説明

ペプチドイメージング剤

本発明は、インビボでの光学イメージングのために適した標識cMet結合ペプチドに関する。かかるペプチドは、赤色乃至近赤外領域でのイメージングに適した光学レポーター基で標識されている。また、医薬品組成物及びキット、並びに特に病気進行の検出、ステージング、診断、モニタリング又は結腸直腸癌(CRC)の治療のモニタリングで使用するためのインビボイメージング方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボでの光学イメージングのために適した標識cMet結合ペプチドに関する。かかるペプチドは、赤色乃至近赤外領域でのイメージングのために適した光学レポーター基で標識されている。また、特に結腸直腸癌(CRC)の診断で使用するためのインビボイメージング方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2005/030266号には、結腸直腸癌(CRC)の早期診断に対する医学的ニーズが存在することが開示されている。国際公開第2005/030266号は、CRCで異常に発現される生物学的標的に対して親和性を有する光学イメージング用造影剤を開示している。生物学的標的は、COX−2、β−カテニン、E−カドヘリン、P−カドヘリン、各種キナーゼ、Her−2、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、サイクリン、P53、チミジル酸シンターゼ、VEGFレセプター、EGFレセプター、K−ラス、腺腫性結腸ポリポーシスタンパク質、カテプシンB、uPAR、cMet、ムチン及びガストリンレセプターから選択される。好ましいかかる標的(7頁11〜12行目)は、cMet、MMP−14、COX−2、β−カテニン及びカテプシンBであると言われている。国際公開第2005/030266号のベクターは、ペプチド、ペプトイド部分、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、脂質関連化合物又は伝統的な有機薬物様小分子であり得る。レポーター部分は、好ましくは、電磁スペクトルの紫外部分から赤外部分までの波長領域の光と相互作用する色素である。
【0003】
散乱因子(SF)としても知られる肝細胞成長因子(HGF)は、治癒や血管形成のような各種の生理学的過程に関与する成長因子である。HGFとその高親和性レセプター(cMet)との相互作用は、腫瘍の成長、浸潤及び転移に関係している。
【0004】
Knudsen et alは、イメージング及び治療への応用可能性と共に、前立腺癌におけるHGF及びcMetの役割を総説している[Adv.Cancer Res.,91,31−67(2004)]。診断及び治療用の標識抗met抗体は、国際公開第03/057155号に記載されている。
【0005】
国際公開第2004/078778号は、cMet又はcMet及びHGFを含む複合体と結合するポリペプチド又は多量体ペプチド構築物を開示している。約10の異なるペプチド構造クラスが記載されている。国際公開第2004/078778号には、インビトロ及びインビボ用途のための検出可能な標識或いは治療用途のための薬物でペプチドを標識できることが開示されている。検出可能な標識は、酵素、蛍光化合物、光学色素、常磁性金属イオン、超音波造影剤又は放射性核種であり得る。国際公開第2004/078778号の好ましい標識は放射性核種又は常磁性金属であると述べられており、最も好ましくは金属キレーターでキレート化された金属からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/030266号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/057155号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/078778号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/082434号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/058371号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2005/044313号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2006/115633号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Knudsen et al:Advances in Cancer Research,91,31−67(2004).
【非特許文献2】Berlier et al:Journal of Histochemistry and Cytochemistry,51,1699−1712(2003).
【発明の概要】
【0008】
本発明は、インビボ光学イメージングのために適したイメージング剤であって、cMet結合環状ペプチドと、500〜1200nmの緑色乃至近赤外波長を有する光を用いて哺乳動物体のインビボイメージングを行うために適した光学レポーターイメージング成分とを含んでなるイメージング剤を提供する。cMet結合環状ペプチドは、国際公開第2004/078778号のペプチド構造クラスの1つに関係していて、cMetに対して最適の結合親和性を有する。これらのペプチドは、国際公開第2004/078778号に記載されているように、ファージディスプレイから導かれ、cMetに対する親和性及びHGFとの競合の欠如によって選択された。本発明のcMBP結合ペプチドは、好ましくはその末端の少なくとも一方が代謝阻害基(MIG)で保護されている。これはインビボ用途にとって重要な考慮事項であり、さもないと内在酵素及びペプチダーゼがペプチダーゼを急速に代謝させ、その結果としてcMet結合親和性の喪失、したがってインビボでの選択的標的化の喪失を招く。
【0009】
本発明は、インビボでcMet結合ペプチドを使用する最良の方法は他のイメージングモダリティー(例えば、核、MRI又は超音波)と違って光学レポーターの使用を必要とすることを教示すると共に、好ましい光学イメージングレポーターも提供する。緑色乃至近赤外領域(500〜1200nmの波長を有する光)が好ましいが、これはその領域がヘモグロビン、ポルフィリン類、メラニン及びコラーゲンのような内在組織及び物質と最小のスペクトルオーバーラップを有するからである[Licha,Topics Curr.Chem.,222,1−29(2002)]。自発蛍光に寄与する他の重要な物質はNADH、FAD及びエラスチンである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様では、本発明は次の式Iのコンジュゲートを含んでなるイメージング剤を提供する。
【0011】
【化1】

式中、
1はcMBPのN末端に結合していて、H又はMIGであり、
2はcMBPのC末端に結合していて、OH、OBc(式中、Bcは生体適合性陽イオンである。)又はMIGであり、
cMBPは、以下のアミノ酸配列(配列番号1)を含む17〜30アミノ酸のcMet結合環状ペプチドであり、
Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−
Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
(式中、X1はAsn、His又はTyrであり、X2はGly、Ser、Thr又はAsnであり、X3はThr又はArgであり、X4はAla、Asp、Glu、Gly又はSerであり、X5はSer又はThrであり、X6はAsp又はGluであり、Cysa-dの各々はシステイン残基であって、残基a及びb並びに残部c及びdは環化して2つの独立したジスルフィド結合を形成している。)
IGは、cMBPペプチドのインビボ代謝を阻害又は抑制する生体適合性基からなる代謝阻害基であり、
Lは式−(A)m−(式中、Aは独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基、或いはアミノ酸、糖又は単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であり、各Rは独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル及びC1-4ヒドロキシアルキルから選択され、mは1〜20の値を有する整数である。)の合成リンカー基であり、
nは0又は1の値を有する整数であり、
IMは、600〜1200nmの緑色乃至近赤外波長を有する光を用いて哺乳動物体のインビボイメージングを行うために適した光学レポーターイメージング成分である。
【0012】
「イメージング剤」という用語は、哺乳動物体のインビボイメージングを行うために適した化合物を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒト被験体である。イメージングは侵襲的(例えば、手術中検査又は内視鏡検査)であってもよいし、或いは非侵襲的であってもよい。好ましいイメージング方法は内視鏡検査である。式Iのコンジュゲートはインビボイメージングのために適するが、インビトロ用途(例えば、生物学的試料中のcMetを定量するアッセイ又は組織試料中のcMetの可視化)も有し得る。好ましくは、イメージング剤はインビボイメージングのために使用される。
【0013】
1基は、最後のアミノ酸残基のアミン基を置換する。したがって、Z1がHである場合、cMBPのアミノ末端は最後のアミノ酸残基の遊離NH2基で終わる。Z2基は、最後のアミノ酸残基のカルボニル基を置換する。したがって、Z2がOHである場合、cMBPのカルボキシ末端は最後のアミノ酸残基の遊離CO2H基で終わり、Z2がOBcである場合、末端カルボキシ基はCO2c基としてイオン化される。
【0014】
「代謝阻害基」(MIG)という用語は、アミノ末端(Z1)又はカルボキシ末端(Z2)におけるcMBPペプチドのインビボ代謝を阻害又は抑制する生体適合性基を意味する。かかる基は当業者にとって公知であり、ペプチドのアミン末端については、好適にはN−アシル化基−NH(C=O)RG(式中、アシル基−(C=O)RGはC1-6アルキル基及びC3-10アリール基から選択されるRGを有する。)から選択されるか、或いはポリエチレングリコール(PEG)構成単位からなる。好適なPEG基は、リンカー基(L)に関して下記に記載される。好ましいかかるPEG基は、式IA又はIBのバイオモディファイアーである。好ましいかかるアミノ末端MIGは、アセチル、ベンジルオキシカルボニル又はトリフルオロアセチルであり、最も好ましくはアセチルである。
【0015】
ペプチドのカルボキシ末端についての好適な代謝阻害基には、カルボキサミド、tert−ブチルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、アミノアルコール又はポリエチレングリコール(PEG)構成単位がある。cMBPペプチドのカルボキシ末端アミノ酸残基についての好適なMIG基は、アミノ酸残基の末端アミンがC1-4アルキル基(好ましくはメチル基)でN−アルキル化されている場合である。好ましいかかるMIG基はカルボキサミド又はPEGであり、最も好ましいかかる基はカルボキサミドである。
【0016】
式Iは、−(L)n[IM]部分がZ1、Z2又はcMBPの任意適宜の位置に結合し得ることを表している。Z1又はZ2に関しては、Z1/Z2のいずれかがMIGである場合、−(L)n[IM]部分はMIG基に結合し得る。Z1がH又はZ2がOHである場合、Z1又はZ2位置における−(L)n[IM]部分の結合は、それぞれ式[IM]−(L)n−[cMBP]−Z2又はZ1−[cMBP]−(L)n−[IM]の化合物を与える。いずれかのペプチド末端におけるcMBPの代謝の阻害は、−(L)n[IM]部分をこのように結合することでも達成できるが、−(L)n[IM]は本発明のMIGの定義範囲外である。
【0017】
式Iの−(L)n−部分は、IMの任意適宜の位置に結合し得る。−(L)n−部分は、IMの既存の置換基に取って代わるか、或いはIMの既存の置換基に共有結合する。−(L)n−部分は、好ましくはIMのカルボキシアルキル置換基を介して結合する。
【0018】
「cMet結合環状ペプチド(cMBP)」という用語は、cMetとしても知られる肝細胞成長因子(HGF)高親和性レセプター(cMet又は肝細胞成長因子レセプター)に結合するペプチドを意味する。本発明の好適なcMBP無ペプチドは、cMet/HGF複合体のcMetに関して約20nM未満の見掛けKDを有している。cMBPペプチドはプロリン残基を含み、かかる残基は主鎖アミド結合のシス/トランス異性化を示し得ることが知られている。本発明のcMBPペプチドは、任意のかかる異性体を含んでいる。
【0019】
「生体適合性陽イオン」(Bc)という用語は、イオン化して負に帯電した基と共に塩を形成する正に帯電した対イオンを意味する。この場合、前記正に帯電した対イオンも無毒性であり、したがって哺乳動物体(特に人体)への投与に適している。好適な生体適合性陽イオンの例には、アルカリ金属であるナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンがある。好ましい生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。
【0020】
「アミノ酸」という用語は、L−又はD−アミノ酸、アミノ酸類似体(例えば、ナフチルアラニン)或いはアミノ酸模倣体を意味し、これらは天然のもの又は純粋に合成由来のものであってよく、光学的に純粋なもの(即ち、単一の鏡像異性体、したがってキラルなもの)であるか、或いは鏡像異性体の混合物であってよい。本明細書中では、アミノ酸に関する通常の三文字略語又は一文字略語が使用される。好ましくは、本発明のアミノ酸は光学的に純粋なものである。「アミノ酸模倣体」という用語は、アイソスター(即ち、天然化合物の立体構造及び電子構造を模倣するように設計されたもの)である天然アミノ酸の合成類似体を意味する。かかるアイソスターは当業者にとって公知であり、特に限定されないが、デプシペプチド、レトロ−インベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,5−二置換テトラゾールを含む[M.Goodman,Biopolymers,24,137(1985)を参照されたい]。
【0021】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合(即ち、1つのアミノ酸のアミンを別のアミノ酸のカルボキシルに連結するアミド結合)によって連結された(上記に定義するような)2以上のアミノ酸を含む化合物を意味する。「ペプチド模倣体」又は「模倣体」という用語は、ペプチド又はタンパク質の生物学的活性を模倣するが、化学的性質がペプチド的でない(即ち、いかなるペプチド結合(つまり、アミノ酸間のアミド結合)も含まない)生物学的活性化合物をいう。ここでは、ペプチド模倣体という用語は広い意味で使用され、性質が完全にはペプチド的でない分子(例えば、プソイドペプチド、セミペプチド及びペプトイド)を包含する。
【0022】
「光学レポーターイメージング成分」(IM)という用語は、緑色乃至近赤外波長(500〜1200nm、好ましくは600〜1000nm)を有する光を用いる光学イメージング方法で直接又は間接に検出できる蛍光色素又は発色団を意味する。
【0023】
式Iのリンカー基−(A)m−の役割の1つは、IMをcMBPペプチドの活性部位から遠ざけることにあると想定されている。これが特に重要であるのは、イメージング成分が比較的バルキーである場合、酵素との相互作用が損なわれないようにするためである。これは、バルキーな基が活性部位から離れて位置する自由を与えるたわみ性(例えば、単純アルキル鎖)及び/又はIMを活性部位から離すように向ける剛性(例えば、シクロアルキル又はアリールスペーサー)を組み合わせることで達成できる。リンカー基の性質はまた、イメージング剤の生体分布を調整するためにも使用できる。即ち、例えばリンカー中にエーテル基を導入することは、血漿タンパク質結合を最小限に抑えるために役立つ。−(A)m−がポリエチレングリコール(PEG)構成単位又は1〜10のアミノ酸残基を有するペプチド鎖からなる場合、リンカー基はインビボでイメージング剤の薬物動態及び血中クリアランス速度を調整するために機能し得る。かかる「バイオモディファイアー」リンカー基は、バックグラウンド組織(例えば、筋肉又は肝臓)及び/又は血液からのイメージング剤のクリアランスを促進することで、バックグラウンド妨害を少なくして一層良好な診断画像を与えることができる。バイオモディファイアーリンカー基はまた、特定の排出経路(例えば、肝臓経由ではなく腎臓経由の排出)を有利にするためにも使用できる。
【0024】
「糖」という用語は、単糖、二糖又は三糖を意味する。好適な糖には、グルコース、ガラクトース、マルトース、マンノース及びラクトースがある。任意には、アミノ酸への容易なカップリングを可能にするように糖を官能化することができる。即ち、例えばアミノ酸のグルコサミン誘導体は、ペプチド結合を介して他のアミノ酸に結合させることができる。(NovaBiochem社から商業的に入手できる)アスパラギンのグルコサミン誘導体はこれの一例である。
【0025】
【化2】

好ましい特徴
イメージング剤の分子量は、好適には8000ダルトン以下である。好ましくは、分子量は2800〜6000ダルトンの範囲内にあり、最も好ましくは3000〜4500ダルトンの範囲内にあり、3200〜4000ダルトンが特に好ましい。
【0026】
本発明の好ましいイメージング剤は、両ペプチド末端がMIG基によって保護されている。即ち、好ましくはZ1及びZ2が共にMIGであり、これらは通常異なっている。上述の通り、Z1/Z2のいずれかが任意には−(L)n[IM]に等しくてよい。このようにして両ペプチド末端を保護することは、インビボイメージング剤用途にとって重要である。さもないと、急速な代謝の結果としてcMetに対する選択的結合親和性の喪失が予想されるからである。Z1及びZ2が共にMIGである場合、好ましくはZ1はアセチルであり、Z2は第一アミドである。最も好ましくは、Z1はアセチルであり、Z2は第一アミドであり、−(L)n[IM]部分はcMBPのリシン残基のε−アミン側鎖に結合している。
【0027】
本発明の好ましいcMBPペプチドは、cMet/HGFに対するcMetの結合に関して(蛍光偏光アッセイ測定結果に基づいて)約10nM未満のKDを有し、最も好ましくは1〜5nMの範囲内のKDを有し、3nM未満が理想的である。
【0028】
下記のように、式IのcMBPのペプチド配列(配列番号1)は17量体のペプチド配列であり、これが主としてcMetに対する選択的結合の原因をなす。
【0029】
Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−
Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
(配列番号1)
本発明のcMBPペプチドが17を超えるアミノ酸残基を含む場合、残りのアミノ酸はシステインは別にして任意のアミノ酸であり得る。追加の保護されないシステイン残基は、定義されたCysa−Cysb及びCysc−Cysdジスルフィドブリッジの不要のスクランブリングを引き起こすことがある。追加のペプチドは、好ましくは−(L)n[IM]部分の容易なコンジュゲーションのために適した側鎖を有する1以上のアミノ酸残基を含んでいる。好適なかかる残基としては、アミン官能化−(L)n[IM]基とのコンジュゲーションのためにはAsp又はGlu残基、或いはカルボキシ又は活性エステル官能化−(L)n[IM]基とのコンジュゲーションのためにはLys残基がある。−(L)n[IM]のコンジュゲーションのためのアミノ酸残基は、好適にはcMBPペプチドの17量体結合領域(配列番号1)から離れて位置しており、好ましくはC末端又はN末端に位置している。好ましくは、コンジュゲーションのためのアミノ酸残基はLys残基である。
【0030】
既知のアミノ酸置換体フェニルアラニン及びナフチルアラニンによる配列番号1のトリプトファン残基の置換を評価した。しかし、cMet親和性の喪失が見出され、これはトリプトファン残基は活性のために重要であることを示唆している。
【0031】
cMBPペプチドは、さらにN末端セリン残基を含んで18量体(配列番号2)を与えることが好ましい。
【0032】
Ser−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−
Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
(配列番号2)
配列番号1又は好ましくは配列番号2に加えて、cMBPは最も好ましくはさらに下記のいずれかを含んでいる。
(i)cMBPペプチドのC−又はN−ペプチド末端の4アミノ酸残基中にAsp又はGlu残基を含み、−(L)nIMが前記Asp又はGlu残基のカルボキシル側鎖に結合してアミド結合を与えるアミン基で官能化されている。
(ii)cMBPペプチドのC−又はN−ペプチド末端の4アミノ酸残基中にLys残基を含み、−(L)nIMが前記Lys残基のε−アミン側鎖に結合してアミド結合を与えるカルボキシル基で官能化されている。
【0033】
好ましいcMBPペプチドは、下記の22量体アミノ酸配列(配列番号3)を含んでいる。
【0034】
Ala−Gly−Ser−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−
3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
Gly−Thr(配列番号3)
本発明のcMBPペプチドは、好ましくはX3がArgに等しい。
【0035】
cMBPペプチドは好ましくは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3に加えて、さらに−Gly−Gly−Gly−Lys−(配列番号4)、−Gly−Ser−Gly−Lys−(配列番号5)及び−Gly−Ser−Gly−Ser−Lys−(配列番号6)から選択されるリンカーペプチドをN末端又はC末端に含んでいる。リンカーペプチドのLys残基は、−(L)n[IM]部分のコンジュゲーションのために最も好ましい位置である。特に好ましいcMBPペプチドは配列番号3を配列番号4のリンカーペプチドと共に含み、下記の26量体アミノ酸配列(配列番号7)を有している。
【0036】
Ala−Gly−Ser−Cysa−Tyr−Cysc−Ser−Gly−Pro−
Pro−Arg−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−Glu−
Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys(配列番号7)
配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号7のcMBPペプチドでは、好ましくはZ1=Z2IGであり、最も好ましくはZ1=アセチルかつZ2=第一アミドである。
【0037】
−(L)n[IM]部分は、好適にはZ1又はZ2のいずれかに結合しているか、或いは配列番号1のcMet結合配列と異なるcMBPペプチドのアミノ酸残基に結合している。好ましいアミノ酸残基及びコンジュゲーション部位は上述した通りである。−(L)n[IM]部分がZ1又はZ2に結合している場合、N末端又はC末端へのコンジュゲーションによってZ1又はZ2に置き換わり、そのようにしてインビボ代謝を阻止することができる。
【0038】
好ましいIM基は広範な非局在化電子系を有するものであって、例えば、シアニン類、メロシアニン類、インドシアニン類、フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、トリフェニルメチン類、ポルフィリン類、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン類、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン類、ナフトキノン類、インダスレン類、フタロイルアクリドン類、トリスフェノキノン類、アゾ色素、分子内及び分子間電荷移動色素及び色素錯体、トロポン類、テトラジン類、ビス(ジチオレン)錯体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)錯体、インドアニリン色素、ビス(S,O−ジチオレン)錯体である。緑色蛍光タンパク質(GFP)及び異なる吸収/発光特性を有するGFPの変種のような蛍光タンパク質も有用である。特定の状況においてはある種の希土類金属(例えば、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の錯体が使用され、蛍光ナノ結晶(量子ドット)についても同様である。
【0039】
使用できる発色団の具体例には、フルオレセイン、スルホローダミン101(Texas Red)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、Marina Blue、Pacific Blue、Oregon Green 488、Oregon Green 514、テトラメチルローダミン、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750がある。シアニン色素が特に好ましい。Licha et alはインビボ光学イメージング用の色素及び色素コンジュゲートを総説している[Topics Curr.Chem.,222,1−29(2002);Adv.Drug Deliv.Rev.,57,1087−1108(2005)]。
【0040】
発蛍光団である好ましいシアニン色素は、次の式IIのものである。
【0041】
【化3】

式中、
各X′は独立に−C(CH32、−S−、−O−及び−C[(CH2aCH3][(CH2bM]−(式中、aは0〜5の値を有する整数であり、bは1〜5の値を有する整数であり、MはG基であるか、或いはSO31及びHから選択される。)から選択され、
各Y′は独立にH、−CH2NH2、−SO31、−CH2COOM1、−NCS及びFからなる群から選択される1〜4の基を表し、Y′基は芳香環の任意の位置に位置しており、
Q′は独立にH、SO31、NH2、COOM1、アンモニウム、エステル基、ベンジル及びG基からなる群から選択され、
1はH又はBcであり、
lは1〜3の整数であり、
mは1〜5の整数であり、
X′、Y′及びQ′の少なくとも1つはG基からなり、
GはcMBPペプチドへの結合のために適した反応基又は官能基である。
【0042】
G基はcMBPペプチドの相補的な基と反応して、シアニン色素発蛍光団とcMBPペプチドとの間に共有結合を形成する。Gはペプチドの相補的な官能基と反応し得る反応基であってもよいし、或いは別法としてcMBPペプチドのと反応し得る官能基を含んでいてもよい。反応基及び官能基の例には、活性エステル、イソチオシアネート、マレイミド、ハロアセトアミド、ヒドラジド、ビニルスルホン、ジクロロトリアジン、ホスホラミダイト、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、カルボン酸及びチオホスフェートがある。好ましくは、Gは活性エステルである。
【0043】
「活性化エステル」又は「活性エステル」という用語は、良好な脱離基であり、したがってアミンのような求核性化合物との一層容易な反応を可能にするように設計された関連カルボン酸のエステル誘導体を意味する。好適な活性エステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、スルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、p−ニトロフェノール、ヒドロキシベンゾトリアゾール及びPyBOP(即ち、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)である。好ましい活性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミド又はペンタフルオロフェノールエステル、特にN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである。
【0044】
式IIの好ましい実施形態では、
各X′は−C(CH32−及び−C(CH3)[(CH24M]−(式中、MはG基又はSO31である。)から選択され、
各Y′はSO31、H又は1〜4のF原子を表し、
各Q′はG基及びSO31から選択され、
lは好ましくは2であり、
mは好ましくは3、4又は5であり、
X′又はQ′がG基である場合、最も好ましくはスクシンイミジルエステルである。
【0045】
特に好ましいシアニン色素は、次の式IIIのものである。
【0046】
【化4】

式中、
1及びR2は独立にH又はSO31(式中、M1はH又はBcである。)であって、R1及びR2の少なくとも一方はSO31であり、
3及びR4は独立にC1-4アルキル又はC1-6カルボキシアルキルであり、
5、R6、R7及びR8は独立にRa基(式中、RaはC1-4アルキル、C1-6カルボキシアルキル又は−(CH2kSO31であり、kは3又は4の値を有する整数である。)であるが、
シアニン色素がR1、R2及びRa基に合計1〜4個のSO31置換基を有することを条件とする。
【0047】
好ましい式IIIの色素は、cMBPへのコンジュゲーションを容易にするため、1以上のC1-6カルボキシアルキル基が存在するように選択される。
【0048】
好ましい式IIIの個別色素を表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】

特に好ましい式IIの色素はCy5**及びAlexa647であり、Cy5**が理想的である。
【0050】
合成リンカー基(L)が存在する場合、好ましくは[IM]及びZ1−[cMBP]−Z2へのコンジュゲーションを容易にする末端官能基を含む。Lが1〜10のアミノ酸残基を有するペプチド鎖を含む場合、アミノ酸残基は好ましくはグリシン、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びセリンから選択される。LがPEG部分を含む場合、好ましくは式IA又は式IBの単分散PEG様構造のオリゴマー化で導かれる単位を含む。
【0051】
【化5】

式IAの17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸。式中、pは1〜10の整数である。別法として、式IBのプロピオン酸誘導体に基づくPEG様構造も使用できる。
【0052】
【化6】

式中、pは式IAに関して定義した通りであり、qは3〜15の整数である。式IB中、pは好ましくは1又は2であり、qは好ましくは5〜12である。
【0053】
リンカー基がPEG又はペプチド鎖を含まない場合、好ましいL基は、2〜10の原子、最も好ましくは2〜5の原子、特に好ましくは2又は3の原子を含む−(A)m−部分を構成する結合原子の主鎖を有している。2つの原子を含む最小リンカー基主鎖は、いかなる望ましくない相互作用も最小限に抑えられるようにイメージング成分を十分に引き離すという利点を与える。
【0054】
式I中、nは好ましくは0又は1であり、最も好ましくは0である(即ち、いかなるリンカー基も存在しない)。
【0055】
本発明の好ましいイメージング剤は、次の式IVを有する。
【0056】
【化7】

式中、−(L)n[IM]基はLys残基のε−アミノ基に結合している。好ましい式IVのイメージング剤では、MIG(N末端Ala)はアセチルに等しく、MIG(C末端Lys)は第一アミドに等しい。式IV中、nは好ましくはゼロであり、IMはシアニン色素、最も好ましくは式IIのシアニン色素である。特に好ましい式IVのイメージング剤では、IM=Cy5**又はAlexa647であり、理想的にはIM=Cy5**である。
【0057】
本発明の式Z1−[cMBP]−Z2のペプチドは、
(i)所望のcMBPペプチドと同じペプチド配列を有し、Cysa及びCysbが保護されておらず、Cysc及びCysd残基がチオール保護基を有する線状ペプチドの固相ペプチド合成を行う段階、
(ii)段階(i)からのペプチドを塩基水溶液で処理することで、Cysa及びCysbを連結する第1のジスルフィド結合を有する単環式ペプチドを得る段階、並びに
(iii)Cysc及びCysdのチオール保護基を除去して環化することで、Cysc及びCysdを連結する第2のジスルフィド結合を有する所望の二環式ペプチド生成物Z1−[cMBP]−Z2を得る段階
を含んでなる製造方法によって得ることができる。
【0058】
「保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない程度に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望の生成物が得られる。アミン保護基は当業者にとって公知であり、好適にはBoc(ここでBocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(ここでFmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]及びNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から選択される。好適なチオール保護基は、Trt(トリチル)、Acm(アセトアミドメチル)、t−Bu(tert−ブチル)、tert−ブチルチオ、メトキシベンジル、メチルベンジル及びNpys(3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)である。さらに他の保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(John Wiley & Sons,1991)に記載されている。好ましいアミン保護基はBoc及びFmocであり、最も好ましくはBocである。好ましいチオール保護基はTrt及びAcmである。
【0059】
例1及び例2は一層具体的な詳細を示している。固相ペプチド合成法のさらなる詳細は、P.Lloyd−Williams,F.Albericio and E.Girald;Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins,CRC Press,1997に記載されている。cMBPペプチドは不活性雰囲気下で最もよく貯蔵され、フリーザー内に保存される。溶液として使用する場合、ジスルフィドブリッジのスクランブリングを生じるリスクがあるので、7より高いpHは避けるのが最もよい。
【0060】
イメージング剤は、第3の態様に関して(下記に)記載されるようにして製造できる。
【0061】
第2の態様では、本発明は、第1の態様のイメージング剤を哺乳動物への投与に適した形態で生体適合性キャリヤーと共に含んでなる医薬品組成物を提供する。
【0062】
「生体適合性キャリヤー」は、組成物が生理学的に許容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)イメージング剤を懸濁又は溶解できる流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤーは、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、生体適合性対イオンを有する血漿陽イオンの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。好ましくは、生体適合性キャリヤー媒質はパイロジェンフリー注射用水又は等張食塩水である。
【0063】
イメージング剤及び生体適合性キャリヤーはそれぞれ、注射器又はカニューレによる溶液の追加及び抜取りを許しながら、無菌保全性及び/又は放射能安全性の維持、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器からなる適当なバイアル又は容器に入れた状態で供給される。好ましいかかる容器は、気密クロージャーを(通例はアルミニウムからなる)オーバーシールと共にクリンプ加工した隔壁密封バイアルである。クロージャーは、無菌保全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したもの(例えば、クリンプ加工した隔壁シールクロージャー)である。かかる容器は、(例えば、ヘッドスペースガスの変更又は溶液のガス抜きのために)所望される場合にはクロージャーが真空に耐え得ると共に、酸素又は水蒸気のような外部大気ガスの侵入を許すことなしに減圧のような圧力変化にも耐え得るという追加の利点を有している。
【0064】
好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む(例えば、容積10〜30cm3の)単一のバルクバイアルからなり、したがって臨床的状況に合わせて製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分のヒト用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって好ましくは臨床用に適した使い捨て注射器又は他の注射器である。本発明の医薬品組成物は、好ましくは1人の患者用に適した用量を有し、上述したような適当な注射器又は容器に入れて供給される。
【0065】
かかる医薬品組成物は、抗菌防腐剤、pH調整剤、フィラー、安定剤又は重量オスモル濃度調整剤のような追加賦形剤を任意に含むことができる。「抗菌防腐剤」という用語は、潜在的に有害な微生物(例えば、細菌、酵母又はかび)の増殖を阻止する薬剤を意味する。抗菌防腐剤はまた、使用する用量に応じて多少の殺菌性を示すこともある。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、医薬品組成物中におけるこのような微生物の増殖を阻止することである。しかし、抗菌防腐剤は、投与に先立って前記組成物を製造するために使用されるキットの1種以上の成分中における潜在的に有害な微生物の増殖を阻止するためにも任意に使用できる。好適な抗菌防腐剤には、パラベン類(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはこれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールがある。好ましい抗菌防腐剤はパラベン類である。
【0066】
「pH調整剤」という用語は、組成物のpHがヒト又は哺乳動物への投与のために許容し得る範囲(およそpH4.0〜10.5)内にあることを保証するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調整剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン]のような薬学的に許容し得る緩衝剤、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物のような薬学的に許容し得る塩基がある。組成物をキットの形態で使用する場合には、pH調整剤を任意には独立のバイアル又は容器に入れて供給することができ、その結果としてキットのユーザーは多段操作の一部としてpHを調整することができる。
【0067】
「フィラー」という用語は、製造及び凍結乾燥中における材料の取扱いを容易にすることができる薬学的に許容し得る増量剤を意味する。好適なフィラーには、塩化ナトリウムのような無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースのような水溶性糖又は糖アルコールがある。
【0068】
第2の態様の医薬品組成物は、無菌製造条件下で(即ち、クリーンルーム内で)製造して所望の無菌で非発熱性の生成物を得ることができる。基本構成部分、特に関連する試薬並びにイメージング剤に接触する装置部品(例えば、バイアル)は無菌であることが好ましい。かかる構成部分及び試薬は、無菌濾過或いは(例えば、γ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いる)終末滅菌をはじめとする、当技術分野で公知の方法によって滅菌できる。一部の構成部分を予め滅菌しておけば、最小数の操作を実施すれば済むので好ましい。しかし、予防策として、医薬品組成物の製造における最終段階として少なくとも無菌濾過段階を含めることが好ましい。
【0069】
第2の態様の医薬品組成物は、任意には第4の態様に関して下記に記載するようなキットから製造される。
【0070】
第3の態様では、本発明は、第1の態様のイメージング剤の製造方法であって、
(i)Z1がHでありかつZ2がMIGである式Z1−[cMBP]−Z2のcMBPペプチドを式Y1−(L)n−[IM]の化合物と反応させることで、[IM]がZ1位置に結合した式Iのイメージング剤を得る段階、
(ii)Z1=Z2=MIGであり、cMBPがC−又はN−cMBPペプチド末端の4アミノ酸残基中にAsp又はGlu残基を含み、かつcMBPペプチドの他のAsp/Glu残基のすべてが保護されている式Z1−[cMBP]−Z2のcMBPペプチドを式Y1−(L)n−[IM]の化合物と反応させることで、[IM]がcMBPペプチドの前記Asp又はGlu残基の位置に結合した式Iのイメージング剤を得る段階、
(iii)Z1がMIGであり、Z3がZ2基又は活性化エステルであり、かつcMBPペプチドの他のAsp/Glu残基のすべてが保護されている式Z1−[cMBP]−Z3のcMBPペプチドを式Y2−(L)n−[IM]の化合物と反応させることで、[IM]がZ2位置に結合した式Iのイメージング剤を得る段階、及び
(iv)Z1=Z2=MIGであり、かつcMBPがC−又はN−cMBPペプチド末端の4アミノ酸残基中にLysを含む式Z1−[cMBP]−Z2のcMBPペプチドを式Y1−(L)n−[IM]の化合物と反応させることで、[IM]がcMBPペプチドのLys残基の位置に結合した式Iのイメージング剤を得る段階
の1つを含んでなり、式中のZ1、cMBP、Z2、MIG、L、n及びIMは(上記に)第1の態様で定義した通りであり、Z3はZ2基又は活性化エステルであり、Y1はカルボン酸、活性化エステル、イソチオシアネート基又はチオシアネート基であり、Y2はアミン基である、方法を提供する。
【0071】
「活性化エステル」又は「活性エステル」という用語及びその好ましい実施形態は、上述した通りである。Y2は好ましくは第一又は第二アミン基であり、最も好ましくは第一アミン基である。
【0072】
化合物Z1−[cMBP]−Z2では、好ましくはZ1及びZ2が共にMIGに等しい。好ましいcMBPペプチド及びZ1/Z2基は第1の態様で記載した通りである。詳しくは、第1の態様のcMBPペプチドに関して記載した通り、cMBPペプチドはコンジュゲーションを容易にするためにAsp、Glu又はLys残基を含むことが好ましい。段階(iv)に記載した通り、cMBPペプチドはLys残基を含むことが特に好ましい。
【0073】
1−[cMBP]−Z2の製法は、(上記に)第1の実施形態で記載されている。Z3が活性エステルであるZ1−[cMBP]−Z3ペプチドは、Z2がOH又は生体適合性陽イオン(Bc)であるZ1−[cMBP]−Z2から通常の方法によって製造できる。
【0074】
ペプチドへのコンジュゲーションに適するように官能化された光学レポーター色素(IM)は、GE Healthcare Limited、Atto−Tec社、Dyomics社、Molecular Probes社などから商業的に入手できる。かかる色素の多くはNHSエステルとして入手できる。
【0075】
好適な光学レポーター(IM)、特に色素をアミノ酸及びタンパク質に結合させる方法は、Licha(上記参照)並びにFlanagan et al[Bioconj.Chem.,,751−756(1997)]、Lin et al[ibid,13,605−610(2002)]及びZaheer[Mol.Imaging,(4),354−364(2002)]によって記載されている。リンカー基(L)をcMBPペプチドに結合させる方法は、色素のみを結合させる方法(上記参照)と類似の化学作用を使用し、当技術分野で公知である。
【0076】
第4の態様では、本発明は、第2の態様の医薬品組成物を製造するためのキットであって、当該キットは第1の態様のイメージング剤を無菌固体形態で含んでいて、第2の態様の生体適合性キャリヤーの無菌供給物で再構成すれば溶解が起こって所望の医薬品組成物が得られるキットを提供する。
【0077】
その場合、コンジュゲート及び上述したような他の任意賦形剤は、凍結乾燥粉末として適当なバイアル又は容器に入れて供給できる。イメージング剤は、次いで所望の生体適合性キャリヤーを用いて再構成することで、哺乳動物への投与が可能な無菌で非発熱性の形態の医薬品組成物を与えるように設計されている。
【0078】
イメージング剤の好ましい無菌固体形態は凍結乾燥固体である。無菌固体形態は、好ましくは医薬品組成物に関して(上記に)記載したような医薬品用容器に入れて供給される。キットを凍結乾燥する場合、配合物は糖類(好ましくはマンニトール、マルトース及びトリシン)から選択される凍結保護剤を任意に含むことができる。
【0079】
第5の態様では、本発明は、哺乳動物体のインビボ光学イメージング方法であって、第1の態様のイメージング剤又は第2の態様の医薬品組成物を用いてインビボでのcMetの過剰発現部位又は局在部位の画像を得ることを含んでなる方法を提供する。
【0080】
「光学イメージング」という用語は、赤色乃至近赤外領域(波長600〜1200nm)内の光との相互作用に基づいて、病気の検出、ステージング又は診断、病気進展の追跡、或いは病気治療の追跡のための画像を形成する任意の方法を意味する。光学イメージングはさらに、いかなる装置も使用しない直接可視化並びに各種スコープ、カテーテル及び光学イメージング装置(例えば、断層撮影表示用のコンピューター支援ハードウェア)のような装置の使用を伴う直接可視化のためのあらゆる方法を包含する。かかるモダリティ及び測定技法には、特に限定されないが、ルミネセンスイメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光学コヒーレンス断層撮影、透過率イメージング、時間分解透過率イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡検査、光音響イメージング、音響光学イメージング、スペクトル分析、反射スペクトル分析、干渉分析、コヒーレンス干渉分析、拡散光学断層撮影及び蛍光媒介拡散光学断層撮影(連続波、時間ドメイン及び周波数ドメインシステム)、並びに光の散乱、吸光、偏光、ルミネセンス、蛍光寿命、量子収量及び消光の測定がある。これらの技法のさらなる詳細は、Tuan Vo−Dinh(編):“Biomedical Photonics Handbook”(2003),CRC Press LCC、Mycek & Pogue(編):“Handbook of Biomedical Fluorescence”(2003),Marcel Dekker,Inc.、Splinter & Hopper:“An Introduction to Biomedical Optics”(2007),CRC Press LCCに示されている。
【0081】
緑色乃至近赤外領域の光は、好ましくは600〜1000nmの波長を有する。光学イメージング方法は、好ましくは蛍光内視鏡検査である。第5の態様の哺乳動物体は、好ましくは人体である。イメージング剤の好ましい実施形態は、第1の態様に関して(上記に)記載した通りである。特に、蛍光色素を使用することが好ましい。
【0082】
第5の態様の方法では、イメージング剤又は医薬品組成物は、好ましくは前記哺乳動物体に予め投与されている。「予め投与されている」とは、臨床医の関与の下でイメージング剤を例えば静脈内注射によって患者に投与する段階がイメージングに先立って既に実施されていることを意味する。この実施形態は、cMetが関係している哺乳動物体の病態のインビボ診断イメージング用の診断薬を製造するための、第1の実施形態のコンジュゲートの使用を含んでいる。
【0083】
第5の態様の好ましい光学イメージング方法は、蛍光反射イメージング(FRI)である。FRIでは、本発明のイメージング剤を診断すべき被験体に投与し、次いで被験体の組織表面を励起光(通常は連続波(CW)励起)で照明する。光はレポーター分子(IM)を励起する。励起光によって生じるイメージング剤からの蛍光を、蛍光検出器を用いて検出する。好ましくは、戻る光を濾光することで蛍光成分を(単独に又は部分的に)分離する。蛍光から画像を形成する。通常、最小限の処理が実施され(寿命、量子収量などの光学パラメーターを計算するためのプロセッサーは使用されない)、画像は蛍光強度をマップする。イメージング剤は、病気領域に集中して高い蛍光強度を生み出すように設計されている。したがって、病気領域は蛍光強度画像中に正のコントラストを生み出す。画像は好ましくはCCDカメラ又はチップを用いて得られ、そうすればリアルタイムイメージングが可能である。
【0084】
励起用の波長は、使用する色素の種類に応じて変化する。励起光を発生するための装置は、レーザー(例えば、イオンレーザー、色素レーザー又は半導体レーザー)、ハロゲン光源或いはキセノン光源のような通常の励起光源であり得る。任意には、各種の光学フィルターを用いて最適の励起波長を得ることができる。
【0085】
好ましいFRI方法は下記の段階を含んでなる。即ち、
(i)哺乳動物体内の検査対象組織表面を励起光で照明する段階、
(ii)イメージング成分(IM)の励起によって生じるイメージング剤からの蛍光を蛍光検出器を用いて検出する段階、
(iii)蛍光検出器によって検出された光を任意に濾光して蛍光成分を分離する段階、及び
(iv)段階(ii)又は段階(iii)の蛍光から前記検査対象組織表面の画像を形成する段階
を含んでなる。段階(i)では、励起光は好ましくは連続波(CW)の性質を有する。段階(iii)では、検出される光は好ましくは濾光される。特に好ましいFRI方法は蛍光内視鏡検査である。
【0086】
第5の態様の別のイメージング方法は、FDPM(周波数ドメイン光子移動)を使用する。これは、組織内におけるIMの検出深度が大きいことが重要である場合、連続波(CW)方法に比べて利点を有する[Sevick−Muraca et al,Curr.Opin.Chem.Biol.,,642−650(2002)]。かかる周波数/時間ドメインイメージングのためには、IMが画像化すべき病変の組織深度及び使用する計装のタイプに応じて変調できる蛍光特性を有するならば有利である。
【0087】
FDPM方法は下記のようなものである。即ち、
(a)不均質組成を有する前記哺乳動物体の光散乱性生体組織を、所定の経時変動強度を有する光源からの光に暴露してイメージング剤を励起する段階であって、組織が励起光を多重散乱させる段階、
(b)前記暴露に応答した組織からの多重散乱発光を検出する段階、
(c)組織内の様々な位置における蛍光特性のレベルにそれぞれ対応する複数の値をプロセッサーで確定することにより、発光から組織全体の蛍光特性を定量化する段階であって、蛍光特性のレベルが組織の不均質組成に応じて変化する段階、及び
(d)段階(c)の値に従って組織の不均質組成のマッピングを行うことで組織の画像を生成する段階
を含んでなる。
【0088】
段階(c)の蛍光特性は、好ましくはイメージング剤の取込みに対応し、好ましくはさらにイメージング剤の投与前における組織の吸着係数及び散乱係数に対応する複数の量のマッピングを含む。段階(c)の蛍光特性は、好ましくは蛍光寿命、蛍光量子効率、蛍光収量及びイメージング剤取込みの1以上に対応する。蛍光特性は、好ましくは発光強度に無関係であり、またイメージング剤濃度に無関係である。
【0089】
段階(c)の定量化は、好ましくは、(i)値の推定値を設定し、(ii)推定値の関数として計算発光を求め、(iii)計算発光を前記検出段階の発光と比較して誤差を求め、(iv)誤差の関数として蛍光特性の修正推定値を得ることを含む。定量化は、好ましくは組織の多重光散乱挙動をモデル化する数学的関係から値を求めることを含む。第1のオプションの方法は、好ましくはさらに、前記蛍光特性の変動を検出することでインビボでの組織の代謝特性をモニターすることを含む。
【0090】
第5の態様の光学イメージングは、好ましくは結腸直腸癌(CRC)の管理を容易にするために使用される。「CRCの管理」という用語は、病気進行の検出、ステージング、診断、モニタリング又は治療のモニタリングでの使用を意味する。好適な光学イメージング方法のさらなる詳細は、Sevick−Muraca et al[Curr.Opin.Chem.Biol.,,642−650(2002)]によって総説されている。
【0091】
第6の態様では、本発明は、哺乳動物体の病気進行の検出、ステージング、診断、モニタリング又は結腸直腸癌(CRC)の治療のモニタリングを行う方法であって、第5の態様のインビボ光学イメージング方法を含んでなる方法を提供する。
【実施例】
【0092】
以下に詳述する非限定的な実施例によって本発明を例証する。実施例1は、本発明のcMBPペプチド(化合物1)の合成法を示す。実施例2は、化合物1のペプチド配列がスクランブルされている、陰性対照としての関連ペプチドの合成法を示す。実施例3は、本発明の好ましい色素であるシアニン色素Cy5**の合成法を示す。実施例4は、Cy5**の活性エステルの合成法を示す。実施例5は、ペプチド(cMBPペプチド及び対照)に対する本発明のシアニン色素のコンジュゲーションを示す。化合物3波7をこのようにして比較した。実施例6は、インビトロでcMetに対するペプチドの親和性を測定する方法を示す。結果は、光学レポーターイメージング成分(シアニン色素)が結合している場合でも、結合は選択的であることを示している。実施例7は、癌の動物モデルにおける化合物5及び化合物7のインビボ試験に関するデータを示す。化合物5については優れた腫瘍
/バックグラウンド比がみられたのに対し、化合物7(陰性対照)は腫瘍とバックグラウンドとを識別しなかった。
【0093】
略語
通常の一文字又は三文字アミノ酸略語を使用する。
Acm: アセトアミドメチル
ACN(又はMeCN):アセトニトリル
Boc: tert−ブチルオキシカルボニル
DCM: ジクロロメタン
DMF: ジメチルホルムアミド
DMSO: ジメチルスルホキシド
Fmoc: 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HBTU: O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N′,N′−テトラメチ ルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
HSPyU: O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N′,N′−テトラメチレン
ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
NHS: N−ヒドロキシ−スクシンイミド
NMM: N−メチルモルホリン
NMP: 1−メチル−2−ピロリジノン
Pbf: 2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン5−スルホニ ル
PBS: リン酸塩緩衝食塩水
tBu: t−ブチル
TFA: トリフルオロ酢酸
TIS: トリイソプロピルシラン
Trt: トリチル
【0094】
【表2】


例1
【0095】
例1:化合物1の合成
段階(a):保護前駆体線状ペプチドの合成
前駆体線状ペプチドは下記の構造を有している。
【0096】
Ac−Ala−Gly−Ser−Cys−Tyr−Cys(Acm)−Ser−Gly−Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cys(Acm)−Trp−Cys−Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2
【0097】
0.1mmolのRink Amide Novagel樹脂から出発するFmoc化学を用いて、Applied Biosystems 433Aペプチド合成機上でペプチジル樹脂H−Ala−Gly−Ser(tBu)−Cys(Trt)−Tyr(tBu)−Cys(Acm)−Ser(tBu)−Gly−Pro−Pro−Arg(Pbf)−Phe−Glu(OtBu)−Cys(Acm)−Trp(Boc)−Cys(Trt)−Tyr(tBu)−Glu(OtBu)−Thr(ψMe,Mepro)−Glu(OtBu)−Gly−Thr(tBu)−Gly−Gly−Gly−Lys(Boc)−ポリマーをアセンブルした。カップリング段階では、(HBTUを用いて)予備活性化した過剰量の1mmolアミノ酸を適用した。Glu−Thrプソイドプロリン(Novabiochem 05−20−1122)を配列中に組み込んだ。樹脂を窒素バブラー装置に移し、無水酢酸(1mmol)及びNMM(1mmol)をDCM(5mL)に溶解した溶液で60分間処理した。濾過によって無水物溶液を除去し、樹脂をDCMで洗浄してから窒素流下で乾燥した。
【0098】
樹脂からのペプチド切断及び側鎖保護基の同時除去は、2.5%のTIS、2.5%の4−チオクレゾール及び2.5%の水を含むTFA(10mL)中で2時間と30分間実施した。樹脂を濾過によって取り除き、TFAを真空中で除去し、残留物にジエチルエーテルを添加した。生じた沈殿をジエチルエーテルで洗浄し、空気乾燥することで、264mgの粗ペプチドを得た。
【0099】
分取HPLC(勾配:40分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:30分)により粗ペプチドを精製することで、純粋な化合物1の線状前駆体100mgを得た。純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:6.54分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1464.6、MH22+実測値:1465.1)。
【0100】
段階(b):単環式Cys4−16ジスルフィドブリッジの形成
Cys4−16;Ac−Ala−Gly−Ser−Cys−Tyr−Cys(Acm)−Ser−Gly−Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cys(Acm)−Trp−Cys−Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2
【0101】
段階(a)からの線状前駆体(100mg)を5%DMSO/水(200mL)に溶解し、アンモニアを用いて溶液をpH6に調整した。反応混合物を5日間撹拌した。次いで、TFAを用いて溶液をpH2に調整し、大部分の溶媒を真空中での蒸発によって除去した。生成物の精製のため、残留物(40mL)を分取HPLCカラム上に少しずつ注入した。
【0102】
分取HPLC(勾配:0%Bを10分間、次いで40分で0〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:44分)により残留物を精製することで、純粋な化合物1の単環式前駆体72mgを得た。
【0103】
(異性体P1乃至P3の混合物としての)純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:5.37分(P1)、5.61分(P2)、6.05分(P3))によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1463.6、MH22+実測値:1464.1(P1)、1464.4(P2)、1464.3(P3))。
【0104】
段階(c):第2のCys6−14ジスルフィドブリッジの形成(化合物1)
段階(b)からの単環式前駆体(72mg)を窒素ブランケット下で75%AcOH/水(72mL)に溶解した。1M HCl(7.2mL)及びAcOH中の0.05M I2(4.8mL)をその順序で添加し、混合物を45分間撹拌した。1Mアスコルビン酸(1mL)を添加して無色の混合物を得た。大部分の溶媒を真空中で蒸発させ、残留物(18mL)を水/0.1%TFA(4mL)で希釈し、分取HPLCを用いて生成物を精製した。
【0105】
分取HPLC(勾配:0%Bを10分間、次いで40分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:43〜53分)により残留物を精製することで、52mgの純粋な化合物1を得た。純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:6.54分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1391.5、MH22+実測値:1392.5)。
例2
【0106】
例2:化合物2の合成
Ac−Thr−Gly−Glu−Cys−Thr−Cys(Acm)−Pro−Tyr−Trp−Glu−Phe−Arg−Pro−Cys(Acm)−Glu−Cys−Gly−Ser−Tyr−Ser−Gly−Ala−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2
【0107】
化合物2は、化合物1のペプチド配列がスクランブルされた陰性対照である。
【0108】
段階(a):保護前駆体線状ペプチドの合成
0.1mmolのRink Amide Novagel樹脂から出発するFmoc化学を用いて、Applied Biosystems 433Aペプチド合成機上でペプチジル樹脂H−Thr(tBu)−Gly−Glu(OtBu)−Cys(Trt)−Thr(tBu)−Cys(Acm)−Pro−Tyr(tBu)−Trp(Boc)−Glu(OtBu)−Phe−Arg(Pbf)−Pro−Cys(Acm)−Glu(OtBu)−Cys(Trt)−Gly−Ser(tBu)−Tyr(tBu)−Ser(ψMe,Mepro)−Gly−Ala−Gly−Gly−Gly−Lys(Boc)−ポリマーをアセンブルした。カップリング段階では、(HBTUを用いて)予備活性化した過剰量の1mmolアミノ酸を適用した。Tyr−Serプソイドプロリン(Novabiochem 05−20−1014)を配列中に組み込んだ。樹脂を窒素バブラー装置に移し、無水酢酸(1mmol)及びNMM(1mmol)をDCM(5mL)に溶解した溶液で60分間処理した。濾過によって無水物溶液を除去し、樹脂をDCMで洗浄してから窒素流下で乾燥した。
【0109】
樹脂からのペプチド切断及び側鎖保護基の同時除去は、2.5%のTIS、2.5%の4−チオクレゾール及び2.5%の水を含むTFA(10mL)中で2時間と10分間実施した。樹脂を濾過によって取り除き、TFAを真空中で除去し、残留物にジエチルエーテルを添加した。生じた沈殿をジエチルエーテルで洗浄し、空気乾燥することで、264mgの粗ペプチドを得た。
【0110】
分取HPLC(勾配:40分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:50mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×50mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:34.1分)により粗ペプチドを精製することで、200mLのACN/水に溶解された純粋なDX−1662陰性対照線状前駆体を得た。純生成物を分析HPLC(勾配:5分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.6mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 20×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:3.52分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1464.6、MH22+実測値:1464.9)。
【0111】
段階(b):単環式Cys4−16ジスルフィドブリッジの形成
Cys4−16;Ac−Thr−Gly−Glu−Cys−Thr−Cys(Acm)−Pro−Tyr−Trp−Glu−Phe−Arg−Pro−Cys(Acm)−Glu−Cys−Gly−Ser−Tyr−Ser−Gly−Ala−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2
【0112】
段階(a)からの陰性対照線状前駆体溶液(200mL、4.3.1参照)にDMSO(10mL)を添加し、アンモニアを用いて溶液をpH7に調整した。反応混合物を40℃で18時間加熱し、次いで60℃で60分間加熱した。TFAを用いて溶液をpH2に調整し、ACNを真空中での蒸発によって除去した。残留物を分取HPLCによる精製に付した。
【0113】
分取HPLC(勾配:0%Bを5分間、次いで60分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:50mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×50mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:29.6分)により残留物を精製することで、100mLのACN/水中に純粋な陰性対照単環式前駆体を得た。純生成物を分析HPLC(勾配:5分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.6mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 20×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:3.46分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1463.6、MH22+実測値:1463.7)。
【0114】
段階(c):第2のCys6−14ジスルフィドブリッジの形成(化合物2)
Cys4−16,6−14;Ac−Thr−Gly−Glu−Cys−Thr−Cys−Pro−Tyr−Trp−Glu−Phe−Arg−Pro−Cys−Glu−Cys−Gly−Ser−Tyr−Ser−Gly−Ala−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2
【0115】
段階(b)からの陰性対照単環式前駆体溶液(100mL)をAcOH(100mL)で希釈した。アルゴンブランケット下で1M HCl(5mL)及びAcOH中の0.05M I2(7mL)をその順序で添加し、混合物を20分間撹拌した。1Mアスコルビン酸(1mL)を添加して無色の混合物を得た。大部分の溶媒を真空中で蒸発させ、残留物(30mL)を水/0.1%TFA(100mL)で希釈し、分取HPLCを用いて生成物を精製した。
【0116】
分取HPLC(勾配:0%Bを10分間、次いで60分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:50mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×50mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:32.8分)により残留物を精製することで、30mgの純粋な化合物2を得た。純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:6.54分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1391.5、MH22+実測値:1392.5)。
例3
【0117】
例3:シアニン色素2−{(1E,3E,5E)−5−[1−(5−カルボキシペンチル)−3,3−ジメチル−5−スルホ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]ペンタ−1,3−ジエニル}−3−メチル−1,3−ビス(4−スルホブチル)−3H−インドリウム−5−スルホネート(Cy5**)の合成
【0118】
【化8】

(3a)5−メチル−6−オキソヘプタン−1−スルホン酸
【0119】
【化9】

水素化ナトリウム(鉱油中60%NaHの12.0g)のDMF(100ml)懸濁液に、氷浴で冷却しながらエチル2−メチルアセトアセテート(50g)のDMF(25ml)溶液を1時間かけて滴下した(内部温度0〜4℃)。この混合物を撹拌しながら45分間放置して周囲温度まで温めた後に再冷却した。次いで、1,4−ブタンスルトン(45g)のDMF(25ml)溶液を15分かけて滴下した。最終混合物を60℃で18時間加熱した。溶媒を回転蒸発によって除去し、残留物を水とジエチルエーテルとの間に分配させた。水性層を集め、新鮮なジエチルエーテルで洗浄し、回転蒸発させて粘着性の泡状物を得た。この中間体を水(100ml)に溶解し、撹拌しながら水酸化ナトリウム(17.8g)を15分かけて添加した。混合物を90℃で18時間加熱した。冷却した反応混合物を濃塩酸(約40ml)の添加で約pH2に調整した。溶液を回転蒸発させ、真空下で乾燥した。黄色の固体を、2%の塩酸を含むエタノール(3×150ml)で洗浄した。エタノール溶液を濾過し、回転蒸発させ、真空下で乾燥して黄色の固体を得た。収量70g。
【0120】
(3b)2,3−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−3H−インドール−5−スルホン酸二カリウム塩
【0121】
【化10】

4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸(40g)、(3aからの)5−メチル−6−オキソヘプタン−1−スルホン酸(60g)及び酢酸(500ml)を混合し、還流させながら6時間加熱した。溶媒を濾過し、回転蒸発させ、真空下で乾燥した。固体をメタノール(1L)に溶解した。これに水酸化カリウムの2Mメタノール溶液(300ml)を添加した。混合物を3時間撹拌し、次いで回転蒸発を用いて溶媒の体積を50%減少させた。得られた沈殿を濾別し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥した。収量60g。MS(LCMS):MH+ 362。正確な質量:実測値362.0729。MH+=C1420NO62はm/z 362.0732(−0.8ppm)を要求する。
【0122】
(3c)2,3−ジメチル−1,3−ビス(4−スルホブチル)−3H−インドリウム−5−スルホネート二カリウム塩
【0123】
【化11】

(3bからの)2,3−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−3H−インドール−5−スルホン酸(60g)を1,4−ブタンスルトン(180g)及びテトラメチレンスルホン(146ml)と共に140℃で16時間加熱した。得られた赤色固体をジエチルエーテルで洗浄し、粉砕して粉末にし、真空下で乾燥した。収量60g。
【0124】
(3d)TFA塩としてのCy5**
1−(5′−カルボキシペンチル)−2,3,3−トリメチル−インドリウムブロミド−5−スルホン酸K+塩(2.7g)、マロンアルデヒドビス(フェニルイミン)一塩酸塩(960mg)、無水酢酸(36ml)及び酢酸(18ml)を120℃で1時間加熱して暗赤褐色の溶液を得た。反応混合物を周囲温度に冷却した。(3cからの)2,3−ジメチル−1,3−ビス(4−スルホブチル)−3H−インドリウム−5−スルホネート(8.1g)及び酢酸カリウム(4.5g)を混合物に添加し、混合物を周囲温度で18時間撹拌した。得られた青色の溶液を酢酸エチルを用いて沈殿させ、真空下で乾燥した。粗色素を液体クロマトグラフィー(RPC18、水+0.1%TFA/MeCN+0.1%TFA勾配)によって精製した。主色素ピークを含む画分を集め、プールし、真空下で蒸発させることで、2gの標記化合物を得た。UV/Vis(水+0.1%TFA):650nm。MS(MALDI−TOF):MH+ 887.1。MH+=C38502144はm/z 887.1を要求する。
例4
【0125】
例4:2−[(1E,3E,5E)−5−[1−{6−[(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ]−6−オキソヘキシル}−3,3−ジメチル−5−スルホ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル]−3−メチル−1,3−ビス(4−スルホブチル)−3H−インドリウム−5−スルホネートジイソプロピルエチルアミン塩(Cy5**のNHSエステル)の合成
【0126】
【化12】

Cy5**(例3、10mg)を無水DMSO(3ml)に溶解し、これにHSPyU(20mg)及びN,N′−ジイソプロピルエチルアミン(80μl)を添加した。得られた溶液を3時間混合したところ、TLC(RPC18、水/MeCN)が反応の完了を示した。酢酸エチル/ジエチルエーテル中での沈殿によって色素を単離し、濾別し、酢酸エチルで洗浄し、真空下で乾燥した。UV/Vis(水)650nm。MS(MALDI−TOF)MH+ 983.5。MH+=C42533164はm/z 984.16を要求する。
例5
【0127】
例5:色素のコンジュゲーション、化合物3〜7の合成
Cys4−16,6−14;Ac−Ala−Gly−Ser−Cys−Tyr−Cys−Ser−Gly−Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cys−Trp−Cys−Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys(Cy5)−NH2(化合物3)。
【0128】
化合物1(10mg)、NMM(4μL)及びCy5 NHSエステル(5.7mg、GE Healthcare PA15104)をNMP(1mL)に溶解し、反応混合物を7時間撹拌した。次いで、反応混合物を5%ACN/水(8mL)で希釈し、分取HPLCを用いて生成物を精製した。
【0129】
分取HPLC(勾配:40分で5〜50%B(ただし、A=H2O/0.1%HCOOH及びB=ACN/0.1%HCOOH)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:35.5分)により粗ペプチドを精製することで、8.1mgの純粋な化合物3を得た。純生成物を分析HPLC(勾配:10分で5〜50%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:8.15分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて追加の生成物特性決定を実施した(MH22+計算値:1710.6、MH22+実測値:1711.0)。
【0130】
同様にして化合物4を製造し、エレクトロスプレー質量分析法で分析した(MH22+計算値:1710.6、MH22+実測値:1710.9)。
【0131】
他の色素−ペプチドコンジュゲート(化合物5〜7)を類似の方法で製造した。Ale
xa647はMolecular Probes社(A20106)から購入した。
化合物5(MH22+計算値:1825.7、MH22+実測値:1825.9)。
化合物6(MH22+計算値:1811.7、MH22+実測値:1812.0)。
化合物7(MH22+計算値:1825.7、MH22+実測値:1826.2)。
例6
【0132】
例6:インビトロ蛍光偏光アッセイ
蛍光偏光アッセイの原理を簡単に述べれば、以下の通りである。
【0133】
単色光が水平偏光フィルターを通過し、試料中の蛍光分子を励起する。垂直偏光面内に正しく配向した分子のみが光を吸収し、励起され、次いで光を放出する。放出された光を垂直面内及び水平面内で測定する。異方性値(A)は、下記の式に従った光強度の比である。
【0134】
【数1】

蛍光異方性測定は、ex646/em678nmでTecan Safire蛍光偏光プレートリーダー(Tecan社、米国)を使用しながら、384ウェルマイクロプレート中において結合緩衝液(PBS、0.01%Tween−20、pH7.5)中10μLの体積で実施した。色素標識ペプチドの濃度を一定(20nM)に保つと共に、ヒト又はマウスcMet/Fcキメラ(R&D Systems社)或いはSemaphorin 6A(R&D Systems社)の濃度を0〜150nMの範囲内で変化させた。結合混合物をマイクロプレート中において30℃で10分間平衡させた。観察された異方性の変化を下記の式に当てはめた。
【0135】
【数2】

式中、robsは観察された異方性であり、rfreeは遊離ペプチドの異方性であり、rboundは結合ペプチドの異方性であり、KDは解離定数であり、cMetは総cMet濃度であり、Pは総色素標識ペプチド濃度である。この式は、合成ペプチド及びレセプターが溶液中において1:1の化学量論比で可逆複合体を形成することを仮定している。GraphPad Prismソフトウェアを用いて非線形回帰によりデータ当てはめを行うことでKD値(一部位結合)を得た。
【0136】
ヒト及びマウスcMet(Fcキメラ)に対する結合に関して化合物3及び化合物4を試験した。結果は、ヒトcMetに対する化合物3の結合に関して3±1nMのKDを示した。ヒトcMetに対する化合物4の結合は存在しなかった。さらに、化合物3及び化合物4は試験範囲内ではマウスcMetに対する結合を示さなかった。同じ方法を用いて、化合物5はヒトcMetに関して1.1nMのKDを有することが判明した。
例7
【0137】
例7:化合物5及び化合物7のインビボ試験
(a)動物モデル
この試験では54頭の雌BALB c/Aヌード(Bom)マウスを使用した。動物の使用は地方倫理委員会によって承認された。BALB c/Aヌードは、他のヌードマウス系統に比べてヒト腫瘍に対し高い生着率を有する、同系交配された免疫無防備状態のマウス系統である。マウスは到着時に4週齢であり、試験の開始時には約20グラムの体重を有していた。動物は、HEPA濾過空気を備えた個別換気ケージ(IVC、Scanbur BK社)内に収容した。動物は、“Rat and Mouse nr.3 Breeding”飼料(Scanbur BK社)及び1mMのモル濃度にHClを添加して酸性化した水道水(pH3.0)に随意にアクセスできた。
【0138】
結腸癌HCT−15はヒト結腸癌腫から導かれ、Zeng et al[Clin.Exp.Metastasis,21,409−417(2004)]によればcMetを発現することが報告されている。この細胞株は、ヌードマウスに皮下接種した場合に腫瘍を形成することが判明した[Flatmark et al,Eur.J.Cancer,40,1593−1598(2004)]。
【0139】
HCT−15細胞を増殖させ、10%血清及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI(Sigma Cat #R0883)中で皮下接種用に準備した。継代数4(P4)で保存株を作成し、5%DMSOを含む培地中における3×107細胞/バイアルの量を液体窒素中で凍結して貯蔵した。移植当日、細胞を37℃の水浴中で急速に解凍し(約2分間)、洗浄し、PBS/2%血清中に再懸濁した(1200rpmで10分間の遠心)。投与用注射器中に細胞を吸引する際には、常にバイアル内の細胞を完全に混合してから行った。動物に軽いガス麻酔をかけながら、ファインボア注射針(25G)を用いて0.1mlの量の細胞懸濁液を肩及び背中に皮下注射した。次いで、動物をケージに戻し、腫瘍を13〜17日間増殖させた。動物には、5日以上の順化期間を置いてから接種処置を施した。
【0140】
(b)処置
すべての試験物質は、凍結乾燥粉末からPBSを用いて再構成した。白色プリンター用紙の小さな堆積物をイメージ化してフラットフィールド画像を得、これを用いて照明の不均一性を補正した。物理的に固定しながら、試験物質を外側尾静脈に静脈内注射した。注射量は0.1mlであり、これは動物1頭当たり試験物質1nmolの用量に相当している。注射後、動物をケージに戻した。イメージングの直後、動物を頸部脱臼によって殺した。限られた数の動物(n=1〜6)における皮膚及び筋肉組織へのウォッシュアウト率の比較に基づき、各試験物質に関する最適イメージング時点を推定した。化合物3及び化合物4に関するイメージング時点は注射後120分であった。各動物に関し、皮下で増殖した腫瘍を死後に切除した。1つの腫瘍のへりから、厚さ約1.6mmかつ直径約3〜4mmの薄いスライスを切り取った。次いで、腫瘍スライスを同じ動物の正常結腸領域を背景にしてイメージ化した。
【0141】
(c)イメージング
イメージングは、光源を用いてレポーターを励起しかつ濾光系を用いて蛍光成分を抽出するように改造した臨床用腹腔鏡を通して行った。レポーター分子の励起のためには635nmレーザーを使用した。検出器としてはHamamatsu ORCA ERG CCDカメラを使用した。カメラは利得0の2×2ビンニングモードで動作させた。結腸イメージング用の標準露光時間は10秒であった。システム較正測定結果によれば、動物イメージングシステムを用いた場合の10秒の露光時間は、臨床的に適切な光源、視野及び組織表面までの距離を用いた場合の40ミリ秒の露光に相当している。画像中の強度分布は、システム較正データにより、照明の不均一性について補正した。腫瘍上に位置する検査対象領域及び正常結腸バックグラウンドから標的/バックグラウンド比を計算した。レシーバー動作特性分析のために使用する標準的なスコアリングシステムを用いて画像を目視評価した。
【0142】
(d)結果
化合物5は1.46:1の腫瘍/正常比を有しており、同一の色素を含む対応したスクランブルド対照ペプチド(化合物7)は1.04:1の比を有していた。化合物5は容易に確認できる腫瘍を示したのに対し、化合物7ではバックグラウンドに対して何も識別できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式Iのコンジュゲートを含んでなるイメージング剤。
【化1】

式中、
1はcMBPのN末端に結合していて、H又はMIGであり、
2はcMBPのC末端に結合していて、OH、OBc(式中、Bcは生体適合性陽イオンである。)又はMIGであり、
cMBPは、下記のアミノ酸配列(配列番号1)を含む17〜30のアミノ酸のcMet結合環状ペプチドであり、
Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−
Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
(式中、X1はAsn、His又はTyrであり、X2はGly、Ser、Thr又はAsnであり、X3はThr又はArgであり、X4はAla、Asp、Glu、Gly又はSerであり、X5はSer又はThrであり、X6はAsp又はGluであり、Cysa-dの各々はシステイン残基であって、残基a及びb並びに残部c及びdは環化して2つの独立したジスルフィド結合を形成している。)
IGは、ペプチドのインビボ代謝を阻害又は抑制する生体適合性基からなる代謝阻害基であり、
Lは式−(A)m−(式中、Aは独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基、或いはアミノ酸、糖又は単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であり、各Rは独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル及びC1-4ヒドロキシアルキルから選択され、mは1〜20の値を有する整数である。)の合成リンカー基であり、
nは0又は1の値を有する整数であり、
IMは、600〜1200nmの緑色乃至近赤外波長を有する光を用いて哺乳動物体のインビボイメージングを行うために適した光学レポーターイメージング成分である。
【請求項2】
配列番号1に加えて、cMBPがさらにC−又はN−cMBPペプチド末端の4アミノ酸残基中にAsp又はGlu残基を含み、−(L)nIMが前記Asp又はGlu残基のカルボキシル側鎖に結合してアミド結合を与えるアミン基で官能化されている、請求項1記載のイメージング剤。
【請求項3】
配列番号1に加えて、cMBPがさらにC−又はN−cMBPペプチド末端の4アミノ酸残基中にLys残基を含み、−(L)nIMが前記Lys残基のε−アミン側鎖に結合してアミド結合を与えるカルボキシル基で官能化されている、請求項1又は請求項2記載のイメージング剤。
【請求項4】
cMBPが下記配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のイメージング剤。
Ser−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−
Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6(配列番号2)
Ala−Gly−Ser−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−
3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
Gly−Thr(配列番号3)
【請求項5】
3がArgである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のイメージング剤。
【請求項6】
配列番号1、配列番号2又は配列番号3に加えて、cMBPがさらに−Gly−Gly−Gly−Lys−(配列番号4)、−Gly−Ser−Gly−Lys−(配列番号5)及び−Gly−Ser−Gly−Ser−Lys−(配列番号6)から選択されるリンカーペプチドをN末端又はC末端に含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のイメージング剤。
【請求項7】
cMBPが下記のアミノ酸配列(配列番号7)を有する、請求項6記載のイメージング剤。
Ala−Gly−Ser−Cysa−Tyr−Cysc−Ser−Gly−Pro−
Pro−Arg−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−Glu−
Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys
【請求項8】
1及びZ2の両方が独立にMIGである、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のイメージング剤。
【請求項9】
1がアセチルであり、Z2が第一アミドである、請求項8記載のイメージング剤。
【請求項10】
nが0である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のイメージング剤。
【請求項11】
IMが600〜1000nmの範囲内に吸収極大を有する色素である、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のイメージング剤。
【請求項12】
IMがシアニン色素である、請求項11記載のイメージング剤。
【請求項13】
シアニン色素が次の式IIIを有する、請求項12記載のイメージング剤。
【化2】

式中、
1及びR2は独立にH又はSO31(式中、M1はH又はBcである。)であって、R1及びR2の少なくとも一方はSO31であり、
3及びR4独立にC1-4アルキル又はC1-6カルボキシアルキルであり、
5、R6、R7及びR8は独立にRa基(式中、RaはC1-4アルキル、C1-6カルボキシアルキル又は−(CH2kSO31であり、kは3又は4の値を有する整数である。)であるが、
シアニン色素がR1、R2及びRa基に合計1〜4個のSO31置換基を有することを条件とする。
【請求項14】
cMBPが請求項7で定義した通りであり、Z1及びZ2が請求項9で定義した通りであり、IMが請求項3及び請求項13で定義した通りである、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のイメージング剤。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載のイメージング剤を、哺乳動物への投与に適した形態で生体適合性キャリヤーと共に含んでなる医薬品組成物。
【請求項16】
1人の患者用に適した用量を有し、適当な注射器又は容器に入れて供給される、請求項15記載の医薬品組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項14記載のイメージング剤の製造方法であって、
(i)Z1がHでありかつZ2がMIGである式Z1−[cMBP]−Z2のcMBPペプチドを式Y1−(L)n−[IM]の化合物と反応させることで、[IM]がZ1位置に結合した式Iのイメージング剤を得る段階、
(ii)Z1=Z2=MIGであり、cMBPがC−又はN−cMBPペプチド末端の4アミノ酸残基中にAsp又はGlu残基を含み、かつcMBPペプチドの他のAsp/Glu残基のすべてが保護されている式Z1−[cMBP]−Z2のcMBPペプチドを式Y1−(L)n−[IM]の化合物と反応させることで、[IM]がcMBPペプチドの前記Asp又はGlu残基の位置に結合した式Iのイメージング剤を得る段階、
(iii)Z1がMIGであり、Z3がZ2基又は活性化エステルであり、かつcMBPペプチドの他のAsp/Glu残基のすべてが保護されている式Z1−[cMBP]−Z3のcMBPペプチドを式Y2−(L)n−[IM]の化合物と反応させることで、[IM]がZ2位置に結合した式Iのイメージング剤を得る段階、及び
(iv)Z1=Z2=MIGであり、かつcMBPがC−又はN−cMBPペプチド末端の4アミノ酸残基中にLysを含む式Z1−[cMBP]−Z2のcMBPペプチドを式Y1−(L)n−[IM]の化合物と反応させることで、[IM]がcMBPペプチドのLys残基の位置に結合した式Iのイメージング剤を得る段階
の1つを含んでなり、式中のZ1、cMBP、Z2、MIG、L、n及びIMは請求項1で定義した通りであり、Z3はZ2基又は活性化エステルであり、Y1はカルボン酸、活性化エステル、イソチオシアネート基又はチオシアネート基であり、Y2はアミン基である、方法。
【請求項18】
段階(iv)の反応が使用される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項15又は請求項16記載の医薬品組成物を製造するためのキットであって、当該キットは請求項1乃至請求項14記載のイメージング剤を無菌固体形態で含んでいて、請求項15又は請求項16記載の生体適合性キャリヤーの無菌供給物で再構成すれば溶解が起こって所望の医薬品組成物が得られる、キット。
【請求項20】
無菌固体形態が凍結乾燥固体である、請求項19記載のキット。
【請求項21】
哺乳動物体のインビボ光学イメージング方法であって、請求項1乃至請求項14記載のイメージング剤或いは請求項15又は請求項16記載の医薬品組成物を用いてインビボでのcMetの過剰発現部位又は局在部位の画像を得ることを含んでなる方法。
【請求項22】
請求項1乃至請求項14記載のイメージング剤或いは請求項15又は請求項16記載の医薬品組成物が前記哺乳動物体に予め投与されている、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法であって、
(i)哺乳動物体内の検査対象組織表面を励起光で照明する段階、
(ii)イメージング成分(IM)の励起によって生じるイメージング剤からの蛍光を蛍光検出器を用いて検出する段階、
(iii)蛍光検出器によって検出された光を任意に濾光して蛍光成分を分離する段階、及び
(iv)段階(ii)又は段階(iii)の蛍光から前記検査対象組織表面の画像を形成する段階
を含んでなる方法。
【請求項24】
段階(i)の励起光が連続波(CW)の性質を有する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
請求項22記載の方法であって、
(a)不均質組成を有する前記哺乳動物体の光散乱性生体組織を、所定の経時変動強度を有する光源からの光に暴露してイメージング剤を励起する段階であって、組織が励起光を多重散乱させる段階、
(b)前記暴露に応答した組織からの多重散乱発光を検出する段階、
(c)組織内の様々な位置における蛍光特性のレベルにそれぞれ対応する複数の値をプロセッサーで確定することにより、発光から組織全体の蛍光特性を定量化する段階であって、蛍光特性のレベルが組織の不均質組成に応じて変化する段階、及び
(d)段階(c)の値に従って組織の不均質組成のマッピングを行うことで組織の画像を生成する段階
を含んでなる方法。
【請求項26】
光学イメージング方法が蛍光内視鏡検査からなる、請求項21乃至請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
インビボ光学イメージングが、病気進行の検出、ステージング、診断、モニタリング又は結腸直腸癌(CRC)の治療のモニタリングを支援するために使用される、請求項21乃至請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物体の病気進行の検出、ステージング、診断、モニタリング又は結腸直腸癌(CRC)の治療のモニタリングを行う方法であって、請求項21乃至請求項26のいずれか1項に記載のインビボ光学イメージング方法を含んでなる方法。

【公表番号】特表2010−526859(P2010−526859A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507982(P2010−507982)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001696
【国際公開番号】WO2008/139207
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】