説明

ペプチドクリアリング剤

対象における非標的位置からの酵素および標的位置において特異的に結合する結合分子のコンジュゲートのクリアランスのためのペプチドクリアリング剤が提供される。ペプチドクリアリング剤は、酵素の活性部位に結合させる。ペプチドは、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体にも結合して肝臓を介するクリアランスを促進する。ペプチドは、アシアロ糖タンパク質受容体を発現する肝細胞に結合することにより肝臓を介するクリアランスを促進するためにグリコシル化されていてよい。典型的には、ペプチドは、酵素に結合すると酵素活性を妨害または阻害し、酵素活性により実質的に改変されない。ペプチドは、ジペプチドのアミノ−ナフトエ酸(ANA)−グルタミン酸(Glu)をベースとしていてよく、アミノ酸配列セリン(Ser)−アラニン(Ala)−アミノ−ナフトエ酸(ANA)−グルタミン酸(Glu)を含むことができる。このような場合、対象となる酵素は、典型的にはCPG2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における非標的位置から酵素をクリアリングするように作用するペプチドクリアリング剤に関する。本発明はまた、これらのペプチドクリアリング剤を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体指向酵素プロドラッグ治療(antibody directed enzyme prodrug therapy)(ADEPT)は、細胞毒性薬物の選択性を改善することを目的とする。プロドラッグを活性薬物に変換するように作用する酵素が用いられる。薬物の作用は、腫瘍関連抗原に結合する抗体の使用を介して対象となる部位に局在化される。この抗体は、プロドラッグに作用する酵素にコンジュゲートされ、またはこの酵素との融合タンパク質として形成され、これによりプロドラッグ変換が主として対象となる部位において生じることが確保される。
【0003】
しかしながら、ADEPT系の治療効率および特異性は、残留酵素抗体コンジュゲートおよび(腫瘍細胞から循環への抗原の損失に起因し得る)腫瘍からのコンジュゲートの漏れに起因する正常組織内でのプロドラッグの変換により、制限されてきた。この問題に対処する試みにおいて、酵素クリアランス段階は、残留酵素活性を除去し、これによりこの治療の副作用を最小化するように開発されてきた。このことは、酵素に結合するさらなる抗体に依存する。この抗体は、肝臓を介するクリアランスを促進するためにグリコシル化されている(1)。
【0004】
US2003−0068322(Hansen)は、循環する標的化タンパク質−酵素コンジュゲートのクリアランスに影響を及ぼす抗体ベースのクリアリング剤を記載している。一実施形態において、クリアリング剤は酵素に結合する。しかしながら、クリアリング剤は、酵素活性を干渉しない部位において結合する。WO96/40245およびUS5,958,408は、同様の開示を表している。
【0005】
Napier et al−Clinical Cancer Research Vol.6,765 to 772,March 2000−は、癌胎児性抗原を発現する結腸直腸癌患者10人が、カルボキシペプチダーゼG2(CPG2)にコンジュゲート化された癌胎児性抗原に対するA5B7F(ab’)2抗体を用いる抗体指向酵素プロドラッグ治療を受けた臨床試験を記載している。この試験において、CPG2の活性部位に対して指向されるガラクトシル化抗体(SB43−gal)は、循環する酵素をクリアリングし、不活性化するために与えられた。Napierは、ヒト抗マウス抗体応答(HAMA)が2週間後にすべての患者において見出され、さらなる治療が妨害されたことを記述している(標題免疫応答の768頁第2欄を参照。)。Napierは、ADEPT治療に関してこのようなクリアリング剤の使用を促進するために免疫抑制剤を利用することができることを示唆している。
【0006】
WO91/17761は、ADEPT技術とは区別される技術を記載している。この技術において、疾患細胞のみを治療するため細胞毒素が治療的に使用されるのを可能とするため、アンタゴニストが正常細胞に対して標的化される。従って、この方法は、正常細胞を保護することを目的とする。
【0007】
EP0308208は、循環からの急速なクリアランスを可能とする、ヒト肝臓アシアロ糖タンパク質受容体に結合するグリコシド残基へのコンジュゲート化により改変された抗体および抗体コンジュゲートに関する。
【0008】
EP0733072およびUS5,876,691は、癌胎児性抗原(CEA)に特異的な抗体を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0068322号明細書
【特許文献2】国際公開第96/40245号
【特許文献3】米国特許第5,958,408号明細書
【特許文献4】国際公開第91/17761号
【特許文献5】欧州特許第0308208号明細書
【特許文献6】欧州特許第0733072号明細書
【特許文献7】米国特許第5,876,691号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Napier et al,Clinical Cancer Research Vol.6,765 to 772,March 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
クリアリング剤としてのグリコシル化された第2のまたはさらなる抗体の使用は、幾つかの問題を伴い、これらの問題のうち最も重要なものは以下のとおりである。
【0012】
1)第2の(クリアリング)抗体は必然的に免疫原性であるため、従ってこの使用は数回の繰り返しの使用サイクルに制限される。
【0013】
2)この抗体は、モジュレートすることが困難である酵素に対して高い親和性を有する。高い親和性は、この抗体が標的位置に局在化された酵素に過剰に強く結合することがあり得るため、これにより局所的な薬物発生の有効性が制限されることを意味する。
【0014】
3)この抗体の高分子量は、融合タンパク質を結合させ、クリアリングするために大きい質量の糖タンパク質を接種しなければならないことを意味する。
【0015】
4)第2の抗体成分のコスト、生成および規制の問題が比較的困難な問題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの理由のため、新たな種類のクリアリング剤が望まれている。従って、本発明は、コンジュゲートへのペプチドの結合を介する対象における非標的位置からの、酵素および標的位置において特異的に結合する結合分子のコンジュゲートのクリアランスのためのペプチドクリアリング剤であって、ペプチドが肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合するペプチドクリアリング剤を提供する。このことは、非標的位置に見出されるコンジュゲートの内在化をもたらす。従って、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体へのペプチドの結合は、ペプチドのクリアランスを促進する。具体的な実施形態において、ペプチドは、アシアロ糖タンパク質受容体を発現する肝細胞への結合により肝臓を介するクリアランスを促進するためにグリコシル化されている。より具体的には、本発明は、酵素の活性部位へのペプチドの結合を介する対象における非標的位置からの、酵素および標的位置において特異的に結合する結合分子のコンジュゲートのクリアランスのためのペプチドクリアリング剤であって、ペプチドが(さらにクリアリング剤が)肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合するペプチドクリアリング剤を提供する。このことは、非標的位置に見出されるコンジュゲートの内在化をもたらす。従って、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体へのペプチドの結合は、ペプチドのクリアランスを促進する。具体的な実施形態において、ペプチドは、アシアロ糖タンパク質受容体を発現する肝細胞への結合により肝臓を介するクリアランスを促進するためにグリコシル化されている。
【0017】
対象は、典型的には、ヒトまたは動物であり、好ましくは、ヒトである。従って、クリアランスは、一般に肝臓を介する循環からのものである。本発明のペプチドクリアリング剤は、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合し、非標的位置に見出されるコンジュゲートの内在化をもたらす。
【0018】
本発明のクリアリング剤は、以下の理由から抗体ベースのクリアリング剤に伴う問題を解決する。
【0019】
1)本発明のクリアリング剤は低分子量のものであるので、非免疫原性である。
【0020】
2)本発明のクリアリング剤の酵素結合部位への親和性は、必要とされる結合の親和性が達成されるまで代替アミノ酸による位置置換を行うことにより調節することができる。
【0021】
3)本発明のクリアリング剤の低分子量は、所与のクリアランス効力を融合タンパク質よりもかなり低い質量を用いて達成することができることも意味する。
【0022】
4)本発明のクリアリング剤は、公知の化学法により合成化学物質として生成することができ、そのためこのペプチドクリアリング剤はコスト、生成効率および規制的障壁の問題がより少ない。
【0023】
上記のとおり、ADEPT系は、対象における標的位置、例えば腫瘍関連抗原に結合する抗体または他の結合分子を介する酵素活性の局在化に依存する。ADEPT系は、大きいが高度に局在化される用量の薬物、例えば細胞毒性剤を疾患の細胞(例えば癌細胞)または疾患を引き起こす細胞(例えば寄生細胞)に送達するために一緒に協同する幾つかの分子モジュールからなる。
【0024】
本発明のペプチドクリアリング剤は、酵素および結合分子のコンジュゲートに、より具体的には酵素に、特に酵素の活性部位に結合する。結合分子は、標的位置に結合でき、こうして酵素をこの特定の位置に局在化することができる任意の分子であり得る。ある実施形態において、酵素は、標的位置における結合分子の特異的な結合を介して標的位置において濃縮される。従って、結合分子は、対象における細胞により発現される、特に細胞表面上で安定的に発現される受容体もしくは抗原または他の分子に結合することができる。好ましくは、排他的ではないが、結合分子は、抗体もしくはこの抗原結合誘導体を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。任意の好適な抗体を利用することができるが、IgG免疫グロブリンが最も典型的に用いられる。重鎖抗体および非ヒト抗体のヒト化形態は、無論、用語「抗体」の範囲内に含まれる。抗体は、ポリクローナルであり得るが、モノクローナル抗体が一般に好ましい。抗原結合誘導体は、対象となる標的への特異的結合能を保持する抗体のすべてのフラグメントおよび他の誘導体を包含する。一価フラグメントが用いられることが多い。例としては、Fabフラグメント、scFv、単一ドメイン抗体、ナノボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディなどが含まれる。
【0025】
結合分子は、標的位置において特異的に結合して非標的位置、例えば特定の抗原を発現しない細胞への不所望な結合を回避する。この分子は、標的位置における急速な取り込みを達成するほど十分に高い親和性も有するべきである。しかしながら、結合親和性は、結合分子が標的位置に完全にアクセスすることができるような親和性であり、腫瘍関連抗原への結合を例に取ると、結合分子は、この分子が任意の腫瘍塊の周囲にのみ結合することになるほど強固に結合してはならない。実際、任意の選択的結合能は、フォーカスされる治療作用を提供するのに十分であり、必要とされる最小効力は用途ごとに変動する。結合分子の結合親和性は、好ましくは、分子が結合した標的位置からの分子の漏れを最小化するための低い解離定数(即ち、緩慢なオフ速度(off−rate))に関連する。従って、結合親和性および速度論は、標的位置における標的化および有効な作用を確保するために可能な限り平衡に保たれる。
【0026】
酵素は、結合分子とのこの会合により酵素が標的位置に送達されるように結合分子にコンジュゲートされている。典型的には、酵素は、結合剤分子が結合するいずれの場所においても少なくとも1種の酵素分子も結合するように結合分子に共有結合している。従って、上記の結合特性は、実際には、結合分子−酵素化学コンジュゲート、または適切な機能ドメインに折りたたまれる連続的アミノ酸配列として両分子を発現する単一遺伝子に由来する、結合分子−酵素融合タンパク質の形態のハイブリッド分子に当てはまる。酵素は、標的位置においてプロドラッグを活性薬物に変換するように作用する。酵素は、対象における不所望な活性および副作用を防止するため、対象において天然に存在しない酵素であることが好ましい。酵素の役割は、酵素により作用されるまで非毒性であるプロドラッグ分子を改変して活性薬物、一般に短命の活性薬物を放出させることである。従って、結合分子に基づく酵素活性の局在化は、プロドラッグが標的位置の直近においてのみ開裂されることを確実にする。ある実施形態において、プロドラッグは、酵素により開裂された場合に高度に毒性であるが短命の分子を形成する物質であり、この特性は、この分子が強力であるがプロドラッグが開裂される近傍に存在する細胞のみを殺傷することを確実にする。具体的な実施形態において、アルキル化剤、例えば安息香酸マスタード誘導体が用いられる。好ましくは、薬物の作用は濃度依存性である。アルキル化剤上の末端グルタミン酸は、アルキル化剤を不活性にさせる、そのためこれらは、このグルタミン酸残基を開裂するように作用するCPG2との使用に理想的なパートナーとなる。標的位置において発生する高濃度の薬物は血中に再度漏れ得、毒性を引き起こし得るので、短い半減期は活性薬物の重要な特質である。
【0027】
酵素としては、標的位置における不活性プロドラッグの活性薬物への変換を可能とする、好適な任意の酵素を用いることができる。ADEPT系に関して既に用いられている好適な酵素は、カルボキシペプチダーゼG2、アルカリホスファターゼ、ベータ−グルコロニダーゼ、ペニシリン−V−アミダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ、ベータ−グルコシダーゼおよびニトロレダクターゼを含む。本発明のペプチドクリアリング剤の発生に有用な、潜在的に有用な酵素/プロドラッグの組合せを、表1に列記する。
【0028】
【表1】

【0029】
本発明に関して特に好ましい酵素は、カルボキシペプチダーゼG2(CPG2)である。CPG2は、細菌性ペプチダーゼ(シュードモナス由来)である。このペプチダーゼは葉酸加水分解酵素であり、葉酸およびこのアナログ、例えばメトトレキサートからC−末端グルタミン酸部分を加水分解する。相同CPG2は、83000(ゲル濾過)の分子量を有するが、SDS PAGEに従うと41400の分子量が得られ、酵素が二量体であることを示す。この酵素は、各機能インタクト二量体において2つの活性部位を有し、この構造および機能について亜鉛依存性である。
【0030】
結合分子および酵素のコンジュゲートは、一般に、遺伝学的手段または多くの公知の化学的架橋法の1種を使用する化学的コンジュゲートにより生成される。遺伝学的手段は、一般に、酵素および結合分子タンパク質の両方が、両機能を有する単一の組合せタンパク質(「融合タンパク質」)として発現されるようにそれぞれの遺伝子を一緒にスプライシングすることを含む。融合タンパク質がグリコシル化されないことは重要であり、その理由は、グリコシル化された融合タンパク質は、このタンパク質が与えられるとすぐに肝臓を介してこれ自体でクリアリングを開始し、非グリコシル化形態よりも酵素が腫瘍に送達されない結果になるからである。
【0031】
本発明の具体的な実施形態において、ペプチドクリアリング剤は、酵素に結合すると酵素活性を妨害または阻害する。従って、好ましくは、ペプチドは、酵素活性により改変されない。「改変されない」は、クリアランスを可能とするためにペプチドが酵素に対する結合親和性を保持することを意味し、親和性が損失されないという条件で改変が生じてよい。ペプチドが酵素の活性に耐性である場合、活性部位へのペプチド結合は、より効力のあるクリアリング方法である。本発明のペプチドが酵素活性に耐性であり得る1つの方法は、1個以上のD型アミノ酸を取り込むことである。例えば、D−アミノ酸グルタミン酸を、CPG2の活性部位に結合するように設計されたペプチドクリアリング剤中に含めることは、このアミノ酸におけるペプチド結合の加水分解を妨害するように作用し得る。
【0032】
結合分子−酵素コンジュゲートは、標的位置において結合する。この標的位置は、典型的には、対象となる細胞タイプ、例えば腫瘍細胞などである。標的位置における特異的な結合は、対象となる細胞タイプに特異的な抗原への結合に起因し得る。具体的な実施形態において、標的位置は、腫瘍細胞により発現される抗原である。従って、例えば、腫瘍学的用途の場合、抗原発現は、理想的には、非癌性宿主細胞を攻撃するリスクを回避するために癌細胞に特異的であるべきである。抗原は、好ましくは、腫瘍特異的であるが、腫瘍関連であり得る。さらに、抗原は、対象となる細胞の表面(膜)上で安定的に発現されるべきである。しかしながら、放出または脱落前の一過的発現は本発明に照らして可能である。標的位置を特徴づける抗原は、好ましくは、自然に、またはこの抗原が結合分子により結合された場合に急速に内在化されない。この理由は、プロドラッグが典型的には全身投与され、細胞内酵素が循環中でプロドラッグと容易に相互作用しないからである。標的位置の1つの具体例は、癌胎児性抗原(CEA)として公知の抗原を発現する細胞である。この抗原は、結腸直腸癌(CRC)のかなり大きな割合により発現され、これによりCRCの局在治療を可能とする。CEAを結合させることができる抗体および誘導体は、当分野において公知であり、例えば本明細書に記載のScFv抗−CEAであり、これはCPG2との融合タンパク質として生成してもしなくてもよい。
【0033】
本発明のペプチドクリアリング剤は、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合する。このことは、非標的位置に見出されるコンジュゲートの内在化をもたらす。従って、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体へのペプチドの結合は、ペプチドのクリアランスを促進する。具体的な実施形態において、ペプチドは、アシアロ糖タンパク質受容体を発現する肝細胞に結合することにより肝臓を介するクリアランスを促進するためにグリコシル化されている。従って、ペプチドは、循環中でペプチドクリアリング剤と結合分子および酵素のコンジュゲートとの複合体の形成を可能とする結合親和性で酵素に結合し、ならびに肝細胞に達し、アシアロ糖タンパク質受容体を介して利用されるのに十分な安定性で酵素に結合するアミノ酸配列からなる。しかしながら、ペプチドクリアリング剤のオフ速度は、プロドラッグの投与計画の時間尺度内で標的位置において結合している結合分子および酵素のコンジュゲートからの解離を可能とするほど十分に早くなければならず、さもなければプロドラッグの活性薬物への変換が妨げられる。従って、やはり、肝細胞上で発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に対する親和性と、他方で結合分子および酵素のコンジュゲートに対するペプチドの親和性との平衡が必要とされる。具体的な実施形態において、ペプチドは、非標的位置からの酵素のクリアランスを可能とするのに十分な、結合分子および酵素のコンジュゲート、特に酵素(の活性部位)についての親和性を有する。ある実施形態において、ペプチドは(また)、標的位置において酵素活性に顕著に影響を及ぼさないほど十分に急速な解離速度/高い解離定数を有する。より具体的には、結合分子および酵素のコンジュゲートに対する親和性を有し、特に酵素(の活性部位)に対するペプチドの親和性は、結合分子の標的位置についての結合分子の結合親和性よりも約10倍(例えば約5から約15倍、この間のすべての値を含む。)低くてよい。従って、標的位置への結合分子および酵素のコンジュゲートの結合は、クリアランスにわたり有利であるが、結合分子および酵素のコンジュゲート、特に酵素(の活性部位)に対するペプチドの親和性は、アシアロ糖タンパク質受容体への結合後の内在化を介する、肝臓を介する未結合コンジュゲートの効率的なクリアランスを確保するのに、依然として十分である。
【0034】
適切な速度論および親和性特性を示す本発明のペプチドクリアリング剤は、本明細書において例示される。このような速度論および親和性特性は、任意の好適な手段を使用して計測することができる。速度論および親和性パラメーターは、周知技術の(例えば、GE Healthcareから市販、Biacoreシステム)表面プラズモン共鳴(SPR)を使用する結合試験に基づき導くことができる。好適な装置を使用して得られたデータは、適切なソフトウエアにより分析して関連パラメーターを自動的に導くことができる。可能な限りフィットを曲線へ近づけるために、ソフトウエアにより適切な結合モデルを適用することができる。0.2未満のカイ二乗値を許容可能フィットとみなすことができる。
【0035】
具体的な実施形態において、データは、単一状態結合モデル(1:1ラングミュア結合モデル)を使用する市販のBiaevaluationソフトウエアを使用して得ることができる。従って、本発明のペプチドクリアリング剤は、ある実施形態において約1×10−1−1から1×10−1−1または約1×10−1−1から1×10−1−1または約1×10−1−1から5×10−1−1の範囲のオン速度(on rate)(会合速度定数、Ka)を示すことができる。本発明のあるペプチドの具体的なKa値は、本明細書に記載されている(2.26×10−1−1のKa)。本発明のペプチドクリアリング剤は、ある実施形態において約1×10−5−1から1×10−1−1または約1×10−4−1から1×10−2−1または約1×10−3−1から5×10−3−1の範囲のオフ速度(解離速度定数、Kd)を示すことができる。本発明のあるペプチドの具体的なKd値は、本明細書に記載されている(1.14×10−3−1のKd)。
【0036】
従って、本発明のペプチドクリアリング剤は、ある実施形態において約1×10−1から1×1010−1または約1×10−1から1×10−1または約1×10−1から5×10−1の範囲の1:1ラングミュアモデルにより導かれた平衡会合定数(KA)を示すことができる。本発明のあるペプチドについての具体的なKA値は、本明細書に記載されている(約1.98×10−1)。このことは、ある実施形態において約1×10−7Mから1×10−11Mまたは約1×10−8Mから1×10−10Mまたは約4×10−9Mから6×10−9Mの範囲の、本発明のペプチドクリアリング剤についての解離定数をもたらすことができる。本発明のあるペプチドについての具体的なKD値は、本明細書に記載されている(約5.04×10−9M)。
【0037】
あるいは、具体的な実施形態において、データは2状態結合モデルを使用する市販のBiaevaluationソフトウエアを使用して得ることができる。従って、本発明のペプチドクリアリング剤は、ある実施形態において約1×10−1−1から1×10−1−1または約1×10−1−1から1×10−1−1または1×10−1−1から5×10−1−1の範囲の一次オン速度(会合速度定数、Ka1)を示すことができる。本発明のあるペプチドについての具体的なKa1値は、本明細書に記載されている(2.84×10−1−1のKa1)。従って、本発明のペプチドクリアリング剤は、ある実施形態において約0.001s−1から1s−1または約0.01s−1から0.1s−1または約0.01s−1から0.05s−1または0.02s−1の範囲の二次オン速度(会合速度定数、Ka2)を示すことができる。本発明のあるペプチドについての具体的なKa2値は、本明細書に記載されている(0.014s−1のKa2)。
【0038】
本発明のペプチドクリアリング剤は、ある実施形態において約0.001s−1から1s−1または約0.01s−1から0.1s−1または約0.01s−1から0.05s−1または0.03s−1の範囲の一次オフ速度(解離速度定数、Kd1)を示すことができる。本発明のあるペプチドについての具体的なKd1値は、本明細書に記載されている(0.0258s−1のKd1)。本発明のペプチドクリアリング剤は、ある実施形態において約1×10−5−1から1×10−1−1または約1×10−4−1から1×10−2−1または約1×10−3−1から5×10−3−1の範囲の二次オフ速度(解離速度定数、Kd2)を示すことができる。本発明のあるペプチドについての具体的なKd2値は、本明細書に記載されている(1.58×10−3−1のKd2)。
【0039】
本発明のペプチドクリアリング剤は、ある実施形態において約1×10−1から1×1010−1または約1×10−1から1×10−1または約1×10−1から2×10−1の範囲の、2状態結合モデルフィットに基づき導かれた平衡会合定数(K)を示すことができる。本発明のあるペプチドについての具体的なK値は、本明細書に記載されている(約1.09×10−1)。このことは、ある実施形態において約1×10−5Mから1×10−10Mまたは約1×10−7Mから1×10−9Mの範囲内の、本発明のペプチドクリアリング剤についての解離定数をもたらすことができる。本発明のあるペプチドについての2状態反応フィットに基づき平均した具体的なKD値は、本明細書に記載される(約9nM)。
【0040】
本発明のペプチドクリアリング剤は、好適な酵素活性阻害能を有することも見出された。従って、本発明のペプチドクリアリング剤は、最大阻害濃度の半分の濃度(IC50)をマイクロモーラースケールで示すことができる。好適なペプチドは、約10から約1000μM、より具体的には約20から200μM、例えば約50から150μMのIC50を示すことができる。
【0041】
上記のとおり、ペプチドは、結合分子および酵素のコンジュゲートに結合し、具体的な実施形態においては酵素、特に酵素の活性部位に結合する。従って、ある実施形態において、ペプチドは、酵素活性を不活性化または遮断し、酵素を肝臓に指向する手段として作用するのに十分に高い親和性で酵素の活性部位を結合させる。好ましい実施形態において、ペプチドは、たとえペプチドが活性部位にフィットしても酵素活性に耐性である。酵素に結合するが、酵素活性についての基質として作用しない好適なペプチドは、本明細書に詳細に記載されている。従って、本発明のペプチドクリアリング剤の配列および構造は、典型的には、対象となる酵素の活性部位により決定される。ある実施形態において、ペプチドは、活性部位を結合させるが酵素により変換されない基質アナログである。従って、ペプチドについての出発点は、次いで適宜改変してペプチドクリアリング剤を生成することができる基質分子の配列であり得る。
【0042】
例えば、CPG2の天然基質は葉酸である。葉酸は、アミド結合を介してグルタミン酸に結合しているプテロイン酸からなる分子である。CPG2は、グルタミン酸−プテロイン酸アミド結合を加水分解する。従って、本発明のペプチドは、この構造をベースとすることができる。具体的な実施形態において、ペプチドは、グルタミン酸残基を含むが、(天然に生じるL型とは対照的に)D型である。本発明のペプチドは、L−アミノ酸ではなくD−アミノ酸としてのグルタミン酸を場合により取り込む配列−トリプトファン−フェニルアラニン−グルタミン酸(WFE)を含むことができる。D型アミノ酸を含めることは、CPG2によるグルタミン酸−フェニルアラニンペプチド結合の溶解を妨害するためである。この配列は、アミノ末端に二環窒素置換環構造、中央に6員芳香族環およびカルボキシ末端にグルタミン酸を有するトリペプチドについて考えられる葉酸に、最も近い構造的類似性を有する。本発明のペプチドは、この塩基性アミノ酸配列についてのバリエーションを表すことができる。保存的置換は、当業者に明らかなとおり、例えばアミノ酸を例えば同一または同様の電荷または疎水性またはサイズの他のアミノ酸により置き換えて行うことができる。従って、例えばアミノ酸、例えば脂肪族側鎖をそれぞれ有するグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは、ある実施形態において互いに置換されていてよい。フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンは、それぞれ芳香族側鎖を有し、従ってある実施形態において互いに置換されていてよい。システインおよびメチオニンは、両方とも硫黄含有側鎖を有し、従ってある実施形態において互いに置換されていてよい。セリンおよびトレオニンは、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有し、従ってある実施形態において互いに置換されていてよい。リシン、アルギニンおよびヒスチジンは、塩基性側鎖を有し、従ってある実施形態において互いに置換されていてよい。アスパラギン酸およびグルタミン酸は、両方とも酸性であり、ある実施形態において互いに置換されていてよい。同様に、これらのアミド誘導体、アスパラギンおよびグルタミンは、ある実施形態において互いに置換されていてよい。酵素(の活性部位)への結合を改善することを目的として非天然アミノ酸が導入されていてよい。十分に特性決定された分子構造を有し、結合特性を改善することを目的として合成ペプチド中に容易に取り込むことができる多くの非天然アミノ酸が当分野において公知である。例としては、2−アミノアジピン酸(Aad)、2−アミノアジピン酸(bAad)、ベータ−アラニン、ベータ−アミノプロピオン酸(bAla)、2−アミノ酪酸(Abu)、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸(4Abu)、6−アミノカプロン酸(Acp)、2−アミノヘプタン酸(Ahe)、2−アミノイソ酪酸(Aib)、3−アミノイソ酪酸(bAib)、2−アミノピメリン酸(Apm)、2,4−ジアミノ酪酸(Dbu)、デスモシン(Des)、2,2’−ジアミノピメリン酸(Dpm)、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、N−エチルグリシン(EtGly)、N−エチルアスパラギン(EtAsn)、ヒドロキシリシン(Hyl)、アロ−ヒドロキシルシン(allo−Hydroxylsine)(aHyl)、3−ヒドロキシプロリン(3Hyp)、4−ヒドロキシプロリン(4Hyp)、イソデスモシン(Ide)、アロ−イソロイシン(alle)、N−メチルグリシン、サルコシン(MeGly)、N−メチルイソロイシン(Melle)、6−N−メチルリシン(MeLys)、N−メチルバリン(MeVal)、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)およびオルニチン(Orn)が含まれる。
【0043】
CPG2に結合し、酵素活性を有効に阻害する本発明の具体的なペプチドクリアリング剤は、本明細書に記載されている。このようなペプチドは、以下のアミノ酸配列:
アミノ−ナフトエ酸(ANA)−グルタミン酸(Glu)
を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなっていてよい。
【0044】
本発明のペプチドは、式I:
【0045】
【化1】

のジペプチドを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなっていてよい。
【0046】
このようなジペプチドは、本発明のクリアリング剤に関連する所望の特性を示すために本明細書に示される。ペプチドは、CPG2の活性部位に対するナノモーラ−親和性を有し、基質として作用されない。IC50は、マイクロモーラースケールであり、50から150μM、より具体的には約88.5μMである。上記のとおり、ペプチドは、酵素の活性部位を結合させることに加え、肝臓を介するクリアランスを促進するために肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体にも結合しなければならない。従って、この塩基性ジペプチドは、本明細書に記載のとおり、クリアランスを可能とするために伸長されていてよい。このようなペプチドは、長さが3、4、5、6、7、8、9または10個以上のアミノ酸であり得、グリコシル化されていてよい。
【0047】
本発明の具体的な実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列:
セリン(Ser)−アラニン(Ala)−アミノ−ナフトエ酸(ANA)−グルタミン酸(Glu)(配列番号1)
を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。
【0048】
ペプチドは、クリアランスを促進するために改変されていてよい。ペプチドは、アシアロ糖タンパク質受容体を発現する肝細胞への結合を可能とするために好適な残基においてグリコシル化されていてよい。具体的な実施形態において、セリン残基がグリコシル化されている。ペプチドは、本明細書に記載のとおり、追加のアミノ酸残基、適切であれば最大10、20または30個までのアミノ酸、例えば全長4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸を含むことができる。本発明のペプチドは、式II:
【0049】
【化2】

のペプチドを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなっていてよい。
【0050】
このようなペプチドは、本発明のクリアリング剤に関連する所望の特性を示すために本明細書に示される。ペプチドは、CPG2の活性部位に対するナノモーラ−親和性を有し、基質として作用されない。IC50は、マイクロモーラースケールであり、50から150μM、より具体的には約110μMである。上記のとおり、本発明のペプチドは、天然に生じるL型とは対照的にD型アミノ酸(異なる光学異性体)を含有することができる。特に、グルタミン酸残基はD型で提供することができる。同様に本明細書に記載のとおり、置換、特に保存的置換は、ペプチド中のアミノ酸のいずれかに行うことができ、但し本発明のペプチドクリアリング剤としての機能性が保持されることを条件とする。
【0051】
本発明のペプチドは、本発明のペプチドの免疫原性が最小であるので、抗体ベースのクリアリング剤と比べて利点を提供する。このことは、本発明のペプチドが比較的短鎖であることに起因する。本発明の各ペプチドクリアリング剤は、このクリアリング剤の典型的には小さいサイズにかかわらず、2つの区別されるドメインからなる。第1のドメインは、標的酵素の活性部位中に結合するが、酵素の作用により共有結合的に変化しないアミノ酸の短い配列を含む(上記のとおり)。このドメインは、活性部位中に結合すると酵素がペプチドに作用するのを妨害する非天然アミノ酸、例えばD型アミノ酸を含むことができる。従って、ある実施形態において、本発明のペプチドの第1のドメインは、長さが10、15または20個以下のアミノ酸である。より具体的な実施形態において、ペプチドの第1のドメインは、長さが3から10個のアミノ酸、例えば長さが3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸である。具体的な実施形態において、ペプチドまたはこの第1のドメインは、ヘプタペプチドである。
【0052】
第2のドメインは、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合する。このことは、非標的位置に見出されるコンジュゲートの内在化をもたらす。従って、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体へのペプチドの結合は、ペプチドのクリアランスを促進する。具体的な実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列の延長部または代替的化学構造付着物を含む。それぞれは、アシアロ糖タンパク質受容体を担持する肝細胞に結合し、この細胞に取り込むことができる1個以上のペンダント糖、好ましくはガラクトース基を担持する。従って、具体的な実施形態において、本発明のペプチドクリアリング剤のグリコシル化は、1個以上のガラクトース基のカップリングを含む。具体的な実施形態において、第2のドメインは、O−結合グリコシルペプチドを発生させるために1個以上のガラクトシルセリンアミノ酸(即ち、セリンヒドロキシル基のO残基に共有結合しているガラクトース)を含む。この物質は、多数の供給業者から市販されている。任意数のこれらの余分なガラクトシルセリン基を公知のペプチド化学技術により付加して肝臓細胞(肝細胞)のアシアロ糖タンパク質受容体へのグリコシルペプチドの結合を必要に応じて強化することができる。ガラクトシルセリンは、ペプチド(の第1のドメイン)に直接的にまたはリンカーアミノ酸もしくはアミノ酸のストレッチを介して付加することができる。従って、リンカーは、1個以上のアミノ酸、特にグリシン残基を含むことができる。複数のガラクトース部分は、1個以上のスペーサーアミノ酸によりそれぞれ分離して付加することができる。従って、さらなるガラクトシルセリン残基間のスペースを、1個以上のさらなるアミノ酸により構築してガラクトシル基の配向および配置を最適化することができる。無論、適切であれば代替的ガラクトシルアミノ酸をガラクトシルセリンに代えて使用することができる。
【0053】
ペプチドのアミノ酸配列が(ヒト)対象のいかなる活性ペプチドも模倣しないことも重要であり、さもなければ、この配列は、不所望な生物学的活性を有し得る。さらに、ペプチドは、不所望な活性をもたらし得るいかなる内因性(ヒト)タンパク質、特に酵素または受容体(の活性部位)も結合させるべきでない。候補は、アミノ酸配列データベース検索を使用して同定し、次いで例えば適切なインビトロ試験を使用して試験することができる。
【0054】
典型的には、本発明のペプチドは化学合成される。しかしながら、所望により、組換えにより生成されたペプチドを用いることができる。組換えにより生成されたペプチドは、続いて発現後にグリコシル化することができ、または適切な細胞タイプが発現を指向するように選択される場合には細胞内でグリコシル化することができる。本発明のペプチドクリアリング剤を生成するための好適な反応スキームは、実験例に関して本明細書により詳細に記載されている。
【0055】
本発明のペプチドは、任意の好適な技術により生成することができる。本発明のペプチドは、遺伝子操作されたウイルスまたは細胞の表面上に配列されたランダムペプチドライブラリーにより生成することができ(ファージディスプレイ、ツーハイブリッド系など)、または構造化表面上に合成し、および配列させることができる(例えば、PEPSCANライブラリー)。標的酵素は、水溶液中でPEPSCANプロトコルに従ってペプチドが配列されたこのような表面に曝露され、次いでディスプレイされたペプチドを介する表面への酵素の結合を検出するよう処理される。この手順の第1のラウンドは、弱い結合のみをもたらすことができるが、次いで陽性結合配列を、より長いペプチドを生成するための伸長を含むさらなる改変についての出発点として使用することができる。次いで、これらのより長いペプチドをスクリーニングすることができ、改善された結合剤を配列の各位置におけるアミノ酸の系統的変化を介してさらに改変して最適化されたペプチドを生成することができる。ある変化は、わずかに高い結合効率をもたらし、次いでこれらのわずかに改善された配列は、所望の親和性および特異性を有する結合配列が出現するまで、さらなるいっそうの系統的置換のサイクルについてのさらなる出発点として使用される。続いて、糖担持ドメインを付加して構築を完了させることができる。これらの物質の製造は、ペプチド合成およびグリコシル化の公知の標準的方法により達成することができる。
【0056】
従って、本発明はまた、本発明の(最適化された)ペプチドクリアリング剤を生成する方法であって、
a.酵素基質の構造アナログである出発ペプチドを場合によりベースとするペプチドのアレイを調製すること
b.ペプチドのアレイを、酵素および標的位置において特異的に結合する結合分子のコンジュゲートに対する結合親和性についてスクリーニングし、結合親和性を有するペプチドを選択すること
c.工程bにおける結合親和性を有するペプチドのアミノ酸配列を場合により改変し、改変されたペプチドを使用して工程bを繰り返して結合親和性の改善について試験すること
d.工程cに見出される改変されたペプチドの各残基における置換を場合により実施して結合親和性を改善し、工程bを繰り返して置換されたペプチドのいずれについてもさらなる改善された結合親和性を有するか否かを決定すること
e.(改善された結合親和性を有する)工程cまたはdから得られたペプチドが、酵素活性を妨害または阻害する能力を有するか否かを場合により決定すること
f.対象からの一連の対照タンパク質を用いて試験することにより酵素についての結合特異性を場合により確認すること
g.ペプチドを、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合する能力について試験して、肝臓を介するクリアランスを促進すること
を含み、工程eおよびfは、実施する場合、いずれの順序においても実施することができ、ならびに工程gは、方法の任意の時点において実施することができ、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合することができる工程aにおけるペプチドのアレイを提供して、肝臓を介するクリアランスを促進することを含む方法を提供する。
【0057】
工程gにおけるペプチドは、これらのペプチドが肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合することができることを確実にするように改変して、肝臓を介するクリアランスを促進することができる。従って、本方法の具体的な実施形態において、工程gは、1種以上のペプチドをグリコシル化することを含む。従って、工程aは、グリコシル化されたペプチドのアレイを提供することを含むことができる。
【0058】
従って、ペプチドのアレイは、PEPSCANタイプの実施形態において典型的には固体表面上に、例えばマルチウェルプレートのウェル中に固定化される。任意の好適な固体表面を用いることができる。ペプチドの合成は、固体表面上で行うことができ、またはペプチドを合成し、続いて固定化することができる。あるいは、ファージディスプレイタイプの実施形態もしくは関連技術において、酵素(または結合分子および酵素のコンジュゲート)は、固定化される実体であり、ファージディスプレイライブラリーが固定化酵素に対してスクリーニングされる。
【0059】
ペプチドのアレイは、ペプチドライブラリーを含むことができる。ファージディスプレイまたは関連技術は、本質的には、ディスプレイされ、最も強力な結合剤を同定するために数回のラウンドで酵素に対してスクリーニングされるランダムペプチドライブラリーに依存し得る。ある実施形態において、出発ペプチドは、結合分子および酵素のコンジュゲートに、具体的な実施形態においては酵素、特に酵素の活性部位に結合するように設計された短いペプチドである。ペプチドの出発配列および構造は、対象となる酵素の活性部位の形状により決定することができる。ある実施形態において、出発ペプチドは、活性部位を結合させることができるが、酵素により変換されない予測される基質アナログである。従って、ペプチドについての出発点は、次いで本発明の方法により改変してペプチドクリアリング剤を生成することができる基質分子の配列または構造であり得る。具体的な実施形態において、この出発点はトリペプチドであり得る。例えば、上記のとおり、CPG2の天然基質は葉酸である。従って、本方法についての出発点は、この構造をベースとすることができる。具体的な実施形態において、ペプチド出発点は、葉酸中に見られるが、(通常のL型とは対照的に)D型のグルタミン酸残基を含む。出発点ペプチドは、L−アミノ酸ではなく、D−アミノ酸としてのグルタミン酸を場合により取り込む配列−トリプトファン−フェニルアラニン−グルタミン酸(WFE)を含むことができる。あるいは、出発点は、ジペプチドANA−Gluもしくは配列番号1(Ser−Ala−ANA−Glu)のペプチドであり得る。次いで、本発明の方法は、この出発配列を系統的に改変して所望の特性を有するペプチドクリアリング剤を生成することができる。従って、ペプチドアレイまたはライブラリーは、トリペプチドWFEを一連のトリペプチド誘導体と一緒に含むことができる。誘導体は、例えばすべてのアミノ酸の系統的置換を有するペプチドを含むことができ、または保存的に置換されているアミノ酸のみを含むことができる(本明細書に定義のとおりである。)。
【0060】
工程bは、ペプチドのアレイを、酵素および標的位置において特異的に結合する結合分子のコンジュゲートに対する結合親和性についてスクリーニングし、結合親和性を有するペプチドを選択することを含む。示されるとおり、結合についてのスクリーニングは、典型的には、酵素活性部位への結合についてのスクリーニングである。任意の好適なスクリーンを用いることができる。ファージディスプレイタイプの実施形態において、スクリーンは結合に基づく。あらゆる未結合ファージが洗浄工程において洗浄除去される。工程bは、ファージ溶出およびさらなる感染後に何回も繰り返して、より多くのファージを生成し、結合ペプチドを発現するファージの濃縮を可能とすることができる。次いで、酵素を結合させることができるペプチドの配列を、ファージにより発現される配列に基づき容易に決定することができる。次いで、回収されたペプチドは、所望により本方法のさらなる工程に従って改変することができる。
【0061】
PEPSCANタイプの実施形態において、酵素(または酵素−結合分子コンジュゲート)は、標識により標識することができる。ペプチドが酵素を結合させる場合、ペプチドは固定化される。洗浄工程後、酵素に直接結合し、または酵素が標識されている場合に標識に結合するレポーターが添加される。レポーターは、これ自体が酵素、例えばアルカリホスファターゼなどであり得る。レポーターは、必ずしも酵素または標識自体を結合させなくてよく、標識または酵素を結合させる結合分子に同様に付着することができる。従って、具体的な実施形態において、酵素はビオチンにより標識される。レポーターは、アビジン分子、例えばストレプトアビジンに付着される。ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用は、レポーター活性を酵素の部位に効率的に局在化させ、これにより酵素を首尾良く結合させたペプチドの位置が明らかになる(適切な洗浄工程後)。本方法の具体例は、実施例1に説明されている。
【0062】
任意選択の工程cは、典型的には、結合親和性を改善するためのペプチドアミノ酸配列の伸長を含む。しかしながら、他の改変、例えば非天然アミノ酸による置換を行って既存のアミノ酸を置き換えることができる。伸長は、ある実施形態において1回に1、2、3、4または5個のアミノ酸だけであり得る。次いで、こうして伸長されたペプチドを工程bに従って再試験してどの改変が結合親和性の改善をもたらすかを決定する。
【0063】
次いで、工程dは、改善された結合特性を示す工程cから得られた1種以上のペプチドのフルポジショナルスキャン(full positional scan)である。「フルポジショナルスキャン」は、各個々のアミノ酸を置換して一連のペプチドを生成して結合をさらに改善することができるか否かを決定することを意味する。この工程は、標的酵素について最適な結合親和性を有する1種以上のペプチドを生成する。
【0064】
次いで、さらなる試験を実施することができる。従って、1種以上のペプチドを試験してコンジュゲートに対する改善された結合親和性を有するペプチドが酵素活性を妨害または阻害する能力も有するか否かを決定する。上記のとおりペプチドが活性部位を結合させるように設計されている場合、この工程は必須ではない。これというのも、(結合親和性について試験する)スクリーンが、酵素により作用されるこれらのペプチドが陽性結果を生成するのを妨害し得るからである。
【0065】
上記のとおり、ペプチドのアミノ酸配列が(ヒト)対象のいかなる活性ペプチドも模倣しないことも重要であり、さもなければ、この配列は、不所望な生物学的活性を有し得る。さらに、ペプチドは、いかなる内因性(ヒト)酵素の活性部位も結合させるべきではない。従って、本発明の方法は、対象からの一連の対照タンパク質を用いて試験することにより酵素に対する結合特異性を場合により確認することを含むことができる。好適な対照は、対象となる酵素に基づき決定することができる。同様の活性部位および/または一次アミノ酸配列を有するタンパク質は、例えばアミノ酸配列または構造データベース検索を使用して同定し、結合について適宜試験することができる。さらに、または代替的に、ペプチドを好適な動物モデルにおいて試験して任意の有害作用が存在するか否かを決定することができる。具体的な実施形態において、本方法は、本方法により生成されたペプチドのアミノ酸配列をヒトアミノ酸配列データベースと比較して、ペプチドが不所望な生物学的活性を有する可能性が低いことを確認することをさらに含む。
【0066】
(1種以上の)ペプチドは、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合する。このことは、非標的位置に見出されるコンジュゲートの内在化をもたらす。従って、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体へのペプチドの結合は、ペプチドのクリアランスを促進する。具体的な実施形態において、1種以上のペプチドは、本発明におけるクリアリング剤として有用とするためにグリコシル化される。グリコシル化は、本方法の任意の時点において行うことができる。典型的には、本発明の方法に従って1種以上の好適な候補が生成されたらグリコシル化を行う。グリコシル化は、1種以上のペプチドのさらなる試験前に行うことができる。特に、ファージディスプレイタイプの実施形態において、グリコシル化は、候補結合ペプチドの単離後に行い、ファージにより発現されるペプチドはグリコシル化されない。代替的な実施形態において、出発ペプチドをグリコシル化することができ、またはペプチドを工程bもしくはd前にグリコシル化することができる。グリコシル化は、任意の好適な手段により達成することができ、この例は本明細書に記載されている(この記載は必要な変更を加えて当てはまる。)。
【0067】
本発明のペプチドクリアリング剤は、結合分子および酵素のコンジュゲートを介する酵素の局在化を介して、酵素を使用してプロドラッグを活性薬物に変換する治療方法、例えばADEPTに特に適用可能である。従って、本発明はまた、結合分子および酵素のコンジュゲートを介する酵素の局在化を介して、酵素を使用してプロドラッグを活性薬物に変換する治療方法、例えばADEPTであって、本発明のペプチドクリアリング剤を用いる方法を提供する。同様に、本発明は、結合分子および酵素のコンジュゲートを介する酵素の局在化を介して、酵素を使用してプロドラッグを活性薬物に変換する治療方法、特に抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)におけるクリアリング剤としての本発明のペプチドの使用を提供する。これらの態様は、医学的使用に関して作ることもできる。従って、本発明は、結合分子および酵素のコンジュゲートを介する酵素の局在化を介して、酵素を使用してプロドラッグを活性薬物に変換する治療方法、特に抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)におけるクリアリング剤として使用される本発明のペプチドを提供する。同様に、本発明は、結合分子および酵素のコンジュゲートを介する酵素の局在化を介して、酵素を使用してプロドラッグを活性薬物に変換する治療方法、特に抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)において使用されるクリアリング剤の製造における本発明のペプチドの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】CP014ガラクトース部分アセチル化生成物のHPLCスペクトルである。
【図2】CP014ガラクトース部分脱アセチル化生成物のHPLCスペクトルである。
【図3】CP014の構造を確認するESIデータ(エレクトロスプレー質量分析)である。
【図4】CP014がScFV抗CEA−CPG2の阻害剤であることを示すCP014によるScFV抗CEA−CPG2のCPG2酵素活性の阻害である。計算されたIC50は110μMである。
【図5】CP014がScFV抗CEA−CPG2により変化されないことを示すamplex redアッセイの結果である。amplex redアッセイにおける基質葉酸およびメトトレキサートは陽性対照として示される。CP014についての蛍光シグナルの不存在は、CPG2がCP014を基質として使用することができないことを実証する。
【図6a】1:1ラングミュア結合モデルを適用する、CP014およびScFv抗CEA−CPG2融合タンパク質の相互作用を示すBiacoreデータである。
【図6b】1:1ラングミュア結合モデルへのBiacoreデータのフィットを示す残差プロットである。
【図6c】2状態反応フィットを適用する、CP014およびScFv抗CEA−CPG2融合タンパク質の相互作用を示すBiacoreデータである。
【図6d】2状態結合モデルへのBiacoreデータのフィットを示す残差プロットである。
【図7】主要な分子量ピークを示すCP006のエレクトロスプレー質量スペクトルである。
【図8】阻害アッセイにおけるCP006によるScFv抗CEA−CPG2融合物の阻害である。未処理スペクトルデータ。
【図9】阻害アッセイにおけるCP006によるScFv抗CEA−CPG2融合物の阻害である。88.5μMのIC50を示す阻害曲線。
【図10】CP006およびMFECPについての低い基質活性を示すAmplex redアッセイ結果である。基質濃度は12.5μMであった。
【図11a】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いる自己蛍光に対する対照のフローサイトメトリー結果を示す。
【図11b】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いる自己蛍光に対する対照のフローサイトメトリー結果を示す。
【図11c】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いるCPG2−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図11d】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いるCPG2−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図11e】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いるssFV抗−CEA−CP−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図11f】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いるssFV抗−CEA−CP−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図11g】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いるヒツジ抗CEA−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図11h】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いるヒツジ抗CEA−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図11i】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いるA5B5抗−CEA+ヤギ抗−マウス−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図11j】対照(CEA表面抗原陰性)細胞系(CRL1573)を用いるA5B5抗−CEA+ヤギ抗−マウス−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図12a】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いる自己蛍光に対する対照のフローサイトメトリー結果を示す。
【図12b】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いる自己蛍光に対する対照のフローサイトメトリー結果を示す。
【図12c】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いるCPG2−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図12d】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いるCPG2−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図12e】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いるssFV抗−CEA−CP−PE結合に対する対照についてフローサイトメトリー結果を示す。
【図12f】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いるssFV抗−CEA−CP−PE結合に対する対照についてフローサイトメトリー結果を示す。
【図12g】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いるヒツジ抗−CEA−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図12h】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いるヒツジ抗−CEA−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図12i】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いるA5B5抗−CEA+ヤギ抗−マウス−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【図12j】CEA表面抗原陽性細胞系(CCl−229)を用いるA5B5抗−CEA+ヤギ抗−マウス−PE結合に対する対照についてのフローサイトメトリー結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明を以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0070】
[実施例1]
酵素CPG2についてのグリコシル化結合剤ペプチドを含むクリアリング剤の発生
トリペプチドのライブラリーをPEPSCAN技術の形態で合成する(2および3)。ペプチドは、ロボット手段によりプラスチック壁の内表面に付着させて合成する。この系列の第1のペプチドは、CPG2についての天然基質である葉酸の構造をベースとする。葉酸は、アミド結合を介してグルタミン酸に結合しているプテロイン酸からなる分子である。CPG2は、グルタミン酸−プテロイン酸アミド結合を加水分解する。この第1のトリペプチドは、以下の配列−トリプトファン−フェニルアラニン−グルタミン酸(WFE)を有するが、グルタミン酸はL−アミノ酸ではなくD−アミノ酸である。これというのも、グルタミン酸−フェニルアラニンペプチド結合がCPG2による溶解を受けるべきではないことが意図されるからである。この配列は、配列がアミノ末端に二環窒素置換環構造、中央に6員芳香族環およびカルボキシ末端にグルタミン酸を有するトリペプチドについて考えられる葉酸に最も近い類似性を有するように選択する。トリペプチドライブラリーの残部は、3つの位置のそれぞれにおけるすべての考えられるアミノ酸の置換により、この出発構造から系統的に変化されたペプチドからなる。
【0071】
Tween20(0.05%v/v)およびウシ血清アルブミン(0.1%w/v)(PBSTA)含有するリン酸緩衝食塩水中CPG2−ビオチンコンジュゲート(0.1μg/ml)の水溶液をウェルのそれぞれに分注し、60分間インキュベートし、この後にウェルを空にし、リンスする。次いで、ウェルのすべてにPBSTAと0.5mM塩化マグネシウム中ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート(1μg/ml)の溶液を与え、さらに60分間インキュベートし、この後にウェルを再度空にし、洗浄する。次のアッセイ工程において、ジエタノールアミン中(600mlの精製水中105ml)アルカリホスファターゼについての基質(パラ−ニトロフェノールホスファート)の1mg/mlにおける溶液をウェル中に与え、ウェルをさらに60分間、またはいくらかの色が発色するまで、最大48時間インキュベートする。最後に、ウェルを波長405nmにおける光学密度の読取りに関して、特殊な読取り装置において色発生について評価する。
【0072】
ウェル中の色の存在は、ウェル表面に付着しているペプチドがこれ自体加水分解されずにビオチン化CPG2酵素を結合させたことを示し、色の濃さは、結合したCPG2の量に直接比例し、結合の強さ(親和性)を示す。
【0073】
CPG2を結合させた配列を記録し、ランク付けする。次いで、最大結合配列を、ペプチドの第1のアレイを作出したものと同様の様式において、ジペプチドのすべての考えられるバリエーションが結合トリペプチドに付着している伸長されたペプチドのアレイを作製するための出発点として使用する。CPG2結合の検出のための同一のアッセイ手順をこれらのウェルに再度適用し、最も強力な結合剤を再度同定し、ランク付けする。
【0074】
手順全体を再度繰り返して、さらなる2個のアミノ酸伸長部を付加して最も強力な結合ヘプタペプチドを同定する。次いで、最も強力な結合剤をフルポジショナルスキャンに供して最良の結合配列の任意のバリエーションがよりいっそう強力な結合を付与することができるか否かを決定する。
【0075】
この順序のアッセイ工程における任意の工程において、次の最も強力な結合剤に進み、この配列のペプチドバリエーションを作出することが可能であり、これは、より強力な結合剤が最も強力な候補に由来するライブラリー中で検出されない場合に実行することができる手順である。
【0076】
本明細書に記載の塩基性ペプチド選択技術(PEPSCAN)は、多くの異なる手法において変更して結合ペプチドを発見することができることが認識される。本明細書に記載の実施例の方法は、方法を使用することができる考えられる手法の1種にすぎない。
【0077】
十分な結合配列を見出したら、遊離ペプチドの試料を、さらなる実験および開発を保証するのに十分な量で合成することができる。特に、バリアントは、O結合グリコシルペプチドを発生させるための1個以上のガラクトシルセリンアミノ酸(即ち、多数の供給業者から市販されているセリンヒドロキシル基のO残基に共有結合しているガラクトース)からなるいずれかの末端における伸長部を用いて作製することができる。任意数のこれらの余分なガラクトシルセリン基は、公知のペプチド化学技術により付加して、肝臓細胞(肝細胞)のアシアロ糖タンパク質受容体へのグリコシルペプチドの結合を随時強化することができる。この結合は、単離されたC型レクチンの使用または単離されたラット肝細胞によりインビトロでモデリングすることができる。
【0078】
ガラクトシルセリンは、ヘプタペプチドに直接的に、または好ましくは(必須ではない)1個以上のグリシン残基から構成されるリンカーアミノ酸もしくはアミノ酸のストレッチを介して付加することができる。さらなるガラクトシルセリン残基間のスペースを、1個以上のさらなるアミノ酸により構築してガラクトシル基の配向および配置を最適化することができる。
【0079】
他のガラクトシルアミノ酸を、これらが容易に利用可能であり、ペプチド合成化学反応を受けやすい場合、ガラクトシルセリンに代えて使用することができる。
【0080】
多数のCPG2結合ペプチドをこの手法において開発して、一連の候補分子を作出することができる。次いで、各候補分子を肝細胞への結合、CPG2への結合、プロテアーゼに対する安定性、貯蔵安定性、毒性欠如などに関する特性決定および選択のさらなるラウンドに供することができる。一連のこれらのペプチドを発生させて癌抗原に結合する標的化分子の親和性(即ち、癌抗原に対する標的化抗体の親和性よりも約10倍低い親和性)と合致するCPG2についての親和性を有するペプチドを選択する。
【0081】
[実施例2]
クリアリング剤酵素結合剤CP014
CP014と称される化合物の化学的説明およびグラフ表示
【0082】
【化3】

【0083】
合成および精製の方法
ペプチドCP014は、CEM Liberty Microwave Synthesiserを使用する固相ペプチド合成(SPPS)およびFmoc化学反応(スキーム1、式中、R=樹脂)の適用により合成した。樹脂Fmoc−Glu(OtBu)−NovaSynTGA(MerckBioscience)を0.1mmolのスケールで用いた。すべての後続のFmoc−ビルディングブロックは、NeoMPS、BachemおよびMerckBioscienceから購入した。FMoc−セリンガラクトース(アセチル保護)は、Dextra Labsから入手した。
【0084】
SPPS工程1
【0085】
【化4】

【0086】
SPPS工程2
【0087】
【化5】

【0088】
SPPS工程3
【0089】
【化6】

【0090】
樹脂からのペプチドの開裂および精製
合成を完了したら、樹脂をDCM(10mL)およびEtOH(10mL)により洗浄し、デシケーター中で24時間乾燥させた。24時間後、完了ペプチドをデシケーターから取り出し、95%TFA、2.5%d.HOおよび2.5%TIPSの10mL溶液に3時間供した。この時間の後、反応物を減圧下で蒸発させて無色油状物を得た。油状物を低温TBME中で沈殿させて粗製褐色固体を生じさせた(スキーム4)。粗製生成物を500μLのd.HO中50%MeCN中で溶解させ、次いで600μLの5%MeCN(0.1%TFA)によりさらに希釈し、次いで濾過し、Onyx C18カラム上での逆相プログラムを用い、12分間にわたる5から100%のMeCN(0.1%TFA)の勾配溶出を適用して精製した。生成物回収についての保持時間は、280nmにおいて5.6分であった(図2)。回収された分画を合わせ、圧力下で減らして褐色油状物を得、この油状物をd.HO(4mL)中で溶解させて、0.2mBarにおいて凍結乾燥に18時間供して褐色固体を得た。
【0091】
【化7】

【0092】
ガラクトース部分からのアセチル保護物の除去および精製
ガラクトース部分からのアセチル保護物の除去は、生成物を最小量の無水MeOH中で溶解させ、次いでNaOMeの無水MeOH中1M溶液をpH9−10まで滴加することにより達成した。次いで、反応物を1時間撹拌した。この時間の後、酢酸をpH7まで滴加し、揮発物を減圧下で除去して褐色固体を得た(スキーム5)。生成物を500μLのd.HO中50%MeCN中で溶解させ、次いで600μLの5%MeCN(0.1%TFA)によりさらに希釈し、濾過し、Onyx C18カラム上での標準的な逆相プログラムを使用し、12分間にわたる5から100%MeCN(0.1%TFA)の勾配溶出を適用して精製した。生成物回収についての保持時間は、280nmにおいて4.7分であった(図3)。回収された分画を合わせ、圧力下で減らして褐色固体を得、この固体をd.HO(4mL)中で溶解させ、0.2mBarにおいて凍結乾燥条件に18時間供して褐色固体を得た。
【0093】
【化8】

【0094】
使用される分析方法およびデータ:
以下のHPLCトレースは、ペプチドCP014について得た(図1および2)。標準的な逆相条件はOnyx C18カラムを使用し、5から100%のMeCN(0.1%TFA)の12分間の溶出勾配を適用して用いた。溶出勾配:最初は5%MeCN(0.1%TFA)、次いで100%MeCN(0.1%TFA)を8分において1.5分間、次いで5%MeCN(0.1%TFA)に戻して最後まで。
【0095】
CP014の構造は、LCMSエレクトロスプレー(ESI)を使用して確認した、m/z(ESI)637(M+H+、25%)。結果を図3に示す。
【0096】
酵素阻害実験とIC50の計算
CPG2活性の阻害剤としてのCP014の評価に使用される酵素阻害アッセイ方法
CP014がCPG2活性に対して有した効果は、分光光度アッセイを使用して計測した。CP014をアッセイ緩衝液(0.2mM塩化亜鉛を含有する0.1MのTris−HCl緩衝液pH7.3)中で溶解させて40mMの濃度を生じさせた。この溶液の種々のアリコートをキュベットに添加し、アッセイ緩衝液を添加して各キュベット中の溶液の容積を900μLに調整した。アッセイ緩衝液中の0.6mMメトトレキサート溶液の100μLのアリコートを各キュベットに添加して0.06mM(60μM)のメトトレキサート基質濃度を生じさせた。キュベット中のCP014の濃度範囲は0−400μMであった。
【0097】
キュベット中の基質溶液をオーブン中で37℃に加熱した。次いで、キュベットを分光光度計中に順次配置し、この分光光度計をペルチェを使用して37℃において維持した。融合タンパク質(ScFV抗CEA−CPG2)溶液またはCPG2溶液の10μLのアリコートを添加し、次いで短時間撹拌することによりアッセイを開始した。メトトレキサート基質の加水分解は、320nmにおける吸光度の減少を計測することによりモニタリングした。
【0098】
1ユニット(1U)のCPG2活性は、37℃における1分当たり1μmolのメトトレキサートの加水分解を触媒する酵素の量として定義する。メトトレキサートのモル吸光係数は、8300Lmol−1cm−1とした。各アッセイについて、時間に対する吸光度のプロットを作出し、直線を0から0.2分でデータにフィットした。次いで、直線の傾きにマイナス12およびScFV抗CEA−CPG2/CPG2溶液の希釈係数を乗じて酵素活性をU/mLで生じさせた。
【0099】
アッセイの変法は、種々の量のCP014をScFV抗CEA−CPG2またはCPGと、CPG2アッセイ前に4℃において一定時間インキュベートすることであった。このインキュベーション工程後、各混合物の10μLのアリコートを、アッセイ緩衝液中の0.06mMメトトレキサートの1mLアリコートを含有するキュベットに37℃において添加した。キュベットの内容物を撹拌した後、吸光度の減少の計測および後続の酵素活性の決定を上記のとおり実施した。
【0100】
CPG2活性の阻害におけるCP014の有効性を、このIC50値、即ち、最大阻害濃度の半分の濃度に関して表現した。GraphPad Prism5ソフトウエアを使用して、非線形回帰をCP014濃度の対数に対する酵素活性のプロットに適用することによりIC50値を決定した。
【0101】
潜在的CPG2基質のスクリーニングのための非増幅Amplex Redアッセイ
CP014は、分光光度アッセイを使用してCPG2活性の潜在的阻害剤であることが確立された。材料が阻害剤であり、酵素基質でないことを確認するため、Invitrogen Inc.により開発されたアッセイの改変バージョンを実施した。いわゆるAmplex Redアッセイを使用して食品試料中のL−グルタミン酸を計測し、グルタミン酸オキシダーゼ活性を継続してモニタリングした。アッセイ手順における増幅工程を排除することにより、CPG2基質としての化合物をスクリーニングすることが可能であった。改変アッセイにおいて、CPG2の基質から開裂したL−グルタミン酸をグルタミン酸オキシダーゼにより酸化してαケトグルタル酸、アンモニアおよび過酸化水素を生成した。次いで、過酸化水素を10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red試薬)と、1:1の化学量論でセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)により触媒される反応において反応させて高蛍光生成物レゾルフィンを生じさせた。
【0102】
CP014のアッセイ緩衝液(0.2mM塩化亜鉛を含有する0.1MのTris−HCl緩衝液pH7.5)中25μMおよび200μM溶液ならびに葉酸のアッセイ緩衝液中25μM溶液を調製した。2.5μLのAmplex Red試薬のDMSO中10mM溶液、5μLのHRPのアッセイ緩衝液中溶液(100U/mL)、32μLのL−グルタミン酸オキシダーゼのアッセイ緩衝液中溶液(5U/mL)および460.5μLのアッセイ緩衝液溶液を合わせることによりAmplex Red試薬混合物を調製した。アッセイ緩衝液を使用してScFV抗CEA−CPG2融合タンパク質を適切に希釈した。
【0103】
CP014溶液または25μM葉酸溶液の50μLアリコートおよびAmplex Red試薬混合物の50μLアリコートを黒色マイクロタイタープレートのウェルに添加した。プレートを被覆し、次いで37℃において10分間インキュベートした。被覆を除去し、ScFV抗CEA−CPG2の1μLアリコートを添加した。短時間撹拌した後、プレートをBMG Fluostar Omegaプレートリーダー中に配置し、蛍光強度を245秒間にわたり5秒間隔でモニタリングした。励起フィルター波長を544nmに設定し、発光フィルター波長を590nmに設定した。材料がCPG2基質、例えば葉酸である場合、時間(秒)に対する蛍光強度のプロットは、最初の遅滞期後に線形関係を示す。プロットの直線部分の傾きは、CPG2活性に直接比例することが示された。
【0104】
ScFV抗CEA−CPG2を約2U/mLの濃度に希釈した場合、12.5μM葉酸対照アッセイについて計算された傾きの値は、約4.0であった。プレートウェルにおける12.5および100μMの両方の濃度において、CP014は、陰性対照試料(即ち、ScFV抗CEA−CPG2溶液ではなくアッセイ緩衝液をウェルに添加した場合)と同程度の傾きの値を生じさせ、材料がCPG2基質でないことが示された。
【0105】
CP014についてのIC50および基質潜在性の評価
IC50を上記のとおり決定し、図4に示すとおりGraph pad prismを使用してデータを減らした。基質潜在性を説明するamplex redアッセイデータを図5に示す。
【0106】
データは、CP014がCPG2活性を阻害し(図4)、さらにCP014は変化せず、または基質として使用されない(図5)ことを実証する。
【0107】
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用する結合試験
製造業者(GE healthcare)により推奨されているとおり、EDC/NHS化学反応を使用してペプチドをCM5チップにカップリングさせた。分析物をHBS−P緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%v/v Surfactant P20)中で作製し、表面にわたり5μl/分において180秒間インジェクトし、次いで300秒の解離時間を設けた。再生緩衝液(10mM CHAPS、1mMグアニジニウム塩酸塩、2M NaCl)の2回の10秒間のインジェクションを使用して残留結合を除去した。応答シグナルおよびベースラインを実験にわたりコンシステンシーについてチェックし、15および75μl/分の流速を試験して物質移行に起因する最小効果を確認した。
【0108】
図6aおよび6cはそれぞれ、重ねた4つのセンサーグラムを示す。これらの図は、固定化CP014ペプチドのチップ表面にわたる12.5、25、50および100nMのScFV抗−CEA−CPG2のインジェクションからのブランクが差し引かれたリアルタイム応答である。データは、BiaCoreソフトウエア(「Biaevaluation」)に供給された2つの異なるアルゴリズムを使用してフィットした。図6aに示す最初のものは、1:1結合モデル(ラングミュア)であり、図6cに示す二番目のものは、2状態反応フィットであった。フィットは両方とも、正規化されたセンサーグラムに密接に整列している。このことは、予測値からの最小のずれを示す残差プロットから把握することができる(それぞれ図6bおよび6d)。さらに、カイ2乗値はそれぞれ0.154および0.0882であり、これらのタイプの計算について許容される範囲(<0.2)内である。両方のフィットについて、解離定数(結合定数KD)は、それぞれ5nMおよび9nMとほぼ一致した。
【0109】
導かれた速度論および親和性パラメーターを表1および2にそれぞれまとめる。
【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
[実施例3]
クリアリング剤酵素結合剤CP006
CP006と称される化合物の化学的説明およびグラフ表示
CP006はCP014の前駆体であり、この合成および構造を以下に記載する。
【0113】
【化9】

【0114】
CP006の合成
IIDQ樹脂(500mg、1.91mmol/g)をリンスし、10mlアセトニトリル中で1時間膨潤させ、溶媒を真空下でドレンした。次いで、Boc−アミノナフトエ酸(ポリペプチド、100mg、0.35mmol)およびH−Glu(OtBu)−OtBu(Bachem、108mg、0.37mmol)を5mlアセトニトリル中で溶解させ、事前に膨潤させた樹脂に添加し、室温において72時間穏やかに撹拌した。反応物を清浄フラスコ中にドレンし、溶媒を真空中で除去した。残留物に50mlの50%TFA/DCMを添加し、2時間激しく撹拌した。溶媒を除去した後、残留物を氷冷tertブチルメチルエーテル中で2回リンスし、デカントして黄色固体を残した。乾燥させた粗製材料を5%アセトニトリル(0.1%TFA)中で再溶解させ、5−100%のアセトニトリル0.1%TFAの増加勾配を使用するHPLCにより精製した。プールされた分画を真空中で減らし、50%アセトニトリル中で希釈し、さらに凍結乾燥させて白色粉末を得た。ESMS−ve予測質量:316.11、計測質量316.04。酵素阻害およびCPG2についての基質としての有用性を評価する方法は、上記の方法を使用して試験した。
【0115】
CP006は、ScFv抗CEA−CPG2におけるCPG2活性の阻害剤であり、不十分な基質である。
【0116】
IC50を上記のとおり決定し、図9に示すとおりGraph pad prismを使用してデータを減らした。基質潜在性を説明するamplex redアッセイデータを図10に示す。
【0117】
[実施例4]
ヒツジ抗CEAおよびScFv抗CEA−CPG2融合タンパク質を用いる細胞結合試験
CEAに対するヒツジにおいて発生させた抗体およびScFv抗CEA−CPG2融合タンパク質を観察する試験を、フローサイトメトリーを使用する分析により実施した。
【0118】
CEA発現細胞を使用するScFv抗−CEA−CPG2の結合能のフローサイトメトリーによる計測
材料
細胞系:CRL1573−対照細胞系、CCL229(LoVo)−CEA発現細胞系
抗体/コンジュゲート:CPG2−PE(フィコエリトリン)、CPG2 100U/ml 100Uコンジュゲート化物の1:100希釈物
ScFv抗−CEA−CPG2−PE UCL、40−50U/ml、0.71mg/mlタンパク質BSAを含有する緩衝液中2.5μg/ml
ヒツジ抗−CEA−PE、CF1110−PE;670μg/mlにおける原液。
マウス抗ヒトCEA 3.9mg/mlにおけるUCL BSAを含有する緩衝液中2.5μg/ml
ヤギ抗−マウス−PE Southern Biotech1050−09 L2806−XH69Zカッパ鎖特異的、0.25mg/mlを1μg/mlにおいて使用
4.5mlポリスチレンチューブ、PBSアジド、BSA、PBS+0.5%ホルムアルデヒド(Polysciences#18814)、ヨウ化プロピジウム(100mg/mlのOrpegen)
遠心分離機Eppendorf 5810R、250G、5分、4℃に設定
Coulter XLフローサイトメーター
【0119】
方法
培養細胞を両方ともチューブ当たり2×10個の細胞において使用し、チューブ中の細胞を以下を含有するように調製した。
1.無添加、自己蛍光を試験
2.10μg/mlの最終濃度におけるヨウ化プロピジウム
3.CPG2−PE
4.ScFv抗CEA−CPG2−PE
5.ヒツジ抗CEA−PE
6.マウス抗CEA/抗マウス−PE
細胞を沈降させ、100μlの抗体溶液をそれぞれのチューブに添加した。100μlの緩衝液をチューブ1および2に添加し、しばらく冷蔵庫中に置いた。
チューブを暗所で4℃において1時間インキュベートし、1mlのPBSABを添加し、上記のとおり回転させた。この洗浄においてチューブ1を含めた。上澄みを除去し、100μlのコンジュゲートを、暗所での4℃における1時間のさらなるインキュベーションのためにチューブ6に添加した。
150μlの0.5%ホルムアルデヒドを、冷蔵庫中で貯蔵されたチューブ1、3、4および5に計測まで(約2時間)添加した。チューブ6を上記のとおり洗浄し、ホルムアルデヒドをこのチューブに添加した。計測30分前に100μlのヨウ化プロピジウムをチューブ2に添加し、計測前に1mlのPBSをすべての試料に添加した。
【0120】
対照細胞系は、どの抗CEA抗体の特異的結合も示さない(図11aからj)。ヒツジ抗体のわずかな非特異的結合が存在する(図11h)。図11aから11jのそれぞれの第1の図(即ち、図11a、11c、11e、11gおよび11i)は、試料間のいかなる差異も示すべきでない対照である。
【0121】
CCL229細胞は、陰性対照細胞系と比較してわずかに多くの自己蛍光を示す(図12b)。CPG2対照は、細胞系に結合しないが(図12d)、CEA発現細胞系のうち2つの細胞集団が存在し、ひとつは表面タンパク質CEAを提示し、他方は提示しない。この現象は、すべての3種の抗CEA抗体の組合せを用いて示される(図12f、12hおよび12j)。
【0122】
【表4】

【0123】
本発明は、本明細書に記載の具体的な実施形態による範囲で限定されるべきではない。実際、本明細書に記載のものに加えた本発明の種々の改変は、上記説明および付属の図面から当業者に明らかになる。このような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。さらに、本明細書に記載のすべての実施形態は、広く適用可能であり、適切であれば任意のおよびすべての他の一貫した実施形態と組み合わせ可能であるとみなされる。
【0124】
種々の刊行物が本明細書に引用されており、これらの開示は参照により全体として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素の活性部位へのペプチドの結合を介する対象における非標的位置からの、
a.酵素、および
b.標的位置において特異的に結合する結合分子
のコンジュゲートのクリアランスのためのペプチドクリアリング剤であって、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体にも結合して肝臓を介するクリアランスを促進するペプチドクリアリング剤。
【請求項2】
アシアロ糖タンパク質受容体を発現する肝細胞への結合による肝臓を介するクリアランスを促進するためにグリコシル化されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
酵素に結合すると酵素活性を妨害または阻害する、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
酵素活性により改変されない、請求項1から3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
ジペプチドのアミノ−ナフトエ酸(ANA)−グルタミン酸(Glu)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
アミノ酸配列セリン(Ser)−アラニン(Ala)−アミノ−ナフトエ酸(ANA)−グルタミン酸(Glu)(配列番号1)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
セリン残基がグリコシル化されている、請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
標的位置における結合分子の特異的結合を介して標的位置において酵素が濃縮される、請求項1から7のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
結合分子が抗体またはこの抗原結合誘導体である、請求項1から8のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項10】
酵素が標的位置においてプロドラッグを活性薬物に変換するように作用する、請求項1から9のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
非標的位置からの酵素のクリアランスを可能にするために十分な酵素親和性を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
標的位置において酵素活性に顕著に影響を及ぼさない程度に十分に急速な解離速度または高い解離定数を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
ペプチドの酵素に対する親和性が結合分子の標的位置に対する結合分子の結合親和性よりも約10倍低い、請求項1から12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
標的位置が腫瘍細胞により発現される抗原である、請求項1から13のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項15】
グリコシル化が1個以上のガラクトース基のカップリングを含む、請求項2から14のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項16】
長さが10個以下のアミノ酸である、請求項1から15のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項17】
免疫原性が最小限である、請求項1から16のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項18】
化学合成された、請求項1から17のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項19】
酵素が非ヒト起源である、請求項1から18のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項20】
酵素が、カルボキシペプチダーゼG2、アルカリホスファターゼ、ベータ−グルコロニダーゼ、ペニシリン−V−アミダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ、ベータ−グルコシダーゼおよびニトロレダクターゼから選択される、請求項1から19のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項21】
酵素がカルボキシペプチダーゼG2(CPG2)である、請求項18に記載のペプチド。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のペプチドクリアリング剤を生成する方法であって、
a.好ましくは、酵素基質の構造アナログである出発ペプチドをベースとするペプチドのアレイを調製すること
b.ペプチドのアレイを、酵素および標的位置において特異的に結合する結合分子のコンジュゲートに対する結合親和性についてスクリーニングし、結合親和性を有するペプチドを選択すること
c.工程bにおける結合親和性を有するペプチドのアミノ酸配列を場合により改変し、改変されたペプチドを使用して工程bを繰り返して結合親和性の改善について試験すること
d.工程cに見出される改変されたペプチドの各残基における置換を場合により実施して結合親和性を改善し、工程bを繰り返して置換されたペプチドのいずれについてもさらなる改善された結合親和性を有するか否かを決定すること
e.(改善された結合親和性を有する)工程cまたはdから得られた1種以上のペプチドが、酵素活性を妨害または阻害する能力を有するか否かを場合により決定すること
f.対象からの一連の対照タンパク質を用いて試験することにより酵素に対する結合特異性を場合により確認すること
g.1種以上のペプチドを、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合する能力について試験して、肝臓を介するクリアランスを促進すること
を含み、工程eおよびfは、実施する場合、いずれの順序においても実施することができ、ならびに工程gは、方法の任意の時点において実施することができ、肝細胞により発現されるアシアロ糖タンパク質受容体に結合することができる工程aにおけるペプチドのアレイを提供し、肝臓を介するクリアランスを促進することを含む、上記方法。
【請求項23】
工程gが、1種以上のペプチドをグリコシル化することを含み、従って、工程aが、グリコシル化されたペプチドのアレイを提供することを含むことができる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程aを、ペプチドライブラリーを使用して実施する、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
酵素がCPG2である、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
出発ペプチドがトリペプチドWFEである、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項22から26のいずれか一項に記載の方法であって、該方法により生成されたペプチドのアミノ酸配列をヒトアミノ酸配列データベースと比較して、該ペプチドが不所望な生物学的活性を有する可能性が低いことを確認することをさらに含む、上記方法。
【請求項28】
クリアリング剤としての請求項1から27のいずれか一項に記載のペプチドの使用を含む、抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)方法。
【請求項29】
抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)におけるクリアリング剤としての、請求項1から28のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項30】
抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)におけるクリアリング剤として使用される、請求項1から29のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項31】
抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)において使用されるクリアリング剤の製造における、請求項1から30のいずれか一項に記載のペプチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【図11f】
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【図11g】
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【図11h】
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【図11i】
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【図11j】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【図12e】
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【図12f】
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【図12g】
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【図12h】
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【図12i】
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【図12j】
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【公表番号】特表2013−505287(P2013−505287A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530331(P2012−530331)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001796
【国際公開番号】WO2011/036457
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(508257348)モロジック リミテッド (6)
【Fターム(参考)】