、任意の特定の患者のための具体的な投薬量および治療計画は、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与の回数、排出速度、薬物の組合せ、および治療を行う医師の判断および治療される特定の疾患の重篤度を含む、多様な要因によって決まることは当然理解される。組成物中の本発明の化合物の量も、組成物中の特定の化合物によって決まる。
【0077】
VII.治療および使用方法
本発明の別の態様は、該状態に罹患している患者に本出願に記載される医薬組成物を投与することを含む、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体により治療可能な医学的状態の治療方法を提供する。本明細書において使用される医学的状態としては、限定されるものではないが、ヒトまたは動物被験体における、真性糖尿病、アルツハイマー、自己免疫疾患、結腸癌、性ホルモン依存性疾患、例えば、良性前立腺過形成、前立腺癌、エストロゲン依存性乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌、子宮内膜症および思春期早発症、および避妊が挙げられる。
【0078】
さらに、別の実施形態は、該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、それらの類似体および/またはそれらの誘導体により治療可能な医学的状態の治療のための薬物の製造における、本出願に記載される医薬組成物の使用を提供する。
【0079】
本明細書に記載される全ての実施形態の組合せも本発明で想定されることは当然理解される。
【0080】
これから本発明を、以下の実施例を参照してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は説明目的のために与えられるものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではない。
【0081】
[実施例]
1.アシリンの調製中の共溶媒の適用
(1)アシリンバッチの調製
アシリンの調製の最後の段階である凍結乾燥手順における変化を要約する、6種類の相異なるアシリンバッチが図1に記載される。ロットXF173/315−125、XF185/165−133およびXF173/315−151Aに関して、凍結乾燥段階で共溶媒系が使用される。水は、その他のバッチの溶媒として使用される。バッチおよび関連する凍結乾燥溶媒も図1に説明される。アシリンは、当業者に公知の方法、例えば米国特許第6,747,125号、または本出願中に記載されるプロセスに従って調製されることができる。
【実施例1】
【0082】
プロピレングリコール中の相異なるアシリンバッチのゲル化の調査を行い、結果を図2に要約する。アシリンサンプルの9%および16.7%は、図1に記載されるアシリンバッチを使用することにより調製される。XF173/315−125、XF185/165−133およびXF173/315−151Aの9%アシリンサンプルは、凍結乾燥段階の間に共溶媒を用いて調製されるアシリンを使用することにより調製される。XF173/315−125、XF185/165−133およびXF173/315−151Aのアシリンバッチは、2時間後に透明かつ非粘稠に見える。水を溶媒として使用することにより凍結乾燥されたその他のバッチは、ゲル状のアシリンの存在に起因して透明かつ非粘稠な溶液として現れなかった。
【実施例2】
【0083】
水中の相異なるアシリン薬物バッチのゲル化を調べ、結果を図3に要約する。0.5%および1%アシリンサンプルは、図1に記載されるアシリンバッチを使用することにより調製される。凍結乾燥段階中に共溶媒を使用することにより調製されるXF173/315−125、XF185/165−133およびXF173/315−151Aの0.5%および1%のアシリンサンプルは、水に溶解させると透明かつ非粘稠に見える。
【実施例3】
【0084】
標準化したマイクロエマルジョン(SM)中の相異なるアシリンバッチのゲル化傾向を調べる。結果は図4(a)に要約される。標準化したマイクロエマルジョンの製剤を図4(b)に示す。アシリンのマイクロエマルジョン中5mgおよび10mg製剤は、図1中で合成されたアシリンロットを用いて調製される。凍結乾燥段階中に共溶媒を使用することにより調製されるXF173/315−151Aのアシリンバッチの5mgおよび10mg用量は、2時間後にクリアで透明(clear and transparent)に見えた。
【0085】
2.アシリン組成物の処方におけるゲル化防止剤の適用
比較実験の一般的手順
相異なる濃度のアシリン組成物を、アシリンをpH6.8緩衝液に室温かまたは37℃のいずれかで添加することにより調製する。全てのアシリン溶液は、0.6mg/mLカプリン酸ナトリウムを含有する(カプリン酸ナトリウムは、図面中でC10と称される)。分析に先立ち、全てのサンプルを遠心し、濾過する。サンプルは、UV検出を伴う逆相HPLCにより分析する。
【実施例4】
【0086】
10mgアシリンを200mLメスフラスコに移す。pH6.8緩衝液を37℃に予熱する。次に、100mLの予熱した緩衝液および0.6mg/mLのカプリン酸ナトリウムをフラスコに添加して、0.1mg/mLのアシリンサンプルを調製する。同様の様式で、Tween 80を添加して、1% Tween 80を含む0.1mg/mLのアシリン溶液を調製する。サンプルを、37℃に温度制御された水浴中で振盪する。アシリンと緩衝液を混合した1、5、10、15、20、30および120分後に5mLのサンプルを採取する。サンプルを0.45μmフィルターに通して直ちに濾過し、最初の3mLを廃棄する。濾過したサンプルを、希釈せずにUV検出を伴う逆相HPLCにより分析する。全てのサンプルを二重反復で調製し、二重反復の平均から分析のための濃度を得た。0.1mg/mLのアシリンサンプルで1%および0%のTween 80を比較した結果を、図5にグラフを使って記録する。これらの結果は、CMCよりも低い濃度のカプリン酸ナトリウム単独が、アシリンのゲル化を低減させるには不十分であることを示す。1% Tween 80を添加することにより、ゲル化は首尾よく低減される。
【実施例5】
【0087】
実施例4と同様の試験手順を用いて、実施例5用のアシリンサンプルを調製する。0.6mg/mLのカプリン酸ナトリウムおよび0.1mg/mLのアシリンを含有するリン酸緩衝液中、5mg/mL、1.0mg/mL、0.1mg/mL、および0.1%のTweenを比較した結果を、図6にグラフを使って記録する。これらの結果は、1% Tween 80溶液だけがアシリンのゲル化を完全に阻害し得ることを示す。
【実施例6】
【0088】
実施例4と同様の試験手順を用いて、実施例6用のアシリンサンプルを調製する。0.1および0.01mg/mLのアシリンサンプル中、1%および1mg/mLのTween 80を比較した結果を、図7にグラフを使って記録する。これらの結果は、1% Tween 80が、0.1mg/mLおよび0.01mg/mLの両方のアシリンサンプルのゲル化を低減することを示す。
【実施例7】
【0089】
実施例4と同様の試験手順を用いて、実施例7用のアシリンサンプルを調製する。0.1%、0.5%および1% Tween 80を有する0.01mg/mLのアシリンサンプルを比較した結果を、図8にグラフを使って記録する。これらの結果は、1% Tween 80を含むアシリンサンプルがゲル化を著しく低減することを示す。
【実施例8】
【0090】
3.カプリン酸ナトリウム(C10)の水中アシリンのゲル化傾向への影響
図9は、様々な濃度のカプリン酸ナトリウム(C10)の水中のアシリンのゲル化への影響をグラフによって示す。カプリン酸ナトリウムの濃度が10mg/mLより低い場合、アシリンの回収率は大幅に低下し、これはアシリンのゲル化の増大を暗に示す。本発明の研究者らは、ゲル化の増大は、カプリン酸ナトリウムの添加により引き起こされるイオン濃度の増大に起因すると考える。しかし、カプリン酸ナトリウムの濃度がカプリン酸ナトリウムのCMC(約20mg/mL)に達するかそれを上回る場合、アシリンの回収率に、突然かつ大幅な増大があることが観察され、ゲル化の効果的な低減が示される。カプリン酸ナトリウムのCMCは100mM(約20mg/mL)として公知である。(「kinetic studies of the interaction of fatty acids with phosphatidylcholine vesicles(liposomes),Rogerson et al.,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces,48,24−34(2006)参照)。カプリン酸ナトリウムの濃度が約50mg/mLに達すると、アシリンの回収率はほぼ100%であり、ゲル化が完全に阻害されていることが示される。
【実施例9】
【0091】
4.相異なるアシリンサンプルの様々なマイクロエマルジョン製剤でのゲル化防止剤の適用
図11は、イヌにおけるアシリンの様々な製剤の相対的なバイオアベイラビリティをグラフによって示す。相対的なバイオアベイラビリティは、アシリンの様々な製剤の絶対的バイオアベイラビリティと、アシリンの標準的な製剤(ゲル化防止剤を全く含まない製剤)の絶対的バイオアベイラビリティを比較することにより測定される。マイクロエマルジョン1(M1/55% Capmul MCM)、マイクロエマルジョン2(M2/45% Capmul PG−8)、およびマイクロエマルジョン3(M3/55% Capmul MCM C10)の製剤を図10(a)〜(c)に説明する。標準的な溶液の処方は、5mgアシリン、550mgカプリン酸ナトリウムおよび5mL精製水である。図10および図11中の「C10」は、カプリン酸ナトリウムを表す。図10および図11中の「SLS」は、ラウリル硫酸ナトリウムを表す。図11の比較結果は、ゲル化防止剤、例えばカプリン酸ナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウムなどを含む全ての製剤が、アシリンのバイオアベイラビリティを7.8倍から32.5倍まで増大させることを示す。
【実施例10】
【0092】
図12は、相対的バイオアベイラビリティの(1)10mgアシリン腸溶錠と増強されていない(unenhanced)5mgアシリン溶液サンプルの対比、および(2)10mgアシリン腸溶錠と5mgアシリン標準サンプルの対比をグラフによって示す。アシリン標準サンプルの処方は、5mgアシリン、550mgカプリン酸ナトリウムおよび5mL精製水である。錠剤および5mgアシリンサンプル中のアシリンは、水を溶媒として用いる凍結乾燥段階を用いて調製される。錠剤には、5mgアシリンサンプルと同じ量のカプリン酸ナトリウムが収容された。110mg/mLというカプリン酸ナトリウム濃度は、阻害する溶液中のゲル化を低減するかまたは阻害さえし、かつ、アシリン溶液のバイオアベイラビリティを増強するために十分であることが観察される。図12は、増強された錠剤のバイオアベイラビリティが、増強されていない錠剤と比較して大幅に改良されていることを実証する。
【実施例11】
【0093】
5.インスリンサンプルにおけるカプリン酸ナトリウムおよびカプリン酸の適用
カプリン酸ナトリウム(C10)およびカプリン酸のウシインスリンの安定性への効果を評価する調査を行う。この調査では、29U/mgの効力をもつウシインスリンを用いて、リン酸緩衝液(pH8)中の10U/mL溶液(344.83mg/Lの溶液)を調製する。200mL容器を使用して、適切な量のC10をインスリン溶液の100mLアリコートに添加する。インスリン溶液だけを含有する2本の瓶を対照として使用する。3gのC10を瓶3および瓶4に添加し、6gのC10を瓶5および瓶6に添加し、3gのカプリン酸を瓶7および瓶8に添加し、6gのカプリン酸を瓶9および瓶10に添加する。これらの瓶を穏やかに回旋させ、6mLアリコートを各々の瓶からT=0サンプル用に取り出す。これらのサンプルを濾過し(Millex−HV 0.45μm)、最初の5mlの濾液を廃棄する。適切な試験溶液を攪拌し、6時間、24時間などのさらなるサンプルを全ての試験溶液から回収する。濾過後の溶液中のウシインスリンの量を、標準品(200mlの0.01N HCl中70mg)と対照して決定する。
【0094】
インスリン溶液を一定時間静置した後の未変化のインスリンの回収率を、表2および表3に記録し、図13(a)および(b)でグラフによって示す。カプリン酸ナトリウムを含むインスリン溶液は、カプリン酸ナトリウムを含まないインスリンサンプルまたはカプリン酸を含む溶液よりも有意に安定性が高いことが観察される。カプリン酸ナトリウムを含有するインスリンサンプルについて、溶液を37℃にて少なくとも約24時間静置した後、少なくとも90%のインスリンが回収される。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
前述の内容は本発明を例証し、それを限定すると解釈されるものではない。本発明の少数の例示的な実施形態が記載されたが、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正が可能であることを当業者は容易に認識する。したがって、全てのこのような修正は、特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内に含まれることが意図される。そのため、前述の内容は本発明を例証し、開示される具体的な実施形態に限定されると解釈されるものでないこと、および開示される実施形態、ならびにその他の実施形態に対する修正は、添付される特許請求の範囲の範囲内に含められることが意図されることは当然理解される。本発明は、以下の特許請求の範囲とその中に含まれる特許請求の範囲の相当物により定義される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体および前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む組成物であって、
少なくとも1種類の安定化剤が、塩、エステル、エーテル、または約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸誘導体であるか、あるいは界面活性剤である、組成物。
【請求項2】
前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも90%が、前記組成物を37℃にて少なくとも約24時間静置した後に保持されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が、インスリン、あるいはその類似体または誘導体である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が、グルカゴン様ペプチド(GLP)、あるいはその類似体または誘導体である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのGLPが、GLP−1、GLP−1類似体、GLP−1誘導体、GLP−2、GLP−2類似体、GLP−2誘導体、エキセンディン−4、エキセンディン−4類似体、エキセンディン−4誘導体からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が、GnRHアゴニストおよびアンタゴニスト、ソマトスタチン、ACTH、コルチコトロピン放出因子、アンジオテンシン、カルシトニン、胃抑制ペプチド、成長ホルモン放出因子、下垂体アデニル酸、エキセンディン、エキセンディン−3、シクラーゼ活性化ペプチド、セクレチン、エンテロガストロン(enterogastrin)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、トロンボポエチン、エリスロポエチン、視床下部放出因子、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、エンドルフィン、エンケファリン、バソプレシン、オキシトシン、オピオイドおよびその類似体、スーパーオキシドジスムターゼ、インターフェロン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、リボヌクレアーゼ、FVII、FXIII、FVIIとFXIIIの混合物、IL−20、IL−21、IL−28a、IL−29、IL−31、ならびにそれらの類似体および誘導体からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
室温にて固体である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
固体経口剤形である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記安定化剤が、中鎖脂肪酸の塩であり、炭素鎖長が約8〜14炭素原子である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記安定化剤が、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウムおよびラウリン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記安定化剤の前記濃度が、前記組成物中の前記安定化剤の前記臨界ミセル濃度に等しいかそれ以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記安定化剤および前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の溶解速度が実質的に同じである、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
速度制御ポリマー材料、希釈剤、滑沢剤、崩壊剤、可塑剤、粘着防止剤、不透明剤、色素、および香味料からなる群から選択される1以上の賦形剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種類の速度制御ポリマーが、アクリル酸またはメタクリル酸に由来するポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸に由来するエステル、またはアクリル酸またはメタクリル酸に由来する共重合体である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
腸溶コーティングをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記腸溶コーティングが、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸)、ポリメタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記腸溶コーティング組成物が、錠剤またはカプセル剤である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、多粒子形態(multiparticulate form)、持続放出形態および即時放出形態からなる群から選択される形態である、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
微晶質セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウムおよび糖類から選択される不活性充填剤である少なくとも1種類の希釈剤をさらに含む、請求項1〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記不活性充填剤が、ラクトース一水和物または無水ラクトースである少なくとも1種類のラクトースである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記不活性充填剤が、マンニトール、デンプン、ソルビトール、スクロース、およびグルコースからなる群から選択される少なくとも1種類の糖類である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸からなる群から選択される少なくとも1種類の滑沢剤をさらに含む、請求項1〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
軽度架橋ポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、メイズデンプンおよび加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ならびにグリコール酸ナトリウムデンプンからなる群から選択される少なくとも1種類の崩壊剤をさらに含む、請求項1〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の組成物の調製のための方法であって、前記プロセスが、前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはその類似体もしくは誘導体と、十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を混合して前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させることを含み、かつ、前記安定化剤が、塩、エステル、エーテル、または約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸誘導体であるか、あるいは界面活性剤である、方法。
【請求項25】
前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも90%が、前記組成物を37℃にて少なくとも約24時間静置した後に保持されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記安定化剤が、中鎖脂肪酸塩である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記安定化剤が、約8〜約14炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物中の前記安定化剤の前記濃度が、前記組成物中の前記安定化剤の前記臨界ミセル濃度に等しいかそれ以上である、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
治療上有効な量の少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体および前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させるために十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を含む組成物であって、
少なくとも1種類の安定化剤が、塩、エステル、エーテル、または約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸誘導体であるか、あるいは界面活性剤である、組成物。
【請求項2】
前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも90%が、前記組成物を37℃にて少なくとも約24時間静置した後に保持されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が、インスリン、あるいはその類似体または誘導体である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が、グルカゴン様ペプチド(GLP)、あるいはその類似体または誘導体である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのGLPが、GLP−1、GLP−1類似体、GLP−1誘導体、GLP−2、GLP−2類似体、GLP−2誘導体、エキセンディン−4、エキセンディン−4類似体、エキセンディン−4誘導体からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体が、GnRHアゴニストおよびアンタゴニスト、ソマトスタチン、ACTH、コルチコトロピン放出因子、アンジオテンシン、カルシトニン、胃抑制ペプチド、成長ホルモン放出因子、下垂体アデニル酸、エキセンディン、エキセンディン−3、シクラーゼ活性化ペプチド、セクレチン、エンテロガストロン(enterogastrin)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、トロンボポエチン、エリスロポエチン、視床下部放出因子、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、エンドルフィン、エンケファリン、バソプレシン、オキシトシン、オピオイドおよびその類似体、スーパーオキシドジスムターゼ、インターフェロン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、リボヌクレアーゼ、FVII、FXIII、FVIIとFXIIIの混合物、IL−20、IL−21、IL−28a、IL−29、IL−31、ならびにそれらの類似体および誘導体からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
室温にて固体である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
固体経口剤形である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記安定化剤が、中鎖脂肪酸の塩であり、炭素鎖長が約8〜14炭素原子である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記安定化剤が、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウムおよびラウリン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記安定化剤の前記濃度が、前記組成物中の前記安定化剤の前記臨界ミセル濃度に等しいかそれ以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記安定化剤および前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の溶解速度が実質的に同じである、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
速度制御ポリマー材料、希釈剤、滑沢剤、崩壊剤、可塑剤、粘着防止剤、不透明剤、色素、および香味料からなる群から選択される1以上の賦形剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種類の速度制御ポリマーが、アクリル酸またはメタクリル酸に由来するポリマー、アクリル酸またはメタクリル酸に由来するエステル、またはアクリル酸またはメタクリル酸に由来する共重合体である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
腸溶コーティングをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記腸溶コーティングが、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸)、ポリメタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記腸溶コーティング組成物が、錠剤またはカプセル剤である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、多粒子形態(multiparticulate form)、持続放出形態および即時放出形態からなる群から選択される形態である、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
微晶質セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウムおよび糖類から選択される不活性充填剤である少なくとも1種類の希釈剤をさらに含む、請求項1〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記不活性充填剤が、ラクトース一水和物または無水ラクトースである少なくとも1種類のラクトースである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記不活性充填剤が、マンニトール、デンプン、ソルビトール、スクロース、およびグルコースからなる群から選択される少なくとも1種類の糖類である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸からなる群から選択される少なくとも1種類の滑沢剤をさらに含む、請求項1〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
軽度架橋ポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、メイズデンプンおよび加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ならびにグリコール酸ナトリウムデンプンからなる群から選択される少なくとも1種類の崩壊剤をさらに含む、請求項1〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の組成物の調製のための方法であって、前記プロセスが、前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはその類似体もしくは誘導体と、十分な量の少なくとも1種類の安定化剤を混合して前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の安定性を向上させることを含み、かつ、前記安定化剤が、塩、エステル、エーテル、または約4〜約20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸誘導体であるか、あるいは界面活性剤である、方法。
【請求項25】
前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはその類似体もしくは誘導体の少なくとも90%が、前記組成物を37℃にて少なくとも約24時間静置した後に保持されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記安定化剤が、中鎖脂肪酸塩である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記安定化剤が、約8〜約14炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物中の前記安定化剤の前記濃度が、前記組成物中の前記安定化剤の前記臨界ミセル濃度に等しいかそれ以上である、請求項24に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図10(c)】
【図11】
【図12】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図10(c)】
【図11】
【図12】
【図13(a)】
【図13(b)】
【公表番号】特表2011−519928(P2011−519928A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508508(P2011−508508)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/002842
【国際公開番号】WO2009/137078
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(510295918)メリオン・リサーチ・III・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/002842
【国際公開番号】WO2009/137078
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(510295918)メリオン・リサーチ・III・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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