説明

ペプチドまたは核酸マイクロパターン形成を使用してカーボンナノチューブを製造する方法

本明細書に開示する方法、装置およびシステムはカーボンナノチューブの規則アレイに関する。本発明の特定の態様では、ナノチューブアレイは、触媒ナノ粒子(140, 230)をポリマー(120, 210)に結合する段階、ポリマー(120, 210)分子を基板に結合する段階、ポリマー(120, 210)分子を脱離する段階および触媒ナノ粒子(140, 230)上でカーボンナノチューブを製造する段階を含む方法によって製造される。ポリマー(120, 210)分子整列法。ナノチューブアレイを基板の選択した領域(110, 310)に結合することができる。選択した領域(110, 310)内において、ナノチューブは非ランダムに分布される。本明細書に開示する他の態様は、基板に結合されている規則的アレイのナノチューブ、主張されている方法によって製造された、基板に結合されている規則的アレイのカーボンナノチューブを含むシステムに関する。ある態様において、2本鎖DNA分子に分子ワイヤーを連結することによって、分子ワイヤーを整列させる方法が本明細書において提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、カーボンナノチューブ技術に関し、より具体的には、パターン化されたアレイのカーボンナノチューブを製造する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
カーボンナノチューブは、円柱管に巻かれているシート状のグラファイトと考えることができる。グラファイトシートの基本的な反復単位は、長さ約1.42Åの炭素-炭素結合による炭素原子の六角形のリングからなる。それらの製造方法に応じて、チューブは多層型または単層型であってもよい。
【0003】
ナノチューブの構造的な特徴は、自身に独自の物理的特性を提供している。ナノチューブはスチールの機械的強度の最大100倍を有することができ、長さ最長2 mmとなりうる。それらは、ナノチューブのキラリティーまたはねじれの程度に応じて、金属または半導体の電気的特徴を示す。カーボンナノチューブは導電体としておよび電界エミッタとして使用されている。カーボンナノチューブの電子的特性は、一部には、チューブの径および長さによって決定される。
【0004】
カーボンナノチューブは、マイクロ電子デバイスおよびマイクロセンサーを製造するための重要性が増加している。しかし、現在では、基板の領域110、310に結合しているカーボンナノチューブの規則的ナノスケールまたはマイクロスケール集合物を効率的に製造する方法は存在せず、領域110、310内のナノチューブの分布は非ランダムである。現在の方法を使用すると、基板に結合する各領域110、310内のナノチューブの分布は本質的にランダムである。このようなランダム分布は、カーボンナノチューブを組み込んだ種々の電気的および/または機械的デバイスの最適な性能特性を提供することができない。従って、基板に結合しているカーボンナノチューブの規則的ナノスケールまたはミクロスケールを効率的に製造するための方法およびシステムの必要性が存在する。
【発明の開示】
【0005】
発明の詳細な説明
より詳細に開示されているように、1つまたは複数のポリマー120、210分子に1つまたは複数の触媒ナノ粒子140、230を結合する段階、基板にポリマー120、210分子を結合する段階、典型的には、ポリマー120、210分子を除去する段階、および触媒ナノ粒子140、230上でカーボンナノチューブを製造する段階を含む、カーボンナノチューブを製造する方法が本明細書に提供される。ポリマー分子120、210は、例えばナノチューブを製造する前に整列されていてもよい核酸120またはペプチド210であってもよい。
【0006】
本明細書において使用する「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは複数の項目を意味することがある。
【0007】
本明細書において使用する、数に適用される「約」という用語は、その数のプラスまたはマイナス10パーセント以内を意味する。例えば、「約100」は、90〜110の間の任意の数を意味する。
【0008】
「核酸」120は、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)、1本鎖、2本鎖または3本鎖およびその任意の化学修飾を含む。この用語はまた、ペプチド核酸120(PNA)、核酸アナログペプチド(nucleic acid analog peptide)(NAAP)120およびロックト核酸120(LNA)を含むが、これらに限定されない任意の公知の核酸アナログ120も含む。「核酸」120は、2つまたはそれ以上の塩基のオリゴヌクレオチド150から完全長の染色体DNA分子までほとんど任意の長さであってもよい。「核酸」120は、オリゴヌクレオチド150およびポリヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。天然型核酸120におけるヌクレオチド残基は、典型的には、ホスホジエステル結合によって接続されるが、開示されている方法の範囲内では、ヌクレオチド残基はホスホジエステル結合によってまたは任意の他の種類の公知の共有結合によって接続されうる。
【0009】
「タンパク質」210、「ポリペプチド」210および「ペプチド」210という用語は、天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸、アミノ酸アナログおよび/またはアミノ酸誘導体から集合されるポリマー分子120、210に言及するために本明細書において同様に使用される。用語間の区別は、主に、長さに関するものであり、以下の開示がタンパク質210、ポリペプチド210またはペプチド210を言及するする場合には、この用語は任意の長さのポリマー120、210を含むことを当業者は理解している。天然型タンパク質210、ポリペプチド210およびペプチド210のアミノ酸残基は、典型的には、ペプチド結合によって接続されるが、開示されている方法の範囲において、アミノ酸残基はペプチド結合によってまたは任意の他の種類の公知の共有結合によって接続されうる。
【0010】
カーボンナノチューブは、チューブの長さおよび径によって調節される強力な電子特性を有する。電子波動関数に与えるチューブ長さの影響の簡単な推定は:
ΔE = hνF/2L
によって与えられる。
【0011】
式中、ΔEはエネルギーレベル分裂を示し、Lはチューブ長さであり、hはプランクの定数であり、νFはフェルミ速度(8.1×105 m/sec)である(Venema et al., 「Imaging Electron Wave Functions of Carbon Nanotubes」, Los Alamos Physics Preprints : cond-mat/9811317, 23 Nov. 1996)。電子エネルギーレベルの差はナノチューブの長さに反比例し、微細分裂はチューブが長いほど観察される。
【0012】
カーボンナノチューブの電子特性はチューブの径の関数でもある。基本エネルギーギャップ(最大被占軌道-最低非占軌道)とチューブの径の関係は、関数
Egap = 2 y0 acc/d
によってモデル化することができる。
【0013】
式中、y0は炭素-炭素密接結合重複エネルギー(2.7 ± 0.1 eV)であり、accは最近接炭素-炭素距離(0.142 nm)であり、dはチューブの径である(Jeroen et al., Nature 391: 59-62, 1998)。エネルギーがフェルミエネルギーレベルより増加すると、van hove特異点と言われる状態密度のシャープなピークが特定のエネルギーレベルにおいて出現する(Odom et al., Nature 391: 62-64, 1998)。
【0014】
本発明のある態様において、ナノチューブは、約10〜100 nm、100〜200 nm、200〜500 nm、500 nm〜1μm、1〜2μm、2〜5μm、5〜10μm、10〜20μm、20〜50μmおよび/または50〜100μmの長さを有してもよい。他の態様において、最長1〜2 mmの長いナノチューブを使用してもよい。いくつかの態様において、径約1〜1.5 nmの単層カーボンナノチューブを使用してもよい。他の態様において、約1〜2 nm、2〜3 nm、1〜5 nmおよび/または2〜10 nmのナノチューブ径を使用することができる。使用されるナノチューブの長さおよび/または径は限定されず、単層および多層ナノチューブを含む実質的に任意の長さまたは径のナノチューブが考慮される。本発明の特定の態様において、ナノチューブの径および長さは、特定のサイズ範囲に入るように選択することができる。以下に考察するように、ナノチューブの径は、少なくとも一部には、使用する触媒ナノ粒子140、230のサイズによって決定されうる。ナノチューブの長さを制御する種々の方法が公知であり(例えば、米国特許第6,283,812号)、任意のこのような公知の方法を使用することができる。
【0015】
本明細書に開示する特定の態様は、基板に結合しているパターン化されたナノチューブアレイを製造する方法および/またはそれを含む装置に関係する。種々の態様において、ナノチューブ間の平均距離、ナノチューブ距離の範囲または場合によっては、基板上のナノチューブの特定の分布パターンも制御することができる。このようなナノチューブアレイは、小型電子デバイス、化学デバイスおよび分子デバイスの製造、走査型プローブ顕微鏡に使用するためのプローブ、分子ワイヤー、超高速ランダムアクセスメモリーへの組み込み(Rueckes et al., Science 289: 94, 2000)、電界効果トランジスタ、単一電子トランジスタ、フィールドエミッタアレイ、フラットスクリーンパネル、電機機械トランスデューサ、分子スイッチおよびカーボンナノチューブアレイの任意の他の公知の用途を含むが、これらに限定されない種々の適用に有用である。
【0016】
カーボンアーク放電、炭化水素の触媒熱分解による化学蒸着、プラズマ支援化学蒸着、触媒金属含有グラファイト標的のレーザーアブレーションおよび凝縮相電気分解を含む、カーボンナノチューブを製造する種々の方法が公知である。(例えば、米国特許第6,258,401号、同第6,283,812号および同第6,297,592号参照)。しかし、このような公知の方法は、正確にパターン化されたアレイで基板に結合されているナノチューブを生じない。
【0017】
本発明の種々の態様において、基板に結合されているパターン化されたアレイのカーボンナノチューブは、核酸120またはペプチド210などのポリマー120、210に結合している触媒ナノ粒子140、230を使用して製造することができる。ポリマー120、210分子は、ナノチューブ合成前に規則的パターンで基板に結合されうるので、触媒を含有するポリマー120、210分子の基板上での分布によって判定するとき、得られるナノチューブは規則的パターンで基板に結合されている。ナノチューブ製造前に、ポリマー120、210分子は、例えば、大気または酸素中で約600〜800℃に加熱することによって除去することができる。
【0018】
フェリチンなどの触媒ナノ粒子140、230を使用してカーボンナノチューブを製造する方法は公知である。(例えば、Dai, Acc. Chem. Res. 35: 1035-44, 2002;Kim et al., Nano Letters 2: 703-708, 2002;Bonard et al., Nano Letters 2: 665-667, 2002;Zhang et al., Appl. Phys. A 74: 325-28, 2002;米国特許第6,232,706号および同第6,346,189号参照)。典型的には、触媒ナノ粒子140、230は、還元条件を提供するためにH2ガス同時-流動を使用して、約500〜1000℃の温度において触媒を含有するチューブリアクターに炭化水素ガス(例えば、CH4、C2H4)を流動させることによって、化学蒸着(CVD)法と併用使用される。触媒ナノ粒子140、230は、カーボンナノチューブ形成および成長のための核形成部位として作用する。このような条件下では、形成されるナノチューブの径は、使用する触媒ナノ粒子140、230の径の関数であると思われる(Dai, 2002)。ナノチューブ形成の機序は、ナノチューブ形成機序は、分解した炭素原子がナノ粒子140、230に吸収されて、固体炭素-金属溶液を形成し、次に過飽和し、ナノ粒子140、230から炭素原子が沈殿し、成長中のナノチューブベースに組み込まれることに関係することが示唆されている(Dai, 2002)。
【0019】
ナノチューブアレイの配列をさらに制御するためには、基板に取り付けた1対または複数対のマイクロ加工した電極を使用し、約1〜5 V/μm(ボルト/マイクロメーター)の電場強度の外部電場の存在下でカーボンナノチューブをCVD法によって成長させることができる(例えば、Dai, 2002)。電場は、長手軸に平行に成長する単層カーボンナノチューブ(SWNT)に双極子を誘導し、ナノチューブを電場に平行に成長させる。種々の態様において、配向が異なる電場の2対またはそれ以上の対の電極を使用して、ナノチューブを互いに角度を持って整列させることができる。電場によるナノチューブの整列は、CVD成長に使用される温度における熱変動に安定であることが報告されている(Dai, 2002)。
【0020】
このような方法は、シリコンチップなどの基板に結合されているカーボンナノチューブアレイを製造するために使用されており、ナノチューブが形成される領域110、310を、例えば、標準的な光-もしくは電子-ビームリトグラフィー、シャドウマスクまたはミクロ接触プリンティングにより触媒ナノ粒子140、230の基板上への分布を制御することによって決定することができる、 (Bonard et al., 2002)。しかし、基板上のこのような領域110、310内のナノチューブの分布パターンは本質的にランダムであり、ナノチューブ間の距離または各領域110、310内のナノチューブの正確な分布パターンへの制御はほとんどまたは全くない。本明細書に開示されている方法を使用すると、タンパク質210、ペプチド210または核酸120などのポリマー120、210の1箇所または複数箇所の選択された位置に触媒ナノ粒子140、230を結合することによって、隣接ナノチューブ間の距離を決定し、基板の個々の領域110、310内のナノチューブの分布パターンを制御することが可能である。例えば、ウイルスコートタンパク質ポリマー210を使用することによってまたは公知の立体配置の核酸120もしくはペプチド210を分子整列法と合わせて使用することによって、ポリマー120、210自体を基板上に規則的パターンで充填するように誘導することができるので、チップ上の選択された各領域110、310内のナノチューブの空間および分布を決定することができるカーボンナノチューブアレイを製造することが可能である。
【0021】
光ピンセット(例えば、Walker et al., FEBS Lett. 459: 39-42, 1999;Smith et al., Am. J. Phys. 67: 26-35, 1999)、直流(DC)および/または交流(AC)電場(例えば、Adjari and Prost, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 4468-71, 1991)、強磁性ナノ粒子140、230による磁場、微小流体(流体力学的)流動および/または分子コーミング(例えば、米国特許第5,840,862号;同第6,054,327号;同第6,344,319号)の使用を含むが、これらに限定されない、ポリマー120、210分子の分子整列のための数多くの公知の方法が有用となりうる。整列方法は限定するものではなく、任意の公知の方法を使用することができる。上記に考察するように、基板に結合しているポリマー120、210分子の分子整列法を、カーボンナノチューブを整列するための方法と併用して使用することができる。
【0022】
個々のポリマー120、210分子上の触媒ナノ粒子140、230の結合部位を決定することができる。例えば、タンパク質210またはペプチド210の特定のアミノ酸残基のストレプトアビジン修飾を使用して、三次元タンパク質210またはペプチド210構造の選択された部位にビオチン化フェリチン140、230を結合することができる。または、ストレプトアビジン修飾オリゴヌクレオチド150プローブを使用して、1本鎖DNA分子120の選択された位置にハイブリダイゼーションし、次にビオチン化フェリチン140、230を結合することができる。タンパク質210、ペプチド210、核酸120および他のポリマー120、210の多数の部位特異的修飾法が公知であり、開示されている方法に使用することができる。例えば、ペプチド210または核酸120を化学合成し、成長中のポリマー120、210のポリマー120、210配列内の所定の位置に修飾アミノ酸(例えば、ビオチン化リジンまたはビオシチン220)または修飾ヌクレオチドを導入することができる。次いで、修飾アミノ酸またはヌクレオチド残基を使用して、ポリマー120、210の特定の位置に触媒ナノ粒子140、230を結合することができる。アミノ酸またはヌクレオチドのアナログもナノ粒子140、230の部位特異的結合に使用することができる。または、標準的な方法を使用する合成後に、タンパク質210またはペプチド210のシステインまたはリジン残基などの特定の種類の残基を化学修飾することができる。次いで、修飾アミノ酸残基は、触媒ナノ粒子140、230の結合部位として作用することができる。他の選択肢として、側鎖特異的試薬を使用して、ナノ粒子140、230結合部位を作製することができる。例えば、ビオチン-PE-マレイミド(Dojindo Molecular Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)をタンパク質210もしくはペプチド210のシステイン残基またはスルフヒドリル修飾ヌクレオチドと反応させることができる。次いで、ビオチン部分160を使用して、アビジン-フェリチン結合ナノ粒子140、230に結合することができる。
【0023】
タンパク質210、ペプチド210および1本鎖核酸120が本明細書に開示されている例示的な態様に示されているが、態様は任意の特定の形態のポリマー120、210に限定されない。別の態様において、2本鎖核酸120に修飾オリゴヌクレオチド150を結合して、触媒ナノ粒子140、230に結合することができる3本鎖構造の短いセグメントを形成することが可能である。または、核酸120、ペプチド210およびタンパク質210以外の他の種類の公知のポリマー120、210をナノ粒子140、230結合に使用することができる。このようなポリマー120、210には、脂質、多糖、糖脂質、糖タンパク質、リポ多糖、リポタンパク質、アルカン、アルケン、アルキン、脂肪酸、リン脂質、スフィンゴ脂質等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。ある態様において、分岐鎖状核酸120または分岐鎖状タンパク質210などの分岐鎖状ポリマー120、210を使用することができる。
【0024】
ポリマー120、210分子に結合するのに好適なビオチン160またはアビジン170の結合物(例えば、Vector Laboratories, Burlingame, CA;E-Y Laboratories, Inc., San Mateo, CA)としてを含む、フェリチンなどのタンパク質-コーティング鉄ナノ粒子140、230は購入可能である。または、規定のサイズのナノ粒子140、230は公知の方法によって製造することができる(例えば、Li et al. J. Phys. Chem. B, 105: 11424-431, 2001)。例えば、制御可能な数のFe3+原子をアポフェリチンのコアに挿入することができる(Zhang et al., 2002)。例えば、800℃において5分間大気中においてか焼することにより、フェリチンシェルを除去し、鉄コアを酸化して、SWNTの触媒成長に好適な約1.5 nmの平均サイズの別個のFe2O3ナノ粒子140、230が製造される(Dai, 2002)。使用されるナノ粒子140、230の種類は限定されない。開示されている方法は鉄含有フェリチンナノ粒子140、230に関するが、非フェリチン鉄ナノ粒子140、230、ニッケルナノ粒子140、230、コバルトナノ粒子140、230、モリブデンナノ粒子140、230、亜鉛ナノ粒子140、230、ルテニウムナノ粒子140、230および/または合金ナノ粒子140、230などの他の公知の種類の触媒ナノ粒子140、230を使用することができる。唯一の要件は、触媒ナノ粒子140、230がカーボンナノチューブ形成を触媒することができるということである。
【0025】
本明細書において示すように、典型的にはナノチューブ製造中に、ポリマー分子は除去される。しかし、本明細書に開示されている方法のある局面において、触媒はモリブデンナノ粒子140、230であり、ポリマー120、210分子はナノチューブ製造中に除去されない。
【0026】
一態様において、本発明は、核酸120に結合している触媒ナノ粒子を使用して製造されるカーボンナノチューブアレイを提供する。有用な核酸分子120は任意の公知の方法によって作製することができる。本発明の一態様において、核酸120は天然型の1本鎖または2本鎖DNA分子であってもよい。種々の形態の細胞核酸120を作製し、単離する方法が公知である(例えば、Guide to Molecular Cloning Techniques, eds. Berger and Kimmel, Academic Press, New York, NY, 1987;Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., eds. Sambrook, Fritsch and Maniatis, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989参照)。適当である場合には、公知の方法、例えば、制限エンドヌクレアーゼ消化およびゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、天然型核酸120を制限処理し、短い長さの断片に選別することができる。2本鎖核酸120が作製される局面では、核酸に結合しているまたは核酸120にハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチドに結合している触媒ナノ粒子140、230からカーボンナノチューブが製造される前に、核酸120は、典型的には、焼き払われ、任意に変性される。
【0027】
天然型核酸120は1本鎖または2本鎖であってもよい。2本鎖核酸120を使用する場合には、基板に結合する前または結合した後に、公知の方法を使用して、例えば、約95℃に約5分加熱して、2本鎖を分離することによって鎖を分離することができる。1本鎖核酸120は、ビオチン160結合オリゴヌクレオチド150などの特定のプローブ配列へのハイブリダイゼーションを容易にするために使用することができる。
【0028】
天然型核酸120またはその断片は選択された任意の長さであってもよい。本発明のある態様において、最長約10,000塩基対(10 kb)または長さ約3.4μmの核酸120を使用することができる。最長完全長の染色体DNAの非常に長い天然型核酸120は公知で、開示されている方法に使用することができる。再現性の高いサイズのDNA断片120が必要とされる場合には、公知のサイズのプラスミド、コスミド、細菌染色体または他の天然核酸120を複製、精製し、例えば、公知の単一部位制限エンドヌクレアーゼで切断して、正確なサイズの2本鎖核酸120を作製することができる。
【0029】
本発明の他の態様において、非天然型核酸120を使用することができる。例えば、2本鎖核酸120は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR3)増幅などの標準的な増幅方法によって作製することができる。増幅は、鋳型に結合して、長さ最長数何塩基対までの選択された任意のサイズの増幅セグメント(アンプリコン)を作製するように設計されているプライマーペアーを使用することができる。核酸120増幅方法は当技術分野において公知である。
【0030】
非天然型核酸120の他の起源には化学合成された核酸120が挙げられる。このような核酸120は市販の起源(例えば、Midland Certified Reagents, Midland TX; Proligo, Boulder, CO)から入手することができる。または、核酸120は、市販業者(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CA)から購入することができる多種多様のオリゴヌクレオチド150合成装置を使用して化学合成することができる。典型的には、化学合成される核酸120は幾分サイズが限定される。約50〜100ヌクレオチドが組み込まれたら、組み込み効率により産物の収率は低い。しかし、短いオリゴヌクレオチド150は、例えば、重複する相補的配列をハイブリダイゼーションし、ライゲーションすることによって長さを増加することができる。核酸120の化学合成により、核酸120配列の選択された任意の部位に組み込むことができ、触媒ナノ粒子140、230の結合部位として作用することができる修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを組み込むことができる。本発明の別の態様において、ナノ粒子140、230結合部位は、修飾オリゴヌクレオチド150とのハイブリダイゼーションを使用して位置づけることができる。このようなオリゴヌクレオチド150は、核酸120の1つだけの部位に結合するように設計することができ、例えば、アビジン-フェリチンナノ粒子140、230などのナノ粒子140、230の結合を容易にするためにビオチン化によって修飾することができる。
【0031】
本発明の種々の態様において、固体表面への結合によって核酸分子120を固定することができる。核酸分子120の固定は、非共有結合または共有結合に関係する種々の公知の方法によって実施することができる。例えば、固定は、固体表面にストレプトアビジンまたはアビジン170をコーティングし、ビオチン160結合核酸120を結合することによって実施することができる。固定はまた、ケイ素、石英、PDMS(ポリジメチルシロキサン)などのポリマー表面または他の固体表面にポリ-L-Lysまたはアミノシランをコーティングし、次に二官能性架橋試薬を使用してアミノ-またはスルフヒドリル修飾核酸120を共有結合することによっても実施することができる。有用であると思われる二官能性架橋試薬には、グルタルアルデヒド、二官能性オキシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよび1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどのカルボジイミドが挙げられる。
【0032】
固定は、化学修飾した表面、例えば、酸処理したケイ素に5'-リン酸化核酸120を直接共有結合することによって実施することができる。核酸120と固体表面との共有結合は、架橋試薬との縮合によって形成することができる。この方法は、主に、5'-ホスフェートを介する核酸120の5'結合を促進する。
【0033】
核酸120は、最初に表面をシラン処理し、次いでカルボジイミドまたはグルタルアルデヒドで活性化することによって表面に結合することができる。別の手法は、DNA合成中に核酸120が分子の3'または5'末端でアミノリンカーを介して組み込まれている3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたはアミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)などの試薬を使用することができる。核酸120を固定する他の方法は公知であり、使用することができる。
【0034】
本発明のある局面において、キャプチャーオリゴヌクレオチド150を表面に結合することができる。キャプチャーオリゴヌクレオチド150は、触媒ナノ粒子140、230に結合している核酸120の特定の配列にハイブリダイゼーションする。キャプチャーオリゴヌクレオチド150への核酸120のハイブリダイゼーション後、触媒ナノ粒子140、230で標識したオリゴヌクレオチド150セットを結合している核酸120にハイブリダイゼーションすることができる。
【0035】
核酸120の固定に使用される表面の種類は限定されない。種々の態様において、固定表面は石英、ケイ素、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ゲルマニウムまたは表面が、カーボンナノチューブ製造中に1000℃もの高温に達することがある温度の適用に安定である限り、当技術分野において公知の他の任意表面であってもよい。
【0036】
本発明のいくつかの態様において、核酸120または他のポリマー120、210分子は、カーボンナノチューブの合成前に基板に整列させることができる。最初に、公知の方法を使用して、核酸120を特定の領域110、310に結合することができる。例えば、光もしくは電子のビームリトグラフィー、シャドウマスクまたはミクロ接触プリンティングを使用して、基板を金薄膜でパターン形成することができる(Bornard et al., 2002)。チオール修飾核酸120を基板の金パッチ110、310に共有結合することができる。タンパク質210、核酸120および他のポリマー120、210を基板の特定の領域110、310に結合する方法は周知であり、フォトリトグラフィーおよびエッチング、レーザーアブレーション、分子線エピタキシー、ディップ-ペンナノリトグラフィー、化学蒸着(CVD)製造、電子線もしくは集束イオンビーム技術またはインプリンティング法を含むが、これらに限定されない任意のこのような公知の方法を使用することができる。
【0037】
結合された核酸120は数多くの公知の方法のいずれかを使用して整列させることができる。基板に核酸120を整列させる例示的な方法は分子コーミングとして公知である。(例えば、Bensimon et al., Phys. Rev. Lett. 74:4754-57, 1995;Michalet et al., Science 277: 1518-23, 1997;米国特許第5,840,862号;同第6,054,327号;同第6,225,055号;同第6,248,537号;同第6,265,153号;同第6,303,296号および6,344,319号参照)。この方法において、核酸120または他の親水性ポリマー120、210を、シリコンチップなどの基板の一方の端または両方の端に結合する。基板および結合している核酸120を緩衝水溶液などの溶液に浸漬し、溶液からゆっくり引き上げる。空気-水界面の移動が、メニスカスの移動方向に平行に、結合している核酸120を整列させる働きをする。
【0038】
使用するポリマー120、210整列方法は限定するものではなく、光ピンセット、DCおよび/またはAC電場、微小流体流動および/または結合している強磁性ナノ粒子140、230に適用される磁場の使用を含むが、これらに限定されない任意の公知の方法が考慮される。限定するものではない別の例において、核酸120または他の荷電ポリマー120、210を、フリーフロー電気泳動によって基板に整列させることができる(例えば、Adjari and Prost, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 4468-71, 1991)。表面は、電極として機能する導電体と非導電体の交互のバンドを含んでも、または他の種類の微小電極を使用してもよい。交流電場の存在下では、核酸120のリン酸基などの荷電残基を含むポリマー120、210は電場により整列する(Adjari and Prost, 1991)。この方法は核酸120に限定されず、荷電基を含有するタンパク質210または他のポリマー120、210に適用することができる。ポリマー120、210の荷電が一定でない場合には、例えば、溶液のpHを変更することによって正味荷電を操作することができる。
【0039】
種々の種類のポリマー分子(すなわち、分子ワイヤーまたは連結分子鎖)の流体的整列が実証されている(Bensimon et al., Science, 265: 1096-98(1994)(2本鎖DNA);Lieber et al., Science, 291: 630(2001(半導体ナノワイヤー);Lienemann et al., Nanoletters, 1:345(2001)(1本鎖DNA))。しかし、これらの方法の問題は、短い分子ワイヤーの整列収率が低いことである。1本鎖DNAは、以下の理由のために整列が特に困難である。
1)流動は、分子内塩基対形成を破壊するのに十分な引っ張り力を提供しないことが多い(Hansma, et al., Nucleic Acids Res. 24: 713(1996))。
2)1本鎖核酸は非常に柔軟であり、乾燥によりほどけないようにするのが困難である。
3)整列される前に強く正に荷電した表面に結合する分子がある。および
4)1本鎖核酸の原子間力顕微鏡(AFM)観察は、高さ不足により困難である。
【0040】
これらの問題を解決しようとして、Lienemannら(2001)は、流体的整列前にDNAを加熱して、分子内塩基対形成を破壊した。これは、整列収率のある程度の成功を達成したが、加熱段階は、ハイブリダイゼーションによって結合される核酸の任意の特徴を変性した。従って、核酸依存性(deirected)パターン形成などの適用は本発明に可能ではない。
【0041】
従って、図4に示すように、熱変性を生じないで、高い収率で短い分子ワイヤー420を整列させる方法が本明細書において提供されている。本発明の方法によると、ファージΣDNAなどの2本鎖DNA410が分子ワイヤー420の両方の末端に結合され、流体的整列が固定面に実施される。固定面は正に荷電した面430である例もある。本発明の方法は、特に、「2本鎖DNA/強制流動整列」と本明細書において呼ばれる。
【0042】
分子ワイヤー420を整列させる方法は、2本鎖DNA分子410に分子ワイヤー420をライゲーションして、2本鎖DNA/分子ワイヤーハイブリッド分子440を作製し、正に荷電した表面430に適用し、流体的整列を使用して正に荷電している表面430に整列する段階を含む。さらに、本発明の方法は、典型的には、2本鎖DNA/分子ワイヤーハイブリッド分子440を乾燥して表面430に固定する段階に関係する。分子ワイヤー420は、2本鎖DNA/分子ワイヤーハイブリッド分子440の2つの2本鎖核酸410間に「サンドイッチ」される。
【0043】
ある局面において、分子ワイヤー420は1本鎖核酸120である。他の局面において、分子ワイヤーはペプチドである。ある局面において、例えば、分子ワイヤー420は、直接もしくは間接的に結合しているフェリチンナノ粒子などの触媒ナノ粒子140、230を含む、または触媒ナノ粒子が結合することができるビオチン化またはアビジンなどの結合パートナーを含む。従って、ある局面において、分子ワイヤー420は、触媒ナノ粒子140、230に結合している1本鎖DNAなどの1本鎖核酸分子120である。さらに、本発明の方法は、触媒ナノ粒子140、230上にカーボンナノチューブを製造する段階を含むことができる。
【0044】
ある局面において、オリゴヌクレオチド150は、2本鎖DNA/分子ワイヤーハイブリッド分子440の2本鎖DNA410間にサンドイッチされている1本鎖核酸分子120分子ワイヤー420に結合している。例えば、オリゴヌクレオチド150は、1本鎖DNA120にハイブリダイゼーションしている修飾オリゴヌクレオチド150または修飾150の集団であってもよい。さらに、修飾オリゴヌクレオチド150、460または修飾オリゴヌクレオチド150、460の集団は、本明細書において以下にさらに詳細に開示されているように、フェリチンなどの触媒ナノ粒子140に直接または間接的に結合することによって修飾されてもよい。これらの局面において、2本鎖DNA/分子ワイヤーハイブリッド分子440の2本鎖DNA410間にサンドイッチされている1本鎖DNA120は、修飾オリゴヌクレオチド150、460にハイブリダイゼーションする、本明細書において以下に開示されているキャプチャーオリゴヌクレオチド120である。修飾オリゴヌクレオチド150は、例えば、アビジン部分を介して触媒ナノ粒子140に結合しているビオチン部分で修飾されてもよい。
【0045】
本明細書において提供される2本鎖DNA/強制流動整列方法に使用される2本鎖DNA120は、特定のヌクレオチド配列に関して限定されないが、典型的には、長さ約100〜1,000,000ヌクレオチドであり、ある局面において長さ500〜50,000ヌクレオチドである。ある局面において、2本鎖DNAはファージλDNAである。2本鎖DNAを1本鎖DNAおよびペプチドなどの分子ワイヤーにライゲーションする方法は当技術分野において公知である。例えば、DNAリガーゼを使用して、2本鎖DNAを1本鎖DNAにライゲーションすることができる。
【0046】
本明細書に提供されている2本鎖DNA/強制流動整列方法は、2本鎖DNA上に作製され、ライゲーションされた分子ワイヤー上を通過する1本鎖DNAなどの分子ワイヤーにかなり大きい伸縮力を提供する。従って、熱変性などの段階を回避することができる。さらに、乾燥後、2本鎖DNAは表面にしっかりと結合し、2本鎖DNAによって各末端に結合されている分子ワイヤーが直鎖状の立体配座を維持するように固定として作用する。また、整列のために必要な表面の正荷電は小さく、さらに整列収率を増加する。最後に、長い2本鎖DNAは、AFMまたは蛍光顕微鏡を使用して可視化することが容易である。これは、2本鎖DNAを追跡することによって、1本鎖DNAなどの分子ワイヤーの可視化を可能にする。
【0047】
理解されるように、2本鎖DNA/強制流動整列に多数の異なる正家電表面を使用することができる。例えば、固定表面は、石英、ケイ素、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ゲルマニウムまたは表面は、正に荷電しており、カーボンナノチューブ製造中に1000℃もの高温に達することがある温度の適用に安定である限り、当技術分野において公知の他の任意表面であってもよい。
【0048】
本明細書の本発明の一局面において、環状M13 DNAは制限酵素によって切断されて、1本鎖DNAを形成し、m13 DNAの特定の配列に特異的なビオチン-標識短鎖がハイブリダイゼーションされる。次いで、M13 DNAをλファージDNAのどちらかの部位にライゲーションする。次いで、ビオチン標識を使用して、アビジン-フェリチン分子に結合する。
【0049】
数多くの方法を使用して、触媒ナノ粒子を整列されている核酸または未-整列の核酸に結合することができる。基板に結合している核酸120を使用してパターン化されたアレイのカーボンナノチューブを製造する方法を例示している本発明の例示的な態様を図1に示す。金パッチ110などの基板の核酸120結合領域110を使用して、核酸ポリマー120を結合する。結合領域110は、サイズ1 nm〜約100 nmまたはそれ以上、最大サイズ1μmの任意の場所であってもよい。ある適用のために、サイズ1μm超の結合領域110を使用することができる。適用に応じて、ナノチューブが結合される基板構造は、当技術分野において周知である導電性材料および/または非導電性材料を含んでもよい。
【0050】
図1に例示する例において、ポリマー120は1本鎖DNA分子である。ポリマー120の一方の端は、基板のDNA結合領域110に結合するために、例えば、チオール基で共有結合により修飾することができる。基板に結合しているDNA分子120は、例えば、光ピンセット、分子コーミング、磁場、微小流体流動および/またはフリーフロー電気泳動によって整列させることができる。本発明の特定の実施態様において、本発明の特定の態様において、整列後に基版にDNA120を固定するために、核酸120の他方の末端に第2の基130を修飾することができる。または、DNA分子120は、基板に正電苛を適用し、DNA分子120を基板上で乾燥することによって固定することができる。ある局面において、本明細書に開示するように、DNA分子120は2本鎖DNA/強制流動整列を使用して整列される。上記に考察するように、基板に核酸120を固定する他の公知の方法を使用することができる。
【0051】
本発明のいくつかの態様において、ストレプトアビジン-コーティングマイクロビーズを使用して、DNA分子120を同定および/または定量することができる。領域110に結合されるDNA分子120の数は、例えば、DNA-ビーズ複合体のバネ張力を測定することによってまたは色素染色DNA分子120を可視化することによって定量することができる。ある態様において、1つのDNA分子120を金パッチ110に結合することが可能である。
【0052】
図1に示すように、触媒ナノ粒子140は、修飾オリゴヌクレオチド150とのハイブリダイゼーションを使用して、DNAポリマー120に結合することができる。オリゴヌクレオチド150の配列は各DNAポリマー120内の1つだけの相補鎖に結合するように設計されても、または各DNA分子120の多数の部位に結合するように設計されてもよい。隣接オリゴヌクレオチド150の位置およびその間の距離は、ハイブリダイゼーションに適当な相補的配列を選択することによって選択することができる。
【0053】
この例示的な態様において、オリゴヌクレオチド150は、一方の末端がビオチン部分160に結合される。ナノ粒子140結合を促進するためには、オリゴヌクレオチド150のビオチン160標識末端の配列は、DNA分子120に相補的でないように設計することができる。従って、オリゴヌクレオチド150のビオチン160標識末端は基板表面から突出する。これは、ビオチン160標識末端の、例えば、アビジン部分170に結合している触媒ナノ粒子140への非共有結合を容易にする。結合相互作用は1対1化学量論で生じるので、各オリゴヌクレオチド150は1つだけの触媒ナノ粒子140に結合する。限定するものではないこの例において、各触媒ナノ粒子140は、アビジン170結合フェリチン分子140を含む。ハイブリダイゼーションしていないオリゴヌクレオチド150および結合していないナノ粒子140は、例えば、非イオン界面活性剤を含有する緩衝水溶液を使用して基板から洗浄除去することができる。基板上のナノ粒子140の分布は、操作型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、操作型プローブ電子顕微鏡(SPM)または他の公知の方法によって検証することができる。
【0054】
開示されている本発明の態様は限定するものではないことおよび基板に核酸120を結合するおよび/または核酸120に触媒ナノ粒子140を結合する他の方法を使用することができることを当業者は理解している。例えば、ビオチン160標識ヌクレオチドを直接DNA分子120に組み入れることによって、フェリチン140に結合するように核酸120を直接修飾してもよい場合もある。本発明の別の態様において、オリゴヌクレオチド150などの結合基の使用は、立体障害を少なくすることによってナノ粒子140結合を促進することができる。
【0055】
触媒ナノ粒子140が基板に結合されたら、上記に開示するCVD法を使用して、カーボンナノチューブをナノ粒子140上に成長させることができる。ナノチューブの合成後、例えば、大気中または酸素中で約600〜800℃まで加熱して、残りのDNA分子120を基板から除去して、規則アレイの酸化鉄ナノチューブを基板に結合させることができる。
【0056】
以下の開示において、「タンパク質」210という用語は、ペプチド210、ポリペプチド210およびタンパク質210を含む、任意の長さのアミノ酸ポリマー210をいうために使用される。
【0057】
別の態様において、ペプチドまたはタンパク質に結合している触媒ナノ粒子を使用してカーボンナノチューブアレイを製造する方法が本明細書において提供される。精製タンパク質210は、Sigma Chemicals(St. Louis, MO)、Bio-Rad Laboratories(Hercules, CA)、Promega(Madison, WI)および多数の他の会社などの多種多様の市販品供給源から購入することができる。タンパク質210は、当技術分野において周知の方法を使用して、種々の起源から精製することもできる。このような方法は、典型的には、細胞または組織ホモジネートおよび/または抽出物をタンパク質210および非タンパク分画に最初に粗分別することに関係する。分別は、例えば、水溶液、界面活性剤および/または有機溶媒における溶解度の差、酵素消化による夾雑物の排除、硫酸アンモニウムによるタンパク質210の沈降、ポリエチレングリコール、抗体、熱変性等およびその後の超遠心分離を使用することができる。低分子量夾雑物は、透析、限外ろ過および/または有機相抽出によって除去することができる。
【0058】
タンパク質210は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、等電点電気泳動、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含むが、これらに限定されないクロマトグラフィーおよび/または電気泳動法を使用してさらに精製することができる。イムノアフィニティークロマトグラフィーおよび他の免疫学に基づいた方法は、関心対象のタンパク質210に特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体を使用している。このような抗体は市販品を購入しても、または当技術分野において公知の標準的な方法を使用して作製してもよい(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1988)。
【0059】
本発明の別の態様において、タンパク質210は、mRNA鋳型を用いるインビトロ翻訳システムを使用して発現することができる。インビトロ翻訳を実施するキットは、Ambion(Austin, TX)、Promega(Madison, WI)、Amercham Pharmacia Biotech(Piscataway, NJ)、Invitrogen(Carlsbad, CA)およびNovagen(Madison, WI)などの市販品供給業者から入手可能である。このようなキットは、総RNA、精製ポリアデニル化mRNAおよび/または精製した個別mRNA種を使用することができる。一般に使用されるインビトロ翻訳系は、ウサギ網状赤血球溶血液、小麦胚芽抽出液または大腸菌(E. coli) 抽出液に基づいている。このシステムは、リボソームサブユニット、トランスファーRNA(tRNA)、アミノアシル-tRNA合成酵素、開始、伸長および停止因子および/または翻訳に必要な全ての他の要素を含む粗細胞抽出液を含有する。本発明のある態様において、このような抽出液に存在する天然アミノ酸に、ビオシチン220などの1つまたは複数の異なる種類の標識アミノ酸を補給することができる。
【0060】
本発明のある別の態様において、インビトロ翻訳は、遺伝子の転写に関連してmRNAを作製することができる。このような転写/翻訳関連システムは、BAC(細菌人工染色体)、YAC(酵母人工染色体)、コスミド、プラスミド、ファージおよび/または他の公知の発現ベクターなどの標準的な発現ベクターに挿入されたPCR(登録商標)増幅産物および/またはDNA配列を使用することができる。転写/翻訳関連システムは、市販品供給源(例えば、Proteinscript3 IIキット、Ambion、Austin、TX;Quick Coupled System, Promega, Madison, WI; Expressway, Invitrogen, Carlsbad, CA)。
【0061】
関心対象のタンパク質210をコードする核酸120は、形質転換のための発現ベクターに組み込んで宿主細胞に導入し、コードされているタンパク質210を作製することもできる。完全な遺伝子が発現されてもまたはタンパク質210の一部をコードする遺伝子の断片が発現されてもよい。関心対象のタンパク質210をコードする遺伝子または遺伝子断片は、標準的なクローニング法によって発現ベクターに挿入することができる。
【0062】
本発明の他の態様において、タンパク質210は化学合成によって作製することができる。種々の自動タンパク質210合成装置は市販品を購入することができ、公知のプロトコールにより使用することができる。(例えば、Stewart and Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2d ed., Pierce Chemical Co., 1984; Tam et al., J. Am. Chem. Soc., 105: 6442, 1983; Merrifield, Science, 232: 341-347, 1986; Barany and Merrifield, The Peptides, Gross and Meienhofer, eds., Academic Press, New York, pp. 1-284, 1979)。通常最長約50〜100アミノ酸の短いタンパク質210配列はこのような方法で容易に合成することができる。このような合成タンパク質210は、タンパク質210配列の特定の位置に修飾アミノ酸残基および/またはアミノ酸アナログを含有するように設計することができる。さらに長いタンパク質210は、短い断片を化学合成して精製し、例えば、ペプチド結合のカルボジイミド触媒形成によって、断片をともに共有結合により架橋することによって作製することができる。しかし、長いタンパク質210は、典型的には、上記に考察するように、関心対象のタンパク質210をコードする適当な核酸120配列を発現ベクターにクローニングすることによって作製することができる。本発明の種々の態様において、長さ最長約100アミノ酸残基のタンパク質(サイズ約20〜40 nm)210を使用することができる。他の態様において、10アミノ酸残基から最長何千のアミノ酸残基の完全長のタンパク質210の任意の長さのタンパク質210を使用することができる。
【0063】
本発明のいくつかの態様において、使用する合成タンパク質210は、特定の三次元構造を示すおよび/またはタンパク質210の規則的四次集合物(quaternary aggregate)に自然集合するように設計することができる(例えば、Aggeli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98: 11857-11862, 2001; Brown et al., J. Am. Che. Soc., 124: 6846-48, 2002)。二次および三次構造に対する一次タンパク質210の構造(アミノ酸配列)の影響は当技術分野において公知である。
【0064】
ChouおよびFasman(Adv. Enzymol. 47: 45-148, 1978)により提案されたものなどの経験則に基づいて、タンパク質210構造のコンピューターモデル化を使用して、αヘリックス、βシートおよびリバースターンなどの種類の二次構造を予測するために使用されている。各種類のアミノ酸残基を異なる種類の二次構造を形成する確率値に割り当て、移動ウィンドウアルゴリズムが可能な構造の領域を検索する。デノボタンパク質210合成を使用する場合には、α-ヘリックス形成残基の高い割合を導入することによって、αヘリックスなどの特定の種類の二次構造を設計することができる。ヘリックス-ターミネーター(例えば、プロリン残基)を導入することによってヘリックスの末端を設計することができる。
【0065】
タンパク質210の三次(三次元)構造は、Monte Carloシミュレーション(例えば、Sadanobu and Goddard, J. Chem. Phys. 106: 6722, 1997)、エネルギー最小化法、分子力学(例えば、van Gunsteren and Berendsen, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 29: 992-1023, 1990)、トポマーサンプリング方法(例えば、Debe et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 96: 2596-2601, 1999)および他の公知の方法を含むが、これらに限定されない種々の公知の分子モデリング法を使用して予測することができる。タンパク質210の三次構造を予測するための標準的なコンピュータモデリングプログラムが利用可能である(例えば、AMBER, http::www.amber.ucsf.edu/amber; X-POLR, Yale University, New Haven, CT; INSIGHTII, Molecular Simulations Inc., San Diego, CA; CHARMM, Harvard University, Cambridge, MA; DISCOVER, Molecular Simulations Inc., San Diego, CA: GROMOS, ETH Zurich, Zurich, Switzerland)。
【0066】
タンパク質210の構造情報を含有する種々の例示的なデータベースおよび/またはタンパク質210構造を予測するためのコンピュータプログラムを以下の表1に示す。(http://www.aber.ac.uk/~phiwww/prof; http://www.embl-heidelberg.de/cgi/predator_serv.pl; http://www.embl-heidelberg.de/predictprotein/ppDoPredDef.htmlも参照)。
【0067】
(表1)タンパク質構造データベース

【0068】
タンパク質210の四次集合物を形成することができるタンパク質210配列を設計する方法は当技術分野において公知である。例えば、Aggeli et al.(2001)は、溶液中で一次元自己集合して、テープ、リボン、小繊維および繊維と呼ばれる規則的なアレイの三次構造を形成することができる、11アミノ酸残基棒様モノマー210に基づいた逆平行β-シート構造を開示した。幅8 nmの小繊維は極めて安定であることが観察された。モノマー210は、上面および下面が異なるように(例えば、親水性および疎水性)設計されたので、シリコン基板上でのこのような構造物の自己集合により、規則的二次元アレイの規則的に反復するサブユニット210を生ずるはずである。Aggeliら(2001)によって開示された棒様モノマー210は、L-アミノ酸のキラル性により固有のキラリティーを示し、三次構造のねじれを生じた。ねじれが望ましくない適用では、L-アミノ酸およびD-アミノ酸を交互に使用するとモノマー210のキラリティーをなくすことができ、モノマー210の平面的な集合物の安定性を改善することができる。
【0069】
限定するものではない別の例において、Brownら(2002)は、逆平行β-シートに集合するように設計された63アミノ酸残基モノマー210を含む、デノボ設計されたタンパク質210の鋳型依存性集合を考察した。モノマー210は、各々長さ7アミノ酸の6つのβ鎖を含んだ。シートの2つ面は、疎水性が大きいまたは親水性が大きいように設計された。六角形アレイの結晶を含む、高規則性の熱分解グラファイト(HOPG)表面にタンパク質210のモノマー溶液を接触させた。結果は、モノマー210は、HOPG表面をコーティングするシート様構造に集合し、構造の異なる部分は互いに対して120°の3つの好ましい配向を示すことを示した。集合したタンパク質210の3回対称性は、下層のグラファイトの六角形構造によって与えられることが提案された。無定形炭素表面上へのタンパク質210の沈着は規則アレイのタンパク質210を生じなかった。タンパク質210のこのような集合を使用して、シリコンチップなどの基板の領域110、310コーティングすることができる。下層のシリコンは構造が六角形でないので、タンパク質210集合は、3回対称性ではなく2回対称性を示すことが予想される。
【0070】
基板にタンパク質モノマー210を規則アレイで結合するこれらの方法および他の公知の方法を本明細書に開示されている方法および装置に使用することができる。規則アレイに自然に集合するウイルスコートタンパク質210などの天然型タンパク質210を使用することができる。または、規則アレイに集合するように設計されている合成タンパク質210を購入してもまたは化学合成してもよい。合成タンパク質210は、タンパク質210の一次構造および三次構造の特定の位置に修飾アミノ酸残基(例えば、ビオシチン220)またはアミノ酸アナログを組み込んで作製することができる。天然型タンパク質210は、公知の側鎖特異的試薬を使用して化学修飾することができる(例えば、Bell and Bell, Proteins and Enzymes, Ch. 7 and 8, Prentice-Hall, Inc., Englewood Cliffs, NJ 1988)。どちらの場合でも、例えば、上記に考察されているように、ビオチン160部分とアビジン170部分の結合を使用して、タンパク質210の選択された位置に触媒ナノ粒子140、230を結合することができる。または、タンパク質モノマー210の特定の位置に結合する抗体または抗体断片に触媒ナノ粒子140、230を結合してもよい。他の方法において、核酸120配列をタンパク質210の選択された位置に結合して、結合している触媒ナノ粒子140、230を含有するオリゴヌクレオチド150にハイブリダイゼーションしてもよい。
【0071】
上記に考察するように、分子コーミング、光ピンセット、微小流体流動、磁場、フリーフロー電気泳動等などの任意の公知の分子整列方法を使用してタンパク質210を整列させることができる。カルボジイミドまたはグルタルアルデヒドを介するシラン化および活性化などの標準的な方法を使用して、タンパク質210を基板に結合することができる。別の手法は、アミノ基を介して結合している3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GOP)またはアミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)などの試薬を使用することができる。金パッチ110、310にマイクロパターン化メルカプト安息香酸および/またはメルカプトヘキサデカン酸単層を形成するなどの他の公知の方法(例えば、Liu and Amro, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99: 5165-70, 2002)を使用することができる。この場合では、メルカプト部分が金パッチ110、310に結合して、例えば、単層の酸性部分と末端または側鎖アミノ基との間のカルボジイミド触媒共有結合形成によってタンパク質210の結合を可能にする。または、単層のカルボキシル基とタンパク質210の間に酸-酸ダイマー水素結合が形成してもよい。タンパク質は、4-メルカプト安息香酸の自己集合単層(SAM)を使用しても金パッチ110、310に固定することができる。本発明の別の他の態様において、金結合タンパク質210(例えば、Brown, Nano Lett. 1:391-394, 2001)を使用して、タンパク質210を金パッチ110、310に直接結合することができる。本発明の方法は限定するものではなく、基板にタンパク質分子210を結合および/または整列させる任意の公知の手法を使用することができる。
【0072】
本発明の特定の態様において、タンパク質モノマー210をともにライゲーションして、タンパク質210のコンカテマーおよび/または鎖を形成することができる。タンパク質210をライゲーションする方法および連結する方法は一般に公知であり(例えば、Thompson and Ellman, Chem. Rev. 96: 555-600, 1996; Cotton and Muir, Chemistry & Biology 6: R247, 1999; Nilsson et al., Organic Lett. 2: 1939, 2000)、任意のこのような公知の方法を使用することができる。
【0073】
基板に結合しているタンパク質120を使用してパターン化されたアレイのカーボンナノチューブを製造する方法を例示する本発明の例示的な態様を図2および図3に開示する。
【0074】
図2は、アミノ酸、アミノ酸アナログおよび/または修飾アミノ酸の直鎖状ポリマー210を含む例示的なタンパク質210を示す。限定するものではないこの例において、あるリジン残基は、リジンのビオチン化型であるビオシチン220で置換されている。この場合には、タンパク質210は化学合成によって製造することができ、合成過程中にビオシチン220残基を導入することができる。または、合成または天然型タンパク質210またはタンパク質210は、合成後または翻訳後にビオチン160または他のナノ粒子230結合基に結合するように化学修飾することができる。合成タンパク質210を使用する場合には、タンパク質210配列は、公知の方法(例えば、Aggeli et al., 2001; Brown et al., 2002)を使用して、特定の二次、三次および/または四次構造を形成するように設計することができる。例えば、Brownら(2002)に開示されている合成タンパク質210は数多くのリジン残基を含有し、その1つまたは複数はビオシチン220で置換されてもよい。このような残基は、そのタンパク質210によって形成されるβ-シート構造の親水性面に存在するので、ビオチン部分160は、それらがアビジン170結合フェリチンナノ粒子230に結合してもよい水性媒体に露出されると思われる。Brownら(2002)のタンパク質210は、HOPG面に規則アレイで集合することが実証されており、シリコンチップなどの基板の選択された領域310をコーティングするために使用してもよい。本発明の別の態様において、モノマータンパク質210は、公知の方法を使用してタンパク質210の鎖またはコンカテマーにおそらくライゲーションされると思われる。
【0075】
本発明の例示的な態様において、合成タンパク質210は、例えば、末端システイン残基を導入し、基板の選択された領域310にコーティングされた金モノマーにスルフヒドリル基を結合することによって、合成タンパク質210を基板に結合してもよい。または、ミクロパターン化メルカプト安息香酸および/またはメルカプトヘキサデカン酸モノマーを、基板の選択された領域310にコーティングされた金層に共有結合してもよい。例えば、水溶性カルボジイミドを使用して、末端酸性基をタンパク質210の末端または側鎖アミノ基に共有結合してもよい。この例は限定するものではなく、基板にタンパク質210を結合する任意の方法を使用することができる。基板に結合されているタンパク質210の数およびパターンをチェックするために、蛍光顕微鏡によって色素染色したタンパク質210を可視化してもよい。または、原子間力顕微鏡(AFM)または操作型トンネル顕微鏡(STM)などのSPM法によって、ナノ粒子230結合タンパク質210を可視化してもよい。
【0076】
図3は、基板に結合している例示的なナノ粒子230結合タンパク質210を例示する。例えば、末端システイン残基を、基板の金-コーティング領域310に共有結合してもよい。結合したタンパク質210は、光ピンセット、電気泳動、磁場、分子コーミング、微小流体流動等などの任意の公知の分子整列法によって整列することができる。整列後、例えば、乾燥することによって、タンパク質210を基板に固定することができる。
【0077】
タンパク質210を基板に結合する前または結合した後に、触媒ナノ粒子230をタンパク質210に結合することができる。タンパク質210が基板に自己集合する本発明の態様において、タンパク質210アレイが形成された後にナノ粒子230を結合することが有用となる場合がある。限定するものではないこの例において、アビジン170結合フェリチンナノ粒子230をタンパク質210のビオシチン基220に露出することができる。アビジン170とビオシチン220間の1対1結合が生じ、1つのフェリチンナノ粒子230に各ビオシチン残基220が結合する。これにより、基板の選択された領域310に規則アレイの触媒ナノ粒子230が配列されると思われる。基板を洗浄し、乾燥して、未結合のナノ粒子230を除去すると、上記に開示されているようにCVD方法によってカーボンナノチューブを製造することができる。残りのタンパク質210およびナノ粒子230のフェリチン要素は、上記に開示されているように、大気または酸素中で加熱し、基板を規則アレイのカーボンナノチューブに結合させることによって除去することができる。タンパク質210は高規則性のアレイで基板に充填され、ナノ粒子230は規則的な反復間隔で結合されるので、隣接ナノチューブ間の距離および各領域310内に配列されるナノチューブパターンを求めることができる。
【0078】
本発明は上記に記載されているが、改良および変更は本発明の精神および範囲内に含まれることが理解される。従って、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】核酸120に結合している触媒ナノ粒子140を使用してパターン化されたアレイのカーボンナノチューブを製造するための例示的な方法を例示する。
【図2】ペプチド210に結合している触媒ナノ粒子230を含むパターン化されたアレイのカーボンナノチューブを製造するための例示的な組成物を例示する。
【図3】ペプチド210に結合している触媒ナノ粒子230を使用してパターン化されたアレイのカーボンナノチューブを製造するための例示的な方法を例示する。
【図4】1本鎖DNAを流体的に整列するための例示的な方法を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 1つまたは複数のポリマー分子に1つまたは複数の触媒ナノ粒子を結合する段階;
b)基板にポリマー分子を結合する段階;
c)ポリマー分子を除去する段階;および
d)触媒ナノ粒子上でカーボンナノチューブを製造する段階:
を含む方法。
【請求項2】
ポリマーがペプチド、タンパク質または核酸である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリマーがペプチドまたはタンパク質である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ポリマーが核酸である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
1つの触媒ナノ粒子を各ポリマー分子に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
2つまたはそれ以上の触媒ナノ粒子を各ポリマー分子に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
各触媒ナノ粒子を、ポリマー分子のあらかじめ選択した位置に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ポリマー分子を基板に結合する前に、触媒ナノ粒子をポリマー分子に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ポリマー分子を基板に結合した後に、触媒ナノ粒子をポリマー分子に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ナノチューブを、規則アレイで基板に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
隣接カーボンナノチューブ間の距離が均一である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
カーボンナノチューブを、基板の選択した領域に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
選択した各領域内のナノチューブの分布が非ランダムである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
基板にポリマー分子を整列させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
ポリマー分子が、光ピンセット、直流電場、交流電場、磁場、分子コーミングまたは微小流体流動によって整列される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
ポリマー分子が2本鎖DNA/強制流動整列によって整列される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
触媒ナノ粒子がフェリチンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
炭化水素ガスによる化学蒸着を使用してカーボンナノチューブを製造する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
ナノ粒子が、ビオチン-アビジン結合またはビオチン-ストレプトアビジン結合を使用してポリマーに結合される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
基板が、ケイ素、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ゲルマニウム、1つまたは複数の金属および/または石英を含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
触媒ナノ粒子が、鉄、ニッケル、モリブデン、コバルト、亜鉛、ルテニウムおよび/またはコバルトを含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
基板の1つまたは複数の選択した領域に結合されている規則アレイのカーボンナノチューブを含み、該ナノチューブが非ランダムパターンで各領域に配列されている、装置。
【請求項23】
隣接ナノチューブ間の距離が均一である、請求項22記載の装置。
【請求項24】
各ナノチューブが触媒ナノ粒子に結合されている、請求項22記載の装置。
【請求項25】
ナノチューブが径が均一である、請求項22記載の装置。
【請求項26】
基板に結合される規則アレイのカーボンナノチューブを含むシステムであって、該ナノチューブが:
a)1つまたは複数のポリマー分子に1つまたは複数の触媒ナノ粒子を結合する段階;
b)基板にポリマー分子を結合する段階;および
c)触媒ナノ粒子上でカーボンナノチューブを製造する段階:
を含む方法によって製造されるシステム。
【請求項27】
ポリマー分子がタンパク質、ペプチドまたは核酸である、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
基板が、ケイ素、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ゲルマニウム、1つまたは複数の金属および/または石英を含む、請求項26記載のシステム。
【請求項29】
触媒ナノ粒子が、鉄、ニッケル、モリブデン、コバルト、亜鉛、ルテニウムおよび/またはコバルトを含む、請求項26記載のシステム。
【請求項30】
触媒ナノ粒子がフェリチンを含む、請求項26記載のシステム。
【請求項31】
a)分子ワイヤーを2本鎖DNA分子にライゲーションして、2本鎖DNA/分子ワイヤーハイブリッド分子を作製する段階;
b)2本鎖DNA分子ワイヤーハイブリッドをアンカー表面に適用する段階;および
c)流体的整列を使用してアンカー表面に2本鎖DNA/分子ワイヤーハイブリッドを整列させる段階:
を含む、分子ワイヤーを整列させる方法。
【請求項32】
2本鎖DNA/分子ワイヤーハイブリッド分子を表面に乾燥する段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
分子ワイヤーが1本鎖核酸である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
1本鎖核酸が1本鎖DNAである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
分子ワイヤーが触媒ナノ粒子に結合されている、請求項32記載の方法。
【請求項36】
触媒ナノ粒子からカーボンナノチューブを製造する段階をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
2本鎖DNAがファージλDNAである、請求項33記載の方法。
【請求項38】
1本鎖核酸にオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションする段階をさらに含む、請求項33記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−521222(P2007−521222A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547383(P2006−547383)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/043364
【国際公開番号】WO2005/066367
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】