説明

ペプチドスルホンアミド

本発明は、血小板インテグリンGPIIbIIIaならびにαvインテグリン(好ましくはavβsインテグリンおよびαvβ3インテグリン)のリガンドとして生物学的に活性である式(I):R1−Arg−X−Asp−Leu−Asp−Ser−Leu−Arg−R2(I)を有する新規ペプチドに関する。式(I)中、R1はH、アセチルまたはアシルを示し、R2は−Oh、OR3NH2、NHR3、N(R3)2を示し、R3はアルキル、アラルキル、アリール、Hetを示し、Xは式(II)のアミノ酸を示し、式(II)中、Aは(CH2)nを示し、R4はH、アルキル、アラルキルまたはアリールを示し、nは1、2、3、4、5または6を示し、式(II)のアミノ酸は、α−アミノ基のペプチド結合を介して隣接するArgに結合しており、α−カルボキシル基のペプチド結合を介して隣接するAspのα−アミノ基に結合している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は式I:
1−Arg−X−Asp−Leu−Asp−Ser−Leu−Arg−R2
の新規ペプチドに関し、式I中、
1はH、アセチルまたはアシルを示し、
2は−OH、OR3NH2、NHR3、N(R3)2を示し、
3は、アルキル、アラルキル、アリール、Hetを示し、
Xは式II
【0002】
【化1】

【0003】
のアミノ酸を示し、式II中、
Aは(CH2)nを示し、
4はH、アルキル、アラルキルまたはアリールを示し、
nは1、2、3、4、5または6を示し、
式IIのアミノ酸は、α−アミノ基のペプチド結合を介して隣接するArgに結合しており、α−カルボキシル基のペプチド結合を介して隣接するAspのα−アミノ基に結合している。
【0004】
本発明はまた、全ての比率でのそれらの混合物を含む、式Iの化合物の薬学的に有用なプロドラッグ、誘導体、溶媒和物および立体異性体、ならびにそれらの塩に関する。
【0005】
本発明は、有益な特性を有する新規化合物、特に医薬を調製するために使用され得る新規化合物を見出す目的を有する。
【0006】
本発明の式Iの化合物およびその塩は、充分許容されつつ非常に有益な薬理学的特性を有することが見出されている。
【0007】
本発明の式Iの化合物は、血小板インテグリンGPIIbIIIaならびにαvインテグリン(好ましくはαvβ6インテグリンおよびαvβ3インテグリン)のリガンドであり、従って、種々の疾患および病理学的所見の処置のためのアゴニストおよび/またはアンタゴニストとして使用される。これらの化合物は、診断剤または診断試薬としてさらに使用される。
【0008】
インテグリンαvβ6の他のインヒビターは、DE 19858857号およびS.Kraftら、J.Biol.Chem.274、1979〜85(1999)、中に記載されている。
【0009】
インテグリンは、多数の細胞−マトリックス接着プロセスおよび細胞−細胞接着プロセスにおいて重要な役割を果たす、ヘテロダイマークラスI膜貫通レセプターのファミリーに属する(Tuckwellら、1996、Symp.Soc.Exp.Biol.47)。インテグリンは、大まかに以下の3つのクラスに分割され得る:細胞外マトリックスに対するレセプターであるβ1インテグリン、炎症プロセスの間に白血球上で活性化され得、誘発されるβ2インテグリン、ならびに創傷治癒および他の病理学的プロセスにおいて細胞応答に影響を与えるαvインテグリン(MarshallおよびHart、1996、Semin.Cancer Biol.7、191)。
【0010】
α5β1インテグリン、αIIbβ3インテグリン、α8β1インテグリン、αvβ1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、αvβ8インテグリンおよびαvβ6インテグリンは全て、天然のリガンド(例えば、フィブロネクチンまたはビトロネクチン)中のArg−Gly−Asp(RGD)ペプチド配列に結合する。可溶性RGD含有ペプチドは、これらのインテグリンの各々と対応する天然のリガンドとの相互作用を阻害し得る。
【0011】
αvβ6は、上皮組織における修復プロセスにおいて漸増的に形成され、天然のマトリックス分子であるフィブロネクチンおよびテネイシンに優先的に結合する(Wangら、1996、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.15(5)、664;Huangら、1998、J.Cell Sci.111、2189)、比較的稀なインテグリンである(Buskら、1992 J.Biol.Chem.267(9)、5790;Breussら、1993、J.Histochem.Cytochem.41(10)、1521)。αvβ6の生理学的機能および病理学的機能は未だ正確には知られていないが、このインテグリンは、上皮細胞が関与する生理学的プロセスおよび疾患(例えば、炎症、創傷治癒、腫瘍)において重要な役割を果たすとの仮説が立てられている(Breussら、1995、J.Cell Sci.108、2241)。従って、αvβ6は、創傷中の角質細胞上で発現され(Haapasalmiら、1996、J.Invest.Dermatol.106(1)、42;Cassら、1998、J.Pediatr.Surg.33(2)、312)、このことから、創傷治癒プロセスおよび炎症以外に、例えば乾癬のような皮膚上の他の病理学的事象もまた、このインテグリンのアゴニストまたはアンタゴニストによって影響され得るとの仮説が立てられ得る。
【0012】
さらに、口腔粘膜中、唇上、舌上および性器上の皮膚の角化障害(いわゆる白板症)は、正常な比較上の組織とは対照的に、インテグリンαvβ6の発現の増大を示す。白板症の発現の頻度およびレベルが、扁平苔癬を介して扁平上皮癌へと増大すること、すなわち、αvβ6の発現が白板症の悪性転換に関連し得ることもまた、見出されている(Hamidiら、2000、Br.J.Cancer.82(8)、1433;Ramosら、1997、Int.J.Cancer.72(2)、369;Thomasら、2001、J.Inv.Dermatol.117(1)、67;Koivistoら、2000、Exp.Cell Res.255(1)、10)。
【0013】
さらに、αvβ6は、気道上皮において役割を果たし(Weinackerら、1995、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.12(5)、547)、これは、このインテグリンの対応するアゴニスト/アンタゴニストが、気道疾患(例えば、気管支炎、喘息、肺繊維症および気道腫瘍)において首尾よく使用され得ることを意味する(Huangら、1998、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.19(4)、636;Pilewskiら、1997、Am.J.Physiol.273、L256;Kaminskiら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.97(4)、1778)。
【0014】
線維症は、肺(気管支)において知られているだけでなく他の器官でも見出され、このことは、インテグリンαvβ6がその器官においても役割を果たすことを意味する。例えば、皮膚、肝臓(肝硬変に関する限り)、腎臓および膀胱、心臓および膵臓(嚢胞性繊維症)の、病理学的な結合組織の増殖である(Mutsaersら、1997、J.Int.J.Biochem.Cell Biol.29(1)、5;Dalton,S.L.1999、J.Am.Acad.Dermatol.41、457;Kropfら、1991、Z.Med.Laboratoriumsdiagn.32(3/4)、150;Schneeら、2000、Cardiovasc.Res.46(2)、264;Sime、P.J.1999 Curr.Opin.Anti-Inflammatory Immunomodulatory Invest.Drugs 1(5)、423;Houssetら、1999、J.Pathol.Biol.47(9)、886;Normanら、1999、Exp.Nephrol.7(2)、167;Nahasら、1997、Int.J.Biochem.Cell Biol.29(1)、55)。
【0015】
αvβ6が腸上皮においても役割を果たすことが同様に知られており、これは、対応するインテグリンアゴニスト/アンタゴニストが、胃/腸管の炎症、腫瘍および創傷の処置において使用され得ることを意味する。本明細書中で、インテグリンαvβ6が、例えば、ゼラチナーゼB(MMP−9)のようなマトリックスメタロプロテアーゼの分泌にも影響を与えることが示される(Agrezら、1994、J.Cell.Biol.127(2)、547;Niuら、1998、Biochem.Biophys.Res.Commun.249(1)、287)。
【0016】
その密度の関数としての腫瘍細胞による(おそらく異なるMMPの)MMP活性の調節もまた、腫瘍塊の成長の間の周囲のマトリックスのタンパク質分解によって、増殖および移動のためのさらなる空間をこの細胞が生成するのを可能にする機構である。αvβ6発現と細胞密度とMMP活性との間のこの関連は文献中で言及されている(Niuら、2001、Int.J.Cancer 92(1)、40;Agrezら、1999 Int.J.Cancer 81(1)、90;Thomasら、2001、J.Inv.Dermatol.116(6)、898;Thomasら、2001 Int.J.Cancer 92(5)、641)。
【0017】
インテグリンαvβ6は感染プロセスに関与するので、そのアゴニスト/アンタゴニストは微生物感染(原生動物、微細植物、細菌、ウイルス、酵母、真菌)において使用され得る。αvβ3依存的に進行するが、αvβ6依存的にも生じ得る、コクサッキーウイルスについての例および口蹄疫ウイルス(FMDV)による宿主細胞の感染についての例が知られている(Agrezら、1997、Virology.239(1)、71;Jacksonら、2000、J.Virol.74(11)、4949;Millerら、2001、J.Virol.75(9)、4158;Neffら、2001、J.Virol.75(1)、527;Neffら、1998、J.Virol.72(5)、3587;Jacksonら、1997 J.Virol.71(11)、8357)。
【0018】
数年前にすでに示されたように、HIVによる感染(AIDS)もまたαvインテグリンに依存する(Ruoslahtiら、WO 92/14755号)。
【0019】
より最近の知識によれば、細菌Bacillus anthracisは、3つのタンパク質からなる毒素を分泌し、そのうち1種のいわゆるPAすなわち保護抗原は細胞膜上のレセプターに結合し、本明細書中に記載のATR(炭疽病毒素レセプター)レセプターは、A型フォンビルブラント因子の細胞外ドメインを有するI型膜貫通タンパク質である。インテグリンもまた、このようなvWFAドメインを含む。これは、Swiss Protデータベースにおける相同性分析によって、インテグリンαvβ6(http://www.expasy.ch/cgi-bin/niceprot.pl?P18564;ここで、配列β6(131〜371))、およびまたインテグリンαvβ3(http://www expasy.ch/cgi-bin/niceprot.pl?P05106;β3(135〜377))の両方について理解できる。従って、本発明のアゴニスト/アンタゴニストは、肺、皮膚および腸の炭疽病の場合にも使用され得る(Bradleyら、2001、Nature 414、225;Tuckwell、1999、Biochem.Soc.Trans.27(6)、835)。
【0020】
宿主細胞の感染が宿主細胞の接着レセプターに依存することもまた、細菌および酵母(出芽真菌、カンジダ菌)について記載されている(Kerr,JR.1999 Medical Microbiology、Manchester Royal Infirmary、UK、MOLECULAR PATHOLOGY、52(4)、220;Dehioら、1998、FEBS LETT.424(1〜2)、84;Stockbauerら、1999 Proc.Nat.Acad.Sci.USA.96(1)、242;Santoniら、2001 Microbial Pathogen.31(4)、159)。
【0021】
インテグリンαvβ6とTGF−βとの相互作用およびこれから生じる活性化が実証されている(Dalton,SL.1999、J.Am.Acad.Dermatol 41、457;Mungerら、1999 Cell 96、319)。
【0022】
潜伏性のTGFβ1(すなわち前駆形態の1つ)がインテグリンαvβ6に結合し、次いでタンパク質溶解によって活性化されることが発表されている。本発明の化合物は、TGF−β(前駆形態、LAPペプチド、LAP−TGFβ、潜伏性TGF)のインテグリンへの結合を阻害し、インテグリンαvβ6のアゴニスト/アンタゴニストは、それによってTGF−β1および他のサブタイプの活性化を防止し得る。TGFβの調節がそれによって促進される。
【0023】
今日まで、多様な増殖および分化のプロセス、特に炎症プロセス、線維症、創傷治癒、骨成長、免疫機能の調節、血管新生および腫瘍転移における役割が帰する3つのヒトTGFβアイソフォームが発見されている(Rifkinら、1993、70、177;Hataら、1998、Mol.Med.Today 257;Sheppard,D.2001、Chest.120(1補遺)、49S;Wickstomら 1998、Prostate 37、19)。本発明の化合物をこれらのプロセスにおいてαvβ6のアゴニスト/アンタゴニストとして使用することもまた可能であると仮説が立てられ得る。
【0024】
免疫学的プロセスにおけるαvβ6の役割を強調するさらなる論文は、肺の化学的損傷後の好中球の流入を記載している(Millerら、2001、J.Histochem.Cytochem.49(1)、41)。
【0025】
血管新生の発生が脈管インテグリンと細胞外マトリックスタンパク質との間の相互作用に依存していることが、P.C.Brooks、R.A.ClarkおよびD.A.Cheresh、Science 264、569(1994)によって記載されている。
【0026】
従って本発明の目的は、治療的および診断的に取り扱いが困難である、今日までに知られている天然の高分子量リガンドおよび抗体に加えて、この治療分野において使用され得るが診断剤もしくは診断試薬としても使用され得る、血小板インテグリンGPIIbIIIaならびにαvインテグリン(好ましくはαvβ6インテグリンおよびαvβ3インテグリン)に対する強力、特異的かつ/または選択的な低分子量ペプチドリガンドを見出すことである。
【0027】
本発明のペプチド化合物およびその塩は、血小板インテグリンGPIIbIIIaならびにαvインテグリン(好ましくはαvβ6インテグリンおよびαvβ3インテグリン)またはこれらのインテグリンを保有する細胞に対する作用を発揮し、あるいはこれらが表面に結合している場合には、単離されたGPIIbIIIaもしくは単離されたαvインテグリン(好ましくはαvβ6インテグリンおよびαvβ3インテグリン)の結合についての合成リガンドまたはGPIIbIIIaもしくはαvによって促進される細胞機能を示すことが見出されている。特に、これらの化合物は、GPIIbIIIaインテグリン、αvインテグリン(好ましくはαvβ6インテグリンおよび/またはαvβ3インテグリン)のインヒビターとして作用し、特に、例えばフィブロネクチンの結合のような、レセプターと他のリガンドとの相互作用を阻害する。この作用は、例えば、Smithら、J.Biol.Chem.265、12267〜12271(1990)に記載の方法によって検出され得る。
【0028】
さらに、新規物質が、充分許容されつつ非常に有益な薬理学的特性を有し、医薬として使用され得ることが見出されている。これは、以下により詳細に記載されている。
【0029】
WO 01/00660号およびWO 01/05810号において記載されているように、位置Xにないアミノ酸が置換され、かつ/または線状化合物が環状化される場合にさえ、これらの特性が保持される。
【0030】
本発明のペプチド化合物はさらに、先行技術の対応するマーカー分子がこれに提供される場合に、in vivoでの上皮系における病理学的状態の検出および定位についての診断剤として使用され得る。例えば、ビオチン(例えば親和性目的のため)または診断方法および画像化方法のための種々の蛍光標識もしくは放射性同位体錯体が、この目的のために適切である。本発明の化合物はまた、例えば、バイオインプラント、マイクロタイタープレートまたは粒子のような製造過程にある製品の表面に共有結合されるためのアンカー機構を保有し得る。
【0031】
本発明はまた、少なくとも1種の他の活性成分との組み合わせおよび/または他の活性成分とのコンジュゲート(例えば、細胞傷害性活性成分およびX線治療もしくはPET診断のための放射性マーカーとのコンジュゲート)だけでなく、マーカータンパク質(例えば、GFPまたは抗体)または治療タンパク質(例えばIL−2)との融合タンパク質もまた包含する。
【0032】
本発明の目的について、アルキルは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個または18個のC原子を有する、線状または分枝状または環状のアルキル基を示し、これは、へテロ原子(例えば、N、SまたはO)によって置換(例えば、ハロゲン化、ヒドロキシル化、アミノ化、部分的に不飽和化または割り込み)され得る。アルキル基がハロゲンによって置換される場合、アルキル基の炭素原子の数に依存して、このアルキルは1個、2個、3個、4個または5個のハロゲン原子を好ましくは有する。従って例えば、メチル基はハロゲンによってモノ置換、ジ置換またはトリ置換され、エチル基はハロゲンによってモノ置換、ジ置換、トリ置換、テトラ置換またはペンタ置換され得る。アルキルは好ましくは、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルもしくはプロピルを示し、特に好ましくはイソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルを示すが、n−ペンチル、ネオペンチルまたはイソペンチルもまた示す。
【0033】
用語「アリール」は、非置換またはモノ置換もしくはポリ置換の一環式、二環式または三環式の芳香族炭化水素基(例えば、ベンゼン環またはアントラセン環系、フェナントレン環系もしくはナフタレン環系)を包含する。適切な置換基の例は、NO2−、F−、Cl−、Br−、I−、HO−、H2N−、R3HN−、(R3)2N−、アルキル−、アルキル−O−、CF3−O−、アルキル−CO−、アリール−、アリール−O−、アリール−CO−、アリール−CONH−、アリールSO2−、アリールSO2−HN−を包含し、これらの置換基は互いに独立して、0回〜5回生じ得る。
【0034】
用語「Het」は、非置換またはモノ置換もしくはポリ置換の、飽和、不飽和または芳香族の一環式、二環式または三環式の複素環基を包含する。ヘテロ原子として、S、NまたはOが1回〜3回生じ得る。適切な置換基の例は、NO2−、F−、Cl−、Br−、I−、HO−、H2N−、R3HN−、(R3)2N−、アルキル−、アルキル−O−、CF3−O−、アルキル−CO−、アリール−、アリール−O−、アリール−CO−、アリール−CONH−、アリールSO2−、アリールSO2−HN−を包含し、これらの置換基は互いに独立して、0回〜5回生じ得る。
【0035】
用語「アラルキル」は好ましくは、上に規定したようなアルキル基に結合した上に規定したアリール基を包含する。適切なアラルキル基の例には、ベンジル、フェニルプロピル、フェニルブチルなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0036】
本発明における用語αvインテグリンは、インテグリンαvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6およびαvβ8を包含するが、好ましくはαvβ6インテグリンおよびαvβ3インテグリンである。
【0037】
本発明は特に、式Ia)〜Io)の群:
【0038】
【表1】

【0039】
から選択されるペプチド化合物ならびにその薬学的に有用なプロドラッグ、誘導体、溶媒和物および立体異性体ならびにその塩(すべての比率でのそれらの混合物を含む)に関し、式Ia)〜Io)中の括弧内で使用される略号は以下の基を示す:
Psa フェニルスルホニル基
F5−PSA ペンタフルオロフェニルスルホニル基
2−NO2−PSA 2−ニトロフェニルスルホニル基
4−NO2−PSA 4−ニトロフェニルスルホニル基
2,4−NO2−PSA 2,4−ジニトロフェニルスルホニル基
6−OMe−PSA 6−メトキシフェニルスルホニル基
2−CF3−PSA 2−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基
3−CF3−PSA 3−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基
Me5−PSA ペンタメチルフェニルスルホニル基
4−tBu−PSA 4−tert−ブチルフェニルスルホニル基
Bsa ベンジルスルホニル基
iPrs イソプロピルスルホニル基
1−Nap 1−ナフチルスルホニル基
2−Nap 2−ナフチルスルホニル基
4−Ph−Psa 4−フェニルフェニルスルホニル基。
【0040】
アミノ酸基についての上記および下記の略号は、以下のアミノ酸の基を示す:
AspまたはD アスパラギン酸
ArgまたはR アルギニン
Dap 2,3−ジアミノプロピオン酸
LeuまたはL ロイシン
SerまたはS セリン
ThrまたはT トレオニン。
【0041】
さらに、上記および下記の以下の略号は、以下の意味を有する:
Ac アセチル
BOC tert−ブトキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
CBZまたはZ ベンジルオキシカルボニル
DCCI ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DIEA ジイソプロピルアミン
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DMF ジメチルホルムアミド
EDCI N−エチル−N,N'−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
Et エチル
FCA フルオレセインカルボン酸
FITC フルオレセインイソチオシアネート
Fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
Fmoc−Dap(ivDde) N−α−Fmoc−N−γ−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルジアミノプロピオン酸
FTH フルオレセインチオウレア
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
Me メチル
MBHA 4−メチルベンズヒドリルアミン
Mtr 4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニルスルホニル
NMP N−メチルピロリドン
HONSu N−ヒドロキシスクシンイミド
OBut tert−ブチルエステル
Oct オクタノイル
OMe メチルエステル
OEt エチルエステル
Pbf 2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル
Pmc 2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル
POA フェノキシアセチル
Sal サリチロイル
TBS++ 二価カチオンを含むTris緩衝化生理食塩水
TBSA TBS+BSA
TBTU 2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
TFA トリフルオロ酢酸
TIS トリイソプロピルアミン
Trt トリチル(トリフェニルメチル)。
【0042】
上記のアミノ酸が複数の鏡像異性体形態で存在し得る場合、これら全ての形態およびそれらの混合物(例えばDL形態)もまた上記および下記に含まれる。さらにこれらのアミノ酸にはそれ自体公知の対応する保護基が提供され得る。
【0043】
本発明の化合物にはまた、いわゆるプロドラッグ誘導体(即ち、アルキル基もしくはアシル基、糖またはオリゴペプチドで修飾され、生物内で迅速に開裂されて本発明の有効な化合物を生じる化合物)が含まれる。これらにはまた、例えばInt.J.Pharm.115、61〜67(1995)中に記載されているような、本発明の化合物の生体分解性ポリマー誘導体が含まれる。
【0044】
上記のアミノ酸およびアミノ酸基(例えば、NH官能基またはC末端アミド官能基も)もまた誘導され、N−メチル誘導体、N−エチル誘導体、N−プロピル誘導体、N−ベンジル誘導体またはCα−メチル誘導体が好ましい。さらに、Aspの誘導体(特に、側鎖カルボキシル基のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、tert−ブチルエステル、ネオペンチルエステルまたはベンジルエステル)、さらにはまた、−NH−C(=NH)−NH2基上でアセチル、ベンゾイル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル基によって置換され得るArgの誘導体が生じ得る。
【0045】
N末端上にアセチル基を保有する式Iの化合物以外に、本発明の化合物にはまた、Acが別のアシル官能基(例えば、プロピオニル、ブチリルまたはベンゾイルも)によって置換された化合物が含まれる。
【0046】
さらに、本発明の化合物にはまた、これらのペプチドが容易に検出されるようにする既知のマーカー分子で誘導体化された本発明の実際の化合物からなる誘導体が含まれる。このような誘導体の例は、放射性標識されたペプチド、ビオチン化ペプチドまたは蛍光標識ペプチドである。
【0047】
蛍光色素基は、好ましくは、7−アセトキシクマリン−3−イル、フルオレセイン−5−(および/または6−)イル、2',7'−ジクロロフルオレセイン−5−(および6−)イル、ジヒドロテトラメチルロサミン−4−イル、テトラメチルローダミン−5−(および/または6−)イル、4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−エチルまたは4,4−ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−エチルを示す。
【0048】
本発明の式Iの化合物の調製のための試薬として働き得る適切な官能化蛍光色素基は、例えば「Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、第5版、1992〜1994(R.P.Haughlandによる)、Molecular Probes、Inc.」中に記載されている。
【0049】
一般に、本発明のペプチドは線状であるが、環化されていてもよい。本発明は、このペプチドのみならず、本発明のこれらの化合物以外に、所望の方法で本発明のペプチドの主な薬理学的作用に影響を与え得る他の薬理学的活性成分またはアジュバントもまた含む混合物および組成物もまた包含する。
【0050】
本発明の化合物およびその調製のための出発材料はさらに、文献(例えば、Houben-Weyl、Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg-Thieme-Verlag、Stuttgartのような標準的な研究)において記載されているような、正確に言えば公知かつこの反応に適切な反応条件下で、それ自体公知かつ頻繁に使用される方法によって調製される。それ自体公知の変異体の使用もまた本明細書中でなされ得る。
【0051】
本発明のペプチドは好ましくは、例えば、JonczykおよびMeienhofer(Peptides,Proc.8th Am.Pept.Symp.、V.HrubyおよびD.H.Rich編、Pierce Comp.III、73〜77頁、1983もしくはAngew.Chem.104、1992、375)によって記載されているように、あるいはMerrifield(J.Am.Chem.Soc.94、1972、3102)の方法によって、固相合成ならびに引き続く開裂および精製によって調製され得る。
【0052】
本発明のペプチドは、酸不安定性側鎖保護基を用いたFmocストラテジーにおいて固相上で(手動または自動合成器で)調製されて、RP−HPLCによって精製され得る。ピークの均一性は、RP−HPLCによって測定され、物質の同一性はFAB−MSによって測定され得る。
【0053】
さらに、これらのペプチドは、例えば、Novabiochem-1999 Catalog & Peptide Synthesis Handbook of Calbiochem-Novabiochem GmbH、D-65796 Bad Sodenから、多数の標準的な研究および公開された特許出願から公知のような、アミノ酸およびペプチドの合成の従来の方法によって調製され得る。
【0054】
段階的カップリングおよびフラグメント縮合もまた使用される。直交して除去可能であるように好ましくは選択される、種々のN末端保護基、C末端保護基および側鎖保護基が使用され得る。カップリング工程は、種々の縮合試薬(例えば、カルボジイミド、カルボジイミダゾール(carbodiimidazole)、ウロニウム型の試薬(例えば、TBTU))、混合無水物法および酸ハライドまたは活性化エステル法によって実施され得る。
【0055】
側鎖保護基を有する線状前駆分子の環化も、例えば、DE 43 10 643号またはHouben-Weyl、上記引用文中、第15巻/II、1〜806頁(1974)に記載されているようなこの型の縮合反応を用いて同様に実施され得る。
【0056】
種々の樹脂およびアンカー官能基が、固相ペプチド合成において使用され得る。樹脂は、例えばポリスチレンまたはポリアクリルアミドに基づき得、アンカー官能基(例えばWang、o−クロロトリチル)は、ペプチド酸、アミノキサンテンオキシ(aminoxanthenoxy)アンカーの調製(例えばペプチドアミドの調製)のために使用され得る(Principles of Peptide Synthesis、M.Bodansky編、Springer Verlag Berlin 1984;Houben Weyl Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg Thieme Verlag、Stuttgart;Calbiochem/Novabiochem Catalogue and Synthesis Handbook 1999、Synthesis Notes;Peptide Synthesis Protocols、M.W.PenningtonおよびB.M.Dunn編、Methods in Molecular Biology 第35巻、Humana Press Totowa N.J.1994を参照)。
【0057】
ビオチン化または蛍光標識したペプチド/タンパク質も、標準的な方法によって同様に調製され得る(例えば、E.A.BayerおよびM.Wilchek、Methods of Biochemical Analysis 第26巻 The Use of The Avidin-Biotin Complex as a Tool in Molecular Biology;ならびにHandbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、第6版、1996(R.P.Hauglandによる)、Molecular Probes,Inc.;またはWO 97/14716号も)。
【0058】
本発明のペプチドは、それらの機能的誘導体の加溶媒分解(特に加水分解)または水素化分解によってももちろん遊離され得る。加溶媒分解または水素化分解のために好ましい出発材料は、1種または複数の遊離アミノ基および/またはヒドロキシル基の代わりに、対応する保護されたアミノ基および/またはヒドロキシル基を含む物質、好ましくはN原子に結合したH原子の代わりにアミノ保護基を保有する物質、またはヒドロキシル基のH原子の代わりにヒドロキシル保護基を保有する物質である。対応する状況が、保護基によるその−CO−OHヒドロキシル官能基の置換によって、例えばエステルとして保護され得るカルボン酸に適用される。
【0059】
用語「アミノ保護基」は一般に公知であり、化学反応に対してアミノ基を保護する(遮断する)のに適切であるが、所望の化学反応が分子中のほかの場所で実施された後に容易に除去可能である基に関する。用語「ヒドロキシル保護基」も同様に一般に公知であり、化学反応に対してヒドロキシル基を保護するのに適切であるが、所望の化学反応が分子中のほかの場所で実施された後に容易に除去可能である基に関する。それらの機能的誘導体からの化合物の遊離は、使用される保護基に依存して、例えば、強力な酸を使用することによって、有利にはTFA、HBrまたは過塩素酸を使用することによって実施されるが、他の強力な無機酸(例えば、塩酸または硫酸)、強力な有機カルボン酸(例えばトリクロロ酢酸)またはスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸)を使用することによっても実施される。水素化分解によって除去可能な保護基(例えば、CBZまたはベンジル)は、例えば、触媒(例えば、有利には炭素のような支持体上の貴金属触媒(例えばパラジウム))の存在下での水素による処理によって除去され得る。
【0060】
N末端およびペンダントアミノ基についての典型的な保護基は、Z、BOC、Fmocであり、C末端またはAsp側鎖についての典型的な保護基はO−(第一級アルキル)(例えば、OMeまたはOEt)、O−tert−アルキル(例えばOBut)またはO−ベンジルである。Argのグアニジノ官能基については、例えば、Z、BOC、NO2、Mtr、PmcまたはPbfが適切である。アルコール官能基は、tert−アルキル基、ベンジル基またはトリチル基によって保護され得る。
【0061】
基BOC、OButおよびMtrは、例えば、ジクロロメタン中のTFAまたはジオキサン中の約3n〜5nのHClを15℃〜30℃で使用して好ましくは除去され得、FMOC基は、DMF中約5%〜50%のジメチルアミン、ジエチルアミンまたはピペリジンの溶液を15℃〜30℃で使用して除去され得る。
【0062】
水素化分解によって除去可能な保護基(例えば、CBZまたはベンジル)は、例えば、触媒(例えば、有利には炭素のような支持体上の貴金属触媒(例えばパラジウム))の存在下での水素による処理によって除去され得る。本明細書の適切な溶媒は上記の溶媒であり、特に、例えば、アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)、エーテル(例えば、THFまたはジオキサン)またはアミド(例えば、DMF、DMAまたはNMP)である。水素化分解は、約0℃と100℃との間の温度および約1barと200 barとの間の圧力(好ましくは20℃〜30℃および1bar〜10bar)で一般に実施される。CBZ基の水素化分解は、例えば、20℃〜30℃で、メタノール中の5%〜10%のPd/C上で充分に、またはメタノール/DMF中のPd/C上でギ酸アンモニウム(水素の代わり)を使用することによって成功している。
【0063】
すでに言及したように、式Iの化合物の塩ならびに式Iの化合物の有用なプロドラッグ、誘導体、溶媒和物および立体異性体の塩も同様に包含される。これらは、標準的な方法によって調製され得る。従って、本発明の化合物の塩基は、酸を使用することによって関連する酸付加塩に転換され得る(例えば、不活性な溶媒(例えばエタノール)中の同量の塩基と酸との反応および引き続くエバポレーションによって)。この反応に適切な酸は、特に生理学的に許容可能な塩を生じる酸である。従って以下を使用することが可能である:無機酸(例えば、硫酸、硝酸、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸または臭化水素酸)、リン酸(例えば、オルトリン酸)、スルファミン酸)、さらには有機酸(特に、脂肪族、脂環族、アラリファティック、芳香族または複素環式のモノ塩基性またはポリ塩基性のカルボン酸、スルホン酸または硫酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノスルホン酸およびナフタレンジスルホン酸、ラウリル硫酸))。生理学的に許容されない酸との塩(例えばピクリン酸塩)が、本発明の化合物の単離および/または精製のために使用され得る。その一方で、本発明の化合物の酸は、塩基との反応によってその生理学的に許容される金属塩またはアンモニウム塩の1つに転換され得る。本明細書中の適切な塩は、特に、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩、さらには置換されたアンモニウム塩(例えば、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩もしくはジイソプロピルアンモニウム塩、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩もしくはジイソプロピルアンモニウム塩、シクロヘキシルアンモニウム塩、ジシクロヘキシルアンモニウム塩、ジベンジルエチレンジアンモニウム塩)、さらには例えば、アルギニンもしくはリジンとの塩である。
【0064】
本発明のペプチド化合物は、すでに言及したように、予防および/または治療のためのヒト医薬および獣医医薬における医薬活性成分として使用され得る。本明細書中で特に強調されるべきは以下である:循環器疾患、肺塞栓症、血栓症(特に深部静脈血栓症)、心臓梗塞、動脈硬化症、離断性動脈瘤、一過性脳虚血発作、卒中、狭心症(特に不安定狭心症)、器官における病理学的な結合組織の増殖または線維症(特に肺線維症であるが、嚢胞性線維症、皮膚線維症、肝線維症、肝硬変、尿道線維症、腎線維症、心臓線維症、小児心内膜線維症、膵臓線維症も)、皮膚の角化障害、白板症、扁平苔癬および扁平上皮癌、腫瘍疾患(例えば、固形腫瘍および血液または免疫系の腫瘍の腫瘍発達、腫瘍血管新生または腫瘍転移(例えば、皮膚の腫瘍、扁平上皮癌、血管の腫瘍、胃腸管の腫瘍、肺の腫瘍、胸部の腫瘍、肝臓の腫瘍、腎臓の腫瘍、脾臓の腫瘍、膵臓の腫瘍、脳の腫瘍、精巣の腫瘍、卵巣の腫瘍、子宮の腫瘍、膣の腫瘍、筋肉の腫瘍、骨の腫瘍ならびに咽喉および頭部領域の腫瘍))、溶骨性疾患(例えば骨粗鬆症)、副甲状腺機能亢進症、パジェット病、悪性高カルシウム血症、不適合輸血、病理学的血管新生疾患(例えば炎症)、眼科学的疾患、糖尿病性網膜症、黄斑変性、近視、角膜移植、血管新生緑内障、眼ヒストプラスマ症、慢性関節リウマチ、骨関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、アテローム硬化症、乾癬、再狭窄(特に血管形成術後)、多発性硬化症、妊娠、absumptio placentaris、ウイルス感染、細菌感染、酵母感染および真菌感染、口蹄疫、HIV、炭疽病、白カンジダ症、急性腎不全の場合および治癒プロセスを支援するための創傷治癒の場合。
【0065】
従って本発明は、医薬、診断剤または診断試薬としての、その生理学的に許容される塩を含む上記および下記ならびに特許請求の範囲に規定した式のペプチド化合物に関する。
【0066】
特に、本発明は、GPIIbIIIa、αvインテグリン(好ましくはαvβ6インテグリンおよび/またはαvβ3インテグリン)が関与する上記疾患(従って特に、循環器疾患、器官における病理学的な結合組織の増殖および線維症、角化障害、腫瘍疾患、溶骨性疾患、病理学的血管新生疾患、感染)と闘うため、および創傷治癒プロセスに影響を与えるためのインヒビターとしての対応する医薬に関する。
【0067】
本発明はまた、少なくとも1種の式Iの化合物あるいはその生理学的に許容されるプロドラッグ、誘導体、溶媒和物もしくは立体異性体または塩、ならびに任意選択で賦形剤および/またはアジュバントを含む対応する医薬組成物に関する。
【0068】
本発明はまた、以下の別個のパックからなるセット(キット)に関する:
(a)有効量の式Iの化合物ならびに/またはその薬学的に有用な誘導体、溶媒和物および立体異性体ならびにその塩(全ての比率でのそれらの混合物を含む)、および
(b)有効量のさらなる医薬活性成分。
【0069】
このセットは、適切な容器(例えば、箱もしくはカートン、個々の瓶、小袋またはアンプル)を含む。このセットは例えば、溶解形態または凍結乾燥形態で、全ての比率でのそれらの混合物を含む、有効量の式Iの化合物ならびに/またはその薬学的に有用な誘導体、溶媒和物および立体異性体ならびにその塩と、有効量のさらなる医薬活性成分とを各々が含む別個のアンプルを含み得る。
【0070】
本発明はさらに、GPIIbIIIa、αvインテグリン(好ましくはαvβ6インテグリンおよび/またはαvβ3インテグリン)が役割を果たす上記疾患(従って特に、循環器疾患、器官における病理学的な結合組織の増殖および線維症、角化障害、腫瘍疾患、溶骨性疾患、病理学的血管新生疾患、感染)と闘うため、および創傷治癒プロセスに影響を与えるための医薬を調製するための、全ての比率でのそれらの混合物を含む、式Iの化合物ならびに式Iの化合物の薬学的に有用なプロドラッグ、誘導体、溶媒和物および立体異性体ならびにその塩の使用に関する。
【0071】
本発明の医薬およびそれらを含む医薬組成物は、ヒト医薬または獣医医薬において使用され得る。これらは、懸濁物、エマルジョンもしくは溶液中の製剤を含めて、リポソーム、軟膏、ペースト、生体分解性ポリマー、またはナノ粒子、錠剤、カプセルもしくは丸剤、顆粒もしくは粉末として、吸入のためのエアロゾルとして、鼻内滴剤もしくはスプレーとして、局所的もしくは全身的に、経口的に、静脈内に、腹腔内に、筋内に、皮下に、経皮的に、経鼻的に、頬側に、またはイオン泳動で投与され得る。他の技術(例えば、手術、照射、診断、放射線療法、光化学療法および遺伝子治療)および他の医薬との組み合わせもまた可能である。このタイプの医薬は、例えば、心血管、中枢神経系または腫瘍学の領域に起源し得る。これらは、抗腫瘍剤(例えば、血管新生インヒビターまたは細胞増殖抑制剤)、アルキル化剤の群由来の化学療法剤、抗生物質、代謝拮抗物質、生物学的薬剤および免疫調節剤、ホルモンおよびそのアンタゴニスト、マスタードガス誘導体、アルカロイドおよびその他であり得、これらの物質は、低分子量および高分子量の物質であり得る。これらは、脂質、炭水化物、タンパク質であり得る。これらにはとりわけ、サイトカイン、毒素、融合タンパク質、モノクローナル抗体およびワクチンが含まれる。
【0072】
本発明の医薬組成物に適切な賦形剤は、経腸(例えば経口)、非経口、局所投与、または吸入スプレーの形態での投与に適切であり、新規化合物と反応しない有機または無機の物質(例えば、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、炭水化物(例えば、ラクトースまたはデンプン)、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ワセリン)である。経口投与には、錠剤、丸剤、コーティング錠剤、カプセル、粉末、顆粒、シロップ、ジュースまたは滴剤が特に適切であり、経直腸投与には坐剤が適切であり、非経口投与には、溶液(好ましくは油性溶液または水溶液)、さらには懸濁物、エマルジョンまたはインプラントが適切であり、局所適用には軟膏、クリームまたは粉末が適切である。これらの新規化合物はまた凍結乾燥され得、得られた凍結乾燥物は、例えば、注射調製物の調製のために使用され得る。示された組成物は滅菌され得、かつ/またはアジュバント(例えば、滑沢剤、防腐剤、安定剤および/もしくは湿潤剤、乳化剤、浸透圧を改変するための塩、緩衝剤物質、色素、香味料ならびに/または1つもしくは複数のさらなる活性成分(例えば1つもしくは複数のビタミン))を含み得る。
【0073】
吸入スプレーとしての投与のために、活性成分が噴射ガスまたは噴射ガス混合物(例えば、CO2またはクロロフルオロカーボン)中に溶解されるかまたは懸濁されるかのいずれかであるスプレーを使用することが可能である。この活性成分は微細化形態で本明細書中で有利に使用され、この場合、1種または複数のさらなる生理学的に許容される溶媒(例えばエタノール)が存在し得る。吸入溶液は、従来の吸入器の助けにより投与され得る。
【0074】
本発明の物質は、一般に、好ましくは1投薬単位当たり約0.05 mgと500 mgとの間、特に0.5 mgと100 mgとの間の用量で、他の既知の市販のペプチド(例えば、米国特許第4472305号に記載)と類似して投与され得る。一日用量は、好ましくは体重1kg当たり約0.01 mgと20 mgとの間である。しかし、各患者についての特定の用量は、広範な種々の要因(例えば、使用される特定の化合物の効力、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食餌、投与の時間および方法、排泄速度、医薬の組み合わせならびに治療が適用される特定の疾患の重篤度)に依存する。非経口投与が好ましい。
【0075】
式Iの新規化合物はさらに、分析生物学および分子生物学において使用され得る。
【0076】
蛍光色素基を含む式Iの化合物は、FACS(Fluorescence Activated Cell Sorter:蛍光活性化セルソーター)技術ならびにin vitroおよびin vivoの蛍光顕微鏡法において診断マーカーとして使用され得る。
【0077】
蛍光顕微鏡法における標識された化合物の使用は、例えば、Y.-L.WangおよびD.L.Taylor、「Fluorescence Microscopy of Living Cells in Culture、Part A+B、Academic Press,Inc.1989」に記載されている。in vivoでの使用のさらなる例は、M.Dellianら Am.J.Pathol.149、59〜71(1996)中で明らかにされている。
【0078】
本発明の化合物はまた、インテグリンの精製のためのアフィニティクロマトグラフィー用のカラムの生成のためにインテグリンリガンドとして使用され得る。アビジンで誘導体化した支持体材料(例えばセファロース)および新規化合物を含む複合体は、それ自体公知の方法(例えば、E.A.BayerおよびM.Wilchek、Methods of Biochemical Analysis 第26巻 The Use of The Avidin-Biotin Complex as a Tool in Molecular Biology)によって形成される。本明細書中の適切なポリマー支持体材料は、好ましくはペプチド化学においてそれ自体公知の親水性特性を有するポリマー固相(例えば、架橋多糖(polysugar)(例えば、セルロース、セファロースもしくはSephadex(登録商標))、アクリルアミド、ポリエチレングリコールに基づくポリマーまたはTentakelpolymere(登録商標))である。
【0079】
実施例:
上記および下記で、全ての温度は℃で示される。
【0080】
HPLC分析(保持時間Rt)を、以下の系で実施した:
カラム 5μm LichroSpher 60 RP−Select B(250−4)、50分間で0%〜80%の勾配の水中アセトニトリル/0.1%のトリフルオロ酢酸、流速1ml/分および検出215nm、
質量分析法(MS):EI(電子衝撃イオン化)M+
FAB(高速原子衝撃)(M+H)+
【0081】
実施例1
Ac−Arg−Dap−Asp−Leu−Asp−Ser−Leu−Arg−NH2の合成
a)1gのアミノキサンテニル(aminoxanthenyl)樹脂(Novabiochem)を、10mlのDMF中のFmoc−Arg(Pbf)/HOBt/DICで膨潤させ、室温で2時間振とうする。ワークアップのために、固相を濾過して除き、ジクロロメタン、DMF、ジクロロメタンおよびメタノールの各々で3回洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0082】
b)この固相をDMF中に懸濁し、DMF中50%のピペリジン溶液を引き続いて添加し、この混合物を室温で15分間振とうする。引き続いて固相を濾過して除き、同じ手順を2回繰り返す。最後に、固相をDMF、ジクロロメタンおよびメタノールの各々で3回洗浄し、室温で減圧下で乾燥させる。
【0083】
c)Arg(Pbf)−NH−キサンテニル樹脂を、アミノ酸誘導体1.Fmoc−Leu、Fmoc−Ser(But)、Fmoc−Asp(OBut)、Fmoc−Leu、Fmoc−Asp(OBut)、Fmoc−Dap(Boc)および7.Fmoc−Arg(Pbf)について手順aおよびbに連続的に供して、Arg(Pbf)−Dap(Boc)−Asp(OBut)−Leu−Asp(OBut)−Ser(But)−Leu−Arg(Pbf)−NH−キサンテニル樹脂を得る。
【0084】
d)ペプチジル樹脂を、10mlのDMF/ピリジン/無水酢酸(15:3:2体積比)中で膨潤させ、15分後に室温で濾過する。ワークアップのために、この樹脂をDMF、ジクロロメタンおよびメタノールの各々で3回洗浄し、減圧下で一晩乾燥させ、Ac−Arg(Pbf)−Dap(Boc)−Asp(OBut)−Leu−Asp(OBut)−Ser(But)−Leu−Arg(Pbf)−NH−キサンテニル樹脂を得る。
【0085】
e)N末端でアセチル化した側鎖保護したペプチジル樹脂を、20mlの水中98%のTFA溶液と混合し、室温で3時間振とうする。固相を濾過によって除去し、その濾液を37Cで減圧下でエバポレートして乾燥させ、水に取った後に凍結乾燥させて、所望の生成物Ac−Arg−Dap−Asp−Leu−Asp−Ser−Leu−Arg−NH2を綿状の固体として得る。
【0086】
f)1e)からの粗製生成物の精製を、2−プロパノールの1%〜80%の勾配で、水/0.1%のTFA中のLichroprep RP18でのRP−HPLCによって達成する。所望の生成物が高純度で得られ、これは、(M+H)+=1001g/molの予測された質量を有する。
【0087】
実施例2
Ac−Arg−Dap(Psa)−Asp−Leu−Asp−Ser−Leu−Arg−NH2の合成
FmocをAsp(OBut)−Leu−Asp(OBut)−Ser(But)−Leu−Arg(Pbf)−NH−キサンテニル樹脂から開裂して除き、Fmoc−Dap(ivDde)(Novabiochem製)を2回のカップリングでカップリングした(2/1当量;20/40分)。キャップ化および洗浄の後、Fmoc保護基を、モルホリン/DMF(1:1)を使用して開裂して除き(25分で100ml)、Fmoc−Arg(Pbf)を、上記の方法でカップリングした。
【0088】
Fmocを通常通り開裂して除き、キャップ化(アセチル化)および洗浄を実施した。Kaiser試験はネガティブであった。ivDde保護基を、DMF中2%のヒドラジンを使用して10分間(10ml/分)開裂して除いた。Kaiser試験はポジティブであった。洗浄および乾燥を実施し、収率は2.19gであった。
【0089】
部分的に側鎖を保護したAc−Arg(Pbf)−Dap−Asp(OBut)−Leu−Asp(OBut)−Ser(But)−Leu−Arg(Pbf)−NH−キサンテニル樹脂を130mgの16のアリコートに分割し、これらをDCM中で短時間膨潤させた。
【0090】
対応する塩化スルホニルを、Eppendorf容器中で1.5mlのDCM中に溶解し、5当量のDIEAを添加した。これらの溶液を樹脂に添加した。Kaiser試験が1時間後になお僅かにポジティブであった場合、この樹脂を同じ方法で濾過して除き、洗浄して再カップリングした。これをDMF、DCMおよびイソプロパノールで徹底的に洗浄し、乾燥させた。
【0091】
各場合に、6mlのTFA/水/TIS(94/3/3)で2時間開裂して除き、濾過し、RP−HPLCによって精製して、遊離ペプチド誘導体を得る;例えば、塩化フェニルスルホニルの使用により、生成物Ac−Arg−Dap(Psa)−Asp−Leu−Asp−Ser−Leu−Arg−NH2
【0092】
実施例3
実施例2と同様に、とりわけ以下の生成物を調製した。ここで、ペプチドAc−Arg−X−Asp−Leu−Asp−Ser−Leu−Arg−NH2の位置2のアミノ酸Xを、Fmoc−Dap(ivDde)の代わりに対応するFmocアミノ酸誘導体を使用し、塩化フェニルスルホニルの代わりに対応するアシル化試薬を使用して得た。これらはまた、ペプチド合成において、予め調製されたアミノ酸誘導体(例えば、Fmoc−Dap(SO2Ph)−OH(およびその類縁体))の使用によっても調製され得る。
【0093】
【表2】

【0094】
実施例4:
αvβ6へのビオチン化フィブロネクチンの結合に対する可溶性物質の影響
フィブロネクチンと競合する、本発明に従って調製されたペプチドを、溶液中で固定化したαvβ6レセプターに結合させ、試験すべきペプチドのαvβ6への結合の選択性の測定としてのQ値を決定した。このQ値は、試験ペプチドおよび標準のIC50値の比率から計算される。使用した標準は、線状Ac−RTDLDSLR−NH2(WO 01/00660号;Pytelaら、1986、Science 231、1559)であった。結合試験を詳細は以下のように実施した:
αvβ6を、TBS++でのタンパク質溶液の希釈および引き続く4℃で一晩のインキュベーション(100μl/ウェル)によってマイクロタイタープレート上に固定化した。非特異的結合部位をTBS++中3%(w/v)のBSA(200μl/ウェル)とのインキュベーション(2時間;37℃)によってブロッキングした。過剰のBSAを、TBSA++で3回洗浄することによって除去した。ペプチドをTBSA++中に連続希釈し(1:10)、ビオチン化フィブロネクチン(2μg/ml)と固定化インテグリンと一緒にインキュベートした(1ウェル当たり50μlのペプチド+50μlのリガンド;2時間;37℃)。
【0095】
未結合のフィブロネクチンおよびペプチドを、TBSA++での3回の洗浄によって除去した。結合したフィブロネクチンを、アルカリホスファターゼに結合した抗ビオチン抗体(TBSA++中1:20000;100μl/ウェル)とのインキュベーション(1時間;37℃)によって検出した。TBSA++での3回の洗浄後、比色検出を、基質溶液(5mgのニトロフェニルホスフェート、1mlのエタノールアミン、4mlのH2O(100μl/ウェル))とのインキュベーション(10分〜15分;25℃;暗中)によって実施した。酵素反応を、0.4MのNaOH(100μl/ウェル)の添加によって停止させた。色の強度を、ELISA測定装置中で405nmで決定し、ブランク値に対して調整した。使用したブランク値は、レセプターで被覆されていないウェルであった。各実験において使用した標準は、100nM未満のIC50値を有するAc−RTDLDSLR−NH2であった。
【0096】
試験したペプチドについてのIC50値をグラフから読み取り、そのペプチドのQ値を、標準のIC50値と共にそこから決定した。
【0097】
多数の合成された化合物がマイクロモル濃度未満〜ナノモル濃度のインテグリンαvβ6への親和性を有することが、これらの実験において見出された(表1を参照のこと)。
【0098】
【表3】

【0099】
以下の実施例は、医薬組成物に関する:
実施例A:注射バイアル
3lの2回蒸留水中の本発明の式Iの化合物100gおよび5gのリン酸水素二ナトリウムの溶液を、2Nの塩酸を使用してpH6.5に調整し、滅菌濾過し、注射バイアルに移し、滅菌条件下で凍結乾燥させ、滅菌条件下で密封する。各注射バイアルは5mgの活性成分を含む。
【0100】
実施例B:坐剤
本発明の式Iの化合物20gの混合物を、100gのダイズレシチンおよび1400gのココアバターと共に融解し、鋳型に注ぎ、冷却させる。各坐剤は20mgの活性成分を含む。
【0101】
実施例C:溶液
940mlの2回蒸留水中で、本発明の式Iの化合物1g、9.38gのNaH2PO4・2H2O、28.48gのNa2HPO4・12H2Oおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから溶液を調製する。そのpHを6.8に調整し、この溶液を1lにして、照射によって滅菌する。この溶液は点眼剤の形態で使用され得る。
【0102】
実施例D:軟膏
本発明の式Iの化合物500mgを99.5gのワセリンと無菌条件下で混合する。
【0103】
実施例E:錠剤
本発明の式Iの化合物1kg、4kgのラクトース、1.2 kgのジャガイモデンプン、0.2 kgのタルクおよび0.1 kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、各錠剤が10mgの活性成分を含むように従来の方法で圧縮して、錠剤を得る。
【0104】
実施例F:コーティング錠剤
錠剤を実施例Eと同様に圧縮し、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび色素のコーティングによって従来の方法で引き続いてコーティングする。
【0105】
実施例G:カプセル
本発明の式Iの化合物2kgを、各カプセルが20mgの活性成分を含むように従来の方法で硬質ゼラチンカプセル中に導入する。
【0106】
実施例H:アンプル
60lの2回蒸留水中の本発明の式Iの化合物1kgの溶液を滅菌濾過し、アンプル中に移し、滅菌条件下で凍結乾燥させ、滅菌条件下で密封する。各アンプルは10mgの活性成分を含む。
【0107】
実施例I:吸入スプレー
本発明の式Iの化合物14gを10lの等張NaCl溶液中に溶解し、この溶液をポンプ機構を備えた市販のスプレー容器中に移す。この溶液は口または鼻中にスプレーされ得る。1回のスプレー発射(約0.1ml)は約0.14mgの用量に相当する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
1−Arg−X−Asp−Leu−Asp−Ser−Leu−Arg−R2
のペプチド化合物およびその薬学的に有用なプロドラッグ、誘導体、溶媒和物、立体異性体ならびにその塩(全ての比率でのそれらの混合物を含む)であって、式I中、
1はH、アセチルまたはアシルを示し、
2は−OH、OR3NH2、NHR3、N(R32を示し、
3は、アルキル、アラルキル、アリール、Hetを示し、
Xは式II
【化1】

のアミノ酸を示し、式II中、
Aは(CH2)nを示し、
4はH、アルキル、アラルキルまたはアリールを示し、
nは1、2、3、4、5または6を示し、
前記式IIのアミノ酸は、α−アミノ基のペプチド結合を介して隣接するArgに結合しており、α−カルボキシル基のペプチド結合を介して隣接するAspのα−アミノ基に結合している、化合物。
【請求項2】
群:
【化2】

から選択される請求項1に記載のペプチド化合物およびその薬学的に有用なプロドラッグ、誘導体、溶媒和物、立体異性体ならびにその塩(全ての比率でのそれらの混合物を含む)。
【請求項3】
医薬物として使用するための、請求項1または2に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
有効量の請求項1または2に記載の式Iの化合物と、さらに任意選択で1または複数の不活性な賦形剤、アジュバントおよび/または希釈剤とを含む、医薬物。
【請求項5】
少なくとも1種のさらなる医薬活性成分が存在することを特徴とする、請求項4に記載の医薬物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の式Iの化合物および任意選択でさらなる医薬活性成分が、1種または複数の不活性な賦形剤および/または希釈剤中に、非化学的な方法で取り込まれることを特徴とする、請求項4または5に記載の医薬の調製方法。
【請求項7】
血小板インテグリンGPIIbIIIaならびに/あるいはαvインテグリン、好ましくはαvβ6インテグリンおよび/またはαvβ3インテグリンが役割を果たす疾患の予防および/または治療のための医薬を調製するための、請求項1または2に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項8】
前記疾患が、循環器系統の病気(例えば肺塞栓症)、血栓症(特に深部静脈血栓症)、心臓梗塞、動脈硬化症、離断性動脈瘤、一過性虚血発作、卒中、狭心症(特に不安定狭心症)、器官における病理学的な結合組織の増殖または線維症(特に肺線維症であるが、嚢胞性線維症、皮膚線維症、肝線維症、肝硬変、尿道線維症、腎線維症、心臓線維症、小児心内膜線維症、膵臓線維症も)、皮膚の角化障害、白板症、扁平苔癬および扁平上皮癌、腫瘍疾患(例えば、固形腫瘍および血液または免疫系の腫瘍の腫瘍発達、腫瘍血管新生または腫瘍転移(例えば、皮膚の腫瘍、扁平上皮癌、血管の腫瘍、胃腸管の腫瘍、肺の腫瘍、胸部の腫瘍、肝臓の腫瘍、腎臓の腫瘍、脾臓の腫瘍、膵臓の腫瘍、脳の腫瘍、精巣の腫瘍、卵巣の腫瘍、子宮の腫瘍、膣の腫瘍、筋肉の腫瘍、骨の腫瘍ならびに咽喉および頭部領域の腫瘍))、溶骨性疾患(例えば骨粗鬆症)、副甲状腺機能亢進症、パジェット病、悪性高カルシウム血症、不適合輸血、病理学的血管新生疾患(例えば炎症)、眼科学的疾患、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、近視、角膜移植、血管新生緑内障、眼ヒストプラスマ症、慢性関節リウマチ、骨関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、アテローム硬化症、乾癬、再狭窄(特に血管形成術後)、多発性硬化症、妊娠、absumptio placentaris、ウイルス感染、細菌感染、酵母感染および真菌感染、口蹄疫、HIV、炭疽病、カンジダアルビカンス、急性腎不全の場合および治癒プロセスを支援するための創傷治癒の場合を含む群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項9】
(a)有効量の請求項1または2に記載の式Iの化合物、および
(b)有効量のさらなる医薬活性成分
のそれぞれ別個のパックからなる、医薬キット。


【公表番号】特表2007−523835(P2007−523835A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501545(P2006−501545)
【出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000211
【国際公開番号】WO2004/069861
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】